JP3907825B2 - 交流送電システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設の交流送電線を利用するもので、送電線のリアクタンスに影響されない交流送電システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
我が国の送電線のほとんどは周波数50Hzまたは60Hzの交流送電方式であり、一部、系統間の連携や長距離送電などに、直流送電が使われている。
図50は、直流送電と、交流送電の概念を表わすシステム構成図を示す。
図中、Gは発電所、SSは変電所、TR1,TR2はトランス、CNVは交流/直流電力変換器、INVは直流/交流電力変換器、Ldは直流リアクトル、Xは交流送電線のリアクタンスをそれぞれ表わす。
【0003】
図50(a)は、直流送電システムを示すもので、発電所Gで発電された交流電力を交流/直流電力変換器CNVで、直流に変換する。当該直流電力は、直流送電線を介して受電側の変電所に送られる。そこで、直流/交流電力変換器INVにより、直流電力を再び交流電力に変換して別の変電所あるいは需要負荷に交流電力を供給する。
【0004】
この直流送電システムは、一旦直流にして送電するため、送電線のリアクタンスによる電圧降下はなく、長距離の送電が可能という利点を有する。また、2つの交流系統が別の周波数であっても連系させることが可能である。しかし、送電側および受電側にそれぞれ送電容量を同じ容量の電力変換器が必要になり、また、新しい直流送電線を建設しなければならず、コストの高いシステムとなってしまう。
【0005】
一方、図50(b)は交流送電システムを示すもので、変圧器TR1,TR2で自由に電圧を変えることができ、交流のまま送電できる利点がある。また、現在の送電線のほとんどが交流送電線であり、それらを有効に利用した経済的な電力供給が可能である。しかし、送電線にリアクタンス分Xがあると、その電圧降下が問題となり、送電できる有効電力が制限される欠点がある。
【0006】
図51において、(a)は交流送電線の簡易等価回路を、(b)は位相角θに対する送電電力の関係を示す。図において、送電端の電圧Vs、受電端の電圧Vr、その位相差をθ、送電線のリアクタンスをXとした場合、送電できる有効電力Pは、次式のように表わされる。
【数1】
P=(Vs・Vr/X)・sinθ
従って、送電線が長距離になると、リアクタンスXが大きくなり、送電可能な有効電力が制限されてしまう。
【0007】
また、通常の送電では位相差θは30°以下で運転されているが、系統に電力変動が発生して位相差θが90°を超えると、いわゆる発電機の脱調現象が生じ送電できなくなってしまう。更に、送電線のリアクタンスXが大きい系統では、送電電力の最大値が小さく少しの電力変動でも位相差θが大きく変動し、系統が不安定になり易い欠点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
交流送電は、変圧器によって電圧を自由に変えることができ、既設の送電線を利用して長距離の交流送電ができれば経済的であり、電力を供給する側にも、また電力を利用する側にも大きなメリットがある。しかし、送電線のリアクタンスの影響を受け、送電可能な有効電力が制限される。
【0009】
一方、直流送電は、送電線のリアクタンスの影響を受けないので、長距離の送電に適していると言われている。しかしながら、既設の送電線は使用できず、また送電容量分の大容量の電力変換器が必要となり、システムコストが非常に高くなる。また、送電の途中で、負荷に電力を供給しようとする場合、直流を一旦交流電力に変換する必要があり、そのための電力変換器が必要になり、これまた不経済なシステムになってしまう。
【0010】
よって、本発明は、既設の交流送電線を有効に利用し、リアクタンスによる影響を無くし、送電線の送電能力を高めて長距離の送電を可能にした交流送電システムを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、請求項1に対応する発明は、複数の変電所を介して送電される電力系統において、当該変電所間を結ぶ送電線の中で、送電線のパーセントリアクタンス%XIが大きいものを選択し、当該送電線の等価的なリアクタンスを小さくするように補償電圧を発生させる直列補償装置を有し、この直列補償装置は、隣接する送電線のリアクタンスを含めて補償する電圧を発生するように制御したこと特徴とする交流送電システムである。
【0019】
交流送電では、既設の送電線を利用し、複数の変電所を介して長距離送電を行うことが考えられる。各変電所を結ぶ送電線の中で送電線のパーセントリアクタンス%XIが大きいものを選択して、当該送電線の等価的なリアクタンスがほぼゼロになるように直列補償装置により補償電圧を発生させ、系統全体の送電能力を高める。これにより、複数の変電所を介した効率的な交流長距離送電が可能となる。
【0020】
前記目的を達成するため、請求項2に対応する発明は、複数の変電所を介して送電される電力系統において、当該変電所間を結ぶ送電線の中で、送電線のリアクタンスXと当該送電線に流れる電力潮流量Pとの積が大きいものを選択し、当該送電線の等価的なリアクタンスを小さくするように補償電圧を発生させる直列補償装置を有し、この直列補償装置は、隣接する送電線のリアクタンスを含めて補償する電圧を発生するように制御したことを特徴とする交流送電システムである。
【0021】
交流送電では、既設の送電線を利用し、複数の変電所を介して長距離送電を行うことが考えられる。各変電所を結ぶ送電線の中で送電線のリアクタンスXと当該送電線に流れる電力潮流量Pとの積が大きいものを選択して、当該送電線の等価的なリアクタンスが小さくなるように直列補償装置により補償電圧を発生させ、系統全体の送電能力を高める。送電線に流れる電力潮流量Pが大きいものは送電線のリアクタンスXの影響が大きくなる。故に、PとXの積が大きいものを選択して補償するのが効果的である。これにより、複数の変電所を介した効率的な交流長距離送電が可能となる。
【0022】
また、請求項1または請求項2に対応する発明は、複数の送電線を介して長距離の交流送電を行う場合、最小の設備で送電能力を上げる必要がある。1つの直列補償装置で、隣接する送電線のリアクタンスを補償することにより送電線全体の送電能力を向上させることができる。これによりシステムコストの安い交流長距離送電が達成できる。
【0023】
直列補償装置は、定常状態では送電線に流れている電流に対しほぼ直交する成分の電圧を発生し、送電線等価的なリアクタンスを調整する機能があることは述べた。
送電線の地絡事故等がきっかけとなり、系統に電力動揺が発生する。その場合、送電線の有効電力と無効電力の変動分を検出し、当該有効電力変動分に応じて送電線に流れている電流と直交する成分の補償電圧を調整し、かつ、前記無効電力変動分に応じて送電線に流れている電流と同相成分の補償電圧を調整することにより、電力系統の電力動揺を抑える。これにより、電力変動をいち早く抑え、交流長距離送電の安定化を図ることが可能となる。
【0088】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の交流送電システムの第1の実施の形態を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、SCG1とSCG2は直列補償装置を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0089】
直列補償装置SCG1は送電線のリアクタンスX2を打ち消すような補償電圧を発生し、等価的なリアクタンスを小さくすることにより、その区間の送電能力を向上させる。同様に、直列補償装置SCG2は送電線のリアクタンスX3を打ち消すような補償電圧を発生し、等価的なリアクタンスを小さくすることによりその区間の送電能力を向上させる。
また、送電線の電力動揺が発生した場合、それを抑制するように直列補償装置から電圧を発生し、電力動揺を抑える。
【0090】
図2は、図1のシステムにおける直列補償装置の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lは送電線のインダクタンス分、Trは直列トランス、VSIは電圧形PWM制御インバータ、Edは直流電圧源、CTは電流検出器、PTは電圧検出器、DPDは電力検出器,DPCNTは電力変動抑制制御回路、AVRは電圧制御回路、PWMCはパルス幅変調(PWM)制御回路をそれぞれ示す。
【0091】
直列トランスTrの1次側は各相毎に送電線に直列接続され、2次側にパルス幅変調制御(PWM制御)の電圧形インバータVSIが接続されている。
電圧形インバータVSIは3相ブリッジ結線され、PWM制御により電圧指令値Vorに比例した交流電圧Voを発生させる。S1〜S6はGTO等の自己消弧素子で、各素子には逆並列にダイオードが接続されている。定常的には、この補償電圧Voは送電線に流れている電流Iと直交する成分を発生させ、送電線の等価的なリアクタンスを調整する。Vobはその指令値で、この値を調整することにより送電線のリアクタンスXをほぼゼロになるように調整することもできる。
【0092】
一方、送電線に電力動揺が発生した場合、次のように抑制制御される。
すなわち、電流検出器CTと電圧検出器PTで、送電線の3相交流電圧・電流を検出し、それを用いて有効電力Pと無効電力Qを求める。電力動揺があると、このPとQが変化するので、その変動分ΔPとΔQを取り出して次の電力変動抑制制御回路DPCNTに与える。有効分ΔPに応じて送電線に流れている電流Iと直交する成分の補償電圧Voqを調整し、また、無効分ΔQに応じて電流Iと同相成分(又は逆相成分)の補償電圧Vopを調整する。図中、Voaはその合成補償電圧指令を示す。電力動揺が発生すると、ΔPとΔQに応じて補償電圧Voaが変化し、電力動揺を抑える。
【0093】
直流電圧源Edは、別電源を用意してもよいが、ここでは、自前で直流電圧源を作っている。すなわち、直流電圧源として、直流平滑コンデンサを用意し、その電圧Edが一定になるように制御している。まず、直流指令値Edrと直流電圧検出値Edを比較し、その偏差を直流電圧制御回路AVRで増幅する。AVRの出力信号Vo1は送電線に流れている電流Iに対し同相成分(または逆相成分)の補償電圧指令を与えることにより、直流電圧Edを制御している。
【0094】
以下、それぞれの動作を交流側の電圧・電流ベクトル図を用いて説明する。
図3は、図1のシステムの定常動作を説明するための送電線の等価回路と、電圧電流のベクトル図を示すものである。(a)は直列補償装置なしの等価回路、(b)は(a)の等価回路の電圧電流ベクトル図、(c)は直列補償装置を入れた場合の等価回路、(d)は(c)の等価回路の電圧電流ベクトル図を示す。
【0095】
図中、Vsは送電側の電圧、Vrは受電側の電圧、Lは送電線のインダクタンス、Iは電流、Voは補償電圧、ωは電源角周波数である。なお、送電線の抵抗分は十分小さいとして無視している。
【0096】
図3(b)は直列補償装置なしのベクトル図で、電流Iが流れることにより、jωL・Iの電圧降下が生じ、送電電圧VsとVrの位相差θが大きくなる。電流Iを大きくしていくと、位相差θが大きくなり、それが90°を超えるとそれ以上有効電力Pを送れなくなる。発電機でいうと、同期速度を保てなくなって脱調を引き起こす。長距離の送電線ではこのインダクタンスLが大きく、すぐにその限界に達してしまう。
【0097】
これに対し、図3(d)は本発明の直列補償装置を入れた場合のベクトル図を示すもので、流れている電流Iに対し、ほぼ直交する成分の補償電圧Voを発生させることにより、送電線のインダクタンスLによる電圧降下jωL・Iを打ち消し、送電線の等価的なリアクタンスを小さくすることができる。この結果、送電電圧Vsと受電電圧Vrの位相差θが縮まり、送電能力を向上させることができる。Vo=−jωL・Iとすれば、等価リアクタンスX=0の送電が可能となる。この場合、VrとVsを一致させることができる。ゼロリアクタンス送電では、電流Iが増加してもVsとVrの位相差θは動かず、電力動揺にも強い系統になる。ただし、図2の直列補償装置では、送電線の電流Iに比例して補償電圧Voを大きくする必要がある。
【0098】
図4に、図1のシステムの電力動揺抑制動作を説明するための送電線の等価回路と、電圧電流ベクトル図を示す。図中の記号は、図3の記号に準ずる。
図4(b)は、定常状態の電圧電流ベクトル図を示すもので、Vo=−jωL・Iの補償電圧を発生し、等価的なリアクタンスXは、ほぼゼロとなっている。
【0099】
図4(c)は、何らかの原因で、送電側の電圧位相が変化し、電力動揺が発生した場合の動作ベクトル図を示す。すなわち、送電電圧VsがVs´ のように変化した場合、差電圧Vs´ −Vrが発生し、電流IはI´ のように増加しようとする。受電側で電力変動分を検出すると、Vrと同相の電流成分ΔIpが有効電流成分の増加分で、これを抑えるように電流Iと直交する補償電圧ΔVoqを元の電圧Voと逆方向に発生させる。また、Vrと直交する電流成分ΔIqが無効電流成分の増加分で、これを抑えるように電流Iと逆相の補償電圧ΔVopを発生させる。これにより、補償電圧VoはVo´ のように変化する。結果として、送電線のLに印加される電圧jωL・Iは、差電圧Vs´ −Vr−Vo´ となり、前の値と同じになって、電流Iは元の電流に戻る。すなわち、Vs(あるいはVr)の変化に応じて、補償電圧Voが調整され、電力動揺を抑制することができる。
【0100】
図5は、図2の直列補償装置の制御動作を説明するための送電線の等価回路と、電圧電流ベクトル図を示す。図中の記号は、図3の記号に準ずる。
図5(b)は、ある定常状態の電圧電流ベクトル図を示す。図2の装置において、直流電圧Edが指令値Edrより小さくなった場合、偏差εは正の値となり、Vo1rを増加させる。図5(c)は、そのときのベクトル図を示すもので、指令値Vo1rによって電流Iと同相成分の補償電圧Vopを発生させる。この結果、I×Vopに比例した有効電力が電圧形インバータVSIに供給され、直流電圧Edを増加させる。逆に、Edr<Edとなった場合、Vopの向きが反転して有効電力がインバータVSIから送電線に放出され、直流電圧Edが減少する。このようにして、電圧形インバータの直流電圧源を自前で確保することができる。もちろん、別電源を持ってきて電圧形インバータを構成してもよい。
【0101】
図6は、請求項1及び請求項2に関係するもので、本発明の交流長距離送電システムの第2の実施の形態を示す構成図と、電圧電流ベクトル図を示す。
図中、LOADは負荷、V1〜V4は各変電所における電圧、X1〜X3は送電線のリアクタンス、Voは直列補償装置の発生電圧、Iは送電電流を表わす。
【0102】
図6(b)のベクトル図において、直列補償装置はリアクタンスX2の電圧降下jX2・Iを打ち消すように補償電圧Voを発生している。故に、V2とV3が等しくなり、電流Iが流れることにより、電圧V1に対し、V2=V3が少し遅れ、さらにV4が少し遅れる。
【0103】
また、図6(c)のベクトル図では、直列補償装置から、補償電圧Vo=−j(X1+X2)・Iを発生させることにより、V1=V3としている。この場合X1=X3とすると、V2=V4となり、V1=V3より少し遅れた電圧ベクトルとなって、4つ変電所の電圧のバラツキが緩和される。
【0104】
さらに、図6(d)のベクトル図では、補償電圧をVo=−(X1+X2+X3)・Iとしたもので、V1=V4とすることができる。このとき、V3のベクトルは少し進み、V2の電圧ベクトルは少し遅れることになる。
【0105】
このようにして、隣接する送電線のリアクタンスを含めて補償することも可能となり、必要最小限の直列補償装置を設けることにより、送電能力を向上させることができる。
【0106】
図7は、請求項3に関係するもので、本発明の交流長距離送電システムの第3の実施の形態を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、SCG1〜SCG4は直列補償装置を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0107】
複数の変電所を介して交流長距離送電を行う場合、その送電経路に当たる送電線全てに直列補償装置SCG1〜SCG4を設置する。これにより、当該送電経路の等価的なリアクタンスをほぼゼロにすることが可能となり、従来問題となっていたリアクタンスの影響を完全に無くすことができ、直流送電と等価な送電が可能となる。しかも、設置する直列補償装置の容量は、直流送電の変換器容量の10%程度で済み、経済的なシステムとすることができる。
【0108】
また、直流送電では、送電線の途中から電力を引き出すことは非常に困難であるが、本発明の交流長距離送電システムでは、途中の変電所から自由に電力を取り出したり、あるいは、他の発電所から電力を授受することも可能である。
【0109】
さらに、ゼロリアクタンス送電では、送電能力が格段に向上し、電力外乱に対して強い系統とすることができ、仮に、外乱が入って、電力動揺が起きてもいち早くその動揺を抑えることができる。
【0110】
図8は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、SCG1とSCG2は直列補償装置を、%XI1〜%XI5は送電線のパーセントリアクタンスをそれぞれ示す。
【0111】
図において、各送電線のパーセントリアクタンスが、%XI3>%XI1>%XI2>%XI5>%XI4の関係にあった場合、まず、直列補償装置SCG1で%XI3を補償するように設置し、次に、直列補償装置SCG2で%XI1を補償するように設置したものである。発電所Gから大口需要地LOAD4まで長距離送電する場合、送電経路のパーセントリアクタンスの大きいものをまず補償することにより、全体のリアクタンスによる電圧降下が小さくなり、送電能力が大幅に向上する。また、必要最小限の補償装置で最大の効果をあげることが可能となる。
【0112】
図9は、請求項2に関係するもので、本発明の交流長距離送電システムの第5の実施の形態を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、SCG1とSCG2は直列補償装置を、X1〜X5は各送電線のリアクタンスを、P1〜P5は各送電線に流れる電力をそれぞれ示す。
【0113】
発電所Gから大口需要地LOAD4まで長距離送電する場合、各送電線のリアクタンスと、そこに流れる電力の積をとり、その値の大きいものを選択して、直列補償装置を設置する。図9において、P3・X3>P1・X1>P2・X2>P5・X5>P4・X4であった場合、まず、送電線X3のリアクタンスを小さくするように直列補償装置SCG1を設置し、次に、送電線X1のリアクタンスを小さくするように直列補償装置SCG2を設置する。これにより、電力潮流量Pが大きく、送電線リアクタンスXが大きい送電線の送電能力が向上し、送電経路全体として大幅に送電能力を向上させることができる。また、必要最小限の直列補償装置を設置すればよく、経済的な交流長距離送電を実現できる。
【0114】
図10は、本発明の直列補償装置の制御方式の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lは送電線のインダクタンス分、Trは直列トランス、VSIは電圧形PWM制御インバータ、Edは直流電圧源、CTは電流検出器、PTは電圧検出器、PDは電力検出器,FXは関数発生器、VREFは補償電圧設定器、VCNTは電圧制御回路をそれぞれ示す。
【0115】
直列トランスTrの1次側は各相毎に送電線に直列接続され、2次側にパルス幅変調制御(PWM制御)の電圧形インバータVSIが接続されている。
【0116】
電圧形インバータVSIは3相ブリッジ結線され、電圧制御回路VCNTにより指令値Vobに比例した交流電圧Voを発生させる。S1〜S6はGTO等の自己消弧素子で、各素子には逆並列にダイオードが接続されている。定常的には、この補償電圧Voは送電線に流れている電流Iと直交する成分を発生させ、送電線の等価的なリアクタンスを調整する。
【0117】
電圧検出器PTおよび電流検出器CTにより検出された電圧と電流を用いて有効電力Pを求める。関数発生器FXは、当該有効電力Pに対する送電線の等価リアクタンス設定値Xrの関係を与えるもので、例えば、図11に示すような特性を持つ。
【0118】
図11において、有効電力Pの絶対値に対し、等価リアクタンス指令Xrを実線のように変化させる。すなわち、有効電力Pが小さいときは、等価リアクタンス指令Xrを大きく設定し、有効電力Pが大きくなるに従って設定値Xrを小さくしていく。
【0119】
補償電圧設定器VREFは、上記等価リアクタンス設定値Xrに応じて、直列補償装置から出力する補償電圧Voの指令値Vobを求める。例えば、電流をI、送電線のリアクタンスをXLとした場合、電圧指令値Vobは、Vob=(XL−Xr)・Iのように与えられる。この結果、補償後の送電線の等価リアクタンスは、
【数2】
Xr=XL−Vob/I
となり、関数発生器FXから与えられた設定値Xrに一致させることができる。
【0120】
このように、送電線に流れる有効電力Pに応じて送電線の等価リアクタンスXrを変えることにより、電力潮流量に影響されない送電線を作ることができる。この結果、潮流量の大きさに関係なく、送電側の電圧と受電側の電圧の大きさと、位相差をほぼ一定に保つことができ、安定した系統電圧が得られる。
【0121】
なお、電圧指令値Vobは図2で示した指令値Vobと同じもので、電力動揺抑制信号Voa等と加算されて実際の補償電圧指令値Vorが与えられる。
図11において、破線は有効電力Pの絶対値に応じて段階的に等価リアクタンス設定値Xrを変えたもので、Xrの設定数を減らすことができ、簡便な方式でしかも実線の方式とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0122】
図12は、本発明の直列補償装置の別の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lは送電線のインダクタンス分、Trは直列トランス、VSIは電圧形PWM制御インバータ、Edは直流電圧源、SWu,SWv,SWwはバイパス回路、OCTは過電流検出器をそれぞれ示す。
【0123】
U相のバイパス回路SWuは、逆並列に接続された2個のサイリスタで構成され、直列トランスTrの1次側に並列接続されている。V相およびW相のバイパス回路も同様に構成されている。
【0124】
送電線の地絡事故等により過電流が流れた場合、過電流検出器OCTがそれを検知して、まず、電圧形インバータVSIの出力電圧をゼロになるように制御する。次に、前記バイパス回路SWu,SWv,SWwのサイリスタに点弧信号を与え、送電線に流れている過電流をバイパス回路に流す。このようにして、送電線の等価リアクタンスを増やして電流の増加を抑え、かつ、直列補償装置を過電流から保護することができる。また、過電流が収まった時点で、バイパス回路を開放し、直列補償装置を動作させていち早く電力動揺を抑えることができる。
なお、バイパス回路は直列トランスの2次側に設置しても同様の効果が得られる。
【0125】
図13は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、C1とC2は直列コンデンサを、CVG1とCVG2は補償電圧発生装置を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0126】
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0127】
直列コンデンサC1と補償電圧発生装置CVG1は送電線のリアクタンスX2を打ち消すような補償電圧を発生し、等価的なリアクタンスを小さくすることによりその区間の送電能力を向上させる。同様に、直列コンデンサC2と補償電圧発生装置CVG2は送電線のリアクタンスX3を打ち消すような補償電圧を発生し、等価的なリアクタンスを小さくすることによりその区間の送電能力を向上させる。また、送電線の電力動揺が発生した場合、それを抑制するように補償電圧発生装置CVG1およびCVG2から補償電圧を発生し、電力動揺を抑える。すなわち、直列コンデンサC1と補償電圧発生装置CVG1によって第1の直列補償装置を構成し、また、直列コンデンサC2と補償電圧発生装置CVG2によって第2の直列補償装置を構成している。
【0128】
図14は、図13のシステムにおける直列補償装置の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lは送電線のインダクタンス分、CAPは直列コンデンサ、Trは直列トランス、VSIは電圧形PWM制御インバータ、Edは直流電圧源、SWu,SWv,SWwはバイパス回路、OCTは過電流検出器をそれぞれ示す。
【0129】
直列コンデンサCAPは、送電線のインダクタンス分Lを打ち消すように作用する。また、補償電圧発生装置は、直列トランスTrと、電圧形自励式インバータVSIで構成され、送電線のリアクタンスを調整し、かつ、送電線の電力動揺を抑制制御する。電圧形インバータVSIは、図2に示した方式に比較すると、より小さい容量で済む。故に、より経済的な交流長距離送電を達成できる。
【0130】
バイパス回路SWu,SWv,SWwは、送電線に過電流が流れた場合、導通状態に制御され、当該過電流を流す。これにより、前記補償電圧発生装置を過電流から保護する。
【0131】
図15は、図13のシステムの動作を説明するための送電線の等価回路と、電圧電流ベクトル図を示す。
図中、Vsは送電側の電圧、Vrは受電側の電圧、Lは送電線のインダクタンス、CAPは直列コンデンサ、Iは電流、Voは補償電圧、ωは電源角周波数である。なお、送電線の抵抗分は十分小さいとして無視している。
【0132】
図15において、(a)と(b)は、直列補償装置なしの送電線の等価回路と、電圧電流ベクトル図、また、(c)と(d)は、直列補償装置を入れた場合の送電線の等価回路と、電圧電流ベクトル図を示す。
【0133】
図15(b)のベクトル図において、送電線に電流Iが流れることにより、jωL・Iの電圧降下が発生し、送電側電圧Vsと受電側電圧Vrとの間に位相差θが出る。また、電流Iが電圧Vrより遅れていた場合、電圧Vrは電圧Vsより小さくなる。
【0134】
図15(d)のベクトル図において、電流Iが流れることにより、送電線のインダクタンスLにはjωL・Iの電圧降下が発生し、直列コンデンサCAPにはI/(jωC)の電圧降下が発生する。両者は打ち消す方向に働き、送電線の等価リアクタンスは減少する。さらに、補償電圧発生装置から補償電圧Voを発生することにより、送電側電圧Vsと受電側電圧Vrの差は、図示のように小さくなり、その位相差θも小さくなる。また、電圧Vrと電圧Vsの大きさもほぼ同じになる。
【0135】
送電線に電力動揺が発生した場合、補償電圧発生装置から補償電圧を発生し、当該動揺を抑制する。
このシステムでは、補償電圧発生装置から発生する電圧は小さくて済み、そこに用いられる電力変換器(電圧形自励式インバータ等)の容量を小さくできる。
【0136】
図16は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、C1とC2は直列コンデンサを、CIG1とCIG2は補償電流発生装置を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0137】
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0138】
直列コンデンサC1と補償電流発生装置CIG1は送電線のリアクタンスX2を打ち消すような補償電圧を発生し、等価的なリアクタンスを小さくすることによりその区間の送電能力を向上させる。同様に、直列コンデンサC2と補償電流発生装置CIG2は送電線のリアクタンスX3を打ち消すような補償電圧を発生し、等価的なリアクタンスを小さくすることによりその区間の送電能力を向上させる。また、送電線の電力動揺が発生した場合、それを抑制するように補償電流発生装置CIG1およびCIG2から補償電流を発生し、電力動揺を抑える。すなわち、直列コンデンサC1と補償電流発生装置CIG1によって第1の直列補償装置を構成し、また、直列コンデンサC2と補償電流発生装置CIG2によって第2の直列補償装置を構成している。
【0139】
図17は、図16のシステムにおける直列補償装置の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lは送電線のインダクタンス分、CAPは直列コンデンサ、Trは直列トランス、CSIは電流形PWM制御インバータ、DCLは直流電流源、Cfはフィルタコンデンサ、CTは電流検出器、PTは電圧検出器、DPDは電力検出回路、DPCNTは電力変動抑制回路、ACRは電流制御回路、PWMCはPMW制御回路をそれぞれ示す。
【0140】
直列コンデンサCAPは、送電線のインダクタンス分Lを打ち消すように作用する。また、補償電流発生装置は、直列トランスTrと、電流形自励式インバータCSIで構成され、送電線のリアクタンスを調整し、かつ、送電線の電力動揺を抑制制御する。
【0141】
直列トランスTrの1次側は各相毎に直列コンデンサCAPに並列接続され、2次側にパルス幅変調制御(PWM制御)の電流形インバータCSIが接続されている。
【0142】
電流形インバータCSIは逆阻止形GTO等の自己消弧素子S1〜S6で構成され、3相ブリッジ結線されている。当該電流形インバータCSIは、PWM制御により電流指令値Icrに比例した交流電流Icを直列コンデンサCAPに供給する。フィルタコンデンサCfは、PWM制御に伴って発生する高調波電流を吸収する。直列コンデンサCAPの印加電圧Voは、送電線に流れる電流Iと上記補償電流Icの和電流によって決定され、直列補償装置としての補償電圧となる。定常的には、この補償電圧Voは送電線に流れている電流Iと直交する成分を発生させ、送電線の等価的なリアクタンスを調整する。
【0143】
Icbは補償電流発生装置の定常的な補償電流の指令値で、この値を調整することにより送電線のリアクタンスXをほぼゼロになるように調整することもできる。
一方、送電線に電力動揺が発生した場合、次のように抑制制御される。
【0144】
すなわち、電流検出器CTと電圧検出器PTで、送電線の3相交流電圧・電流を検出し、それを用いて有効電力Pと無効電力Qを求める。電力動揺があると、このPとQが変化するので、その変動分ΔPとΔQを取り出して次の電力変動抑制制御回路DPCNTに与える。有効分ΔPに応じて送電線に流れている電流Iと同相成分(または逆相成分)の補償電流(無効分)Icqを調整し、また、無効分ΔQに応じて電流Iと直交する成分の補償電流(有効分)Icpを調整する。図中、Icaはその合成補償電圧指令を示す。電力動揺が発生すると、ΔPとΔQに応じて補償電圧Icaが変化し、電力動揺を抑える。
【0145】
直流電流源Idは、別電源を用意してもよいが、ここでは、自前で直流電流源を作っている。すなわち、直流電流源として、直流リアクトルDCLを用意し、その電流Idが一定になるように制御している。まず、直流指令値Idrと直流電流検出値Idを比較し、その偏差を直流電流制御回路ACRで増幅する。ACRの出力信号Ic1rは送電線に流れている電流Iに対し直交する成分(直列コンデンサCAPに印加される電圧Voに対しては同相または逆相成分:有効分)の補償電流指令を与えることにより、直流電流Idを制御している。
【0146】
図18は、図16のシステムの動作を説明するための送電線の等価回路と電圧電流ベクトル図を示す。
図中、Vsは送電側の電圧、Vrは受電側の電圧、Lは送電線のインダクタンス、CAPは直列コンデンサ、Iは送電電流、Voは直列コンデンサCAPの印加電圧(補償電圧)、Icは補償電流、ωは電源角周波数である。なお、送電線の抵抗分は十分小さいとして無視している。
【0147】
図18(b)のベクトル図において、電流Iが流れることにより、送電線のインダクタンスLにはjωL・Iの電圧降下が発生する。また、補償電流発生装置から送電電流Iと同相成分の補償電流Icを直列コンデンサCAPに供給することにより、当該直列コンデンサCAPには、Vo=(I+Ic)/(jωC)の電圧が印加される。両者は打ち消す方向に働き、送電線の等価リアクタンスは減少する。Vo=−jωL・Iとなるように補償電流Icを調整すれば、送電線の等価リアクタンスXをほぼゼロにすることができ、図18(b)のベクトル図のように、送電側電圧Vsと受電側電圧Vrを一致させることができる。
【0148】
送電線に電力動揺が発生した場合、補償電流発生装置から補償電流Icを発生し、当該動揺を抑制する。
このシステムでは、送電電流Iは直列コンデンサCAPを通って流れ、当該直列コンデンサCAPによって送電線のインダクタンスLの大部分を打ち消すようにすれば、補償電流発生装置から発生する定常的な電流Icは小さくて済み、そこに用いられる電力変換器(電流形自励式インバータ等)の容量を小さくできる。
【0149】
また、地絡事故等により送電線に過電流が流れた場合でも、そのほとんどは直列コンデンサを介して流れるため、補償電流発生装置への影響は少ない。
【0150】
図19は、図16のシステムの直列補償装置の別の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lは送電線のインダクタンス分、CAPは直列コンデンサ、Trは直列トランス、LCIは他励式インバータ、DCLは直流電流源、CTは電流検出器、PTは電圧検出器、DPDは電力検出回路、DPCNTは電力変動抑制回路、Kは比例要素、ACRは電流制御回路、PHCは位相制御回路をそれぞれ示す。
【0151】
直列コンデンサCAPは、送電線のインダクタンス分Lを打ち消すように作用する。また、補償電流発生装置は、直列トランスTrと、他励式インバータLCIで構成され、送電線のリアクタンスを調整し、かつ、送電線の電力動揺を抑制制御する。
【0152】
直列トランスTrの1次側は各相毎に直列コンデンサCAPに並列接続され、2次側に他励式インバータLCIが接続されている。
【0153】
他励式インバータLCIは6個のサイリスタS1〜S6で構成され、3相ブリッジ結線されている。当該他励式インバータLCIは、直列コンデンサCAPの印加電圧を利用して自然転流するもので、直流電流Idの大きさを調整することにより必要な補償電流Icを直列コンデンサCAPに供給する。なお、図19では、補償電流Icの向きを逆にしているため、直列コンデンサCAPの印加電圧Voは、送電線に流れる電流Iと上記補償電流Icの差電流によって決定され、直列補償装置としての補償電圧となる。定常的には、この補償電圧Voは送電線に流れている電流Iと直交する成分を発生させ、送電線の等価的なリアクタンスを調整する。
【0154】
Icbは補償電流発生装置の定常的な補償電流の指令値で、この値を調整することにより送電線のリアクタンスXをほぼゼロになるように調整することもできる。
【0155】
直流電流源Idは、別電源を用意してもよいが、ここでは、自前で直流電流源を作っている。すなわち、直流電流源として、直流リアクトルDCLを用意し、その電流Idが一定になるように制御している。まず、直流指令値Idrと直流電圧検出値Idを比較し、その偏差を直流電流制御回路ACRで増幅する。ACRの出力信号v*は他励式インバータの位相制御入力信号となり、サイリスタの点弧制御角αを制御する。位相角αは、直列コンデンサCAPの印加電圧Voに対する補償電流Icの遅れ角となる。
【0156】
v*=0のとき、α=90°となり、LCIの直流電圧Vdはゼロとなる。
Idr>Idのとき、v*>0となり、位相角α<90°となって、LCIの直流電圧Vdは正となり、直流リアクトルDCLに流れる電流Idを増加させる。
【0157】
また、Idr<Idのとき、v*<0となり、α>90°となって、LCIの直流電圧Vdは負となり、直流リアクトルDCLに流れる電流Idを減少させる。
このようにして、直流リアクトルDCLに流れる電流Idを制御することができる。直流電流Idを増加させれば、それに比例して補償電流Icの大きさを変えることができる。
【0158】
定常的には、v*=0となり、補償電流Icは直列コンデンサCAPの印加電圧Voに対してほぼ90°遅れた電流となる。従って、Icは送電電流Iと逆相となり、直列コンデンサCAPの印加電圧は、Vo=(I−Ic)/(jωC)で、Icを増やせばVoは大きくなる。
【0159】
一方、送電線に電力動揺が発生した場合、次のように抑制制御される。
すなわち、電流検出器CTと電圧検出器PTで、送電線の3相交流電圧・電流を検出し、それを用いて有効電力Pと無効電力Qを求める。電力動揺があると、このPとQが変化するので、その変動分ΔPとΔQを取り出して次の電力変動抑制制御回路DPCNTに与える。有効分ΔPに応じて直流電流指令Idrを調整し、また、無効分ΔQに応じて位相制御入力信号v*を調整する。電力動揺が発生すると、ΔPとΔQに応じて補償電流Icの大きさと位相角αを変化させ、電力動揺を抑えることができる。なお、図19では、有効電力変動分ΔPに応じて直流電流指令Idrだけを調整した場合を示している。
【0160】
図20は、図19の直列補償装置の動作を説明するための送電線の等価回路と、電圧電流ベクトル図を示す。
【0161】
送電線に電流Iが流れると、インダクタンスLによる電圧降下jωL・Iが発生し、かつ、直列コンデンサCAPにも、I/(jωC)の電圧が加わる。この電圧は上記インダクタンスLの電圧降下分を打ち消す方向に働き、送電線の等価的なリアクタンスを低減させる。他励式インバータLCIは、直列コンデンサCAPの印加電圧Voに対し、常に遅れの電流Icをとり、定常的にはIcはVoに対し、90°遅れとなっている。故に、補償電流Icの向きを図19の方向に定めた場合、Icと送電電流Iは同相となる。従って、補償電流Icを流すことにより、直列コンデンサCAPに流れる電流I−Icは増加し、その印加電圧(補償電圧)Voも増加する。
【0162】
図21は、図16のシステムの直列補償装置のさらに別の実施の形態を示す構成図である。
【0163】
図中、UVWは3相交流送電線、Lは送電線のインダクタンス分、CAPは直列コンデンサ、Trは直列トランス、Lfはフィルタリアクトル、VSIは電流制御形インバータ、Edは直流電圧源、CTとCTcは電流検出器、PTは電圧検出器、DPDは電力検出器,DPCNTは電力変動抑制制御回路、AVRは電圧制御回路、ACRは電流制御回路、PWMCはパルス幅変調(PWM)制御回路をそれぞれ示す。
【0164】
直列トランスTrの1次側は各相毎に直列コンデンサCAPに並列接続され、2次側にフィルタリアクトルLfを介して、パルス幅変調制御(PWM制御)の電流制御形インバータVSIが接続されている。
【0165】
電流制御形インバータVSIは、GTO等の自己消弧素子S1〜S6と、各素子に逆並列に接続されたダイオードで構成され、3相ブリッジ結線されている。当該電流制御形インバータVSIは、電流指令値Icrと、フィルタリアクトルLfに流れる電流Icの検出値を比較し、フィードバック制御する。インバータの出力電流Icは、直列コンデンサCAPに供給され、当該直列コンデンサCAPの印加電圧Voを制御する。
【0166】
直列コンデンサCAPの印加電圧Voは、送電線に流れる電流Iと上記補償電流Icの和電流によって決定され、直列補償装置としての補償電圧となる。定常的には、この補償電圧Voは送電線に流れている電流Iと直交する成分を発生させ、送電線の等価的なリアクタンスを調整する。
【0167】
Icbは補償電流発生装置の定常的な補償電流の指令値で、この値を調整することにより送電線のリアクタンスXをほぼゼロになるように調整することもできる。
一方、送電線に電力動揺が発生した場合、次のように抑制制御される。
【0168】
すなわち、電流検出器CTと電圧検出器PTで、送電線の3相交流電圧・電流を検出し、それを用いて有効電力Pと無効電力Qを求める。電力動揺があると、このPとQが変化するので、その変動分ΔPとΔQを取り出して次の電力変動抑制制御回路DPCNTに与える。有効分ΔPに応じて送電線に流れている電流Iと同相成分(または逆相成分)の補償電流圧Icqを調整し、また、無効分ΔQに応じて電流Iと直交する成分の補償電流Icpを調整する。図中、Icaはその合成補償電圧指令を示す。電力動揺が発生すると、ΔPとΔQに応じて補償電圧Icaが変化し、電力動揺を抑える。
【0169】
直流電圧源Edは、別電源を用意してもよいが、ここでは、自前で直流電圧源を作っている。すなわち、直流電圧源として、直流平滑コンデンサCdを用意し、その印加電圧Edが一定になるように制御している。まず、直流電圧指令値Edrと直流電圧検出値Edを比較し、その偏差を直流電圧制御回路AVRで増幅する。AVRの出力信号Ic1rは送電線に流れている電流Iに対し直交する成分(直列コンデンサCAPに印加される電圧Voに対しては同相または逆相成分)の補償電流指令を与えることにより、直流電圧Edを制御している。
【0170】
図22は、図16のシステムの直列補償装置のさらにまた別の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lは送電線のインダクタンス分、Trは直列トランス、CAPは直列コンデンサ、Lfはフィルタリアクトル、VSIは電流制御形インバータ、Edは直流電圧源、SWu,SWv,SWwはサイリスタスイッチで構成されるバイパス回路、OCTは過電流検出回路をそれぞれ示す。
【0171】
直列トランスTrの1次側は各相毎に送電線に直列接続され、2次側に直列コンデンサCAPが接続されている。また、当該直列コンデンサCAPに、フィルタリアクトルLfを介して、パルス幅変調制御(PWM制御)の電流制御形インバータVSIが接続されている。
【0172】
電流制御形インバータVSIは、GTO等の自己消弧素子S1〜S6と、各素子に逆並列に接続されたダイオードで構成され、3相ブリッジ結線されている。当該電流制御形インバータVSIは、フィルタリアクトルLfに流れる電流Icを検出し、電流指令値Icrに一致するようにフィードバック制御する。インバータの出力電流Icは、直列コンデンサCAPに供給され、当該直列コンデンサCAPの印加電圧Voを制御する。
【0173】
直列コンデンサCAPの印加電圧Voは、送電線に流れる電流Iと上記補償電流Icの和電流によって決定され、直列補償装置としての補償電圧となる。定常的には、この補償電圧Voは送電線に流れている電流Iと直交する成分を発生させ、送電線の等価的なリアクタンスを調整する。
U相のバイパス回路SWuは、逆並列に接続された2個のサイリスタで構成され、直列トランスTrの1次側に並列接続されている。V相およびW相のバイパス回路も同様に構成されている。
【0174】
送電線の地絡事故等により過電流が流れた場合、過電流検出器OCTがそれを検知して、前記バイパス回路SWu,SWv,SWwのサイリスタに点弧信号を与え、送電線に流れている過電流をバイパス回路に流す。このようにして、送電線の等価リアクタンスを増やして電流の増加を抑え、かつ、直列補償装置を過電流から保護することができる。
【0175】
また、過電流が収まった時点で、バイパス回路を開放し、直列補償装置を動作させていち早く電力動揺を抑えることができる。
なお、バイパス回路は直列トランスの2次側に設置しても同様の効果が得られる。
【0176】
図23は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、C1とC2は主直列コンデンサを、Ca1とCa2は補助直列コンデンサを、CIG1とCIG2は補償電流発生装置を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0177】
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0178】
主直列コンデンサCa1と、補助直列コンデンサCa1および補償電流発生装置CIG1は送電線のリアクタンスX2を打ち消すような補償電圧を発生し、等価的なリアクタンスを小さくすることによりその区間の送電能力を向上させる。同様に、主直列コンデンサC2と、補助直列コンデンサCa2および補償電流発生装置CIG2は送電線のリアクタンスX3を打ち消すような補償電圧を発生し、等価的なリアクタンスを小さくすることによりその区間の送電能力を向上させる。
【0179】
また、送電線の電力動揺が発生した場合、それを抑制するように補償電流発生装置CIG1およびCIG2から補償電流を発生し、電力動揺を抑える。すなわち、主直列コンデンサC1と、補助直列コンデンサCa1および補償電流発生装置CIG1によって第1の直列補償装置を構成し、また、主直列コンデンサC2と補助直列コンデンサCa2および補償電流発生装置CIG2によって第2の直列補償装置を構成している。
【0180】
図24は、図23のシステムの直列補償装置の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lは送電線のインダクタンス分、CAPは主直列コンデンサ、CAPaは補助直列コンデンサ、Trは直列トランス、Lfはフィルタリアクトル、VSIは電流制御形インバータ、Edは直流電圧源、CTは電流検出器、PTは電圧検出器、DPDは電力検出器,DPCNTは電力変動抑制制御回路、AVRは電圧制御回路、ACRは電流制御回路、PWMCはパルス幅変調(PWM)制御回路をそれぞれ示す。
【0181】
直列トランスTrの1次側は各相毎に補助直列コンデンサCAPaに並列接続され、その2次側にフィルタリアクトルLfを介して、パルス幅変調制御(PWM制御)の電流制御形インバータVSIが接続されている。
【0182】
電流制御形インバータVSIは、GTO等の自己消弧素子S1〜S6と、各素子に逆並列に接続されたダイオードで構成され、3相ブリッジ結線されている。当該電流制御形インバータVSIは、電流指令値Icrと、フィルタリアクトルLfに流れる電流Icの検出値を比較し、フィードバック制御する。インバータの出力電流Icは、補助直列コンデンサCAPaに供給され、当該補助直列コンデンサCAPaの印加電圧Voを制御する。
【0183】
補助直列コンデンサCAPaの印加電圧Voは、送電線に流れる電流Iと上記補償電流Icの和電流によって決定され、直列補償装置としての補償電圧となる。定常的には、この補償電圧Voは送電線に流れている電流Iと直交する成分を発生させ、送電線の等価的なリアクタンスを調整する。
【0184】
一方、主直列コンデンサCAPには、送電電流Iが流れることにより、送電線のインダクタンスLの電圧降下を打ち消す電圧が発生し、送電線の等価的なリアクタンスXを減少させる働きをする。
【0185】
Icbは補償電流発生装置の定常的な補償電流の指令値で、この値を調整することにより、主直列コンデンサCAPと合わせて、送電線の等価的なリアクタンスXをほぼゼロになるように調整することもできる。
一方、送電線に電力動揺が発生した場合、次のように抑制制御される。
【0186】
すなわち、電流検出器CTと電圧検出器PTで、送電線の3相交流電圧・電流を検出し、それを用いて有効電力Pと無効電力Qを求める。電力動揺があると、このPとQが変化するので、その変動分ΔPとΔQを取り出して次の電力変動抑制制御回路DPCNTに与える。有効分ΔPに応じて送電線に流れている電流Iと同相成分(または逆相成分)の補償電流圧Icqを調整し、また、無効分ΔQに応じて電流Iと直交する成分の補償電流Icpを調整する。図中、Icaはその合成補償電圧指令を示す。電力動揺が発生すると、ΔPとΔQに応じて補償電圧Icaが変化し、電力動揺を抑える。
【0187】
直流電圧源Edは、別電源を用意してもよいが、ここでは、自前で直流電圧源を作っている。すなわち、直流電圧源として、直流平滑コンデンサCdを用意し、その印加電圧Edが一定になるように制御している。まず、直流電圧指令値Edrと直流電圧検出値Edを比較し、その偏差を直流電圧制御回路AVRで増幅する。AVRの出力信号Ic1rは送電線に流れている電流Iに対し直交する成分(補助直列コンデンサCAPaに印加される電圧Voに対しては同相または逆相成分)の補償電流指令を与えることにより、直流電圧Edを制御している。
【0188】
図25は、図23のシステムの動作を説明するための送電線の等価回路と、電圧電流ベクトル図を示す。
図中、Vsは送電側の電圧、Vrは受電側の電圧、Lは送電線のインダクタンス、CAPは主直列コンデンサ、CAPaは補助直列コンデンサ、Iは送電電流、Voは補助直列コンデンサCAPaの印加電圧(補償電圧)、Icは補償電流、ωは電源角周波数である。なお、送電線の抵抗分は十分小さいとして無視している。
【0189】
図25(b)のベクトル図において、電流Iが流れることにより、送電線のインダクタンスLにはjωL・Iの電圧降下が発生する。また、主直列コンデンサCAPには、電流Iによって、I/(jωC)の電圧が発生する。両者は打ち消す方向に働き、送電線の等価リアクタンスは減少する。さらに、補償電流発生装置から送電電流Iと同相成分の補償電流Icを補助直列コンデンサCAPaに供給することにより、当該補助直列コンデンサCAPaには、Vo=(I+Ic)/(jωCa)の電圧が印加される。
【0190】
よって、Vo=−j(ωL−1/ωC)・Iとなるように前記補償電流Icを調整すれば、送電線の等価リアクタンスXをほぼゼロにすることができ、図25(b)のベクトル図のように、送電側電圧Vsと受電側電圧Vrを一致させることができる。
送電線に電力動揺が発生した場合、補償電流発生装置から補償電流Icを発生し、当該動揺を抑制する。
【0191】
このシステムでは、送電電流Iは主直列コンデンサCAPを通って流れ、当該主直列コンデンサCAPによって送電線のインダクタンスLの大部分を打ち消すようにすれば、補償電流発生装置から発生する定常的な電流Icは小さくて済み、そこに用いられる電力変換器(電流形自励式インバータ等)の容量を小さくできる。
【0192】
また、地絡事故等により送電線に過電流が流れた場合でも、そのほとんどは補助直列コンデンサCAPaを介して流れるため、補償電流発生装置への影響は少ない。
【0193】
図26は、図23のシステムの直列補償装置の別の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lは送電線のインダクタンス分、CAPは主直列コンデンサ、CAPaは補助直列コンデンサ、Trは直列トランス、LCIは他励式インバータ、DCLは直流電流源、CTは電流検出器、PTは電圧検出器、DPDは電力検出回路、DPCNTは電力変動抑制回路、Kは比例要素、ACRは電流制御回路、PHCは位相制御回路をそれぞれ示す。
【0194】
主直列コンデンサCAPおよび補助直列コンデンサCAPaは、送電線のインダクタンス分Lを打ち消すように作用する。また、直列トランスTrは、その1次巻線が補助直列コンデンサCAPaに並列接続され、2次側には他励式インバータが接続されている。補償電流発生装置は、直列トランスTrと、他励式インバータLCIで構成され、送電線のリアクタンスを調整し、かつ、送電線の電力動揺を抑制制御する。
【0195】
他励式インバータLCIは6個のサイリスタS1〜S6で構成され、3相ブリッジ結線されている。当該他励式インバータLCIは、補助直列コンデンサCAPaの印加電圧を利用して自然転流するもので、直流電流Idの大きさを調整することにより必要な補償電流Icを補助直列コンデンサCAPaに供給する。補償電流の向きを図26の方向に定めると、補助直列コンデンサCAPaの印加電圧Voは、送電線に流れる電流Iと上記補償電流Icの差電流によって決定される。定常的には、この補償電圧Voは送電線に流れている電流Iと直交する成分を発生させ、送電線の等価的なリアクタンスを調整する。
【0196】
Icbは補償電流発生装置の定常的な補償電流の指令値で、この値を調整することにより、主直列コンデンサCAPと合わせて、送電線のリアクタンスXをほぼゼロになるように調整することもできる。
【0197】
直流電流源Idは、別電源を用意してもよいが、ここでは、自前で直流電流源を作っている。すなわち、直流電流源として、直流リアクトルDCLを用意し、その電流Idが一定になるように制御している。まず、直流指令値Idrと直流電圧検出値Idを比較し、その偏差を直流電流制御回路ACRで増幅する。ACRの出力信号v*は他励式インバータの位相制御入力信号となり、サイリスタの点弧制御角αを制御する。位相角αは、補助直列コンデンサCAPaの印加電圧Voに対する補償電流Icの遅れ角となる。
【0198】
v*=0のとき、α=90°となり、LCIの直流電圧Vdはゼロとなる。
Idr>Idのとき、v*>0となり、位相角α<90°となって、LCIの直流電圧Vdは正となり、直流リアクトルDCLに流れる電流Idを増加させる。
【0199】
また、Idr<Idのとき、v*<0となり、α>90°となって、LCIの直流電圧Vdは負となり、直流リアクトルDCLに流れる電流Idを減少させる。
このようにして、直流リアクトルDCLに流れる電流Idを制御することができる。直流電流Icを増加させれば、それに比例して補償電流Icの大きさを変えることができる。
【0200】
定常的には、v*=0となり、補償電流Icは補助直列コンデンサCAPaの印加電圧Voに対してほぼ90°遅れた電流となる。ゆえに、IcはIと逆相となり、補助直列コンデンサCAPaの印加電圧Voは、(I−Ic)に比例し、Icを大きくすれば、Voは増加する。
一方、送電線に電力動揺が発生した場合、次のように抑制制御される。
【0201】
すなわち、電流検出器CTと電圧検出器PTで、送電線の3相交流電圧・電流を検出し、それを用いて有効電力Pと無効電力Qを求める。電力動揺があると、このPとQが変化するので、その変動分ΔPとΔQを取り出して次の電力変動抑制制御回路DPCNTに与える。有効分ΔPに応じて直流電流指令Idrを調整し、また、無効分ΔQに応じて位相制御入力信号v*を調整する。電力動揺が発生すると、ΔPとΔQに応じて補償電流Icの大きさと位相角αを変化させ、電力動揺を抑えることができる。なお、図26では、ΔPに応じてIdrを調整する場合を示している。
【0202】
このシステムでは、送電電流Iは主直列コンデンサCAPを通って流れ、当該主直列コンデンサCAPによって送電線のインダクタンスLの大部分を打ち消すようにすれば、補償電流発生装置から発生する定常的な電流Icは小さくて済み、そこに用いられる電力変換器の容量を小さくできる。
【0203】
また、地絡事故等により送電線に過電流が流れた場合でも、そのほとんどは補助直列コンデンサCAPaを介して流れるため、補償電流発生装置への影響は少ない。
【0204】
図27は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、C1,C3,C4は直列コンデンサ、CVG2は補償電圧発生装置を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0205】
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0206】
直列コンデンサC1は発電所Gと変電所SS1間の送電線のリアクタンスX1を補償し、直列コンデンサC3は変電所SS2と変電所SS4間の送電線のリアクタンスX3を補償し、さらに、直列コンデンサC4は変電所SS4と変電所SS5間の送電線のリアクタンスを補償するようにその値が選ばれる。また、補償電圧発生装置CVG2は、変電所SS1とSS2間のリアクタンスX2を補償する電圧を発生し、かつ、送電経路全体の電力動揺を抑制制御する。これにより、複数の変電所を介した長距離の送電経路全体の等価リアクタンスを低減し、送電能力を向上させ、かつ、電力系統の安定化を図ることができる。
【0207】
図28は、図27のシステムの動作を説明するための系統の等価回路図と、電圧電流ベクトル図を示す。
図中、Iは送電電流、V1〜V4は各変電所における電圧、X1〜X3は各送電線のリアクタンス、C1とC3は直列コンデンサ、Voは補償電圧発生装置の出力電圧、LOADは負荷、ωは電源の角周波数を表わしている。
【0208】
図28(b)は、このように各送電線のリアクタンスがほぼゼロになるように補償したもので、各変電所の電圧V1〜V4を一致させることができる。
すなわち、変電所V1とV2の間の送電線では、直列コンデンサC1によって、送電線のリアクタンスX1を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数3】
I/(jωC1)=−jX1・I
となるようにコンデンサC1の容量を決める。これで、V1とV2を一致させることができる。
【0209】
また、変電所V2とV3の間の送電線では、補償電圧装置の補償電圧Voによって送電線のリアクタンスX2を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数4】
Vo=−jX2・I
となるように補償電圧Voを与える。これで、V2とV3を一致させることができる。
【0210】
同様に、変電所V3とV4の間の送電線では、直列コンデンサC3によって、送電線のリアクタンスX3を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数5】
I/(jωC3)=−jX3・I
となるようにコンデンサC3の容量を決める。これで、V3とV4を一致させることができる。
【0211】
このようにして、図28(b)のベクトル図に示すように各変電所の電圧を、V1=V2=V3=V4となるようにすることができる。
交流長距離送電システムにおいて、すべての送電線のリアクタンスを直列コンデンサだけで補償しようとすると、LC共振により系統が不安定になってしまう。系統の安定化を図るため、補償電圧発生装置が機能する。補償電圧発生装置を必要最小限の数だけ設置することにより、システムコストを安くすることができ、より経済的な交流長距離送電システムを提供することが可能となる。
【0212】
図29は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、C1,C3,C4は直列コンデンサ、CVG2は補償電圧発生装置を、SW1〜SW4はバイパス回路を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0213】
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0214】
直列コンデンサC1は発電所Gと変電所SS1間の送電線のリアクタンスX1を補償し、直列コンデンサC3は変電所SS2と変電所SS4間の送電線のリアクタンスX3を補償し、さらに、直列コンデンサC4は変電所SS4と変電所SS5間の送電線のリアクタンスX4を補償するようにその値が選ばれる。また、補償電圧発生装置CVG2は、変電所SS1とSS2間のリアクタンスX2を補償する電圧を発生し、かつ、送電経路全体の電力動揺を抑制制御する。
【0215】
これにより、複数の変電所を介した長距離の送電経路全体の等価リアクタンスを低減し、送電能力を向上させ、かつ、電力系統の安定化を図ることができる。
【0216】
送電線の地絡事故等により過電流が発生した場合、直列コンデンサC1,C3,C4のバイパス回路SW1,SW3,SW4と、補償電圧発生装置CVG2のバイパス回路SW2を閉じて、過電流がバイパス回路SW1〜SW4に流れるようにする。これにより、送電線のリアクタンスは元の値X1〜X4にもどり、過電流が増大するのを防止できる。また、直列コンデンサや、補償電圧発生装置への過電流を防止でき、システムの信頼性を高めることができる。
【0217】
図30は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、C1,C2,C3,C4は直列コンデンサ、CVG2は補償電圧発生装置を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0218】
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0219】
直列コンデンサC1は発電所Gと変電所SS1間の送電線のリアクタンスX1を補償し、直列コンデンサC3は変電所SS2と変電所SS4間の送電線のリアクタンスX3を補償し、さらに、直列コンデンサC4は変電所SS4と変電所SS5間の送電線のリアクタンスX4を補償するようにその値が選ばれる。また、直列コンデンサC2と補償電圧発生装置CVG2は、変電所SS1とSS2間のリアクタンスX2を補償する電圧を発生し、かつ、送電経路全体の電力動揺を抑制制御する。
【0220】
すなわち、送電経路のリアクタンスをほぼゼロになるようにした場合、次のように補償する。
まず、発電所Gと変電所SS1の間の送電線では、直列コンデンサC1によって、送電線のリアクタンスX1を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数6】
I/(jωC1)=−jX1・I
となるようにコンデンサC1の容量を決める。これで、発電所Gの電圧と変電所SS1の電圧をほぼ一致させることができる。
【0221】
また、変電所SS1と変電所SS2の間の送電線では、直列コンデンサC2と補償電圧発生装置CVG2によって、送電線のリアクタンスX2を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数7】
Vo+I/(jωC2)=−jX2・I
となるようにコンデンサC2の容量と補償電圧Voを決める。これで、変電所SS1の電圧と変電所SS2の電圧をほぼ一致させることができる。
【0222】
変電所SS2と変電所SS4の間の送電線では、直列コンデンサC3によって、送電線のリアクタンスX3を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数8】
I/(jωC3)=−jX3・I
となるようにコンデンサC3の容量を決める。これで、変電所SS2の電圧と変電所SS4の電圧をほぼ一致させることができる。
【0223】
変電所SS4と変電所SS5の間の送電線では、直列コンデンサC4によって、送電線のリアクタンスX4を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数9】
I/(jωC4)=−jX4・I
となるようにコンデンサC4の容量を決める。これで、変電所SS4の電圧と変電所SS5の電圧をほぼ一致させることができる。
【0224】
これにより、複数の変電所を介した長距離の送電経路全体の等価リアクタンスを低減し、送電能力を向上させ、かつ、電力系統の安定化を図ることができる。
【0225】
交流長距離送電システムにおいて、すべての送電線のリアクタンスを直列コンデンサだけで補償しようとすると、LC共振により系統が不安定になってしまう。系統の安定化を図るため、補償電圧発生装置が機能する。補償電圧発生装置を必要最小限の数だけ設置することにより、システムコストを安くすることができ、より経済的な交流長距離送電システムを提供することが可能となる。また、補償電圧発生装置の容量は、直列コンデンサC2が送電線のリアクタンスX2の大部分を打ち消すようにすれば、補償電圧発生装置から発生する定常的な電流は小さくて済み、小さくすることができる。
【0226】
なお、図示していないが、上記複数の直列コンデンサおよび補償電圧発生装置に、バイパス回路を設置し、送電線の地絡事故等により過電流が発生した場合、当該バイパス回路を介して過電流を流す。これにより、送電線のリアクタンスは元の値にもどり、過電流が増大するのを防止できる。また、直列コンデンサや、補償電圧発生装置への過電流を防止でき、システムの信頼性を高めることができる。
【0227】
図31は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、C1,C2,C3,C4は直列コンデンサ、CIGは補償電流発生装置を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0228】
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0229】
直列コンデンサC1は発電所Gと変電所SS1間の送電線のリアクタンスX1を補償し、直列コンデンサC2は変電所SS1と変電所SS2間の送電線のリアクタンスX2を補償し、さらに、直列コンデンサC4は変電所SS4と変電所SS5間の送電線のリアクタンスX4を補償するようにその値が選ばれる。また、直列コンデンサC3と補償電流発生装置CIVは、変電所SS2と変電所SS4間のリアクタンスX3を補償する電圧を発生し、かつ、送電経路全体の電力動揺を抑制制御する。
【0230】
すなわち、送電経路のリアクタンスをほぼゼロになるようにした場合、次のように補償する。
まず、発電所Gと変電所SS1の間の送電線では、直列コンデンサC1によって、送電線のリアクタンスX1を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数10】
I/(jωC1)=−jX1・I
となるようにコンデンサC1の容量を決める。これで、発電所Gの電圧と変電所SS1の電圧をほぼ一致させることができる。
【0231】
変電所SS1と変電所SS2の間の送電線では、直列コンデンサC2によって、送電線のリアクタンスX2を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数11】
I/(jωC2)=−jX2・I
となるようにコンデンサC2の容量を決める。これで、変電所SS1の電圧と変電所SS2の電圧をほぼ一致させることができる。
【0232】
また、変電所SS2と変電所SS4の間の送電線では、直列コンデンサC3と補償電流発生装置CIGによって、送電線のリアクタンスX3を補償する。すなわち、送電線の電流をI、補償電流発生装置CIGからの補償電流をIcとした場合、
【数12】
(Ic+I)/(jωC3)=−jX3・I
となるようにコンデンサC3の容量と補償電流Icを決める。これで、変電所SS2の電圧と変電所SS4の電圧をほぼ一致させることができる。
【0233】
変電所SS4と変電所SS5の間の送電線では、直列コンデンサC4によって、送電線のリアクタンスX4を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数13】
I/(jωC4)=−jX4・I
となるようにコンデンサC4の容量を決める。これで、変電所SS4の電圧と変電所SS5の電圧をほぼ一致させることができる。
【0234】
これにより、複数の変電所を介した長距離の送電経路全体の等価リアクタンスを低減し、送電能力を向上させ、かつ、電力系統の安定化を図ることができる。交流長距離送電システムにおいて、すべての送電線のリアクタンスを直列コンデンサだけで補償しようとすると、LC共振により系統が不安定になってしまう。系統の安定化を図るため、補償電流発生装置が機能する。補償電流発生装置を必要最小限の数だけ設置することにより、システムコストを安くすることができ、より経済的な交流長距離送電システムを提供することが可能となる。
【0235】
図32は、本発明
の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、C1,C2,C3,C4は直列コンデンサを、CIGは補償電流発生装置を、SW1〜SW4はバイパス回路を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0236】
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0237】
直列コンデンサC1は発電所Gと変電所SS1間の送電線のリアクタンスX1を補償し、直列コンデンサC2は変電所SS1と変電所SS2間の送電線のリアクタンスX2を補償し、さらに、直列コンデンサC4は変電所SS4と変電所SS5間の送電線のリアクタンスX4を補償するようにその値が選ばれる。また、直列コンデンサC3と補償電流発生装置CIVは、変電所SS2と変電所SS4間のリアクタンスX3を補償する電圧を発生し、かつ、送電経路全体の電力動揺を抑制制御する。
【0238】
これにより、複数の変電所を介した長距離の送電経路全体の等価リアクタンスを低減し、送電能力を向上させ、かつ、電力系統の安定化を図ることができる。
【0239】
送電線の地絡事故等により過電流が発生した場合、直列コンデンサC1,C2,C3,C4のバイパス回路SW1,SW2,SW3,SW4を閉じて、過電流がバイパス回路SW1〜SW4に流れるようにする。これにより、送電線のリアクタンスは元の値X1〜X4にもどり、過電流が増大するのを防止できる。また、直列コンデンサや、補償電流発生装置への過電流を防止でき、システムの信頼性を高めることができる。
【0240】
図33は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、C1,C2,C3,C4は主直列コンデンサ、Ca2は補助直列コンデンサ、CIGは補償電流発生装置を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0241】
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0242】
主直列コンデンサC1は発電所Gと変電所SS1間の送電線のリアクタンスX1を補償し、主直列コンデンサC2と補助直列コンデンサCa2および補償電流発生装置CIGは変電所SS1と変電所SS2間の送電線のリアクタンスX2を補償し、主直列コンデンサC3は変電所SS2と変電所SS4間のリアクタンスX3を補償し、さらに、主直列コンデンサC4は変電所SS4と変電所SS5間の送電線のリアクタンスX4を補償するようにその値が選ばれる。また、補助直列コンデンサCa2と補償電流発生装置CIVは、送電経路全体の電力動揺を抑制制御する。
【0243】
すなわち、送電経路のリアクタンスをほぼゼロになるようにした場合、次のように補償する。
まず、発電所Gと変電所SS1の間の送電線では、主直列コンデンサC1によって、送電線のリアクタンスX1を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数14】
I/(jωC1)=−jX1・I
となるようにコンデンサC1の容量を決める。これで、発電所Gの電圧と変電所SS1の電圧をほぼ一致させることができる。
【0244】
また、変電所SS1と変電所SS2の間の送電線では、主直列コンデンサC2と補助直列コンデンサCa2と補償電流発生装置CIGによって、送電線のリアクタンスX2を補償する。すなわち、送電線の電流をI、補償電流発生装置CIGからの補償電流をIcとした場合、
【数15】
I/(jωC2)+(Ic+I)/(jωCa2)=−jX2・I
となるように主直列コンデンサC2の容量と補助直列コンデンサCa2の容量および補償電流Icを決める。これで、変電所SS1の電圧と変電所SS2の電圧をほぼ一致させることができる。
【0245】
変電所SS2と変電所SS4の間の送電線では、主直列コンデンサC3によって、送電線のリアクタンスX3を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数16】
I/(jωC3)=−jX3・I
となるように主直列コンデンサC3の容量を決める。これで、変電所SS2の電圧と変電所SS4の電圧をほぼ一致させることができる。
【0246】
変電所SS4と変電所SS5の間の送電線では、主直列コンデンサC4によって、送電線のリアクタンスX4を補償する。すなわち、送電線の電流をIとした場合、
【数17】
I/(jωC4)=−jX4・I
となるように主直列コンデンサC4の容量を決める。これで、変電所SS4の電圧と変電所SS5の電圧をほぼ一致させることができる。
これにより、複数の変電所を介した長距離の送電経路全体の等価リアクタンスを低減し、送電能力を向上させ、かつ、電力系統の安定化を図ることができる。
【0247】
交流長距離送電システムにおいて、すべての送電線のリアクタンスを主直列コンデンサだけで補償しようとすると、LC共振により系統が不安定になってしまう。系統の安定化を図るため、補助直列コンデンサと、補償電流発生装置が機能する。補助直列コンデンサと補償電流発生装置を必要最小限の数だけ設置することにより、システムコストを安くすることができ、より経済的な交流長距離送電システムを提供することが可能となる。また、補償電流発生装置の容量は、主直列コンデンサC2が送電線のリアクタンスX2の大部分を打ち消すようにすれば、補償電流発生装置から発生する定常的な電流は小さくて済み、小さくすることができる。
【0248】
図34は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所を、SS1〜SS5は変電所を、LOAD1〜LOAD4は負荷を、C1,C2,C3,C4は主直列コンデンサを、Ca2は補助直列コンデンサを、CIGは補償電流発生装置を、SW1〜SW4およびSWa2はバイパス回路を、X1〜X4は送電線のリアクタンスをそれぞれ示す。
【0249】
発電所Gで発電された電力は複数の変電所SS1→SS2→SS4→SS5を介して、大口消費地である負荷LOAD4まで長距離送電される。
【0250】
主直列コンデンサC1は発電所Gと変電所SS1間の送電線のリアクタンスX1を補償し、主直列コンデンサC2と補助直列コンデンサCa2および補償電流発生装置CIGは変電所SS1と変電所SS2間の送電線のリアクタンスX2を補償し、主直列コンデンサC3は変電所SS2と変電所SS4間のリアクタンスX3を補償し、さらに、主直列コンデンサC4は変電所SS4と変電所SS5間の送電線のリアクタンスX4を補償するようにその値が選ばれる。また、補助直列コンデンサCa2と補償電流発生装置CIVは、送電経路全体の電力動揺を抑制制御する。
【0251】
これにより、複数の変電所を介した長距離の送電経路全体の等価リアクタンスを低減し、送電能力を向上させ、かつ、電力系統の安定化を図ることができる。
【0252】
送電線の地絡事故等により過電流が発生した場合、主直列コンデンサC1,C2,C3,C4のバイパス回路SW1 ,SW2,SW3,SW4と補助直列コンデンサCa2のバイパス回路SWa2を閉じて、過電流がバイパス回路SW1〜SW4およびSWa2に流れるようにする。これにより、送電線のリアクタンスは元の値X1〜X4にもどり、過電流が増大するのを防止できる。また、主直列コンデンサや、補助直列コンデンサおよび補償電流発生装置への過電流を防止でき、システムの信頼性を高めることができる。
【0253】
図35は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所、SSは変電所、L1,L2は送電線のインダクタンス、Cq1,Cq2は送電線の浮遊キャパシタンス、SVGは無効電力補償装置、SCGは直列補償装置、SWはバイパス回路、CSIは電流形インバータ、VSIは電圧形インバータ、PDは電力検出器、CONT1はVSIの制御回路、CONT2はCSIの制御回路をそれぞれ示す。
【0254】
送電線間および送電線とアース間には、浮遊キャパシタンスがあり、送電距離が長くなると、それが無視できなくなる。浮遊キャパシタンスは分布定数であるが、ここでは、Cq1とCq2の集中定数として表わしている。また、送電線のインダクタンスもL1とL2の2つに分けて示している。浮遊キャパシタンスCq1,Cq2には進み電流Iqが流れ、その進み電流を補償するために無効電力補償装置SVGを設置する。また、送電線のインダクタンス分L1+L2を補償するために直列補償装置SCGを設置している。
【0255】
直列補償装置SCGは、送電線のインダクタンスL1+L2による電圧降下を補償するように、次の補償電圧Voを出力する。ただし、Iは送電線に流れている電流である。
【数18】
Vo=−jω(L1+L2)・I
また、無効電力補償装置SVGは、浮遊キャパシタンスCq1とCq2に流れる進み電流Iqに対し、それを打ち消す補償電流Ioを流す。
【0256】
これにより、送電線の等価的なリアクタンスを調整することができ、長距離送電線の送電能力を大幅に向上させることが可能となる。
送電線の地絡事故等により過電流が発生した場合、直列補償装置SCGに並列接続されたバイパス回路SWを閉じて、過電流がバイパス回路SWに流れるようにする。これにより、送電線のリアクタンスX=ω(L1+L2)は元の値にもどり、過電流が増大するのを防止できる。また、直列補償装置への過電流を防止でき、システムの信頼性を高めることができる。
【0257】
図36は、図35のシステムの無効電力補償装置の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lはそのインダクタンス、Cqは浮遊キャパシタンス、Trは並列トランス、CSIは電流形自励式インバータ、DCLは直流リアクトル、Cfはフィルタコンデンサ、ACRは直流電流制御回路、PWMCはパルス幅変調(PWM)制御回路、をそれぞれ示す。
【0258】
無効電力補償装置は、並列トランスTrと、フィルタコンデンサCfと、電流形インバータCSIで構成され、送電線に任意の大きさと位相の補償電流Ioを送電線に供給する。
【0259】
電流形インバータCSIは、6個の自己消弧素子(GTO等)で構成され、PWM制御により、電流指令値Iorに比例した補償電流Io出力する。インバータの出力電流にはスイッチングに伴う高調波電流が発生するので、それを吸収するためフィルタコンデンサCfが設けられている。
【0260】
電流形インバータCSIの直流電流源として、直流リアクトルDCLが接続され、当該直流リアクトルDCLに流れる電流Idを指令値Idrに一致させるようにフィードバック制御を行う。すなわち、指令値Idrに対し、実電流Idが小さくなった場合、その偏差は正の値となり、電流制御回路ACRを介して増幅される。ACRの出力Iopは有効電流指令値で、Idr>Idの場合、偏差εは正で、Iop>0となって、有効電流を系統からとることにより、直流電流Idを増加させる。逆に、Idr<Idとなった場合、偏差εは負の値となり、有効電流指令値Iopは負の値となる。故に、有効電流を系統に放出し、直流電流Idは減少する。このようにして、電流形インバータの直流電流Idをほぼ一定に制御することができる。
【0261】
図中、Ioqは定常的な無効電流指令値で、この値を調整することにより、送電線の浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すことができる。
【0262】
図37は、図35のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図を示す。図37(a)と(b)は、無効電力補償装置無しの送電線等価回路と電圧電流ベクトル図を示す。また、(c)と(d)は、無効電力補償装置を入れた場合の送電線の等価回路と電圧電流ベクトル図を示す。
【0263】
図中、Vsは送電側の電圧、Vrは受電側の電圧、Lは送電線のインダクタンス、Iは送電側の電流、Irは受電側の電流、Voは補償電圧発生装置の出力電圧、Iqは送電線の浮遊キャパシタンスに流れる進み電流、Ioは無効電力補償装置から発生する補償電流、ωは電源角周波数をそれぞれ示す。
【0264】
図37(b)のベクトル図において、送電線の浮遊キャパシタンスCqに進み電流Iqが流れることにより、受電側の電流Irと送電側の電流Iが異なってくる。図37(a)のような等価回路を想定すると、送電線のインダクタンスLによる電圧降下jωL・Iは、電流Iにほぼ直交することになる。一方、送電電圧Vsと受電電圧Vrをほぼ一致させるために、送電線のインダクタンスLによる電圧降下分を直列補償装置SCGで打ち消すように補償する。そのためには、直列補償装置から補償電圧Voとして、Vo=−jωL・Iを出力する必要がある。当該補償電圧Voのベクトルは、受電側の電流Irに対して位相が90°よりずれてしまうため、定常的に有効電力を直列補償装置から供給(あるいは回生)しなければならない。従って、直列補償装置にエネルギー供給源(あるいはエネルギー回生源)が必要になり、装置が大型化し、高価になる。
【0265】
図37(d)のベクトル図において、浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すように無効電力補償装置SVGから補償電流Ioを供給する。その結果、送電側の電流Iと受電側の電流Irが等しくなり、送電線のインダクタンスLによる電圧降下jωL・Iを打ち消すための直列補償装置SCGからの補償電圧ベクトルVoは、I=Irベクトルに直交するようになる。従って、直列補償装置SCGからやりとりする有効電力は定常的にはゼロとなり、エネルギー供給源(あるいはエネルギー回生源)を持たなくても済むことになる。
【0266】
無効電力補償装置SVGは、また、送電線に流れる高調波電流を補償し、3相不平衡電流を平衡化するための補償電流を供給することもできる。これにより、送電線の送電能力を向上させ、かつ、直列補償装置SCGの負担を軽減して、より経済的な交流長距離送電システムを提供できる。
【0267】
図38は、図35のシステムの電力動揺抑制動作を説明するための電圧電流ベクトル図である。図38において、(a)は送電線の等価回路、(b)は定常状態の電圧電流ベクトル図、(c)は送電線の電力が変動した場合の電圧電流ベクトル図を示す。
【0268】
図中、Vsは送電側の電圧、Vrは受電側の電圧、Lは送電線のインダクタンス、Iは送電側の電流、Irは受電側の電流、Voは補償電圧発生装置の出力電圧、Iqは送電線の浮遊キャパシタンスに流れる進み電流、Ioは無効電力補償装置から発生する補償電流、ωは電源角周波数をそれぞれ示す。
【0269】
図38(b)の定常状態では、無効電力補償装置SVGにより、浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すように補償電流Ioを供給する。また、直列補償装置SCGから送電線のインダクタンスLによる電圧降下jωL・Iを補償する電圧Voを出力している。この結果、送電側電圧Vsと受電側電圧Vrの大きさと位相が一致し、送電線のインダクタンスに影響されない長距離送電が達成されている。
【0270】
図38(c)は、地絡事故等の影響により、送電線の電力が変動した場合のベクトル図を示すもので、例えば、送電側の電圧位相がVs´ のようにずれたときの動作を説明する。送電電圧がVs´ のように位相がずれると、差電圧Vs´ −Vrが発生し、今まで、I=Irであった送電電流はI´ のように増加しようとする。そのため、送電線の有効電力Pと無効電力Qも変化し、その変動分ΔP,ΔQを検出して、直列補償装置SCGの補償電圧Voを制御する。具体的には、有効電力変動分ΔPに応じて送電線の電流Irに直交する成分の補償電圧Voqを制御し、また、無効電力変動分ΔQに応じて送電線の電流Irと同相(又は逆相)成分の補償電圧Vopを制御することにより、いち早く電力動揺を抑えることができる。
【0271】
すなわち、図38(c)において、送電電圧Vs´ の変化に応じて、補償電圧Voは、Vo´ のように瞬時に変化し、結果として、送電線のインダクタンスに印加される電圧は元のjωL・Iのまま維持されて、電流もI=Irとなって、電力動揺を抑制することができる。この場合でも、無効電力補償装置SVGが浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すようにして、上記直列補償装置SCGの動作を助けている。
【0272】
図39は、図35のシステムの無効電力補償装置の別の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lはそのインダクタンス、Cqは浮遊キャパシタンス、Trは並列トランス,VSIは電流制御形自励式インバータ、Edは直流電圧源,Lfはフィルタリアクトル、AVRは直流電圧制御回路、PWMCはパルス幅変調制御(PWM制御)回路、をそれぞれ示す。
【0273】
無効電力補償装置は、並列トランスTrと、フィルタリアクトルLfと、電流制御形インバータVSIで構成され、送電線に任意の大きさと位相の補償電流Ioを送電線に供給する。
【0274】
電流制御形インバータVSIは、6個の自己消弧素子(GTO等)と当該素子に逆並列接続された6個のダイオードで構成されている。インバータVSIの出力電流Ioは、電流検出器CToにより検出され、指令値Iorと比較して、その偏差εを電流制御回路で増幅する。その出力がPWM制御回路PWMCに入力される電圧指令値v*となる。インバータはPWM制御により、電圧指令値v*に比例した電圧Viを出力する。フィルタリアクトルLfは各相毎に設置され、インバータ出力電流Ioの脈動を抑える役目をする。
【0275】
このように、電流制御形インバータVSIは、補償電流指令値Iorに一致するように出力電流Ioを制御し、必要な補償電流Ioを送電線に供給する。
【0276】
電流制御形インバータVSIの直流電圧源Edとして、別電源を用意してもよいが、ここでは、直流平滑コンデンサCdを用いてその電圧がほぼ一定になるように制御している。すなわち、当該直流平滑コンデンサCdの印加電圧Edを検出し、指令値Edrと比較して、両者が一致させるようにフィードバック制御する。指令値Edrに対し、実電圧Edが小さくなった場合、その偏差は正の値となり、電圧制御回路AVRを介して増幅される。AVRの出力Iopは有効電流指令値で、Edr>Edの場合、偏差εvは正で、Iop>0となり、有効電流を系統からとって、直流電圧Edを増加させる。逆に、Edr<Edとなった場合、偏差εvは負の値となり、有効電流指令値Iopは負の値となる。故に、有効電流を系統に放出し、直流電流Edは減少する。このようにして、電流制御形インバータの直流電圧Edをほぼ一定に制御することができる。
【0277】
図中、Ioqは定常的な無効電流指令値で、この値を調整することにより、送電線の浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すことができる。
【0278】
図40は、図35のシステムの無効電力補償装置のさらに別の実施の形態を示す構成図である。
図中、UVWは3相交流送電線、Lはそのインダクタンス、Cqは浮遊キャパシタンス、Trは並列トランス、LCIは他励式インバータ、DCLは直流リアクトル、Kは比例要素、ACRは直流電流制御回路、PHCは位相制御回路、をそれぞれ示す。
【0279】
無効電力補償装置は、並列トランスTrと、他励式インバータLCIで構成され、補償電流Ioを送電線に供給する。
【0280】
電流形他励式インバータCSIは、6個のサイリスタS1〜S6で構成され、位相制御により、CSIの直流側電圧Vdを制御する。補償電流Ioの大きさは直流電流Idに比例し、系統の電圧に対する補償電流の位相角αは、LCIの点弧制御角に一致する。
【0281】
他励式インバータLCIでは、電源電圧を利用してサイリスタS1〜S6を自然転流させるため、上記位相角αは0°〜180°の範囲で制御され、常に遅れの電流Ioをとることになる。
【0282】
他励式インバータLCIの直流電流源として、直流リアクトルDCLが接続され、当該直流リアクトルDCLに流れる電流Idを指令値Idrに一致させるようにフィードバック制御を行う。すなわち、補償電流指令値Ioqに比例した直流電流指令値Idrを与え、直流電流検出値Idと比較して、その偏差εを電流制御回路ACRを介して増幅する。ACRの出力信号vd*は位相制御回路PHCに与えられ、位相制御によって、当該信号vd*に比例した直流電圧Vdを発生させる。Idr>Idの場合、偏差εは正で、vd*>0となって、直流電流Idを増加させる。逆に、Idr<Idとなった場合、偏差εは負の値となり、vd*<0となって、直流電流Idは減少する。このようにして、他励式インバータLCIの直流電流Idを指令値Idrに一致するように制御することができる。定常的には、ほぼvd*=0となり、補償電流Ioの位相角は、ほぼα=90°となって、遅れの補償電流となる。
【0283】
図中、Ioqは定常的な無効電流指令値で、この値を調整することにより、送電線の浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すことができる。
【0284】
図41は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所、SSは変電所、L1,L2,L3は送電線のインダクタンス、Cq1,Cq2は送電線の浮遊キャパシタンス、SVG1,SVG2は無効電力補償装置、SCGは直列補償装置、SWはバイパス回路、をそれぞれ示す。
【0285】
送電線間および送電線とアース間には、浮遊キャパシタンスがあり、送電距離が長くなると、それが無視できなくなる。浮遊キャパシタンスは分布定数であるが、ここでは、Cq1とCq2の集中定数として表わしている。また、送電線のインダクタンスもL1とL2およびL3の3つに分けて示している。浮遊キャパシタンスCq1,Cq2には進み電流Iq1,Iq2が流れ、その進み電流を補償するために無効電力補償装置SVG1、SVG2を設置する。また、送電線のインダクタンス分L1+L2+L3を補償するために直列補償装置SCGを設置している。
【0286】
直列補償装置SCGは、送電線のインダクタンスL1+L2+L3による電圧降下を補償するように、次の補償電圧Voを出力する。
【数19】
Vo=−jω(L1+L2+L3)・I
ただし、送電線のインダクタンスL1,L2,L3に同じ電流Iが流れている場合に上記直列補償が有効に働く。
【0287】
上述したように、実際には送電線の浮遊キャパシタンスは分布定数となっており、当該浮遊キャパシタンスに流れる進み電流により、上記送電線のインダクタンスL1,L2,L3に流れる電流は同じにはならない。
【0288】
ここでは、2つの無効電力補償装置SVG1,SVG2を用い、それを分割して配置する。故に、無効電力補償装置SVG1は送電線の浮遊キャパシタンスCq1に流れる進み電流Iq1を補償し、また、無効電力補償装置SVG2は送電線の浮遊キャパシタンスCq2に流れる進み電流Iq2を補償する。これにより、送電線に流れる電流Iを均一化でき、上記直列補償装置SCGによる送電線のインダクタンス分の補償が有効に作用するようになる。無効電力補償装置の分割数を増やせばさらに送電電流Iの均一化が図れる。これにより、送電線の等価的なリアクタンスを調整することができ、長距離送電線の送電能力を大幅に向上させることが可能となる。
【0289】
送電線の地絡事故等により過電流が発生した場合、直列補償装置SCGに並列接続されたバイパス回路SWを閉じて、過電流がバイパス回路SWに流れるようにする。これにより、送電線のリアクタンスX=ω(L1+L2+L3)は元の値にもどり、過電流が増大するのを防止できる。また、直列補償装置への過電流を防止でき、システムの信頼性を高めることができる。
【0290】
図42は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所、SSは変電所、L1,L2は送電線のインダクタンス、Cq1,Cq2は送電線の浮遊キャパシタンス、SVGは無効電力補償装置、CAPは直列コンデンサ、CVGは補償電圧発生装置、SW1,SW2はバイパス回路、CSIは電流形インバータ、PDは電力検出器、CONT1はCVGの制御回路、CONT2はCSIの制御回路をそれぞれ示す。
【0291】
送電線間および送電線とアース間には、浮遊キャパシタンスがあり、送電距離が長くなると、それが無視できなくなる。浮遊キャパシタンスは分布定数であるが、ここでは、Cq1とCq2の集中定数として表わしている。また、送電線のインダクタンスもL1とL2の2つに分けて示している。浮遊キャパシタンスCq1,Cq2には進み電流Iqが流れ、その進み電流を補償するために無効電力補償装置SVGを設置する。また、送電線のインダクタンス分L1+L2を補償するために直列コンデンサCAPと、補償電圧発生装置CVGを設置している。
【0292】
直列コンデンサCAPは、送電線のインダクタンスL1+L2の大部分を打ち消すようにその容量が決められる。また、補償電圧発生装置CVGは送電線の等価リアクタンスを調整し、電力動揺を抑制するように補償電圧Voを発生させる。送電線の等価リアクタンスがゼロになるように補償した場合、定常状態での補償電圧Voは次式のように表わされる。ただし、Cは直列コンデンサCAPの容量、Iは送電線に流れている電流とする。
【数20】
Vo=−jI{ω(L1+L2)−1/(ωC)}
また、無効電力補償装置SVGは、浮遊キャパシタンスCq1とCq2に流れる進み電流Iqに対し、それを打ち消す補償電流Ioを流す。これにより、送電側の電流と受電側の電流がほぼ等しくなり、上記直列コンデンサCAPおよび補償電圧発生装置CVGが有効に働くようになる。
【0293】
これにより、送電線の等価的なリアクタンスを調整することができ、長距離送電線の送電能力を大幅に向上させることが可能となる。
【0294】
送電線の地絡事故等により過電流が発生した場合、直列コンデンサCAPのバイパス回路SW1と、補償電圧発生装置SCGに並列接続されたバイパス回路SW2を閉じて、過電流がバイパス回路SW1とSW2に流れるようにする。これにより、送電線のリアクタンスX=ω(L1+L2)は元の値にもどり、過電流が増大するのを防止できる。また、直列コンデンサCAP及び補償電圧発生装置CVGへの過電流を防止でき、システムの信頼性を高めることができる。
【0295】
地絡事故等の影響により、送電線の電力が変動した場合、電力検出器PDで、送電線の有効電力Pと無効電力Qの変動分ΔP,ΔQを検出して、補償電圧発生装置CVGの出力電圧Voを制御する。具体的には、有効電力変動分ΔPに応じて送電線の電流Irに直交する成分の補償電圧Voqを制御し、また、無効電力変動分ΔQに応じて送電線の電流Irと同相(又は逆相)成分の補償電圧Vopを制御することにより、いち早く電力動揺を抑えることができる。この場合でも、無効電力補償装置SVGが浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すようにして、上記補償電圧発生装置CVGの動作を助けている。
【0296】
図43は、図42のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図を示す。
図43において(a)と(b)は、無効電力補償装置無しの送電線等価回路と、電圧電流ベクトル図を示す。また、(c)と(d)は、無効電力補償装置を入れた場合の送電線の等価回路と、電圧電流ベクトル図を示す。
【0297】
図中、Vsは送電側の電圧、Vrは受電側の電圧、Lは送電線のインダクタンス、Cは直列コンデンサ、Iは送電側の電流、Irは受電側の電流、Voは補償電圧発生装置の出力電圧、Iqは送電線の浮遊キャパシタンスに流れる進み電流、Ioは無効電力補償装置から発生する補償電流、ωは電源角周波数をそれぞれ示す。
【0298】
図43(b)のベクトル図において、送電線の浮遊キャパシタンスCqに進み電流Iqが流れることにより、受電側の電流Irと送電側の電流Iが異なってくる。図43(a)のような等価回路を想定すると、送電線のインダクタンスLによる電圧降下jωL・Iは、電流Iにほぼ直交することになる。
【0299】
一方、送電電圧Vsと受電電圧Vrをほぼ一致させるために、送電線のインダクタンスLによる電圧降下分を直列コンデンサCと補償電圧発生装置CVGで打ち消すように補償する。そのためには、補償電圧発生装置から補償電圧Voとして、
【数21】
Vo=−jωL・I−Ir/(jωC)
を出力する必要がある。この場合、直列コンデンサCに流れる電流は受電側の電流Irであるため、送電線のインダクタンス分Lを有効に打ち消すことができなくなる。
【0300】
この結果、補償電圧発生装置の出力電圧Voは、受電側の電流Irに対して位相が90°よりずれてしまうため、定常的に有効電力を補償電圧装置から供給(あるいは回生)しなければならない。従って、補償電圧発生装置にエネルギー供給源(あるいはエネルギー回生源)が必要になり、装置が大型化し、高価になる。
【0301】
図43(d)のベクトル図において、浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すように無効電力補償装置SVGから補償電流Ioを供給する。その結果、送電側の電流Iと受電側の電流Irが等しくなり、送電線のインダクタンス分Lを直列コンデンサCで有効に打ち消すことができる。この結果、補償電圧発生装置CVGから出力する補償電圧Voは小さくなり、かつ、当該電圧ベクトルVoは、I=Irベクトルに直交するようになる。従って、補償電圧装置CVGの容量は小さくて済み、かつ、CVGがやりとりする有効電力は定常的にはゼロとなり、エネルギー供給源(あるいはエネルギー回生源)を持たなくても済むことになる。
【0302】
これにより、送電線の送電能力を向上させ、かつ、補償電圧発生装置CVGの負担を軽減して、より経済的な交流長距離送電システムを提供できる。
【0303】
図44は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所、SSは変電所、L1,L2は送電線のインダクタンス、Cq1,Cq2は送電線の浮遊キャパシタンス、SVG1,SVG2は無効電力補償装置、CAP1,CAP2は直列コンデンサ、CVGは補償電圧発生装置、をそれぞれ示す。
【0304】
送電線間および送電線とアース間には、浮遊キャパシタンスがあり、送電距離が長くなると、それが無視できなくなる。浮遊キャパシタンスは分布定数であるが、ここでは、Cq1とCq2の集中定数として表わしている。また、送電線のインダクタンスもL1とL2の2つに分けて示している。浮遊キャパシタンスCq1,Cq2には進み電流Iq1,Iq2が流れ、その進み電流を補償するために無効電力補償装置SVG1、SVG2を設置する。また、送電線のインダクタンス分L1とL2を補償するためにそれぞれ直列コンデンサCAP1とCAP2を分割して設置している。さらに、送電線全体の等価リアクタンスを調整し、かつ、電力動揺を抑えるため補償電圧発生装置CVGを設置している。
【0305】
ここでは、まず、2つの無効電力補償装置SVG1,SVG2を用い、それを分割して配置する。故に、無効電力補償装置SVG1は送電線の浮遊キャパシタンスCq1に流れる進み電流Iq1を補償し、また、無効電力補償装置SVG2は送電線の浮遊キャパシタンスCq2に流れる進み電流Iq2を補償する。
【0306】
次に、直列コンデンサCAP1とCAP2を、それぞれ前記無効電力補償装置SVG1とSVG2の直後に分割して設置する。この結果、送電線のインダクタンスL1に流れる電流と、直列コンデンサCAP1に流れる電流がほぼ一致し、また、送電線のインダクタンスL2に流れる電流と、直列コンデンサCAP2に流れる電流がほぼ一致するようになる。故に、直列コンデンサCAP1とCAP2は送電線のインダクタンスL1,L2を有効に補償することができ、補償電圧発生装置CVGの容量を大幅に低減できる。
【0307】
無効電力補償装置および直列コンデンサの分割数を増やせばさらに送電電流Iの均一化が図れ、送電線全体の等価リアクタンスを有効に調整することができ、長距離送電線の送電能力を大幅に向上させることが可能となる。
【0308】
図45は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所、SSは変電所、L1,L2は送電線のインダクタンス、Cq1,Cq2は送電線の浮遊キャパシタンス、SVGは無効電力補償装置、CAPは直列コンデンサ、CIGは補償電流発生装置、SWはバイパス回路、CSIは電流形インバータ、PDは電力検出器、CONT1はCIGの制御回路、CONT2はCSIの制御回路をそれぞれ示す。
【0309】
送電線間および送電線とアース間には、浮遊キャパシタンスがあり、送電距離が長くなると、それが無視できなくなる。浮遊キャパシタンスは分布定数であるが、ここでは、Cq1とCq2の集中定数として表わしている。また、送電線のインダクタンスもL1とL2の2つに分けて示している。浮遊キャパシタンスCq1,Cq2には進み電流Iqが流れ、その進み電流を補償するために無効電力補償装置SVGを設置する。また、送電線のインダクタンス分L1+L2を補償するために直列コンデンサCAPと、補償電流発生装置CIGを設置している。
【0310】
直列コンデンサCAPは、送電線のインダクタンスL1+L2の大部分を打ち消すようにその容量が決められる。また、補償電流発生装置CIGは、直列コンデンサCAPに並列接続され、当該コンデンサCAPに補償電流Icを供給する。直列コンデンサCAPの印加電圧Voは、送電線に流れる電流Iと上記補償電流Icの和によって決定される。
【0311】
当該直列コンデンサCAPの印加電圧Voを調整することにより、送電線の等価リアクタンスを調整し、電力動揺を抑制する。送電線の等価リアクタンスがゼロになるように補償した場合、定常状態での直列コンデンサCAPの印加電圧Voは次式のように表わされる。ただし、Cは直列コンデンサCAPの容量、Iは送電線に流れている電流とする。
【数22】
Vo=−jω(L1+L2)・I=(I+Ic)/(jωC)
また、無効電力補償装置SVGは、浮遊キャパシタンスCq1とCq2に流れる進み電流Iqに対し、それを打ち消す補償電流Ioを流す。これにより、送電側の電流と受電側の電流がほぼ等しくなり、上記送電線に流れる電流Iと直列コンデンサCAPに流れる電流がほぼ一致するようになり、補償電流発生装置CIGの容量が低減できる。
【0312】
これにより、送電線の等価的なリアクタンスを調整することができ、長距離送電線の送電能力を大幅に向上させることが可能となる。
【0313】
送電線の地絡事故等により過電流が発生した場合、直列コンデンサCAPに並列接続されたバイパス回路SWを閉じて、過電流がバイパス回路SWに流れるようにする。これにより、送電線のリアクタンスX=ω(L1+L2)は元の値にもどり、過電流が増大するのを防止できる。また、直列コンデンサCAP及び補償電流発生装置CIGへの過電流を防止でき、システムの信頼性を高めることができる。
【0314】
また、地絡事故等の影響により、送電線の電力が変動した場合、電力検出器PDで、送電線の有効電力Pと無効電力Qの変動分ΔP,ΔQを検出して、補償電流発生装置CIGの出力電流Icを制御する。具体的には、有効電力変動分ΔPに応じて送電線の電流Irと同相成分(または逆相成分)の補償電流Ioqを制御し、また、無効電力変動分ΔQに応じて送電線の電流Irに直交する成分の補償電流Iopを制御することにより、いち早く電力動揺を抑えることができる。この場合でも、無効電力補償装置SVGが浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すようにして、上記補償電流発生装置CIGの動作を助けている。
【0315】
図46は、図45のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図を示す。
図46において、(a)と(b)は、無効電力補償装置無しの送電線等価回路と、電圧電流ベクトル図を示す。また、(c)と(d)は、無効電力補償装置を入れた場合の送電線の等価回路と、電圧電流ベクトル図を示す。
【0316】
図中、Vsは送電側の電圧、Vrは受電側の電圧、Lは送電線のインダクタンス、Cは直列コンデンサ、Iは送電側の電流、Irは受電側の電流、Icは補償電流発生装置の出力電流、Iqは送電線の浮遊キャパシタンスに流れる進み電流、Ioは無効電力補償装置から発生する補償電流、ωは電源角周波数をそれぞれ示す。
【0317】
図46(b)のベクトル図において、送電線の浮遊キャパシタンスCqに進み電流Iqが流れることにより、受電側の電流Irと送電側の電流Iが異なってくる。図46(a)のような等価回路を想定すると、送電線のインダクタンスLによる電圧降下jωL・Iは、電流Iにほぼ直交することになる。
【0318】
一方、送電電圧Vsと受電電圧Vrをほぼ一致させるために、送電線のインダクタンスLによる電圧降下分を直列コンデンサCと補償電流発生装置CIGで打ち消すように補償する。そのためには、直列コンデンサの印加電圧Voとして、
【数23】
Vo=(Ir+Ic)/(jωC)=−jωL・I
を出力する必要がある。この場合、直列コンデンサCに流れる電流Irは受電側の電流であるため、送電線のインダクタンス分Lを有効に打ち消すことができなくなる。
【0319】
この結果、補償電流発生装置の出力電流Icは、
【数24】
Ic=ωC・ωL・I−Ir
となり、仮に、1/(ωC)=ωLに選んだとすると、Ic=I−Irとなる。この電流は送電線の浮遊キャパシタンスCqに流れる進み電流Iqと一致し、定常的に補償電流発生装置CIGからこの電流を供給する必要がある。また、この補償電流Icは、直列コンデンサCAPの印加電圧に対して、同相(または逆相)に近くなり、定常的に有効電力を補償電流装置から供給(あるいは回生)しなければならない。従って、補償電流発生装置にエネルギー供給源(あるいはエネルギー回生源)が必要になり、装置が大型化し、高価になる。
【0320】
これに対し、図46(d)のベクトル図では、浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すように無効電力補償装置SVGから補償電流Ioを供給する。その結果、送電側の電流Iと受電側の電流Irが等しくなり、送電線のインダクタンス分Lを直列コンデンサCで有効に打ち消すことができるようになる。この結果、補償電流発生装置CIGから出力する補償電流Icは小さくなり、かつ、当該電流ベクトルIcは、I=Irベクトルに同相(または逆相)になり、直列コンデンサCAPの印加電圧Voに対して直交した成分となる。従って、補償電流装置CIGの容量は小さくて済み、かつ、CIGがやりとりする有効電力は定常的にはゼロとなり、エネルギー供給源(あるいはエネルギー回生源)を持たなくても済むことになる。
【0321】
これにより、送電線の送電能力を向上させ、かつ、補償電流発生装置CIGの負担を軽減して、より経済的な交流長距離送電システムを提供できる。
【0322】
図47は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所、SSは変電所、L1,L2は送電線のインダクタンス、Cq1,Cq2は送電線の浮遊キャパシタンス、SVGは無効電力補償装置、CAPは主直列コンデンサ、CAPaは補助直列コンデンサ、CIGは補償電流発生装置、SW,SWaはバイパス回路、CSIは電流形インバータ、PDは電力検出器、CONT1はCIGの制御回路、CONT2はCSIの制御回路をそれぞれ示す。
【0323】
送電線間および送電線とアース間には、浮遊キャパシタンスがあり、送電距離が長くなると、それが無視できなくなる。浮遊キャパシタンスは分布定数であるが、ここでは、Cq1とCq2の集中定数として表わしている。また、送電線のインダクタンスもL1とL2の2つに分けて示している。浮遊キャパシタンスCq1,Cq2には進み電流Iqが流れ、その進み電流を補償するために無効電力補償装置SVGを設置する。また、送電線のインダクタンス分L1+L2を補償するために主直列コンデンサCAPと、補助直列コンデンサCAPaおよび補償電流発生装置CIGを設置している。
【0324】
主直列コンデンサCAPは、送電線のインダクタンスL1+L2の大部分を打ち消すようにその容量が決められる。また、補償電流発生装置CIGは、補助直列コンデンサCAPaに並列接続され、当該コンデンサCAPaに補償電流Icを供給する。補助直列コンデンサCAPaの印加電圧Voは、送電線に流れる電流Iと上記補償電流Icの和によって決定される。
【0325】
当該補助直列コンデンサCAPaの印加電圧Voを調整することにより、送電線の等価リアクタンスを調整し、電力動揺を抑制する。送電線の等価リアクタンスがゼロになるように補償した場合、定常状態での補助直列コンデンサCAPaの印加電圧Voは次式のように表わされる。ただし、Cは主直列コンデンサCAPの容量、Caは補助直列コンデンサCAPaの容量、Iは送電線に流れている電流とする。
【数25】
【0326】
また、無効電力補償装置SVGは、浮遊キャパシタンスCq1とCq2に流れる進み電流Iqに対し、それを打ち消す補償電流Ioを流す。これにより、送電側の電流と受電側の電流がほぼ等しくなり、上記送電線に流れる電流Iと、主直列コンデンサCAPおよび補助直列コンデンサCAPaに流れる電流がほぼ一致するようになり、補償電流発生装置CIGの容量が低減できる。
【0327】
これにより、送電線の等価的なリアクタンスを調整することができ、長距離送電線の送電能力を大幅に向上させることが可能となる。
送電線の地絡事故等により過電流が発生した場合、主直列コンデンサCAPに並列接続されたバイパス回路SWと、補助直列コンデンサに並列接続されたバイパス回路SWaを閉じて、過電流が当該バイパス回路SW,SWaに流れるようにする。これにより、送電線のリアクタンスX=ω(L1+L2)は元の値にもどり、過電流が増大するのを防止できる。また、主直列コンデンサCAPと、補助直列コンデンサCAPa及び補償電流発生装置CIGへの過電流を防止でき、システムの信頼性を高めることができる。
【0328】
地絡事故等の影響により、送電線の電力が変動した場合、電力検出器PDで、送電線の有効電力Pと無効電力Qの変動分ΔP,ΔQを検出して、補償電流発生装置CIGの出力電流Icを制御する。具体的には、有効電力変動分ΔPに応じて送電線の電流Irと同相成分(または逆相成分)の補償電流Ioqを制御し、また、無効電力変動分ΔQに応じて送電線の電流Irに直交する成分の補償電流Iopを制御することにより、いち早く電力動揺を抑えることができる。この場合でも、無効電力補償装置SVGが浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すようにして、上記補償電流発生装置CIGの動作を助けている。
【0329】
図48は、図47のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図を示す。
図中、Vsは送電側の電圧、Vrは受電側の電圧、Lは送電線のインダクタンス、Cは主直列コンデンサ、Caは補助直列コンデンサ、Iは送電側の電流、Irは受電側の電流、Icは補償電流発生装置の出力電流、Iqは送電線の浮遊キャパシタンスに流れる進み電流、Ioは無効電力補償装置から発生する補償電流、ωは電源角周波数をそれぞれ示す。
【0330】
図48(b)のベクトル図において、浮遊キャパシタンスに流れる進み電流Iqを打ち消すように無効電力補償装置SVGから補償電流Ioを供給する。その結果、送電側の電流Iと受電側の電流Irが等しくなり、送電線のインダクタンス分Lを主直列コンデンサCおよび補助直列コンデンサCaで有効に打ち消すことができるようになる。この結果、補償電流発生装置CIGから出力する補償電流Icは小さくなり、かつ、当該電流ベクトルIcは、I=Irベクトルに同相(または逆相)になり、補助直列コンデンサCaの印加電圧Voに対して直交した成分となる。従って、補償電流装置CIGの容量は小さくて済み、かつ、CIGがやりとりする有効電力は定常的にはゼロとなり、エネルギー供給源(あるいはエネルギー回生源)を持たなくても済むことになる。
【0331】
これにより、送電線の送電能力を向上させ、かつ、補償電流発生装置CIGの負担を軽減して、より経済的な交流長距離送電システムを提供できる。
【0332】
図49は、本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図である。
図中、Gは発電所、SSは変電所、L1,L2は送電線のインダクタンス、Cq1,Cq2は送電線の浮遊キャパシタンス、SVG1,SVG2は無効電力補償装置、CAP1,CAP2は主直列コンデンサ、CAPaは補助直列コンデンサ、CIGは補償電流発生装置、をそれぞれ示す。
【0333】
送電線間および送電線とアース間には、浮遊キャパシタンスがあり、送電距離が長くなると、それが無視できなくなる。送電線の浮遊キャパシタンスは分布定数であるが、ここでは、Cq1とCq2の集中定数として表わしている。また、送電線のインダクタンスもL1とL2の2つに分けて示している。浮遊キャパシタンスCq1,Cq2には進み電流Iq1,Iq2が流れ、その進み電流を補償するために無効電力補償装置SVG1、SVG2を設置する。また、送電線のインダクタンス分L1とL2を補償するためにそれぞれ主直列コンデンサをCAP1とCAP2に分割して設置している。さらに、送電線全体の等価リアクタンスを調整し、かつ、電力動揺を抑えるため補助直列コンデンサCaと、補償電流発生装置CIGを設置している。
【0334】
ここでは、まず、2つの無効電力補償装置SVG1,SVG2を用い、それを分割して配置する。故に、無効電力補償装置SVG1は送電線の浮遊キャパシタンスCq1に流れる進み電流Iq1を補償し、また、無効電力補償装置SVG2は送電線の浮遊キャパシタンスCq2に流れる進み電流Iq2を補償する。
【0335】
次に、主直列コンデンサCAP1とCAP2を、それぞれ前記無効電力補償装置SVG1とSVG2の直後に分割して設置する。この結果、送電線のインダクタンスL1に流れる電流と、主直列コンデンサCAP1に流れる電流がほぼ一致し、また、送電線のインダクタンスL2に流れる電流と、主直列コンデンサCAP2に流れる電流がほぼ一致するようになる。故に、主直列コンデンサCAP1とCAP2は送電線のインダクタンスL1,L2を有効に補償することができ、補助直列コンデンサCAPaおよび補償電流発生装置CIGの容量を大幅に低減できる。
【0336】
無効電力補償装置および直列コンデンサの分割数を増やせばさらに送電電流Iの均一化が図れ、送電線全体の等価リアクタンスを有効に調整することができ、長距離送電線の送電能力を大幅に向上させることが可能となる。
【0337】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の交流送電システムでは、複数の変電所を介した長距離送電が可能になり、当該各変電所から負荷をとることもでき、直流送電では困難であった複数系統との連系ができる。また、既設の送電線を活用でき、各送電線の送電能力を格段に向上させることが可能となる。さらに、電力動揺に対してもそれを速やかに抑制することができるようになり、経済的で、かつ、信頼性の高い交流送電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の交流長距離送電システムの第1の実施の形態を示す構成図。
【図2】図1のシステムにおける直列補償装置の実施の形態を示す構成図。
【図3】図1のシステムの動作を説明するための電圧電流のベクトル図。
【図4】図1のシステムの電力動揺抑制動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図5】図2の直列補償装置の制御動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図6】本発明の交流長距離送電システムの第2の実施の形態を示す構成図。
【図7】本発明の交流長距離送電システムの第3の実施の形態を示す構成図。
【図8】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図9】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図10】本発明の直列補償装置の制御方式の実施の形態を示す構成図。
【図11】図10のシステムの動作を説明するための特性図。
【図12】本発明の直列補償装置の別の実施の形態を示す構成図。
【図13】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図14】図13のシステムの直列補償装置の実施の形態を示す構成図。
【図15】図13のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図16】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図17】図16のシステムの直列補償装置の実施の形態を示す構成図。
【図18】図16のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図19】図16のシステムの直列補償装置の別の実施の形態を示す構成図。
【図20】図19の装置の動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図21】図16のシステムの直列補償装置のさらに別の実施の形態を示す構成図。
【図22】図16のシステムの直列補償装置のさらにまた別の実施の形態を示す構成図。
【図23】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図24】図23のシステムの直列補償装置の実施の形態を示す構成図。
【図25】図23のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図26】図23のシステムの直列補償装置の別の実施の形態を示す構成図。
【図27】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図28】図27のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図29】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図30】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図31】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図32】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図33】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図34】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図35】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図36】図35のシステムの無効電力補償装置の実施の形態を示す構成図。
【図37】図35のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図38】図35のシステムの電力動揺抑制動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図39】図35のシステムの無効電力補償装置の別の実施の形態を示す構成図。
【図40】図35のシステムの無効電力補償装置のさらに別の実施の形態を示す構成図。
【図41】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図42】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図43】図42のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図44】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図45】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図46】図45のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図47】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図48】図47のシステムの動作を説明するための電圧電流ベクトル図。
【図49】本発明の交流長距離送電システムの他の参考例を示す構成図。
【図50】従来の直流送電システムと交流送電システムを示す構成図。
【図51】従来の交流送電システムの特性図。
【符号の説明】
G…発電所
SS1〜SS5…変電所
LOAD1〜LOAD4…負荷
SCG1〜SCG4…直列補償装置
X1〜X4…リアクタンス
U,V,W…3相交流送電線
L…送電線のインダクタンス分
Tr…直列トランス
VSI…電圧形PWM制御イン
バータ
Ed…直流電圧源
CT…電流検出器
PT…電圧検出器
DPD…電力検出器
D
PCNT…電力変動抑制制御回路
AVR…電圧制御回路
PWMC…パルス幅変調制御回路
PD…電力検出器
FX…関数発生器
VREF…補償電圧設定器
VCNT…電圧制御回路
SWu 、SWv 、SWw …バイパス回路
OCT…過電流検出器
C1〜C4
…直列コンデンサ
CVG1、CVG2…補償電圧発生装置
CAP…直列コンデンサ
C
IG1、CIG2…補償電流発生装置
CSI…電流形PWM制御インバータ
DCL…直流電流源
Cf…フィルタコンデンサ
ACR…電流制御回路
LCI…他励式インバータ
K…比例要素
PHC…位相制御回路
VSI…電流制御形インバータ
Lf…フィルタリ
アクトル
Ca1、Ca2…補助直列コンデンサ
CAP…主直列コンデンサ
CAPa…
補助直列コンデンサ
SW1〜SW4…バイパス回路
L1,L2…インダクタンス
Cq
1,Cp2…浮遊キャパシタンス
SVG…無効電力補償装置
CSI…電流形自励式インバータ
Claims (2)
- 複数の変電所を介して送電される電力系統において、当該変電所間を結ぶ送電線の中で、送電線のパーセントリアクタンス%XIが大きいものを選択し、当該送電線の等価的なリアクタンスを小さくするように補償電圧を発生させる直列補償装置を有し、この直列補償装置は、隣接する送電線のリアクタンスを含めて補償する電圧を発生するように制御したことを特徴とする交流送電システム。
- 複数の変電所を介して送電される電力系統において、当該変電所間を結ぶ送電線の中で、送電線のリアクタンスXと当該送電線に流れる電力潮流量Pとの積が大きいものを選択し、当該送電線の等価的なリアクタンスを小さくするように補償電圧を発生させる直列補償装置を有し、この直列補償装置は、隣接する送電線のリアクタンスを含めて補償する電圧を発生するように制御したことを特徴とする交流送電システム。
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