JP3905291B2 - 眼科用灌流吸引装置 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、手術部位に灌流液を供給してこれを除去組織と共に吸引する灌流吸引装置に係り、殊に蠕動型吸引ポンプによって発生する脈動を減衰させるために好適な機構に関する。
【０００２】
【従来技術】
患部に灌流液を供給してこの灌流液と共に患部の除去組織を吸引除去する灌流吸引装置が知られている。例えば、眼科分野では、白内障手術や硝子体手術等で使用されている。
【０００３】
これらの手術で使用される灌流吸引装置では、眼球内に供給した灌流液と共に除去組織を吸引するために、ハンドピースが使用される。除去組織は吸引ポンプで発生される吸引圧によってハンドピース先端部に設けられた吸引孔から灌流液と共に吸引され、ハンドピースに接続されたチューブ内を通って廃液袋へ排出される。除去組織を吸引除去するための吸引ポンプとしては、一般的に蠕動型ポンプ（ペリスタルティックポンプ）が利用されている。
【０００４】
蠕動型ポンプでは、図６（ａ）に示すように、回転台５１を回転させることにより、回転台５１の同一円周上に（回転シャフト５５に対して等間隔に）配置された複数のポンプローラ５２が、吸引ポンプ５０とチューブ受け５３との間に配置された吸引チューブ５４を押し潰して閉塞させながら回転走行する。これにより、吸引チューブ５４内の流体がポンプローラ５２の回転走行方向に押し出されて吸引圧が発生する。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような蠕動型ポンプでは、複数のポンプローラ５２の内の１つが吸引チューブ５４を押し潰して閉塞させ始めてから最初に完全に閉塞させるまでは、吸引チューブ５４内の流路面積が小さくなるので、吸引流量が少なくなり、吸引流速も遅くなる。その後、複数のポンプローラ５２の内の１つが吸引チューブ５４を最初に完全に閉塞させてから次のポンプローラ５２が吸引チューブ５４を閉塞させ始めるまでは、吸引チューブ５４がポンプローラ５２の押圧から解放されて弾性力で復元することによって吸引チューブ５４内の流路面積が大きくなるので、回転走行方向への流速が速くなり、吸引流量が増加する。このように、吸引流量の増減が繰り返し行われるため、図６（ｂ）に示すような脈動と呼ばれるｓｉｎ曲線状の周期的な吸引圧や吸引流量の変動が発生する。この脈動により、被手術眼内に圧力変動が生じたり、吸引圧や吸引流量の正確な制御が困難になる問題があった。
【０００６】
本発明は上記従来技術に鑑み、蠕動型ポンプによって生じる脈動を抑制し、安定した吸引圧及び吸引流量を得ることができる灌流吸引装置を提供することを技術課題とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【０００８】
（１） 回転走行可能に複数配置されたローラを備え該ローラが吸引チューブを押し潰して閉塞させながら回転走行することによって吸引チューブ内に吸引圧を発生させる蠕動型ポンプを有し、手術部位に灌流ビンの高さによって灌流圧を調整されて供給される灌流液と共に除去組織を、吸引チューブを介して、吸引する眼科用灌流吸引装置において、前記複数のローラのある一つが前記吸引チューブを閉塞し始めてから略閉塞させるまでの過程の走行速度を徐々に速くし、該ローラが吸引チューブを略閉塞させてから次のローラが吸引チューブを閉塞し始めるまでの走行速度を徐々に遅くするように、前記ローラの走行速度を閉塞過程に対応させて変化させる蠕動型ポンプ制御手段を備えたことを特徴とする。
【００１９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関し、白内障手術に使用する灌流吸引装置を一実施形態として挙げ、図面に基づいて説明する。図１は実施形態である灌流吸引装置の概略構成図である。
灌流ポール２には、灌流液が満たされた灌流ビン１が吊り下げられている。灌流ポール２は、入力部１１で設定されるポール高さに従い、上下駆動装置１２によって上下動される。灌流ビン１は、灌流ポール２の上下動により、その高さが変更されて灌流圧が調節される。
【００２０】
灌流ビン１からの灌流液は、灌流チューブ３を通過し、術者に把持される手術用ハンドピース５を介して患者眼Ｅに灌注される。灌流チューブ３の途中には制御弁４が設けられており、制御弁４の開閉によって灌流液の流出制御が行われる。本実施形態では、手術用ハンドピース５として、白内障によって不透明になり硬化した水晶体核を先端に設けられた破砕用チップ５ａの超音波振動によって乳化吸引除去するＵＳハンドピースを利用している。破砕用チップ５ａの超音波振動は、ハンドピース５内に設けられた超音波振動子に電力ケーブル１３を介して電力供給することによって行なわれる。
【００２１】
ハンドピース５には可撓性を持つ吸引チューブ６が接続され、その途中には圧力センサ１５に繋がる接続部１６及び蠕動型吸引ポンプ７が設けられている。また、吸引チューブ６はバイパスチューブ１７を介して灌流チューブ３と連通しており、バイパスチューブ１７の流出制御は制御弁１８によって行われる。圧力センサ１５は吸引圧を常時検出しており、吸引圧が設定値より上昇したときは、必要に応じて制御部１０の制御によって制御弁１８が開き、灌流液を灌流チューブ３からバイパスチューブ１７を介して吸引チューブ６内に流入させて吸引圧を下げる。吸引圧の上限は、入力部１１のスイッチ操作によって設定される。
【００２２】
灌流液及び除去組織は、ハンドピース５の破砕用チップ５ａに設けられた吸引孔から吸引され、吸引チューブ６及び吸引ポンプ７を介して廃液袋８に排出投入される。制御部１０は、フットスイッチ１４の踏み込みポジション位置の信号や入力装置１１による設定値に基づき、吸引ポンプ７を駆動制御して吸引圧を制御する。
【００２３】
吸引ポンプ７は、図２の蠕動型吸引ポンプの要部構成図に示すように、回転台２０と、回転台２０の同一円周上に（回転シャフト２４に対して等間隔に）回転走行可能に配置された４つのポンプローラ２１と、チューブ受け２２とから構成されている。チューブ受け２２はレバー２３の操作によって上下動が可能であり、吸引ポンプ７とチューブ受け２２との間に容易に吸引チューブ６を配置することができる。回転台２０が回転すると、４つのポンプローラ２１が順次吸引チューブ６を押し潰して閉塞させながら回転走行する。これにより、吸引チューブ６内の流体が移送されて吸引圧が発生する。
【００２４】
以上のような構成を有する灌流吸引装置において、脈動を減衰するための吸引ポンプ７の駆動制御について、図３に示す吸引ポンプ７の駆動制御の説明図に基づいて説明する。図３（ａ）はポンプローラ２１が吸引チューブ６を押し潰して閉塞させるときの駆動位置を説明する図である。図３（ｂ）はポンプローラ２１の走行速度（回転台の回転速度）Ｖの時系列変化を示す図である。図３（ｃ）は吸引圧Ｐの時系列変化を示す図であり、図３（ｃ）中の点線が定常（一定）回転走行速度の蠕動型ポンプの吸引圧変動を示している。
【００２５】
図３（ａ）に示すように、ポンプローラ２１が吸引チューブ６を押し潰して閉塞させ始める位置Ａから最初に完全に吸引チューブ６を押し潰して閉塞させる位置Ｂまでの区間では、吸引チューブ６のハンドピース５側流路が徐々に狭くなる。従って、ポンプローラ２１がこの区間Ａ−Ｂを走行するときは、吸引流量も徐々に減少する。ポンプローラ２１が位置Ｂに達するときは、吸引流量が最も少なくなり、吸引圧が最小になる。
【００２６】
一方、ポンプローラ２１が最初に完全に吸引チューブ６を押し潰して閉塞させる位置Ｂから次のポンプローラ２１が吸引チューブ６を閉塞させ始める位置Ｃ（次のポンプローラ２１は位置Ａに至っている）までの区間では、吸引チューブ６がポンプローラ２１の押圧から解放されて弾性力で復元するため、吸引チューブ６のハンドピース５側流路が徐々に広くなる。従って、ポンプローラ２１がこの区間Ｂ−Ｃを走行するときは、吸引流量も徐々に増加する。ポンプローラ２１が位置Ｃに達するときは、吸引流量が最も多くなり、吸引圧が最大になる。そして、以上の動作が繰り返されることで、吸引チューブ６内に連続的に吸引圧が発生される。
【００２７】
以上のようなポンプローラ２１の位置関係による吸引圧の変動を考慮して、制御部１０の制御によってポンプローラ２１の走行速度（回転台２０の回転速度）Ｖを図３（ｂ）に示すように変化させる。すなわち、ポンプローラ２１が区間Ａ−Ｂを回転走行するときは吸引流量が徐々に減少するので、制御部１０は位置Ａから位置Ｂに向かって回転走行するときのポンプローラ２１の走行速度を徐々に速くしていき、位置Ｂで最大走行速度となるように制御する。区間Ａ−Ｂでは吸引チューブ６が押し潰されて閉塞されることで吸引圧が低くなる傾向があるが、走行速度を速くしていくことで、吸引圧の低下を抑制することができる。
【００２８】
逆に、ポンプローラ２１が区間Ｂ−Ｃを回転走行するときは吸引流量が徐々に増加するので、制御部１０は位置Ｂから位置Ｃに向かって回転走行するときのポンプローラ２１の走行速度を徐々に遅くしていき、位置Ｃで最小走行速度となるように制御する。区間Ｂ−Ｃでは吸引チューブ６が徐々に復元するため、吸引流量が多くなり、区間Ａ−Ｂとは逆に吸引圧が高くなる傾向があるが、走行速度を遅くしていくことで、急激な吸引圧の上昇を抑制することができる。
【００２９】
以上のように、ポンプローラ２１が吸引チューブ６を押し潰して閉塞させる過程に応じ、すなわち、ポンプローラ２１の回転走行によって略ｓｉｎ曲線状に発生される吸引圧（吸引流量）の変動に対応させて、ポンプローラ２１の走行速度も略ｓｉｎ曲線状に変化するように制御する。これにより、図３（ｃ）の実線で示すように、吸引圧の変動を抑えることができ、手術時における被手術眼内での圧力変動も少なくすることができる。
【００３０】
また、ポンプローラ２１が吸引チューブ６を押し潰して閉塞させる過程に応じ、すなわち、ポンプローラ２１の回転走行によって発生される吸引圧（吸引流量）の変動に対応させて、ポンプローラ２１の走行速度を略矩形波（パルス波）状に変化させるように制御することで、吸引圧の変動を抑えることもできる。
【００３１】
制御部１０の制御によってポンプローラ２１の走行速度（回転台２０の回転速度）Ｖを図４（ａ）に示すように変化させる。すなわち、ポンプローラ２１が区間Ａ−Ｂを走行するときは吸引流量が徐々に減少するので、制御部１０は位置Ａから位置Ｂに向かって回転走行するときのポンプローラ２１の走行速度を所定の基準速度に対して所定分上げる（速くする）。逆に、ポンプローラ２１が区間Ｂ−Ｃを走行するときは吸引流量が徐々に増加するので、制御部１０は位置Ｂから位置Ｃに向かって回転走行するときのポンプローラ２１の走行速度を所定の基準速度にする（遅くする）。これにより、吸引圧の変動を抑えることができ、手術時における被手術眼内での圧力変動も少なくすることができる。
【００３２】
また、平均的な基準速度による平均的な吸引流量に対して、より多くの吸引流量が得られるときは、図４（ｂ）に示すように、基準速度のみを上げるようにしてもよいし、基準速度と高速化したときの走行速度との両方を上げるようにしてもよい。
【００３３】
なお、ポンプローラ２１の走行速度は、閉塞させる過程すなわち発生される吸引圧（吸引流量）の変動に合わせるように、回転走行角度に対応させて変化させればよい。例えば、回転板２０に固定されたシャフト２４を回転させるためにフルステップ１．８°のパルスモータを使用する場合は、１パルスで０．４５°回転するため、回転走行角度に基づく制御は容易に行うことができる。
【００３４】
例えば、ポンプローラ２１が４つ配置されている場合は、約４５°（前後５°程度を含む）回転走行する毎に高速化と低速化とを繰り返せばよい（すなわち、９０°（３６０°／４：ポンプローラの数）の回転走行で高速化と低速化とを１回ずつ行い、４２°の回転走行を高速化した場合は４８°の回転走行を低速化する）。また、ポンプローラ２１が６つ配置されている場合は、約３０°（前後５°程度を含む）回転走行する毎に高速化と低速化とを繰り返せばよい（すなわち、６０°（３６０°／６：ポンプローラの数）の回転走行で高速化と低速化とを１回ずつ行い、２７°の回転走行を高速化した場合は３３°の回転走行を低速化する）。このように、回転走行角度に基づく制御は、ポンプローラ２１の数に関係なく容易に行うことができる。
【００３５】
なお、本実施形態では、ポンプローラ２１が回転シャフト２４を中心にして回転走行する構成としたが、図５に示したように、ポンプローラ２１が直線走行を含んだ回転走行する構成としてもよい。もちろん、ポンプローラの数も４つに限定されるものではない。
【００３６】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、蠕動型ポンプによって生じる脈動を抑制し、手術眼内での圧力変動を少なくすることができる。また、安定した吸引圧及び吸引流量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施形態である灌流吸引装置の要部概略図である。
【図２】蠕動型吸引ポンプの要部構成図である。
【図３】吸引ポンプの駆動制御の説明図である。
【図４】吸引ポンプの駆動制御の変容例の説明図である。
【図５】ポンプローラの回転走行の変容例の説明図である。
【図６】従来の蠕動型吸引ポンプの要部概略図である。
【符号の説明】
５ 手術用ハンドピース
６ 吸引チューブ
７ 蠕動型吸引ポンプ
１０ 制御部
２０ 回転台
２１ ポンプローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、手術部位に灌流液を供給してこれを除去組織と共に吸引する灌流吸引装置に係り、殊に蠕動型吸引ポンプによって発生する脈動を減衰させるために好適な機構に関する。
【０００２】
【従来技術】
患部に灌流液を供給してこの灌流液と共に患部の除去組織を吸引除去する灌流吸引装置が知られている。例えば、眼科分野では、白内障手術や硝子体手術等で使用されている。
【０００３】
これらの手術で使用される灌流吸引装置では、眼球内に供給した灌流液と共に除去組織を吸引するために、ハンドピースが使用される。除去組織は吸引ポンプで発生される吸引圧によってハンドピース先端部に設けられた吸引孔から灌流液と共に吸引され、ハンドピースに接続されたチューブ内を通って廃液袋へ排出される。除去組織を吸引除去するための吸引ポンプとしては、一般的に蠕動型ポンプ（ペリスタルティックポンプ）が利用されている。
【０００４】
蠕動型ポンプでは、図６（ａ）に示すように、回転台５１を回転させることにより、回転台５１の同一円周上に（回転シャフト５５に対して等間隔に）配置された複数のポンプローラ５２が、吸引ポンプ５０とチューブ受け５３との間に配置された吸引チューブ５４を押し潰して閉塞させながら回転走行する。これにより、吸引チューブ５４内の流体がポンプローラ５２の回転走行方向に押し出されて吸引圧が発生する。
【０００５】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような蠕動型ポンプでは、複数のポンプローラ５２の内の１つが吸引チューブ５４を押し潰して閉塞させ始めてから最初に完全に閉塞させるまでは、吸引チューブ５４内の流路面積が小さくなるので、吸引流量が少なくなり、吸引流速も遅くなる。その後、複数のポンプローラ５２の内の１つが吸引チューブ５４を最初に完全に閉塞させてから次のポンプローラ５２が吸引チューブ５４を閉塞させ始めるまでは、吸引チューブ５４がポンプローラ５２の押圧から解放されて弾性力で復元することによって吸引チューブ５４内の流路面積が大きくなるので、回転走行方向への流速が速くなり、吸引流量が増加する。このように、吸引流量の増減が繰り返し行われるため、図６（ｂ）に示すような脈動と呼ばれるｓｉｎ曲線状の周期的な吸引圧や吸引流量の変動が発生する。この脈動により、被手術眼内に圧力変動が生じたり、吸引圧や吸引流量の正確な制御が困難になる問題があった。
【０００６】
本発明は上記従来技術に鑑み、蠕動型ポンプによって生じる脈動を抑制し、安定した吸引圧及び吸引流量を得ることができる灌流吸引装置を提供することを技術課題とする。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【０００８】
（１） 回転走行可能に複数配置されたローラを備え該ローラが吸引チューブを押し潰して閉塞させながら回転走行することによって吸引チューブ内に吸引圧を発生させる蠕動型ポンプを有し、手術部位に灌流ビンの高さによって灌流圧を調整されて供給される灌流液と共に除去組織を、吸引チューブを介して、吸引する眼科用灌流吸引装置において、前記複数のローラのある一つが前記吸引チューブを閉塞し始めてから略閉塞させるまでの過程の走行速度を徐々に速くし、該ローラが吸引チューブを略閉塞させてから次のローラが吸引チューブを閉塞し始めるまでの走行速度を徐々に遅くするように、前記ローラの走行速度を閉塞過程に対応させて変化させる蠕動型ポンプ制御手段を備えたことを特徴とする。
【００１９】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関し、白内障手術に使用する灌流吸引装置を一実施形態として挙げ、図面に基づいて説明する。図１は実施形態である灌流吸引装置の概略構成図である。
灌流ポール２には、灌流液が満たされた灌流ビン１が吊り下げられている。灌流ポール２は、入力部１１で設定されるポール高さに従い、上下駆動装置１２によって上下動される。灌流ビン１は、灌流ポール２の上下動により、その高さが変更されて灌流圧が調節される。
【００２０】
灌流ビン１からの灌流液は、灌流チューブ３を通過し、術者に把持される手術用ハンドピース５を介して患者眼Ｅに灌注される。灌流チューブ３の途中には制御弁４が設けられており、制御弁４の開閉によって灌流液の流出制御が行われる。本実施形態では、手術用ハンドピース５として、白内障によって不透明になり硬化した水晶体核を先端に設けられた破砕用チップ５ａの超音波振動によって乳化吸引除去するＵＳハンドピースを利用している。破砕用チップ５ａの超音波振動は、ハンドピース５内に設けられた超音波振動子に電力ケーブル１３を介して電力供給することによって行なわれる。
【００２１】
ハンドピース５には可撓性を持つ吸引チューブ６が接続され、その途中には圧力センサ１５に繋がる接続部１６及び蠕動型吸引ポンプ７が設けられている。また、吸引チューブ６はバイパスチューブ１７を介して灌流チューブ３と連通しており、バイパスチューブ１７の流出制御は制御弁１８によって行われる。圧力センサ１５は吸引圧を常時検出しており、吸引圧が設定値より上昇したときは、必要に応じて制御部１０の制御によって制御弁１８が開き、灌流液を灌流チューブ３からバイパスチューブ１７を介して吸引チューブ６内に流入させて吸引圧を下げる。吸引圧の上限は、入力部１１のスイッチ操作によって設定される。
【００２２】
灌流液及び除去組織は、ハンドピース５の破砕用チップ５ａに設けられた吸引孔から吸引され、吸引チューブ６及び吸引ポンプ７を介して廃液袋８に排出投入される。制御部１０は、フットスイッチ１４の踏み込みポジション位置の信号や入力装置１１による設定値に基づき、吸引ポンプ７を駆動制御して吸引圧を制御する。
【００２３】
吸引ポンプ７は、図２の蠕動型吸引ポンプの要部構成図に示すように、回転台２０と、回転台２０の同一円周上に（回転シャフト２４に対して等間隔に）回転走行可能に配置された４つのポンプローラ２１と、チューブ受け２２とから構成されている。チューブ受け２２はレバー２３の操作によって上下動が可能であり、吸引ポンプ７とチューブ受け２２との間に容易に吸引チューブ６を配置することができる。回転台２０が回転すると、４つのポンプローラ２１が順次吸引チューブ６を押し潰して閉塞させながら回転走行する。これにより、吸引チューブ６内の流体が移送されて吸引圧が発生する。
【００２４】
以上のような構成を有する灌流吸引装置において、脈動を減衰するための吸引ポンプ７の駆動制御について、図３に示す吸引ポンプ７の駆動制御の説明図に基づいて説明する。図３（ａ）はポンプローラ２１が吸引チューブ６を押し潰して閉塞させるときの駆動位置を説明する図である。図３（ｂ）はポンプローラ２１の走行速度（回転台の回転速度）Ｖの時系列変化を示す図である。図３（ｃ）は吸引圧Ｐの時系列変化を示す図であり、図３（ｃ）中の点線が定常（一定）回転走行速度の蠕動型ポンプの吸引圧変動を示している。
【００２５】
図３（ａ）に示すように、ポンプローラ２１が吸引チューブ６を押し潰して閉塞させ始める位置Ａから最初に完全に吸引チューブ６を押し潰して閉塞させる位置Ｂまでの区間では、吸引チューブ６のハンドピース５側流路が徐々に狭くなる。従って、ポンプローラ２１がこの区間Ａ−Ｂを走行するときは、吸引流量も徐々に減少する。ポンプローラ２１が位置Ｂに達するときは、吸引流量が最も少なくなり、吸引圧が最小になる。
【００２６】
一方、ポンプローラ２１が最初に完全に吸引チューブ６を押し潰して閉塞させる位置Ｂから次のポンプローラ２１が吸引チューブ６を閉塞させ始める位置Ｃ（次のポンプローラ２１は位置Ａに至っている）までの区間では、吸引チューブ６がポンプローラ２１の押圧から解放されて弾性力で復元するため、吸引チューブ６のハンドピース５側流路が徐々に広くなる。従って、ポンプローラ２１がこの区間Ｂ−Ｃを走行するときは、吸引流量も徐々に増加する。ポンプローラ２１が位置Ｃに達するときは、吸引流量が最も多くなり、吸引圧が最大になる。そして、以上の動作が繰り返されることで、吸引チューブ６内に連続的に吸引圧が発生される。
【００２７】
以上のようなポンプローラ２１の位置関係による吸引圧の変動を考慮して、制御部１０の制御によってポンプローラ２１の走行速度（回転台２０の回転速度）Ｖを図３（ｂ）に示すように変化させる。すなわち、ポンプローラ２１が区間Ａ−Ｂを回転走行するときは吸引流量が徐々に減少するので、制御部１０は位置Ａから位置Ｂに向かって回転走行するときのポンプローラ２１の走行速度を徐々に速くしていき、位置Ｂで最大走行速度となるように制御する。区間Ａ−Ｂでは吸引チューブ６が押し潰されて閉塞されることで吸引圧が低くなる傾向があるが、走行速度を速くしていくことで、吸引圧の低下を抑制することができる。
【００２８】
逆に、ポンプローラ２１が区間Ｂ−Ｃを回転走行するときは吸引流量が徐々に増加するので、制御部１０は位置Ｂから位置Ｃに向かって回転走行するときのポンプローラ２１の走行速度を徐々に遅くしていき、位置Ｃで最小走行速度となるように制御する。区間Ｂ−Ｃでは吸引チューブ６が徐々に復元するため、吸引流量が多くなり、区間Ａ−Ｂとは逆に吸引圧が高くなる傾向があるが、走行速度を遅くしていくことで、急激な吸引圧の上昇を抑制することができる。
【００２９】
以上のように、ポンプローラ２１が吸引チューブ６を押し潰して閉塞させる過程に応じ、すなわち、ポンプローラ２１の回転走行によって略ｓｉｎ曲線状に発生される吸引圧（吸引流量）の変動に対応させて、ポンプローラ２１の走行速度も略ｓｉｎ曲線状に変化するように制御する。これにより、図３（ｃ）の実線で示すように、吸引圧の変動を抑えることができ、手術時における被手術眼内での圧力変動も少なくすることができる。
【００３０】
また、ポンプローラ２１が吸引チューブ６を押し潰して閉塞させる過程に応じ、すなわち、ポンプローラ２１の回転走行によって発生される吸引圧（吸引流量）の変動に対応させて、ポンプローラ２１の走行速度を略矩形波（パルス波）状に変化させるように制御することで、吸引圧の変動を抑えることもできる。
【００３１】
制御部１０の制御によってポンプローラ２１の走行速度（回転台２０の回転速度）Ｖを図４（ａ）に示すように変化させる。すなわち、ポンプローラ２１が区間Ａ−Ｂを走行するときは吸引流量が徐々に減少するので、制御部１０は位置Ａから位置Ｂに向かって回転走行するときのポンプローラ２１の走行速度を所定の基準速度に対して所定分上げる（速くする）。逆に、ポンプローラ２１が区間Ｂ−Ｃを走行するときは吸引流量が徐々に増加するので、制御部１０は位置Ｂから位置Ｃに向かって回転走行するときのポンプローラ２１の走行速度を所定の基準速度にする（遅くする）。これにより、吸引圧の変動を抑えることができ、手術時における被手術眼内での圧力変動も少なくすることができる。
【００３２】
また、平均的な基準速度による平均的な吸引流量に対して、より多くの吸引流量が得られるときは、図４（ｂ）に示すように、基準速度のみを上げるようにしてもよいし、基準速度と高速化したときの走行速度との両方を上げるようにしてもよい。
【００３３】
なお、ポンプローラ２１の走行速度は、閉塞させる過程すなわち発生される吸引圧（吸引流量）の変動に合わせるように、回転走行角度に対応させて変化させればよい。例えば、回転板２０に固定されたシャフト２４を回転させるためにフルステップ１．８°のパルスモータを使用する場合は、１パルスで０．４５°回転するため、回転走行角度に基づく制御は容易に行うことができる。
【００３４】
例えば、ポンプローラ２１が４つ配置されている場合は、約４５°（前後５°程度を含む）回転走行する毎に高速化と低速化とを繰り返せばよい（すなわち、９０°（３６０°／４：ポンプローラの数）の回転走行で高速化と低速化とを１回ずつ行い、４２°の回転走行を高速化した場合は４８°の回転走行を低速化する）。また、ポンプローラ２１が６つ配置されている場合は、約３０°（前後５°程度を含む）回転走行する毎に高速化と低速化とを繰り返せばよい（すなわち、６０°（３６０°／６：ポンプローラの数）の回転走行で高速化と低速化とを１回ずつ行い、２７°の回転走行を高速化した場合は３３°の回転走行を低速化する）。このように、回転走行角度に基づく制御は、ポンプローラ２１の数に関係なく容易に行うことができる。
【００３５】
なお、本実施形態では、ポンプローラ２１が回転シャフト２４を中心にして回転走行する構成としたが、図５に示したように、ポンプローラ２１が直線走行を含んだ回転走行する構成としてもよい。もちろん、ポンプローラの数も４つに限定されるものではない。
【００３６】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、蠕動型ポンプによって生じる脈動を抑制し、手術眼内での圧力変動を少なくすることができる。また、安定した吸引圧及び吸引流量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施形態である灌流吸引装置の要部概略図である。
【図２】蠕動型吸引ポンプの要部構成図である。
【図３】吸引ポンプの駆動制御の説明図である。
【図４】吸引ポンプの駆動制御の変容例の説明図である。
【図５】ポンプローラの回転走行の変容例の説明図である。
【図６】従来の蠕動型吸引ポンプの要部概略図である。
【符号の説明】
５ 手術用ハンドピース
６ 吸引チューブ
７ 蠕動型吸引ポンプ
１０ 制御部
２０ 回転台
２１ ポンプローラ
Claims (1)
- 回転走行可能に複数配置されたローラを備え該ローラが吸引チューブを押し潰して閉塞させながら回転走行することによって吸引チューブ内に吸引圧を発生させる蠕動型ポンプを有し、手術部位に灌流ビンの高さによって灌流圧を調整されて供給される灌流液と共に除去組織を、吸引チューブを介して、吸引する眼科用灌流吸引装置において、前記複数のローラのある一つが前記吸引チューブを閉塞し始めてから略閉塞させるまでの過程の走行速度を徐々に速くし、該ローラが吸引チューブを略閉塞させてから次のローラが吸引チューブを閉塞し始めるまでの走行速度を徐々に遅くするように、前記ローラの走行速度を閉塞過程に対応させて変化させる蠕動型ポンプ制御手段を備えたことを特徴とする眼科用灌流吸引装置。
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