以下、図1から13を用いて、本発明の参考例について説明する。図1は参考例による液晶表示装置を示す略断面図である。図1において、液晶表示装置10は、一対の透明なガラス基板12、14と、これらのガラス基板12、14の間に挿入された液晶16とを含む。液晶16は負の誘電率異方性を有する液晶である。第1のガラス基板12は電極18及び垂直配向膜20を有し、第2のガラス基板14は電極22及び垂直配向膜24を有する。さらに、第1のガラス基板12の外側には偏光板26が配置され、第2のガラス基板14の外側には偏光板28が配置される。ここで、説明の簡単化のために、第1のガラス基板12を上基板と言い、第2のガラス基板14を下基板と言う。
上基板12がカラーフィルタ基板として構成される場合には、この上基板12はさらにカラーフィルタ及びブラックマスクを含む。この場合、電極18は共通電極である。また、下基板14がTFT基板として構成される場合には、この下基板12はTFTとともにアクティブマトリクス駆動回路を含む。この場合、電極22は画素電極である。
図2は液晶の配向を制御するための配向規制構造体を有する垂直配向式液晶表示装置を示す略断面図である。簡単化のために、図2においては図1の電極18、22及び配向膜20、24は省略されている。図2において、上基板12は配向規制構造体として下基板14に向かって突出する突起30を有する。同様に、下基板14は配向規制構造体として上基板12に向かって突出する突起32を有する。突起30、32は図2の紙面に垂直に長く線状に延びる。
図3は突起30、32を図2の矢印III の方向から見た平面図である。図3はさらにアクティブマトリクス駆動回路の1画素の部分を示している。アクティブマトリクス駆動回路はゲートバスライン36と、ドレインバスライン38と、TFT40と、画素電極22とを含む。上基板12の突起30は画素電極22の中心を通り、下基板12の突起32はゲートバスライン36を通る。このように、突起30、32は、上から見た平面図においては、互いに平行に且つ交互に延びる。ただし、図3に示した例は非常に簡単な例であり、突起30、32の配置はこのような例に限定されるものではない。
図2に示されるように、負の誘電率異方性を有する液晶16が垂直配向膜20、24の間に配置されていると、電圧不印加時に液晶分子16Aは垂直配向膜20、24に対して垂直に配向する。突起30、32の近傍では、液晶分子16Bは突起30、32に対して垂直に配向する。突起30、32は傾斜を含んでいるので、突起30、32に対して垂直に配向する液晶分子16Bは垂直配向膜20、24に対して斜めに配向する。
液晶16に電圧を印加すると、負の誘電率異方性を有する液晶16は電界に対して垂直な方向を向き、よって液晶分子は基板面(垂直配向膜20、24)に概ね平行に倒れるようになる。通常は、垂直配向膜20、24にラビングがしてないと、液晶分子が倒れる方向は一定に定まらず、液晶の挙動が安定しない。しかし、本発明のように、互いに平行に延びる突起30、32があると、これらの突起30、32の近傍の液晶分子16Bはあたかもプレチルトしているがごとく垂直配向膜20、24に対して斜めに配向しているので、電圧印加時にはこれらの液晶分子16Bの倒れる方向は決まってしまう。
例えば、図2の上基板14の左側の突起30とその左下の突起32との間の液晶分子について見ると、これらの突起30、32間の液晶分子16Bは右上から左下方向に配向しているので、電圧印加時に液晶分子16Bは時計回り方向に回転しながら垂直配向膜20、24に対して平行に倒れていく。従って、これらの突起30、32間の液晶分子16Aは液晶分子16Bの挙動に従って時計回り方向に回転しながら垂直配向膜20、24に対して平行に倒れていく。同様に、図2の上基板14の左側の突起30とその右下の突起32との間の液晶分子についても、突起30、32の間の液晶分子16Bは左上から右下方向に配向しているので、電圧印加時に液晶分子16Bは反時計回り方向に回転しながら垂直配向膜20、24に対して平行に倒れていく。従って、これらの突起30、32間の液晶分子16Aは液晶分子16Bの挙動に従って反時計回り方向に回転しながら垂直配向膜20、24に対して平行に倒れていく。
図4は、図2及び図3の突起30、32の配置に従って、電圧印加時に倒れた液晶分子16Aを示す図である。図4(A)は平面図、図4(B)は線IVB−IVBに沿った断面図である。上基板12の突起30の一方側の液晶分子16Aは突起30に向かって時計回り方向(矢印Xの方向)に回転しながら倒れ、上基板12の突起30の他方側の液晶分子16Aは突起30に向かって反時計回り方向(矢印Yの方向)に回転しながら倒れる。なお、図4において、電圧不印加時には液晶分子16Aは図4の紙面に垂直に配向する。このようにして、ラビングなしに液晶の配向が制御できるとともに、1画素内で液晶分子の配向方向の異なる複数の領域ができるので、配向分割が達成され、良い視野の得られる角度範囲の広い液晶表示装置を実現することができる。
図5は突起(配向規制構造体)30、32の他の例を示す平面図である。突起30、32は互いに平行に延び且つ屈曲する。つまり、突起30、32が平行しながら蛇行状に屈曲する。この例では、突起30、32の小部分の両側にある液晶分子16C、16Dは互いに逆を向いて配向し、且つ突起30、32の屈曲の次の小部分の両側にある液晶分子16E、16Fは互いに逆を向いて配向している。そして、液晶分子16C、16Dは液晶分子16E、16Fに対して90度回転している。従って、1画素に液晶の配向の異なる4つの領域ができる配向分割が達成され、視角特性はさらによくなる。
図6は配向規制構造体がともに突起30、32である液晶表示装置を図解的に示す図である。図6では、上基板12に設けられた電極18、および下基板14に設けられた電極22が示されている。突起30、32は電極18、22の上に誘電体として形成される。42は突起30、32付近の電界を示す。突起30、32は誘電体であるので、突起30、32付近の電界42は斜め電界になり、電圧印加時に液晶分子は矢印で示されるように電界42に対して垂直になるように倒れていく。液晶分子が斜め電界により倒れていく向きは、液晶分子が突起30、32の斜面に起因して倒れていく方向と同じである。
図7は、下基板14の配向規制構造体が突起32であり且つ上基板12の配向規制構造体がスリット構造44である場合の液晶表示装置を示す略断面図である。スリット構造44は上基板12の電極18のスリットを含む。実際には、垂直配向膜20(図7では省略されている)がスリットを有する電極18を覆っているので、垂直配向膜20は電極18のスリットの位置において窪んでいる。スリット構造44は電極18のスリットと垂直配向膜20の窪みの部分とを含む。そして、このようなスリット構造44が図6の突起30と同様に線状に長く延びる。
スリット構造44の近傍においては、上基板12の電極18と下基板14の電極22との間に斜め電界42が形成される。この斜め電界42は図6において突起30の近傍に形成される斜め電界42と同様であり、電圧印加時に液晶分子が斜め電界42に従って倒れる。この場合に液晶分子が倒れる様子は突起30がある場合に液晶分子が倒れる様子と同じである。従って、図6のように突起30と突起32との組み合わせにより液晶の配向を制御するのと同様に、スリット構造44と突起32との組み合わせにより液晶の配向を制御することができる。
図8は、上基板12及び下基板14の配向規制構造体がともにスリット構造4446である場合の液晶表示装置を示す略断面図である。スリット構造44は図6の突起30と同様に線状に長く延び、スリット構造46は図6の突起32と同様に線状に長く延びる。そして、スリット構造44、46の近傍においては、上基板12の電極18と下基板14の電極22との間に斜め電界42が形成される。この斜め電界42は図6において突起30、32の近傍に形成される斜め電界42と同様であり、電圧印加時に液晶分子が斜め電界42に従って倒れる。この場合に液晶分子が倒れる様子は突起30、32がある場合に液晶分子が倒れる様子と同じである。従って、図6のように突起30と突起32との組み合わせにより液晶の配向を制御するのと同様に、スリット構造44、46の組み合わせにより液晶の配向を制御することができる。
従って、突起30、32と、スリット構造44、46とは同様に液晶の配向を制御することができる。そして、突起30、32と、スリット構造44、46とは、配向規制構造体(又は線状の配向規制構造体)として共通の概念で理解されることができる。
図9は突起30(32)である線状の構造体を示す断面図である。突起30は例えば次のようにして形成してある。下基板14にアクティブマトリクスとともに電極22を形成する。電極22の上に突起となるべき誘電体30Aを形成する。誘電体30Aはレジストを塗布し、パターニングして形成する。誘電体30A及び電極22の上に垂直配向膜24を形成する。このようにして、突起30が形成される。
図10はスリット構造44(46)である線状の壁構造の例を示す断面図である。スリット構造44は例えば次のようにして形成してある。上基板14にカラーフィルタやブラックマスク等を形成した後、電極18を形成する。電極18をパターニングし、スリット18Aを形成する。スリット18Aを有する電極18の上に垂直配向膜20を形成する。このようにして、スリット構造44が形成される。
図11は線状の構造体を有する液晶表示装置の配向の問題点を説明する図である。以後は主として線状の構造体は突起30、32として説明されるが、突起30、32の代わりにスリット構造(単にスリットと呼ぶこともある)44、46としても同様である。
図11は図4と類似した状態を示している(ただし、図4は突起30、32の間の間隙部にある液晶分子16Aのみを示し、図11は突起30、32の間の間隙部にある液晶分子16Aおよび突起30、32の上及び近傍にある液晶分子を示している。また、図11では下基板14の突起32が中央に位置している)。48は偏光板26、28の配置を示している。偏光板26、28は突起30、32に対して45度の角度で配置される。
上記したように、電圧印加時に突起30、32の間の間隙部にある液晶分子16Aは下基板の突起32(又は上基板12の突起30)の両側で突起32に対して垂直な方向に且つ互いに逆方向を向いて寝ていく。突起30、32の上及び近傍にある液晶分子はこれらの互いに逆方向を向いて寝ていく液晶分子16Aの間にあってこれらの液晶分子16Aと互いに連続しながら寝ていく。液晶分子は全て図11の紙面に平行な平面内で配向するようになる。この場合、突起32の真上に位置する液晶分子は、図11において右を向いて倒れる可能性と、左を向いて倒れる可能性とがある。しかし、突起32の真上に位置する液晶分子が右を向いて倒れるか、又は左を向いて倒れるかは、定かではない。そのため、同一の突起32上で液晶分子が右を向いて倒れた配向状態と液晶分子が左を向いて倒れた配向状態とが混在し、これらの2つの配向状態が接しているところでは、液晶の配向の境界ができる。このような複数の境界が1つの突起32上に存在する。
また図11のように上下の基板12、14の突起30、32上で液晶の配向状態が同一の場合(例えば領域C)には、突起30、32間の配向はベンド的な配向となり、上下の基板12、14の突起30、32上で液晶の配向状態が異なる場合(例えば領域A)には、突起30、32間の配向はスプレイ的な配向となる。すなわち、突起30、32間においても2つの配向状態が混在し、これらの配向状態の異なる領域の間に境界が形成される。
さらにこれらの配向状態を詳しく見た場合、上下基板12、14の合わせずれ等のため例えばスプレー的な配向であっても微妙に配向状態が異なってくる。そのため透過率最大となる偏光板26、28の角度がそれぞれの領域で異なってくる。この様子を実際に幾つかの領域で偏光板26、28を回転させて測定した。図11において、領域Aにおいては、正常な配置48に対して偏光板26、28を−13度回転したことを示す。領域Bにおいては、正常な配置48に対して偏光板26、28を−4度回転したことを示す。領域Cにおいては、正常な配置48に対して偏光板26、28を+2度回転したことを示す。
図12は図11の領域A、B、Cで測定した透過率を示す図である。曲線Aは図11の領域Aでの測定結果を示し、曲線Bは図11の領域Bでの測定結果を示し、曲線Cは図11の領域Cでの測定結果を示す。曲線Aは、偏光板26、28が正常な配置48(突起30、32に対して45度)からかなり外れた角度ではかなり高い透過率が得られるが、偏光板26、28が正常な配置48(突起30、32に対して45度)にある場合にはほとんど光を透過できないことを示している。曲線Bは、偏光板26、28が正常な配置48(突起30、32に対して45度)から少し外れた角度で比較的に高い透過率が得られることを示している。曲線Cは、偏光板26、28が正常な配置48(突起30、32に対して45度)にある場合にある程度の透過率が得られることを示している。このように、突起30、32を用いる場合、透過率特性の異なった複数の領域が形成されることになる。
図13は電圧印加後の透過率の変化を示す図である。図11及び図12を参照して説明したような配向状態の異なる領域が存在すると、電圧印加直後にオーバーシュートと呼ばれる現象が発生する。すなわち、電圧を印加した後、例えば1000msで透過率が非常に高くなり、それから透過率が次第に低下してきて所定の値で平衡するようになる。平衡状態の透過率からどれだけ白輝度が上昇しているかでオーバーシュートを表す。初期の輝度をX、平衡したときの輝度をYとすると、オーバーシュート(%)は、(Y−X)/X×100で定義される。
図11に示されるように、透過率の異なった領域A、B、Cがあると、電圧印加後にこれらの領域A、B、Cの液晶は各領域内で動き続けるとともに、隣接する領域の液晶と影響しあいながら、領域A、B、C自体が動き続け(領域A、B、C間の境界が移動し)、それによって透過率の上昇が起こり、オーバーシュートが大きくなる。オーバーシュートは残像の原因ともなり、表示品質の悪化をもたらす。また、特徴の異なった領域A、B、Cがあると、表示性能に差が生じてくることにもなり、一定の品質が得られなくなる。
従って、突起30、32の上の液晶の配向状態を制御し、透過率の異なった領域の液晶がいつまでも動き続けるのを防止し、よって輝度の向上及び応答速度の改善が図ることが望まれる。
図14は本発明の第1実施例による突起(線状の構造体)30、32の例を示す図である。線状の構造体として、突起30、32の代わりにスリット構造44、46としてよいことは言うまでもない。
液晶表示装置は上記したように上基板12の突起30及び下基板の突起32を有する。各突起30、32は複数の構成単位30S、32Sから形成される。構成単位30S、32Sは、ほぼ一様な形状を有し、且つ形状の変化又は切断によって互いに区分されている。図14の例では、2つの隣接する構成単位30S、32Sは狭くなった部分で接続されている。また、上基板12の突起30の構成単位30Sと下基板14の突起32の構成単位32Sとは、互いに平行に延び且つ互いに重なる位置に配置される。
このように、各突起30、32は複数の構成単位30S、32Sから形成されるので、各構成単位30S、32S内に図11に示したような透過率の異なる複数の領域A、B、Cが形成される可能性が小さくなる。また、そのような領域A、B、Cが動き続けることもなくなり(領域A、B、C間の境界が移動し続けることもなくなり)、液晶が水平状態で安定的に配向するまでの時間が速くなる。それによって、オーバーシュートが小さくなり、輝度の向上及び応答速度の改善を図ることができる。仮に透過率ロスの大きい領域があったとしても、透過率ロスの小さい領域が多数存在すればその影響を打ち消すことができる。このためには、各突起30、32はできるだけ多くの構成単位30S、32Sを含むのがよい。好ましくは、構成単位30S、32Sの長さが一対の基板12、14の突起30、32間の間隙の値以上であり、且つ200μm以下である。
図15は突起30、32の変形例を示す図である。各突起30、32は複数の構成単位30S、32Sから形成される。この例では、突起30、32は切断されており、すなわち構成単位30S、32Sは互いに離れている。その他の特徴は図14の例と同様である。
図16は突起30、32の変形例を示す図である。各突起30、32は複数の構成単位30S、32Sから形成される。この例では、突起30、32は屈曲した形状に形成されている。その他の特徴は図15の例と同様である。
図17は突起30、32の変形例を示す図である。各突起30、32は複数の構成単位30S、32Sから形成される。この例では、突起30、32は切断されており、すなわち構成単位30S、32Sは互いに離れている。さらに、上基板12の突起30の構成単位30Sと下基板14の突起32の構成単位32Sとは、互いに平行に延び且つ互いにずらされた位置に配置される。こうすれば、ドメイン数がさらに増えるため都合がよい。もちろん図14のように構成単位が接触している場合でも、図17のように上下基板の突起30、32を構成する構成単位30S、32Sをずらしてもよい。
図18は突起30、32の変形例を示す図である。各突起30、32は複数の構成単位30S、32Sから形成される。この例では、突起30、32は切断されており、すなわち構成単位30S、32Sは互いに離れている。さらに、上基板12の突起30の構成単位30Sと下基板14の突起32の構成単位32Sとは、長さが異なる。上基板12の突起30の構成単位30Sの長さは、下基板14の突起32の構成単位32Sの長さのほぼ3倍ある。上基板12の突起30の構成単位30Sの中心は、下基板14の突起32の3つの構成単位32Sの中心と一致する。
図19は突起30、32の変形例を示す図である。各突起30、32は複数の構成単位30S、32Sから形成される。この例では、突起30、32は切断されており、すなわち構成単位30S、32Sは互いに離れている。さらに、上基板12の突起30の構成単位30Sは互いに長さが異なり、下基板14の突起32の構成単位32Sは互いに長さが異なる。この例では、構成単位30S、32Sはそれぞれ2種類の長さのものからなり、長さの異なるものをセットにして交互に配置される。上基板12の突起30の構成単位30Sのセットと下基板14の突起32の構成単位32Sセットとは、さらに位置をずらして配置される。図18及び図19の構成単位30S、32Sは前の実施例のように一致した位置に配置したり、接続した形状に形成したりすることもできる。
図20は突起30、32の変形例を示す図である。各突起30、32は複数の構成単位30S、32Sから形成される。この例では、突起30の構成単位30Sは突起32の構成単位32Sを1つおきに飛び越すように配置され、突起32の構成単位32Sは突起30の構成単位30Sを飛び越すように配置される。例えば、上基板の突起30の構成単位30Sが図2の突起30の位置に1つおきに飛び越すように構成単位30Sが配置され、下基板の突起32の構成単位32Sが図2の突起30の真下の位置に上基板の突起30の構成単位30Sの抜けた位置に1つおきに飛び越すように配置される。みかけ上は上下の基板の突起30、32の構成単位30S、32Sにより一列の構成単位が形成されているように見える。
以上の例では、突起30、32の構成単位30S、32Sを楕円形形状で示したが、これに限らず長方形や菱形あるいはその他の多角形などでもよく形に制限はない。また、突起30、32の構成単位30S、32Sの長さとしては平均化させる目的から、R、G、Bの画素をひとまとめにした長さすなわち200μm以下であることが望ましい。また一対の基板を重ね合わせたときの突起間隙が液晶の配向を制御する最低距離となるため、突起30、32の構成単位30S、32Sの長さもこの突起間隙以上であるのが望ましい。
これまでは突起30、32の場合について述べてきたが、以上のことは電極のスリットを含むスリット構造44、46の場合にもあてはまる。すなわち、スリットを複数の構成単位からなるようにすればよい。この場合にも上で述べた配列はそのまま使える。また構成単位の長さの制限も同様になる。
図21は線状の構造体の変形例を示す図である。図21は3つの画素電極22R、22G、22Bの部分を示しており、線状の構造体は図5に示した屈曲形状のものである。上基板12の線状の構造体は突起30からなり、下基板14の線状の構造体はスリット構造46からなる。つまり、図21の線状の構造体は図7の突起とスリット構造を上下逆にしたものに相当する。
図22は図21の画素電極22R及びスリット構造46を示す図である。画素電極22Rは複数のスリット22S及び隣接するスリット22S間に位置する画素電極22Rと同じ材料(ITO)の部分22Tを有する。スリット22Sは画素電極22Rのパターニング時に形成できる。この画素電極22Rの上に垂直配向膜24を塗布すれば、画素電極22Rの一連のスリット22Sの部分がスリット構造46となり、スリット22Sの部分がスリット構造46の構成単位46Sとなる。材料の部分22Tは隣接する構成単位46Sを分離する部分になる。
実施例においては、スリット22S(スリット構造46の構成単位46S)の幅は5μmであり、長さは12μm、26μm、33μmのものがあった。スリット22S(スリット構造46の構成単位46S)の長さは10μm以上あるのが望ましい。材料の部分22Tの長さは4μmであった。材料の部分22Tの長さは突起30の幅以下であるのが望ましい。同様に、突起30の構成単位30Sの幅は5μmであり、長さは12μm、26μm、33μmのものがあった。突起30の構成単位30S間のギャップの長さは4μmであった。
図23は突起30からなる線状の構造体の形成を説明する図である。(A)に示されるように、基板12を準備し、カラーフィルタ及びブラックマスク及び電極18を施す。(B)に示されるように、電極18(図示省略)を有する基板12にポジ形レジスト50であるLC200(シブレイ製)を1500rpmで30sの条件でスピンコートする。ここではポジ形レジストを用いたが必ずしもポジ形レジストである必要はなく、ネガ形レジストでもよいし、さらにはレジスト以外の感光性樹脂を用いてもよい。(C)に示されるように、スピンコートしたレジスト50を90℃、20分でプリベークを行った後、フォトマスク52を介して密着露光を行った(露光時間5s)。(D)に示されるように、次にシブレイ製の現像液により現像を行った(現像時間1分)後120℃、60分、次いで200℃、40分のポストベークを行い、突起30を形成した。この突起30の幅は5μm、高さは1.5μm、突起30の構成単位30Sの長さは上記した通りであった。(E)に示されるように、垂直配向膜JALS684(JSR製)を2000rpm、30sの条件でスピンコートし、180℃、60分のベークを行って垂直配向膜20を形成した。
この基板12とTFT基板14の一方にシール(XN−21F、三井東圧化学製)を形成し、もう一方の基板に4.5μmのスペーサ(SP−20045、積水ファインケミカル製)を散布し、両基板を重ね合わせた。最後に135℃、60分のベークを行って空パネルを作製した。なおラビング及び洗浄は行っていない。次に、真空注入法によって、この空パネル中に負の誘電異方性を有する液晶MJ961213(メルク製)を注入した。最後に注入口を封口材(30Y@228、スリーボンド製)により封止して液晶パネルを作製した。
こうして作製した液晶パネルについて5V印加時の透過率を測定したところ、25.7%であった。また0Vから5Vまで電圧を印加したときの応答速度を測定したところ、オーバーシュートは1.6%であった。
図15の線状の構造体を有する液晶表示装置の場合には、5V印加時の透過率を測定したところ、26.3%であった。また0Vから5Vまで電圧を印加したときの応答速度を測定したところ、オーバーシュートは1.1%であった。突起の幅は10μm、高さは1.5μm、突起構成単位の長さは30μm、突起構成単位間の間隙は10μm、上下基板を重ね合わせたときの突起の間隙は20μmとなるようにした。
また図17の線状の構造体を有する液晶表示装置の場合には、5V印加時の透過率を測定したところ、26.6%であった。また0Vから5Vまで電圧を印加したときの応答速度を測定したところ、オーバーシュートは0.9%であった。また図18の線状の構造体を有する液晶表示装置の場合には、5V印加時の透過率を測定したところ、26.1%であった。また0Vから5Vまで電圧を印加したときの応答速度を測定したところ、オーバーシュートは1.6%であった。この場合、突起の幅は10μm、高さは1.5μm、突起構成単位の長さは30μm、もう一つの突起構成単位の長さは70μm、突起構成単位間の間隙は10μm、上下基板を重ね合わせたときの突起の間隙は20μmとなるようにした。また上下基板で長い突起構成単位が短い突起構成単位の2つ分と同じ位置になるようにして一対の基板を貼り合わせてパネルを作製した。
図20の線状の構造体を有する液晶表示装置の場合には、5V印加時の透過率を測定したところ、26.0%であった。また0Vから5Vまで電圧を印加したときの応答速度を測定したところ、オーバーシュートは1.6%であった。この場合、突起の幅は10μm、高さは1.5μm、突起構成単位の長さは30μm、突起構成単位間の間隙は50μm、突起構成単位間の間隙は10μm、上下基板を重ね合わせたときの突起の間隙は20μmとなるようにした。また一方の基板の突起構成単位間の間隙にもう一方の基板の突起構成単位がくるように突起を形成した。
比較例1として下記の測定を行った。構成単位を有しない突起を形成して、液晶パネルを作製した。なお突起の幅は10μm、高さは1.5μm、上下基板を重ね合わせたときの突起の間隙は20μmとなるようにした。5V印加時の透過率を測定したところ、22.8%であった。また0Vから5Vまで電圧を印加したときの応答速度を測定したところ、オーバーシュートは7.5%であった。
比較例2として下記の測定を行った。図15と同様な突起を有し、しかし突起の構成単位の長さが長い液晶パネルを作製した。突起の幅は10μm、高さは1.5μm、突起構成単位の長さは300μm、突起構成単位間の間隙は10μm、上下基板を重ね合わせたときの突起の間隙は20μmとなるようにした。5V印加時の透過率を測定したところ、23.5%であった。また0Vから5Vまで電圧を印加したときの応答速度を測定したところ、オーバーシュートは6.3%であった。
比較例3として下記の測定を行った。図15と同様な突起を有し、しかし突起の構成単位の長さが短い液晶パネルを作製した。突起の幅は10μm、高さは1.5μm、突起構成単位の長さは10μm、突起構成単位間の間隙は10μm、上下基板を重ね合わせたときの突起の間隙は20μmとなるようにした。5V印加時の透過率を測定したところ、24.1%であった。また0Vから5Vまで電圧を印加したときの応答速度を測定したところ、オーバーシュートは5.9%であった。
図24は図11と類似した線状の構造体を有する液晶表示装置の液晶の配向を示す図である。図25は図24の構成における表示特性を示す図である。図25において、54は暗く見える領域である。
図24において、上基板12の突起30と下基板14の突起32の間に位置する液晶分子は、突起30、32に対して概ね垂直に配向する。また突起30、32上の液晶分子は、突起30、32に概ね平行に配向する。
この突起30、32上の配向状態の異なる領域の境界や分割数が、電圧印加後数秒から長い場合には数十秒にわたって変化し続けることが分かった。これが液晶パネルの透過率変化として認識されることがオーバーシュートの主要因であることが分かった。
この原因は次のように考えられる。突起30、32上において液晶分子の向く方向は、例えば図24のように突起30、32が左右に延びている場合、右方向と左方向の2通りが考えられる。しかし、どちらを向くか規制する手段がないと、電圧印加直後はいずれかの向きにランダムに倒れ込む。その後、突起30、32上の配向状態の異なる領域は相互に影響を与え合うが、これらの領域の液晶は配向方向の規制がないため、周囲の影響を受けることでその状態を容易に変化させてしまう。このようにして、突起30、32上の配向状態の異なる領域の液晶は長い時間変化し続けるものと思われる。
上記したように、突起又はスリット構造を複数の構成単位から構成することにより、構成単位の分割位置を基準とした配向方向の規制が可能になった。
図26は複数の構成単位からなる線状の構造体有する液晶表示装置の液晶の配向を示す図である。図27は図26の構成における表示特性を示す図である。図27において、54は暗く見える領域である。図26及び図27は例えば図15の液晶表示装置の液晶分子の特徴を示している。
突起30、32は切断部分30T、32Tが基準となって突起30、32上の配向状態の異なる領域は分割されている。観察の結果、この切断部分30T、32Tにおいては液晶の経時変化は見られなかった。しかしながら、切断部分30T、32Tと隣接する切断部分との間において(突起の構成単位30S、32S内において)も液晶の配向状態の異なる複数の領域があることが新たに分かった。従来よりは軽微であるものの、これらの領域の境界には経時変化が見られ、さらにオーバーシュートの改善の余地があることが分かった。
図28は本発明の第2実施例による線状の構造体を有する液晶表示装置の液晶の配向を示す図である。図29は図28の構成における表示特性を示すを示す図である。図30は図28に表れる第1のタイプの配向の境界の特徴及び第2のタイプの配向の境界の特徴を拡大して示す図である。
図28及び図30において、突起30、32上での液晶の配向を制御できる手段について考察すると、液晶の配向状態の異なる複数の領域の境界について、2つのタイプの境界があることが分かった。第1のタイプ(I)では、周囲の液晶分子が一点を向く。第2のタイプ(II)では、周囲の液晶分子の一部が一点を向き他の液晶分子が同じ一点から反対を向く。図28では液晶分子は頭と足とを有する形で示されているが、第1のタイプ(I)では、全ての液晶分子の頭が中心を向くか、全ての液晶分子の足が中心を向くか、している。第2のタイプ(II)では、一部の液晶分子の頭が中心を向き、且つ他の液晶分子の足が中心を向いている。
図28において、各基板の線状の構造体である突起30、32は、周囲の液晶分子が一点を向く第1のタイプ(I)の配向の境界を形成する手段56と、周囲の液晶分子の一部が一点を向き残りの液晶分子が同じ一点から反対を向く第2のタイプ(II)の配向の境界を形成する手段58とを有している。第1のタイプの配向(I)の境界を形成する手段56は突起30、32の構成単位30S、32S内に設けられ、第2のタイプ(II)の配向の境界を形成する手段58は突起30、32の構成単位30S、32S間の境界(すなわち構成単位30S、32Sを分離する分離部30T、32T)に設けられる。
これまでの説明及び図2から分かるように、突起30、32は主斜面で液晶分子の配向を制御することができる。同様に、突起30、32の構成単位30S、32S間の境界を規定する分離部30T、32Tも斜面を有し、該斜面で液晶分子の配向を制御することができる。分離部30T、32Tの斜面は突起30、32の長手方向に対して概ね横方向に延びるものである。突起30、32の主斜面は液晶分子を突起30、32の長手方向に対して垂直な方向に配向させるものであるのに対して、分離部30T、32Tの斜面は液晶分子を突起30、32の長手方向に対して概ね平行に配向させる。一方、液晶分子は全体として突起30、32の長手方向に対して垂直な方向に配向し、分離部30T、32Tにおいても同様の作用がある。従って、分離部30T、32Tは第2のタイプ(II)の境界を形成する手段58となる。
図31及び図32は第1のタイプ(I)の配向の境界を形成する手段56の具体例を示している。図32は上基板12の突起30を通る断面及び下基板14の突起32を通る断面を合わせた断面図である。この手段56は突起30、32の上に設けられた点状の突起からなる。この手段56は液晶の配向を形状的あるいは電界的に補助し、上記したような液晶分子の配向を行わせることができる。よって、その部分を核として突起30、32上の液晶の配向領域を分割することができる。第1のタイプ(I)の境界及び第2のタイプ(II)の境界では液晶の配向が異なるので、当然突起に付与すべき効果も異なってくる。
第1のタイプ(I)の配向の境界を形成する手段56は、上基板12において液晶分子を突起の高いところに向かって倒れ込むようにすることができる。このようにして、突起の切断された部分と高くなった部分が交互に並ぶようにすることで初めて、突起上の全ドメインの配向方向を定めることができる。従って、電圧印加後の液晶のドメインの経時変化を抑制でき、オーバーシュートをほぼ完全になくすことができる。
突起30、32の上に突出する手段56を形成するために、突起30、32の形成前にあらかじめ微小な構造物を形成した。構造物の形成は突起30、32の形成後であってもよい。構造物の大きさは10μm角、高さは1μmとした。構造物の材料としては、ここでは突起材料と同一材料を用いた。なお、TFT基板に形成するならば、該当部に配線用のメタル層や絶縁物層を積層する方法があり、CF基板なら、該当部に色層やBMを積層する方法で、プロセスを増やすことなく所望の構造を得ることができる。
突起材料には感光性アクリル系材料PC−335(JSR製)を用いた。突起幅10μm、突起間隙(両基板貼り合わせ後における一方の基板の突起端から他方の基板の突起端までの距離)は30μm、突起高さは1.5μmとした(突起高さを高くする部分はあらかじめ1μm高くなっていることから2.5μmとなる)。突起30、32の分離部30S、32Sの大きさは10μm角、分離部30S、32Sの中央から突起30、32の高い部分56の中央までの距離は60μmとした(1.5μmの高さの突起が長さ50μm連続して存在する)。
垂直配向膜にはJALS−204(JSR製)を用いた。液晶に混ぜるスペーサには3.5μm径のミクロパール(積水ファインケミカル製)、液晶材料にはMJ95785(メルク製)を用いた。
図33及び図34は線状の構造体の変形例を示す平面図及び断面図である。この例は、以下の点を除けば前の例と同様である。上下基板12、14は突起30、32を有し、第1のタイプの配向(I)の境界を形成する手段56及び第2のタイプ(II)の境界を形成する手段58として、突起30、32に突起高さの高い部分と低い部分を交互に設けた。突起30、32の突起高さの低い部分58は構成単位30S、32Sを分離する分離部30T、32Tである。低い部分58の突起高さは1μmとした。突起を低くする方法として、本実施例においては形成された突起30、32に選択的に酸素プラズマ照射によりアッシングを行った。またTFT基板に形成するならば、該当部にコンタクトホールを開ける方法、CF基板ならば、該当部の色層やオーバーコート層を除去する方法でプロセスを増やすことなく所望の構造を得ることができる。
図35(A)は線状の構造体の変形例を示す平面図である。上下基板12、14は突起30、32を有し、第1のタイプの配向(I)の境界を形成する手段56及び第2のタイプ(II)の境界を形成する手段58として、突起30、32の幅の広い部分と狭い部分を交互に設けた。広い部分56の幅は15μm、狭い部分58の幅は5μmとした(通常の幅は10μm)。
図35(B)は線状の構造体の変形例を示す平面図である。上下基板12、14は突起30、32を有し、第1のタイプの配向(I)の境界を形成する手段56及び第2のタイプ(II)の境界を形成する手段58として、突起30、32の幅を連続的に変化させ、幅の広い部分と狭い部分を交互に設けた。
図36は線状の構造体の変形例を示す平面図である。下基板14はスリット46を有し、第1のタイプの配向(I)の境界を形成する手段56及び第2のタイプ(II)の境界を形成する手段58として、スリット46の幅を連続的に変化させ、幅の広い部分と狭い部分を交互に設けた。
図37は線状の構造体の変形例を示す平面図である。上基板12はCF基板であり、下基板14はTFT基板である。パネルサイズは15型、画素数は1024×768(XGA)とした。図37はパネルの1画素単位を示すものである。TFT基板14の突起32の中央部分32Pの高さを低くし、CF基板12の突起30の中央部分30Pの高さを高くした。画素電極22のエッジの影響も考慮に入れた上で、所望の配向状態を実現できた。
TFT基板を用いた液晶パネルに本発明を適用するにおいては、TFT基板の画素電極22のエッジによる電界方向の影響を十分に考慮する必要がある。
図38は液晶表示装置の画素電極22のエッジ近くの部分の断面図、図39は図38の画素電極22のエッジにおける液晶の配向を示す図である。図39の(A)は上基板12の突起30の部分を示し、図39の(B)は下基板14の突起32の部分を示す。図38及び図39に示すように、画素電極22のエッジにおいては斜め電界60が存在し、この斜め電界60は、TFT基板を下、対向基板を上として見た場合に、液晶分子を画素中央に向ける役割をなしている。これはTFT基板の突起32に対して画素電極22のエッジ部分があたかも第1のタイプの配向(I)の境界を形成する手段56であるかのように機能し、CF基板の突起30に対しては、あたかも第2のタイプ(II)の境界を形成する手段58であるかのように機能していることを意味している。
換言すると、TFT基板の突起32上で画素電極エッジに最も近い境界は必ず第2のタイプの配向(II)の状態をとり、CF基板の突起30上で画素電極エッジに最も近い境界は必ず第1のタイプ(I)の状態をとると言える。従って、図37の構成は、この画素電極エッジによる規制方向に併せた形で突起30、32上の配向方向を定めることで、TFT液晶パネルにおいても突起上の全ドメインの配向制御が可能になる。
図40は線状の構造体の変形例を示す平面図である。TFT基板については画素電極エッジに最も近い部分の突起32上の配向制御手段58として突起高さを低くし、その内側においては配向形成手段56として突起高さを高くしている。CF基板については画素エッジに最も近い部分の突起30上の配向制御手段56として突起高さを高くし、その内側においては配向形成手段58として突起高さを低くしている。
なお、これまで述べた実施例においては、上基板と下基板で突起形状を同じように形成しているが、必ずしもその必要はない。例えば上基板は高い突起と低い突起、下基板は幅広い突起と幅狭い突起でも同様の効果が得られる。また、同一突起上で2種類のみの形状変化を交互に繰り返して配置する必要はない。
例えば、高い突起−低い突起−高い突起−低い突起−の繰り返しである必要はない。高い突起−低い突起−幅広い突起−幅狭い突起−高い突起−低い突起でもよく、第1及び第2のタイプ(I)、(II) の境界を満足する形状変化が交互に配置されればよい。このような形状変化について、突起の場合とスリットについて表1に示す。
表1
第1のタイプ(I)の 第2のタイプ(II) の
境界形成手段56 境界形成手段58
突起を切断する
突起の高さを高くする 突起の高さを低くする
突起の幅を大きくする 突起の幅を小さくする
突起の下の電極を抜く スリットを切断する
スリットの高さを高くする スリットの高さを低くする
(突出させる) (穴をあける)
スリットの幅を大きくする スリットの幅を小さくする
図41は図35の線状の構造体における液晶の配向を示す図である。この場合には、表示ドメイン内の配向はベンド配向になる。
図42は図41の線状の構造体の変形例を示す図である。この場合には、表示ドメイン内の配向はスプレイ配向になる。図41の構成から図42の構成に変えることにより、ベンド配向をスプレイ配向に変えることができる。
図43は本発明の第3実施例による線状の構造体を示す平面図である。図44は図43の線状の構造体を通る液晶表示装置の断面図である。この液晶表示装置10の基本的構成は、図1から図5に示した参考例の液晶表示装置10の基本的構成と同様である。すなわち、液晶表示装置10は液晶の配向を制御する線状の構造体として突起30、32を有する。突起30、32は基板の法線から見て互いに平行に且つ互いにずらして配置されている。図44は下基板14の突起32を通る断面図であり、上基板12の突起30は図44には示されていない。
この実施例では、上基板12及び下基板14はそれに対向する基板に電圧印加時に液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62、64を有する。図44では、上基板12は、下基板14の突起32と同じ断面内に、点状の突起62aからなる手段62を有する。同様に、図43に示されているように、下基板14は、上基板12の突起30と同じ断面内に、点状の突起64aからなる手段64を有する。
図45は図44の線状の構造体の近傍の液晶の配向を示す図である。図46は第1実施例の線状の構造体の近傍の液晶の配向を示す図である。
第1実施例では、各突起30、32は、複数の構成単位30S、32Sから形成されるものであった。この実施例の液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62、64は第1実施例において各突起30、32を複数の構成単位30S、32Sから形成したのと同様の作用を有するものである。従って、図45と図46を比較すれば分かるように、これらの手段62、64の突起30、32に沿った形成位置は、第1実施例の複数の構成単位30S、32Sの切断部又は境界の位置と同じである。
図44及び図45に示されるように、手段62は、突起32上の液晶分子が手段62の突起62a方向を向いて倒れるようにしたものである。手段64は、同様に突起30上の液晶分子が手段64の突起64aの方向を向いて倒れるようにしたものである。従って、これらの手段62、64は、各突起30、32を複数の構成単位30S、32Sから形成した場合に液晶分子が切断部又は境界32Tを向いて倒れるようになるのと同様の意味をもつことが分かる。
図46の構成の場合には、突起32の横にある液晶分子は突起32に対して垂直に向くのが望ましいが、切断部又は境界32Tの横にある液晶分子は突起32がそこで不連続となっているので突起32に対して完全に垂直に向くとは限らない。図44及び図45の構成の場合には、突起32は不連続ではないので、突起32の横にある液晶分子は全て突起32に対して垂直に向く。従って、輝度が低下することなく表示領域と突起上の領域の液晶の配向をともに制御することができる。
点状の突起62a、64aは感光性アクリル系材料PC−335(JSR製)を用いた。点状の突起62a、64aの幅は5μm、高さは1.5μmであった。線状の突起30、32の幅は10μm、高さは1.5μmであった。
図47は線状の構造体及び境界の配向の制御手段の変形例を示す図である。(A)は断面図、(B)は図解的斜視図、(C)は平面図である。この実施例では、液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62は対向基板の点状のスリット構造62bである。この手段62は電極18にスリットを設け、電極18の上に垂直配向膜20を形成してなる。スリットの大きさは14×4μm、10×4μmで表示の輝度が向上した。スリットの幅はさらに小さくすることができる。
図48は線状の構造体及び境界の配向の制御手段の変形例を示す図である。この実施例では、液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62は点状の突起62aである。この突起62aは電極18にスリット又は穴を設け、このスリット又は穴内で基板に突起66を形成し、それから電極18の上に垂直配向膜20を形成してなる。突起62aの幅は3μm、長さは8μm、高さは1.5μmであった。突起66はアクリル樹脂で形成した。その他、突起形成手段として、TFT基板ならば、バスラインや絶縁層の材料を選択的に用いてもよい。CR基板ならば、カラーフィタ層、ブラックマスク層、オーバーコート層の材料を選択的に用いてもよい。
また、突起66aの代わりに、基板にスリット又は穴を設けて窪みを形成し、液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62がスリット構造からなるものとしてもよい。この場合、TFT基板ならば、選択的にコンタクトホールを形成して窪みとすればよい。CR基板ならば、カラーフィタ層、ブラックマスク層、オーバーコート層に選択的に窪みを設ければよい。
図49は線状の構造体及び境界の配向の制御手段の変形例を示す図である。この実施例では、液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62は点状の突起62aである。この手段62は基板12に突起68を設け、電極18を形成し、垂直配向膜20を形成してなる。基板12に窪みを設け、手段62をスリット構造からなるものとすることもできる。
図50は線状の構造体及び境界の配向の制御手段の変形例を示す図である。図43から図49では線状の構造体は突起30、32からなるものであったが、線状の構造体はスリット構造44、46からなるものとすることもできる(図7、図8参照)。この実施例では、線状の構造体はスリット構造46からなるとともに、液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62は点状の突起62aである。この手段62は基板12に突起68を設け、電極18を形成し、垂直配向膜20を形成してなる。
図51は線状の構造体及び境界の配向の制御手段の変形例を示す図である。この例では、線状の構造体としての突起30、32が屈曲して設けられている。上記したように、TFT基板の画素電極22のエッジから対向電極18への斜め電界の影響を考慮する必要がある。この場合、TFT基板の突起32上に形成されるくさび形ディスクリネーションのうち、画素電極のエッジに最も近いディスクリネーションは強度s=−1となり、これは図28の第2のタイプ(II)の境界に相当する。CF基板の突起上に形成されるくさび形ディスクリネーションのうち、画素電極のエッジに最も近いディスクリネーションは強度s=+1となり、これは図28の第1のタイプ(I)の境界に相当する。従って、実際の液晶パネルへの適用においては、画素電極22のエッジによるディスクリネーション形成状況に合わせた形で突起30、32上の配向方向を定めることで、画素内の全ドメインを安定に制御することができる。
この実施例においては、CF基板の突起30の対向部に位置する電極を選択的に突出させ、液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段64とした。また、TFT基板12の突起32の対向部には選択的に突起を設け、液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62とした。さらに、画素内の1つの突起上に複数のくさび形ディスクリネーションを設ける場合、s=−1と、s=+1のディスクリネーションが交互に配置されように配向制御手段を設ければよい。本実施例では、図53に示されるように、電極22が突起68上へ突出した手段62と突起69が電極22上へ突出した手段62とを交互に配置した。
図54及び図55は線状の構造体及び境界の配向の制御手段の変形例を示す図である。この実施例では、液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62は、下基板の突起32と対向して上基板12に設けられた長く延びる突起70のスリット71として形成される。突起70は電極18の上に設けられ、且つ突起32の幅よりも狭い。
図56及び図57は線状の構造体及び境界の配向の制御手段の変形例を示す図である。この実施例では、液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62は、下基板の突起32と対向して上基板12に設けられた長く延びる突起70のスリット71、及び電極18のスリット72として形成される。突起70は電極18の上に設けられ、且つ突起32の幅よりも狭い。
図135から図157は、一方の基板に線状の配向規制構造体を設け、他方の基板の対向する位置に副構造体を設けた場合の、S=+1、S=−1のディスクリネーションを形成する副構造体の例をまとめて示す。一方の基板の線状の配向規制構造体は突起からなるものでもよく、スリットからなるものでもよい。
S=−1を実現する手段は、例えば図135から図147に示される通りである。点状突起(図135)、点状電極抜き(図136)、点状電極のへこみ(図137)、線状に細い突起に部分的に突起の下の電極抜き(図138)、線状に細い突起に部分的に太い部分(図139)、線状に細い突起に部分的に高い部分(図140)、線状に細いスリットに部分的に突出部分(図141)、線状に細い電極の突出に部分的な抜き(図142)、線状に細い電極の突出に部分的に細い部分(図143)、線状に細い電極の突出に部分的に低い部分(図144)、線状に細い電極のへこみに部分的に低い部分(図145)、線状に細い電極のへこみに部分的に太い部分(図146)。
S=+1を実現する手段は、例えば図147から図157に示される通りである。点状に電極を突出(図147)、線状に細い突起に部分的を切断(図148)、線状に細い突起に部分的に細い部分(図149)、線状に細い突起に部分的に低い部分(図150)、線状に細いスリットを部分的につなぐ(図151)、線状に細いスリットに部分的に細い部分(図152)、線状に細いスリットに部分的に低い部分(図153)、線状に細い電極の突出に部分的な太い部分(図154)、線状に細い電極の突出に部分的に高い部分(図155)、線状に細い電極のへこみに部分的に高い部分(図156)、線状に細い電極のへこみに部分的に細い部分(図157)。
図58は本発明の第4実施例による線状の構造体を示す平面図であり、図59は図58の線59−59を通る液晶表示装置の断面図である。この液晶表示装置10の基本的構成は、図1から図5に示した参考例の液晶表示装置10の基本的構成と同様である。この実施例では、各突起(線状の構造体)30、32が複数の構成単位30a、32aから形成され、一方の基板の法線方向から見て、一方の基板の線状の構造体の構成単位と他方の基板の線状の構造体の構成単位とが1つの線上で交互に配置されている。
例えば、図58で上方の線(線59−59)上にある突起の構成単位について見ると、上基板12の突起30の構成単位30aと、下基板14の突起32の構成単位32aとが、この線上に、交互に配置されている。図59はこれらの構成単位30a、32aを示している。図59に示されるように、この線上にある液晶分子はその線と平行な方向に向いて連続的に倒れるようになり、図11を参照して説明したように突起上の液晶分子がランダムな方向を向いて倒れる問題を解決することができる。
また、図58で左半分について見ると、上方の線上にある下基板14の突起32の構成単位32aと、中間の線上にある上基板12の突起30の構成単位30aと、下方の線上にある下基板14の突起32の構成単位32aとの位置関係は、図3及び図4の配置と同じであり、この関係はこれらの突起が図2のように基板面に対して斜めの平面内で対向するのと同様である。図58についても同様である。従って、この例の液晶表示装置の作用は基本的に第1実施例の作用と同じである。この構成では特に、中間調での応答速度を改善することが可能となる。なお、図58の構成は図20の構成と類似している。
図60及び図61は線状の構造体の変形例を示す図である。この例は、上基板12は線状の構造体として突起30を用いているが、下基板14は線状の構造体としてスリット構造46を用いている。スリット構造46を構成単位46aに分割すると図61に示すようになる。この場合、スリットにより分離された個々の画素電極の電気的な接続をより広い幅にて実現することが可能になり、設計上のマージンが広がるメリットがある。また、画素電極22のスリット間のつなぎ部分の断線、高抵抗化の心配がないというメリットがある。
この例では、各線状の構造体が1画素内に複数の構成単位を有し、線状の構造体が1画素内にて概略対称に配置されている。この特徴は、例えばこの特徴を図21に示されるように屈曲した線状の構造体に適用した場合にも同様である。
図62は線状の構造体の変形例を示す図である。この例では、図58に示されたように突起30、32の構成単位30a、32aが交互に配置されているとともに、各基板の突起30、32の構成単位30a、32aの少なくとも1つは周囲の液晶分子が一点を向くように配向の境界を形成する手段74を有する。この配向の境界を形成する手段74は例えば図28の第1のタイプの配向(I)の境界を形成する手段56と類似するものである。第1のタイプの配向(I)は、s=1に相当する配向ベクトルの特異点を形成する。この場合、突起上の微小ドメインの配向ベクトルの制御が可能となり、結果的に表示ドメインの安定制御が実現され、中間調での応答速度を改善する。
この手段74は、前に述べた第2実施例のものと同様とすることができる。
図63は配向の境界を形成する手段74の具体例を示している。図63においては、この手段74は、突起30、32の構成単位30a、32aの幅を大きくすることである。
また、図64に示されるように、この手段74は、突起30、32の構成単位30a、32aの高さを高くすることでも達成される。
突起の構成単位30a、32aの幅を部分的に大きくし、又は高さを高くした箇所においては、その部分を中心として液晶ダイレクターが広がる方向となるため、s=1の特異点となる。また、画素電極の斜め電界により、画素電極のエッジから画素中央部へ向かっての液晶ダイレクターは共通基板を手前に配置した場合に全ての突起上において中央へと立ち上がる方向になるため、突起の境界部において無理なく連続してつながる微小ドメインを形成できることになる。
図65は配向の境界を形成する手段74の具体例を示している。図65においては、線状の構造体は突起32とスリット構造44との組み合わせであり、この手段74は、突起32の構成単位32aの幅を大きくするか高さを高くすることと、スリット構造44の幅を大きくするか深さを深くすることとで達成される。
応答速度を第1実施例の構造の場合と比較した結果を表2に示す。(スリット幅10μm、突起幅10μm、間隔20μm。)
表2
第1実施例 第4実施例 駆動条件
TON+TOFF 〜25ms 〜25ms 0−5V
TON+TOFF 〜50ms 〜40ms 0−3V
このように、突起上の微小ドメインのスムーズな動きにより、応答速度に対して改善効果がある。安定な配向性による中間調での応答性の改善が確認できた。またスリットの電気的接続部の幅を大きくできるため、断線等の心配は不要となり、メリットが生じる。
本実施例においては、2分割を例に説明したが、屈曲型についても同様である。また、幾つかの実施例を組み合わせて構成することもできる。
図66は本発明の第5実施例による線状の構造体を示す平面図である。この液晶表示装置10の基本的構成は、図1、図2及び図5に示した参考例の液晶表示装置10の基本的構成と同様である。図5の参考例では、突起(線状の構造体)30、32は互いに平行に延び且つ屈曲する。この構成によれば、1画素に4つの向きに配向する液晶分子16C、16D、16E、16Fの領域があり、視角特性の優れた配向分割が達成される。
突起30、32の屈曲部を形成する2つの直線部分は90度をなしている。偏光板26、28は、偏光軸が48で示されるように突起30、32の屈曲部の直線部分に対して45度をなすように配置される。図66には一部の液晶分子しか示されていないが、1画素に4つの向きに配向する液晶分子16C、16D、16E、16Fの領域(図5参照)がある。
この実施例においては、追加の線状の構造体としての追加の突起76、78が突起30、32が設けられた基板の屈曲部の鈍角側に設けられる。つまり、追加の突起76は上基板12の突起30の鈍角側に突起30から連続して設けられる。追加の突起76は上基板12の突起30の鈍角側にこの鈍角の2等分線上に延びる。一方、追加の突起78は下基板14の突起32の鈍角側に突起32から連続して設けられる。追加の突起78は下基板14の突起32の鈍角側にこの鈍角の2等分線上に延びる。これによって、輝度が高くなり、応答性が向上する。
図67は図5と同様の突起30、32を示している。図67は突起30、32に対する液晶分子の配向をより詳しく示している。1画素に4つの向きに配向する液晶分子16C、16D、16E、16Fの領域がある。さらに、突起30の屈曲部の鈍角側には液晶分子16Gの領域があり、突起32の屈曲部の鈍角側には液晶分子16Hがある。電圧印加時には液晶分子はそれぞれの突起30、32に対して垂直に倒れるべきものであるが、各突起30、32の屈曲部においては液晶分子は突起30、32によって制御されず、屈曲部の2つの直線部分に位置する液晶分子16D−16F、16C−16Eが連続するように扇形に配向するため、液晶分子16G、16Hは突起30、32の屈曲部の鈍角の2等分線上に平行に配向するようになる。液晶分子16G、16Hの配向方向は48で示される偏光軸と平行又は直交となり、電圧を印加して白表示を形成する場合に、液晶分子16G、16Hの領域は暗くなってしまう。
図68は図67の線状の構造体を有する液晶表示装置の白表示を見た場合の画面を示し、液晶分子16G、16Hの領域G、Hは実際に暗くなる。また、画素電極22のエッジの領域Iも暗くなる。このことは後で述べる。
図66において、追加の突起76、78が突起30、32が設けられた基板の屈曲部の鈍角側に設けられるので、問題になる液晶分子16G、16Hの配向が矯正され、その両側に位置する液晶分子16D−16F、16C−16Eの配向に近くなる。そのため、図68に示した領域G、Hが暗くならず、輝度が改善される。
追加の突起76、78の幅は元の突起30、32の幅と同じでよい。しかし、追加の突起76、78の幅は元の突起30、32の幅よりも小さい方が望ましい。なぜなら、追加の突起76、78の配向規制力が強いと、その近傍の液晶分子は追加の突起76、78に対して直交するように配向するようになるからである。追加の突起76、78の配向規制力が弱いと、その近傍の液晶分子は追加の突起76、78に対して直交するところまでいかず、その両側に位置する液晶分子16D−16F、16C−16Eの配向に近くなる。例えば、元の突起30、32の幅が10μmの場合には、追加の突起76、78の幅は5μm位でよい。
このように、追加の突起76、78を突起30、32に新たに形成することで、屈曲部の液晶分子の倒れかたを明確に定めることができるため、輝度や応答性を改善することができる。
この実施例において、ガラス基板12、14はNA−35、0.7mm厚さを用いた。画素電極22、共通電極18にITOを用いた。画素電極22側には、液晶を駆動するためのTFT、バスライン等を配置し、対向電極18側にはカラーフィルタを設けた。突起材料には感光性アクリル系材料PC−335(JSR製)を用いた。突起幅は両基板ともに10μm、突起間隙(両基板貼り合わせ後における一方の基板の突起端から他方の基板の突起端までの距離)は30μmとした。突起高さは1.5μmとした。垂直配向膜20、24はJALS−204(JSR製)を用いた。液晶材料はMJ95785(メルク製)を用いた。スペーサは3.5μm径のミクロバール(積水ファインケミカル製)を用いた。
図69は線状の構造体の変形例を示す。この例においては、追加の突起76x、78xが突起30、32の屈曲部の鋭角側に設けられる。この場合には、突起30、32による液晶分子の配向方向が追加の突起76x、78xによる液晶分子の配向方向と滑らかに連続せず、突起30、32の屈曲部の近傍の液晶分子が偏光軸の方向に対して直交又は垂直な方向を向くようになり、改善の効果は低い。従って、図66に示されるように、追加の突起76x、78xは突起30、32の屈曲部の鈍角側に設けられるのがよいことが分かった。
これまでは、追加の突起76、78を突起30、32が設けられたのと同一の基板から見て説明した。追加の突起76、78を突起30、32が設けられたのとは対向する基板から見ると次のようになる。例えば図66において、追加の突起76は突起30が設けられた基板12とは対向する基板14の突起32の屈曲部の鋭角側に設けられる(請求項34)。同様に、追加の突起78は突起32が設けられた基板14とは対向する基板12の突起30の屈曲部の鋭角側に設けられる。
図70は線状の構造体の変形例を示す。この例では図66の例と同様に、追加の突起76x、78xは突起30、32の屈曲部の鈍角側に設けられている。この例の追加の突起76x、78xは、図66の突起76x、78xよりも長く延びている。追加の突起76x、78xの先端は対向する突起32、30の屈曲部と重なる位置まで延びている。追加の突起76x、78xをこのように延長してもよいが、その先端が対向する突起32、30の屈曲部と重なる位置よりも先まで延長されるのは好ましくない。
さらに、この例においては、このような突起32、30及び追加の突起76x、78xを形成した上基板12と下基板を周辺シールをして互いに貼り合わせ、空パネルを形成し、その後で液晶を注入した。この例においては、突起高さは1.75μmとし、両基板の突起が部分的に接することで3.5μmのセル厚さを得ることができた。スペーサは用いず、両基板の突起が部分的に接することでセル厚さを維持させた。この構成では、スペーサがないので、スペーサに起因する配向異常はなくなった。
前に説明したように、配向を制御するための線状の構造体は、突起30、32、又はスリット構造44、46によって構成される。従って、スリット構造44、46が線状の構造体として採用される場合には、スリット構造44、46と類似した構造の追加のスリット構造が、追加の突起76x、78xの代わりに、設けられる。また、配向を制御するための線状の構造体は、電極を除去したスリット上に突起を設けた構成としてもよい。
図71は線状の構造体の変形例を示す。配向を制御するための線状の構造体として、上基板12の突起30と、下基板14のスリット構造46とが設けられている。前述したように、スリット構造46は下基板14の画素電極22にスリットを形成することにより構成されている。追加の突起76が図66の追加の突起76と同様に設けられ、追加のスリット構造78yが図66の追加の突起78の代わりにスリット構造46の屈曲部の鈍角側に設けられている。追加のスリット構造78yはスリット構造46の屈曲部に連続していないが、これはスリット構造46が画素電極22にスリットとして構成されているためにスリットに不連続部があるためである。なお、追加のスリット構造78yは対向する基板の突起30の鋭角側に設けられていると表現することもできる。
図72は線状の構造体の変形例を示す。この例では、図66の場合と同様に追加の突起76、78が設けられている。さらに、エッジ突起80が画素電極22のエッジの少なくとも一部に重なる位置に設けられている。この場合、突起30、32は画素電極22のエッジに対して平行、直交のいずれの配置でもない。エッジ突起80は図68の領域Iに相当する位置に設けられる。図67に示されるように、液晶分子は画素電極22のエッジにおいては斜め電界の作用で画素の中央に向かって倒れるように配向する。図68の領域Iに相当する位置では、上基板(対向基板)12上の突起30と画素電極22のエッジが鈍角をなす。もしくは画素電極22上の突起32と画素電極22のエッジが鋭角をなす。
このような領域では、液晶分子の配向はそのエッジより内寄りの位置にある液晶分子の配向とは大きく異なる(図67参照)ので、図68に示されるように表示が暗くなる。図72に示されるように、エッジ突起80を設けることにより、画素電極22のエッジにおける液晶分子の配向はそのエッジより内寄りの位置にある液晶分子の配向と近くなり、表示が暗くなるのが防止される。図72ではさらに、コーナー突起82も設けられる。
図73は線状の構造体の変形例を示す。この例では、コーナー突起82がない点を除くと、図72の場合と同様である。図72及び図73の場合にも、新たに設けた突起を画素電極上の突起まで延ばした。突起高さは1.75μmとし、スペーサ散布は行わなかった。両基板の突起が部分的に接することで3.5μmのセル厚さを得ることができた。
図74は線状の構造体の変形例を示す。この例では、突起30は追加の突起76を有し、スリット構造46は追加のスリット構造78yを有するとともに、突起30及びスリット構造46は図21の例のように複数の構成単位(30S、46S)で構成されている。従って、この場合には、線状の構造体を複数の構成単位とする効果と、追加の線状の構造体を設ける効果とが合わせて得られる。
図75は本発明の第6実施例による液晶表示装置の線状の構造体と偏光板との関係を示す図である。図76は図75の構成における表示の明るさを示す図である。
図75に示される液晶表示装置は、基本的に図1〜10に示される液晶表示装置と同様の構成を含む。すなわち、液晶表示装置は、一対の基板12、14と、一対の基板12、14の間に挿入された負の誘電率異方性を有する液晶16と、液晶16の配向を制御するために一対の基板12、14の各々に設けられた線状の構造体(例えば突起30、32、スリット44、46)と、一対の基板12、14の外側にそれぞれ配置されている偏光板26、28とを備える。一対の基板12、14はそれぞれ電極18、22及び垂直配向膜20、24を有する。
図75においては、液晶の配向を制御するための線状の構造体は図4に示されたのと同様な突起30、32である。偏光板26、28の配置は48で示されている。偏光板26、28は吸収軸26a、28aを有し、これらの吸収軸26a、28aは互いに直交している。一方の偏光板26の吸収軸26aは(従って他方の偏光板28の吸収軸28aも)、突起30、32の延びる方位に対して45度回転させた方位から所定角度(a)ずらして配置されている。分かりやすく言えば、図75においては、偏光板26の吸収軸26aは、突起30、32に直交する直線(破線で示される)に対して(45°±a)の角度で、よって突起30、32の延びる方位に対して(45°±a)の角度で、配置されている。
図75は液晶の配向を制御するための線状の構造体(突起30、32)上の液晶分子の挙動を示している。液晶の配向を制御するための線状の構造体(突起30、32、スリット44、46)を有する液晶表示装置では、図11及び図13を参照して説明したように、電圧印加直後にオーバーシュートが発生する。このオーバーシュートの原因の一つは、偏光板26、28が線状の構造体に対して45°で配置された場合に、電圧印加後の液晶分子が線状の構造体に対して完全に垂直にならないために、白表示時の明るさが減少するためである。この実施例はこの問題点を解決するものである。
図75において、電圧を印加した場合に、突起30と突起32との間に位置する液晶分子は突起30、32に対して垂直になるように倒れる。突起30、32上の液晶分子は突起30、32と平行に右又は左のいずれかに向かって倒れる。そのため、突起30と突起32との間に位置する液晶分子は突起30、32に対して完全に垂直にならず、突起30、32に対して幾らか斜めになる。図75では、説明のために左の領域Lと右の領域Rとが区分して示されており、左の領域Lに位置する液晶分子は突起30、32に垂直な線に対して角度aで時計回り方向に回転している(左の領域Lにおける液晶のダイレクタが角度aである)が、右の領域Rに位置する液晶分子は反時計回り方向に回転する。
この実施例では、左の領域Lに位置する液晶分子の配向に合わせて偏光板26、28が配置されている。偏光板26の吸収軸26aは左の領域Lに位置する液晶のダイレクタに対して45°となるように配置されている。従って、図76(A)に示されるように、左の領域Lにおいては白表示時に最も明るい表示を実現することができる。
一方、右の領域Rにおいては左の領域Lにおいて実現されたような条件は実現されず、図76(B)に示されるように、白表示時に最も明るい表示を実現することができない。しかし、図76(C)に示されるように、明るい左の領域Lと一旦明るくなってそれから暗くなる右の領域Rとを合わせた全体(L+R)の表示では、白表示時に明るい表示を実現でき、オーバーシュートをかなり改善することができる。
図77は液晶の配向を制御するための線状の構造体(例えば突起30、32)を有する液晶表示装置において微小な領域毎の液晶のダイレクタの角度(a)とその頻度との関係を示す図である。この結果から、液晶のダイレクタが斜めになるのは概ね20°以下の範囲にあるのが分かる。従って、偏光板26の吸収軸26aが突起30、32の延びる方位に対して45度回転させた方位からずらされる所定角度(a)は、20°以下であればよい。
この場合、偏光板26の吸収軸26aの方位と線状の構造体(例えば突起30、32)との交差角度をbとするとき、交差角度bは、25°<b<45°又は45°<b<65°の範囲内にあることになる。ただし、偏光板26、28と基板12、14との間には製造時の位置関係の誤差が2°程度あり、これを勘案すると、交差角度bは、25°<b<43°又は47°<b<65°の範囲内にあるとよい。
図77においては、より詳細には、2°と13°の範囲内にある液晶のダイレクタの頻度が高い。従って、所定角度aは2°と13°の範囲内にあるのが好ましい。この場合、交差角度bは、32°<b<43°又は47°<b<58°の範囲内にあるとよい。
図78及び図79は図75の実施例の変形例を示す図である。図78は液晶表示装置の線状の構造体と偏光板との関係を示す図、図79は図78の液晶表示装置の断面図である。上基板12は突起30を有し、下基板14は突起32を有する。突起30、32は直角の屈曲部を有する。この場合、偏光板26の吸収軸26aは突起30の直線部分に対して55°をなすように配置されている。2つの偏光板26、28の吸収軸26a、28aは互いに直交する。
図80及び図81は図75の実施例の変形例を示す図である。図80は液晶表示装置の線状の構造体と偏光板との関係を示す図、図81は図80の液晶表示装置の断面図である。上基板12は突起30を有し、下基板14はスリット46を有する。突起30及びスリット46は直角の屈曲部を有する。この場合、偏光板26の吸収軸26aは突起30(又はスリット46)の直線部分に対して55°をなすように配置されている。2つの偏光板26、28の吸収軸26a、28aは互いに直交する。
図82は、本発明の第7実施例による液晶表示装置の線状の構造体を示す図である。図83は図82の液晶表示装置の断面図である。
図82及び図83に示される液晶表示装置は、一対の基板12、14と、一対の基板12、14の間に挿入された負の誘電率異方性を有する液晶16と、液晶16の配向を制御するために一対の基板12、14の各々に設けられた線状の構造体(例えば突起30、32、スリット44、46)と、一対の基板12、14の外側にそれぞれ配置されている偏光板26、28とを備える。一対の基板12、14はそれぞれ電極18、22及び垂直配向膜20、24を有する。
下基板14はTFT基板であり、電極22は画素電極である。下基板14は画素電極22に接続されたTFT40を有する。TFT40はゲートバスライン及びドレインバスライン(図3)に接続される。遮光領域84がTFT40及びその近傍の領域を覆って設けられる。遮光領域84はTFT40が直接に光で照射されるのを防止するものである。TFT40は画素電極22とコンタクトするので、遮光領域84は画素電極22と部分的に重なって配置される。
画素電極22は画素開口部を規定する。ただし、画素電極22の占める面積のうち、遮光領域84は重なった部分は画素開口部とはならない。従って、画素電極22の占める面積のうち、遮光領域84と重ならない部分が、非遮光領域(画素開口部)になる。
この例では、上基板12に設けられた線状の構造体は突起30であり、下基板14に設けられた線状の構造体は電極22に形成されたスリット46である。突起30及びスリット46は屈曲部を有する形状に形成されている。突起30とスリット46の組合せの例は例えば図71及び図74に示されている。
遮光領域84及び線状の構造体30、46は、遮光領域84と一部の線状の構造体30とが部分的に重なりあって非遮光領域に配置される線状の構造体30、46の面積が少なくなるように配置されている。
前に説明したように、突起30は透明な誘電体で形成され、スリット46は透明な画素電極22に形成されたものであるので、線状の構造体30、47は透明な部材と見ることができる。しかし、電圧を印加したときに、線状の構造体30、47上に位置する液晶分子は線状の構造体30、47の間の間隙に位置する液晶分子とは異なる配向をするので、電圧を印加して白表示をするときに画素開口部内では線状の構造体30、47上では光の透過量が減少し、開口率が低下する。
従って、非遮光領域(画素開口部内)に配置される線状の構造体30、46の面積が少なくなるようにするのが好ましい。しかしながら、線状の構造体30、46は液晶の配向を制御する上で所定の面積が必要である。そこで、線状の構造体30、46の面積が一定とした場合、線状の構造体30、46の一部を遮光領域84と重なる位置にもっていき、非遮光領域に配置される線状の構造体30、46の面積が少なくなるようにすると、実際の開口率を増加することができる。このため、図82においては、突起30の一部が遮光領域84と重なるように、遮光領域84及び線状の構造体30、46をデザインしている。
図84は図82の線状の構造体30、46のより具体化した例を示す図である。図84の装置の特徴は図82を参照して説明したのと同様である。TFT40のソース電極はコンタクトホール40hで画素電極22に接続される。
さらに、図82から図84に示されるように、TFT40を有する基板14の線状の構造体がスリット46である場合、対向基板12の突起30(又はスリット44)がTFT40を覆う遮光領域84と重なるようにするのが好ましい。スリット46が遮光領域84と重なるようにすると、TFT40と画素電極22との間のコンタクトをとるのに不都合がある場合がある。
図85は図82の線状の構造体の比較例を示す図である。この例では、TFT40を有する基板14の線状の構造体がスリット46である場合、TFT基板14の又はスリット46がTFT40を覆う遮光領域84と重なるように配置されている。しかし、スリット46が遮光領域84と重なるようにすると、TFT40と画素電極22との接続が難しくなる。すなわち、スリット46がコンタクトホール(図84の40h)を形成すべき位置にきてしまう。
図86は図28の線状の構造体の変形例を示す図、図87は図86の線状の構造体を有する液晶表示装置を示す断面図である。図86及び図87は前に説明した表1の左列の3番目の突起の下の電極を抜く例を説明する図である。突起32は基板14の電極22の上に形成されているが、突起32の下の電極22は菱形形状の抜き22xを形成されている。突起32の場合には電極22の抜き22xにより第1のタイプ(I)の境界形成手段56とすることができる。抜き22xは菱形形状に限定されず、その他の形状、例えば長方形形状でもよい。
図88は本発明の第8実施例による液晶表示装置の線状の構造体を示す図である。図89は図88の線状の構造体を有する液晶表示装置の断面図である。図88及び図89の実施例は図28の実施例の特徴と図43の実施例の特徴を組み合わせた特徴を有する例に相当する。すてわち、この実施例は、一方の基板の線状の構造体に設けられた液晶の配向の境界を形成するための第1の手段と、他方の基板に線状の構造体の延びる方向で該第1の手段と同じ位置に設けられた液晶の配向の境界を形成するための第2の手段とを備えた構成になる。
上基板12は突起からなる線状の構造体30を有し、下基板14は突起からなる線状の構造体32を有する。図89は下基板14の突起からなる線状の構造体32を通る断面図である。突起32は分離部32Tを有し、それによって突起32に第2のタイプ(II)の境界形成手段58を形成している。さらに、対向基板12には分離部32Tと対向する位置に点状の突起62aが設けられる。図43を参照して説明したように対向基板12の突起62aは液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62であり、これは第2のタイプ(II)の境界形成手段58と同じ液晶配向制御作用を有する。従って、この例では、2つの第2のタイプ(II)の境界形成手段58、62を同じ位置に設けることになり、第2のタイプ(II)の境界がより確実に形成されることになる。従って、液晶分子の配向がより確実になる。
図90及び図91は図88及び図89と類似した例を示す図である。この例でも、突起32は第2のタイプ(II)の境界形成手段58を含み、対向基板12は液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62を含む。図90及び図91の実施例では手段58を構成する突起32の分離部32Tの大きさと手段62を構成する62aの大きさとの関係が、図88及び図89のものと異なっている。
図92は図88の線状の構造体の変形例を示す図である。図93は図92の線状の構造体(突起)32を示す断面図である。この線状の構造体(突起)32は図32に示されたように突起32の高さを高くすることにより形成した第1のタイプ(I)の境界形成手段56と、突起32の高さを低くすることにより形成した第2のタイプ(II)の境界形成手段58とを含む。対向基板12は手段56、58と同じ位置に境界形成手段62を含む。
図94は図93の線状の構造体の変形例を示す図である。この線状の構造体(突起)32は図35に示されたように突起32の幅を広くすることにより形成した第1のタイプ(I)の境界形成手段56と、突起32の幅を狭くすることにより形成した第2のタイプ(II)の境界形成手段58とを含む。対向基板12は手段56、58と同じ位置に境界形成手段62を含むことができる。
図95及び図96は図88及び図89と類似した例を示す図である。この例でも、突起32は第1のタイプ(I)の境界形成手段56及び第2のタイプ(II)の境界形成手段58を含み、対向基板12は手段56、58と同じ位置に液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62を含む。第1のタイプ(I)の境界形成手段56は突起32の分離部であり、第2のタイプ(II)の境界形成手段58は突起32上の高さの高くなった部分である。
図97は図88の線状の構造体の変形例を示す図である。この例では、下基板14の線状の構造体はスリット46として形成されている。スリット46は壁58aで分離され、第2のタイプ(II)の境界形成手段58となっている。同時に、壁58aは突出する壁として協働する線状の構造体(突起)30に対して液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62を形成する。
図98は図97と類似した線状の構造体を示している。図である。この例では、下基板14の線状の構造体はスリット46として形成され、スリット46は壁58aで分離されている。壁58aは協働する分離された線状の構造体(突起)30の構成部分の分離部及び中間部に位置し、第1のタイプ(I)の境界形成手段58及び第2のタイプ(II)の境界形成手段58となっている。同時に、壁58aは突出する壁として協働する線状の構造体(突起)30に対して液晶分子の配向の境界を一定位置に形成させるための手段62を形成する。
図88から図98を参照して説明した実施例については下記のようにようにまとめることができる。(a)第1のタイプ(I)の境界形成手段56としては、突起30、32を太くし、あるいは高くし、スリット44、46を太くし、あるいは高くし、対向基板の境界形成手段60、62としては、点状の突起、部分的に切断した突起、部分的に細くした突起、部分的に低くした突起、部分的につないだスリット、部分的に細くしたスリット、部分的に低くしたスリットを設ける。(b)第2のタイプ(II)の境界形成手段58としては、突起30、32を切断し(複数の構成単位とし)、細くし、あるいは低くし、スリット44、46切断し、細くし、あるいは低くし、対向基板の境界形成手段60、62としては、点状の突起、部分的に太くした突起、部分的に高くした突起、部分的に突き出したスリット、部分的に太くしたスリット、点状の電極窪みを設ける。
図99は本発明の第9実施例による液晶表示装置の線状の構造体を示す図である。この場合にも、前の実施例と同様に、液晶表示装置は、一対の基板12、14と、一対の基板12、14の間に挿入された負の誘電率異方性を有する液晶16と、液晶16の配向を制御するために一対の基板12、14の各々に設けられた線状の構造体(例えば突起30、32、スリット44、46)と、一対の基板12、14の外側にそれぞれ配置されている偏光板26、28とを備える。
図99は、上基板12の1つの線状の構造体(突起)30と、下基板14の1つの線状の構造体(突起)32とを示している。上基板の線状の構造体30は図28を参照して説明した周囲の液晶分子が一点を向く第1のタイプの配向の境界を形成する手段56と同様の手段86を備え、下基板の線状の構造体32も周囲の液晶分子が一点を向く第1のタイプの配向の境界を形成する手段86を備えている。
電圧印加時には、前に説明したように、上基板の線状の構造体30上の液晶分子及び下基板の線状の構造体32上の液晶分子はそれぞれ線状の構造体30、32と平行になるように配向し、上基板の線状の構造体30と下基板の線状の構造体32との間の間隙部に位置する液晶分子は線状の構造体30、32と垂直になるように配向する。
さらに、上基板の線状の構造体30上の液晶分子については、境界形成手段86の左側の領域に位置する液晶分子は矢印で示されるように頭が境界形成手段86に向かう右向きに配向し、境界形成手段86の右側の領域に位置する液晶分子は矢印で示されるように頭が境界形成手段86に向かう左向きに配向する。同様に、下基板の線状の構造体32上の液晶分子については、境界形成手段86の左側の領域に位置する液晶分子は矢印で示されるように頭が境界形成手段86とは反対側に向かう左向きに配向し、境界形成手段86の右側の領域に位置する液晶分子は矢印で示されるように頭が境界形成手段86とは反対側に向かう右向きに配向する。
従って、線状の構造体30、32と垂直な線上に位置する液晶分子(例えば点線の丸で囲まれた境界形成手段86の左側の領域に位置する液晶分子)についてみると、線状の構造体30上にある液晶分子は右向き(第1の方向)に配向し、線状の構造体32上にある液晶分子は左向き(第1の方向とは反対の第2の方向)に配向する。つまり、境界形成手段86の左側の領域に位置する液晶分子については、線状の構造体30上にある液晶分子は線状の構造体32上にある液晶分子とは反対の方向を向く。境界形成手段86の右側の領域に位置する液晶分子についても同様に、線状の構造体30上にある液晶分子は線状の構造体32上にある液晶分子とは反対の方向を向く。
図100は図99の線状の構造体の変形例を示す図である。この場合には、線状の構造体30、32はともに周囲の液晶分子の一部が一点を向き且つ他の液晶分子が同じ一点から反対を向く第2のタイプの配向の境界を形成する手段58と同様の手段88を備えている。従って、上基板の線状の構造体30上の液晶分子については、境界形成手段88の左側の領域に位置する液晶分子は矢印で示されるように頭が境界形成手段88とは反対側を向く左向きに配向し、境界形成手段88の右側の領域に位置する液晶分子は矢印で示されるように頭が境界形成手段88とは反対側を向く右向きに配向する。同様に、下基板の線状の構造体32上の液晶分子については、境界形成手段88の左側の領域に位置する液晶分子は矢印で示されるように頭が境界形成手段88に向かう右向きに配向し、境界形成手段88の右側の領域に位置する液晶分子は矢印で示されるように頭が境界形成手段88に向かう左向きに配向する。
従って、線状の構造体30、32と垂直な線上に位置する液晶分子についてみると、線状の構造体30上にある液晶分子は第1の方向を向き、線状の構造体32上にある液晶分子は第1の方向とは反対の第2の方向を向く。
図101は線状の構造体30、32を有する液晶表示装置における指押しの問題点を説明するための図である。図101においては、画像表示面の点Dを指で押した状態を示す。画像表示面の点Dを指で押した場合、指押しの跡が表示不良として点Dに生じることがある。指押しの跡は電圧の印加を止めると消滅する。また、電圧を印加し続けても、指押しの跡は短い電圧印加時間で消滅することもあれば、長い電圧印加時間の後でも消滅することなく残ることがある。液晶表示装置が指押し等の外力を加えない装置として用いられる場合には、問題はない。しかし、液晶表示装置が指押し等の外力を加えるような装置(例えばタッチパネル等)として用いられる場合には、表示面に指押しの跡が生じるという問題がある。
図102は、比較例として指押しの跡が生じやすい例を示す図である。上基板の線状の構造体30は第1のタイプの配向の境界を形成する手段86を備え、下基板の線状の構造体32は周囲の液晶分子の一部が一点を向き且つ他の液晶分子が同じ一点から反対を向く第2のタイプの配向の境界を形成する手段88を備えている。従って、上基板の線状の構造体30上の液晶分子は、下基板の線状の構造体32上の液晶分子と同じ方向を向いている。例えば、上基板の線状の構造体30上の液晶分子については、境界形成手段86の左側の領域に位置する液晶分子は左向きに配向し、下基板の線状の構造体32上の液晶分子については、境界形成手段88の左側の領域に位置する液晶分子は左向きに配向している。
指押しがあった場合には、線状の構造体30、32上の液晶分子は線状の構造体30、32間の間隙部に向かって移動し、線状の構造体30、32間の間隙部の液晶分子の一部16mが線状の構造体30、32に対して平行になる。線状の構造体30、32間の間隙部にある液晶分子は本来線状の構造体30、32に対して垂直にならなくてはならないのに、指押しがあった部分では線状の構造体30、32間の間隙部にある液晶分子の一部16mが線状の構造体30、32に対して平行になるためにディスクリネーションが生じ、その結果指押しの跡が生じる。
図102に示されるように、2つの基板の線状の構造体30、32上の液晶分子が互いに同じ方向を向いていると、線状の構造体30、32上から線状の構造体30、32間の間隙部に向かって移動した液晶分子も線状の構造体30、32上の液晶分子と同じ方向を向き、それらの液晶分子は一方の線状の構造体30上から線状の構造体30、32間の間隙部及び他方の線状の構造体32にかけて連続的な配向になり、指押しの跡が長い時間消滅しないことになる。
これに対して、図99及び図100の例においては、指押しがあった場合には、図102の例の場合と同様に、線状の構造体30、32上にあった液晶分子の一部16mは線状の構造体30、32間の間隙部に向かって押し出され、線状の構造体30、32に対して平行になる。しかし、この場合には、2つの基板の線状の構造体30、32上の液晶分子が互いに反対方向を向いているので、押し出された液晶分子16mは一方の基板の線状の構造体上の液晶分子とは同じ方向を向くが、他方の基板の線状の構造体上の液晶分子とは反対方向を向き、他方の線状の構造体上の液晶分子とは連続的に配向しない。隣接する液晶分子は連続的に配向しなくてはならないので、押し出された液晶分子16mは矢印で示されるように線状の構造体30、32に対して垂直な方向に回転しようとする。そのため、指押しの跡が短い時間で消滅するようになる。
図103及び図104は図99の境界形成手段86の例を示す図である。上基板の線状の構造体30は突起であり、上基板12の線状の構造体30については、第1のタイプの配向の境界を形成する手段86は下基板14に設けられた小突起86aからなる。下基板14の線状の構造体32は突起であり、下基板14の線状の構造体32については、第1のタイプの配向の境界を形成する手段86は上基板12に設けられた小突起86bからなる。小突起86aと小突起86bとは線状の構造体30、32に対して垂直な線上に設けられる。
図105及び図106は図100の境界形成手段88の例を示す図である。上基板の線状の構造体30は突起であり、上基板12の線状の構造体30については、第2のタイプの配向の境界を形成する手段88は上基板12に設けられた小突起88aからなる。下基板14の線状の構造体32は突起であり、下基板14の線状の構造体32については、第2のタイプの配向の境界を形成する手段88は下基板14に設けられた小突起88bからなる。小突起88aと小突起88bとは線状の構造体30、32に対して垂直な線上に設けられる。図103から図106において、小突起86a、86bは線状の構造体30、32の幅よりも長く、線状の構造体30、32に対して直交するように延びる。例えば、線状の構造体30、32の幅は10μm、高さは1.5μmであり、小突起86a、86bの幅は10μm、高さは1.5μm、長さは14μmである。小突起86a、86bは誘電体により形成することができる。
図107は図99の境界形成手段86の例を示す図である。上基板の線状の構造体30は突起であり、上基板12の線状の構造体30については、第1のタイプの配向の境界を形成する手段86は下基板14の電極に設けられた小スリット86cからなる。下基板14の線状の構造体32は突起であり、下基板14の線状の構造体32については、第1のタイプの配向の境界を形成する手段86は上基板12の電極に設けられた小スリット86dからなる。小スリット86cと小スリット86dとは線状の構造体30、32に対して垂直な線上に設けられる。
図108は図100の手段88の例を示す図である。上基板の線状の構造体30は突起であり、上基板12の線状の構造体30に対して第2のタイプの配向の境界を形成する手段88は上基板12に設けられた小スリット88cからなる。下基板14の線状の構造体32は突起であり、下基板14の線状の構造体32に対して第2のタイプの配向の境界を形成する手段88は下基板14に設けられた小スリット88dからなる。小スリット88cと小スリット88dとは線状の構造体30、32に対して垂直な線上に設けられる。図107及び図108において、小スリット88c、88dは線状の構造体30、32の幅よりも長く、線状の構造体30、32に対して直交するように延びる。
図99から図108においては線状の構造体30、32として突起を示したが、線状の構造体30、32としてスリットを用いることができること言うまでもない。この場合にも、手段86、88として小突起又と小スリットを用いることができる。また、上基板及び下基板の2つの手段86として小突起と小スリットとの組合せとすることもでき、上基板及び下基板の2つの手段88として小突起と小スリットとの組合せとすることもできる。このようにして、本実施例によれば、高い耐衝撃性をもった液晶表示装置を得ることができる。
図109は本発明の第10実施例による液晶表示装置の線状の構造体を示す図である。図110は図109の液晶表示装置の断面図である。この場合にも、前の実施例と同様に、液晶表示装置は、一対の基板12、14と、一対の基板12、14の間に挿入された負の誘電率異方性を有する液晶16と、液晶16の配向を制御するために一対の基板12、14の各々に設けられた線状の構造体(例えば突起30、32、スリット44、46)と、一対の基板12、14の外側にそれぞれ配置されている偏光板(図示せず)とを備える。
この実施例においては、上基板12の線状の構造体30は突起30であり、下基板14の線状の構造体32は突起32である。副壁構造90が下基板14に一対の基板12、14の法線方向から見て一対の基板12、14の線状の構造体30、32の間に設けられる。副壁構造90は菱形形状のスリットとして設けられる。副壁構造90は線状の構造体30、32に対して垂直な方向に長く、線状の構造体30、32に沿って一定のピッチ(5〜50μm)で配置される。
図111は図109の液晶表示装置の変形例を示す図である。この例では、上基板12の線状の構造体30は突起30であり、下基板14の線状の構造体32は突起32である。一対の基板の12、14の線状の構造体30、32の間に設けられる副壁構造90は、長方形形状のスリットとして設けられる。副壁構造90は線状の構造体30、32に対して垂直な方向に長く、線状の構造体30、32に沿って一定のピッチで配置される。
図112及び図113は図109の液晶表示装置の変形例を示す図である。この例では、上基板12の線状の構造体30は突起30であり、下基板14の線状の構造体32は突起32である。一対の基板の12、14の線状の構造体30、32の間に設けられる副壁構造90は、正方形形状の突起として設けられる。副壁構造90は線状の構造体30、32に沿って一定のピッチで配置される。
図114及び図115は図109の液晶表示装置の変形例を示す図である。この例では、上基板12の線状の構造体30は突起30であり、下基板14の線状の構造体32は突起32である。線状の構造体30、32は屈曲部を有する形状に形成される。一対の基板の12、14の線状の構造体30、32の間に設けられる副壁構造90は、長方形形状のスリットとして設けられる。副壁構造90は線状の構造体30、32に対して垂直な方向に長く、線状の構造体30、32に沿って一定のピッチで配置される。
図109から図115の液晶表示装置の作用について説明する。液晶の配向を制御するために一対の基板12、14に線状の構造体30、32を設けた液晶表示装置では、ラビングが必要なく、かつ、視角特性を改善することができる特長があるが、協働する線状の構造体30、32間の距離が長くなるために、電圧を印加したときに液晶の応答性が低い。線状の構造体30、32の間に副壁構造90を設けることにより、液晶が線状の構造体30、32の間の間隙部においても配向しやすくなり、副壁構造90がない場合と比べて液晶の応答性が改善されることになる。
より詳細には、一対の基板12、14に線状の構造体30、32を設けた液晶表示装置では、液晶分子は基板面に対して垂直に配向しており、電圧を印加すると定まった方向に倒れる。協働する線状の構造体30、32間の中間に位置する液晶分子は、電圧を印加した直後にはどちらに倒れるか定かでなく、勝手な方向に倒れようとし、時間が経過した後で一定の方向に倒れる。このために応答性が低い。副壁構造90があると、協働する線状の構造体30、32間の中間に位置する液晶分子は、倒れるべき方向を規定されており、電圧を印加した直後から一定の方向に倒れ、このために応答性が改善される。
図109から図115の例では線状の構造体30、32はともに突起として形成され、それに対して突起又はスリットからなる副壁構造90が設けられていた。これに対して、線状の構造体30、32はともにスリットとして形成され、あるいは一方の線状の構造体を突起とし、他方の線状の構造体をスリットとすることもできる。この場合にも、副壁構造90は突起又はスリットからなるものとすることができる。突起とスリットとは液晶の配向に関してはほぼ同様な働きをし、ほぼ同じ効果をもつので、副壁構造90としては、どちらを設けてもよい。形状には特に制限はないが、菱形にして良い結果を得ている。
副壁構造90としてスリットを設ける場合、スリットの長さは線状の構造体30、32と垂直な方向ではスリットの効果を高めるためになるべく長い方がよく、線状の構造体30、32間の間隙の長さとほぼ同じにするがよい。線状の構造体30、32と平行な方向ではスリットが長くなると電極部分が少なくなり(スリットは電極に設けられる場合)、短すぎるとスリットの形成自体が困難になるため、5〜10μm程度であることが望ましい。次にスリット同志の間隔であるが、長すぎるとスリットの効果は少なくなり、短すぎるとスリット同志の影響により液晶の配向が乱れを生じるため、5〜30μm程度がよい。
副壁構造90として突起を設ける場合、スリットの場合とは多少条件が異なってくる。まず突起の大きさであるが、大きすぎると液晶表示装置の透過率が下がってしまうため望ましくなく、小さすぎると突起自体の形成が困難になるし、効果も小さくなる。そのため、線状の構造体30、32に対する垂直方向及び平行方向ともに5μm程度が望ましい。次に突起同志の間隔については、スリットの場合と同様の理由と、透過率を犠牲にしないという目的から、5〜30μm程度がよい。
副壁構造90として導電性の突起を用いると、突起の間隙を広げることができるため、透過率を犠牲にしないという目的からさらに望ましくなる。このときは、突起間隙を50μm程度まで広げることができる。導電性を有する突起を形成するには、ITO電極をもたない基板に突起を形成した後にITOをスパッタリングすればよい。
副壁構造90としてスリット又は突起を設ける場合、副壁構造90を両方の基板12、14に設ける必要はなく、片側に設けるのみでよい。
図116は線状の構造体32及び副壁構造90を有する基板14の製造方法を示す図である。(A)に示されるように、まずITOを成膜した基板14を準備する。基板14がTFT基板の場合には、TFT及びアクティブマトリクスを基板に形成し、ITOを成膜しておく。ポジ型レジスト(LC200(シプレイファーイースト製))91を1500rpm、30sの条件で基板14にスピンコートした。なおここではポジ型レジストを用いたが、必ずしもポジ型レジストである必要はなく、ネガ型レジストでもよいし、さらにはレジスト以外の感光性樹脂を用いてもよい。スピンコートしたレジスト91を90℃、20分でプリベークした後に、ITOパターニング用のフォトマスク92を介してレジスト91に密着露光を行った(露光時間5s)。
(B)に示されるように、次にシプレイファーイースト製の現像液MF319によりレジスト91を現像し(現像時間50s)、現像後120℃、1時間、次いで200℃、40分のポストベークを行った。(C)に示されるように、次に45℃に加熱したITOエッチャント(塩化第3鉄、塩酸、純水の混合液)を用いて基板14のITOをエッチングした(エッチング時間3分)。(D)に示されるように、アセトンを用いてレジスト91を剥離し、パターニングされた副壁構造(スリット)90を有するITO電極付き基板14を作製した。
パターニングされたITOは画素電極22となり、副壁構造(スリット)90は画素電極22に形成されたことになる。このとき作製した副壁構造(スリット)90の形状は長方形とし、長辺の長さは20μm、短辺の長さは5μm、長辺が線状の構造体32と直交するように作製した。また副壁構造(スリット)90の間隔は線状の構造体32と直交方向は10μm、平行方向は20μmとなるようにした。
(E)に示されるように、こうして作製したITO電極をパターニングした基板14に上と同様にしてレジスト(LC200)93をスピンコートし、突起形成用のフォトマスク94を介して露光を行い、線状の構造体(突起)32を形成した。このとき、ITO電極の副壁構造(スリット)90が線状の構造体30、32間にくるようにした。(F)はこうして形成された線状の構造体(突起)32を示す。線状の構造体(突起)32の幅は10μm、高さは1.5μm、上下基板12、14を重ねたときの線状の構造体30、32の間隔が20μmとなるようにした。この例では副壁構造(スリット)90を先に形成したが、線状の構造体(突起)32を先に形成してもよい。
次に垂直配向膜JALS684(JSR製)を200rpm、30sの条件でスピンコートして180℃、1時間のベークを行って垂直配向膜を形成した。片方の基板にシール(XN−21F、三井東圧化学製)を形成し、もう一方の基板に4.5μmのスペーサ(SP−20045、積水フインケミカル製)を散布し、両基板12、14を重ね合わせた(G)。最後に135℃、90分でベークを行って空パネルを作製した。この空パネル中に真空中にて負の誘電率異方性を有する液晶MJ961213(メルク製)を注入した。次に注入口を封口材(30Y−228、スリーボンド製)により封止して液晶パネルを作製した(G)。
この例では、副壁構造(スリット)90の間隔は線状の構造体32と平行方向で20μmとなるようにした。これと同様の製造方法で、副壁構造(スリット)90の間隔は線状の構造体32と平行方向で20μmとなるようにした液晶表示装置を別に製作した。
図117は線状の構造体及び副壁構造を有する基板の製造方法の他の例を示す図である。(A)に示されるように、ITO電極(図示せず)を有する基板14にポジ型レジスト(LC200(シプレイファーイースト製))90aを2000rpm、30sの条件でスピンコートした。スピンコートしたレジスト90aを90℃、20分でプリベークした後に、フォトマスク92aを介して密着露光を行った(露光時間5s)。
(B)に示されるように、次にシプレイファーイースト製の現像液MF319によりレジスト90aを現像し(現像時間50s)、現像後120℃、1時間、次いで200℃、40分のポストベークを行い、副壁構造(突起)90を形成した。この副壁構造(突起)90の大きさは5μm角の正方形、高さは1μm、突起の間隔は25μmとした(C)。
(D)に示されるように、こうして作製した基板14に上と同様にしてレジスト(LC200)93をスピンコートして突起形成用のフォトマスク94を介して露光を行い、副壁構造(突起)90が線状の構造体30、32間にくるようにした。同様にして、もう一方の基板12を形成し、上下基板を重ねた(E)。線状の構造体(突起)32の幅は10μm、高さは1.5μm、上下基板12、14を重ねたときの線状の構造体30、32の間隔が20μmとなるようにした。
さらに別の例においては、副壁構造90を導電性の突起で形成した。この場合の製造方法について説明する。ITO電極をもたない一対の基板にポジ型レジスト(LC200(シプレイファーイースト製))を用いて上の例と同様にして 副壁構造(突起)90を形成した。この副壁構造(突起)90の大きさは5μm角の正方形、高さは1μm、突起の間隔は線状の構造体32への直交方向には25μm、平行方向には50μmとした。次に、副壁構造(突起)90を有する基板14にITOをスパッタリングし、エッチングして画素電極22を形成した。副壁構造(突起)90はITOで覆われ、導電性を有する突起として形成されたことになる。それから、線状の構造体(突起)32を形成し、2枚の基板12、14を重ね合わせる。線状の構造体(突起)32を先に形成してもよいことは言うまでもない。
図118は図111の液晶表示装置において副壁構造(スリット)90の幅を一定(5μm)にして副壁構造(スリット)90の間隔を10、20、30、50μmに変えたときの応答性を示す図である。25℃で測定した。比較例は線状の構造体30、32はあるが、副壁構造(スリット)90がない液晶表示装置の例である。この結果から、副壁構造(スリット)90の間隔が10、20、30μmの場合の応答速度は、比較例の応答速度よりも小さく、副壁構造(スリット)90の間隔が50μmの場合の応答速度は、比較例の応答速度よりも大きくなっている。従って、副壁構造(スリット)90の間隔は50μm以下、より確実には30μm以下であるのがよい。また、副壁構造(スリット)90の間隔が10μm以下になると透過率が大きく低下し、副壁構造(スリット)90の間隔はレジストの分解能からみて5μm程度が下限となる。なお、副壁構造(スリット)90の間隔毎の透過率は下記の通りであった。
比較例 10μm 20μm 30μm 50μm
24.0% 22.7% 23.5% 23.8% 24.2%
図119は図111の液晶表示装置において副壁構造(スリット)90の間隔を一定(20μm)にして副壁構造(スリット)90の幅を5、10、20μmに変えたときの応答性を示す図である。この結果から、副壁構造(スリット)90の幅が5、10、20μmの場合の応答速度は、比較例の応答速度よりも小さい。しかし、副壁構造(スリット)90の幅が20μm以上になると透過率が低下する。従って、副壁構造(スリット)90の幅は5〜10μm程度がよい。なお、副壁構造(スリット)90の幅毎の透過率は下記の通りであった。
比較例 5μm 10μm 20μm
24.0% 23.5% 22.7% 20.8%
図120は図112の液晶表示装置において副壁構造(突起)90の大きさを一定(5μm角)にして副壁構造(突起)90の間隔を10、20、50、70μmに変えたときの応答性を示す図である。この結果から、副壁構造(突起)90の間隔が70μmの場合の応答速度は、比較例の応答速度よりも大きくなるので、副壁構造(突起)90の間隔が50μm以下であるのがよい。また、副壁構造(突起)90の間隔が10μm以下になると透過率が低下し、副壁構造(突起)90の間隔はレジストの分解能からみて5μm程度が下限となる。なお、副壁構造(突起)90の間隔毎の透過率は下記の通りであった。
比較例 10μm 20μm 50μm 70μm
24.0% 22.3% 23.1% 23.8% 24.2%
図121は図112の液晶表示装置において副壁構造(時)90の間隔を一定(20μm)にして副壁構造(突起)90の大きさを5、10μm角に変えたときの応答性を示す図である。この結果から、副壁構造(突起)90の大きさが5μm角の場合の応答速度は、副壁構造(突起)90の大きさが10μm角の場合の応答速度とほとんど変わらない。しかし、副壁構造(突起)90の大きさが5μmになると透過率が低下する。従って、副壁構造(突起)90の大きさは5μm角程度がよい。なお、副壁構造(突起)90の大きさ毎の透過率は下記の通りであった。
比較例 5μm 10μm
24.0% 23.1% 20.6%
図122は本発明の第10実施例による液晶表示装置を示す図である。この場合にも、前の実施例と同様に、液晶表示装置は、一対の基板12、14と、一対の基板12、14の間に挿入された負の誘電率異方性を有する液晶16と、液晶16の配向を制御するために一対の基板12、14の各々に設けられた線状の構造体(例えば突起30、32、スリット44、46)と、一対の基板12、14の外側にそれぞれ配置されている偏光板26、28とを備える。
図122は、上基板12の1つの線状の構造体(突起)30と、下基板14の1つの線状の構造体(突起)32とを示している。さらに、副壁構造96が一対の基板12、14の少なくとも一方に一対の基板の法線方向から見て一対の基板の線状の構造体30、32の間に設けられる。この実施例では、副壁構造96は下基板14に線状の構造体32と平行に線状の構造体32よりも幅の広いほぼ平坦な帯状の突起96Aとして形成される。線状の構造体32は副壁構造96の上に二段突起として形成される。帯状の突起96Aの幅は画素電極22の幅とほぼ等しく、線状の構造体32は副壁構造96の中心線上に延び、よって副壁構造96の側縁は画素電極22の中心を通る。一方向に変化するパラメータは帯状の突起96Aの高さである。
この構成においては、副壁構造96の側縁では形状により液晶が斜めに配向する。さらに、副壁構造96の誘電率が液晶の誘電率と比較して小さい場合、,電界を印加すると、副壁構造96の誘電率と液晶の誘電率との差から、電界(電気力線EL)が傾斜し、液晶が斜めに配向する。液晶の傾斜が線状の構造体32ばかりでなく副壁構造96でも規制され、液晶の傾斜が電圧印加後直ちに画素全体に伝播するため、応答時間が短くなる。
図123は図122の液晶表示装置の変形例を示す図である。この例では、副壁構造96は線状の構造体32に対して対向する基板12に設けた導電突起96Bからなる。一方向に変化するパラメータは対向基板12に形成した導電突起96Bの高さである。導電突起96Bの側縁では形状により液晶が斜めに配向する。さらに、導電突起96Bの形状から、電界を印加すると電界が傾斜して液晶が斜めに配向する。線状の構造体32ばかりでなく副壁構造96でも規制され、液晶の傾斜が電圧印加後直ちに画素全体に伝播するため、応答時間が短くなる。
図124は図122の液晶表示装置の製造方法を示す図である。(A)に示されるように、ガラス基板14にITO22を形成し、副壁構造96の帯状の突起96Aとなる膜96aを形成する。(B)に示されるように、マスクMを使用して、紫外線UVで突起用の膜96aを露光し、現像して副壁構造96の帯状の突起96Aを形成する(C)。(D)に示されるように、線状の構造体32となる膜32mを形成し、マスクMを使用して、紫外線UVで線状の構造体32の膜32mを露光し、現像して線状の構造体32を形成する(E)。
図125は図123の液晶表示装置の製造方法を示す図である。(A)に示されるように、ガラス基板12に副壁構造96の帯状の突起96Bとなる膜96bを形成する。(B)に示されるように、マスクMを使用して、紫外線UVで突起用の膜96bを露光し、現像して副壁構造96の帯状の突起96Bを形成する(C)。(D)に示されるように、画素電極22となるITOの膜を蒸着により形成し、それから、(E)に示されるように、線状の構造体30となる膜を形成し、図126は下基板14の線状の構造体がスリット46の例である。副壁構造96は線状の構造体46の対向側に形成した導電突起96Cからなる。スリット46からなる線状の構造体46は電気力線が同スリットに向かって広がる方向に生ずる。副壁構造96の誘電率が液晶と比較して低い場合、電気力線はスリット46に向かって広がる方向に生じる。
図127は下基板14の線状の構造体がスリット46の例である。副壁構造96は図122の例と同様に線状の構造体46の下側に形成された帯状の突起96Aからなる。スリット46からなる線状の構造体46は電気力線が同スリットに向かって広がる方向に生ずる。副壁構造96の誘電率が液晶と比較して低い場合、電気力線はスリット46に向かって広がる方向に生じる。
図128は副壁構造96が下基板14の上に二段に形成され帯状の突起96D、96Eからなる例である。下段側の帯状の突起96Dが上段側の帯状の突起96Eより幅が広く、線状の構造体32である突起32は上段側の帯状の突起96Eの上に形成されている。この場合には、二段に形成され帯状の突起96D、96Eの2つの側縁で液晶の傾斜配向を規制できる。この構成では、液晶の配向傾斜の伝播距離が2分の1から3分の1へ短くなるため、応答時間の改善が大きくなる。
図129は副壁構造96が下基板14の線状の構造体32の下で厚さが大きく、線状の構造体32から遠ざかるにつれて厚さが小さくなるように外側へ向かって傾斜した帯状の突起96Fからなる。広い面積の帯状の突起96Fが傾斜しているため、広い面積にわたって、形状及び比誘電率の差によって、液晶の傾斜配向を規制できる。さらに、電圧無印加時におけるエッジの形状に起因するもれ光を小さくすることが可能となる。傾斜構造は感光性材料のリフローで形成することが可能である。
図130は下基板14上に起伏のある突起98を形成し、この突起98を線状の構造体32及び副壁構造96として作用させるようにした例である。起伏の周期を変化させてあり、一方向に変化するパラメータは起伏の周期である。起伏の周期が長くなると、液晶を傾斜配向させる規制力が平均的に弱くなる。さらに、電界分布も平均的に傾斜するので、液晶を傾斜配向させることが可能となる。従って、広い領域で液晶の傾斜配向を規制できる。
図131は下基板14上に誘電率を変化させた突起97を形成し、この突起97を線状の構造体32及び副壁構造96として作用させるようにした例である。突起97は比誘電率がε1、ε2、ε3と段階的に小さくした部分を含む。比誘電率が変化している領域で電界傾斜が発生するため、液晶の傾斜配向を規制できる。突起97の比誘電率を連続的に変化させてもよい。
図132は抵抗率が低い導体99Aと抵抗率が高い導体99Bとで画素電極22を構成した実施例である。抵抗率が低い導体99Aは抵抗率が高い導体99Bよりも幅が狭く、抵抗率が高い導体99Bで覆われ、抵抗率が高い導体99Bの中心部に位置する。これによれば、対向基板側の電極18の静電容量と導体抵抗率が高い導体99Bとの時定数で決まる時間で電荷が導体99Bから拡散する過程で、電界傾斜が発生するため、液晶の傾斜配向を規制できる。
図133(A)〜(C)は副壁構造96としての突起の端の形状に凹凸を形成した実施例を示す図である。(A)では副壁構造96としての突起の端の形状は三角波状96Hに形成される。(B)では副壁構造96としての突起の端の形状は曲線状96Iに形成される。(C)では副壁構造96としての突起の端の形状は矩形波状96Jに形成される。突起の端の形状に凹凸を形成することによって、液晶の配向を安定化することができる。液晶が傾斜配向するとき、配向は突起に平行に配向しようとする。副壁構造96では、液晶は突起に対して垂直に配向する必要がある。突起の端の形状に凹凸があると、突起に平行になろうとする力が互いに打ち消し合って、結果的に液晶は突起に対して垂直に配向する。
図134は(A)〜(C)は副壁構造96としての突起の断面を規定した実施例を示す図である。(A)では副壁構造96としての突起の断面の形状を台形形状96Kに形成している。(B)では副壁構造96としての突起の断面の形状を円弧形状96Lに形成している。(C)では副壁構造96としての突起の断面の形状を曲線形状96Mに形成している。このようにすることによって、液晶の傾斜配向を規制する領域を広げることが可能になる。さらに、断面が急峻であると、電圧無印加時において、形状により液晶配向に乱れが生じる。断面の形状を滑らかにすると、エッジによる配向不良に起因するもれ光を小さくすることが可能になった。
図122から図134を参照して説明した実施例に対してさらなる実施例を構成することができる。例えば、上記実施例では液晶の傾斜配向を規制する構造を一方の基板側のみに形成していたが、液晶の傾斜配向を規制する構造を両基板に形成することもできる。そうすると、画素内のセル厚が比較的に均一になり、光学特性が均一になる。さらに、液晶の傾斜配向を規制する力が強くなる。
また、TFTで液晶を駆動する場合、突起を窒化シリコンなどのゲート絶縁膜や最終保護膜で形成することにより、突起の製造プロセスを簡略化することが可能になる。液晶中にカイラル材を添加すると、電界を小さくしたときの液晶の応答時間を短くすることが可能になる。液晶のツイストエネルギーによって液晶配向の戻りが早くなる。
このように、液晶の配向を制御する線状の構造体の間に線状の構造体から一方向にパラメータが増加あるいは減少する第2の液晶の傾斜配向規制手段(副壁構造)を形成することにより、液晶配向の傾斜方向を規制することができ、黒表示から白表示への遷移における液晶配向の傾斜方向の伝播速度が短くなるため、応答時間を短くすることができ、係わる表示装置の表示性能に寄与するところが大きい。