JP3900310B2 - 鋳造鍛造方法 - Google Patents
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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳造によって成形した鍛造用粗材を鍛造することによって所望の形状に成形する鋳造鍛造方法に係わり、とくに鍛造用粗材の鋳造に際して、鋳造欠陥が発生せず、もって鍛造時の割れ発生を未然に防止することができ、健全な鍛造部材を得ることのできる鋳造鍛造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋳造鍛造工法は、鋳造によって鍛造用粗材を成形したのち、この鍛造用粗材に鍛造を施すことによって所望の形状に成形するものであり、鍛造用粗材が鋳造によって成形されるので、最終製品に比較的近い形状の鍛造用粗材を容易に得ることができ、材料歩留の向上、および工程の短縮が可能で、しかも通常の鍛造品とほとんど変わらない強度と外観品質を備えた製品を低コストのもとに得ることができることから、近年ロードホイールやナックルアームなどの製造に注目されている。
【0003】
図2および図3は、ロードホイールについて上記工法を採用したもので、図3に示す鋳造によって成形された鍛造用粗材を鍛造によって、図2に示すロードホイール形状に成形するものである。
【0004】
このような鋳造鍛造工法に用いる材料金属としては、鍛造に先だって鍛造用粗材を鋳造しなければならないため鋳造性を重視せざるを得ず、しかも鍛造が可能であることが要求されるので、従来、JIS H 5202にAC4C、あるいはAC4CHとして規定されるアルミニウム合金が用いられていた。
【0005】
しかし、これら合金は本来鋳造用合金であるため、湯流れ性や凝固収縮性など鋳造性に優れる反面、鍛造用アルミニウム合金に較べて、強度や伸び率などの機械的特性、および塑性加工性に劣り、形状特性に優れた製品を得ることができないことから、特開平5−9637号公報、あるいは特開平6−73482号公報に記載されているように、Si含有量を3%程度に低下させたアルミニウム合金が使用されるようになってきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、Si含有量を3%程度に低下させた、言わば鋳造鍛造用のアルミニウム合金を用いて、例えばメッシュタイプのロードホイールを鋳造鍛造法により製造するに際して、従来のAC4C材、あるいはAC4CH材と同様の基準によって鍛造用粗材を鋳造し、この鍛造用粗材に鍛造を施した場合、鍛造後の蛍光探傷検査においてロードホイールのスポーク(リブE部)上面に、かなりの頻度で割れ(以下、『リブ割れ』と称する)が発生するという問題が明らかとなり、このような問題点を解消することが上記のような鋳造鍛造用アルミニウム合金を用いて、ロードホイールのスポークのようなリブ部を備えた部材を鋳造鍛造法によって製造するための課題となっていた。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、Si含有量を低下させた鋳造鍛造用アルミニウム合金を用いた鋳造鍛造法における上記課題に着目してなされたものであって、上記のような鍛造性を重視したアルミニウム合金を用いたとしても、リブ割れの発生を防止することができ、強度および外観品質共に優れた鍛造部品を得ることができる鋳造鍛造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、リブ割れの発生機構の解明、およびその防止手段の確立を目的に、リブ割れ発生部や鍛造前の鍛造用粗材のリブ割れ相当部について、目視検査,蛍光探傷検査,浸透探傷検査、断面ミクロ組織観察などを繰り返した結果、鍛造用粗材のリブ割れ相当部の断面には、Siの偏析に基づく異常組織とその中央に微小湯境が発生していることが判明した。
【0009】
すなわち、リブ割れは、鍛造用粗材に発生した上記のような鋳造欠陥を起点とするものであって、この異常組織と湯境発生は、鋳造鍛造用アルミニウム合金が従来のAC4C材あるいはAC4CH材に比較して流動性に劣ることが原因であり、鍛造性を重視してSi含有量の少ない鋳造鍛造用アルミニウム合金を使用する以上、これらAC4C材,AC4CH材と同様の寸法形状の鍛造用粗材では、この種鋳造欠陥の発生を避けることはできず、鍛造用粗材におけるこれら鋳造欠陥の発生を防止し、もって鍛造時のリブ割れを回避するには、用いる合金の流動性の劣化を配慮して鍛造用粗材の形状を鋳造性に劣るアルミニウム合金でも上記のような鋳造欠陥が発生しないような形状に変更する必要があるとの結論に達した。
【0010】
そこで、鍛造用粗材の形状、とくにリブ形状について、上記異常組織や湯境の発生頻度との関係を鋭意検討した結果、リブEの周長に対してリブEの断面積をある程度以上に大きくすることによって異常組織や湯境の発生を防止することができ、このような鍛造用粗材を鍛造した場合には、リブ割れが発生しなくなることを見出した。
また、鍛造用粗材の平坦部からのリブの立上り部分における曲率半径をある程度以上に大きくすることによって、外引けに起因する線状欠陥の防止が可能であることを見出すに到った。
【0011】
本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の請求項1に係わる鋳造鍛造方法においては、リブを備えた部材を鋳造鍛造により成形するために、リブを備えた鍛造用粗材を鋳造により成形するに際して、鍛造用粗材のリブの断面積A(mm2 )とリブの周長L(mm)の比A/Lが1.99以上であると共に、リブの立上り部分における曲率半径Rrが3mm以上である形状に鋳造する構成としたことを特徴としており、このような鍛造用粗材の製造方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0012】
また、本発明に係わる鋳造鍛造方法の実施態様として請求項2に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材のリブ頂部における曲率半径Rtが1mm以上である形状に鋳造する構成とし、請求項3に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材のリブの抜け勾配θが5°以上である形状に鋳造する構成としており、鋳造鍛造方法におけるこのような構成を前述した従来の課題を解決するための手段としたことを特徴としている。
【0013】
【発明の作用】
本発明に係わる鋳造鍛造方法は、リブEを備えた部材を鋳造鍛造するための鍛造用粗材を鋳造するに際して、鍛造用粗材のリブEの断面積A(mm2 )とリブEの周長L(mm)の比A/Lが1.99上である形状に鋳造するようにしたものであるが、以下に、リブ形状を表す各種数値について、その限定理由について作用と共に説明する。
【0014】
本発明において、鍛造用粗材のリブEの断面積とは、図1に示すように、鍛造用粗材の平坦部Fからの突出部分の面積であって、平坦部Fから上のハッチング部分の面積Aを意味する。一方、リブEの周長とは、リブEの平坦部Fからの一方の立上り部B1 からリブEの頂部Tを経て他方の立上り部B2 に至る曲線長さLを意味する。そして、リブEの周長Lに対する断面積Aの比A/Lは、リブEの表面積、すなわち溶湯の冷却面積に対する溶湯の体積、すなわち溶湯の有する熱量の比を表すことになり、湯廻り性に対する形状効果の指標となるものであって、A/L比が大きくなるほど湯廻り性が改善され、リブEの周長Lおよび断面積Aをそれぞれmmおよびmm2 で表したときのA/L比を1.99以上とすることにより、Si含有量の少ない鍛造性を重視した鋳造鍛造用アルミニウム合金を用いて鍛造用粗材を鋳造した場合においても、鍛造用粗材中に異常組織や湯境の発生がなくなり、このような鍛造用粗材を用いて鍛造することによりリブ割れの発生が解消されることになる。
【0015】
本発明の鋳造鍛造方法においては、上記に加えて、鍛造用粗材における平坦部からのリブの立上り部分の曲率半径Rr(図1参照)を3mm以上とする。これは、この部分の曲率半径Rrが3mm未満の場合には、鍛造用粗材に外引けが発生しやすくなり、外引けが発生した場合には、これが鍛造によって拡大されて、線状の外観欠陥となることによる。曲率半径Rrを3mm以上とすることにより、Si含有量の少ない鋳造鍛造用アルミニウム合金の場合でも、外引けがほとんど発生しなくなる。なお、上記曲率半径Rrは、4mm以上とすることが望ましく、これによってこのような外引けの発生が完全に防止されるようになり、鍛造後に線状欠陥となって現れるようなことがなくなる。
【0016】
本発明に係わる鋳造鍛造方法の実施態様として、請求項2に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材のリブ頂部における曲率半径Rt(図1参照)を1mm以上としたものであるが、これは、この部分の曲率半径Rtが1mm未満の場合には、鍛造傷が極めて発生しやすくなるため、リブ頂部の曲率半径Rtを上記範囲にすることが鍛造傷防止の観点から望ましいことによる。なお、このような効果をより確実なものとするためには、上記曲率半径Rtを3mm以上とすることが望ましい。
【0017】
さらに実施態様として、請求項3に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材のリブEの抜け勾配θ(図1参照)を5°以上としたものであるから、鍛造用粗材の鋳型からの脱型性が良好なものとなり、鍛造用粗材の鋳造作業が容易なものとなる。なお、このような効果をより確実なものとするためには、上記抜け勾配θを8°以上とすることが望ましい。
【0018】
【発明の効果】
本発明に係わる鋳造鍛造方法においては、リブEを備えた部材を鋳造鍛造するのに用いる鍛造用粗材を鋳造するに際して、鍛造用粗材のリブEの断面積A(mm2 )とリブEの周長L(mm)の比A/Lが1.99以上となると共に、リブEの立上り部分における曲率半径Rrが3mm以上となるような形状に鋳造するようにしているので、鍛造用粗材リブ部分の湯廻り性を改善することができ、鍛造性を重視し、湯流れ性に劣る鋳造鍛造用アルミニウム合金を用いた場合でも、湯境や異常組織の発生を有効に防止することができ、鍛造工程におけるリブ割れの発生を防止することができるばかりでなく、鍛造用粗材に外引けがほとんど発生しなくなり、鍛造後の線状欠陥を防止することができるという極めて優れた効果がもたらされる。
【0019】
また、本発明に係わる鋳造鍛造方法の実施態様として請求項2に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材の鋳造に際して、鍛造用粗材のリブEの頂部における曲率半径Rtが1mm以上となるような形状に鋳造するようにしているので、鍛造傷の発生を効果的に防止することができ、同じく実施態様として請求項3に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材の鋳造に際して、鍛造用粗材のリブEの抜け勾配θが5°以上となる形状に鋳造するようにしているので、凝固後の鍛造用粗材を鋳型から容易に抜き出すことができるという優れた効果がそれぞれもたらされる。
【0020】
【実施例】
Si:3.0%,Mg:0.45%,Cu:0.45%を含有する鋳造鍛造用アルミニウム合金を用いて、低圧鋳造法により、意匠面(リブ面)を下向きとするセンターゲート方案により、リブ形状の異なる6種の鍛造用粗材をそれぞれ100個ずつ鋳造した。
【0021】
そして、鋳造されたそれぞれ100個の鍛造用粗材について、目視検査により表面の外引けの有無をそれぞれ確認すると共に、表面をNaOHによって腐食することにより、異常組織および湯境発生の有無を調査したのち、鍛造用粗材にそれぞれ鍛造を施すことによって、メッシュタイプのロードホイールに成形し、鍛造後のリブ割れの有無を蛍光探傷検査によりそれぞれ確認し、リブ割れの発生率を求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示した結果から明らかなように、鍛造用粗材のリブEの断面積A(mm2 )とリブEの周長L(mm)の比A/Lが1.99以上である発明例1〜3及び参考例1の場合には、鍛造用粗材に異常組織や湯境の発生は認められず、鍛造成形後にもリブ割れが全く発生しないか、発生したとしても2%(100個のうち2個)に過ぎないのに対し、A/Lが1.99未満の比較例1〜3の場合には、鍛造用粗材にいずれも異常組織および湯境が発生しており、鍛造成形後には成形品のほとんど全数にリブ割れが発生する結果となった。
【0024】
また、A/Lが1.99の発明例1については、鍛造用粗材に異常組織および湯境が見出せなかったにも拘らず、2%のリブ割れ発生が認められたが、これは鋳造後の鍛造用粗材100個のうちの2個程度に、肉眼では確認不可能な異常組織あるいは湯境が発生していたものと考えられる。なお、このような鋳造鍛造法によるロードホイールの不良率としては、2%以下であれば許容されるものと仮定した。
【0025】
鍛造用粗材の外引けについては、リブEの立上り部分の曲率半径Rrを3mm以上とした実施例では、ほとんど発生せず、鍛造により良好な仕上り外観を得ることができた。また、曲率半径Rrが3mmである発明例3においては、僅かな外引けが発生したものの、鍛造後のリブ割れは発生しておらず、同様に良好な仕上り外観が得られた。
【0026】
さらに、曲率半径Rrが2mmである参考例1については、外引けは大きくなったが、鍛造後のリブ割れは発生しなかった。このことから、曲率半径Rrが小さくなると外引けは大きくなるが、それはリブ割れには影響を与えないものであることが理解される。
【0027】
また、鍛造傷についても、この実施例ではリブ頂部の曲率半径Rtをすべて1mm以上としたことから、鍛造成形品のいずれにも鍛造傷の発生は認められなかった。
【0028】
さらに、鍛造用粗材の脱型性については、この実施例ではリブEの抜け角θをすべて5°以上としているので、いずれの場合も、凝固後の鍛造用粗材を鋳型から容易に抜き出すことができた。
【0029】
なお、上記実施例においては、本発明に係わる鋳造鍛造法をメッシュタイプのアルミロードホイールの成形に適用した例を示したが、本発明に係わる鋳造鍛造法は、このようなロードホイールの成形のみに限定される訳ではなく、リブ部を備えたアルミニウム製部材全般に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる鋳造鍛造方法において使用する鍛造用粗材のリブ形状を示す断面図である。
【図2】本発明に係わる鋳造鍛造方法により成形されたロードホイールの外観を示す概略平面図である。
【図3】本発明に係わる鋳造鍛造方法において鋳造により成形された鍛造用粗材の外観を示す概略平面図である。
【符号の説明】
E リブ
A リブの断面積
L リブの周長
Rr リブの立上り部における曲率半径
Rt リブの頂部における曲率半径
θ 抜け勾配
F 平坦部
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋳造によって成形した鍛造用粗材を鍛造することによって所望の形状に成形する鋳造鍛造方法に係わり、とくに鍛造用粗材の鋳造に際して、鋳造欠陥が発生せず、もって鍛造時の割れ発生を未然に防止することができ、健全な鍛造部材を得ることのできる鋳造鍛造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋳造鍛造工法は、鋳造によって鍛造用粗材を成形したのち、この鍛造用粗材に鍛造を施すことによって所望の形状に成形するものであり、鍛造用粗材が鋳造によって成形されるので、最終製品に比較的近い形状の鍛造用粗材を容易に得ることができ、材料歩留の向上、および工程の短縮が可能で、しかも通常の鍛造品とほとんど変わらない強度と外観品質を備えた製品を低コストのもとに得ることができることから、近年ロードホイールやナックルアームなどの製造に注目されている。
【0003】
図2および図3は、ロードホイールについて上記工法を採用したもので、図3に示す鋳造によって成形された鍛造用粗材を鍛造によって、図2に示すロードホイール形状に成形するものである。
【0004】
このような鋳造鍛造工法に用いる材料金属としては、鍛造に先だって鍛造用粗材を鋳造しなければならないため鋳造性を重視せざるを得ず、しかも鍛造が可能であることが要求されるので、従来、JIS H 5202にAC4C、あるいはAC4CHとして規定されるアルミニウム合金が用いられていた。
【0005】
しかし、これら合金は本来鋳造用合金であるため、湯流れ性や凝固収縮性など鋳造性に優れる反面、鍛造用アルミニウム合金に較べて、強度や伸び率などの機械的特性、および塑性加工性に劣り、形状特性に優れた製品を得ることができないことから、特開平5−9637号公報、あるいは特開平6−73482号公報に記載されているように、Si含有量を3%程度に低下させたアルミニウム合金が使用されるようになってきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、Si含有量を3%程度に低下させた、言わば鋳造鍛造用のアルミニウム合金を用いて、例えばメッシュタイプのロードホイールを鋳造鍛造法により製造するに際して、従来のAC4C材、あるいはAC4CH材と同様の基準によって鍛造用粗材を鋳造し、この鍛造用粗材に鍛造を施した場合、鍛造後の蛍光探傷検査においてロードホイールのスポーク(リブE部)上面に、かなりの頻度で割れ(以下、『リブ割れ』と称する)が発生するという問題が明らかとなり、このような問題点を解消することが上記のような鋳造鍛造用アルミニウム合金を用いて、ロードホイールのスポークのようなリブ部を備えた部材を鋳造鍛造法によって製造するための課題となっていた。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、Si含有量を低下させた鋳造鍛造用アルミニウム合金を用いた鋳造鍛造法における上記課題に着目してなされたものであって、上記のような鍛造性を重視したアルミニウム合金を用いたとしても、リブ割れの発生を防止することができ、強度および外観品質共に優れた鍛造部品を得ることができる鋳造鍛造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、リブ割れの発生機構の解明、およびその防止手段の確立を目的に、リブ割れ発生部や鍛造前の鍛造用粗材のリブ割れ相当部について、目視検査,蛍光探傷検査,浸透探傷検査、断面ミクロ組織観察などを繰り返した結果、鍛造用粗材のリブ割れ相当部の断面には、Siの偏析に基づく異常組織とその中央に微小湯境が発生していることが判明した。
【0009】
すなわち、リブ割れは、鍛造用粗材に発生した上記のような鋳造欠陥を起点とするものであって、この異常組織と湯境発生は、鋳造鍛造用アルミニウム合金が従来のAC4C材あるいはAC4CH材に比較して流動性に劣ることが原因であり、鍛造性を重視してSi含有量の少ない鋳造鍛造用アルミニウム合金を使用する以上、これらAC4C材,AC4CH材と同様の寸法形状の鍛造用粗材では、この種鋳造欠陥の発生を避けることはできず、鍛造用粗材におけるこれら鋳造欠陥の発生を防止し、もって鍛造時のリブ割れを回避するには、用いる合金の流動性の劣化を配慮して鍛造用粗材の形状を鋳造性に劣るアルミニウム合金でも上記のような鋳造欠陥が発生しないような形状に変更する必要があるとの結論に達した。
【0010】
そこで、鍛造用粗材の形状、とくにリブ形状について、上記異常組織や湯境の発生頻度との関係を鋭意検討した結果、リブEの周長に対してリブEの断面積をある程度以上に大きくすることによって異常組織や湯境の発生を防止することができ、このような鍛造用粗材を鍛造した場合には、リブ割れが発生しなくなることを見出した。
また、鍛造用粗材の平坦部からのリブの立上り部分における曲率半径をある程度以上に大きくすることによって、外引けに起因する線状欠陥の防止が可能であることを見出すに到った。
【0011】
本発明は上記知見に基づくものであって、本発明の請求項1に係わる鋳造鍛造方法においては、リブを備えた部材を鋳造鍛造により成形するために、リブを備えた鍛造用粗材を鋳造により成形するに際して、鍛造用粗材のリブの断面積A(mm2 )とリブの周長L(mm)の比A/Lが1.99以上であると共に、リブの立上り部分における曲率半径Rrが3mm以上である形状に鋳造する構成としたことを特徴としており、このような鍛造用粗材の製造方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0012】
また、本発明に係わる鋳造鍛造方法の実施態様として請求項2に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材のリブ頂部における曲率半径Rtが1mm以上である形状に鋳造する構成とし、請求項3に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材のリブの抜け勾配θが5°以上である形状に鋳造する構成としており、鋳造鍛造方法におけるこのような構成を前述した従来の課題を解決するための手段としたことを特徴としている。
【0013】
【発明の作用】
本発明に係わる鋳造鍛造方法は、リブEを備えた部材を鋳造鍛造するための鍛造用粗材を鋳造するに際して、鍛造用粗材のリブEの断面積A(mm2 )とリブEの周長L(mm)の比A/Lが1.99上である形状に鋳造するようにしたものであるが、以下に、リブ形状を表す各種数値について、その限定理由について作用と共に説明する。
【0014】
本発明において、鍛造用粗材のリブEの断面積とは、図1に示すように、鍛造用粗材の平坦部Fからの突出部分の面積であって、平坦部Fから上のハッチング部分の面積Aを意味する。一方、リブEの周長とは、リブEの平坦部Fからの一方の立上り部B1 からリブEの頂部Tを経て他方の立上り部B2 に至る曲線長さLを意味する。そして、リブEの周長Lに対する断面積Aの比A/Lは、リブEの表面積、すなわち溶湯の冷却面積に対する溶湯の体積、すなわち溶湯の有する熱量の比を表すことになり、湯廻り性に対する形状効果の指標となるものであって、A/L比が大きくなるほど湯廻り性が改善され、リブEの周長Lおよび断面積Aをそれぞれmmおよびmm2 で表したときのA/L比を1.99以上とすることにより、Si含有量の少ない鍛造性を重視した鋳造鍛造用アルミニウム合金を用いて鍛造用粗材を鋳造した場合においても、鍛造用粗材中に異常組織や湯境の発生がなくなり、このような鍛造用粗材を用いて鍛造することによりリブ割れの発生が解消されることになる。
【0015】
本発明の鋳造鍛造方法においては、上記に加えて、鍛造用粗材における平坦部からのリブの立上り部分の曲率半径Rr(図1参照)を3mm以上とする。これは、この部分の曲率半径Rrが3mm未満の場合には、鍛造用粗材に外引けが発生しやすくなり、外引けが発生した場合には、これが鍛造によって拡大されて、線状の外観欠陥となることによる。曲率半径Rrを3mm以上とすることにより、Si含有量の少ない鋳造鍛造用アルミニウム合金の場合でも、外引けがほとんど発生しなくなる。なお、上記曲率半径Rrは、4mm以上とすることが望ましく、これによってこのような外引けの発生が完全に防止されるようになり、鍛造後に線状欠陥となって現れるようなことがなくなる。
【0016】
本発明に係わる鋳造鍛造方法の実施態様として、請求項2に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材のリブ頂部における曲率半径Rt(図1参照)を1mm以上としたものであるが、これは、この部分の曲率半径Rtが1mm未満の場合には、鍛造傷が極めて発生しやすくなるため、リブ頂部の曲率半径Rtを上記範囲にすることが鍛造傷防止の観点から望ましいことによる。なお、このような効果をより確実なものとするためには、上記曲率半径Rtを3mm以上とすることが望ましい。
【0017】
さらに実施態様として、請求項3に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材のリブEの抜け勾配θ(図1参照)を5°以上としたものであるから、鍛造用粗材の鋳型からの脱型性が良好なものとなり、鍛造用粗材の鋳造作業が容易なものとなる。なお、このような効果をより確実なものとするためには、上記抜け勾配θを8°以上とすることが望ましい。
【0018】
【発明の効果】
本発明に係わる鋳造鍛造方法においては、リブEを備えた部材を鋳造鍛造するのに用いる鍛造用粗材を鋳造するに際して、鍛造用粗材のリブEの断面積A(mm2 )とリブEの周長L(mm)の比A/Lが1.99以上となると共に、リブEの立上り部分における曲率半径Rrが3mm以上となるような形状に鋳造するようにしているので、鍛造用粗材リブ部分の湯廻り性を改善することができ、鍛造性を重視し、湯流れ性に劣る鋳造鍛造用アルミニウム合金を用いた場合でも、湯境や異常組織の発生を有効に防止することができ、鍛造工程におけるリブ割れの発生を防止することができるばかりでなく、鍛造用粗材に外引けがほとんど発生しなくなり、鍛造後の線状欠陥を防止することができるという極めて優れた効果がもたらされる。
【0019】
また、本発明に係わる鋳造鍛造方法の実施態様として請求項2に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材の鋳造に際して、鍛造用粗材のリブEの頂部における曲率半径Rtが1mm以上となるような形状に鋳造するようにしているので、鍛造傷の発生を効果的に防止することができ、同じく実施態様として請求項3に係わる鋳造鍛造方法においては、鍛造用粗材の鋳造に際して、鍛造用粗材のリブEの抜け勾配θが5°以上となる形状に鋳造するようにしているので、凝固後の鍛造用粗材を鋳型から容易に抜き出すことができるという優れた効果がそれぞれもたらされる。
【0020】
【実施例】
Si:3.0%,Mg:0.45%,Cu:0.45%を含有する鋳造鍛造用アルミニウム合金を用いて、低圧鋳造法により、意匠面(リブ面)を下向きとするセンターゲート方案により、リブ形状の異なる6種の鍛造用粗材をそれぞれ100個ずつ鋳造した。
【0021】
そして、鋳造されたそれぞれ100個の鍛造用粗材について、目視検査により表面の外引けの有無をそれぞれ確認すると共に、表面をNaOHによって腐食することにより、異常組織および湯境発生の有無を調査したのち、鍛造用粗材にそれぞれ鍛造を施すことによって、メッシュタイプのロードホイールに成形し、鍛造後のリブ割れの有無を蛍光探傷検査によりそれぞれ確認し、リブ割れの発生率を求めた。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示した結果から明らかなように、鍛造用粗材のリブEの断面積A(mm2 )とリブEの周長L(mm)の比A/Lが1.99以上である発明例1〜3及び参考例1の場合には、鍛造用粗材に異常組織や湯境の発生は認められず、鍛造成形後にもリブ割れが全く発生しないか、発生したとしても2%(100個のうち2個)に過ぎないのに対し、A/Lが1.99未満の比較例1〜3の場合には、鍛造用粗材にいずれも異常組織および湯境が発生しており、鍛造成形後には成形品のほとんど全数にリブ割れが発生する結果となった。
【0024】
また、A/Lが1.99の発明例1については、鍛造用粗材に異常組織および湯境が見出せなかったにも拘らず、2%のリブ割れ発生が認められたが、これは鋳造後の鍛造用粗材100個のうちの2個程度に、肉眼では確認不可能な異常組織あるいは湯境が発生していたものと考えられる。なお、このような鋳造鍛造法によるロードホイールの不良率としては、2%以下であれば許容されるものと仮定した。
【0025】
鍛造用粗材の外引けについては、リブEの立上り部分の曲率半径Rrを3mm以上とした実施例では、ほとんど発生せず、鍛造により良好な仕上り外観を得ることができた。また、曲率半径Rrが3mmである発明例3においては、僅かな外引けが発生したものの、鍛造後のリブ割れは発生しておらず、同様に良好な仕上り外観が得られた。
【0026】
さらに、曲率半径Rrが2mmである参考例1については、外引けは大きくなったが、鍛造後のリブ割れは発生しなかった。このことから、曲率半径Rrが小さくなると外引けは大きくなるが、それはリブ割れには影響を与えないものであることが理解される。
【0027】
また、鍛造傷についても、この実施例ではリブ頂部の曲率半径Rtをすべて1mm以上としたことから、鍛造成形品のいずれにも鍛造傷の発生は認められなかった。
【0028】
さらに、鍛造用粗材の脱型性については、この実施例ではリブEの抜け角θをすべて5°以上としているので、いずれの場合も、凝固後の鍛造用粗材を鋳型から容易に抜き出すことができた。
【0029】
なお、上記実施例においては、本発明に係わる鋳造鍛造法をメッシュタイプのアルミロードホイールの成形に適用した例を示したが、本発明に係わる鋳造鍛造法は、このようなロードホイールの成形のみに限定される訳ではなく、リブ部を備えたアルミニウム製部材全般に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる鋳造鍛造方法において使用する鍛造用粗材のリブ形状を示す断面図である。
【図2】本発明に係わる鋳造鍛造方法により成形されたロードホイールの外観を示す概略平面図である。
【図3】本発明に係わる鋳造鍛造方法において鋳造により成形された鍛造用粗材の外観を示す概略平面図である。
【符号の説明】
E リブ
A リブの断面積
L リブの周長
Rr リブの立上り部における曲率半径
Rt リブの頂部における曲率半径
θ 抜け勾配
F 平坦部
Claims (3)
- リブを備えた部材を鋳造鍛造により成形するために、リブを備えた鍛造用粗材を鋳造により成形するに際して、
鍛造用粗材のリブの断面積A(mm2 )とリブの周長L(mm)の比A/Lが1.99以上であって、リブの立上り部分における曲率半径Rrが3mm以上である形状に鋳造することを特徴とする鋳造鍛造方法。 - 鍛造用粗材のリブの頂部における曲率半径Rtが1mm以上である形状に鋳造することを特徴とする請求項1に記載の鋳造鍛造方法。
- 鍛造用粗材のリブの抜け勾配θが5°以上である形状に鋳造することを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳造鍛造方法。
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