JP3881759B2 - セラミックス製造過程のシミュレーション方法、およびそれを用いたセラミックス部材の設計方法 - Google Patents

セラミックス製造過程のシミュレーション方法、およびそれを用いたセラミックス部材の設計方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミックスの製造過程のシミュレーション方法、およびそれを用いたセラミックス部材の設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セラミックスは、優れた高温特性、高硬度高剛性、耐摩耗性等の性質を有し、高温構造材料として注目されてきたが、種々の要因によりコスト高となるため、その優れた特性を充分に活かすほど実用化されていないのが現状である。
【0003】
このコスト高の要因は、セラミックスの製造工程の焼結過程で大きな収縮を伴うために、焼結後の形状を高精度で予測することが困難であるばかりでなく、割れや変形を起こすことにあると考えられる。
【0004】
すなわち、セラミックスの製造においては、これまでに蓄積されてきた経験等のノウハウに頼って生産されており、形状が変わったり、原料粉末の変更等により焼結条件の変更があったときに、その都度、試行錯誤で最適な形状や焼結条件を探し出さねばならないという問題があり、また、割れや変形を避けるために所望の形状よりかなり大きめの形状に設計して後加工で削り取ったり、必要以上に充分な条件で焼結する(例えば、必要以上に充分な時間をかけて焼結させる等)などの対策をとることとなり、製造コスト高の原因となっている。
【0005】
これらの問題は、製造工程をシミュレーションすることができて、割れや変形を予測することができるようになれば解決できるはずであるが、セラミックスの成形から焼結に至る製造工程をシミュレーションすることは未だ報告されていない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、セラミックスの割れや変形を高精度で予測することができるセラミックスの製造過程のシミュレーション方法、およびそれを用いたセラミックス部材の設計方法を提供することを目的とする。
【0008】
【発明が解決しようとする手段】
上記課題を解決するために、
発明は、熱伝導解析に基づいて焼結過程での雰囲気温度における成形体各部の温度を算出する第1ステップと、
成形体各部の密度および温度に基づいて、成形体各部に及ぼされる焼結応力および体積粘性係数を求め、これらから成形体各部の各方向のひずみ速度を算出する第2ステップと、
これらひずみ速度と保持時間とに基づいて成形体各部の焼結収縮を算出し、成形体の形状変化を求める第3ステップとを、
焼結開始時から最高焼結温度で保持終了まで繰り返す、セラミックス製造過程のシミュレーション方法であって、
前記第2ステップの1回目は、成形体各部の密度として焼結前のセラミックス成形体の密度を用い、2回目以降は、前記成形体各部の密度として、前記第3ステップで算出された焼成収縮から求めた形状変化を考慮して求めなおした密度の値を用いることを特徴とする、セラミックス製造過程のシミュレーション方法を提供する。
【0009】
発明は、第発明において、焼結過程における前記第1ステップないし第3ステップの計算を有限要素法を用いて行うことを特徴とする、セラミックス製造過程のシミュレーション方法を提供する。
【0010】
発明は、第発明または第発明の方法において、前記焼結前のセラミックス成形体の密度は、粉体成形時の各部の圧力、体積弾性係数に基づいて、有限要素法により算出することを特徴とする、セラミックス製造過程のシミュレーション方法を提供する。
【0011】
発明は、第発明ないし第発明のいずれかの方法において、前記第2ステップは、成形体を無負荷および一軸負荷した状態で焼結させた際の径方向と軸方向の収縮率の時間変化を測定し、その結果に基づいて導出された収縮速度式を用いてひずみ速度を算出することを特徴とする、セラミックス製造過程のシミュレーション方法を提供する。
【0012】
発明は、第発明ないし第発明のいずれかの方法において、前記第2ステップは、焼結過程における成形体の摩擦および自重を考慮した収縮速度式を用いてひずみ速度を算出することを特徴とする、セラミックス製造過程のシミュレーション方法を提供する。
【0013】
発明は、第発明ないし第発明のいずれかのシミュレーション結果に基づいてセラミックス部材の設計を行うことを特徴とするセラミックス部材の設計方法を提供する。
【0014】
本発明においては、焼結過程のセラミックスに対して粘弾性体近似が成り立つという仮定のもとで、実験結果に基づいた収縮速度式を適用してセラミックスの焼結過程をシミュレーションする。より具体的には、焼結前のセラミックス成形体の密度を初期値として用い、(1)熱伝導解析に基づいて焼結過程での雰囲気温度における成形体各部の温度を算出し、(2)成形体各部の密度および温度に基づいて、成形体各部に及ぼされる焼結応力および体積粘性係数を求め、これらから成形体各部のひずみ速度を算出し、(3)これらひずみ速度から焼結収縮による形状変化を算出するという(1)〜(3)のステップを、焼結開始時から最高焼結温度で保持終了まで繰り返す。これにより、より簡便に現実のセラミックス製造過程、特に焼結過程を高精度でシミュレーションすることができるので、セラミックスの割れや変形を高精度で予測することができる。したがって、本発明のシミュレーション結果を用いて割れや変形のないセラミックス部材の設計を行うことができる。特に、有限要素法を適用すれば焼結中の成形体の各要素のひずみを一層簡単かつ正確に把握することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明する。
本発明の第1の実施形態では、焼結過程におけるセラミックス成形体に対し粘弾性体近似に基づく収縮速度式を適用してセラミックスの焼結過程をシミュレーションする。
具体的には、初期値として焼結前の成形体の情報を用い、焼結時の収縮変形を以下のステップで有限要素法を用いてシミュレーションする。
また、本発明の第2の実施形態では、このようなシミュレーション結果に基づいてセラミックス部材の設計を行う。
なお、以下の説明において使用する記号は以下のとおりである。
【0016】
【数1】
Figure 0003881759
【0017】
まず、第1の実施形態におけるシミュレーション方法を実施するために作製したモデルの概要を図1を参照しながら説明する。
このシミュレーションモデルは、以下の3つのステップからなる。
(1)ステップ1:成形体内部の熱伝導解析
焼結中の成形体内の各部の温度(温度分布)を求めるために、寸法変化を考慮した熱伝導解析を行う。この場合に、基となるデータとして成形体各部の密度(密度分布)を求める。
【0018】
(2)ステップ2:焼結応力、体積粘性係数、ひずみ速度の計算
各部の温度Tと密度ρより、焼結応力、体積粘性係数、ならびに体積ひずみ速度を計算し、任意の状態におけるx、y、z各方向のひずみ速度(収縮速度)を計算する。
ここで、体積ひずみ速度は後述するように以下の(1)式により、また相対密度は式(2)より、各要素毎に計算した。
【0019】
【数2】
Figure 0003881759
【0020】
なお、式(2)中、ρiniは初期相対密度、ρkはkステップ目の相対密度であり、εkjはkステップ目の3つの主ひずみ(ε1,ε2,ε3)である。
【0021】
(3)ステップ3:焼結収縮による形状変化の計算
時間増分による各方向のひずみ量を熱ひずみとみなした熱弾性解析を行い、焼結中の収縮による形状変化を計算する。
【0022】
以上のステップ1〜3を、焼結開始から最高焼結温度で保持終了まで繰り返す。 セラミックスを焼結する際には、昇温と温度保持の2つのプロセスが含まれる。昇温過程は、図1中に示すように段階的に雰囲気温度を上昇させるモデルを用いた。すなわち、ある雰囲気温度でステップ1からステップ3までを計算した後、次の雰囲気温度に移るために、従前の雰囲気温度に温度増分ΔTを与えて(Ti+1=Ti+ΔT)、同様にステップ1からステップ3を計算する、という過程を出発温度から保持温度まで繰り返す。
【0023】
温度保持過程では、温度一定条件で時間経過による緻密化の進行を計算した。つまり、雰囲気温度は一定、もしくはそれに近い状態で、主として密度変化によるひずみ速度の変化を考慮したステップ1〜3までの計算を、保持終了時間まで繰り返した。
【0024】
なお、セラミックス成形体各部の初期の密度は、簡便のため一定として計算してもよいが、密度分布のある成形体に適用する場合などは、粉体成形時の各部の圧力、体積弾性係数に基づいて、有限要素法により算出することが好ましい。すなわち、粉末成形解析の結果と組み合わせて、成形体各部の密度(密度分布)を初期密度として上記式(2)中のρiniに取り込めば、成形体中の密度分布を考慮した上で焼結収縮による形状変化を予測することが可能である。
【0025】
次に、本発明で最も重要な上記ステップ2について詳述する。
セラミックスの焼結過程においては焼結収縮が生じるが、ここでは粘弾性体近似モデルを用いて収縮速度式を作成する。これは焼結時に被焼結体に外力(σx,σy,σz)が作用しているときの収縮速度が以下の式(3)で表されるというものである。
【0026】
【数3】
Figure 0003881759
【0027】
式(3)はx方向の収縮速度を示しているが、y方向およびz方向についても同様である。このモデルでは、無負荷の焼結時の体積ひずみ速度は、見かけの焼結応力Σと体積粘性係数(焼結抵抗と考えられる)Kpより以下の式(4)で与えられる。
【0028】
【数4】
Figure 0003881759
【0029】
上記式(3)において、Ep,νpは、それぞれ負荷焼結時のひずみ速度に関する縦弾性係数、ポアソン比で、外力(σx,σy,σz)が作用している状態で焼結させたときに、ひずみ速度が垂直方向と剪断方向にどの程度増加、減少するかという割合を表す量である。なお、簡便化するために重力等の影響を考慮せず、式(5)に示す関係が成り立つとしている。
【0030】
【数5】
Figure 0003881759
【0031】
上記式(4)を用いることで、式(3)の収縮速度は、以下の(6)式のように表される。y方向、z方向も同様である。
【0032】
【数6】
Figure 0003881759
【0033】
以上より、焼結応力Σ、体積粘性係数Kp、縦粘性係数Ep、ポアソン比νpを実験的に求めることで、任意の状態における焼結時の線収縮速度を式(6)を用いて計算により求めることができる。特に被焼結体に外力が作用していないときは、式(6)の右辺は第1項のみとなるので、KpとΣがわかれば、線収縮速度を求めることができる。
【0034】
焼結応力Σ、体積粘性係数Kp、縦粘性係数Ep、ポアソン比νpは、例えば、円柱形状の試料で一軸負荷焼結法(成形体を無負荷および一軸負荷した状態で焼結させた際の径方向と軸方向の収縮率の時間変化を測定し、焼結応力と関連付けて収縮速度式を求める方法)に基づく実験を行った時の結果を用いて、以下の式(7)から(10)より求めることができる。なお、円柱試料に応力を負荷した方向をz方向としている。
【0035】
【数7】
Figure 0003881759
【0036】
上記式(7)の縦粘性係数Epは、応力をかけたときの軸方向のひずみ速度の増加しやすさを表しており、縦弾性係数の計算式におけるひずみをひずみ速度に置き換えたものである。同様に、式(8)のポアソン比νpは、一軸負荷焼結による軸方向のひずみ速度の増分と径方向のひずみ速度増分の割合を表している。式(9)の体積粘性係数Kpに関する式は、弾性体における体積弾性係数と縦弾性係数、ポアソン比との関係を用いて表しており、式(10)は、上記(4)の関係を用いている。
【0037】
次に、以上の関係に基づく収縮速度式の作成について説明する。
セラミックスの焼結では、通常、常圧焼結が用いられるが、この時の線収縮速度は式(6)の右辺の第1項のみとなり、以下の式(11)のように表される。
【0038】
【数8】
Figure 0003881759
【0039】
すなわち、焼結応力Σと体積粘性係数Kpのみから線収縮速度が求められる。ただし、本実施形態における有限要素法を用いたシミュレーションモデルを作成するためには、上記式(11)を有限要素法の中に組み入れることが必要であり、有限要素法の中で計算する際に、収縮速度が温度Tと密度ρの関数として数式化されていることが好ましい。
【0040】
焼結応力Σ、粘性係数Kpを温度Tと密度ρの関数として表そうとした研究はいくつかある。
Bordia, Venkatachariらは、焼結応力Σは相対密度ρに強く依存し、密度ρの増加とともに焼結応力Σが減少することを測定結果より示している。また、焼結応力Σは温度Tには独立であるとしている。また、Greggらは、焼結応力が以下の式(12)で表すことができると提案している。
Σ=αγPH (12)
ここで、αは定数、γは表面張力、Pは気孔率、Hは気孔表面の曲率である。相対密度ρと気孔率との間に以下の式(13)の関係が近似的に成り立つとすれば、以上の関係は以下の式(14)で表すことができる。
【0041】
【数9】
Figure 0003881759
【0042】
以上の実験データとGreggらの式を参考にすれば、焼結応力Σは、以下の式(15)のように表すことができる。
Σ=α´・(1−ρ) (15)
ただし、α´は、実験結果より決定される定数である。
【0043】
ガラスの焼結の結果から導かれた、体積粘性係数Kpは粘性係数ηに関連している(Kpがηに比例する)という考え方を参考にして、Hsuehらによる粘弾性体近似モデルにおける密度変化を考慮した粘性係数ηの近似式である以下の式(16)を用いることで、体積粘性係数Kpを以下の式(17)のように表した。
【0044】
【数10】
Figure 0003881759
【0045】
ただし、Qは拡散に関連する活性化エネルギー、Rは気体定数、n、λ、α"は実験により決められる定数である。
【0046】
したがって、上記式(15)および(17)の各定数を、上記一軸負荷焼結実験の結果より決定することで、以下の式(18)に示す常圧焼結時の線収縮速度を求めることができる。
【0047】
【数11】
Figure 0003881759
【0048】
次に、以上の収縮速度式の妥当性を確認した実験について説明する。
原料粉末として、一次粒子がα−Al23からなるAl23−A(大明化学製)とAl23−B(昭和電工製)を用い、圧力5.5MPaで金型成形して、直径15mm、高さ12mmの円柱状の一次成形体を作製し、これを100MPaでCIP成形することで焼結実験用の成形体を作製した。
【0049】
これら成形体を用いて一軸負荷焼結実験を行った。この一軸負荷焼結実験は、クリープ試験機を用いて負荷荷重が一定の条件で行った。成形体を大気中で約50℃/minで所定の温度に昇温後、所定の荷重を負荷して一定時間保持し、荷重を取り除いた後に降温した。試料の焼結前後の直径と高さを測定することで収縮率を算出した。
【0050】
焼結実験の条件としては、焼結温度を、Al23−Aでは1100〜1200℃、Al23−Bでは1400〜1500℃とし、それぞれ0〜50kgの荷重(0〜2.9MPaの応力)を負荷して、保持時間を1〜360minとした。
【0051】
一軸負荷焼結実験で得られた焼結時間と径、ならびに、高さと収縮率との関係を、試料に負荷した応力毎に整理した結果を図2に示す。ここでは、負荷荷重を一定にしているので、荷重を受ける面の面積が試料の焼結収縮によって減少するために試料にかかる応力は時間とともに変化するが、以下では、試料に負荷した荷重を試料の初期断面積で除した値を負荷応力とする。
【0052】
Al23−A、Al23−Bの両試料とも、負荷応力が大きくなると高さ方向の収縮率の増加する割合が大きくなった。一方、径方向の収縮率については高さ方向の収縮率とは逆の挙動を示し、いずれの試料の場合とも、負荷応力が大きくなると径収縮率の増加が小さくなった。そして、Al23−Aでは、上記負荷応力の範囲内において、焼結温度が高くなっても時間とともに径収縮率は増加し続けた。一方、Al23−Bでは、1400℃焼結の場合には各負荷応力の場合とも径収縮率は時間とともに増加しているが、1450,1500℃焼結の場合には、負荷応力が2.9MPaでは径収縮率は時間とともに減少する傾向を示した。
【0053】
負荷および無負荷で焼結した試料の焼結後の形状を観察した結果、Al23−Aの一軸負荷焼結した試料では、径方向の収縮は中央部で最も大きく、端部(上部および下部)がやや小さくなっており中央部がくびれるように変形していたのに対し、Al23−Bの試料では径方向の収縮は、上部、中央部、下部とも同じで均等に変形していた。
【0054】
以上のように、一軸負荷焼結時の収縮挙動は、原料粉末の種類によって異なり、さらに同じ原料粉末でも焼結温度と負荷条件によって異なることが判明した。
【0055】
次に、これら原料を用いた場合における収縮速度式を作成した。
上記式(7)〜(10)の関係を用いて、図2に示す収縮曲線より、縦粘性係数Ep、ポアソン比νp、体積粘性係数Kp、および焼結応力Σを求めた。その結果を図3および図4に示す。ここでは、この結果を用いて収縮速度式を作成した。
【0056】
以下、Al23−Aを例にとって説明する。
焼結応力Σは、各焼結温度の場合とも相対密度ρの増加とともにほぼ直線的に減少した。Venkatachariらは、Al23−の1500℃における焼結応力が相対密度が0.7〜0.95の間で0.80MPaから0.40MPaまで減少すること、Bordiaらは、TiO2の1000℃における焼結応力が相対密度が0.72〜0.80の間で2.1MPaから0.30MPaまで減少することを実験により求めている。今回の結果も、これまでに報告されている結果と同様の傾向を示した。また、一つの試料に対して焼結応力が異なる温度で測定された例はこれまでないが、今回のAl23−Aの1100℃から1200℃の範囲における測定結果では、温度に対してはあまり強い相関を示さず、密度に強く依存する傾向を示した。図3の焼結応力Σの測定結果に対して上記の式(15)を用いて焼結応力Σに対する実験式を作成すると以下の式(19)が得られる。
Σ=25・(1−ρ) (19)
【0057】
体積粘性係数Kpは、相対密度ρとともに増加し、さらに、温度Tに対しても強い依存性を示した。同じ密度の場合には、温度が高いほうが体積粘性係数Kpが小さくなった。上記式(11)より、体積粘性係数は焼結の抵抗と考えられるので、図3の結果は同じ温度なら密度が高いほうが焼結時の緻密化に対する抵抗が大きく、同じ密度なら温度が低いほうが焼結の抵抗が高いことを表しており、定性的に正しい結果と考えられる。
【0058】
図3のKpに対して、上記式(17)が成り立つと過程することにより、体積粘性係数Kpにを相対密度ρと絶対温度Tの関数とした以下の式(20)が得られる。
【0059】
【数12】
Figure 0003881759
【0060】
上記式中、活性化エネルギーQには、図5に示すアレニウスプロットより得られた790kJ/mol(188kcal/mol)を用いた。
【0061】
以上のようにして得られた焼結応力Σと体積粘性係数Kpに関する式(19),(20)を、上記式(11)に代入することで、Al23−Aの常圧焼結過程での収縮速度式が以下の式(21)のようになる。
【0062】
【数13】
Figure 0003881759
【0063】
同様の方法でAl23−Bについては、焼結応力Σと体積粘性係数Kpに関して以下の式(22),(23)の関係式が、収縮速度式として式(24)が得られる。なお、活性エネルギーQには、Al23−Aの場合と同様な方法で得られた740kJ/mol(177kcal/mol)を用いた。
【0064】
【数14】
Figure 0003881759
【0065】
式(21),(24)の収縮速度式を用いて、Al23−A、Al23−Bを無負荷で焼結させたときの線収縮速度を計算した結果を図6に、実測の結果と併せて示す。線収縮速度の実測値は、一軸負荷焼結実験より得られた径ひずみ速度と軸ひずみ速度より体積ひずみ速度を計算し、その結果から以下の式(25)を用いて求めた。
【0066】
【数15】
Figure 0003881759
【0067】
図6より、計算値と実測値はほぼ一致しており、式(21),(24)を用いることで、無負荷(常圧焼結)における任意の焼結温度での収縮速度を予測することができることが確認された。
【0068】
さらに、式(21),(24)の収縮速度式と図3、図4のEp、νpを上記式(6)に代入することで、Al23−A、Al23−Bを各負荷条件で焼結したときの収縮曲線を予測し、実験結果と比較した。Al23−Aの1200℃で0,1.5,2.9MPa、Al23−Bの1500℃で、0,0.35,2.9MPaそれぞれ負荷した条件での径方向と高さ方向の収縮率の計算結果を図7に、実測の結果と併せて示す。図7より、いずれの試料の場合とも、収縮曲線を予測した結果は実測値とほぼ一致していることが確認された。
【0069】
以上の図6、図7の結果より、粘弾性体近似モデルに基づいた上記収縮速度式を用いることで、セラミックス焼結時の収縮による形状変化を予測することができ、上記収縮速度式を本発明に係るシミュレーションに用いるのが妥当なことが確認された。
【0070】
次に、以上の収縮速度式を組み入れた上記シミュレーションモデルを用いてセラミックスの焼結過程をシミュレーションした結果について説明する。
原料としては、上述したAl23−Aを用い、以下の3つのケースで、試料の大きさ、焼結条件を異ならせて焼結したときの収縮曲線を解析し、実測した結果と比較した。
【0071】
(a)ケース1:φ15mm×30mmHで相対密度58%の成形体を、200℃/hrで1250℃まで昇温し、3時間保持。
(b)ケース2:φ15mm×30mmHで相対密度58%の成形体を、900℃/hrで1250℃まで昇温し、3時間保持。
(c)ケース3:φ50mm×40mmHで相対密度58%の成形体を、300℃/hrで1250℃まで昇温し、3時間保持。
【0072】
ケース1とケース2で、同じ形状の試料を異なる昇温速度で焼結させたときの収縮曲線を比較し、ケース1とケース3で、異なる大きさの試料をほぼ同じ昇温速度で焼結させたときの収縮曲線を比較した。
【0073】
図8に、ケース1〜3の各条件で焼結したときの収縮曲線の測定結果を示す。ケース1とケース2とを比較することで昇温速度が速くなった場合に雰囲気温度に対して焼結による収縮が遅れる傾向がみられ、ケース1とケース3とを比較することで試料が大きくなると雰囲気温度に対して焼結による収縮が遅れる傾向がみられた。
【0074】
ケース1〜3を有限要素法で解析するための解析形状を図9に示す。要素には、軸対称要素を用いた。
解析に用いた物性値のうち熱伝導率は、密度ならびに、温度依存性を考慮して、図10に示す測定結果を用いた。測定は、相対密度が63〜99%のAl2O3焼結体を作製し、細線加熱法により室温から1200℃の範囲で行った。多孔質Al2O3の定圧比熱は、緻密質Al2O3の比熱の実測値(室温、500℃、800℃)と、以下の式(26)で表されるDebyeの理論式、および式(27)の定圧比熱と定積比熱との関係を用いて求めた。なお、Al2O3のDebye温度は1043℃とした。
【0075】
【数16】
Figure 0003881759
【0076】
本モデルでは、重力等の影響を考慮せずに常圧焼結をシミュレーションするものであり、以下の式(28)のような関係が成り立つとしており、上述の式(2)とこの式(28)を用いて、相対密度が0.6、0.8、1.0のAl23の比熱を計算より求めた結果を図11に示す。図11より、Al23の比熱は密度に対して大きな差がなかったので、解析では密度依存性は考慮せず、緻密質Al23の値を用い、温度のみの関数として扱った。
【0077】
【数17】
Figure 0003881759
【0078】
昇温方法は、初期温度を0℃とし、例えばケース1の場合には雰囲気温度を25℃上昇させて450秒保持するという段階的な昇温を繰り返すパターンとした。
試料の外表面の温度が雰囲気温度に等しくなるように、熱伝達係数を1×10-8kcal/mm2・sec・Kと設定した。解析の時間間隔は、ケース1,3については150秒間、ケース2については33秒間として、図9のA点の軸方向の変位量を軸高さで割った値を、その時刻における軸方向の収縮率とした。
【0079】
有限要素法解析には、汎用有限要素法解析プログラムMARC(日本マーク株式会社製)を用いた。収縮速度式として上述した式(21)を組み込んだ。活性化エネルギーQには790kJ/mol(188kcal/mol)を用いた。
【0080】
図1のシミュレーションモデルを用いて、ケース1からケース3までの3つの条件で焼結した場合の収縮曲線を解析した。図12に、解析結果の一例として、ケース1とケース2について設定温度が1050℃、1150℃、1250℃、1250℃で1hr保持時、1250℃で3時間保持時の形状、ならびに、密度変化の解析例を示す。温度が1150℃、1250℃のときに、ケース2の場合のほうが収縮が遅れている様子がみられる。しかし、焼結終了(1250℃で3hr保持後)の段階では、両者の相対密度は約96%でほぼ等しくなっている。
【0081】
図13に、各時刻におけるA点の軸方向収縮率の解析結果を測定結果と併せて示す。図13の(a)、(b)を比較すると、実測値では昇温速度が速くなった場合に雰囲気温度に対して収縮が遅れる傾向がみられるが、シミュレーションモデルを用いて計算した結果でも同様の傾向が示されている。また、(b)の場合では、温度保持後に急激に収縮が進んでいるが、シミュレーション結果でもその傾向が良く再現できている。また、図13の(a)、(c)を比較すると、実測測定結果では形状が大きくなった場合にも雰囲気温度に対して収縮が遅れる傾向がみられるが、計算結果でも同様の傾向を示している。
【0082】
このように、ケース1,2,3のいずれも場合とも、計算結果は測定結果と良く一致していることから、作成したシミュレーションモデルを用いることで、異なる昇温条件で焼結したり、異なる大きさの成形体を焼結する場合に、昇温過程および温度保持過程での焼結収縮による形状変化を予測できることが明らかとなった。
【0083】
次に、上述の有限要素法による焼結過程のシミュレーションモデルを用いて、Al2O3の実製品を焼結した際に発生した割れ事例について、応力の発生位置や焼結による変形について解析した結果について説明する。
【0084】
図14は、ここで対象とする、焼結の段階で割れが発生した製品を示すものであり、(a)は平面図、(b)は底面図、(c)は部分斜視図である。この図に示すように、この製品は、全体形状が矩形状をなし、中央に穴が形成されており、内側の厚肉部Aと外側の厚肉部Bが溝状部分Cでつながっている。成形体の段階では、厚肉部A、Bの厚さがいずれも22mm、溝状部分Cの厚さが1mmである。なお、原料粉末としては、上述したAl23−Bを用いた。
【0085】
この製品は、製品とほぼ同形状で大きさが約1.2倍の成形体(相対密度:約58%)を、大気中で100℃/hrで1600℃まで昇温し、3時間保持するという工程で製造された。製品を炉内から取り出したところ、図14の(b)に示すように、溝状部分Cのコーナー部に亀裂Dが発生し、外側の厚肉部Bがわずか(0.1〜0.2mm程度)上方向に反り上がっていた。
【0086】
溝状部分Cに割れが発生した現象をシミュレーションするために、上述したシミュレーションモデルを用いて、焼結途中に製品各部に発生するひずみが原因となって発生する応力を図1に従って解析した。
【0087】
始めに、熱伝導解析により成形体内の温度分布を計算した。昇温速度を100℃/hrとして、図1中に示す段階的な昇温をしたときの、各時刻における各部の温度(温度分布)を求めた。熱伝導解析により求めた各部の温度(温度分布)と、各部の密度(密度分布)をもとに、上述した式(24)に示す収縮速度式を用いて、被焼結体各部の各時刻における収縮速度を、温度と密度との関数として求めた。活性エネルギーQには、上述したのと同様、740kJ/mol(177kcal/mol)を用いた。
【0088】
焼結体の状態を表す変数として温度T(K)と相対密度ρ(−)を用い、kステップ目の相対密度ρkは、初期相対密度ρiniおよび主ひずみ(ε1,ε2,ε3)を用いて、上述の式(2)により求めた。
【0089】
焼結による収縮(ひずみ)は、上述の式(24)で求めた収縮速度と保持時間の積により算出した。さらに、各瞬間で被焼結体内の各部の収縮差から生じるひずみと、それによって生じる応力を算出した。
【0090】
次に、ここでの解析に用いた物性値について説明する。
上述したシミュレーションモデルで焼結過程をシミュレーションするためには、物性値として、熱伝導率、比熱、ヤング率、ポアソン比が必要である。しかも、これら各特性の値としては、焼結途中のものを把握する必要がある。これら特性のうち、Al23の熱伝導率は上述したように図10に基づいて求め、比熱は図11により温度のみの関数として求めた。
【0091】
セラミックスを焼結する際には、高温になると粘性が大きくなるため、焼結途中のセラミックスのヤング率を正確に把握することは難しい。焼結過程のヤング率は、焼結初期の段階では成形体のヤング率に等しく、その後、緻密化の進行にともなって大きくなることが予想される。図15に、Al23−Bの原料粉末を用いて相対密度が73、85、99%のAl23焼結体を作製し、500℃から1500℃の温度範囲で曲げ共振法によりヤング率を測定した結果を示す。各試料のヤング率は1100℃まではほぼ一定値をとり密度に依存した値となっているが、それ以上の高温では密度の低いものから順に急激な低下を示している。そして、この図15の結果からは、Al23−Bにおいて焼結により密度変化が始まる1300℃以上ではヤング率が急激に低下しているために、ヤング率を温度や密度の関数として把握するのは困難である。そこで、成形体のヤング率を測定して得られた値である3000MPaを焼結途中のヤング率に代用して有限要素法解析の応力計算に用い、温度や密度の変化によるヤング率の変化を考慮しなかった。ポアソン比は、KingeryらがAl23について測定した、1000℃以上の高温域では0.4〜0.5であるという結果を参考にして、0.4と仮定した。
【0092】
図14に示したAl23製品の割れ事例を、図1の解析フローにしたがって有限要素法計算を行った。解析に用いたソフトウエアは、上述の円柱サンプルのシミュレーションの場合と同様とした。
【0093】
今回の解析では、初期相対密度は0.58で一様とした。有限要素法解析の中では、昇温は図16に示すパターンで段階的に行い、昇温幅(ΔT)は50℃とした。
【0094】
外部から与えた温度を設定温度としたときに、設定温度が1400℃(図16中の(1))、1500℃(同(2))、1600℃(同(3))、および1600℃で3時間保持後(同(4))のときの製品内の温度分布を図17に示す。各設定温度の場合とも、外側の厚肉部B、溝状部分Cの温度が高く、内側の厚肉部Aが低いが、設定温度が高くなるにつれて温度差は小さくなり、1600℃で3時間保持後はほぼ温度差がなかった。
【0095】
各設定温度における製品各部の相対密度分布を図18に示す。密度分布は温度分布と類似した分布を示しており、密度が最も高いのは溝状部分Cであり、低いのは内側の厚肉部Aであった。設定温度が高くなるにつれて密度差は小さくなり、1600℃で3時間保持後の密度差は0.2%と非常に小さかった。
【0096】
これらの温度分布と密度分布の解析結果を用いて、各設定温度で製品内部に生じているひずみ、ならびに、応力を計算した結果を図19に示す。図19は、最大主応力の分布を表している。各温度の場合とも、薄肉の溝状部分Cに最大引張応力が発生した。解析により得られた最大引張応力の発生位置と良く一致していた。ヤング率として概略値を用いているので応力の絶対値に関して詳細な議論はできないが、各段階における応力値の変化を比較すると、1600℃到達時に最大値を示した。また、1600℃到達時(図18の(c))と1600℃で3時間保持後(図18の(d))とを比較すると、保持後のほうが応力は低下しているが、これは、等温状態で保持されるので各部の密度が均一化するために、ひずみが小さくなり応力が緩和されたものと思われる。
【0097】
なお、図19の応力分布を計算する際に、ヤング率の密度依存性は考慮しなかったが、ヤング率の値によって最大引張応力の発生位置が変化するか否かを確認するために、ヤング率の値として1000MPa、100000MPaを仮定して同様な解析を行った。その結果を図20に示す。この図に示すように、仮定したヤング率の値によって応力値は変化するものの最大引張応力の発生位置は変化せず、割れの発生位置と最大引張応力の発生位置とを比較する上では、ヤング率の密度依存性を考慮しなくても問題がないことが確認された。
【0098】
製品の焼結途中の変形のうち、z方向(鉛直方向)の変形の様子を図21に示す。解析結果は、外側の厚肉部Bが上方向に反り上がるように変形したことを示している。このような変形の仕方も実際の製品の事例とよく一致していた。
【0099】
次に、焼結割れを回避するために、割れ発生部の肉厚を厚くした場合における応力低減の効果を本シミュレーションモデルを用いて調べた。図14に示す製品における溝状部分Cの肉厚を2倍および3倍に厚くして、他の部分の形状は変更しないものについて同様の解析を行った。最大引っ張り応力が発生した1600℃における最大主応力の分布図を図22に示す。いずれの場合とも、最終到達密度は約96%と一定であった。溝状部分Cの肉厚を厚くしても最大引っ張り応力の発生位置は変化しないが、発生する応力は、肉厚が2倍および3倍の場合に、それぞれ、54%、42%に低減された。
【0100】
図23に、1600℃で3時間保持後の各部のz方向の変位量を示す。肉厚が厚くなっても、上方向への変形にはほとんど変化がなかった。各肉厚における厚肉部B先端のそり量は0.16mm(肉厚1mm)、0.16mm(肉厚2mm)、0.17mm(肉厚3mm)であった。
【0101】
実際の事例では、肉厚を2倍(2mm)にすることで、やや上方向に反り上がったものの、割れずに焼き上げることができていることから、溝状部分Cの肉厚を厚くすることにより応力を低減する効果があるというシミュレーション結果は、定性的ではあるが、実際の事例とよく一致した。
【0102】
このように、本実施の形態のシミュレーションモデルを用いて得られた応力集中位置、変形の方向、および形状変更による応力緩和効果に関する解析結果は、実際の製品での割れ発生位置、反りの方向、および肉厚を増すことによる割れの回避といった事例とよく一致しており、製品の割れ事例を解析し、対策を講じる上で有効である。
【0103】
つまり、以上のような実験に基づく収縮速度式を導入したシミュレーションモデルに組み込むことにより、実際の焼結の際の成形体の変形を極めて精度よく反映したシミュレーションを行うことができ、セラミックスの焼結過程での割れや変形の発生を正確に予測することができる。
【0104】
本発明の第2の実施形態においては、以上のようなシミュレーション結果に基づいてセラミックス部材の設計を行う。すなわち、シミュレーションの結果により、焼結過程における不均一収縮に基づくひずみや応力集中が生じる部分が予測された場合に、そのシミュレーション結果に基づいて、これらが生じないように、成形体の寸法を再度設計したり、成形条件や焼結条件の変更を行う。したがって、焼結過程における不均一収縮に基づく割れや変形を未然に防止することができる。すなわち、対策案の模擬実験の手段として利用することができ、それによって製作期間の短縮やコスト低減を実現することができる。
【0105】
なお、以上は成形体の密度を一定として主にセラミックスの焼結過程のシミュレーション結果について説明したが、上述したように、密度分布のある成形体に適用する場合などは、粉体成形時の各部の圧力、体積弾性係数に基づいて、有限要素法により各部の密度を算出して粉末成形解析を行うことにより、セラミックスの成形過程のシミュレーションも行えば、より高精度にセラミックスの割れや変形の発生を予測することができる。具体的には、成形体各部の圧力をpとし、体積弾性係数を密度の関数としてK(ρ)と表し、圧力を加えた際の各部の体積ひずみ増分をεaとした場合における、p=K(ρ)・εaという関係式から各部の密度すなわち密度分布を求めることができる。ここで、体積ひずみ増分=密度増分なので、初期密度に増分を逐次加えていくことで、その時点での各部の密度が算出されることとなる。
【0106】
また、上記シミュレーションでは、重力等の影響を考慮せずに各方向のひずみ速度を一定として常圧焼結をシミュレーションしたが、上記式(1)に外部応力により新たに生じる収縮速度の項を加えることにより、重力や摩擦の影響による収縮率の異方性をシミュレーションすることができる。
【0107】
例えば、焼結時の収縮率が、高さ方向のほうが径方向より大きくなる現象に対しては、自重によるクリープを考慮したモデルにより高精度でシミュレーションすることができ、さらに、鉛直方向にたれながら焼結収縮する現象もこのようなモデルでシミュレーションすることができた。
【0108】
また、焼結時の収縮率が、径方向の上部が下部より大きくなる現象をシミュレーションするために、セラミックス成形体の底面に、成形体の重量に比例して収縮と逆の摩擦力が働くという摩擦モデルを作成し、このモデルを用いた結果、製品の収縮率データとほぼ一致した解析結果が得られた。なお、収縮率データより推定される摩擦係数μは0.10であり、これを用いて解析した。
【0109】
以上の結果から、種々の原因により生じる収縮率の異方性を考慮した焼結過程のシミュレーションモデルを作成するためには、以下に示す収縮速度式を用いることで対応できることが明らかである。
また、Al23の例について説明したが、材料を問わず適用可能なことは言うまでもない。
【0110】
【数18】
Figure 0003881759
【0111】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、焼結過程のセラミックスに対して粘弾性体近似が成り立つという仮定のもとで、実験結果に基づいた収縮速度式を適用してセラミックスの焼結過程をシミュレーションするので、より簡便に現実のセラミックス製造過程、特に焼結過程を高精度でシミュレーションすることができ、セラミックスの割れや変形を高精度で予測することができる。したがって、本発明のシミュレーション結果を用いて割れや変形のないセラミック部材の設計を行うことができる。特に、有限要素法を適用すれば焼結中の成形体の各要素のひずみを一層簡単かつ正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るシミュレーション方法を説明するための図。
【図2】一軸負荷焼結実験で得られた焼結時間と径、ならびに、高さと収縮率との関係を、試料に負荷した応力毎に整理した結果を示す図。
【図3】一軸負荷焼結実験におけるAl23−A成形体の相対密度と、縦粘性係数Ep、ポアソン比νp、体積粘性係数Kp、および焼結応力Σとの関係を示す図。
【図4】一軸負荷焼結実験におけるAl23−B成形体の相対密度と、縦粘性係数Ep、ポアソン比νp、体積粘性係数Kp、および焼結応力Σとの関係を示す図。
【図5】Al23−Aの活性化エネルギーを示す図。
【図6】得られた収縮速度式を用いて、Al23−A、Al23−Bを無負荷で焼結させたときの線収縮速度を計算した結果を実測の結果と併せて示す図。
【図7】Al23−Aの1200℃で0,1.5,2.9MPa、Al23−Bの1500℃で、0,0.35,2.9MPaそれぞれ負荷した条件での径方向と高さ方向の収縮率の計算結果を実測の結果と併せて示す図。
【図8】Al23−Aを用い、ケース1〜3の各条件で焼結したときの収縮曲線の測定結果を示す図。
【図9】ケース1〜3を有限要素法で解析するための解析形状を示す図。
【図10】各相対密度のAl23試料における温度と熱伝導率との関係を示す図。
【図11】各相対密度のAl23試料における温度と比熱との関係を示す図。
【図12】ケース1とケース2について図1のシミュレーションモデルを用いて焼結時における形状、ならびに、密度変化の解析例を示す図。
【図13】ケース1〜3における軸方向収縮率の解析結果を測定結果と併せて示す図。
【図14】焼結の段階で割れが発生した製品を示す図。
【図15】相対密度が73、85、99%のAl23焼結体の温度とヤング率との関係を示す図。
【図16】有限要素法によるシミュレーションに用いた焼結パターンを示す図。
【図17】有限要素法解析による、焼結中の成形体の温度分布を示す図。
【図18】有限要素法解析による、焼結中の成形体の相対密度分布を示す図。
【図19】有限要素法解析による、焼結中の成形体の最大主応力分布を示す図。
【図20】有限要素法解析による、仮定したヤング率と最大主応力分布との関係を示す図。
【図21】有限要素法解析による、焼結中の成形体の鉛直方向の変形を示す図。
【図22】有限要素法解析による、溝状部分Cの厚さを変化させた場合の最大主応力分布を示す図。
【図23】有限要素法解析による、溝状部分Cの厚さを変化させた場合の焼結中の成形体の鉛直方向の変形を示す図。

Claims (6)

  1. 熱伝導解析に基づいて焼結過程での雰囲気温度における成形体各部の温度を算出する第1ステップと、
    成形体各部の密度および温度に基づいて、成形体各部に及ぼされる焼結応力および体積粘性係数を求め、これらから成形体各部の各方向のひずみ速度を算出する第2ステップと、
    これらひずみ速度と保持時間とに基づいて成形体各部の焼結収縮を算出し、成形体の形状変化を求める第3ステップとを、
    焼結開始時から最高焼結温度で保持終了まで繰り返す、セラミックス製造過程のシミュレーション方法であって、
    前記第2ステップの1回目は、成形体各部の密度として焼結前のセラミックス成形体の密度を用い、2回目以降は、前記成形体各部の密度として、前記第3ステップで算出された焼成収縮から求めた形状変化を考慮して求めなおした密度の値を用いることを特徴とする、セラミックス製造過程のシミュレーション方法。
  2. 焼結過程における前記第1ステップないし第3ステップの計算を有限要素法を用いて行うことを特徴とする、請求項に記載のセラミックス製造過程のシミュレーション方法。
  3. 前記焼結前のセラミックス成形体の密度は、粉体成形時の各部の圧力、体積弾性係数に基づいて、有限要素法により算出することを特徴とする、請求項または請求項に記載のセラミックス製造過程のシミュレーション方法。
  4. 前記第2ステップは、成形体を無負荷および一軸負荷した状態で焼結させた際の径方向と軸方向の収縮率の時間変化を測定し、その結果に基づいて導出された収縮速度式を用いてひずみ速度を算出することを特徴とする、請求項ないし請求項のいずれか1項に記載のセラミックス製造過程のシミュレーション方法。
  5. 前記第2ステップは、焼結過程における成形体の摩擦および自重を考慮した収縮速度式を用いてひずみ速度を算出することを特徴とする、請求項ないし請求項のいずれか1項に記載のセラミックス製造過程のシミュレーション方法。
  6. 請求項1ないし請求項のいずれかのシミュレーション結果に基づいてセラミックス部材の設計を行うことを特徴とするセラミックス部材の設計方法。
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