JP3867141B2 - フェライト系耐熱材料の損傷評価方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、フェライト系耐熱材料の損傷評価方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、フェライト系耐熱材料の損傷劣化を簡便かつ定量的に評価することのできるフェライト系耐熱材料の損傷評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェライト系耐熱材料は、高温強度が高い上、熱膨張係数が小さいため、ボイラー等の発電用高温機器に適用されている。その組織は、ラスマルテンサイトで、大きい順から旧オーステナイト粒、パケット、ブロック、ラスから構成される階層構造を有する。
【0003】
高温で応力が負荷される条件の下では、フェライト系耐熱材料には、寿命後期に旧オーステナイト粒界及び粒内にボイドが形成され、このボイドの成長・連結というプロセスを経てフェライト系耐熱材料は破断に至る。このことから、フェライト系耐熱材料の損傷劣化診断としてボイドの測定が行われるが、ボイドは、上記のとおり、寿命後期にしか顕在化しないため、全寿命領域での損傷評価には適していない。
【0004】
一方、フェライト系耐熱材料については、高温環境下で旧オーステナイト粒界上に粒界析出物の偏析が促進されることが知られている。そこで、粒界析出物の平均サイズを用いてフェライト系耐熱材料の損傷を評価する方法が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0005】
【非特許文献1】
藤井和哉、外3名,「設備診断技術実証試験 その1:設備診断技術の概要およびフェイズI」,火力原子力発電,1998年3月,第49巻,第3号,p.263−279
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、粒界析出物は旧オーステナイト粒界上に高密度で分布するため、走査型電子顕微鏡による観察では繋がって見え、このように繋がって見える粒界析出物を個々に分離して平均サイズを算出することは容易ではない。
【0007】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、フェライト系耐熱材料の損傷劣化を簡便かつ定量的に評価することのできるフェライト系耐熱材料の損傷評価方法を提供することを解決すべき課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、フェライト系耐熱材料について、旧オーステナイト粒界上に析出する粒界析出物の粒界に沿った長さと旧オーステナイト粒界の長さを測定し、粒界析出物の粒界に沿った長さの総和と旧オーステナイト粒界の長さの比である粒界被覆率を算出し、この粒界被覆率により損傷を定量的に評価することを特徴とするフェライト系耐熱材料の損傷評価方法(請求項1)を提供する。
【0009】
またこの出願の発明は、電解研磨を行った表面において、粒界析出物の粒界に沿った長さ及び旧オーステナイト粒界の長さを測定すること(請求項2)を一態様として提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明のフェライト系耐熱材料の損傷評価方法では、上記のとおり、フェライト系耐熱材料について、旧オーステナイト粒界上に析出する粒界析出物の粒界に沿った長さと旧オーステナイト粒界の長さを測定し、粒界析出物の粒界に沿った長さの総和と旧オーステナイト粒界の長さの比である粒界被覆率を算出し、この粒界被覆率により損傷を定量的に評価する。このように、この出願の発明のフェライト系耐熱材料の損傷評価方法における測定対象は、旧オーステナイト粒界上に析出した粒界析出物の粒界に沿った長さ及び旧オーステナイト粒界の長さであり、個々の粒界析出物のサイズではない。このため、測定は容易となり、また、全寿命領域にわたっての粒界被覆率の算出が可能で、算出される粒界被覆率は組織の平均情報として代表することができる。したがって、フェライト系耐熱材料の損傷劣化を簡便かつ定量的に評価することができる。
【0011】
この出願の発明のフェライト系耐熱材料の損傷評価方法では、好ましくは、電解研磨を行った表面において、粒界析出物の粒界に沿った長さ及び旧オーステナイト粒界の長さを測定する。電解研磨速度は結晶相に依存するため、電解研磨により粒界析出物と母相にはわずかな表面高低差が生じる。したがって、粒界析出物の判別が容易となり、フェライト系耐熱材料の損傷劣化を高精度で評価することができる。
【0012】
以下、実施例を示し、この出願の発明のフェライト系耐熱材料の損傷評価方法についてさらに詳しく説明する。
【0013】
【実施例】
同一化学成分・同一引張強度を有する12Cr−2W鋼から形成された主蒸気管用パイプと圧延厚板について、クリープ試験とクリープ疲労試験を行った。各試験片(以下、パイプ材、板材と称す)の試験前の電解研磨面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて観察した像が図1及び図2である。図1は、パイプ材の像であり、(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。図2は、板材の像である。(a)(b)については図1と同様である。試験前においても粒界析出物の密度が高いため、図1(a)及び図2(a)の低倍率像で旧オーステナイト粒界の場所を同定することができる。図1(b)及び図2(b)の高倍率像からは、旧オーステナイト粒界上の粒界析出物は微細であることが分かる。
【0014】
クリープ疲労破断後のパイプ材、板材の電解研磨面のFE−SEM像が図3、図4である。(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。
【0015】
なお、クリープ疲労試験は、923Kの大気中で引張ひずみ保持台形波(保持時間3時間)を用い、軸ひずみ制御、全ひずみ範囲1.0%の条件で行った。クリープ疲労寿命は、パイプ材が309サイクル、板材が568サイクルであった。破面観察の結果、クリープ疲労寿命の長い板材では、旧オーステナイト粒内が破壊起点となっており、一方、クリープ疲労寿命の短いパイプ材では、旧オーステナイト粒界が破壊起点となっていることが確認された。
【0016】
図3(a)及び図4(a)の低倍率像から一見して試験前より試験後の方が、旧オーステナイト粒界が判別しやすくなっていることが分かる。図3(b)及び図4(b)の高倍率像からは、試験後の粒界析出物が大きくなり、しかも旧オーステナイト粒界上の粒界析出物の密度が試験前より高くなっていることが分かる。また、図3と図4を比較すると、パイプ材では粒界析出物が切れ目なく旧オーステナイト粒界上で繋がっているのに対し、板材では粒界析出物の大きさはパイプ材より大きくなっているが、切れ目が頻繁に見られる。
【0017】
そこで、図5に概略を示したように、旧オーステナイト粒界上に析出した粒界析出物の粒界に沿った長さ(lγ)と旧オーステナイト粒界の長さ(Lγ)を測定し、粒界析出物の粒界に沿った長さの総和と旧オーステナイト粒界の長さの比である粒界被覆率(fγ(=Σlγ/Lγ)×100))を1視野ごとに算出した。図6は、試験前後のFE−SEM像の1視野ごとに算出した粒界被覆率のヒストグラムである。15視野について粒界被覆率を算出した。縦軸のFrequencyは、横軸の粒界被覆率に該当する視野数xを全視野数の15で割った値(x/15)である。試験前の粒界被覆率の平均値は、図6(a)(c)に示したように、パイプ材で52%、板材で47%であり、顕著な差はない。一方、試験後の粒界被覆率の平均値は、図6(b)(d)に示したように、板材が57%であるのに対し、パイプ材が69%と顕著な差が生じている。また、1視野ごとの粒界被覆率は、板材では55%を中心に分布しているのに対し、パイプ材では55%以上に分布している。
【0018】
図7、図8は、それぞれ、923K、1000時間のクリープ破断延性とクリープ疲労寿命を粒界被覆率との関係で示した図である。図7及び図8から確認されるように、粒界被覆率が大きくなる程、フェライト系耐熱材料の高温特性が劣化する。このことから、粒界被覆率が約60%と70%の間で、クリープ延性が低下するとともに、クリープ疲労破壊の起点が旧オーステナイト粒内から粒界に遷移し、クリープ疲労寿命が低下すると理解される。
【0019】
以上の結果より、フェライト系耐熱材料について、旧オーステナイト粒界上に析出する粒界析出物の平均サイズを測定せずに、粒界析出物の粒界に沿った長さと旧オーステナイト粒界の長さを測定し、粒界析出物の粒界に沿った長さの総和と旧オーステナイト粒界との比である粒界被覆率を算出することにより、延性の低下や疲労寿命の低下を簡便にかつ定量的に評価することが可能であることが確認される。
【0020】
もちろん、この出願の発明は、以上の実施例によって限定されるものではない。フェライト系耐熱材料の化学組成をはじめ、クリープ試験及びクリープ疲労試験の条件等の細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0021】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、フェライト系耐熱材料の損傷劣化を簡便かつ定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験前のパイプ材の電解研磨面のFE−SEM像である。(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。
【図2】試験前の板材の電解研磨面のFE−SEM像である。(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。
【図3】クリープ疲労破断後のパイプ材の電解研磨面のFE−SEM像である。(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。
【図4】クリープ疲労破断後の板材の電解研磨面のFE−SEM像である。(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。
【図5】粒界被覆率の算出について概要を示した図である。
【図6】試験前後のFE−SEM像の1視野ごとに算出した粒界被覆率のヒストグラムである。(a)が試験前のパイプ材、(b)が試験後のパイプ材、(c)が試験前の板材、(d)が試験後の板材である。
【図7】クリープ破断延性と粒界被覆率の関係を示した図である。
【図8】クリープ疲労寿命と粒界被覆率の関係を示した図である。
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、フェライト系耐熱材料の損傷評価方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、フェライト系耐熱材料の損傷劣化を簡便かつ定量的に評価することのできるフェライト系耐熱材料の損傷評価方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フェライト系耐熱材料は、高温強度が高い上、熱膨張係数が小さいため、ボイラー等の発電用高温機器に適用されている。その組織は、ラスマルテンサイトで、大きい順から旧オーステナイト粒、パケット、ブロック、ラスから構成される階層構造を有する。
【0003】
高温で応力が負荷される条件の下では、フェライト系耐熱材料には、寿命後期に旧オーステナイト粒界及び粒内にボイドが形成され、このボイドの成長・連結というプロセスを経てフェライト系耐熱材料は破断に至る。このことから、フェライト系耐熱材料の損傷劣化診断としてボイドの測定が行われるが、ボイドは、上記のとおり、寿命後期にしか顕在化しないため、全寿命領域での損傷評価には適していない。
【0004】
一方、フェライト系耐熱材料については、高温環境下で旧オーステナイト粒界上に粒界析出物の偏析が促進されることが知られている。そこで、粒界析出物の平均サイズを用いてフェライト系耐熱材料の損傷を評価する方法が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0005】
【非特許文献1】
藤井和哉、外3名,「設備診断技術実証試験 その1:設備診断技術の概要およびフェイズI」,火力原子力発電,1998年3月,第49巻,第3号,p.263−279
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、粒界析出物は旧オーステナイト粒界上に高密度で分布するため、走査型電子顕微鏡による観察では繋がって見え、このように繋がって見える粒界析出物を個々に分離して平均サイズを算出することは容易ではない。
【0007】
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、フェライト系耐熱材料の損傷劣化を簡便かつ定量的に評価することのできるフェライト系耐熱材料の損傷評価方法を提供することを解決すべき課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、フェライト系耐熱材料について、旧オーステナイト粒界上に析出する粒界析出物の粒界に沿った長さと旧オーステナイト粒界の長さを測定し、粒界析出物の粒界に沿った長さの総和と旧オーステナイト粒界の長さの比である粒界被覆率を算出し、この粒界被覆率により損傷を定量的に評価することを特徴とするフェライト系耐熱材料の損傷評価方法(請求項1)を提供する。
【0009】
またこの出願の発明は、電解研磨を行った表面において、粒界析出物の粒界に沿った長さ及び旧オーステナイト粒界の長さを測定すること(請求項2)を一態様として提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この出願の発明のフェライト系耐熱材料の損傷評価方法では、上記のとおり、フェライト系耐熱材料について、旧オーステナイト粒界上に析出する粒界析出物の粒界に沿った長さと旧オーステナイト粒界の長さを測定し、粒界析出物の粒界に沿った長さの総和と旧オーステナイト粒界の長さの比である粒界被覆率を算出し、この粒界被覆率により損傷を定量的に評価する。このように、この出願の発明のフェライト系耐熱材料の損傷評価方法における測定対象は、旧オーステナイト粒界上に析出した粒界析出物の粒界に沿った長さ及び旧オーステナイト粒界の長さであり、個々の粒界析出物のサイズではない。このため、測定は容易となり、また、全寿命領域にわたっての粒界被覆率の算出が可能で、算出される粒界被覆率は組織の平均情報として代表することができる。したがって、フェライト系耐熱材料の損傷劣化を簡便かつ定量的に評価することができる。
【0011】
この出願の発明のフェライト系耐熱材料の損傷評価方法では、好ましくは、電解研磨を行った表面において、粒界析出物の粒界に沿った長さ及び旧オーステナイト粒界の長さを測定する。電解研磨速度は結晶相に依存するため、電解研磨により粒界析出物と母相にはわずかな表面高低差が生じる。したがって、粒界析出物の判別が容易となり、フェライト系耐熱材料の損傷劣化を高精度で評価することができる。
【0012】
以下、実施例を示し、この出願の発明のフェライト系耐熱材料の損傷評価方法についてさらに詳しく説明する。
【0013】
【実施例】
同一化学成分・同一引張強度を有する12Cr−2W鋼から形成された主蒸気管用パイプと圧延厚板について、クリープ試験とクリープ疲労試験を行った。各試験片(以下、パイプ材、板材と称す)の試験前の電解研磨面を電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて観察した像が図1及び図2である。図1は、パイプ材の像であり、(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。図2は、板材の像である。(a)(b)については図1と同様である。試験前においても粒界析出物の密度が高いため、図1(a)及び図2(a)の低倍率像で旧オーステナイト粒界の場所を同定することができる。図1(b)及び図2(b)の高倍率像からは、旧オーステナイト粒界上の粒界析出物は微細であることが分かる。
【0014】
クリープ疲労破断後のパイプ材、板材の電解研磨面のFE−SEM像が図3、図4である。(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。
【0015】
なお、クリープ疲労試験は、923Kの大気中で引張ひずみ保持台形波(保持時間3時間)を用い、軸ひずみ制御、全ひずみ範囲1.0%の条件で行った。クリープ疲労寿命は、パイプ材が309サイクル、板材が568サイクルであった。破面観察の結果、クリープ疲労寿命の長い板材では、旧オーステナイト粒内が破壊起点となっており、一方、クリープ疲労寿命の短いパイプ材では、旧オーステナイト粒界が破壊起点となっていることが確認された。
【0016】
図3(a)及び図4(a)の低倍率像から一見して試験前より試験後の方が、旧オーステナイト粒界が判別しやすくなっていることが分かる。図3(b)及び図4(b)の高倍率像からは、試験後の粒界析出物が大きくなり、しかも旧オーステナイト粒界上の粒界析出物の密度が試験前より高くなっていることが分かる。また、図3と図4を比較すると、パイプ材では粒界析出物が切れ目なく旧オーステナイト粒界上で繋がっているのに対し、板材では粒界析出物の大きさはパイプ材より大きくなっているが、切れ目が頻繁に見られる。
【0017】
そこで、図5に概略を示したように、旧オーステナイト粒界上に析出した粒界析出物の粒界に沿った長さ(lγ)と旧オーステナイト粒界の長さ(Lγ)を測定し、粒界析出物の粒界に沿った長さの総和と旧オーステナイト粒界の長さの比である粒界被覆率(fγ(=Σlγ/Lγ)×100))を1視野ごとに算出した。図6は、試験前後のFE−SEM像の1視野ごとに算出した粒界被覆率のヒストグラムである。15視野について粒界被覆率を算出した。縦軸のFrequencyは、横軸の粒界被覆率に該当する視野数xを全視野数の15で割った値(x/15)である。試験前の粒界被覆率の平均値は、図6(a)(c)に示したように、パイプ材で52%、板材で47%であり、顕著な差はない。一方、試験後の粒界被覆率の平均値は、図6(b)(d)に示したように、板材が57%であるのに対し、パイプ材が69%と顕著な差が生じている。また、1視野ごとの粒界被覆率は、板材では55%を中心に分布しているのに対し、パイプ材では55%以上に分布している。
【0018】
図7、図8は、それぞれ、923K、1000時間のクリープ破断延性とクリープ疲労寿命を粒界被覆率との関係で示した図である。図7及び図8から確認されるように、粒界被覆率が大きくなる程、フェライト系耐熱材料の高温特性が劣化する。このことから、粒界被覆率が約60%と70%の間で、クリープ延性が低下するとともに、クリープ疲労破壊の起点が旧オーステナイト粒内から粒界に遷移し、クリープ疲労寿命が低下すると理解される。
【0019】
以上の結果より、フェライト系耐熱材料について、旧オーステナイト粒界上に析出する粒界析出物の平均サイズを測定せずに、粒界析出物の粒界に沿った長さと旧オーステナイト粒界の長さを測定し、粒界析出物の粒界に沿った長さの総和と旧オーステナイト粒界との比である粒界被覆率を算出することにより、延性の低下や疲労寿命の低下を簡便にかつ定量的に評価することが可能であることが確認される。
【0020】
もちろん、この出願の発明は、以上の実施例によって限定されるものではない。フェライト系耐熱材料の化学組成をはじめ、クリープ試験及びクリープ疲労試験の条件等の細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。
【0021】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、フェライト系耐熱材料の損傷劣化を簡便かつ定量的に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試験前のパイプ材の電解研磨面のFE−SEM像である。(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。
【図2】試験前の板材の電解研磨面のFE−SEM像である。(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。
【図3】クリープ疲労破断後のパイプ材の電解研磨面のFE−SEM像である。(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。
【図4】クリープ疲労破断後の板材の電解研磨面のFE−SEM像である。(a)が低倍率像、(b)が(a)に示した破線部分の高倍率像である。
【図5】粒界被覆率の算出について概要を示した図である。
【図6】試験前後のFE−SEM像の1視野ごとに算出した粒界被覆率のヒストグラムである。(a)が試験前のパイプ材、(b)が試験後のパイプ材、(c)が試験前の板材、(d)が試験後の板材である。
【図7】クリープ破断延性と粒界被覆率の関係を示した図である。
【図8】クリープ疲労寿命と粒界被覆率の関係を示した図である。
Claims (2)
- フェライト系耐熱材料について、旧オーステナイト粒界上に析出する粒界析出物の粒界に沿った長さと旧オーステナイト粒界の長さを測定し、粒界析出物の粒界に沿った長さの総和と旧オーステナイト粒界の長さの比である粒界被覆率を算出し、この粒界被覆率により損傷を定量的に評価することを特徴とするフェライト系耐熱材料の損傷評価方法。
- 電解研磨を行った表面において、粒界析出物の粒界に沿った長さ及び旧オーステナイト粒界の長さを測定する請求項1記載のフェライト系耐熱材料の損傷評価方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003171003A JP3867141B2 (ja) | 2003-06-16 | 2003-06-16 | フェライト系耐熱材料の損傷評価方法 |
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JP2003171003A JP3867141B2 (ja) | 2003-06-16 | 2003-06-16 | フェライト系耐熱材料の損傷評価方法 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2005009880A JP2005009880A (ja) | 2005-01-13 |
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