JP3864944B2 - 連続流血液ポンプを用いた血流循環補助装置および生体の血流循環状態の診断装置 - Google Patents
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Description
"Control of Centrifugal Blood Pumo Based on the Motor Current", Tatsuhiko Iijima, et. al., Artificial Organs Vol.21, No.7, 1997, Japanese Society of Artificial Organs
連続流ポンプにおいては、通常の運転状態では、ポンプの駆出する流れは定常流となり、その消費電流も脈動を示さない。一方、生体の心臓は停止あるいは停止に匹敵する不整脈状態でなければ、拍動流を示す。したがって、連続流ポンプを循環補助のために生体に用いた場合には、本来定常流であるはずのポンプが駆出する流れは、生体の心臓の影響を受け、脈動を示すようになる。その結果として、ポンプを駆動するモータの消費電流波形が脈動を示すことになる。
以下の説明において、血流の循環補助に関して「完全補助」とは、生体の心臓からの血液の拍出が全く認められず、全て血液ポンプから駆出されている場合を言う。但し、生体の心臓が停止しているという意味ではない。従って、生体の心臓が何らかの圧力を発生していても構わない。一方、「部分補助」とは、生体の心臓が血液を拍出しており、かつ血液ポンプも同時に血液を駆出している状態を言う。
低回転では、ポンプの駆出力より生体の心臓の駆出力が勝り、生体の循環は拍動流となり、その結果モータの消費電流波形にも脈動が見られる。回転を上げるにつれ、ポンプの駆出力が生体の心臓の血液駆出力に近くなり、やがて同等となる。この点を本発明ではt点(total assist point に由来する)と言う。t点を過ぎてさらに回転数を上げると、ポンプの駆出力が生体の心臓の駆出力を凌駕するため、生体の心臓からは血液の拍出がなくなり、循環補助は部分補助から完全補助に移行する。したがって、生体の循環は拍動流から定常流に変化していく。この結果、モータの消費電流波形に現れていた脈動が減少していく。
ポンプの回転数が増すにつれて、脱血部位には吸い付きという現象が生じ始める。吸い付きは通常、生体の心臓の拍動に一致して間欠的に発生するため、吸い付きによりポンプの血流は脈動を生じる。この吸い付きは、ポンプの脱血が適切で、循環血液量が不足していない状態では、前記t点より高回転で、生体とポンプの循環が定常流に極めて近くなった状態より、さらに高回転で顕著となる。したがって、消費電流波形における変動の振幅の大きさは、定常流に近くなった時点で最小となり、吸い付きが顕著になれば再び増加する。この点を本発明ではs点(sucking point に由来する)と呼ぶ。図1に示したとおり、s点を超えると、電流振幅指数は、大きくなり始める。
t点は前記のようにポンプの循環補助が部分補助から完全補助に移行する点である。この完全補助を可能とするためには、ポンプが静脈還流量の全てを駆出し、かつ、ポンプが流量を維持できる揚程を発生させ得る必要がある。揚程はポンプの吸入管と吐出管の圧力差であるが、生体では送血側の血圧に大きく依存している。この血圧は静脈還流量と生体の末梢血管抵抗により規定されるので、t点は、静脈還流と末梢血管抵抗に主として依存している。
生体の脈動の影響を受けて連続流血液ポンプに反映される測定パラメータに基づく全ての指標が、ポンプ装置の制御に利用できる。本発明においては、このような制御指標として特に、拍動の振幅の大きさを用いる。また、ポンプ用モータの電流値を用いる場合であれば、電流値の脈動の振幅の大きさを基に指標化した数値であっても良い。具体的には、ポンプ用モータの電流値変動の振幅の大きさを電流平均値で除したもの、振幅の大きさを同回転数でのポンプの開放運転時と閉め切り運転時の消費電流の差(理論的最大振幅)で除したもの等が挙げられる。ここで「開放運転時」とは、ポンプの流出口に連なる導管を開放して運転する場合を指し、また前記「閉め切り運転時」とは、ポンプの流出口に連なる導管を閉止して運転する場合を指す。
本発明においては、血液の性状をモニターするためのセンサーのような特殊なセンサーを必要としない。血液の循環についての検出は、単に流量を計測すればよい。流量の計測は、流量センサーを用いて直接計測しても、他の間接的な計測手段を用いても良い。
本発明で使用するポンプは連続流血液ポンプであれば良く、特定のポンプに限定されるものではない。また、ポンプは体外設置式、あるいは体内設置式のどちらでも良く、補助の期間は短期でも長期でも良い。ポンプの脱血部位や送血部位も限定されない。右心補助、左心補助の限定もない。
8頭(体重10.2〜17.2kg、平均13.6kg)のビーグル犬を用いた。気管内挿管、調節呼吸による全身麻酔下に左第5肋間開胸により、心臓を露出した。脱血管は、左心耳より経僧帽弁的に血液流入部位を左心室内に、送血管は、胸部下行大動脈に端側吻合した。ポンプは、インぺラ直径32mmの斜流式ポンプを用いた。ポンプのモータ消費電流、大動脈圧、左室圧、ポンプ流量の波形をモニターした。回転数を2300rpmから5000rpmまで、連続的に増加させた。回転数と各モニター指標の関係の一例を図1に示す。
8頭のビーグル犬に対し、一時的冠動脈遮断による心不全作成と輸液負荷試験を行った。冠動脈前下行枝の中枢と末梢、さらに回旋枝の主要分枝(通常は鈍縁枝)の計3カ所を30分間遮断後、解除した。解除後120分間ポンプにより、心補助を行い、最後に低分子デキストラン500mlを急速輸液し輸液負荷を行った。冠動脈遮断前、遮断中、遮断後30分、60分、90分、120分、輸液負荷後の計7回の回転数を一時的に連続変化させt点とs点の同定試験を行った。合計52回のt点、s点の同定試験の計測に対して、統計処理を行った。
2 脱血管
3 送血管
4 モータ
5 制御部
6 電源
7 電流計測部
8 振幅検出部
9 調整部
10 表示部
Claims (10)
- 血流の送液補助のために非容積型ポンプで構成した連続流血液ポンプと、一端が生体の脱血部位に装着可能で他端が前記連続流血液ポンプの流入部に接続された脱血管と、一端が生体の送血部位に装着可能で他端が前記連続流血液ポンプの流出部に接続された送血管とを備え、前記脱血管を通して脱血し、前記連続流血液ポンプにより前記送血管を通して所定流量になるよう血液を駆出する血流循環補助装置において、
前記連続流血液ポンプのポンプ流量に対応した情報を直接的に得るための流量検出手段と、
前記流量検出手段の出力から、所定時間間隔における前記流量検出手段の出力の最大値及び最小値を検出し、その最大値および最小値の差である流量振幅を出力する流量振幅検出手段と、
前記連続流血液ポンプを駆動するモータの回転数を所定範囲に亘って変化させ、それによる前記流量振幅検出手段の出力の変化に基づいて、前記ポンプによる循環補助が部分補助から完全補助に移行する点であるt点、または前記脱血管の血液流入口が生体壁に吸い付き始めることにより前記流量振幅の変動が顕著になり始める点であるs点の少なくとも一方を検出し、検出したt点またはs点の少なくとも一方に対応する前記モータの回転数に対して所定の関係になるように、前記モータの回転数を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする血流循環補助装置。 - 前記流量検出手段は、前記連続流血液ポンプ近傍に配置された流量センサーを用いて前記ポンプ流量に対応した出力を得るように構成された請求項1記載の血流循環補助装置。
- 前記t点またはt点近傍に対応する回転数となるように前記モータを制御する請求項1記載の血流循環補助装置。
- 前記t点近傍と前記s点近傍の間に対応する回転数となるように前記モータを制御する請求項1記載の血流循環補助装置。
- 前記s点における前記流量振幅の大きさが実質的に0となるように前記モータを制御する請求項1記載の血流循環補助装置。
- 血流の送液補助のために非容積型ポンプで構成した連続流血液ポンプと、一端が生体の脱血部位に装着可能で他端が前記連続流血液ポンプの流入部に接続された脱血管と、一端が生体の送血部位に装着可能で他端が前記連続流血液ポンプの流出部に接続された送血管とを備え、前記脱血管を通して脱血し、前記連続流血液ポンプにより前記送血管を通して所定流量になるよう血液を駆出する血流循環補助装置において、
前記連続流血液ポンプのポンプ流量に対応した情報を直接的に得るための流量検出手段と、
前記流量検出手段の出力から、所定時間間隔における前記流量検出手段の出力の最大値及び最小値を検出し、その最大値および最小値の差である流量振幅を出力する流量振幅検出手段と、
前記連続流血液ポンプを駆動するモータの回転数を所定範囲に亘って変化させ、それによる前記流量振幅検出手段の出力の変化に基づいて、前記モータの回転数と前記流量振幅の大きさの関係が負の相関となる範囲に前記モータの回転数を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする血流循環補助装置。 - 請求項1記載の血流循環補助装置を備え、検出した前記t点またはその近傍、あるいは前記s点またはその近傍における前記流量振幅の大きさに基づいて、血液流入口の流入状態および/または心臓の充満状態の検知を行うよう構成した血流循環状態の診断装置。
- 請求項1記載の血流循環補助装置を備え、検出した前記t点またはその近傍、あるいは前記s点またはその近傍に対応する前記モータ回転数の変化を検知し、該回転数の変化により生体の循環状態の変化を検知することを特徴とする血流循環状態の診断装置。
- 前記t点、またはt点近傍に対応する前記モータの回転数が増加したときに、血圧が不変の場合には静脈還流が増加したと判断し、また静脈還流が不変の場合には血圧が増加したと判断するよう構成された請求項8記載の血流循環状態の診断装置。
- 前記t点、またはt点近傍に対応する前記モータの回転数が減少した場合に、血圧が不変の場合には静脈還流が減少したと判断し、また静脈還流が不変の場合には血圧が減少したと判断する請求項8記載の血流循環状態の診断装置。
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