JP3861849B2 - 異音検査方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は異音検査方法に関し、特に往復動作時に検査対象物から発生する異音が、傷又は付着物等による異音であるか否かを判定することが可能な異音検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フィルムシャッタのように、往復動作を行い、傷又は付着物によって動作時に異音が出現する製品の検査では、異音の出現するタイミングが検出できないため、異音による不良品検査を自動化することが困難であった。そこで、検査担当者がヘッドフォン等を用いて検査対象物の動作音を聞いて、人間の耳によって傷又は付着物による異音か否かを判断せざるを得なかった。
【0003】
また、周波数毎のパワースペクトルを用いて異音の検査を行う方法も提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、検査対象物は多品種少量生産のものが多く、品種ごとの異音に対応する周波数毎のパワースペクトルを特定することも容易ではなかった。さらに、検査対象物から検出した全ての異音について、詳細な検査を行うことは、演算処理による負担が大きく実用的ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、往復動作時に検査対象物から発生する異音が、傷又は付着物等による異音であるか否かを判定することが可能な異音検査方法を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、傷又は付着物等による異音である判然性が高いデータについてのみ周波数解析を行うことが可能な異音検査方法を提供することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明は、往復動作時に検査対象物から発生する異音によって、検査対象物が良品か不良品かを判断することが可能な異音検査方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係る異音検出方法では、検査対象物を往復動作させ、検査対象物からの動作音を測定して時系列音圧データを求め、時系列音圧データから異音の発生している異音領域を検出し、異音領域が往復動作の折り返し点を中心にして対称に出現しているか否かを判定して、往復動作の折り返し点を中心にして対称に出現している異音領域における音圧データを用いて周波数解析を行うことを特徴とする。傷又は付着物等による異音は、往復動作の折り返し点を中心に対称に出現するという原理を用いて、ランダムに発生するノイズによる異音を排除し、傷又は付着物等による異音である判然性が高いデータについてのみ周波数解析を行うので、高精度な異音検出を行うことが可能となった。
【0009】
また、本発明に係る異音検出方法では、異音領域が往復動作の折り返し点を中心にして対称に出現しているか否かの判定は、検査対象物の往路動作中でのみ行うことが好ましい。検査対象物の往復動作開始から折り返し点までについて判定すれば十分であるので、処理データ量及び検査時間を短縮することが可能となる。
【0010】
さらに、本発明に係る異音検出方法では、出現した異音領域の個数を計数し、出現した異音領域の個数が2より少ない場合は、異音なしと判定することが好ましい。異音領域が1又は0の場合には、異音領域が往復動作の折り返し点を中心にして対称に出現していることは無いので、処理データ量及び検査時間を短縮することが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る異音検出方法を添付図面を用いて詳述する。
【0012】
最初に、異音検査方法の原理について説明する。往復動作を行う検査対象物に傷又は付着物による異音が出現する場合、傷又は付着物の位置は変化しないため、往復動作の折り返し点を中心にして対称に異音が出現することとなる。したがって、折り返し点を中心に対称に出現している異音のみを傷又は付着物等による異音と判定することができる。逆に、折り返し点を中心に対称に出現していない異音は、ランダムに発生するノイズ等によるものと判断することができる。
【0013】
しかしながら、たまたま、折り返し点を中心に対称にノイズによる異音が発生する場合もあるので、折り返し点を中心に対称に発生した異音の周波数解析を行って、傷又は付着物等による異音かノイズによる異音かをさらに判定する。なお、周波数解析を測定した全ての音圧データについて行うこともできるが、演算処理による負担が大きくなるので、折り返し点を中心に対称に出現している異音領域のみについて周波数解析を行うことが実用的である。
【0014】
そこで、本発明に係る異音検査方法では、最初に、異音と考えることができる音圧レベルを閾値と定め、検査対象物を往復動作させて時系列的に音圧レベルを測定し、その閾値を超える異音が出現している異音領域を検出する。次に、異音領域が検査対象物の往復動作における折り返し点を中心にして対称に出現しているかどうかを判定する。次に、折り返し点を中心に対称に出現している異音領域についてのみ周波数解析を行い、周波数解析の結果を利用して、傷又は付着物等による異音か否かの判定をさらに行う。
【0015】
図1は、異音検査方法を実施するためのシステムの概要を示す図である。検査対象物であるフィルムシャッタ1の近傍に音圧検出用のマイク10が配置され、マイク10からの音圧信号は、アンプ20、所定のアナログフィルタ30を経てA/D変換回路40でサンプリングされて音圧レベルを示すデジタル信号である音圧データとしてパーソナルコンピュータ(PC)50に入力される。
【0016】
PC50は、CPU等から構成される制御部51、I/O52、音圧データ等を記憶するためのメモリ53、表示部54及びキーボード及びマウス等の操作部55等から構成される。ここで、音圧レベルを示すデジタル信号としてPC50に入力された音圧データは、所定のメモリ53に記憶され、後述する異音検査方法に従って、解析される。
【0017】
フィルムシャッタ1は、サーボモータ(図示せず)によって往復動作可能に取り付けられており、PC50からのスタート信号(時刻T)によってサーボモータが動作して、フィルムシャッタ1は往路動作(速度V)を開始し、PC50からの所定の反転信号(時刻T)で復路動作(速度V)に移行して、所定時間経過後にフィルムシャッタ1の移動が停止される(時刻T)。
【0018】
図2に、異音検査方法の手順を示す。図2に示す手順は、PC50の制御部51又はメモリ53に記憶された所定のプログラムにしたがって、PC50の制御部51等によって実行される。
【0019】
最初に、PC50のメモリ53に記憶されている音圧データから、予め定められた閾値Sを用いて異音領域を検出して、PC50のメモリ53に記憶する(ステップ201)。図3(a)にPC50に記憶されている音声データ300と、閾値S301の例を示す。図3(a)の縦軸Sは音圧レベル(電圧)、横軸Tはスタート時(T)からのサーボモータの動作時間を示している。異音領域は、閾値Sを越える連続した時間領域を言う。
【0020】
次に、検出された各異音領域の動作時間を検出して、PC50のメモリ53に記憶する(ステップ202)。図3(a)の場合における、検出された異音領域S〜S及びそれぞれの動作時間T〜Tを図3(b)に示す。動作時間T〜Tは、各異音領域S〜Sの中心値とする。動作時間T〜Tは、サーボモータのスタート時間(T)を基準にして求められる。したがって、Tは、T1aとT1bとの中心値、Tは、T2aとT2bとの中心値、及びTはT3aとT3bとの中心値となる。
【0021】
次に、異音領域の個数(n)が計数される(ステップ203)。図3の場合、n=3となる。
【0022】
次に、異音領域の個数(n)が2以上か否かが判断され(ステップ204)、2以上の場合には、X=1とされる(ステップ205)。nが1又は0の場合は、ステップ211へ進み、検査対象物は良品であると判断されて、検査を終了する。n=0の時は、異音領域が出現していないということであるから、検査対象物は良品であると判断できる。また、n=1の時は、少なくとも折り返し点を中心にして対称に出現している異音領域は無いので、検査対象物は良品であると判断できる。
【0023】
次に、異音領域の1つ(S)が折り返し点を中心にして対称に出現しているか否かを判断する(ステップ206)。折り返し点を中心にして対称に出現している場合には、ステップ207へ進み、周波数解析を行う。また、異音領域(S)が、折り返し点を中心にして対称に出現していない場合には、ステップ209に進んでX=X+1とされる。
【0024】
ステップ207の周波数解析の結果、異音領域の周波数が所定範囲内か否かの判定がなされ(ステップ208)、所定範囲内であると判定されると、該等する異音領域は傷又は付着物による異音であると判定され、ステップ212へ進んで、検査対象物は不良品であると判断されて一連の検査を終了する。また、所定の範囲内ではないと判定されると、該等する異音領域は傷又は付着物による異音でないと判定されて、ステップ209へ進む。
【0025】
次に、次の異音領域の動作時間(T)が折り返し点の時刻Tより大きいか否かが判断される(ステップ210)。異音領域が折り返し点を中心に対称に出現しているか否かは、T〜Tの動作時間内で判断すれば十分であるので、T>Tと判断された場合には、検査手順を終了するようにしたものである。したがって、T>Tの場合には、ステップ211へ進み、検査対象物は良品であると判断されて検査を終了する。そうでない場合には、再度ステップ206〜210を繰り返す。
【0026】
ここで、ステップ206における異音領域が折り返し点を中心に対称に出現しているか否かの判定方法の一例について説明する。T〜T間(往路動作)における検査対象物の速度をV、T〜T間(復路動作)における検査対象物の速度をVとする。T〜T間の異音領域Sの動作時間をTとして、折り返し点時刻Tを中心にして対称に異音領域Sが出現しているとするとその動作時間Tは、以下の式で表される。
【0027】
=−V/V・T+(V+V)/V・T
したがって、Tを計算で求め、Tに相当する動作時間を有する異音領域SがT〜T間(復路動作)に存在するか否かを、メモリ53に記憶されているT〜T間の異音領域の動作時間とTとを比較することにより判定すればよい。
【0028】
次に、ステップ207及び208における周波数解析法の一例について説明する。PC50のメモリ53に記憶された音圧データの内、ステップ206で折り返し点Tを中心に対象に出現している異音領域内の音声データのみに関してパワースペクトルを求め、最大パワースペクトルを有する周波数を、その周波数とする。求められた周波数が所定の範囲(例えば、300Hz〜1KHz)に存在する場合には、傷又は付着物による異音と判定し、所定の範囲以外の周波数である場合には、ノイズによる異音であると判定する。
【0029】
図2に示す手順を用いて検査した場合、図3(a)に示す音圧データ300の場合、異音領域Sは折り返し点時刻Tを中心にして対称の位置Sに異音領域が無いと判定され、周波数解析は行われない。しかし、異音領域Sは折り返し点時刻Tを中心にして対称の位置に異音領域Sがあるので、次の周波数解析のステップへ進む。周波数解析の結果図3(c)のように、異音領域S及びS間の音圧データが有する周波数は、いずれも所定範囲(H〜H)内にあるので、異音領域S及びSは、傷又は付着物による異音であると判定され、音圧データ300が測定された検査対象物は不良品と判断される。
【0030】
また、図4に別の音圧データ400の例を示す。図4(a)に示すように、最初に閾値Sを用いて、異音領域S〜S及びそれぞれの動作時間T〜Tが検出される(図4(b)参照)。しかしながら、異音領域Sは、折り返し点Tを中心にして対称に出現していないので、異音領域Sについて周波数解析は行われない。しかしながら、異音領域SとSは、折り返し点Tを中心にして対称に出現しているので、異音領域SとSの音圧データについて周波数解析が行われる。周波数解析の結果、異音領域SとS間の音圧データが有する周波数は、いずれも所定範囲(H〜H)内には無いので(図4(c)参照)、異音領域S及びSは、傷又は付着物による異音ではないと判定され、音圧データ400が測定された検査対象物は良品と判断される。
【0031】
なお、T、V及びVの値は、検査対象物を往復動作させるサーボモータの駆動信号等から得ることができる。また、記憶されている各異音領域の動作時間とTを比較する場合には、多少の余裕度(例えば、±0.1s等)を持たせることが好ましい。
【0032】
また、図2の検査手順では、異音領域について順次判定を行い、最初に折り返し点時刻Tを中心にして対称の異音領域が出現していると判定されると、それ以降の異音領域に関する判定がなされずに、その時点で不良品と判断されてしまうが、T〜T間に存在する全ての異音領域について折り返し点時刻Tを中心にして対称の異音領域が出現しているか否かを判定するようにしても良い。
【0033】
さらに、図2の検査手順では、T〜T間のみに存在する異音領域について折り返し点時刻Tを中心にして対称の異音領域があるか否かを判定しているが、全ての動作時間(T〜T間)に存在する全ての異音領域について同様の判定を行うようにしても良い。
【0034】
さらに、図2の検査手順では、折り返し点時刻Tを中心にして対称に出現している異音領域の両方について周波数解析を行っているが、一方のみについて周波数解析を行うようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる異音検査方法を実施するためのシステムの概要を示す図である。
【図2】本発明に係わる異音検査方法の手順を示す図である。
【図3】(a)は測定データの一例を示し、(b)は(a)の場合の異音領域の例を示し、(c)は(b)に示す異音領域の周波数解析結果を示す図である。
【図4】(a)は測定データの他の例を示し、(b)は(a)の場合の異音領域の例を示し、(c)は(b)に示す異音領域の周波数解析結果を示す図である。
【符号の説明】
1…検査対象物
20…アンプ
30…フィルタ
40…A/D変換器
50…PC
〜S…異音領域
〜T…異音領域の動作時間

Claims (6)

  1. 検査対象物を往復動作させ、前記検査対象物からの動作音を測定して時系列音圧データを求める工程と、
    前記時系列音圧データから異音の発生している異音領域を検出する工程と、
    前記異音領域が往復動作の折り返し点を中心にして対称に出現しているか否かを判定する工程と、
    往復動作の折り返し点を中心にして対称に出現している異音領域における音圧データを用いて周波数解析を行う工程とを有することを特徴とする異音検査方法。
  2. 前記周波数解析工程は、往復動作の折り返し点を中心にして対称に出現している異音領域における音圧データの周波数を求め、求められた周波数が所定の周波数範囲に入るか否かを判断する請求項1に記載の異音検査方法。
  3. さらに、前記周波数解析工程の結果に応じて、前記検査対象物が不良品であるか否かを判断する請求項1又は2に記載の異音検査方法。
  4. 前記異音領域が往復動作の折り返し点を中心にして対称に出現しているか否かの判定工程は、前記検査対象物の往路動作中で検出された異音領域のみについて行われる請求項1〜3の何れか一項に記載の異音判定方法。
  5. さらに、出現した異音領域の個数を計数する工程を有する請求項1〜4の何れか一項に記載の異音判定方法。
  6. さらに、前記出現した異音領域の個数が2より少ない場合、前記検査対象物は良品であると判断する工程とを有する請求項1〜5の何れか一項に記載の異音判定方法。
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