JP3851436B2 - 炭酸ガスを含む温水の冷却装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭酸ガスを含む冷却水を大気と接触させて冷却する冷水塔を備えた冷却水循環流路において、冷水塔の充填材に付着する藻の除去を可能とした冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3に燃焼排ガスの脱硫設備の概略構成を示す。図3のごとく、この脱硫設備においては、ボイラー1から排出された燃焼排ガスを湿式吸収塔2を通して脱硫洗浄し、その後、排ガスを気液接触塔3を通して、冷却水で冷却し排ガスの温度を降下させると共に、ガス中の水分を減少させ、気液接触塔3から排出する方法が採用されている。
【0003】
この気液接触塔3には、排ガスの温度降下のために使用される冷却水を再循環させ、その熱を最終的に大気に放熱するために冷却装置4が設けられている。この冷却装置4においては、気液接触塔3で排ガスとの熱交換により加温された冷却水を冷水塔5の上部から充填材6に散水流下させ、吸入ファン等で強制的に通風して冷却した後、下部の水槽7に集め、再び気液接触塔3に循環する構成が採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、冷水塔5では、冷却水が大気と接触するため、排ガスとの接触により冷却水に含まれた若干のSO2等の放散防止用としてアルカリで中和したPH7前後の冷却水を使用するのが一般的である。この略中性の冷却水が冷水塔5を通過すると、大気との接触、光(日光など)の存在、及び、冷却水中の多量の炭酸ガスの存在に起因して、冷水塔5内の充填材6に藻が生成し、次第に成長して充填材6に固着する。充填材6は一般に波形薄板が多数配列されたものであるので、藻の付着成長により、その量が増加すると、その重さで、薄板が座屈湾曲してくるようになる。そうすると、充填材6における冷却水の流れと大気との接触が不良となって冷却効果が悪くなる難点があった。
【0005】
また、藻はガス中の若干の煤、あるいは大気中の埃を取り込んで、更に充填材6の閉塞を進行させるようになり、概ね2年程度で充填材の取り替えを余儀なくされた。この充填材6の不良は、波形薄板の構成態様のみに起こるものではなく、他の態様、例えば、格子形の充填材においても同様の性能低下が見られた。
【0006】
この藻の生成・成長は、藻自体が植物性であるため、光(日光等)を必要とすると同時にCO2を吸収してO2を放散する光合成により行われるものであり、日光とCO2が充分なほど、その成長が著しく、特に、燃焼排ガスと直接接触して炭酸ガスを多量に含む脱硫設備の冷水塔において顕著に現れた。
【0007】
本発明者は、上記藻の発生を防止するために、一般に工業用水を使用した冷水塔において使用により効果を上げているCl系殺藻剤に着目し、これを脱硫設備に使用される冷却水に混入し、藻の発生・除去を試みたが、炭酸ガスを多量に含む脱硫設備の冷却水には、Cl系殺藻剤を相当量使用しても効果がなかった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者は、上記藻の発生の防止手段について、さらに研究を重ねたところ、充填材の藻の付着状況は、高温水が直接接触する上流側では皆無であるにも拘わらず、下流側において多く起こっていることを発見し、これに基づき藻の死滅について考察した結果、温度の高い水(40〜60℃)と接触した場合、藻はその生命力を維持することが困難であるとの知見が得られた。この知見に基づいて、本発明者は、冷水塔の通風を一時的に中断して高温水をそのまま充填材を通過させるようにしたところ、充填材に藻が全く発生せず、充填材の性能が維持されていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
この場合の冷却装置としては、冷却水を循環させるもの以外、例えば、炭酸ガスを含む高温水を冷却処理して、再利用せずに排出する冷却装置においても適用できる。また、この冷却装置においては、通風の一時的中断により冷却機能の低下が問題になり得る場合もあるが、このような場合には、冷水塔を夫々充填材を備えた複数の冷却室から構成して、この冷却室を温水(冷却水)の流路に並列に配置し、その各冷却室の通風を順次中断するようにすれば、他の冷却室が冷却機能を維持し、冷却能力が大幅に低下することがなくなる。
【0010】
この場合の冷却室は、一つのケーシング内を隔壁により複数の冷却室に分割する方法以外に、複数の別個独立したケーシングによって冷却室を構成する場合も含むものである。一つのケーシング内を隔壁により分割する方式を採用すれば、ケーシング及び循環路の配管も省力化できる点で有利である。なお、複数の冷却室は、2以上の冷却室ならば、その数を問わない。
【0011】
ここで、冷水塔としては、図2(a)のごとく、冷水塔の下方周囲から大気を吸込み、これを煙突作用により安定した流速を確保する自然通風型のものや、同図(b)(c)(d)のごとく大気を吸込むのにファンを使用した強制通風型のもの等があるが、これらいずれの形式の冷水塔においても本発明を適用できる。
【0012】
また、冷水塔への通風を一時的に中断させるには、例えば、自然通風型の場合は通風口に開閉ダンパーを設置して、通風中断時にはダンパーを閉動作させればよく、また、ファン(送風機)を用いた強制通風の場合には、ファンを強制的に中断させ、あるいはダンパーと併用動作させるようにすればよい。この場合のダンパーの開閉操作又はファンの駆動・中断操作は手動又は自動のいずれでもよく、自動的な操作の場合でも、タイマーによる自動制御のみならず、各種センサ、例えば、充填材の重量変化を検出する重量センサからの信号により制御するようにしてもよい。尤も、タイマーによる制御の場合、手動による操作に比べて安全かつ確実であり、かつ重量センサによる制御よりも回路構成が簡単になる利点がある。
【0013】
また、通風中断周期としては、毎日、隔日おき、1週間など種々の周期を採用できるが、毎日行う方が効率的である。また、通風中断時間としては、藻の死滅効果を達成するために、15分〜20分程度が最適であるが、その時間は特に限定されない。さらに、複数の冷却室を順次通風を中断させる場合、連続的に中断させる方法以外に、時間をおいて中断させるなど、その制御方法は限定されない。
【0014】
このような炭酸ガスを含む冷却水は、燃焼排ガスの脱硫設備における循環冷却装置以外にも適用でき、例えば、炭酸ガスが発生しやすい他の化学プロセスの設備において適用されるものであってもよい。尤も、燃焼排ガスの脱硫設備において気液接触塔からの高温水を冷却する冷却装置に適用すれば、冷水塔の充填材の藻の発生防止に大いに寄与するものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は排ガス脱硫設備の全体構成を示す図である。なお、本実施の形態では、図3に示す従来の燃焼排ガス脱硫設備の各構成部材と同一機能部材については、同一符号を付して説明する。
【0016】
この燃焼排ガス脱硫設備では、燃焼ボイラー1から排出された燃焼排ガスを湿式吸収塔2を通してSO2又はHClなどの有害酸性ガスをアルカリ循環路10で吸収中和して除去し、その後、その排ガスをが大量の水分を含むため、これを除湿する目的で気液接触塔3の充填材11内を通して、冷却水で冷却し排ガスの温度を降下させると共に、ガス中の水分を減少させ、気液接触塔3の上部12から排出するようにしている。
【0017】
この気液接触塔3には、塔内に充填材11が配置され、冷水塔13からの冷却水を充填材11の上方から散水し、充填材11の下方の水槽14からポンプ15により冷水塔13に回収する循環流路16を備えた冷却装置17が設けられている。
【0018】
冷水塔13は、充填材の上方から高温の冷却水(温水)を散水落下させ、塔の下部周囲のルーバ付きの大気吸込み口18から吸込んだ大気と向流接触させて冷却させ、充填材の下方の水槽19に落下させて、ポンプ20により気液接触塔3に再び戻して再利用するためのものである。一方、この冷水塔13内で冷却水と接触して熱を奪った大気はファンにより大気中に放出される。
【0019】
本実施の形態における冷水塔13は、2つの隔壁21により3室に分割された冷却室22,23,24を備えている。その各々の冷却室には、板面が縦方向の波形薄板が多数枚配列されたプラスチック製の充填材25a,25b,25cが配置されるとともに、各室の上方に夫々ファン26a,26b,26cが配置されている。なお、各室の下方は開放されて共通の水槽19が配置された構成となっており、また、充填材25a,25b,25cの上方から散水される冷却水(温水)の配管27a,27b,27cは、循環路16において並列に配列されている。
【0020】
この冷水塔13では、1日1回、15〜20分程度、各冷却室22,23,24のファン26a,26b,26cがその駆動を中断されるよう、タイマー制御される。従って、タイマー29は、駆動停止周期をカウントする周期タイマー29aと、中断時間をカウントする中断時間タイマー29bとから構成されている。
【0021】
このタイマーの動作により、各冷却室22,23,24のファン26a,26b,26cが1日1回、その駆動が間隔をおいて順次停止され、例えば、第1の冷却室22のファン26aの停止により、その冷却室22では、高温の冷却水が冷却されないまま充填材25aを通過することになり、充填材25a内に生成しかけていた藻の微量部分が焼死して藻の発生が防止できる。第1の冷却室22のファン駆動が再開されたならば、次に第2の冷却室23、さらに第3の冷却室24のファン駆動を順次停止して、藻を死滅させる。
【0022】
なお、本実施の形態では、冷却室22,23,24を隔壁21により3分割した形態で示したが、これに限らず、冷却室22,23,24を夫々独立した塔から構成する態様、すなわち、複数の冷水塔を並列に配列した構成態様であってもよい。この場合の各冷却塔の構成態様としては、図2(a)〜(d)の構成態様のいずれをも採用することができる。
【0023】
図2(a)は、塔の下方から大気を吸込み、これを煙突作用によって安定した流速を確保させる自然通風冷水塔であって、内部に充填材31及びその上方に冷却水散水配管32が配置されたものである。この塔の下部吸込み口18には開閉ダンパー30が配置され、通風を一時的に中断する場合にはダンパー30を閉にするようにすればよい。図2(b)は、塔の下部側方からファン33により大気を押込み、塔上部からの散水により、冷却水を冷却する押込通風冷水塔であって、通風を一時的に中断するにはファン33を停止すればよい。図2(c)は、図1に示す本実施の形態と同様な吸出通風冷水塔を示すものである。図2(d)は散水の流下方向と直交する水平方向で大気を流通させる十字流冷水塔であって、大気を側方から吸込み、反対側から排出するようにされている。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り、本発明によると、炭酸ガスを含む温水を大気に通風接触させて冷却する冷水塔において、その通風を一時的に中断させて、温水を冷却せずに流通させるので、冷水塔内の充填材に付着生成する藻を死滅させることができ、冷水塔の性能を維持することができる。
【0025】
また、冷水塔を夫々充填材を備えた複数の冷却室から構成して、この冷却室を温水の流路に並列に配置し、その各冷却室の通風を順次中断するようにすれば、他の冷却室が冷却機能を維持し、冷却能力の低下を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す排ガス脱硫設備の全体構成図
【図2】冷水塔の種々の形態を示すもので、同図(a)は自然通風型、(b)は押込通風型、(c)は吸出通風型、(d)は十字流型を夫々示す。
【図3】従来の排ガス脱硫設備の全体構成図
【符号の説明】
1 ボイラー
13 冷水塔
17 冷却装置
18 大気吸込み口
19 水槽
21 隔壁
22、23、24 冷却室
25a,25b,25c 充填材
26a,26b,26c ファン
27a,27b,27c 配管

Claims (5)

  1. 充填材中で炭酸ガスを含む温水を大気に通風接触させて冷却する冷水塔を備えた冷却装置において、前記冷水塔での通風を一時的に中断させて、流通する温水により前記充填材に付着生成する藻を死滅させるようにした冷却装置。
  2. 充填材中で炭酸ガスを含む温水を大気に通風接触させて冷却する冷水塔を備えた冷却装置において、前記冷水塔が、夫々充填材を備えた複数の冷却室から構成され、該冷却室が前記温水の流路において並列に配置され、前記各冷却室に、一時的に通風を中断させて、流通する温水により前記充填材に付着する藻を死滅させる手段が設けられ、前記複数の冷却室が前記各通風中断手段により順次通風を中断するようにされた冷却装置。
  3. 気液接触塔内で燃焼排ガスと直接接触させて加温された炭酸ガスを含む冷却水を大気に通風接触させて冷却する冷水塔と、該冷水塔で冷却された冷却水を再び気液接触塔に供給する冷却水循環流路とを備えた冷却装置において、
    前記冷水塔が、夫々充填材を備えた複数の冷却室が前記循環路において並列に配置され、前記各冷却室に、一時的に通風を中断させて、流通する高温の冷却水により前記充填材に付着生成する藻を死滅させる手段が設けられ、前記複数の冷却室が前記各通風中断手段により順次通風を中断するようにされた冷却装置。
  4. 前記通風中断手段が、タイマーにより所定の周期で所定時間作動するものである請求項2又は3記載の冷却水の冷却装置。
  5. 前記通風中断手段が、前記各冷却室に設けられた大気吸入ファンの駆動を中断させるものである請求項2、3又は4記載の冷却水の冷却装置。
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