JP3848641B2 - 電磁波によるコンクリート検査方法及び電磁波によるコンクリート検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁波によるコンクリート検査方法及び電磁波によるコンクリート検査装置に関するものである。さらに詳しくは、電磁波をコンクリート構造物に送信すると共に反射波を受信することによりこのコンクリート構造物の内部を検査する電磁波によるコンクリート検査方法及びこれに用いる電磁波によるコンクリート検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、トンネル等のコンクリート構造物の安全性に対する要求が高まり、種々の非破壊検査法が研究されている。コンクリート構造物の健全性を評価する上で、表面に表れたクラック、ジャンカといった欠陥ばかりでなく、表面付近の内部に隠れた空洞、ジャンカ、低強度のような欠陥を検出することが重要であると考えられる。
【0003】
内部欠陥を検出する手法としては、打音法、赤外線法、超音波法、電磁波検査である地下レーダー探査等が挙げられる。このうち、電磁波検査は、測線沿いの連続測定を迅速にできるとともに定量的な検出が可能であり、また他の手法に比べてかぶり厚さが深い部位まで可能であり、多くの長所を備えた検査法である。この種の電磁波検査としては、次の特許文献1に記載の如きものが知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−257744号公報
【0005】
同文献によれば、画像機器及び赤外線検出器等を電磁波レーダーと共に用い、トンネル等のコンクリートの健全性を非接触で検知しようとしている。
【0006】
しかし、同文献ではトンネルコンクリートにおける背面空洞の存在を検知するに留まり、他の検査項目と互いに補完関係を形成することで、検査の信頼性を向上させようとするものであった。したがって、欠陥部の種類や欠陥部の位置や規模等、さらに明確な定性的又は定量的な判断を行うことができなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、コンクリート構造物内の欠陥部について、その種類、深さ又は厚み等の従来よりもさらに詳細な判定を行うことを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る電磁波によるコンクリート検査方法の特徴は、電磁波をコンクリート構造物に送信すると共に反射波を受信することによりこのコンクリート構造物の内部を検査する電磁波によるコンクリート検査方法であって、測定された内部欠陥反射波の初動ピークに関するA/G及び往復伝播時間tと次式(1)との関係によりA0・rを求め、このA0・rに基づいて欠陥部の種別を判別することにある。
【0009】
ln(A/G)=−(α・V・t)+ln(A0・r) (1)
但し、Aは測定器に記録される振幅、Gは増幅率、αはコンクリート中の振幅の減衰率、Vは電磁波速度、A0 は送信アンテナから送信された電磁波のコンクリート表面における初期振幅、rは内部欠陥での電磁波の反射率である。なお、A0 はコンクリート表面の状態が変化しない限り使用するアンテナの種類毎にほぼ一定である。
【0010】
具体的には、前記A/G及び前記往復伝播時間tの測定を欠陥等の深度の異なる複数箇所で行うことにより、上記式(1)から最小二乗法によりA0・r及びαを求める。
【0011】
上記特徴に加え、測定された反射波の初動ピークの往復伝播時間と前記コンクリート構造物内部の電磁波速度とから対象部の深さを求めるようにしてもよい。すなわち、同特徴によれば、支保工や欠陥部等の対象部の深さという定量的な値を具体的に求めることが可能になる。なお、コンクリート構造物内部の電磁波速度はワイドアングル法等を用いて求めればよい。
【0012】
また、前記電磁波の周波数を欠陥部の予想厚みよりもこの電磁波の半波長が小さくなるように前記周波数を設定することが望ましい。
【0025】
一方、本発明に係るコンクリート検査装置の特徴は、電磁波を送信する送信アンテナと、コンクリート構造物からの反射電磁波を受信するための受信アンテナと、受信波の測定を行う測定器とを備え、このコンクリート構造物の内部を検査する、上記のいずれかに記載の電磁波によるコンクリート検査方法に使用する電磁波によるコンクリート検査装置において、前記測定器が、測定された内部欠陥反射波の初動ピークに関するA/G及び往復伝播時間tと次式(1)との関係によりA0・rを求め、このA0・rに基づいて欠陥部の種別を判別することにある。
ln(A/G)=−(α・V・t)+ln(A0・r) (1)
但し、Aは測定器に記録される振幅、Gは増幅率、αはコンクリート中の振幅の減衰率、Vは電磁波速度、A0 は送信アンテナから送信された電磁波のコンクリート表面における初期振幅、rは内部欠陥での電磁波の反射率である。
【0026】
【発明の効果】
このように、上記本発明に係る電磁波によるコンクリート検査方法の特徴によれば、電磁波の減衰、欠陥部の速度差、平板状基準体、パワースペクトルの形状特徴を巧みに用いることで、コンクリート構造物内の欠陥部について、その種類、深さ又は厚み等に関し、従来よりもさらに詳細な判定を行うことが可能となった。また、複数方法を相互補完的に組み合わせることにより、より判定の制度を高めることが可能になった。
【0027】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下に示す発明の実施の形態の項で明らかになるであろう。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に、添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
まず、実験のために作成したコンクリートモデルは図1に示すように、トンネル覆工を模したもので、H型鋼の上の厚さ40cmの通常コンクリート(N−18、JIS規格)の中に、空洞、モルタル不足のジャンカ、水分過多による低強度という3種類の内部欠陥を、厚さを5cm、10cm、20cmの3通り、かぶりを10cm、20cm、30cmの3通り変えて配置した。
【0029】
通常強度コンクリート、低強度コンクリート及びジャンカの配合を表1に、通常強度と低強度について、φ100mm、h=200mmの供試体を作成して行った室内試験の結果を図2〜5に示す。このように、通常強度と低強度とでは一軸圧縮強度、超音波速度などで有意な差があることを確認している。なお、ジャンカについては異なる配合の供試体を4種類作成し、中心周波数1500MHzのアンテナにより測定し、反射波の出現状況から最終的な配合を決めた。その時の電磁波速度は15cm/nsであった。また空洞には電磁波速度27cm/nsの発泡スチロ−ルを用いた。作成したコンクリートモデルを図6に、内部に埋設した欠陥模型の状況を図7に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
測定には、米国GSSI社(Geophysical Survey Systems, Inc.)の商品名SIR−2なる測定装置を利用した。アンテナにはダイポールアンテナを利用し、中心周波数によって透過深度や分解能が異なることから、1500MHz、900MHz、400MHzのものを使用した。測定は欠陥上部のコンクリート打設後、1、2、3、4、6、8、10週経過時に行った。その際、測線はアンテナが内部欠陥の中央を通るように設定した。主な測定パラメータを表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
取得する波形データはSIR−2のハードディスクに収録されるが、データ長を16ビットにしたことから、記録上の振幅は、−32768〜32767の範囲になる。これらは増幅後の値であるが、後にヘッダファイルから読み取った増幅率で除して、増幅前の振幅を求めることができる。
【0034】
送信アンテナTから放射された電磁波が内部欠陥で反射し、受信アンテナRに捉えられるまでの各振幅を図8に示すように、送信アンテナTから送信されるコンクリートへの入射波の振幅(初期振幅)をA0、内部欠陥への入射波振幅をA1、内部欠陥からの反射波の振幅をA2、受信アンテナTでの受信振幅をA3とすると、これらの関係は次式で表される。
【0035】
【数1】
【0036】
ここで、Aは測定器に記録される振幅で(A3・G)で与えられる。Gは増幅率、(A2/A1)=rは内部欠陥の反射率、αはコンクリート中での減衰率、Z(=V・t、V:電磁波速度、t:往復伝播時間)は伝播距離で、Znは幾何学的な発散による減衰を表す。Znについて、コンクリート中に異常反射波がない道路トンネルにおける支保工反射波の初動に関する振幅/増幅率〜往復伝播時間関係を図9に示す。これからほぼ直線関係にあり、n≒0が成り立つことが判る。これらを[数1]式に代入し、対数を取ると式のようになる。
【0037】
【数2】
【0038】
Vをワイドアングル法などにより測定すれば、複数深度にわたるln(A/G)〜t関係の勾配からαを、y切片からA0・rを求めることができる。A0は表面の状態が変わらない限りアンテナ毎にほぼ一定であるため、反射率の評価が可能である。ここで、ワイドアングル法とは、送受信アンテナの中心位置を固定し送受信アンテナ間隔を変化させる方法である。例えば、図8において、送信アンテナTと受信アンテナRとの間隔を暫時離隔させる。なお、本方法では識別のし易さと、背面反射波のような他の反射波の影響を最も受け難いことから、内部欠陥反射波の初動のピークに関するA/G、tを取り扱うことにしている。
【0039】
アンテナ毎の内部欠陥の検出結果について、材齢1週における内部欠陥の検出例を図10〜13に示す。これらの左側は、測定記録から無欠陥個所の平均波形を差し引く背景除去処理を行った後のラインスキャン表示記録である。右側には左側の↓で示すトレースにおける欠陥波形の初動に関する振幅A、往復伝播時間tの読み取り位置を示した。
【0040】
一般に、コンクリート中における電磁波の減衰は取り扱うアンテナの中心周波数や主にコンクリートの比抵抗によって変化し、周波数が高いほど、比抵抗が低いほど減衰が大きくなる。このため、使用するアンテナとコンクリートの材齢によって、検出可能な欠陥の最大かぶりが変化する。コンクリートでは、材齢が経過するほど比抵抗が大きくなることが知られており、材齢が浅いほど比抵抗が小さく、減衰が大きいことから、深いかぶりの内部欠陥検出が難しい。
【0041】
材齢1週から10週に渡り測定を行った。以下、アンテナ毎の検出結果について説明する。
【0042】
1)1500MHzアンテナ
空洞は材齢1週ではかぶり20cmまで、2週以降は30cmまで検出可能であった。ジャンカはかぶり20cmまでは材齢1週から検出可能であったが、かぶり30cmは10週経過後も検出できなかった。低強度はかぶり10cmのみ検出できているようであったが、骨材によると見られる不規則な散乱波が重なっており、反射面が不鮮明であった。
【0043】
2)900MHzアンテナ
空洞とジャンカについては、材齢1週からかぶり30cmまで検出可能であった。低強度はかぶり10cmのみであるが材齢1週から検出できた。
【0044】
3)400MHzアンテナ
900MHzアンテナとほぼ同様の検出状況であった。
【0045】
このようにかぶり30cmまでの範囲であれば、複数のアンテナを使用することにより、空洞とジャンカは材齢1週から検出可能である。一方低強度はかぶりが浅いもののみ材齢1週から検出可能で、かぶりが20cm以上では材齢によらず検出困難であることになった。これは、減衰率というよりはむしろ、空洞とジャンカではコンクリートとの比誘電率の差あるいは電磁波速度の差が大きく、入射波に対する反射波の振幅比を表す反射率が大きいのに対して、低強度では小さく、反射波が微弱であることに起因している。
【0046】
次に、内部欠陥の厚さの影響に関する検討を加える。本方法では内部欠陥からの反射波の初動に関する振幅/増幅率と往復伝播時間の関係から減衰率、初期振幅×反射率を求めることにしている。この場合、図14のように、反射波が欠陥の前面反射波と背面反射波の合成波になることから、欠陥の厚さと使用する電磁波の波長との関係で反射波が乱れ、初動が変化することが考えられる。そこで、測定記録からアンテナ毎に初動反射波が変化しない欠陥厚を検討した。
【0047】
図15〜17は順に、1500MHz、900MHz、400MHzアンテナによりかぶり10cmの空洞模型の検査を行った際に得られた、欠陥中央部の60トレース分の往復伝播時間、反射波の初動振幅/増幅率をプロットしたものである。これらから、往復伝播時間は欠陥の厚さによらずアンテナ毎にほぼ一定であるが、初動振幅は欠陥の厚さの影響を受けることが判る。すなわち、受信波形の半波長が4cm程度である1500MHzでは、欠陥の厚さが5cm、10cm、20cmのいずれでも振幅はあまり変わらない。
【0048】
しかし、半波長が8cm程度の900MHzでは10cm、20cmはほぼ同じであるが、5cmでは50%近く小さくなる。400MHzは半波長が13cm程度であるため、いずれの厚さにおいても振幅が異なる。従って、予想されるように、初動振幅が欠陥の厚さの影響を受けないのは半波長程度以上を有する場合に限られることになった。ただし、ジャンカでは電磁波速度が空洞よりも遅く、波長が短くなることから、より薄いものまで適用可能である。
【0049】
次に、減衰率、初期振幅×反射率の値と種別判定について考察する。1500MHzでは欠陥厚5、10、20cmの全てを用い、900MHzでは10、20cmの記録を用い、400MHzでは20cmのみを用いた材齢1週におけるln(A/G)〜t関係を図18〜20に示す。これから、欠陥の種別によってA/Gが異なり、低強度、ジャンカ、空洞の順に大きくなっていること及び種別毎に傾きがほぼ同じでy切片が異なるグループに分かれることが判る。傾きはコンクリート中の電磁波振幅の減衰率であり、内部欠陥の種別とは無関係になることに整合している。一方、y切片は初期振幅×反射率を表しており、反射率は次式の関係がある。ただし、ε1、V1は通常強度コンクリートの比誘電率及び電磁波速度、ε2、V2は内部欠陥の比誘電率及び電磁波速度である。
【0050】
【数3】
【0051】
ここで、V1=9cm/nsとし、空洞でV2=27cm/ns、ジャンカでV2=15cm/nsとおくと、反射率は空洞とジャンカで0.51、0.25になるはずであるが、求めたy切片の値も900MHz、400MHzではそれに近い比率になっている。次に、900MHzアンテナから求めた減衰率と初期振幅×反射率の材齢による変化を図21、22に示す。このように、減衰率は空洞とジャンカでほぼ同じで、6週までは減少し、その後一定値に落ち着く傾向にある。一方、初期振幅×反射率は、測定日における表面の含水条件によって初期振幅が変化するため、見かけ上、材齢によって大きく変化する。しかし、空洞とジャンカでの比率は材齢によらず1:0.5に近い値で推移する。従って、減衰率の変化や初期振幅の変化によって振幅が変化することがあったとしても、空洞とジャンカではln(A/G)〜t図上で倍近い差があり識別可能である。このように、内部欠陥として空洞と作成したジャンカに近い配合のものがあり、半波長以上の厚さであれば、材齢1週から種別判定が可能である。しかし、低強度は、電磁波速度が通常強度コンクリートと差がないようであり、現状では検出すること自体が難しく、初期振幅×反射率rによる種別の判定は困難である。
【0052】
それ以外の適用条件について、半波長未満では、数値的に未検討であるが、厚さが薄くなるほど種別判定が困難になる。しかし、ジャンカの配合に関しては、次のように、ある程度変化したとしても判定可能である。
【0053】
予備実験で作成した4種類のジャンカの配合と1500MHzアンテナを使用して求めた電磁波速度を表3に、電磁波速度と水を除く全重量に対する粗骨材の重量比の関係を図23に示す。模型に採用したのは配合2であるが、粗骨材の割合によって電磁波速度が変化することが判る。通常強度コンクリ―トの電磁波速度を9.5cm/nsとし、上記数3の式から、配合2の反射率を1とした場合の比率を求めると、配合1、配合2、配合3、配合4、空洞では0.65、1、0.31、1.41、2.22になる。種別判定の面からは空洞との差があるほど容易であることから、配合1、配合3は配合2よりも判定し易い。また、粗骨材100%の配合4は空洞の反射率に近くなるが、それでも60%程度の反射率であることから判定できる可能性がある。
【0054】
【表3】
【0055】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。本実施形態では、主信号と背面信号との比較により、欠陥部の種類が判定可能である。
【0056】
まず、散乱源及び反射源解析について考える。電磁波はコンクリート内部の欠陥で散乱されたり、境界面で反射されることにより、散乱波及び反射波として観測される。この散乱波及び反射波の発生状態は、欠陥の種類によって異なると考えられる。
【0057】
元データでは、コンクリート表面の反射波や背景的なノイズがあり、これらが欠陥波形に影響を与えることが考えられる。したがって、欠陥のない部分のデータを用いて、背景除去を行った。これより、欠陥波形のみの抽出ができ不要な信号の影響が低下すると考えられる。また、レーダー計測では、深い位置の信号を確認できるようにするため、深さが深いほどゲインを高めて、データ採取を行っている。これは、レーダー波形を歪めることになるので、解析時にデータ採取時のゲインの増分を補正した(以後、元データを増幅率で除したものをゲイン補正と呼ぶことにする)。図24,25に1500 MHzのアンテナで、材齢8週におけるかぶり10cmの空洞及びジャンカの元データと背景除去処理+ゲイン補正したレーダーのイメージ像を示す。
【0058】
この散乱波及び反射波の信号強度ならびに形状から、欠陥の特徴を検討するために、欠陥波形を抽出しヒルベルト変換により包絡線信号を求めて比較した。
【0059】
このヒルベルト変換は次式により定義される。
【0060】
y(t)=x(t)*h(t)
ここで、*はたたみ込み演算であり、h(t)=1/(πt)である。
【0061】
図26にゲイン補正後、背景除去処理により欠陥波形を抽出し、包絡線信号に変換した結果例を示す。(a)は空洞部を有する試験体(かぶり10cm,欠陥厚5cm)を用いた場合に得られる欠陥波形を、(b)は欠陥のない健全部波形を示す。前半部(1ns付近)の波形は両者ともほぼ同様な形状であることから、背景除去処理には、健全部の波形を利用することにより欠陥信号のS/Nを良くした。背景除去処理した結果は(c)に示す。(d)は、背景除去した波形を絶対値に変換した整流信号、(e)はその包絡線信号を示す。包絡線信号は、ヒルベルト変換により計算した。この欠陥信号が出現している範囲で、散乱及び反射強度を求めるため包絡線信号を平均した。
【0062】
次いで、電磁波速度解析を行う。コンクリート内部に存在するジャンカ、低強度および空洞の誘電率はそれぞれ異なるため、これらの欠陥部分の電磁波速度も異なる。したがって電磁波が伝搬する経路中の電磁波速度が知れれば、その経路内に存在する欠陥種別を判定することが可能である。本研究に用いたコンクリートモデルには、鋼製支保工が表面から40cmの深さに挿入されている。欠陥部および健全部の支保工信号の出現位置から、各部の電磁波速度を測定した。その結果、空気中の電磁波速度をcとして、健全部の電磁波速度は約0.34cと見積もられた。また低強度部の速度は健全部と同じ0.34cで、ジャンカ部は健全部と低強度部より速く約0.65cであった。これらの値は材齢が8週までで大きな変化がないこと、並びに用いた周波数の範囲で周波数に依存しないことも確認できた。
【0063】
図27にかぶり10cmのジャンカを8週目に探査して得られた支保工信号の例を示す。支保工の深さが既知であれば、支保工信号が最も表面に近付いたときの伝搬時間から経路中の電磁波速度を計算することが可能であるが、実際のトンネル覆工では支保工の深さは不明である。このため本研究では、支保工信号の軌跡を最小二乗近似を用いてカーブフィットすることで電磁波速度を求めた。なお、空洞部では欠陥の反射率が大きいため、空洞の下に存在する支保工信号を検出できず、したがって電磁波速度を検出することもできなかった。但しこのような欠陥部分における支保工信号の消失が確認できれば、存在する欠陥は空洞であると判断できる。このため本研究では、ジャンカと低強度の判定を目的として検討を行った。また深い位置にある支保工を扱うため、400MHzの信号で検討を行った。
【0064】
ここで、散乱源及び反射源解析結果について検討を加える。図28に1500MHzアンテナで、材齢2,4,8週におけるかぶり10cmの包絡線信号を示す。1500MHzの結果では、低強度の反射波は確認できなかったため空洞とジャンカのみ示す。図28では、縦軸は欠陥の前面信号のピークで規格化し、横軸は欠陥前面信号のピーク付近の時間が0になるように調整している。
【0065】
図28から空洞での包絡線信号は、ほとんど欠陥の前面信号のみであるのに対して、図29ではジャンカでの包絡線信号は厚さ10,20cmでは欠陥の背面信号が明瞭に認められた。これは、前述する電磁波速度解析の結果から得られたジャンカの電磁波速度0.65c(光速c=3×108m/s)から確認した。空洞においても、2,4週目ではピークが確認できなかったが、8週目の厚さ20cmの信号で欠陥の背面信号と推定されるピークが認められた。8週目データの空洞、ジャンカの厚さ20cmの包絡線信号を比較すると、空洞でも欠陥の背面信号が認められているものの、ジャンカにおける欠陥の背面信号の方が明瞭に確認できることが分かった。以上の結果は、空洞はジャンカに比べて電磁波速度が速いため、前面信号と背面信号が、本研究で製作した厚さ程度であると分離できないことや、空洞は欠陥の前面信号の強度がジャンカに比べて大きく、欠陥表面で電磁波が大きく反射され透過する量が減少したことにより、欠陥の背面信号が小さくなったことが考えられる。また、初期の材齢において、空洞では欠陥の背面信号が認められないこと等を含めて判断すると、欠陥の背面信号が明瞭に確認できればジャンカであると推定できることが考えられる。
【0066】
さらに、空洞の包絡線信号の2,4週目のデータでは、2〜3nsの間で信号強度が増加している部分が認められた。これは、電磁波速度解析から求めたコンクリート中の電磁波速度0.34cから計算すると、かぶり深さ10cmの約2倍の間隔に相当し、欠陥の前面信号の繰り返し信号と推定される。このような繰り返し信号は、ジャンカには認められず、空洞の特徴と判断することができる。
【0067】
かぶりの深い部分のデータを確認するために、900,400MHzアンテナで、材齢8週における結果を図29,30に示す。
【0068】
900MHzにおいては、ジャンカにおける欠陥の背面信号は厚さ20cmで明瞭に確認できた。厚さ10cmでは、欠陥の背面信号と欠陥の前面信号との重なりで、信号の幅は大きくなっているものの明瞭に確認はできなかった。400MHzの結果においても、ジャンカにおける欠陥の背面信号は厚さ20cmについてのみ確認できた。
【0069】
900MHzのかぶり10cm、厚さ5cmのデータを比較すると、空洞とジャンカともに約2nsecの時点で信号強度が増加している部分が認められた。1500MHzの結果と比較すると900MHzは、S/Nが良く、ジャンカにおいても認められたものと考えられる。その他の900MHzと400MHzの結果は、パルス幅が大きいことや鋼製支保工の影響により、欠陥の前面信号の繰り返し信号を確認することは困難であった。
【0070】
以上の結果から、空洞とジャンカを識別するためには、欠陥の厚さや使用するアンテナやかぶり深さ等の条件が限られるが、1)欠陥の背面信号の有無を確認すること、また、2)補足的に欠陥の前面信号の繰り返し信号を確認することにより、種別判定が可能であると考えられる。
【0071】
また、包絡線信号から欠陥の背面信号が検出できた空洞とジャンカについて、欠陥の前面信号と背面信号のピークの時間差を求めて、電磁波速度解析から求めた電磁波速度より欠陥の厚さを求めた。1500MHzの結果を表4に示す。表4に示すように若干誤差があるもののほぼ妥当な値を示している。この結果から、速度既知で計算することにより欠陥の厚さが推定できることが分かる。
【0072】
【表4】
【0073】
このように、包絡線信号からの散乱源及び反射源解析から欠陥種別判定の可能性を検討した結果、欠陥の背面信号が明瞭に確認できれば、ジャンカを識別できる可能性が得られた。また、補足的に欠陥の前面信号の繰り返し信号を確認することにより欠陥種別判定できる可能性も得られた。欠陥の背面信号が得られれば、欠陥の前面信号と背面信号のピークの時間差により厚さ推定可能であることが分かった。
【0074】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。本実施形態では測定される平均電磁波速度の値により、欠陥の種類を判定する。H型鋼である支保工のウェブ部分は図31に示すように平坦であるが、これが透過撮影レーダー探査では、図27に示すように湾曲した形状となる。したがって、図31と図32との幾何学的関係から最小二乗法を用いれば、平均電磁波速度を求めることができる。
【0075】
図31において、d;支保工の深さ、x;支保工直上から横方向へのアンテナの移動距離、v;コンクリート中の電磁波速度と定義する。図31でアンテナをコンクリート表面に沿って移動させ探査を行うと、支保工信号の軌跡は図32の如くになる。ここで、i;測定位値の値のサフィックスで、n点存在、xi;i番目の横方向のアンテナ位置、yi;xiでの支保工までの電磁波の往復伝搬時間とそれぞれ定義する。
【0076】
yi=2・(xi2+d2)0.5/v
但し、dとvは未知。
【0077】
xiとyiは測定値で、これからdとvを求める。
【0078】
上式から
(a・xi2+b)0.5=yi/2
ただしa=1/v2 b=(d/v)2
a・xi2+b=yi2/4=zi
r=Σ(a・xi2+b−zi)2 (Σは1〜n)
rは残差でこれを最小にする
【0079】
∂r/∂a=0から
aΣxi4+bΣxi2=Σxi2・zi
∂r/∂b=0から
aΣxi2+bΣ=Σzi
よって,
aΣxi2+nb=Σzi
これを解いて
【0080】
【数4】
a={nΣxi2・zi−Σxi2・Σzi}/{nΣxi4−(Σxi2)2}
b={Σxi2・Σzi−a(Σxi2)2}/nΣxi2
【0081】
したがって、
平均電磁波速度:v=(1/a)0.5、支保工の深さ:d=v・b0.5 となる。
【0082】
図33に材齢2週から8週の範囲で、このようにして求めた健全部の電磁波速度を測定した結果を示す。図中の2点は、ジャンカと低強度のコンクリートモデルでの測定結果を表す。支保工の深さと支保工信号の出現位置から別途求めた健全部の電磁波速度である0.34cを、図に横線で合わせて示している。図のようにカーブフィットで求めた電磁波速度は、材齢及び用いたコンクリートモデルによらず、ほぼ横線で示した値に一致する。
【0083】
次に図34に同じく材齢2週から8週で測定した低強度部の電磁波速度を示す。図では、各材齢をかぶり深さ10cm、20cm及び30cmに分けて示している。さらに各かぶり深さ中の3点は、欠陥厚さ5cm、10cm及び20cmを表す。かぶりと欠陥の厚さが大きくなると、支保工信号と欠陥反射波が重なり、支保工の軌跡を正確にトレースできなかった。このような場合は計測不可とした。図に見られるように、ばらつきは認められるものの低強度部の電磁波速度は、図33の健全部とほぼ同じ値になった。同じくカーブフィットによりジャンカ部で測定した電磁波速度を図35に示す。低強度部の測定結果よりもばらつきは大きいが、0.5c前後の値となった。先に述べたようにジャンカ部の電磁波速度は約0.65cであるが、図35はこのような速度の速いジャンカ部を伝播経路中の一部に含む場合の測定結果である。このため得られた結果は、概ね妥当な値であると判断される。この図35のジャンカ部の結果と、図34の低強度部及び図33の健全部の結果とあわせて考えると、この方法により欠陥種別を判定することが可能である。
【0084】
このように、電磁波速度解析から検討した結果、健全部と低強度部の電磁波速度は約0.34cであるのに対し、ジャンカ部のそれは約0.65cであった。これらの電磁波速度は材齢8週までの範囲で大きく変化せず、また周波数依存性も認められなかった。支保工信号の軌跡から電磁波速度を求めることが可能で、この結果からジャンカと低強度の判定を行える可能性が得られた。また、空洞部分で支保工信号が消失することから空洞の判定の可能性も得られた。さらに、上述の速度に関する考察結果より、図36に示す如き欠陥からの反射波が得られたにも拘わらず、図36の波線円で示す如き信号があらわれたときは、低強度部との判断になる。
【0085】
電磁波平均速度を用いて図37(c)に示す欠陥部xの厚みを求める方法について説明する。図37(a)、(b)に示すように、コンクリート製の覆工トンネル軸方向に対して間欠的に配置された支保工により補強支持されている。ここで、支保工の深さ:d、健全部の電磁波速度:V1、欠陥の電磁波速度:V2は既知であるとする。また、検査機のレーダー記録から、健全部における表面から支保工までの時間差:t1、欠陥部における表面から支保工までの時間差:t2を読み取る。そして、t,vの関係よりxを求めることができる。
【0086】
【数5】
t1=2d/v1
t2=2(d−x)/v1+2x/v2
=t1+2x(v1−v2)/(v1・v2)
【0087】
【数6】
x=((t2−t1)/2)・((v1・v2)/(v1−v2))
【0088】
次に、反射波のスペクトル解析に関する第四実施形態について説明する。
内部欠陥で反射された電磁波の波形は、減衰や反射等の周波数依存性の影響により生じる波形分散等の欠陥の反射特性を反映しており、波形解析することで欠陥種類を識別できる可能性がある。これらの影響は反射波の周波数スペクトルの差異として検出できることが期待される。これを明らかにするために、3種類のアンテナのうち最もS/Nの良かった400MHzのデータを用いて、スペクトル解析を実施し、検討した。
【0089】
図38に材齢8週目におけるかぶり10cmの空洞の元データ,背景除去処理,背景除去処理+ゲイン補正したレーダーのイメージ像を示す。欠陥のない健全部分のデータを用いた背景除去処理とゲイン補正をすることで、計測条件によらず歪みのない欠陥波形の抽出を行った。
【0090】
図39に背景除去処理により欠陥波形を抽出した波形例(空洞:材齢8週,かぶり10cm,厚さ5cm)を示す。400 MHzアンテナの場合、かぶりが浅いとき特にコンクリートの表面から受信される反射波との重なりの影響を受けていることが分かった。欠陥波形を欠陥からの反射波以外の信号と分離することにより、欠陥のみの情報を抽出することができる。
【0091】
スペクトル解析を行う際、各々の欠陥反射波が出現している範囲で空間平均し、反射波形のS/Nを向上させた。解析ゲートは、図39(c)に示すような欠陥反射波の立ち上がり近傍からゲートを設定した。スペクトル解析は、欠陥反射波のフーリエ変換後にパワースペクトルを求めた。
【0092】
ここに、パワースペクトル計算結果を示す。図40〜42にかぶり10,20及び30cmで8週目に計測した厚さ5,10及び20cmの欠陥反射波のパワースペクトル計算結果を示す。また、図43〜45は図40に示すパワースペクトルを欠陥厚さ5cm、10cm、20cmの各々の場合につき、空中直接波のデータ、空洞模型にて得られたデータ、ジャンカ模型にて得られたデータ毎に分離させて表示したものである。図40〜42には、計測時に別途採取した空中直接波のスペクトルも示す。この空中直接波のデータは、送受信アンテナを直接伝わった信号であり、アンテナ個体の特性と考えることができる。第一実施形態に示されたように、空洞、ジャンカの反射波は明瞭に捕らえられていたが、低強度の反射波はかぶり10cm、厚さ5cmの条件以外はS/Nが低く検出されなかった。したがって、本スペクトル解析では、空洞とジャンカの種別判定について検討した。
【0093】
図40〜42から、空洞反射波のスペクトルは、かぶり10cmにおいて、空中直接波のスペクトルにほぼ類似していることが分かった。かぶりが20,30cmと深くなるにつれて、空中直接波のスペクトルからの歪み度合いが大きくなり、かぶり30cmになると低周波数側にスペクトルが移動していることが分かった。これは、コンクリート中の減衰の周波数依存性による波形分散等の影響が考えられる。欠陥厚さの差異は、顕著に認められなかった。このように、かぶりが大きくなることにより、空洞反射波のスペクトル形状が若干歪むものの、空中直接波のスペクトルの形状に類似していると思われる。
【0094】
一方、ジャンカ反射波のスペクトルは、空中直接波のスペクトルに対して歪み度合いが大きいことが分かった。空中直接波のスペクトルを基準とした場合、高周波数側に分布しているものもあれば、低周波数側に分布しているものもあり、一貫した傾向が認められなかった。この原因を調べるために、スペクトル解析前の欠陥波形(かぶり10cm)を見直した。図46,47に欠陥波形を示す。
【0095】
空洞は、厚さが変わっても振幅が異なるのみでほぼ同様な形状を示していた。ジャンカは、図45に示すように、厚さが大きくなるにつれて波形が広がった形状になることが分かった。これは、空洞に比べて、ジャンカの電磁波速度が小さいため、ジャンカの背面信号が前面信号の後方に出現するため前面信号と背面信号が重なった影響と考えられる。すなわち、空洞反射波のスペクトルは背面信号の影響は少ないが、ジャンカ反射波のスペクトルは、電磁波速度が小さいため、背面信号の影響が大きくなったため歪み度合いが大きくなったと推察される。また、かぶりが大きくなることによるコンクリート中の減衰の影響,空洞反射波に比べてジャンカ反射波のS/Nの低下によるコンクリート中の散乱ノイズの影響等がジャンカ反射波のスペクトルを大きく歪ませたものと考えられる
【0096】
以上の結果から、空中直接波のスペクトルを基準とすると、空洞反射波のスペクトルは、ジャンカ反射波のスペクトルに対して、歪み度合いが少なく、空中直接波のスペクトルに類似していることが分かった。
【0097】
パワースペクトル計算結果から、空洞反射波のスペクトルに比べてジャンカ反射波のスペクトルは、空中直接波のスペクトルに対して歪むことが分かった。空洞反射波とジャンカ反射波のスペクトルの差異は分かったが、これを判別するには定量化を行う必要がある。推定したパワースペクトル形状を定量化するため、式(A5),(A6)から式(A1)〜(A4)に示す4つの周波数特徴量(形状パラメータ)を計算した。式(A5),(A6)は、それぞれ原点周りのn次積率(モーメント)、算術平均周りのn次積率(モーメント)である。
【0098】
4つの特徴量は、パワースペクトルのような分布の形状(特性)を表すパラメータであり、このように数値化することにより、定量化が可能となる。
【0099】
【数7】
【0100】
パワースペクトルの結果から、空中直接波のスペクトルからの歪み度合いが、空洞とジャンカで異なることが分かったので、各欠陥について求めたこれら4つの特徴量は、空中直接波のスペクトルから求めた特徴量との絶対値差とした。
【0101】
このかぶり10cmのデータを図48に示す。このように特徴量を絶対値差に変換することで、かぶり10cmにおいては、ジャンカの方が空洞に比べて大きな値となり、識別の可能性が得られた。かぶり20及び30cmにおいても、かぶり10cmほど分離性は良くなかったがほぼ同様な傾向を示した。
【0102】
以上の結果から、特徴量を求めることにより、定量的な種別判定の可能性を見出せた。
【0103】
特徴量を求めて種別判定の可能性が得られた。これを種別判定するためには、客観的な判断が必要になる。したがって、4つの特徴量と材齢を用いた5次元の多変量解析を検討した。空洞とジャンカを識別するために、それぞれ本解析で求めた特徴量のマハラノビス距離を求めて、判別分析を行った。マハラノビス距離とは、各欠陥特徴量空間の重心までの距離(ユークリッド距離)を各欠陥特徴量のばらつきを考慮した距離である。マハラノビス距離は1次元(1変数)で考えると、ユークリッド距離を標準偏差で割った値の2乗と定義することができる。これを多次元(多変量)で考えるとi番目サンプルの両群の重心までのマハラノビス距離は以下の式で求められる。
【0104】
【数8】
【0105】
表5〜7にかぶり10,20及び30cmの判別分析した結果を示す。判別的中率は、どのかぶりにおいても約80%以上の結果を示しており良好であると思われる。今回の解析からは、ジャンカを空洞として誤判別することが多かった。すなわち、本解析結果からは、ジャンカの判定は正答率が高いものと考えられる。また、今後、特徴量の見直しや実構造物のデータ等によりデータベースを増やすことにより、評価に対する信頼度が向上することが期待される。
【0106】
【表5】
【0107】
【表6】
【0108】
【表7】
【0109】
ここで、上記各実施形態に係る手法を総合して相互補完的に用いる形態について説明する。本研究において、コンクリート構造物の非破壊的な地下レーダー探査を用いて、主に欠陥種別判定を対象に欠陥評価について検討した。これらをまとめたものを表8に示す。
【0110】
【表8】
【0111】
上記各実施形態で行った解析手法は欠陥の種々の特性を反映しており、解析手法ごとに影響される因子が異なった。また各解析アプローチの仕方が異なっており、こうした多方面の解析結果から欠陥の評価を行うことにより評価精度が向上することが考えられる。さらに、適用範囲が異なることも考慮すると、実際のコンクリート構造物に適応するには、適応範囲に対応した解析方法を数種類組み合わせて、総合的に判定するのが望ましいと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実験のために作成したコンクリートモデルの縦断面図である。
【図2】試験体に用いる二種類のコンクリートに対する一軸圧縮強度試験の結果を示すグラフである。
【図3】試験体に用いる二種類のコンクリートの有効間隙率の測定結果を示すグラフである。
【図4】試験体に用いる二種類のコンクリートの超音波速度(P波速度:Vp、S波速度:Vs)の測定結果を示すグラフである。
【図5】試験体に用いる二種類のコンクリートの含水率の測定結果を示すグラフである。
【図6】検査を行ったコンクリートモデルを示す写真である。
【図7】図6に示すコンクリートモデルの内部欠陥の埋設状況を示す写真である。
【図8】送信アンテナから放射された電磁波が内部欠陥で反射し、受信アンテナに捉えられ、測定器に記録されるまでの経路における振幅変化を示す図である。
【図9】道路トンネルにおいて計測した無欠陥箇所の支保工反射波に関する振幅/増幅率と、往復伝播時間の関係をプロットしたグラフである。
【図10】1500MHzアンテナによりかぶり20cm、厚さ5〜20cmの空洞模型の検査を行った際の階調表示によるレーダーイメージ及び矢印位置における波形を示すグラフである。
【図11】1500MHzアンテナによりかぶり20cm、厚さ5〜20cmのジャンカ模型の検査を行った際の階調表示によるレーダーイメージ及び矢印位置における波形を示すグラフである。
【図12】900MHzアンテナによりかぶり10cm、厚さ5〜20cmの低強度模型の検査を行った際の階調表示によるレーダーイメージ及び矢印位置における波形を示すグラフである。
【図13】400MHzアンテナによりかぶり30cm、厚さ5〜20cmの空洞模型の検査を行った際の階調表示によるレーダーイメージ及び矢印位置における波形を示すグラフである。
【図14】試験体内の欠陥厚さと反射波波形との関係を示す図である。
【図15】1500MHzアンテナによりかぶり10cmの空洞模型の検査を行った際の各サンプルトレースにおける測定結果を欠陥厚毎に示すグラフであり、(a)は往復伝播時間を、(b)は初動振幅/増幅率をプロットしたものである。
【図16】900MHzアンテナによりかぶり10cmの空洞模型の検査を行った際の各サンプルトレースにおける測定結果を欠陥厚毎に示すグラフであり、(a)は往復伝播時間を、(b)は初動振幅/増幅率をプロットしたものである。
【図17】400MHzアンテナによりかぶり10cmの空洞模型の検査を行った際の各サンプルトレースにおける測定結果を欠陥厚毎に示すグラフであり、(a)は往復伝播時間を、(b)は初動振幅/増幅率をプロットしたものである。
【図18】1500MHzアンテナにより材齢1週の空洞模型及びジャンカ模型の検査により得られた、初動振幅/増幅率と往復伝播時間の関係を示すグラフである。
【図19】900MHzアンテナにより材齢1週の空洞模型、ジャンカ模型及び低強度模型の検査により得られた、初動振幅/増幅率と往復伝播時間の関係を示すグラフである。
【図20】400MHzアンテナにより材齢1週の空洞模型、ジャンカ模型及び低強度模型の検査により得られた、初動振幅/増幅率と往復伝播時間の関係を示すグラフである。
【図21】900MHzアンテナの記録より求めた減衰率と試験体の材齢との関係を示すグラフである。
【図22】900MHzアンテナの記録より求めた初期振幅×反射率の値と、試験体の材齢との関係を示すグラフである。
【図23】粗骨材/(粗骨材+細骨材+セメント)と電磁波速度関係の関係を示すグラフである。
【図24】空洞を有するコンクリート試験体に対する検査により得られた階調表示によるレーダーイメージであって、(a)は元データを、(b)は背景除去とゲイン補正をしたデータをそれぞれ表示したものである。
【図25】ジャンカを有するコンクリート試験体に対する検査により得られた階調表示によるレーダーイメージであって、(a)は元データを、(b)は背景除去とゲイン補正をしたデータをそれぞれ表示したものである。
【図26】本発明の第二実施形態における受信波形及び波形処理の結果を示すグラフであって、(a)は空洞部を有する試験体を用いた場合の受信波形、(b)は健全な試験体を用いた場合の受信波形、(c)は(a)の受信波形からバックグラウンドを除去した波形、(d)は(c)の波形を整流して得られた波形、(e)は(d)の波形をヒルベルト変換して得られる包絡線波形(信号)にそれぞれ相当する。
【図27】支保工を有する試験体に対する検査により得られた階調表示によるレーダーイメージを示す図である。
【図28】1500MHzのアンテナを用いてかぶり10cmの試験体に欠陥厚5cm、10cm、20cmの欠陥を設けた場合にそれぞれ得られた包絡線信号であり、(a)材齢2週目の空洞模型、(b)は材齢4週目の空洞模型、(c)材齢8週目の空洞模型、(d)は材齢2週目のジャンカ模型、(e)は材齢4週目のジャンカ模型、(f)は材齢8週目のジャンカ模型を用いた場合にそれぞれ相当する。
【図29】900MHzのアンテナを用いて材齢8週目の試験体に欠陥厚5cm、10cm、20cmの欠陥を設けた場合にそれぞれ得られた包絡線信号であり、(a)はかぶり10cmの空洞模型、(b)はかぶり20cmの空洞模型、(c)はかぶり30cmの空洞模型、(d)はかぶり10cmのジャンカ模型、(e)はかぶり20cmのジャンカ模型、(f)はかぶり30cmのジャンカ模型を用いた場合にそれぞれ相当する。
【図30】400MHzのアンテナを用いて材齢8週目の試験体に欠陥厚5cm、10cm、20cmの欠陥を設けた場合にそれぞれ得られた包絡線信号であり、(a)はかぶり10cmの空洞模型、(b)はかぶり20cmの空洞模型、(c)はかぶり30cmの空洞模型、(d)はかぶり10cmのジャンカ模型、(e)はかぶり20cmのジャンカ模型、(f)はかぶり30cmのジャンカ模型を用いた場合にそれぞれ相当する。
【図31】アンテナと支保工の位置関係の概略図である。
【図32】支保工信号の軌跡を示す概略図である。
【図33】本発明の第三実施形態にかかる手法(カーブフィット)により、健全なコンクリート試験体中の電磁波速度と空気中の電磁波速度の比を材齢毎にプロットした図である。
【図34】本発明の第三実施形態にかかる手法(カーブフィット)により、低強度部を有するコンクリート試験体中の電磁波速度と空気中の電磁波速度の比を材齢毎にプロットした図である。
【図35】本発明の第三実施形態にかかる手法(カーブフィット)により、ジャンカを有するコンクリート試験体中の電磁波速度と空気中の電磁波速度の比を材齢毎にプロットした図である。
【図36】低強度部の欠陥信号を示す階調表示によるレーダーイメージである。
【図37】(a)トンネルの長手軸方向からみた断面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)における欠陥部の介在状況を示す図である。
【図38】欠陥信号を示す階調表示によるレーダーイメージであり、(a)は元データ、(b)は背景除去を行ったイメージ、(c)はゲイン補正を行ったイメージである。
【図39】(a)は健全な試験体の受信波形、(b)は空洞部を有する試験体の受信波形、(c)は(b)の受信波形に対して背景除去処理及びゲイン補正を施して得られた波形である。
【図40】かぶり10cmの試験体を用いて測定した厚さ5cm,10cm,20cmの欠陥のパワースペクトルを示し、airは空中直接波、voidは空洞、jankaはジャンカ、lowは低強度部をそれぞれ示す。
【図41】かぶり20cmの試験体を用いて測定した厚さ5cm,10cm,20cmの欠陥のパワースペクトルを示し、airは空中直接波、voidは空洞、jankaはジャンカ、lowは低強度部をそれぞれ示す。
【図42】かぶり30cmの試験体を用いて測定した厚さ5cm,10cm,20cmの欠陥のパワースペクトルを示し、airは空中直接波、voidは空洞、jankaはジャンカ、lowは低強度部をそれぞれ示す。
【図43】かぶり10cm、欠陥厚さ5cmの試験体を用いて測定した空中直接波、空洞、ジャンカのパワースペクトルを示す。
【図44】かぶり10cm、欠陥厚さ10cmの試験体を用いて測定した空中直接波、空洞、ジャンカのパワースペクトルを示す。
【図45】かぶり10cm、欠陥厚さ20cmの試験体を用いて測定した空中直接波、空洞、ジャンカのパワースペクトルを示す。
【図46】空洞を有する試験体の検査により得られた波形を示す図であって、(a)は空洞の厚さが5cmの場合、(b)は空洞の厚さが10cmの場合、(c)は空洞の厚さが20cmの場合にそれぞれ相当する。
【図47】ジャンカを有する試験体の検査により得られた波形を示す図であって、(a)はジャンカの厚さが5cmの場合、(b)はジャンカの厚さが10cmの場合、(c)はジャンカの厚さが20cmの場合にそれぞれ相当する。
【図48】4つの周波数特徴量に対する試験体種別毎の材齢に対する分布を示すグラフであり、(a)は基準化平均周波数、(b)は基準化標準偏差周波数、(c)は基準化歪度、(d)は基準化尖度の分布を示す。
Claims (5)
- 電磁波をコンクリート構造物に送信すると共に反射波を受信することによりこのコンクリート構造物の内部を検査する電磁波によるコンクリート検査方法であって、測定された内部欠陥反射波の初動ピークに関するA/G及び往復伝播時間tと次式(1)との関係によりA0・rを求め、このA0・rに基づいて欠陥部の種別を判別することを特徴とする電磁波によるコンクリート検査方法。
ln(A/G)=−(α・V・t)+ln(A0・r) (1)
但し、Aは測定器に記録される振幅、Gは増幅率、αはコンクリート中の振幅の減衰率、Vは電磁波速度、A0 は送信アンテナから送信された電磁波のコンクリート表面における初期振幅、rは内部欠陥での電磁波の反射率である。 - 前記A/G及び前記往復伝播時間tの測定を欠陥等の深度の異なる複数箇所で行うことにより、上記式(1)から最小二乗法によりA0・r及びαを求めることを特徴とする請求項1に記載の電磁波によるコンクリート検査方法。
- 測定された前記反射波の初動ピーク(P)の往復伝播時間tと前記コンクリート構造物内部の電磁波速度とから対象部の深さを求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁波によるコンクリート検査方法。
- 前記電磁波の周波数を欠陥部の予想厚みよりもこの電磁波の半波長が小さくなるように前記周波数を設定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波によるコンクリート検査方法。
- 電磁波を送信する送信アンテナと、コンクリート構造物からの反射電磁波を受信するための受信アンテナと、受信波の測定を行う測定器とを備え、このコンクリート構造物の内部を検査する、請求項1〜4のいずれかに記載の電磁波によるコンクリート検査方法に使用する電磁波によるコンクリート検査装置であって、
前記測定器が、測定された内部欠陥反射波の初動ピークに関するA/G及び往復伝播時間tと次式(1)との関係によりA0・rを求め、このA0・rに基づいて欠陥部の種別を判別するものであることを特徴とする電磁波によるコンクリート検査装置。
ln(A/G)=−(α・V・t)+ln(A0・r) (1)
但し、Aは測定器に記録される振幅、Gは増幅率、αはコンクリート中の振幅の減衰率、Vは電磁波速度、A0 は送信アンテナから送信された電磁波のコンクリート表面における初期振幅、rは内部欠陥での電磁波の反射率である。
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