JP3825411B2 - リンゴ酸ハイドロゲル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リンゴ酸と亜鉛を混合してゲル化させることを特徴とするハイドロゲルの製造方法、および該方法によって得られるハイドロゲルに関する。
【0002】
【従来の技術】
化粧品・生体材料に応用されているハイドロゲルは数多く存在する。これらのハイドロゲルの多くは、ヒアルロン酸、コラーゲン、ゼラチンなどの生体親和性高分子に適当な架橋を施して構成されている。例えば、ヒアルロン酸等のカルボキシル基含有多糖を鉄や亜鉛等の金属イオンで架橋したゲル状材料として、以下のものが公知である;陽イオンで錯生成された多糖類からなる胃腸機能の改善・下痢障害の減少・栄養補給のための組成物(例えば、特許文献1参照)、イオン結合により架橋したカルボキシル基を含有する癒着防止用多糖類(例えば、特許文献2参照)、除プロトン化したヒアルロン酸とアンモニウム塩と亜鉛イオンを用いたヒアルロン酸亜鉛複合ゲル(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
リンゴ酸は、クエン酸回路の中間体で、生体内で容易に代謝されるヒドロキシジカルボン酸である。リンゴ酸やクエン酸等の有機酸は、安全かつ低刺激であることから、従来より化粧品や食品成分として利用されている。また、pH調整を目的として生体材料にも添加されている。例えば、ヒアルロン酸亜鉛複合体ゲルに分子量低下を抑制するためにクエン酸またはマレイン酸を添加した皮膚疾患処置用ゲル組成物(例えば、特許文献4参照)等が公知である。さらに、キトサン有機酸塩とカルシウム、マグネシウムおよび/または亜鉛の水溶性塩とを必須成分とする水性被覆材(例えば、特許文献5参照)に関する報告もある。この水性被覆材では、有機酸は塩形成によって不溶性のキトサンを水溶性化させるために用いられている。
【0004】
一方、ヒドロキシカルボン酸モノマーを多価金属イオンによって重合させる技術は、高分子分野では既に公知である。例えば、乳酸を乳酸亜鉛と反応させてポリヒドロキシカルボン酸樹脂を製造する方法(例えば、特許文献6参照)等が知られている。しかしながら、これまでリンゴ酸を亜鉛イオンで架橋したハイドロゲルや、その化粧品、医薬品、食品等の分野への応用について、具体的な報告がなされたことはない。
【0005】
【特許文献1】
特開平7-90002号公報
【特許文献2】
特開平5-124968号公報
【特許文献3】
特許第2571312号
【特許文献4】
特開2001-278791号公報
【特許文献5】
特開平10-211270号公報
【特許文献6】
特開平10-218977号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、生理活性物質を変性・失活させることなく封入しうる新規ハイドロゲルと、その製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、リンゴ酸のカルボキシル基・水酸基と亜鉛イオン間の特異的結合、および該結合によるゲル化条件が中性領域であることに着目した。そして、濃度0.2mol/lより高濃度のリンゴ酸と亜鉛イオンを亜鉛/リンゴ酸モル比 0.5以上で混合し、アルカリでpHを調整すれば、安定なハイドロゲルが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、0.2mol/lより高濃度のリンゴ酸溶液と亜鉛イオンを亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上で混合する工程と、リンゴ酸溶液と亜鉛イオンを含む混合液にアルカリを添加してゲル化させる工程とを含む、ハイドロゲルの製造方法に関する。
【0009】
本発明の方法では、リンゴ酸溶液と亜鉛イオンに、さらにコラーゲンおよび/または多糖類を混合してもよい。
【0010】
本発明の方法において、アルカリは最終pH が5.5〜9.0になるように添加することが望ましい。特に、コラーゲンおよび/または多糖類を添加しない場合には、アルカリは最終pH が少なくとも5.5〜8.0、好ましくは5.5〜7.5になるように添加することが望ましい。また、コラーゲンおよび/または多糖類を添加する場合には、アルカリは最終pHが少なくとも5.5〜9.0、好ましくは5.5〜7.5になるように添加することが望ましい。
【0011】
本発明で用いられる多糖類としては、ヒアルロン酸、アルギン酸、デキストラン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルタマン硫酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、キチン、ケラタン硫酸、およびそれらの塩、ならびにそれらの誘導体を挙げることができるが、なかでもヒアルロン酸またはその塩、もしくはその誘導体が好適である。
【0012】
本発明はまた、本発明の方法によって製造されるハイドロゲルを提供する。このハイドロゲルは、tanδが1以下の粘弾性を有することを特徴とする。
【0013】
上記ハイドロゲルは、pH6.5〜7.5の領域においては透明なハイドロゲルとなり、特にpH7.0付近では500nmの透過率が25%以上のゲルとなる。
【0014】
本発明のハイドロゲルの好適な例として、0.2mol/lより高濃度のリンゴ酸、および亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上の亜鉛イオン、ならびにそれらのカウンターイオンからなり、pH5.5〜7.5のハイドロゲルを挙げることができる。
【0015】
また別な例として、0.2mol/lより高濃度のリンゴ酸、亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上の亜鉛イオン、およびヒアルロン酸、ならびにそれらのカウンターイオンからなり、pH5.5〜7.5のハイドロゲルを挙げることができる。
本発明のハイドロゲルはまた、生理活性物質を含んでいてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.リンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルの製造方法
本発明は、0.2mol/lより高濃度のリンゴ酸溶液と亜鉛イオンを亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上で混合する工程と、リンゴ酸溶液と亜鉛イオンを含む混合液にアルカリを添加してゲル化させる工程とを含む、ハイドロゲルの製造方法に関する。
【0017】
本発明にかかる「ハイドロゲル」とは、高分子が化学結合によって網目状構造を構成し、その構造内に多量の水を含むことができる親水性ゲルを意味し、微小な高分子粒子が化学結合を介することなく凝集したハイドロコロイドとは明確に区別される。
【0018】
本発明にかかる「リンゴ酸」は、HOOCCH2CH(OH)-COOHの構造を有するヒドロキシジカルボン酸である。リンゴ酸は、クエン酸経路の中間体で、生体内で容易に代謝されるため、安全で生体親和性が高い有機酸の1つである。本発明の方法において、リンゴ酸は0.2mol/lより高濃度、好ましくは0.3mol/l以上の水溶液として用いる。リンゴ酸溶液の濃度が0.2mol/l以下ではハイドロゲルが形成されないからである。
【0019】
本発明にかかる「亜鉛イオン」としては、例えば、塩化亜鉛などのハロゲン化亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛等の亜鉛有機酸塩、ジエチル亜鉛などの有機亜鉛等の亜鉛化合物の水溶液を用いることができる。
【0020】
前記亜鉛化合物は、イオン化した状態(水溶液)でリンゴ酸に対して亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上、好ましくは0.5〜2.0となるように混合されることが望ましい。モル比が0.5未満では安定なゲルが形成されず、2.0より大きいと亜鉛イオンが生体毒性を示す危険性があるからである。特に、亜鉛/リンゴ酸モル比が0.5〜1.0の領域では、透明なゲルを得ることができる。
【0021】
次に、亜鉛イオンを添加したリンゴ酸に、NaOH、KOH、アンモニア等のアルカリを加えてゲル化させる。系にコラーゲンや多糖類などが含まれない場合、安定なゲル形成がなされるpH領域は少なくともpH5.5〜8.0、好ましくはpH5.5〜7.5である。特に、透明なゲル形成がなされるpH領域はpH6.5〜7.5である。
【0022】
上記リンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルは、さらに第3の成分としてコラーゲンや多糖類を含むことができる。ここで、多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、アルギン酸、デキストラン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルタマン硫酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、キチン、ケラタン硫酸、およびそれらの塩、ならびにそれらの誘導体を挙げることができる。なかでもヒアルロン酸またはその塩、もしくはその誘導体が好ましい。
【0023】
コラーゲンや多糖類の添加は、リンゴ酸水溶液に亜鉛イオンを添加する前であっても、同時であっても、添加後であってもかまわない。リンゴ酸溶液に亜鉛、コラーゲンおよび/または多糖類が全て添加された後に、NaOHやアンモニア等のアルカリを加えてゲル化させる。なお、コラーゲンや多糖類を添加した系では、安定なゲル形成がなされるpH領域は少なくともpH5.5〜9.0、好ましくはpH5.5〜7.5である。特に、透明なゲル形成がなされるpH領域はpH6.5〜7.5である。
【0024】
2. リンゴ酸/亜鉛ハイドロゲル
本発明はまた、本発明の方法によって製造されるリンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルを提供する。
【0025】
2.1 本発明のハイドロゲルの特徴
本発明のハイドロゲルは、リンゴ酸と亜鉛イオンを亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上で含み、前記リンゴ酸のカルボキシル基および水酸基が亜鉛イオンと結合することによって重合した網目状構造を有する。本発明のハイドロゲルは、この網目状構造内に多量の水を包含しうるとともに、後述する生理活性物質等を封入し、徐放することが可能である。
【0026】
本発明のハイドロゲルは中性領域で安定性を示し、したがって生体適用に好適である。具体的には、本発明のハイドロゲルはpH5.5〜8.0、特にpH5.5〜7.5の領域で、さらにコラーゲンや多糖類を含む場合には、pH5.5〜9.0、特にpH5.5〜7.5の領域で安定になりうる。こうしたハイドロゲルの好ましい例としては、0.2mol/lより高濃度のリンゴ酸、および亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上の亜鉛イオン、ならびにそれらのカウンターイオンからなり、pH5.5〜7.5のハイドロゲル;あるいは、0.2mol/lより高濃度のリンゴ酸、亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上の亜鉛イオン、およびヒアルロン酸、ならびにそれらのカウンターイオンからなり、pH5.5〜7.5のハイドロゲル等、を挙げることができる。
【0027】
本発明のハイドロゲルは、高い生体分解性と生体吸収性を示す。これは、本発明のハイドロゲルが、クエン酸回路の中間体であるリンゴ酸を主成分とするため、生体内で容易に分解・吸収されるからである。
【0028】
また、本発明のハイドロゲルは、pH6.5〜7.5の領域においては、透明なハイドロゲルとなる。特にpH7.0付近では500nmの透過率が25%以上、またpH6.8付近では500nmの透過率が60%以上の透明性のゲルとなる。したがって、本発明のハイドロゲルは透明度が要求されるような医薬品・化粧品材料等に好適に利用しうる。
【0029】
さらに、本発明のハイドロゲルは、tanδ(δは位相差)値が1以下を示す弾性体である。したがって、創傷被覆材等、適度な弾性が要求される製品に好適に利用できる。本発明のハイドロゲルは、コラーゲンや多糖類を含むことにより、さらにその粘性を向上させることができる。添加されるコラーゲンや多糖類の量はゲルの安定性を損なわない限り、特に限定されず、最終製品の目的と効果に合わせて加減することができる。
【0030】
2.2 生理活性物質の封入
本発明のハイドロゲルは中性領域で安定性を示す。したがって、生体適用に好適であるとともに、その網目構造内に多くの生理活性物質を失活させることなく封入することができる。なお、「生理活性物質」とは、生体内で何らかの薬理作用を有する成分であって、例えば、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板分化増殖因子(PDGF)、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等の増殖因子、グリア誘導神経栄養因子(GDNF)、神経栄養因子(NF)、骨形成因子(BMP)、ホルモン、サイトカイン、その他の薬剤等を挙げることができる。これらの生理活性物質は、通常生体内で分解、あるいは失活しやすいが、本発明のハイドロゲル内に封入されることにより長時間安定に保持されうる。さらに、封入された生理活性物質は、生体内でのハイドロゲルの吸収・分解に伴って、その網目状構造内より徐々に放出され、所望の薬理活性を発揮しうる。
【0031】
このほか、本発明のハイドロゲルは、本発明の目的と効果を損なわない範囲で、適宜他の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、St、Mg、Ca及びCO3等の無機塩、クエン酸及びリン脂質等の有機物、香料、防腐剤等を挙げることができる。
【0032】
3.リンゴ酸ハイドロゲルの利用
本発明のリンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルは、そのままで、あるいはコラーゲンや多糖類、生理活性物質等を複合化させることにより、化粧品、食品、医薬品、DDS担体、細胞培養基盤等に利用しうる。
【0033】
本発明のハイドロゲルの構成成分である亜鉛イオンは、生体内の酵素作用や細胞分裂に不可欠であり、その欠乏は味覚異常等の障害を引き起こす。本発明のハイドロゲルは、生体内で容易に分解吸収されるため、亜鉛の供給を目的とした食品あるいは医薬品の添加物として利用することができる。
【0034】
本発明のハイドロゲルの構成成分であるリンゴ酸には疲労物質の乳酸を取り除く働きがあり、肉体的・精神的な疲労を回復し、身体の新陳代謝を活発にする作用がある。そのため、低刺激性の安全な有機酸として、皮膚保護化粧品用素材(パック等)への利用が期待される。
【0035】
本発明のリンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルは適度な粘弾性を有し、その網目状構造内に多量の水分を吸収することができるため、褥瘡をはじめとする創傷の保護および/または治癒を目的とした創傷被覆材として好適に利用しうる。
【0036】
本発明のリンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルは、所望の生理活性物質あるいは薬剤を封入させることで、DDS担体としても利用することができる。本発明のハイドロゲルは生体適合性が高く、生体内適用後で徐々に分解吸収されるため、封入された薬物等を確実に目的とする器官に送達することができる。
【0037】
本発明のリンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルは、親水性の網目状構造を有するため、細胞の侵入が良く、細胞培養基盤としての利用価値も高い。細胞培養基盤として利用する場合、本発明のハイドロゲル内に、さらに細胞の増殖を助ける塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血小板分化増殖因子(PDGF)、インスリン、インスリン様増殖因子(IGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、グリア誘導神経栄養因子(GDNF)、神経栄養因子(NF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)、および血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等の増殖因子、骨形成タンパク質(BMP)、細胞接着因子、転写因子等の細胞の分化増殖を促す因子を導入すれば、in vitroにおける細胞培養の効率をより高めることができる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
[実施例1] リンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルの作製(1)−リンゴ酸濃度の検討
1) 0.2mol/lのリンゴ酸(13.91g/500ml)と塩化亜鉛(34.08g/500ml)を混合し、その混合液を10mlずつに分けた。この混合液10mlにそれぞれ1mol/lのNaOH水溶液を適量滴下してゲルの調製を試みたが、いずれの場合もゲルは形成されなかった。
混合液の状態を目視観察した結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
2) 次に、種々の濃度のリンゴ酸に、亜鉛/リンゴ酸モル比が0.4, 0.5, 1.0, 1.5, 2.5になるように調整した溶液を混合し、1mol/lのNaOH溶液を適量滴下してpH7.0に調整し、添加1時間後のゲルの状態を目視により観察した。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表2から明らかなように、リンゴ酸濃度が0.3mol/l以上、亜鉛/リンゴ酸モル比が0.5以上でゲル状物質が得られた。以上より、ハイドロゲルの形成には、リンゴ酸は少なくとも0.2mol/lより高濃度であることが必要と考えられた。
【0044】
[実施例2] リンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルの作製(2)−亜鉛/リンゴ酸モル比の検討
0.5mol/lのリンゴ酸(0.6954g/10ml)に、塩化亜鉛をそれぞれ0.2726, 0.3408, 0.6816, 1.0244, 1.3632g 混合した溶液を調整した。この混合液に1mol/lのNaOH水溶液を11.0〜12mlを滴下してゲルの調整を試みた。ゲルの状態を目視観察した結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
表3から明らかなように亜鉛/リンゴ酸モル比が0.5未満ではゲル形成はされないことが確認された。
【0047】
[実施例3] リンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルの作製(3)−pH(アルカリ添加量)に関する検討
0.5mol/lのリンゴ酸(34.77g/500ml)と塩化亜鉛(34.08g/500ml)を混合し、その混合液を10mlずつに分けた。この混合液10mlにそれぞれ1mol/lのNaOH水溶液を適量滴下してゲルを調製した。調製されたゲルのpHを測定するとともに、ゲルの状態を目視観察し、表4にまとめた。
また各pHにおける透過率を、1cmの方角石英セルを用いて500nmで測定した(測定機器名:ダブルビームUV-Vis分光計 製造元:日立製作所)。
【0048】
【表4】
【0049】
表4から明らかなように、pH5.5〜7.5の領域においてゲルが形成された。この結果から判断して、リンゴ酸と亜鉛濃度を加減すれば、少なくともpH5.5〜8.0領域では安定なゲル形成が可能と考えられた。また、pH6.5〜7.5の領域においては若干の白濁は見られるものの、透明なハイドロゲルが得られ、pH6.5〜7.0の領域では特に透明性の高いゲルが得られた。透過率の測定結果は、pH7.0付近では500nmにおける透過率が25%以上、pH6.8付近では500nmにおける透過率が60%以上であった。
【0050】
[実施例4] リンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルの粘弾性
実施例1で得られたゲル状物質の動的粘弾性を、貯蔵弾性率(G')損失弾性率(G'')、および:tanδ(1Hz,δは位相差)を測定(測定機器:レオストレスRS1 製造元:ハーケ株式会社)することにより評価した。
【0051】
粘弾率G’、G’’およびtanδ(1Hz)のNaOH滴下量による変化を図1に示す。図1から明らかなように、pH5.5〜7.5 の範囲で得られたゲルはtanδが1以下を示し、弾性体としての性質を有することが確認された。また、NaOH滴下量に依存して、損失弾性率(G’)、貯蔵弾性率(G’’)が極大を示し、その極大付近で得られたハイドロゲルは透明であることが確認された。
【0052】
[実施例5] リンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルの粘弾性の経時変化
透明ゲルが得られる条件において、時間変化に伴うゲルの粘弾性変化に関する検討を行った。粘弾性測定は、実施例2と同様の条件で行った。
時間変化に伴う粘弾性変化を図2に示す。その結果、ゲルは、NaOH滴下後約3時間で安定になることが確認された。
【0053】
[実施例6] リンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルへのヒアルロン酸添加(1)−pH(アルカリ添加量)に関する検討
0.5mol/lのリンゴ酸(34.77g/500ml)と塩化亜鉛(34.08g/500ml)を混合し、その混合液を10mlずつに分けた。この混合液10mlに、さらにヒアルロン酸を100mg、添加して攪拌を行った。それぞれの溶液に1mol/lのNaOH水溶液を適量滴下してゲルを調整した。調製されたゲルのpHを測定するとともに、ゲルの状態を目視観察し、表5にまとめた。
【0054】
【表5】
【0055】
表5から明らかなように、本実施例ではpH4.99〜7.26の領域でゲルが形成され、ヒアルロン酸等の多糖類の添加によりゲル形成のためのpH領域が拡大しうることが確認された。この結果から判断して、多糖類の添加量や、リンゴ酸と亜鉛濃度の量を加減すれば、少なくともpH5.5〜9.0領域では安定なゲル形成が可能と考えられた。また、pH6.5〜7.5の領域においては若干の白濁は見られるものの、透明なハイドロゲルが得られ、特にpH6.5〜7.0の領域では透明性の高いゲルが得られるものと考えられた。
【0056】
[実施例7] リンゴ酸/亜鉛ハイドロゲルへのヒアルロン酸添加(2)−粘弾性測定
0.5mol/lのリンゴ酸(34.77g/500ml)と塩化亜鉛(34.08g/500ml)を混合し、その混合液を10mlずつに分けた。この混合液10mlに、さらにヒアルロン酸を100mg、または10mg添加して攪拌を行った。それぞれの溶液に1mol/lのNaOH水溶液を11.5ml滴下してゲルを調整した。
【0057】
得られたゲルの透過率を実施例1と同様の方法で測定した。また、ゲルの粘弾性を実施例2と同様の方法で評価し、表6にまとめた。
【0058】
【表6】
【0059】
得られたゲルは透過率60%の透明なゲルであった。また、表6に示すよう、ヒアルロン酸を添加してもG'値は変化せず、tanδ値のみが大きくなることが確認された。以上より、ヒアルロン酸を混合させることで粘性的な性質が大きくなることが確認された。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば、リンゴ酸、亜鉛イオンを必須の構成成分とする新規ハイドロゲルが提供される。このハイドロゲルは、中性領域で安定なため、生理活性物質を変性・失活させることなく封入することができる。また、生体内で容易に分解されるため、食品、化粧品、医薬品、DDS等、種々の分野に応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、水酸化ナトリウム滴下量の変化に伴うハイドロゲルの粘弾性変化を示すグラフである。図中、△は貯蔵弾性率(G’)、▽は損失弾性率(G’’)、●はtanδの変化を示す。
【図2】図2は、ゲル化後の時間変化に伴う粘弾性変化を示すグラフである。図中、△は貯蔵弾性率(G’)、▽は損失弾性率(G’’)、●はtanδの変化を示す。
Claims (12)
- 0.2mol/lより高濃度のリンゴ酸溶液と亜鉛イオンを亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上で混合する工程と、リンゴ酸と亜鉛イオンを含む混合液にアルカリを添加してゲル化させる工程とを含む、ハイドロゲルの製造方法。
- さらに、リンゴ酸溶液と亜鉛イオンに、コラーゲンおよび/または多糖類を混合する工程を含む、請求項1記載の方法。
- アルカリをpH5.5〜9.0になるように添加することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
- アルカリをpH5.5〜7.5になるように添加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 多糖類が、ヒアルロン酸、アルギン酸、デキストラン、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルタマン硫酸、コンドロイチン硫酸、キトサン、キチン、ケラタン硫酸、およびそれらの塩、ならびにそれらの誘導体から選ばれるいずれか1種または2種以上である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 多糖類がヒアルロン酸、およびその塩、ならびにその誘導体から選ばれる1種または2種以上である、請求項5記載の方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によって製造されるハイドロゲル。
- tanδが1以下の粘弾性を有することを特徴とする、請求項7記載のハイドロゲル。
- pH6.5〜7.5で、かつ透明なゲルであることを特徴とする、請求項8記載のハイドロゲル。
- 0.2mol/lより高濃度のリンゴ酸、および亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上の亜鉛イオン、ならびにそれらのカウンターイオンからなり、pH5.5〜7.5のハイドロゲル。
- 0.2mol/lより高濃度のリンゴ酸、亜鉛/リンゴ酸モル比0.5以上の亜鉛イオン、およびヒアルロン酸、ならびにそれらのカウンターイオンからなり、pH5.5〜7.5のハイドロゲル。
- さらに生理活性物質を含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載のハイドロゲル。
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