JP3782302B2 - 能動的はく離防止装置およびその方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、ジェット吹出しの縦渦発生装置による能動的はく離防止装置に関するものであり、特に、その応答速度と制御効果の改善を図ることができる能動的はく離防止装置およびその方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
境界層制御において、壁面に設けた小さな穴から主流中にジェットを吹き出す方法は、様々な研究においてその有効性が確認されている。
つまり、主流とジェットの干渉により縦渦を発生させ、境界層と主流の強制混合を促進させることで、境界層内に主流側の大きなエネルギをもった流体を運び、はく離防止効果を得るというものである。この方法は、原理的には現在実用されている渦発生装置(Vortex Generator:VG)と同じである。しかしながらVGは単純構造、低コスト等の利点がある反面、発生させる縦渦の状態を変化させるためには、VGの形状自体を変更する必要が生じる。そのため、時間的に変化する流れ場においては、最適な制御方法とはいえない。さらに流れの中に挿入されたVG自体の付加抵抗を無くすことができないため、例えば、設計点付近で制御の必要がない流れの状態に対しては、却って損失が増え悪影響を及ぼすことがある。一般の航空機や流体機械では、はく離が起こらないような設計を行うため、制御装置ははく離の危険にさらされたときだけ必要とされる。しかしVGは常に流れにさらされ、一種の抵抗増加につながるような影響をおよぼしていることになる。
【0003】
一方、ジェット吹出しの縦渦発生装置(Vortex Generator Jet:VGjs)の場合、ジェットの吹き出し流速を変化させ、縦渦の強さを調整することで流れ場の状態に応じた能動的な制御が可能となる。さらに、ジェットの吹き出しを行わない場合は、制御装置自体が引き起こす付加抵抗を無くすことが可能となる。
【0004】
近年、ジェット吹き出しの縦渦発生装置(VGJs)は、こうした制御性に着目され、航空機の翼の抵抗を軽減させ揚力を増やす方法として研究されたり、ディフューザ効率向上や膜冷却に適用した研究が行われている。また、流れ場の状態に対応した能動的な制御に関しては、流路内におかれたフラップ後のはく離域の制御や翼の迎角に対するはく離制御を行った研究が報告されている。しかしながら、システムは流れ場の変化に適応させた制御パラメータの調整を行っていない。
【0005】
それに対して、発明者等はジェット吹き出しによる縦渦発生装置において、流れ場の状態に適合した能動的はく離防止装置(Active Separation Control System Using Vortex Generator:ASCSVGJ)を開発し時間的な変動を伴う流れ場に対するシステムとしての適用可能性について、二次元ディフューザを使用したものを提案している。
【0006】
ここで、上記ジェット吹き出しによる縦渦発生装置の能動的はく離防止装置(ASCSVGJ)について、図面を参照してその構造について説明しておく。
図6は本装置の風洞の平面図、図7は図6中のA部拡大断面図、図8は図6中のA部拡大斜視図、図9は図8中のジェット吹き出しノズル部の拡大斜視図、図10はこのはく離防止装置の制御システム図、図11は同フローチャート図である。
【0007】
図において101はファン、102はディフューザ、、103はスクリーン、104はハニカム、105はスクリーン、106はノズル、107は計測領域であり、ファン101から吹き出した流体はスクリーン103、ハニカム104、スクリーン105を通ってノズル106から計測領域107に向けて吹き出される。なお、前記ファン101から106までの風洞構成は従来の装置そのままであり、この点には特に特徴はない。
【0008】
計測領域107にはジェットを吹き出すノズル108が、図9のように主流に対する角度θが90°(θ=0°は下流方向を示す)、下側壁面との傾き各φを45°で取付けられている。なおこのジェットの吹き出し角度は、必要に応じて変更することも可能である。また、ジェットは、図7に示すように、コンプレッサ112からの空気を一度気蓄器タンク111に気蓄した後、バルブ110よりロータメータ(後述する)を通してノズル108からふきだす構成となっている。また本装置の計測領域107に設けたディフューザ113は図7に示すように二次元片開きとして構成され、開き角度αは0〜45°の範囲で6段階に調整できるようになっている。ディフューザ部の流路は長方形断面を有し、ジェット吹き出しノズル108は図8に示すようにディフューザ部より上流に配置され、主流の下方壁面側から吹き出すように設計されている。また、ディフューザ上流測定位置には静圧を計測する第1静圧孔114が、またディフューザ部には静圧を計測する複数の第2静圧孔115が設けられている。
【0009】
ここで、上記装置の能動制御システムの構成を説明する。
図10は計測領域107としてのディフューザ部のはく離制御システム図であり、図中116は差圧計測手段、117はA/D変換器、118はD/A変換器、119は風速計、120は熱線プローブおよびトラバース装置、121はコンピュータ、122はI/Oボード、123はモータドライバー、124はステッピングモータである。前記ジェット吹き出しノズル108は図示のようにロータメータ109、バルブ110、タンク111、コンプレッサ112に接続されており、前記バルブにより流量を調整後ロータメータを介して定常ジェットを吹き出す。また、図示せぬ電動モータを駆動源とした縦渦発生装置108aは定常ジェットをパルス状で吹き出すことも可能である。
【0010】
この装置では始めに現在の流れの状態を判断するために、ディフューザ上流位置に配置した第1静圧孔114とディフューザ内計測位置に配置した第2静圧孔115のうち115aとの差圧を計測する。その後、第1静圧孔114、第2静圧孔115aからの差圧を比較し、その状況からはく離が発生しているか否かをコンピュータ121で判定し、はく離している場合にはコンピュータからの出力によりバルブ110を開閉してジェット吹き出しノズル108からジェットを吹き出し、はく離を抑えるようにジェットの流速を制御する。
【0011】
ここで上記装置のはく離防止のフローチャートを説明する。
図11において、プログラムがスタートするとステップS1で第1静圧、第2静圧の差の電圧値を計測し、ステップS2で電圧値から差圧を計算し、ステップS3ではく離が発生しているか否かを判断する。ステップS3ではく離が発生している時は、ステップS4で予めシステムが用意した数種類のジェット吹き出し流量の中から最適な制御1ステップ当たりのジェット吹き出し流量を選択し、ステップS5でバルブを制御、ステップS6でノズルから所定のジェットを吹き出し、はく離を防止する。またステップS3ではく離が発生していない時はステップS7に進みプログラムを終了する。こうした制御を繰り返しおこないながらジェット吹き出しノズルからの吹き出しを制御することではく離を能動的に防止することができる。
なお、この装置については、1998年ターボ機 第26巻第12月号に説明されているので、その詳細は省略する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記装置では、適用可能性の確認に重点を置き、制御目標が達成されるまでの時間に関する特別な考慮はなされていない。
そこで本発明は、ジェット吹き出しによる縦渦発生装置としての重要なパラメータであるジェット吹き出しピッチ角の影響を考慮し、制御目標を達成するまでの時間短縮および制御効果の拡大を図ることができる改良型の能動型はく離防止装置およびその方法を提供し、上記問題点を解決することを目的とする。本発明により、ディフューザの開き角がより広がった場合においてもはく離を制御することが可能となった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明が採用した技術解決手段は、
主流を流す流路の下流側に角度調節可能なディフューザを設け、主流の流路内およびディフューザ部には静圧を測定する静圧孔を備え、さらにディフューザ上流にジェットを吹き出すノズルを設けてなるジェット吹き出しによるはく離防止装置において、前記ディフューザには吸い込み作用をするスロットが形成されていることを特徴とする能動的はく離防止装置である。
また、前記スロットははく離の状態に応じて吸い込み量を制御する制御手段を備えていることを特徴とする能動的はく離防止装置である。
また、前述の能動的はく離防止装置において、主流を流す流路内の静圧とディフューザ部での静圧を比較し、はく離が生じている時には、ディフューザの上流においてジェットを吹き出すか、さらには、ディフーザ部において吸引作用を働かせ、はく離を防止することを特徴とする能動的はく離防止方法である。
また、吸い込み作用をするスロットを使用することによりはく離制御可能なディフューザの開き角度を増大させることができるようにしたことを特徴とする能動的はく離防止方法である。
また、流れ場の状態変化をシステムが判断し、制御ステップ1当たりのジェット吹き出し流量を毎ステップ毎にシステムが計算して求めることことを特徴とする能動的はく離防止方法である。
【0014】
【実施の形態】
本発明の実施の形態に係るはく離防止装置の説明すると、図1は本装置の測定部の拡大斜視図、図2はスロットによる吸引部の詳細図、図3はこのはく離防止装置の制御ブロック図、図4は同制御ブロック図における制御フローチャート図であり、本装置は前述した従来公知のはく離防止装置において、ディフューザ部に吸い込みスロットを形成した点に特徴がある。
【0015】
図1において、1はディフューザ部の底面壁に設けたジェット吹き出しノズル孔、2はディフューザの上流に配置した第1静圧孔、3はディフューザ部に設けた4個設けた第2静圧孔、5は吸引スロットであり、吸引スロット以外は前述した装置と同じ態様のものである(なお、本例では制御に使用している第2静圧項は3aのみである)。図2において、ディフューザに形成した吸引スロット5は充填ボックス19、バルブ20、充填ボックス21を介してブロアー22に接続され、吸引スロット5で吸引作用を行うことができるようになっており、バルブ20の開度調整はステッピングモータ18で行う。
【0016】
また、図3において前記ノズル孔1は、縦渦発生装置1A、ロータメータ4、バルブ25、タンク6を介してコンプレッサー7に接続されている。主流の流路側面に設けた静圧孔2とディフューザに設けた静圧孔3とは差圧検出器8に接続され、さらに差圧検出器8は、A/D変換器9を介してコンピュータ13に接続されている。またコンピュータ13はD/A変換器10を介して前記バルブ25に接続されバルブ25を制御できるようになっている。さらに、図中、11は風速計、12は熱線プローブ、14はI/Oボード、15はモータドライバー、16はステッピングモータ、17はモータドライバー、18はバルブ20の開度調整用のステッピングモータである。前記ジェット吹き出しノズルは前述した従来装置と同様にバルブ25を作動してジェットをノズル1から吹き出すことができ、また、ステッピングモータ18により開度調整したバルブ20を介してブロアー22により吸引スロット5に吸引作用を働かせることができるようになっている。
【0017】
この装置では前述した従来装置と同様に始めに現在の流れの状態を判断するために、ディフューザ上流位置とディフューザ内計測位置との差圧を計測し、その後、流れがはく離しているか否かの判定を行い、はく離している場合にはジェット吹き出しノズルからジェットを吹き出し、はく離を抑えるように吹き出すジェットの流速を制御する。こうしてジェットからの吹き出しを制御することではく離を能動的に防止することができる。また、ジェットの吹き出しのみでははく離が制御できない場合、吸引スロット5に吸い込み作用をさせはく離を制御する。
【0018】
ここで上記装置のはく離防止のフローチャートを説明する。
図4において、プログラムがスタートするとステップS1で第1静圧孔、第2静圧孔でそれぞれの静圧の電圧値を計測し、ステップS2で電圧値から差圧を計算し、ステップS3ではく離が生じていないかあるいははく離制御目標が達成されたか否かを判断する。はく離が発生していない時はステップS4に進みジェット吹き出しを停止するかまたはノズルからのジェットをそのまま維持する。
ステップS3ではく離が発生しているとされるとステップS5において制御1ステップ当たりのジェット吹き出し量を計算し、ステップS6でスロットによる吸い込みが必要か否かの判断を行い、スロットSによる吸引が不必要と判断されれると、ステップ7に進みジェット吹き出し流量の調整のみで、はく離制御を行う。一方、スロットSによる吸引が必要と判断されるされ場合にはステップS8に進み、ステップS9で差圧を計算し、ステップS10ではく離制御目標が達成されたか否かの判断を行い、吸い込み量を制御する必要がある場合にはステップS11に進み、吸い込み量を制御するバルブ20を制御する。制御目標が達成されると、制御プログラムが終了する。制御は終了してもシステムが停止しない限り、常に差圧は計測しているので、流れ場の状態が変化した場合は、制御は自動的に再スタートする。つまりシステムはステップS6の判定でジェット吹き出しのみの制御で対応可能と判断すれば図4ループAで制御を行い、一方、ジェットの吹き出しのみでは制御できず吸い込みが必要と判断された場合、図4ループBの制御に入りシステムはステップS8に進み、ステップS10ではく離制御目標が達成されたと判断するまで吸い込み制御を併用してはく離を制御する。こうした制御を繰り返しおこないながらジェット吹き出しノズルからの吹き出しおよび吸い込み量を制御することではく離を能動的に防止することができる。
【0019】
次に、従来装置による制御状態と、本発明に係る装置の制御状態を図5(イ)、(ロ)に示す。この図からも明らかなように、より短時間で制御目標が達成されることが明らかである。
【0020】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。
【0021】
【発明の効果】
以上の詳細に説明した如く、本発明によれば、スロットによる吸引作用を働かせることにより、ジェット吹き出しの縦渦発生装置としての重要なパラメータであるジェット吹き出しピッチ角の影響および制御1ステップ当たりのジェット吹き出し量の調整を考慮し、制御目標を達成するまでの時間短縮を図ることができる、また、ディフューザの開き角がより広がった場合においてもはく離を制御することが可能となった(吸い込み作用をするスロットを使用することによりはく離制御可能なディフューザの開き角度を増大させることができるようになった)、等の優れ効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るはく離防止装置の測定部の拡大斜視図である。
【図2】スロットによる吸引部の詳細図である。
【図3】本はく離防止装置の制御ブロック図である。
【図4】同制御ブロック図における制御フローチャート図である。
【図5】従来装置による制御状態と、本発明に係る装置の制御状態との比較図である。
【図6】 従来装置の風洞の平面図である。
【図7】 図6中のA部拡大断面図である。
【図8】 図6中のA部拡大斜視図である。
【図9】 図8中のノズル部の拡大斜視図である。
【図10】 はく離防止装置の制御システム図である。
【図11】 同フローチャート図である。
【符号の説明】
1 ジェット吹き出しノズル孔
2 第1静圧孔
3 第2静圧孔
4 ロータメータ
5 吸引スロット
6 タンク
7 コンプレッサー
8 差圧検出器
9 A/D変換器
10 D/A変換器
11 風速計
12 熱線プローブ
13 コンピュータ
14 I/Oボード
15 モータドライバー
16 ステッピングモータ
17 モータドライバー
18 ステッピングモータ
19 充填ボックス
20 バルブ
21 充填ボックス
22 ブロアー
25 バルブ
Claims (5)
- 主流を流す流路の下流側に角度調節可能なディフューザを設け、主流の流路内およびディフューザ部には静圧を測定する静圧孔を備え、さらにディフューザ上流にジェットを吹き出すノズルを設けてなるジェット吹き出しによるはく離防止装置において、前記ディフューザには吸い込み作用をするスロットが形成されていることを特徴とする能動的はく離防止装置。
- 前記スロットははく離の状態に応じて吸い込み量を制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の能動的はく離防止装置。
- 請求項1または請求項2に記載の能動的はく離防止装置において、主流を流す流路内の静圧とディフューザ部での静圧を比較し、はく離が生じている時には、ディフューザの上流においてジェットを吹き出すか、さらには、ディフーザ部において吸引作用を働かせ、はく離を防止することを特徴とする能動的はく離防止方法。
- 吸い込み作用をするスロットを使用することによりはく離制御可能なディフューザの開き角度を増大させることができるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の能動的はく離防止方法。
- 流れ場の状態変化をシステムが判断し、制御1ステップ当たりのジェット吹き出し流量を毎ステップごとに計算して求めることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の能動的はく離防止方法。
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