JP3770698B2 - 遠心分離法及び遠心分離機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散媒と分散質とを含む分散系に遠心力を加えて上記分散系を分散媒と分散質に分離する遠心分離法及び遠心分離機並びに該遠心分離機を組み入れた自動合成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、分離しにくい液体と液体又は液体と固体とを分離するために、遠心力を利用した遠心分離機が知られている。一般に、遠心分離機は、回転軸と、この回転軸を回転させるための手動式又は電動式の回転機構と、回転軸に固定した棒状又は円盤状の支持部材と、回転軸を中心とする円の接線方向に延びる水平軸によって支持部材に支持されると共に上記回転軸に対称に配置された複数の遠心分離管とを備えている。この遠心分離機では、回転軸を中心として対称位置にある複数の遠心分離管に分散系を均等に入れて回転軸を回転すると、各分離管の中でそれぞれ分散系が分散媒と分散質が層状に分離される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の遠心分離機では、分散系を分散媒と分散質とに分離するのに多くの時間を要するという問題があった。
【0004】
また、分離処理前に、回転軸を中心として対称位置にある複数の分離管に分散系を計量して均等に分配しなければならないし、分離後に分配した分散系を再び回収しなければならない。
【0005】
さらに、各分離管に収容できる分散系の量が少なく、所定量以上の分散系を分離するためには何度も操作を繰り返さなければならない。
【0006】
さらにまた、遠心分離中に分散系が完全に分散媒と分散質とに分離したか否かを確認できなかった。
【0007】
そして、遠心分離処理を合成装置の中で自動的に行うことができず、合成装置の完全自動化の支障となっていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、新たな遠心分離法と、分散系を短時間で分散媒と分散質に分離可能な改良された遠心分離機を提供すること、分離に先だって分散系を計量して均等に分配する必要のない遠心分離機を提供すること、一度に多くの量の分散系を分離処理できる遠心分離機を提供すること、遠心分離中に分散媒と分散質の分離状態を目視確認できる遠心分離機を提供すること、自動合成装置の抽出工程に好適に利用可能な遠心分離機を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明にかかる遠心分離法は、分散媒と分散質とを含む分散系に遠心力を加えて上記分散系を分散媒と分散質とに分離する遠心分離法であり、所定の軸について対称な形状を有する容器に上記分散系を導入する工程と、上記容器を上記軸の周りで回転する工程とを含む一方、本発明にかかる遠心分離機は、所定の軸について対称な形状を有する容器と、上記容器を上記軸の周りで回転する回転機構とを有する。
【0011】
本発明にかかる遠心分離機の他の形態は、所定の軸について対称な形状を有する容器と、上記容器を保持する保持部と、上記保持部を上記軸の周りで回転する回転機構とを有する。
【0012】
本発明にかかる遠心分離機の別の形態は、所定の軸について対称な形状を有する容器と、上記軸の方向に関して容器の一端側を保持する第1の保持部と、上記第1の保持部を上記軸の周りで回転可能に支持する第1の支持部と、上記第1の保持部を回転する回転機構と、上記軸の方向に関して容器の他端側を保持する第2の保持部と、上記第2の保持部を上記軸の周りで回転可能に支持する第2の支持部とを有する。
【0013】
上記遠心分離機では、上記容器は透明容器であるのが好ましい。
【0014】
また、少なくとも一つのチューブを備え、上記容器の内部に延びて上記分散系を容器内に導入しかつ分離された分散系を導出することができる送液手段と、上記容器内に負圧を導入する手段と、上記容器内に正圧を導入する手段とを設けるのが好ましい。
【0015】
さらに、分離された分散系を導出するチューブは、液体固有の導電率から導出される液体を識別する導電計を備えているのが好ましい。
【0016】
上記遠心分離機には、上記容器の口部の周縁と密着可能な環状シール部材と、該シール部材を容器の口部に接触離間させる接離機構と、上記シール部材と共に、該シール部材が容器の口部に密着しているとき、上記チューブの周りに、容器内に連通した密閉空間を形成する手段とを有し、上記負圧を導入する手段と正圧を導入する手段は、上記密閉空間と容器内に負圧と正圧をそれぞれ導入可能であることが好ましい。
【0017】
上記遠心分離機は合成装置に組み入れて使用するのが好ましい。
【0018】
【発明の作用効果】
本発明の遠心分離法によれば、液体と液体又は液体と固体からなる分散系を短時間で分離できる。また、容量の大きい容器を使用することができ、一度に大量の分散系を分離処理できる。さらに、従来の遠心分離機では分離処理前に分散系を正確に計量して複数の分離管に均等に分配する必要があったが、そのような面倒な作業は不要であることから、分離処理が簡単かつ容易に行える。さらにまた、容器が透明なものでは、分散系の分離状態や分離の終了を容易に目視確認できる。そして、本発明の遠心分離機を用いることで合成装置の完全自動化が可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1,2は遠心分離装置10を示し、この遠心分離装置10は携帯可能な箱12を有する。箱12は、上方を開放した本体14と、本体14の上部開口部を覆う蓋16とからなる。蓋16は、本体14の上端部に設けた図示しない丁番等のヒンジ機構を介して閉鎖位置と開放位置との間を移動し、留め金具18によって閉鎖位置で固定できるようにしてある。本体14の一つの側壁20には観察窓22が取り付けてあり、内部で行われる遠心分離処理の状態が観察できるようにしてある。
【0020】
図3は箱12の内部に収容されている種々の装置を示す。フレーム24は、箱12の底部に水平に固定された第1の支持部即ちベース26を備えている。ベース26には円形開口部28が形成されている。ベース26には、円形開口部28の鉛直軸30を中心とする仮想円上に複数(本実施形態では3本)の支柱32が等間隔に設けてあり、これら支柱32の上部に第2の支持部即ちフランジ34が着脱自在に取り付けてある。フランジ34は、円形開口部28の鉛直軸30を中心とする円形開口部36が形成されている。
【0021】
ベース26の円形開口部28には、第1の容器保持部38がベアリング40を介して回転自在に収容されている。容器保持部38は、鉛直軸30を中心とする実質的に半球状の窪み42を有する。窪み42の曲率と形状は、遠心分離装置10の分離処理で用いる容器(具体的にはフラスコ)44の底部形状で決まる。容器44は、実質的に球形の本体46と、該本体46の上部から上方に延びた口部48とからなり、鉛直方向に延びる軸(鉛直軸30に一致する。)について対称な形状としてある。従って、窪み42の形状は容器44の底部形状に対応して実質的に半球状としてある。また、窪み42の径は容器本体46の径よりも僅かに大きくしてあり、窪み42の中央部と周縁にゴム又は布などの柔軟なクッション50,52をそれぞれ貼りつけて、窪み42の中で容器44が安定して保持されるようにしてある。
【0022】
容器保持部38を回転するために、容器保持部38はその底部に鉛直軸30上に中心を有する軸54を有し、この軸54にプーリ56が回転自在に取り付けてある。また、プーリ56に回転を伝えるためのモータ58はベース26に固定されており、その回転軸60に固定したプーリ62と上記プーリ56が無端ベルト64で駆動連結されている。したがって、モータ58を駆動すると、回転軸60の回転がプーリ62,ベルト64,プーリ56を介して容器保持部38に伝えられる。
【0023】
フランジ34の円形開口部36には、円筒形の軸受66が同心的に着脱自在にはめ込まれている。軸受66にはベアリング68を介して容器口部48とほぼ同じ長さのステンレスからなる円筒状の第2の容器保持部70が回転自在に取り付けてある。第2の容器保持部70は容器44の口部48に外装されて固定されており、これにより回転する容器44の口部48を正しく鉛直軸30上に保持する。
【0024】
容器44の内部には、分散液(分散系)を導入するための導入チューブ72と、分離された液を導出するための導出チューブ74と、容器44内に負圧及び正圧を導入するための圧力チューブ76が、容器44と接触することなく差し込まれている。チューブ72と76の先端(導入側)は口部48の基部近傍に止めてあり、チューブ74の先端は本体46の底部近傍に該底部と僅かな隙間を置いて止めてある。チューブ72,74,76は蓋16に設けた開口部78を塞いでいるシールパッキン80を貫通して外部に延びており、このシールパッキン80によってチューブ72,74,76は図示する位置に移動不可能に保持されている。
【0025】
容器44からシールパッキン80までのチューブ72,74,76の部分は蛇腹式の筒82で覆われている。蛇腹筒82の上端部は蓋16にシール接続してある。他方、蛇腹筒82の下端部には実質的に円筒状のリング84がシール接続してある。また、リング84の下面には容器口部48と実質的に同一の内径を有する環状パッキン86が貼りつけてある。
【0026】
リング84は昇降機構88に支持されており、図3に示すように、パッキン86が容器口部48の上端に接触して、蛇腹筒82とリング84の内側に、容器44の内部と連通した密閉空間90を形成する下降位置と、図4に示すように、パッキン86が容器口部48から離間している上昇位置との間を移動できるようにしてある。
【0027】
昇降機構88は、図3から5に示すように、一対のアーム92を有する。これらアーム92はリング84を挟んで配置されており、基端部94がシャフト96を介して蓋16に連結され、先端部98がそれぞれリング84の対称位置に回転自在に連結されている。アーム92はまたスプリング100によって蓋16に向けて付勢されている。また、アーム92は、図示しない部材を介して蓋16に固定したソレノイド102に連結されており、ソレノイド102を駆動することにより、リング84が上昇位置と下降位置との間を移動する。
【0028】
以上の構成からなる遠心分離装置10を使用する場合、図3に示すように、導入チューブ72は分散液(分散系)104を収容した容器106に接続する。導出チューブ74は弁108と110を介して分離された液を収容するための容器112と114に接続する。圧力チューブ76は弁116と118を介して圧力調整ポンプ120と容器112と114に接続する。
【0029】
次に、容器44に分散液104を導入する。このとき、昇降機構88のソレノイド102を駆動してリング84を下降位置に移動して容器口部48に接触し、蛇腹筒82とリング84の内側に密閉空間90を形成する。その後、圧力調整ポンプ120を駆動して容器44の内部と密閉空間90に負圧を導入する。これにより、導入チューブ72を介して分散液104が容器44に供給される。
【0030】
所定量の分散液104が容器44に導入されると、ポンプ120をオフする。また、ソレノイド102をオフする。これにより、アーム92はスプリング100により上昇し、パッキン86が容器44から離れる。続いて、モータ58を駆動して容器保持部38と容器44を回転する。モータ58の回転速度は段階的に、例えば500,2000,3000rpmへと上昇していく。分散液104は容器40の回転が上昇するに従って容器44の内面に沿って半径方向外側に移動し、最終的に分散液104は容器44の側部に環状に広がる(図4参照)。そして、時間の経過と共に分散液104は分散媒と分散質に分離し、例えば分散液104が水と油の場合には、水が半径方向外側、油が水の内側に別れる。
【0031】
ここで、未分離の状態では分散液104は透明度が低い。しかし、分散液104の分離が進むに従って分散液104の透明度が増す。そして、分散液104が完全に分散媒と分散質に分離すると、透明度が最大になる。この様子は観察窓22を通じて観察でき、分離の状態や分離が完了したか否か容易に判断できる。
【0032】
回転中、容器44は、本体46の底部が第1の容器保持部38で支持され、口部48が第2の容器保持部70で支持され、これにより鉛直軸30上に保たれる。また、容器口部48はそこにステンレスからなる容器保持部70が装着されているので、回転中の安定性が極めてよい。
【0033】
分離が完了すると、モータ58を停止する。このとき、モータ58を急激に停止すると、分離した液が再び混じり合うので、モータ58の回転速度は時間(約1分)をかけて段階的に減少する。
【0034】
モータ58が完全に停止すると昇降機構88のソレノイド102を駆動してリング84を下降し、パッキン86を容器口部48の上端部に密着する。次に、圧力調整ポンプ120を駆動し、圧力チューブ76を介して容器44と密閉空間90に正圧を導入する。その結果、導出チューブ74によりまず下層の分離液が押し出され、弁108と弁110を介して容器112に送り込まれる。下層の分離液に続いて上層の分離液が導出チューブ74により押し出される。上層と下層の分離液の境目を検出するために、導出チューブ74の基端部には、液体の電気伝導率を測定する導電計122が設けてある。導電計122の出力は制御装置124に接続されており、制御装置124は導電計122からの信号の変化を認識し、弁110を切り替え、上層の分離液を別の容器114に送り込む。
【0035】
水(150g)とサラダオイル(150g)を混合した液を遠心分離機10で遠心分離した。その結果、僅か5分で2つの液体は完全に分離できた。比較のために、同一の分散液を3時間放置したが、水とサラダオイルは全く分離しなかった。
【0036】
以上のようにして分離されて容器112,114に収容された液を再度遠心分離して抽出の効率を高めるようにしてもよい。そのために、図6の遠心分離機では、容器112,114に導出チューブ126,128が差し込まれており、これらが弁130,132を介して導入チューブ72に接続されている。この形態では、圧力調整ポンプ120により容器112又は114に正圧が導入されると、容器112又は114に収容されている液がチューブ126又は128、さらに導入チューブ72を介して容器44に導入され、上述のようにして分離される。
【0037】
なお、容器44には分散液だけでなく、溶媒を導入するようにしてもよい。そのためには、例えば図6に示すように、溶媒を収容した容器134,136を弁138,140を介して導入チューブ72に接続すればよい。
【0038】
上記遠心分離装置10は抽出分離機としても利用できる。この場合、例えば物質Aを分散させている液X(例えば反応生成液)と、この液Xと異なる溶解度の液Yとを容器42に入れ、容器42内を加圧又は減圧してバブリングを行った後、容器42を回転させて液を分離し、さらに導電計を利用して分割する。
【0039】
また、以上の説明では液体と液体とを分離する場合を説明したが、液体と固体との分散液を分離することも可能である。この場合、図7、8に示す容器142、242が好適に使用できる。容器142、242は、本体144、244の中段よりもやや下に内側に突出した段部を146、246を有する。そのため、液体から分離された固体は段部146、246の上で容器142、242の側面に付着し、容器142、242の回転を停止した後に、固体が液体に再び分散することがない。
【0040】
さらに、以上の説明では、2種類の液体からなる分散系を遠心分離する例を示したが、3種類以上の液からなる分散系を遠心分離する事も可能である。
【0041】
さらにまた、以上の説明では携帯可能な遠心分離機を説明したが、各種の化学装置(例えば、自動合成装置における抽出工程)の中に固定して使用できることは当然である。
【0042】
そしてまた、以上の説明では、チューブを上下することなく、昇降機構でリングを上下して容器内に正圧と負圧を導入可能とした。しかし、チューブを保持するパッキンを容器口部の上端部に接触離間させることにより容器内に正圧と負圧を導入可能としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる遠心分離機の側面図。
【図2】 本発明にかかる遠心分離機の平面図。
【図3】 パッキンを容器口部に接触させた遠心分離機の構成図。
【図4】 パッキンを容器口部から離間した遠心分離機の構成図。
【図5】 昇降機構の平面図。
【図6】 遠心分離機の他の形態の構成図。
【図7】 容器の他の形状を示す側面図。
【図8】 容器の別の形状を示す側面図。
【符号の説明】
10:遠心分離装置、24:フレーム、26:ベース、30:鉛直軸、38:第1の容器保持部、44:容器、48:容器口部、58:モータ、70:第2の容器保持部、72:導入チュ ーブ、74:導出チューブ、76:圧力チューブ、86:パッキン。
Claims (5)
- 分散媒と分散質とを含む分散系に遠心力を加えて上記分散系を分散媒と分散質とに分離する遠心分離機において、所定の軸について対称な形状を有する容器と、上記容器を保持する保持部と、上記保持部を上記軸の周りで回転する回転機構と、少なくとも一つのチューブを備え、上記容器の内部に延びて上記分散系を容器内に導入しかつ分離された分散系を導出することができる送液手段と、上記容器内に負圧を導入する手段と、上記容器内に正圧を導入する手段と、
を備えた遠心分離器。 - 分散媒と分散質とを含む分散系に遠心力を加えて上記分散系を分散媒と分散質とに分離する遠心分離機において、所定の軸について対称な形状を有する容器と、上記軸の方向に関して容器の一端側を保持する第1の保持部と、上記第1の保持部を上記軸の周りで回転可能に支持する第1の支持部と、上記第1の保持部を回転する回転機構と、上記軸の方向に関して容器の他端側を保持する第2の保持部と、上記第2の保持部を上記軸の周りで回転可能に支持する第2の支持部と、少なくとも一つのチューブを備え、上記容器の内部に延びて上記分散系を容器内に導入しかつ分離された分散系を導出することができる送液手段と、上記容器内に負圧を導入する手段と、上記容器内に正圧を導入する手段と、を備えた遠心分離機。
- 上記容器は透明容器である請求項1または請求項2のいずれかに記載の遠心分離機。
- 上記分離された分散系を導出するチューブは、液体固有の導電率から、導出される液体を識別する導電計を備えている請求項1または請求項2のいずれかに記載の遠心分離機。
- 上記容器の口部の周縁と密着可能な環状シール部材と、該シール部材を容器の口部に接触離間させる接離機構と、上記シール部材と共に、該シール部材が容器の口部に密着しているとき、上記チューブの周りに、容器内に連通した密閉空間を形成する手段とを有し、上記負圧を導入する手段と正圧を導入する手段は、上記密閉空間と容器内に負圧と正圧をそれぞれ導入可能な請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の遠心分離機。
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JP13477197A JP3770698B2 (ja) | 1997-05-26 | 1997-05-26 | 遠心分離法及び遠心分離機 |
Applications Claiming Priority (1)
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JPH10323581A JPH10323581A (ja) | 1998-12-08 |
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JPH10323581A (ja) | 1998-12-08 |
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