JP3723842B2 - Dna光学素子 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学素子、特に波数1cm-1のミリ波から波数500cm-1の赤外線までの遠赤外領域の広い波長領域の光に対するビームスプリッターとして作用する光学素子、すなわちフーリエ変換型赤外分光装置(FT−IR)をはじめとする各種赤外分光分析装置の干渉計におけるビームスプリッターとして用いられる光学素子、あるいは、光学窓、レンズ、プリズム等各種母材光学素子の表面に付与、適用することにより母材光学素子に対して上記波長領域において一定の透過特性、反射特性を付与し、さらには屈折率の調整、有害な反射の抑制等の光学薄膜設計材料として使用しうる一層又は複数層から成る光学素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
光の吸収、透過、反射、屈折等に基づく各種光学材料設計を利用した光学素子、機器は、いまや生活関連機器として、あるいは各種産業分野における必要機器として欠かすことが出来ないものであり、各種分野で定着している。その位置づけは、近年のめざましい技術開発と進歩に伴い、ますます広がりが増してきており、その重要度は高くなってきている。このような傾向は、赤外分光分析に使用される光学素子の開発においても同様である。すなわち、赤外分光分析装置においても、従来の限界を超えた精度のよい装置、機器の開発が求められている。そのため、周辺機器の開発とともに、光に直接関わるところの材料そのもののについても各種提言がなされ、余念なく開発がなされている現状にある。
【0003】
赤外分光分析装置は、光源から赤外光を試料に照射し、試料によって吸収される量を分光スペクトルとして求め、これによって試料を同定、定量したり、分子レベルの構造解析を行う等の分析に使用され、各種技術分野において用いられている。フーリエ変換型赤外分光分析装置(FT−IR)は、そのための典型的な装置であり、工学、化学、薬学等の広い分野の研究開発に不可欠の基本的な測定器として位置づけられている。特に、この装置の開発、進歩によって、近年遠赤外領域での研究、利用が急速に進歩を遂げているといわれている。
【0004】
この分光分析装置は、光を処理する一連の部品より成る光学系装置、光学系を制御する機械的、あるいは電気的制御系装置、さらには得られたデータをコンピューター処理するハードとソフトからなるコンピューター装置から成り立っている。この分光分析装置を構成する各装置、あるいは各装置を構成する要素等は、その一つを欠いても測定不可能ということになり、何れも重要ではあるが、ここでは、その一々を挙げることは本旨ではないので、原理的に重要な部品、要素のみに限って列記すると、光源、干渉計、検出器、データ処理ソフトウェア部に集約される。
【0005】
本発明は、その中の干渉計に使われるているビームスプリッタに着目し、これまでの設計においては使用されたことがなかった新規な材料を用いたビームスプリッタを開発することにより、分析精度を一層向上せしめようとするものである。
すなわち、干渉計は光源からの光を一定周波数に変調する機能を有するものであるが、この干渉計には、光を反射光と透過光に分けるビームスプリッタが使われる。干渉計は、ビームスプリッタに加えて固定鏡、移動鏡によって構成され、干渉計に入光した光は、ビームスプリッタによって固定鏡と移動鏡に分配され、固定鏡からの反射光と、位相差の異なる移動鏡からの反射光を再び合成して干渉波形を生じさせるよう各構成部品が配置、セットされている。フーリエ分光分析装置は、この波形をフーリエ変換することで、横軸が波長(波数)、縦軸が検出光強度によって示されるスペクトルを得ることが出来るようにした機器装置である。
【0006】
上記概略したフーリエ分光分析装置、およびこの装置を構成する干渉計等は、広い波長領域で使用しうることが望ましいことは当然の要求ではあるが、現状はすべての波長領域に対して測定しうるには至っていない。また、直接光に関わる部品の機能には、自ずと限界があり、測定しようとする波長領域に合わせて、光源、ビームスプリッタ、検出器等を交換しなければ成らない。通常、この分光装置は、光に直接関わる光学素子部品は交換可能に製作され、取り付けられている。 普通赤外用の光学素子部品から遠赤外光学素子部品まで波長領域に合わせて最適な部品が提供、用意されており、この用意されている中から選択、交換することによって普通赤外から遠赤外までの測定が可能となる。しかし、その使用可能な範囲は、与えられた部品のもつ特性の範囲内でのことであって、その特性範囲を超えてそれ以上に使用波長領域の範囲を広げようとしても、これは出来ない。すなわち、既存の中から選択によるときには、自ずと限界がある。
【0007】
このことは、光学素子としてのビームスプリッタにおいても、例外ではない。すなわち、ビームスプリッタにおいても、その使用しうる波長領域には、限界があり、この限界は、ビームスプリッタとして使用している膜の材料に依存している。したがって、その限界を超えるものを作製しようとすると、ビームスプリッタの材料そのものを選択し、あるいは開発しなければならない。換言すれば、FT−IR分光装置の扱える波長領域は、ビームスプリッタの材質によって決定されてしまう、といっても過言ではない。特に、遠赤外低波数側領域は、ビームスプリッタの材質特性によって制限され、これを越えてさらに低波数側へ拡張することが出来なかった。
【0008】
ちなみに、従来提供されてきた遠赤外領域のビームスプリッタとしては、ポリエチレン(マイラ)膜を挙げることができる。その扱える領域は誘電率と厚さに依存するが、概ね20cm-1の低波数領域を扱おうとすると、膜による吸収とFabry-Perot干渉効果とのかねあいのため、取り扱える波数領域は自ずと狭い範囲に限定される。この制限を取り払う工夫として、ゲルマニウムやシリコン等のこの領域で比較的大きな誘電率をもつ物質をポリエチレン表面に積層し、多層のスプリッタを構成することが行われているが、これを提供、製造するためには真空蒸着装置等の高価な設備を必要とするばかりでなく、技術的にもその予定する面全体に均一な積層を確保する等の品質管理に困難を伴い、しかもこのような処理によって得られたものは脆く、わずかな外力によってもひび割れや剥離を起こすため、安易に取り扱うことは出来ないという困難があった。
【0009】
以上は、光学素子が専ら赤外分光分析装置のビームスプリッタ、特にマイラとして用いられ場合について言及したが、これに限らず、光学技術一般に、光学素子、例えば、光学窓、レンズ、プリズム等の光学素子の設計においては、これら光学素子の母材となる素子を作製、用意し、その母材光学素子表面上に、薄膜を形成する二次加工を施すことによって設計すること、この薄膜設計によって、もとの母材光学素子に対して光学上の機能を補完すること、例えば有害な反射を抑制したり、特定波長のみを透過する等の新たな光学上の性質を付与、調整することが行われている。この場合、設計の良否は、薄膜を形成する工程管理は勿論のこととして、基本的には用いる材料によることは赤外分光分析装置の干渉計におけるマイラーの場合と同様である。すなわち、光学素子の設計技術においては、母材光学素子に被覆する薄膜についても常に新規な光学素材の開発、提供が求められている。本発明は、このような要請に対しても、これに応えようとするものである。
【0010】
【発明が解決しようとしている課題】
本発明は、従来の技術では広い波数領域に適用される光学素子を構成しようとすると、(0008)で述べたように、製造に特殊な装置を必要としたり、取り扱い上の困難が生じたりしたのに対して、特殊な装置を必要とせずに容易に製造することができ、ミリ波から遠赤外領域も含めた広い範囲で使用できる取り扱いの容易な光学素子を提供しようというものである。
すなわち、遠赤外光学素子、特にフーリエ変換型分光光度計におけるビームスプリッタとして、ミリ波から遠赤外領域にかけての広い範囲で使用できる取り扱いの容易な光学素子を提供しようとするものであり、これにより従来のものと比べ扱いやすく、分析精度の向上した装置を提供しようとするものである。
【0011】
加えて、光学素子設計技術一般に採用されている薄膜形成技術において、膜形成材料として使用しうるものを求める技術的要請に対しても、これに応えうる薄膜光学素子材料を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、特に赤外分光装置を使用して研究する立場から、ビームスプリッタについてより優れたものを長年希求し、鋭意研究してきたところ、特定の物質、すなわちDNAを光学素子材料として使用することによって、より低波数側遠赤外領域においてもビームスプリッタとして使用可能となること、あるいは薄膜を形成することによって、母材光学素子に所望とする光学的性質が付与されるよう調整するための材料として使用し得ることを偶然知見したものであり、本発明は、この知見に基づいているものである。
【0013】
すなわち、本発明の第1番目の解決手段は、光学素子の設計が、デオキシリボ核酸(DNA)を主要成分として用いることによって設計されることを特徴とするものである。
【0014】
第2番目の解決手段は、光学素子の設計が、デオキシリボ核酸(DNA)に変成剤を添加し、これによってデオキシリボ核酸(DNA)が変性されて用いられることを特徴とするものである。ここに変成剤を添加する理由は、DNAは本来水溶性であり、DNA単身によって構成された膜では、膜そのものの機械的、化学的性質に極めて安定性を欠き、実用的強度と安定性のある膜を得るのには困難であることより、この点を解決するための手段としての意義を有するものである。
【0015】
第3番目の解決手段は、該変成剤が一般式;R123+-(R1、R2、R3は水素または炭化水素基、X-はCl-、Br-等のハロゲンの陰イオン)で表される脂質アンモニウム塩、又は一般式;RCOOCH3NH2(Rはアルキル基)で表される脂質アラニンから選択される一種又は二種以上の陽イオン性脂質塩を選択、使用することを特徴とするものである。変成剤についてのこの具体的選択によって、前示問題を具体的に解決することが出来るものである。すなわち、この変性材は、炭化水素基等の親油基部分と、DNAに対してDNAの燐酸基に結合しやすいアミノ基とを有することが本質的に必要になるという点で選択されたものであり、この変性材の添加、使用によってDNAは有機溶媒に可溶となり、安定度のある膜に変性される。
【0016】
脂質を変えることによって、硬さ等の膜の機械的な性質は大きく変化するが、遠赤外素子としての特性には本質的な違いは、今のところ見いだされていない。
ただし、膜の安定度は遠赤外素子として用いるに当たって重要な要素であるので、脂質の選択について今後の研究に期待されること大であることは言うまでもない。
【0017】
ここに、本発明において用いられる上記化合物とその作用効果について、言及すると次のように要約することが出来る。
1.陽イオン性脂質塩が4級アンモニウム塩(一本鎖):Cn2n+13(CH3)N+-である場合
この場合、本発明において用いられるのは、n=12〜24くらいが適当である。さらにDNAを精製分離回収する操作の容易性に基づいて特定すると、n=16前後のものが好ましい。一般にnが小さすぎると水溶性が生じ、DNAの精製分離プロセスにおいて回収が困難になる。
2.陽イオン性脂質塩が4級アンモニウム塩(二本鎖):2(Cn2n+1)2(CH3)N+- である場合
この場合、n=8〜20くらいが適当である。DNAの精製が容易なのはn=12前後が好ましい。一般にnが大きくなるほど溶媒に難溶となり、完成後の膜は硬くなる。図4において示した特性は、n=12の場合(didodecyldimethyl ammonium bromide)である。
3.陽イオン性脂質塩が1級アミン:(Cn2n+1)H3+-である場合
この型の場合も、nの値による作用効果は、上記2の場合とほぼ同様であることがわかった。すなわち、n=8〜20くらいが適当であり、n=12前後が好ましい。
4.脂質アラニン:(Cn2n+1)-L-Alanine
この型の場合も、nの値による作用効果は、前示2、3記載の場合と同様であることがわかった。n=8〜20くらいが適当である。n=12前後のものが好ましい。
【0018】
第4番目の解決手段は、光学素子が一層又は複数層の薄膜状で用いられることを特徴とするものである。
【0019】
第5番目の解決手段は、光学素子が波数1cm-1のミリ波から波数500cm-1の赤外線までの遠赤外領域の広い波長領域の光に対するビームスプリッターとして用いられることを特徴とするものである。
【0020】
第6番目の解決手段は、ビームスプリッターが赤外分光分析装置における干渉計に装着されて用いられること、第7番目の解決手段は、この赤外分光分析装置にはフーリエ変換型赤外(FT−IR)分光分析装置が含まれていることを特徴とするものである。
【0021】
第8番目の解決手段は、光学素子が母材光学素子の表面に形成された薄膜であることを特徴とするものであり、第9番目の解決手段は、母材光学素子には光学窓、レンズ、プリズムが含まれること、そして第10番目の解決手段とするところは、この被覆膜が被被覆母材光学素子に対して屈折率の調整、透過光の選択、あるいは有害な反射光の抑制を目的とする光学被膜設計材料として用いることを特徴とするものである。なお、かかる光学被膜設計自体は、常套手段とするところであるが、本発明は、光学素子材料として新規なDNA光学素子材料を提供している点でその意義が大きい。
【0022】
本発明の光学素子は、すべてDNAから成っているものから、光学的に均質なものが得られる限り、種々の変性材料を用いることが可能である。ただし、DNA単身の場合には、膜自体は、機械的に弱く、また水溶性であることから水分等に対して変質を受けやすい傾向にあり、不安定であることより、実用的には、変性材料によって調製されることが好ましいことは、前示(0014)にも記載したとおりである。その場合、変性材料の添加割合、配合割合については適宜決定すればよく、広い範囲で実施することが可能である。 すなわち、本発明による光学材料は、DNAを少なくとも材料の一部として用いるものであり、その製造過程で種々の変性材料を添加し、これによって所望とする物性に応じ、膜の性質を制御することが可能である。
【0023】
本発明によって得られた光学素子の特性について例示すると、図4に示すとおりの反射スペクトル、透過スペクトルを有している。図4に示されている例によれば、波数が概ね波数1cm-1のミリ波から波数500cm-1の赤外線までの遠赤外領域の広い波長領域で用いることができ、これを従来の技術と比較すると、従来技術においては、20cmー1 以下の低波数領域については扱うことに困難なことや問題があり、いうなれば一つの限界があったところ、本発明のものは、この限界を超えた領域のところまでも扱うことが可能となったことを意味し、この点で優れた特徴を持っていることが明らかとなった。このことは、分析機器の高度化に対するニーズの高まりを考慮すると、そしてその中でも、ますますFT−IR分光装置に負うところ大となってきている近年の現状を考えると、単に機器の進歩というのみ成らず、その成果たる各種研究に果たす影響は大なるものがあり、その意義は大きい。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の光学素子を、赤外分光分析装置、特にフーリエ変換型遠赤外分光分析装置における干渉計において使用されるビームスプリッタに基づいて説明する。ビームスプリッタは、目的とする波数領域で光を入射したとき反射光と透過光とに分配する機能を持つもので半透鏡とも言われており、その構成は基本的には膜と膜を支える枠体とから成っており、その構造自体は公知の事実であって、極めてシンプルな構造を呈している。
【0025】
すなわち、ビームスプリッタ自体は、一般的に市販されており、取り扱う波数領域に応じて、可視用、赤外用、遠赤外用など多数用意され、所望とするものを容易に入手することができる。
図1、図2に示すビームスプリッタも、その一例すぎず、これ以外にも様々なものが提案されている。本発明は、図1、図2に示されているビームスプリッタにおいて、発明の対象としているところは、光を反射光と透過光に二分する作用を奏する膜そのものに関するものである。すなわち、この膜自体が発明に該当しているところである。
【0026】
ここに、ビームスプリッタの構成を図1に基づいて説明する。
ビームスプリッタ1は、外枠2と膜3からなっている。この外枠2は、さらに上下二枚の分割枠2’、2”からなり、膜3はこの二枚の分割枠2’、2”によって周辺部が挟持され、枠体にあけられたネジ穴にネジ4が螺入されることによって一体に固定され、ビームスプリッタ1が完成する。(これは、膜の中心部に穴が形成されている図2の場合も基本的には同様である。)すなわち、後述する実施例に開示した製造方法に基づいて調製したDNA膜3は、ビームスプリッタ1の外枠2に対応する形状に加工され、次いで外枠2を構成する上下2枚の枠体2’、2”にてその加工された膜周端部を挟持し、図示されているネジ穴4よりネジ(図示外)にて枠体に固定される。その際、膜は弛みなく、しかも応力が残留しない程度に緊張し、ネジ止めによってスプリッタの枠体に一体化され固定される。
【0027】
ここに前示両図は、何れも、DNAを材料として製作した膜から作製された遠赤外用ビームスプリッタであって、その一つは、枠体と膜によって構成されている態様(図1)であり、もう一つは、フィルムの中心に穴が形成されている態様(図2)の二つの態様が示されている。図2の態様は、その中心穴には可視光用のビームスプリッタを装着し、このビームスプリッタに可視レーザー光をあてて、光学系機器の微調整が容易に行い得るように構成されたれたビームスプリッタであることは、前述したところでもある。
【0028】
図1、図2に示された例は、赤外分光分析装置において設置されている架台(図示外)に交換可能に取り付けられる構造に設定されている例であるが、この図に示された形状、構造あるいは取り付け態様に限られるものではない。すなわち、これらの事項については、既にいろいろな態様のものが市販され、公知のことであり、本発明はかかる事項自体に本旨があるわけではないので、その態様の開示については、従来技術にその詳細を委ね、ここでは図に基づく紹介のみにとどめ、省略する。
【0029】
【実施例】
次に、本発明のビームスプリッタの製作プロセスについて開示する。この製作プロセスは(1)DNA光学素子膜の製造プロセスと、(2)該膜をビームスプリッタに組み立てるプロセスとから成っており、以下の通りである。
(1)DNA光学素子膜の製造プロセス
i. まず、市販されているDNA塩(これについては、後述する)1gを1リットルの蒸留水に分散、溶解させ、これに陽イオン性脂質塩水溶液を滴下する。 使用する陽イオン性脂質塩としては、脂質アンモニウム塩(R123+-、R1、R2、R3は水素または炭化水素基、XはCl、Br等の陰イオン)、脂質アラニン(ROOCH3NH2)等が挙げられる。
ii. 脂質塩がDNAの燐酸基に対して1当量よりやや過剰となった時点で滴下を終了し、DNAをDNA脂質複合体沈殿物として析出させ、遠心分離によって沈殿物を回収する。
iii. 回収されたDNA脂質複合体は必要に応じて蒸留水およびジエチルエーテルにより洗浄し、50mlの溶媒(クロロホルム:エタノール=4:1)に溶解し、不純物を濾別した後ジエチルエーテル中に滴下し、沈殿物を遠心分離することにより回収する。
iv. 得られたDNA脂質複合体は、10mlの溶媒に再度溶解し、このDNA溶液を製膜原料溶液とする。このDNA溶液を、製膜容器Fに注ぎ入れ、静置する。
この製膜容器Fは、図3に示すように上部枠体Fu、下部枠体Fd、平板状基材B1又は母材B2から成っている。すなわち、平板状の基板B1ないし母材B2は上下分割枠体Fu、Fdによって挟み込まれ、ネジSによって一体化される。DNA溶液が注ぎ込まれる側の面には、枠体に沿ってOリングが施され、これによって液密に保たれている。
ここに使用する基板B1あるいは母材B2の材質は、DNA溶液と反応しないものであれば、特に制限はない。例えば、石英ガラスをも含めたガラス基板が挙げられるが、これ以外にも、シリコン基板、ステンレス製基板、さらには、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン等、種々の有機高分子材料で出来ている基板も挙げられる。基板には必要に応じて研磨等の表面処理が施される。母材上に薄膜を形成し、多層のビームスプリッタとして用いる場合は、母材としてポリエチレン等の遠赤外材料等が用いられることはいうまでもない。
v. 次に、該容器Fに注ぎ込まれたDNA溶液は、概ね飽和蒸気圧を保ちつつ溶媒を徐々に蒸発させることにより基板表面ないし母材表面上に乾燥した目的とするDNA脂質複合体膜を得る。
上記の分量は、収率の良否の如何にもよるが、概ね厚さ0.1mm面積100cm2程度の膜に対応している。この値は、通常、ビームスプリッタを組み立てるには充分な値でもあるが、必要に応じて分量を加減する。すなわち、膜厚は溶液の濃度と量に依存するので、得ようとする膜厚に応じて、これらの量を調整する。
vi. 得られたフィルムは、単層で用いるよう設計された場合は、基板から剥離し、また母材とともに多層で用いるよう設計された場合は、薄膜を母材ととも一体にして取りはずし、必要に応じて裏面にも同様の薄膜を形成した上、ビームスプリッタの枠体に対応した形状に裁断加工し、後述する(2)ビームスプリッタ組立てプロセスに記載する手順によって、ビームスプリッタに加工される。
【0030】
ここで使用したDNAは、鮭の白子から分離した鮭由来のDNAである。これまで、鮭の白子は、特に北海道では、水産加工廃棄物として毎年大量に廃棄されていたが、近年、その有効利用を図るべく、また地域振興の一環として、鮭の白の有効利用方法として、DNAが試薬として分離されている。DNA鎖の長い高品位製品、DNA鎖の短い低品位製品まで、種々のものに分類されて市販され、容易に手に入れることが出来る。上記実施例においては、試薬として市販されている鮭由来の中品位製品のDNAを購入し、使用した。
【0031】
(2)ビームスプリッタの組み立てプロセス
(1)に記載するDNA光学素子膜の製造プロセスで得られた膜を、ビームスプリッタの上下二枚の外枠によって挟持し、ネジによって固定することにより図1、図2に示すビームスプリッタを得る。ここで用いるビームスプリッタの外枠は、(1)の製膜操作において使用した製膜容器の枠体をそのまま使用し、この枠体をビームスプリッタの外枠として兼用することができる。
なお、図2はフィルムの中心に穴を設けた態様のビームスプリッタを示すものであるが、その意義は、この穴には必要に応じて可視光用のビームスプリッタを装着し、干渉計の調整に用いることができるようにした態様の構成であることは前示したとおりである。
【0032】
(3)性能評価
得られたDNA光学素子膜の性能は、図4に示すとおりであった。すなわち、図4は、DNA脂質複合体膜の遠赤外領域における透過及び反射スペクトルを示しているものであるが、これによれば、上記の方法で得られたDNA脂質複合体膜は、概ね波数1cm-1のミリ波波数から波数500cm-1の赤外線までの遠赤外領域の広い波長領域において適度な透過率と反射率をもっていることが示されている。この反射にみられる干渉パターンから100cm-1近傍において、膜はおよそ屈折率2近傍の値を有していることがわかる。特に20cm-1以下の低波数領域においても依然として反射率の低下が見られず、1cm-1の遠赤外ミリ波領域に至る所までも取り扱うことが可能であることが明らかとなった。
【0033】
この実施例においては、鮭由来の中ないし低品位のものを使用したが、DNAの種類による影響等について現時点で言えることは、遠赤外光学素子としては、どれを用いてもさほど性能に大きな差は見いだされてはいない。しかし、このような利用、研究は今緒についたばかりであり、DNAの種類による作用効果の違い、影響等については、今後の研究に待つところ大である。
【0034】
次に、本発明の母材光学素子に対する表面被覆膜として用いる態様について記載する。この態様の意義については、概略は、既に述べたところである。
すなわち、本発明でいう表面被覆膜は、光学窓、レンズ、プリズム等各種母材光学素子に対して、屈折率の異なる膜を種々の厚さに積層することにより、特定の帯域のみ透過するバンドパスフィルターを構成したり、光学素子表面での反射を制御したりすることを可能とする技術をいうものである。簡便なものでは例えば、目的の波長に対して1/4波長となるような単層コーテイングを施すことにより、光学素子表面での有害な反射を抑制するのに利用される。
【0035】
この表面被覆膜の設計方法は、既に確立されており当業者において周知のところである。この被覆膜は、ビームスプリッタの製造方法(0029)で述べたiv段階と同様の手順によって製作される。すなわち、まず被膜を付与する母材光学素子を、図3に示す製膜容器Fを治具として用い、その製膜基材B1、母材B2に代えてセットする。DNA溶液を注ぎ入れ、以下、同様の手順でで溶媒を蒸発させることにより、母材光学素子表面に目的とする薄膜を得る。多層膜とする場合は、溶媒蒸発後、更に第2液を注ぎ入れ、以下同様の手順を繰り返すことによって行うことが出来るが、スパッタや蒸発等の他の手段と複合させることも出来る。 本発明は、光学素子材料として新規なDNA光学素子材料を提供している点で、すなわち、遠赤外領域においても適度な屈折率をもつ有用な素材を提供している点で、表面被覆膜形成技術に対して一定の役割を果たし得ることが期待される。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、DNAを遠赤外光学素子材料の少なくとも一部として使用することを要件事項とするものであり、これにより真空装置等の特殊な装置を必要とせず、簡便に高性能な遠赤外光学素子を提供することが可能となった。また、この光学素子材料の提供により、光学素子設計の自由度が高まることになることのみならず、各種表面被膜形成技術に基づく素子の開発、精度の向上に大きく資するものある。
【0037】
【図面の簡単な説明】
【図1】DNA遠赤外ビームスプリッタの概要図。
【図2】DNA遠赤外ビームスプリッタの概要図。中心部に穴のある態様。
【図3】DNA製膜容器の概要図。
【図4】DNA脂質複合体フィルムの透過および反射スペクトル。ここでは脂質塩としてはdidodecyledimethlyammonium bromide が用いられた。
【符号の説明】
1;ビームスプリッタ
2;外枠(ビームスプリッタの枠体)
2’、2”;上下分割枠
3;DNA膜
4;ネジ
5;中心穴
F;製膜容器
Fu;製膜容器の上部枠体
Fd;製膜容器の下部枠体
B;基材又は母材
S;上下枠体並びに基材又は母材を一体に固定するネジ

Claims (9)

  1. 波数1cm -1 のミリ波から波数500cm -1 までの遠赤外領域までの広い波長領域において機能する赤外分光分析装置におけるビームスプリッターにおいて、デオキシリボ核酸(DNA)を成膜し、得られた膜をビームスプリッター枠に取り付けてビームスプリッターとして使用することを特徴とする、赤外分光分析装置におけるビームスプリッター。
  2. 前記デオキシリボ核酸(DNA)の成膜の際には、変性材が添加されることを特徴とする、請求項1記載の赤外分光分析装置におけるビームスプリッター。
  3. 前記変性材が、一般式;R 1 2 3 + - (R 1 、R 2 、R 3 は水素または炭化水素基、X - はCl - 、Br - 等のハロゲンの陰イオン)で表される脂質アンモニウム塩、又は一般式;RCOOCH 3 NH 2 (Rはアルキル基)で表される脂質アラニンから選択される一種又は二種以上の陽イオン性脂質塩であることを特徴とする、請求項2記載の赤外分光分析装置におけるビームスプリッター。
  4. 前記膜が単層膜でビームスプリッター枠体に取り付けられることを特徴とする、請求項1記載の赤外分光分析装置におけるビームスプリッター。
  5. 前記膜が多層膜でビームスプリッター枠体に取り付けられることを特徴とする、請求項1記載の赤外分光分析装置におけるビームスプリッター。
  6. 前記膜が成膜の際で使用される母材光学素子と共にビームスプリッター枠体に取り付けられることを特徴とする、請求項1、4、5の何れか1項に記載の赤外分光分析装置におけるビームスプリッター。
  7. 前記膜が、母材光学素子に対して屈折率の調整、透過光の選択、あるいは有害な反射光の抑制を目的として設計されることを特徴とする請求項6記載の赤外分光分析装置におけるビームスプリッター。
  8. 前記ビームスプリッターが赤外分光分析装置における干渉計に装着されて用いられることを特徴とする、請求項1ないし7記載の何れか1項に記載の赤外分光分析装置におけるビームスプリッター。
  9. 前記赤外分光分析装置にはフーリエ変換型赤外(FT−IR)分光分析装置が含まれる請求項1ないし8記載の何れか1項に記載のビームスプリッター
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