JP3721105B2 - 組織検査法を利用する胃癌の切除手術後の予後検査方法 - Google Patents
組織検査法を利用する胃癌の切除手術後の予後検査方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3721105B2 JP3721105B2 JP2001251855A JP2001251855A JP3721105B2 JP 3721105 B2 JP3721105 B2 JP 3721105B2 JP 2001251855 A JP2001251855 A JP 2001251855A JP 2001251855 A JP2001251855 A JP 2001251855A JP 3721105 B2 JP3721105 B2 JP 3721105B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cancer
- cells
- mal
- derived
- cancer cells
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、癌に侵食された患部組織の切除後、切除された癌組織の検査結果に基づき、切除手術施行患者における予後の推定を行う方法に関し、より具体的には、胃癌に罹患された患者において、バイオプシーや外科的手術により患部胃癌組織の切除後、摘出された胃癌組織に関する組織検査法を利用して、胃癌の切除手術後の予後推定、特に、癌転移の危険性の推定を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、悪性腫瘍、特に、癌組織に侵食された臓器組織の切除・摘出が可能である場合、外科的手段により癌に侵された臓器組織を切除して、それ以上の癌組織の拡大を阻むことが行われている。例えば、消化器官の上皮組織に見られる癌のうち、胃癌と大腸癌に関しては、定期的な健康診断において、その早期発見の努力がなされ、発癌後、さほど進行していない時点でその罹患を発見する頻度が高くなっている。また、胃癌や大腸癌では、その癌組織に侵食された臓器組織の切除は、早期段階であれば比較的に容易であり、また、その患部の特質上、他の治療法の適用も困難であるので、第一の選択として、外科的な切除手術が施される。
【0003】
特に、胃癌において、外科的な切除手術は、癌組織を含む胃の相当部分を切除しても、再発、癌転移がなければ、ほぼ健康体に復する完治治療法となる。早期発見の取り組みと、外科的な切除手術の高い成功率により、胃癌手術後の5年間生存率は、相当に高い水準に達してきている。但し、胃癌組織の摘出手術が成功した患者であっても、その一部には、その後、癌転移が見出される事例も、少ないながら存在しており、その際には、高い頻度で転移した癌による病死に至っていることも、統計的に確認がなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、胃癌組織の切除手術後、癌転移が見出されるまでの期間に関して、患者または、そのご遺族の協力を得た上で、患者各人の、罹患から、術後、癌転移が見出されるまでの期間の治療記録、あるいは、術後、転移や再発もなく、順調に回復された記録を入手し、検討を行ったところ、術後、癌転移が見出されるまでの期間は、3年以内であり、特に、半年〜1年半の期間に集中していることを見出した。一方、胃癌組織の切除手術後、癌転移が見出された部位は、様々であり、術後の再発モニタリングを行っても、種々な部位における癌転移の有無を検査することは、相当な労力を要する作業である。
【0005】
その点を考慮すると、胃癌に関しても、できるだけ早い時機に、その予後を推定する手段、特に、癌転移が早期に起こる懸念が高いか低いかを、高い確度で、かつ客観性も高く推定する手段の開発は、手術に際して切除範囲の設定や、術後の化学療法ならびに再発モニタリングを効率的に実施する上で、極めて有用である。
【0006】
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、癌に侵食された患部組織の切除後、切除された癌組織の検査結果に基づき、かかる癌組織に由来する癌細胞の転移が、高い蓋然性で外科的手術後2〜3年以内に起こる懸念があるか否かを推定する方法を提供することにあり、より具体的には、バイオプシーや外科的手術により胃癌の切除後、切除された胃癌組織について、その組織検査を行い、その結果を利用して、客観性の高い判定作業により、外科的切除手術後2〜3年以内に癌転移が顕在化するか否かを、高い確度で推定する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく、鋭意研究・検討を進める上で、原発癌に由来する癌細胞の転移の過程では、原発癌部位から、癌細胞がリンパ管や血管へと浸潤し、その後、転移部位にかかる癌細胞の定着が生じ、そこにおいて新たな腫瘍形成に進行すると推察した。従って、転移部位における癌細胞の定着を可能とする上では、上皮組織から内部へと侵食を起こした癌組織から、リンパ管や血管へと、その細胞表面に接着因子により認識される構造を有する状態となった遊離癌細胞の浸潤がなされることが必須であろうと仮定した。この観点から、従来の研究結果の再検討を進めると、癌細胞の転移性とその細胞の接着特性、あるいは、細胞表面のシアル化の度合いとの間に正の相関が存在することを、幾つかの原発癌由来の細胞において、明確に示唆する結果が既に報告されていることを確認した。加えて、ヒトの胃癌細胞に関して、細胞表面のシアル化の有無に関して研究がなされ、その原発腫瘍細胞、ならびに、リンパ節に転移した細胞に関して、そのシアル化の有無を免疫染色による検出が試みられている(Ikeda Y. et al.,J. Surg. Oncol. 1996; 62:171-176)。
【0008】
これらの知見を基礎に、本発明者らは、胃癌組織においても、その細胞におけるシアル化が亢進する状態となった折には、リンパ管や血管へと、その細胞表面に高い頻度でシアル化がなされた遊離癌細胞の浸潤がおこると、転移の頻度が増しているであろうとの予測を立て、さらに、実際にかかる予想は、相当に高い確度で現実を反映していることを実証して、本発明を完成するに至った。より具体的には、胃癌組織中において、そこに存在している癌細胞中には、シアル酸を含む複合糖質を表出している細胞が見出され、その密度が一定以上に高くなっている場合、相当の蓋然性で転移の頻度が顕著に増すと推定できることを本発明者らは確認し、また、シアル酸を含む複合糖質の表出は、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素(MAL:Maackia Amurensis Leukoagglutinin)との結合を介して、検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明にかかる胃癌の切除手術後の予後検査方法は、患者に対してバイオプシーや外科的手術により胃癌組織を含む胃部分の切除後、切除された前記胃癌組織の組織検査法を利用して、前記外科的切除手術施行後の患者における予後の推定を行う方法であって、
切除された前記胃癌組織の薄片化サンプルを作成する工程と、
前記薄片化サンプルに対して、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素を作用させ、かかるイヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞を選別する工程と、
前記薄片化サンプル中に含まれる、癌細胞と正常細胞との選別をする工程と、
前記選別された癌細胞中、前記選別されたイヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の含有比率を算定する工程とを有し、
前記算定された、癌細胞中における、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の含有比率が、40%を超える際、術後に癌転移の発生が起こる頻度が高いと判定することを特徴とする胃癌の切除手術後の予後検査方法である。
【0010】
本発明にかかる胃癌の切除手術後の予後検査方法においては、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の選定は、結合させるイヌエンジュ豆由来白血球凝集素に、予めビオチン標識を施し、結合されたビオチン標識のイヌエンジュ豆由来白血球凝集素に、streptavidin − peroxidase 酵素を定量的に結合させ、かかるperoxidase酵素の酵素活性に起因する3,3'−Diaminobenzidineの発色により選別する手法を用いることができる。また、前記癌細胞と正常細胞との選別に、ヘマトキシリンを用いた全細胞の核染色を行い、癌細胞に特異的な染色パターンにより、癌化細胞を特定する手法を用いることが好ましい。
【0011】
なお、本発明にかかる胃癌の切除手術後の予後検査方法においては、癌細胞中における、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の含有比率の算定は、
癌細胞侵食領域から任意に選択される複数箇所における単位微小面積当たりに存在する癌細胞数と、かかる癌細胞のうち、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞数との比率に基づき、その平均値として算定する方法を採用することができる。
【0012】
加えて、本発明にかかる胃癌の切除手術後の予後検査方法においては、前記算定された、癌細胞中における、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の含有比率が、40%を超える際、
さらに、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す癌細胞のリンパ管浸潤の有無を組織観察により判定し、
リンパ管浸潤が有る場合、術後に癌転移の発生が起こる頻度がさらに高いと判定することを特徴とする方法とすることができる。同じく、前記算定された、癌細胞中における、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の含有比率が、40%を超える際、
さらに、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す癌細胞の静脈血管浸潤の有無を組織観察により判定し、
静脈血管浸潤が有る場合、術後に癌転移の発生が起こる頻度がさらに高いと判定することを特徴とする方法とすることもできる。
【0013】
あるいは、前記算定された、癌細胞中における、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の含有比率が、40%を超える際、
さらに、胃壁組織における癌細胞の組織内浸潤深さを病理学的観察により判定し、
癌細胞浸潤が、表面の粘膜層のみでなく、粘膜下層に達している場合、術後に癌転移の発生が起こる頻度がさらに高いと判定することを特徴とする方法とすることも可能である。
【0014】
前記の二種の判断基準に加えて、
さらに、付加的にリンパ節への転移を病理学的観察により判定し、
リンパ節への転移が見出される場合、術後に癌転移の発生が起こる頻度がより一層高いと判定することを特徴とする方法とすることも可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、胃癌に対して、その患部を完全に切除する手術を施した後、手術を受けられた患者の予後、特に、かかる原発癌に起因する癌転移の懸念が高いか否かを推定する有力な手段として、バイオプシーや外科的手術により切除された癌組織について組織検査を行い、その結果に基づき、癌転移を引き起こす可能性の高い状態に達していたか否かを判定する方法を提供している。
【0016】
本発明者らは、癌細胞の転移が生じる上では、患部の癌組織から、リンパ管あるいは血管へ癌細胞の浸潤が起き、更に、かかるリンパ管あるいは血管へ浸潤した癌細胞が体液(リンパ液、血液)により他の臓器、器官へと輸送され、その臓器、器官の上皮細胞上に付着を起こす過程を経ることが必要であろうと考えた。特に、輸送された先の他の臓器、器官において、その上皮細胞表面に付着することが可能な形態に達している癌細胞が一定比率以上存在すると、その細胞付着性に富む癌細胞が、リンパ管あるいは血管へ癌細胞が浸潤すると、癌の転移を引き起こす可能性が高いと考えた。可能であれば、リンパ管あるいは血管へ既に浸潤している癌細胞について、それらを採取して、その細胞付着性の有無に関して、緻密な調査を行うことが、より直接的な情報を与えると考えられるものの、現実的には、リンパ管あるいは血管へ既に浸潤している癌細胞を効率的に採取することは困難であり、このような方法を有効に利用できることは稀である。
【0017】
本発明者らは、前記の理想的な手段に代えて、より汎用性が高く、また、より客観性の高い指標を探索したところ、上皮細胞表面への接着性は、付着する細胞において、その細胞膜にシアル酸を含む複合糖質が表出している状態と深く関連していることに着目し、癌組織に存在する多数の癌細胞のうち、細胞膜にこのようなシアル酸を含む複合糖質を表出している癌細胞の比率が高くなると、転移もそれに対応して、その頻度を増すであろうと判断した。実際に、この判断の妥当性は、後述する具体例に示すように、癌転移と、シアル酸を含む複合糖質を表出している癌細胞の全癌細胞中に占める比率の大小の間には、明確な正の相関が存在することを確認し、検証された。加えて、胃癌の癌細胞においても、その細胞膜にシアル酸を含む複合糖質が表出している状態となったものが存在することが既に判明しており、同じく、それからリンパ節に転移した癌細胞も、その細胞膜に種々なシアル酸を含む複合糖質が表出していることも報告されている(Ikeda Y. et al.,J. Surg. Oncol. 1996; 62:171-176)。以上のことから、本発明者らは、切除された胃癌組織について、シアル酸を含む複合糖質を表出している癌細胞の全癌細胞中に占める比率を指標とし、術後に癌転移が起こる可能性の高い段階に達していたか否かを、高い確度で判定できると結論した。
【0018】
その際、シアル酸を含む複合糖質を表出している癌細胞を特定する手段として、胃癌全般に利用でき、また、癌細胞が産生するシアル酸を含む複合糖質に対して、高い選択性を示す手段を選択すべきと考え、かかる要件を満足する検出手段を模索したところ、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素(MAL:Maackia Amurensis Leukoagglutinin)は、胃癌細胞が産生しているシアル酸を含む複合糖質と高い反応性で結合し、一方、正常な胃組織細胞に対しては、全く結合せず、本発明の目的に適合するものであることを確認した。なお、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素(MAL:Maackia Amurensis Leukoagglutinin)は、植物由来の糖結合性蛋白質;レクチンの一種であり、末梢血リンパ球に対する抗原(MITOGEN)としての機能を有することが判明しており、その機能を与える糖鎖結合性は、Neu5Acα2,3Galβ1,4GlcNAc/Glcのtrisaccharide配列を特異的に認識するものであることが報告されている(J. Biol. Chem.,1988;263:4576-4585、 J. Biol. Chem.,1991;266:83-88)。この白血球凝集素の機能から、精製済みの市販試薬として入手でき、また、その結合を可視化するため、これも市販されている標識化キット、具体的には、biotin−streptavidin−peroxidase酵素系の標識酵素による発色反応を利用して、結合したMALを定量的に染色する方法が利用できる。なお、このperoxidase標識酵素による発色反応では、3,3’−Diaminobenzidineを発色基質として用ることで、明瞭な染色が得られる。
【0019】
このMALを利用する、胃癌細胞が産生しているシアル酸を含む複合糖質の検出は、特に、その細胞膜表面に特異的なシアル酸を含む複合糖質が存在するか否かを明示するので、その染色された細胞数(MAL染色細胞数)を簡単に数えることが可能となる。
【0020】
一方、切除された胃癌部位における全癌細胞数は、通常の組織検査の手順の一貫として、癌組織を含む胃壁を薄片化サンプル、例えば、5μm厚さで切り出し、先のMAL染色に加えて、全細胞に対して、例えば、常法に従い、ヘマトキシリンを用いて核染色を施す。その結果、癌細胞と周囲の正常細胞との区別も行え、加えて、細胞数のカウントをも容易となる。この染色により、薄片化サンプル中、癌細胞の侵食がなされた癌組織の存在領域が特定でき、また、その領域に存在する全癌細胞数をも簡単に数えることが可能となる。
【0021】
また、上記のMAL染色細胞は、癌組織の領域内全体に均一に分布する場合(症例)の他、胃壁表面に存在する胃液腺構造の管腔表面組織に特に局在する場合(症例)もある。すなわち、癌の進行状況などの違いにより、MAL染色細胞の分布も様々であるので、全癌細胞数中のMAL染色細胞数の比率を算定する際、癌組織のうちで、任意に複数箇所、例えば、10箇所程度の微小領域を選択し、かかる複数領域の単位面積当たり、具体的には、顕微鏡観察の視野内に存在する全癌細胞数とMAL染色細胞数とをそれぞれ計数し、その比率を算定し、さらに、複数箇所での平均値として、全癌細胞数中のMAL染色細胞数の比率とすることができる。この平均値を用いると、例えば、腺構造の管腔表面組織に特に局在する場合、かかる微小領域では、確かに密度は高いものの、全体の癌細胞中の一部のみが、MAL染色細胞となっている状況が、比較的に小さな平均値として反映される。従って、個々の事例で、それぞれ癌組織の形状・大きさ、進行状況には差違があるものの、全癌細胞数中のMAL染色細胞数の比率(MAL染色率:MI値)という指標化を行うことで、癌の進行状況をよく反映し、また、客観性の高い指標値となっている。
【0022】
本発明の胃癌の切除手術後の予後検査方法では、全癌細胞数中のMAL染色細胞数の比率(MAL染色率:MI値)が高いと、転移を引き起こす可能性の高いシアル酸を含む複合糖質を表出している癌細胞が多く、その一部が既に、リンパ管あるいは血管へ浸潤して、他の臓器へ達し、その上皮細胞上に付着を起こしている可能性が高いので、術後に癌転移の発生が起こる頻度が高いと判定する。その判定基準として、本発明では、全癌細胞数中のMAL染色細胞数の比率(MAL染色率:MI値)が40%を超えるか否かを、一つの目安としている。勿論、MAL染色率:MI値が高くなるにつれ、更に、転移の発生が起こる頻度が高いと判定すべきものである。
【0023】
一方、MAL染色率:MI値が高い場合でも、原発性の胃癌の場合には、切除手術が実施されるため、実際に転移する比率は、決して高いものではないものの、MAL染色率:MI値が低い場合と比較して、かかる切除手術を実施した際、既に転移が生じており、術後の2〜3年の間に、癌転移の症状が顕在化する懸念が有意に高いことを、本発明の予後検査方法は推定するものである。しかも、かかる全癌細胞数中のMAL染色細胞数の比率(MAL染色率:MI値)の算定自体は、判定者の熟練の程度に原理的に依存しないものであり、その意味でも、客観性の高い指標である。
【0024】
本発明の予後検査方法においては、MAL染色率:MI値が40%を超える場合には、さらに、その判定を補足する目的で、癌組織を含む胃壁の薄片化サンプルにおいて、そこに存在するリンパ管部分を精査して、癌細胞のリンパ管への浸潤の有無を観察し、リンパ管への浸潤も実際に見出された際には、既に転移が生じている可能性がより高いと判断することができる。あるいは、MAL染色率:MI値が40%を超える場合には、さらに、その判定を補足する目的で、癌組織を含む胃壁の薄片化サンプルにおいて、そこに存在する静脈血管部分を精査して、癌細胞の静脈血管への浸潤の有無を観察し、静脈血管への浸潤も実際に見出された際には、既に転移が生じている可能性がより高いと判断することができる。その際、リンパ管への浸潤、あるいは、静脈血管への浸潤している癌細胞も、MAL染色細胞数の比率が高いならば、既に転移が生じている可能性がより高いと、一層合理的に判断することができる。末梢血リンパ球もMAL染色を受けるが、その細胞形状は、癌細胞とは明確に異なるので、かかるリンパ管への浸潤、あるいは、静脈血管への浸潤している癌細胞も、簡単に判別することが可能である。
【0025】
なお、リンパ管への浸潤、あるいは、静脈血管への浸潤は、実際には、生じているものの、たまたま、観察した薄片化サンプルにおいては、その徴候が存在していないことも少なくなく、そのような偶発的な要因にも影響されるリンパ管への浸潤、あるいは、静脈血管への浸潤の有無の項目と比較して、上記の全癌細胞数中のMAL染色細胞数の比率(MAL染色率:MI値)は、個々の薄片化サンプルに依存することなく、偶発的な要因による影響が排除された指標である。
【0026】
加えて、本発明の予後検査方法においては、MAL染色率:MI値が40%を超える場合には、さらに、その判定を補足する目的で、薄片化サンプルの胃壁組織における癌細胞の組織内浸潤深さを観察し、癌細胞浸潤が、表面の粘膜層のみでなく、粘膜下層に達している際には、既に転移が生じている可能性がより高いと、一層合理的に判断することができる。つまり、胃癌の癌細胞が、表面の粘膜層から粘膜下層に侵食を引き起こすまでのに至ると、偶々、リンパ管への浸潤、あるいは、静脈血管への浸潤は見出されてはいないものの、実際には、リンパ管/静脈血管への浸潤が生じている懸念が高く、従って、既に転移が生じている可能性がより高いと、一層合理的に判断することができる。
【0027】
以上の、リンパ管への浸潤、静脈血管への浸潤、あるいは、癌細胞の組織内浸潤深さの補足的項目の評価に加えて、これらの項目も、転移の危険性を示唆する評価結果を与えている際には、更に、リンパ節への転移の有無をも実際に評価することがより望ましい。既に、リンパ節への転移も生じている場合には、既に転移が生じている可能性がなお一層高いと、判断することができる。
【0028】
本発明の胃癌の切除手術後の予後検査方法は、早期段階で外科的な手術が実施でき、原発癌の患部である胃の相当部分を切除することで、一応、胃癌自体の治癒はなされたものの、手術を行った時点で既に転移が起きている可能性が高いか否かの推定を高い確度で行うので、治療方針の策定や、術後における再発・転移のモニタリングをより適正に実施することを可能とする。具体的には、転移が生じる頻度が高いと判定された患者に対しては、手術に際しての切除範囲の設定拡大や、術後化学療法の施行や、1〜2年以内に転移による、他の臓器における悪性腫瘍の発生を可能な限り早期に発見できるように、モニタリングのスケジュールを設定することが可能となる。加えて、前記のMAL染色率:MI値に基づく判定においても、転移の懸念を示す指標値を示す際には、リンパ管への浸潤、静脈血管への浸潤、あるいは、癌細胞の組織内浸潤深さの補足的項目の評価をも、併せて実施することができ、これらの組織検査結果だけでは見逃される可能性を有する症例に対しても、合理的な根拠を持って、患者に注意を喚起することが可能ともなる。
【0029】
【実施例】
以下に、具体例を示して、本発明の胃癌の切除手術後の予後検査方法をより具体的に説明する。
【0030】
上記する本発明の胃癌の切除手術後の予後検査方法は、胃癌患者に対して、患部の胃組織を切除する手術後、その予後を推定する手段、特には、術後、2〜3年以内に症状が顕在化する癌転移の可能性を判定する手段として、有効な手段となることを、以下に過去の事例を示して、例証する。
【0031】
ここに記載する事例は、胃癌と診断され、その後、癌患部を含む胃組織を切除手術を受けられた患者234名のうち、原発癌であり、また、癌組織の完全な除去は成功した方の内、無作為に選択した、71名の患者の事例である。なお、切除された胃癌組織標本に関して、研究目的に使用する点、また、術後の経過、特に、転移の有無などを含め、その医療情報に関して、個々の患者名を伏せることを条件として、利用することに関して、了承を受けたものである。なお、前記71名の患者の構成は、男性52名、女性19名、手術を受けられた時点での年齢構成は、35歳〜84歳であり、その平均は59歳である。従って、中高齢者であり、最初の癌罹患が、かかる胃癌であった患者の事例群に相当する。
【0032】
なお、以下の検討・研究に利用した胃癌組織標本は、いずれも、ホリマリン固定後、パラフィン外包を施し保管されていたものである。各標本につき、その癌組織が、胃のどの部位に存在しいるかの局在定位(病変の位置決定)、目視による腫瘍形状の判定(肉眼的検査:臨床病理学的な分類)に加えて、組織学的な所見、検査を実施した。具体的には、組織学的変化:粘膜層に腺構造が形成されているか(腺化粘膜変形型)、広範囲な病変であるか;癌細胞の侵襲深度(深達度)、リンパ節転移の有無、リンパ管への浸潤の有無、静脈血管への浸潤の有無、癌組織の胃壁基部への浸潤形態、胃粘膜層の腸化生の程度、これらの各項目と、下記する手順により評価されるMAL染色率:MI値の評価を実施した。前記の臨床病理学的検査・評価は、日本胃癌研究会の分類に従った。
【0033】
(MAL染色率:MI値の評価手順)
一部の胃癌細胞が産生している細胞膜上のシアル酸を含む複合糖質を選択的に検出するため、かかるシアル酸を含む複合糖質と結合するMALを利用して、組織化学的染色を行った。利用したMALは、市販されている生物活性化MAL(ホーネン株式会社製)であり、細胞に結合した生物活性化MALの検出は、市販の標識化キット、具体的には、biotin−streptavidin−peroxidase酵素系の標識酵素による発色反応(染色)を利用した。
【0034】
(1) ホリマリン固定後、パラフィン外包を施し保管されていた胃癌組織標本から、癌組織を含む胃壁断面の、5μm厚さ薄片サンプルを切り出す。
【0035】
(2) 表面のパラフィン外包を除去するため、p−キシレン中に30分間浸した後、3分間浸す作業を3〜4回繰り返し、パラフィンを溶解除去する。次いで、無水エタノール中に3分間浸漬、2回を行い、サンプルに含まれる水分を除去し、さらに、95%エタノール中、70%エタノール中、50%エタノール中に順次3分間づつ浸漬し、溶媒置換を行う。
【0036】
(3) MAL染色に利用するhorse-radish ペルオキシダーゼ(HRP)標識酵素を用いる染色において、干渉を引き起こすヒト細胞由来のペルオキシダーゼの失活を行う。一旦、PBS(リン酸緩衝食塩水)に5分間浸し、エタノールを除去し、0.3%H2O2含有メタノール溶液に15分間浸す。前記メタノール溶液を棄てた後、PBSへ5分間の浸漬を3回繰り返し、残余するメタノール溶液を洗浄・除去する。
【0037】
(4) MALの非選択的な結合を防止するため、ブロッキングを施す。ここでは、1%牛血清アルブミン添加PBSに10分間浸漬した後、余剰のブロッキング溶液を棄てる。
【0038】
(5) ブロッキング済みのサンプルを、予めビオチン化を施した生物活性化MAL溶液(5〜10μg/ml、PBS希釈)中に、4℃で、一夜浸す。
【0039】
(6) 生物活性化MAL溶液を棄て、PBSへ5分間の浸漬を3回繰り返し、残余する生物活性化MALを洗浄・除去する。
【0040】
(7) HRP標識アビジン溶液に、室温30分間浸漬し、固定されているビオチン化を施した生物活性化MALに、アビジン−ビオチンの結合により、HRP標識酵素を付加させる。
【0041】
(8) HRP標識アビジン溶液を棄て、残余するHRP標識アビジンをPBSでよく洗浄・除去する。
【0042】
(9) HRP標識酵素により、加えた3,3’−Diaminobenzidine溶液(0.03%DAB/50mM Tris-HCl,pH7.4 + 0.005%H2O2)の発色を行う。なお、反応時間は、例えば、顕微鏡下で発色色調を観察しつつ、2〜5分間の間に選択する。
【0043】
(10) 純水で、未反応の3,3’−Diaminobenzidine溶液を洗浄・除去する。
【0044】
(11) ヘマトキシリン核染色液に2分間浸し、核染色を行う。
【0045】
以上のMAL染色ならびにヘマトキシリン核染色を施した後、脱水後、薄片サンプルは、顕微鏡観察用の透明樹脂封入を行う。なお、上記の操作を行った際、MAL染色細胞においては、細胞膜の染色に加えて、その細胞質にも染色が生じている。
【0046】
なお、Neu5Acα2,3Galβ1,4Glcの構造を有するシアルラクトース(Funakoshi Co.)0.2mmol/Lで事前にインキュベートした生物活性化MAL溶液に浸した対比用の隣接薄片サンプルでは、対応するDABによる染色は生じておらず、上記のMALによる結合は、胃癌細胞が産生している細胞膜上のシアル酸を含む複合糖質に対するMALの結合によるものであることが確認される。勿論、生物活性化MALを含まないPBSに浸した隣接薄片サンプルでも、DABによる染色は生じておらず、前記MAL染色は、細胞膜上のシアル酸を含む複合糖質を有する胃癌細胞のみで、選択的に生じていることが確認された。
【0047】
MAL染色率(MI値)は、上記のMAL染色を施した癌組織薄片サンプルにおいて、全癌細胞数に対する、MAL染色された癌細胞数の比率として定義し、実際は、薄片サンプルの全面でその数を計数する代わりに、癌領域中で、ランダムに選択する10箇所について、顕微鏡視野内に見出される各微小な領域毎に、癌細胞数とMAL染色された癌細胞数を計数し、その比率を算定し、10箇所の平均をとり、代表値とした。
【0048】
ここで研究した、上記患者71名の癌組織切片サンプルでは、いずれのサンプルでも、MAL染色された癌細胞が見出されたが、そのMAL染色された癌細胞の癌組織内における分布に、明確な違いのあるものが見出された。一例を示すと、癌組織において、粘膜層に腺構造が形成されており、その腺構造の管腔表面組織にMAL染色された癌細胞が局在して存在する症例があり、その他に、癌組織内において、特にMAL染色された癌細胞が局在する部分はなく、領域の全体にわたって散在している症例もある。一方、非癌部においては、血管中の末梢血リンパ球は、MALと反応するため、MAL染色されているものの、それ以外には、 MAL染色された細胞は見出されなかった。
【0049】
患者全71名のMAL染色率(MI値)評価結果を、度数分布グラフに示すと、図1に示されるように、MI値が80%付近と、10%付近とに、極大を示す二峰性を示している。この二つのグループの境界は、MI値が40%程度にあり、低MI値のグループには、40名(56%)が、高MI値のグループには、31名がそれぞれ含まれる。高MI値のグループにおける、平均値と標準偏差を算定すると、74.4±12.0%であり、低MI値のグループにおける、平均値と標準偏差を算定すると、14.9±10.4%であり、やや、平均値は実際の度数分布の極大と偏移するものの、この二つのグループの境界を、MI値40%に選択することは妥当であることが確認される。具体的に説明すると、真の平均値と標準偏差を推定すると、低MI値のグループでは、11±9%程度、高MI値のグループでは、78±11%程度と見積もられ、それぞれの3σ範囲は、11+27%=38%、78−33%=45%となり、グループの境界を、MI値40%に選択することは極めて妥当なものである。この二峰性は、統計学的にも、Student tテストにおいても、p<0.0001となり、有意なものであることが再確認される。
【0050】
表1に、このMI値によるグループ分けした、患者全71名の組織学的な検査結果等、各種の臨床病理学的パラメータとの関係をまとめて示す。
【0051】
【表1】
【0052】
表1に示すように、高MI値のグループでは、巨視的形状の差違、侵襲の深達度、リンパ節転移の有無、リンパ管侵襲の有無、静脈血管侵襲の有無の各項目において、χ2検定において、有意な相関性を示す変化が観察されている。
【0053】
また、上記の各臨床病理学的パラメータと、術後、5年間生存率との相関を調べると、表2に示す各項目において、有意な相関が見出されている。なお、各5年間生存率は、Kaplan-Meier法により推算した値である。加えて、各パラメータ内における5年間生存率の差違における、有意性は、log−rankテスト結果との偏移より判定した。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示すように、術後、5年間生存率とMAL染色率(MI値)の間には、相関性が見出され、実際、術後の時間経過と、生存率との関係を、図に示すと、高MI値のグループと低MI値のグループの間では、図2に示す通り、明らかな違いが見て取れる。特に、この差違は、術後、1〜2年以内に顕在化する癌転移による死去の頻度の大きな差を反映していることが、一見するのみで見て取れる。
【0056】
以上の検討からも、胃癌患者において、胃切除手術の術後、その予後を推定する上で、特には、術後、1〜2年の間に発生する癌転移の可能性を推定する上で有効な指標と考えられる、MAL染色率(MI値)は、侵襲の深達度、静脈血管侵襲の有無とともに独立因子であることが示された。侵襲の深達度、静脈血管侵襲の有無、ならびにMAL染色率(MI値)の各指標に関して、Cox重回帰ハザードモデルに従い逐次的な生存時間解析を行い、その有効性を検証した。表3に、その解析結果を示す。
【0057】
【表3】
【0058】
表3に示す結果からも、術後、5年間生存するか否か、換言するならば、術後、1〜2年の間に発生する癌転移の可能性が高い否か、胃切除手術の術後、その予後を推定する上で、MAL染色率(MI値)を指標とすると、転移の可能性を明確に示す、組織検査の結果、侵襲の深達度や静脈血管侵襲と遜色のない推定が可能であることが検証される。
【0059】
加えて、MAL染色率(MI値)を第1の指標に用いて、MI値が40%を超える際に、更に、静脈血管侵襲やリンパ管侵襲の有無、癌組織の侵襲の深達度に関する評価結果をも併せて判断すると、癌転移の可能性が高い否かを更に高い確度で推定が可能となる。付加的に、さらに、リンパ節転移の有無の評価結果をも加えると、その判定を一層確度の高いものとできる。
【0060】
すなわち、癌細胞自体、他の臓器に達した際、その上皮細胞上に付着可能な、細胞膜表面に特異的なシアル酸を含む複合糖質が存在する状態になっている比率が高いか否かをMAL染色率(MI値)で判定し、この付着可能な癌細胞が、静脈血管への浸潤やリンパ管への浸潤を起こしているか、あるいは、癌組織が胃内壁の粘膜層から、その内部へと深く侵襲しており、静脈血管への浸潤やリンパ管への浸潤が実際には起こっている可能性があるかをも、考慮すると、癌転移の可能性が高い否かを更に高い確度で推定が可能となる。加えて、仮に、リンパ節転移も見出されるならば、癌転移の可能性はさらに高いと推定せざるを得ない。
【0061】
逆に、癌組織が胃内壁の粘膜層から、その内部へと深く侵襲していたとしても、 MAL染色細胞は、胃内壁の粘膜層の表面に局在しているのみであれば、MAL染色率(MI値)は低位にあり、その際には、癌転移を引き起こす、細胞膜表面に特異的なシアル酸を含む複合糖質が存在する癌細胞が、静脈血管への浸潤やリンパ管への浸潤を起こしている可能性は低いと推察される。
【0062】
【発明の効果】
本発明のかかる胃癌の切除手術後の予後検査方法は、胃癌患者に対して、バイオプシーや胃の切除手術を施術後、切除されたその胃癌組織の組織検査法を利用して、外科的手術施行患者における予後の推定、具体的には、術後に癌転移の発生が起こる可能性が高いか否かを判定する方法である。その際、利用する組織検査として、切除された胃癌組織の薄片化サンプルに対して、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素MALを作用させ、かかるMALとの結合能を示す細胞を、細胞表面に結合させるMALに、例えば、予めビオチン化を施し、汎用されるbiotin−streptavidin−peroxidase酵素系の標識酵素による発色反応(染色)を利用して、染色された細胞とし、加えて、その胃癌組織に存在している癌細胞に対しては、例えば、ヘマトキシリンを用いた核染色を施し、このように二種の染色を施すことで、簡単にその細胞数の計数が可能となった薄片化サンプルにおいて、ヘマトキシリン核染色を施した全癌細胞数と、前記標識酵素を利用する染色を施したMALが結合した癌細胞数とを計数し、全癌細胞中のMALが結合した癌細胞の含有比率;MAL染色率を指標として、このMAL染色率が40%を超える際、術後に癌転移の発生が起こる可能性が高いと判定する。ここで利用する指標、MAL染色率は、その値の決定は、胃癌組織の形状、サイズなど、個々の症例により様々に変化する要因には依存せず、客観性の高い方法で行える。従って、判定者の熟練度や、胃癌組織の形状、サイズなど、個々の症例により様々に変化する要因の影響を排して、汎用性の高い、胃癌の切除手術後の予後検査方法となる。かかる方法は、MALとの結合能を示す癌細胞は、MALとの結合を可能とする、特異的なシアル酸を含む複合糖質が存在する癌細胞であるという知見に基づくものの、MAL染色細胞が、胃癌組織の表面部のみの局在しているなど、癌転移を引き起こす懸念が低い状態となっている際には、MAL染色率においても、その値が低くなることで、十分に反映されている。上述する具体例において、その有効性を示した通り、かかるMAL染色率を指標とする、癌転移の可能性が高いか否かの推定は、付加的な判定パラメータ、例えば、静脈血管侵襲やリンパ管侵襲の有無、癌組織の侵襲の深達度に関する評価結果をも併せて判断すると、癌転移の可能性が高い否かを更に高い確度で推定が可能となる。付加的に、さらに、リンパ節転移の有無の評価結果をも加えると、その判定を一層確度の高いものとできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】切除手術が施術された、原発性の胃癌患者71名における、その癌組織に関するMAL染色率の分布を示すグラフであり、その分布の二峰性を示す一例である。
【図2】全癌細胞数中のMAL染色細胞数の比率(MAL染色率:MI値)が、40%を超えるグループと、40%以下のグループとにおける、術後の生存率を対比するグラフであり、なお、その死去の原因は、癌の転移に起因するものである。
Claims (4)
- 患者に対してバイオプシーや切除手術を施行して得られた、胃癌組織を含む胃部分の切除後の胃部分の、切除された前記胃癌組織の組織検査法を利用して、前記外科的切除手術施行後の患者における予後の推定を行う方法であって、
切除された前記胃癌組織の薄片化サンプルを作成する工程と、
前記薄片化サンプルに対して、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素を作用させ、かかるイヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞を選別する工程と、
前記薄片化サンプル中に含まれる、癌細胞と正常細胞との選別をする工程と、
前記選別された癌細胞中、前記選別されたイヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の含有比率を算定する工程とを有し、
前記算定された、癌細胞中における、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の含有比率が、40%を超える際、術後に癌転移の発生が起こる頻度が高いと判定することを特徴とする胃癌の切除手術後の予後検査方法。 - イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の選定は、
結合させるイヌエンジュ豆由来白血球凝集素に、予めビオチン標識を施し、
結合されたビオチン標識のイヌエンジュ豆由来白血球凝集素に、streptavidin−peroxidase酵素を定量的に結合させ、
かかるperoxidase酵素の酵素活性に起因する3,3’−Diaminobenzidineの発色により選別する手法を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。 - 前記癌細胞と正常細胞との選別に、
ヘマトキシリンを用いた全細胞の核染色を行い、癌細胞に特異的な染色パターンにより、
癌化細胞を特定する手法を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。 - 癌細胞中における、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞の含有比率の算定は、
癌細胞侵食領域から任意に選択される複数箇所における単位微小面積当たりに存在する癌細胞数と、かかる癌細胞のうち、イヌエンジュ豆由来白血球凝集素との結合能を示す細胞数との比率に基づき、その平均値として算定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001251855A JP3721105B2 (ja) | 2001-08-22 | 2001-08-22 | 組織検査法を利用する胃癌の切除手術後の予後検査方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001251855A JP3721105B2 (ja) | 2001-08-22 | 2001-08-22 | 組織検査法を利用する胃癌の切除手術後の予後検査方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003066034A JP2003066034A (ja) | 2003-03-05 |
JP3721105B2 true JP3721105B2 (ja) | 2005-11-30 |
Family
ID=19080433
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001251855A Expired - Fee Related JP3721105B2 (ja) | 2001-08-22 | 2001-08-22 | 組織検査法を利用する胃癌の切除手術後の予後検査方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3721105B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
ATE520988T1 (de) * | 2004-09-22 | 2011-09-15 | Tripath Imaging Inc | Verfahren und zusammensetzungen zur bewertung einer brustkrebsprognose |
CN103140757A (zh) | 2010-09-30 | 2013-06-05 | 日本电气株式会社 | 信息处理设备、信息处理系统、信息处理方法、程序和记录介质 |
WO2017175811A1 (ja) * | 2016-04-05 | 2017-10-12 | 株式会社ニコン | がん検査方法、がん検査装置、および、がん検査プログラム |
CN107036956A (zh) * | 2017-05-22 | 2017-08-11 | 粉蓝医疗科技(杭州)有限公司 | 细胞核统计方法和装置 |
-
2001
- 2001-08-22 JP JP2001251855A patent/JP3721105B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003066034A (ja) | 2003-03-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Decenzo et al. | Antigenic deletion and prognosis of patients with stage A transitional cell bladder carcinoma | |
Limas et al. | A, B, H antigens in transitional cell tumors of the urinary bladder. Correlation with the clinical course | |
Ormsby et al. | Cytokeratin subsets can reliably distinguish Barrett's esophagus from intestinal metaplasia of the stomach | |
Tockman et al. | Considerations in bringing a cancer biomarker to clinical application | |
Skacel et al. | p53 expression in low grade dysplasia in Barrett’s esophagus: correlation with interobserver agreement and disease progression | |
Allegra et al. | The usefulness of toluidine staining as a diagnostic tool for precancerous and cancerous oropharyngeal and oral cavity lesions | |
Lopez‐Beltran et al. | Stage pT1 bladder carcinoma: diagnostic criteria, pitfalls and prognostic significance | |
Van den Bosch et al. | A thin and regular endometrium on ultrasound is very unlikely in patients with endometrial malignancy | |
Scoazec et al. | Cystic and ductal tumors of the pancreas: diagnosis and management | |
Miwa et al. | Rationale for extensive lymphadenectomy in early gastric carcinoma | |
Tribukait | Nuclear deoxyribonucleic acid determination in patients with prostate carcinomas: clinical research and application | |
Roberts et al. | Pancreaticoduodenectomy for ampullary carcinoma | |
JP3721105B2 (ja) | 組織検査法を利用する胃癌の切除手術後の予後検査方法 | |
Harada et al. | Preoperative pancreatic stiffness by real-time tissue elastography to predict pancreatic fistula after pancreaticoduodenectomy | |
Einhorn et al. | Long-term follow-up of the Stockholm screening study on ovarian cancer | |
Bosch Roig et al. | Prognostic value of the detection of lymph node micrometastases in colon cancer | |
RU2360924C1 (ru) | Маркер рака предстательной железы | |
Salimian et al. | The path (ology) from reflux oesophagitis to Barrett oesophagus to oesophageal adenocarcinoma | |
Baba et al. | Differential expression of basement membrane type IV collagen α chains in gastric intramucosal neoplastic lesions | |
Coli et al. | Atypical thyroid nodules express both HBME-1 and Galectin-3, two phenotypic markers of papillary thyroid carcinoma | |
Noor et al. | Role of needle knife assisted ampullary biopsy in the diagnosis of periampullary carcinoma | |
Asano et al. | Outcomes of limited resection for patients with intraductal papillary mucinous neoplasm of the pancreas: A single-center experience | |
Gill et al. | Variation in Barrett's esophageal wall thickness: is it associated with histology or segment length? | |
Brown et al. | Liver cancer | |
Zhang et al. | Prevalence and pathogenesis of Barrett's esophagus in Luoyang, China |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050202 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050404 |
|
RD03 | Notification of appointment of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423 Effective date: 20050413 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20050413 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050622 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050801 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050831 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050909 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080916 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090916 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090916 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100916 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110916 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120916 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130916 Year of fee payment: 8 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
R250 | Receipt of annual fees |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |