JP3720791B2 - 画像符号化装置及び方法、並びに画像復号装置及び方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばJPEG−2000方式に従って画像を圧縮する際に、符号化コードストリーム中にデータを埋め込む画像符号化装置及びその方法、並びに少なくとも埋め込まれたデータを抽出する画像復号装置及びその方法に関する。
【0003】
【従来の技術】
従来の代表的な画像圧縮方式として、ISO(International Standards Organization)によって標準化されたJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式がある。これは、離散コサイン変換(DCT:Descrete Cosine Transform)を用い、比較的高いビットが割り当てられる場合には、良好な符号化画像及び復号画像を供することが知られている。しかし、ある程度以上に符号化ビット数を少なくすると、DCT特有のブロック歪みが顕著になり、主観的に劣化が目立つようになる。
【0004】
一方、近年では画像をフィルタバンクと呼ばれるハイパス・フィルタとローパス・フィルタとを組み合わせたフィルタによって複数の帯域に分割し、各帯域毎に符号化を行う方式の研究が盛んになっている。その中でも、ウェーブレット変換符号化は、DCTのように高圧縮でブロック歪みが顕著になるという欠点がないことから、DCTに代わる新たな技術として有力視されている。
【0005】
例えば2001年1月に国際標準化が完了したJPEG−2000は、このウェーブレット変換に高能率なエントロピー符号化(ビットプレーン単位のビット・モデリングと算術符号化)を組み合わせた方式を採用しており、JPEGに比べて符号化効率の大きな改善を実現している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来、デジタル画像にデータを視覚的に認知し難い形式で挿入する電子透かしという技術が研究されている。この技術は、画像の2次使用の防止や個人認証等の不正使用を想定したものと、それ以外のものに分けられる。
【0007】
既に学会や研究会等で報告された先行例としては、「小林弘幸、野口祥宏、貴家仁志:『JPEG符号化列へのバイナリデータの埋め込み法』, 信学論(D-II), Vol.J83-D-II, No.6, pp.1469-1476, June 2000」や、「貴家仁志:『JPEG,MPEG画像へのバイナリデータの埋め込み法』, 信学論(A), Vol.J83-A, No.12, pp.1349-1356, Dec 2000」等が挙げられる。
【0008】
しかしながら、これらの先行例は、DCTの使用を前提としているため、JPEG方式やMPEG(Moving Picture Experts Group)方式に適用することはできるものの、上述したようにウェーブレット変換を用いるJPEG−2000方式に適用することができない。また、データの埋め込みが符号化時のビットレート制御に影響を与えるため、データ埋め込みを独立に行えないという問題があった。
【0009】
一方、従来、伝送データが通信路で失われても受信側で完全に再生するために、伝送データにエラー訂正符号を埋め込むエラー訂正技術が研究されている。このエラー訂正符号の代表例としては、例えばリードソロモン符号、ビタビ符号、或いはターボ符号等が挙げられる。しかしながら、エラー訂正符号を埋め込むと遅延が生じる上、データ長が長くなってしまうという問題があり、動画像のリアルタイム通信には不適である。
【0010】
ここで、JPEG−2000の規格では、エラー耐性を強化する目的で、主としてマーカ・コード挿入による手段とエントロピー符号化のモード指定による手段の2つの手段が備わっている。このうち、後者はアルゴリズムが複雑であるため、通常は前者で対応するケースが多くなる。しかしながら、エラー耐性の有効性を考えるとマーカ・コードの挿入のみでは不十分であり、あくまで補助的な手段であることが指摘されている。このことから、代替となる容易且つ効果的な手段が望まれている。
【0011】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、符号化側のビットレート制御とは独立して、すなわちビットレート制御の影響を受けずに、例えばJPEG−2000方式で符号化して生成された符号化コードストリーム中にデータを埋め込むことが可能な画像符号化装置及びその方法、並びに少なくとも埋め込まれたデータを抽出する画像復号装置及びその方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る画像符号化装置及びその方法は、上述した目的を達成するために、入力画像を算術符号化して符号化コードストリームを生成し、この符号化コードストリームを複数のレイヤに分割して各レイヤ毎に複数のパケットを生成し、最上位レイヤ以外の所定レイヤ、例えば最下位レイヤにおけるパケットのデータを算術符号化された任意のバイナリデータで置換する。
【0014】
また、本発明に係る画像復号装置及びその方法は、上述した目的を達成するために、上述の画像符号化装置からの符号化コードストリームを入力し、符号化側で算術符号化されたバイナリデータの埋め込まれた所定レイヤ、例えば最下位レイヤにおけるパケットからバイナリデータを抽出して出力し、この所定レイヤ以外の符号化コードストリームを復号する。
【0015】
このような画像符号化装置及び方法、並びに画像復号装置及び方法では、符号化側において、符号化コードストリームの所定レイヤ、例えば最下位レイヤにバイナリデータが埋め込まれ、復号側において、そのレイヤからバイナリデータが抽出され、出力される。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
ここで、以下の第1の実施の形態乃至第4の実施の形態は、本発明を、JPEG−2000方式で符号化して生成された符号化コードストリーム中に画像に関連したデータを埋め込む画像符号化装置及びデータ埋め込みシステム、並びにその圧縮された画像を復号すると共に、埋め込まれたデータを抽出する画像復号装置及び埋め込みデータ抽出システムに適用したものである。
【0040】
また、以下の第5の実施の形態及び第6の実施の形態は、本発明を、JPEG−2000符号化コードストリームの特徴を生かしたエラー耐性手段を実現する画像符号化装置及びレイヤデータ置換システム、並びにその圧縮された画像を復号する画像復号装置及びレイヤデータ復元システムに適用したものである。
【0041】
(1)第1の実施の形態
(1−1)
先ず第1の実施の形態における画像符号化装置の概略構成を図1に示す。図1に示すように、画像符号化装置10は、ウェーブレット変換部11と、量子化部12と、コードブロック化部13と、係数ビットモデリング部14と、算術符号化部15と、レート制御部17と、レイヤ生成部18と、データ埋め込み部19と、パケットヘッダ記録部20と、パケット生成部21とから構成されている。ここで、コードブロック化部13と、係数ビットモデリング部14と、算術符号化部15とにより、EBCOT(Embedded Coding with Optimized Truncation)部16が構成される。
【0042】
ウェーブレット変換部11は、通常、低域フィルタと高域フィルタとから構成されるフィルタバンクによって実現される。なお、デジタルフィルタは、通常複数タップ長のインパルス応答(フィルタ係数)を持っているため、フィルタリングが行えるだけの入力画像を予めバッファリングしておく必要があるが、簡単のため、図1では図示を省略する。
【0043】
ウェーブレット変換部11は、フィルタリングに必要な最低限の画像信号D10を入力し、ウェーブレット変換を行うフィルタリング処理を行ってウェーブレット変換係数D11を生成する。
【0044】
このウェーブレット変換では、通常図2に示すように低域成分が繰り返し変換されるが、これは画像のエネルギの多くが低域成分に集中しているためである。ここで、図2におけるウェーブレット変換のレベル数は2であり、この結果計7個のサブバンドが形成されている。すなわち、1回目のフィルタリング処理によって水平方向のサイズX_SIZE及び垂直方向のサイズY_SIZEがそれぞれ1/2に分割され、LL−1,LH−1,HL−1,HH−1の4つのサブバンドが生成される。そして2回目のフィルタリング処理によってLL−1がさらに分割されて、LL−2,LH−2,HL−2,HH−2の4つのサブバンドが生成される。なお、図2においてL,Hはそれぞれ低域,高域を表し、L,Hの後の数字は分割レベルを表す。すなわち、例えばLH−1は、水平方向が低域で垂直方向が高域である分割レベル=1のサブバンドを表す。
【0045】
量子化部12は、ウェーブレット変換部11から供給されたウェーブレット変換係数D11に対して非可逆圧縮を施す。量子化手段としては、ウェーブレット変換係数D12を量子化ステップサイズで除算するスカラ量子化を用いることができる。
【0046】
コードブロック化部13は、量子化部11で生成されたサブバンド毎の量子化係数D12を、JPEG−2000の符号化単位であるコードブロック単位に分割する。すなわち図3に示すように、例えば64×64程度のサイズの符号ブロックが、分割後のすべてのサブバンド中に生成される。なお、JPEG−2000の規定では、コードブロックのサイズは水平方向、垂直方向共に2の冪乗で表され、通常は、32×32、又は64×64が使用されることが多い。コードブロック化部13は、コードブロック毎の量子化係数D13を係数ビットモデリング部14に供給する。
【0047】
係数ビットモデリング部14は、コードブロック毎の量子化係数D13に対して、以下のようにビットプレーン単位で係数ビットモデリングを行う。このビットプレーンの概念について図4を用いて説明する。図4(A)は、縦4個、横4個の計16個の係数から成る量子化係数を仮定したものである。この16個の係数のうち絶対値が最大のものは13であり、2進数表現では1101となる。したがって、係数の絶対値のビットプレーンは、図4(B)に示すような4つのビットプレーンから構成される。なお、各ビットプレーンの要素は、すべて0又は1の数を取る。一方、量子化係数の符号は、−6が唯一負の値であり、それ以外は0又は正の値である。したがって、符号のビットプレーンは、図4(C)に示すようになる。
【0048】
ここで、本実施の形態では、特にJPEG−2000規格で定められたEBCOTと呼ばれるエントロピー符号化を行う。EBCOTの処理単位が上述のコードブロックである。なお、このEBCOTについては、例えば、文献「IS0/IEC 15444-1, Information technology-JPEG 2000, Part 1:Core coding system」等に詳細に記載されている。
【0049】
各コードブロックは、最上位ビット(MSB)から最下位ビット(LSB)方向にビットプレーン毎に独立して符号化される。量子化係数は、nビットの符号付き2進数で表されており、bit0からbit(n−2)がLSBからMSBまでのそれぞれのビットを表す。なお、残りの1ビットは符号である。符号ブロックの符号化は、MSB側のビットプレーンから順番に、以下の(a)〜(c)に示す3種類のコーディングパスによって行われる。
【0050】
(a) Significant Propagation Pass
(b) Magnitude Refinement Pass
(c) Cleanup Pass
3つのコーディングパスの用いられる順序を図5に示す。図5に示すように、先ずビットプレーン(n−2)(MSB)がCleanup Passによって符号化される。続いて、順次LSB側に向かい、各ビットプレーンが、Significant Propagation Pass、Magnitude Refinement Pass、Cleanup Passの順序で用いられて符号化される。
【0051】
但し、実際にはMSB側から何番目のビットプレーンで初めて1が出てくるかをヘッダに書き、オール0のビットプレーンは符号化しない。この順序で3種類のコーディングパスを繰返し用いて符号化し、任意のビットプレーンの任意の符号化パスまでで符号化を打ち切ることにより、符号量と画質のトレードオフを取る、すなわちレート制御を行うことができる。
【0052】
ここで、係数の走査(スキャニング)について図6を用いて説明する。コードブロックは、高さ4個の係数毎にストライプ(stripe)に分けられる。ストライプの幅は、コードブロックの幅に等しい。スキャン順とは1個のコードブロック内の全ての係数を辿る順番であり、コードブロック中では上のストライプから下のストライプへの順序、各ストライプ中では左の列から右の列への順序、各列中では上から下への順序でスキャニングされる。なお、各コーディングパスにおいてコードブロック中のすべての係数がこのスキャン順で処理される。
【0053】
以下、上述した3つのコーディングパスについて説明する。
【0054】
(a) Significance Propagation Pass
あるビットプレーンを符号化する Significance Propagation Passでは、8近傍の少なくとも1つの係数が有意(significant)であるようなnon-significant係数のビットプレーンの値が算術符号化される。その符号化したビットプレーンの値が1である場合には、符号の正負が続けて算術符号化される。
【0055】
ここでsignificanceとは、各係数に対して符号化器が持つ状態である。significanceの初期値は、non-significantを表す0であり、その係数で1が符号化されたときにsignificantを表す1に変化し、以降常に1であり続ける。したがって、significanceとは、有効桁の情報を既に符号化したか否かを示すフラグとも言える。
【0056】
(b) Magnitude Refinement Pass
ビットプレーンを符号化するMagnitude Refinement Passでは、ビットプレーンを符号化する Significance Propagation Passで符号化していないsignificantな係数のビットプレーンの値が算術符号化される。
【0057】
(c) Cleanup Pass
ビットプレーンを符号化するCleanup Passでは、ビットプレーンを符号化するSignificance Passで符号化していないnon-significantな係数のビットプレーンの値が算術符号化される。その符号化したビットプレーンの値が1である場合には、符号の正負が続けて算術符号化される。
【0058】
なお、以上の3つのコーディングパスでの算術符号化では、ケースに応じてZC(Zero Coding)、RLC(Run-Length Coding)、SC(Sign Coding)、MR(Magnitude Refinement)が使い分けられて係数のコンテキストが選択される。そして、MQ符号化と呼ばれる算術符号によって選択されたコンテキストが符号化される。このMQ符号化は、JBIG2で規定された学習型の2値算術符号である。MQ符号化については、例えば、文献「ISO/IEC FDIS 14492, “Lossy/Lossless Coding of Bi-level Images”, March 2000」等に記載されている。JPEG−2000では、すべての符号化パスで合計19種類のコンテキストがある。
【0059】
以上のようにして係数ビットモデリング部14は、コードブロック毎の量子化係数D13をビットプレーンに分解すると共に各ビットプレーンを3つのコーディングパスに分解し、コーディングパス毎に量子化係数D14を生成する。そして、算術符号化部15は、このコーディングパス毎の量子化係数D14に対して算術符号化を施す。
【0060】
レート制御部17は、算術符号化部15から供給された算術符号D15の符号量をカウントしながら、目標のビットレート又は圧縮率に近づけるように、符号量制御を行う。具体的には、レート制御部17は、コードブロック毎のコーディングパスの少なくとも一部を切り捨てる(Truncateする)ことにより符号量制御を行う。
【0061】
レイヤ生成部18は、レート制御部17から供給されたレート制御終了後のコードブロック毎の符号化コードストリームD16を所定個数のレイヤに分ける。
【0062】
ここでレイヤの概念について図7を用いて説明する。図7はレイヤ0,1、2の3つのレイヤに分割した場合の例を示しており、1つのレイヤが4個のパケットから構成されている。すなわち、レイヤ0(最上位レイヤ、MSB)の最低域(LL成分)がパケット−0、次の解像度レベルがパケット−1、さらにその次がパケット−2、最も高域の解像度レベルがパケット−3となっている。以下のレイヤについても全く同様にパケットが定義できるため、レイヤ2ではパケット−11までが生成される。
【0063】
なお、図7の例では、ウェーブレット変換の分割レベル=3であるため各レイヤで3個のパケットが構成されるが、分割レベル数が変化すれば各レイヤにおけるパケット数も変わることは勿論である。
【0064】
各パケットは、図8に示すように、パケットヘッダとパケットボディから構成されており、パケットヘッダには、パケット内に存在する複数個のコードブロックの各種の情報が記述されている。この記述内容は、全てJPEG−2000規格で定義されている。一方、パケットボディには、それらのコードブロックの実際の符号化コードストリームが記録されている。
【0065】
図1に戻って、レイヤ生成部18は、複数レイヤに分割された符号化コードストリームのうち、データ埋め込み対象となるレイヤのパケットD17をデータ埋め込み部19に供給し、それ以外のパケットD18をパケット生成部21に供給する。
【0066】
データ埋め込み部19は、パケットD17のパケットボディの元々のデータを、埋め込まれるバイナリデータD19で置き換え、埋め込まれたレイヤのパケットD20をパケット生成部21に供給する。ここで、バイナリデータD19としては、画像に関する各種情報、例えばその画像を撮影した日時や場所等のGPS情報、氏名・住所・電話番号等の所有者情報が挙げられる。なお、バイナリデータD19で置き換えられた元々のデータは廃棄され、復号には用いられない。
【0067】
パケットヘッダ記録部20は、埋め込まれるバイナリデータD19のデータ長の情報を記録して、更新されたパケットヘッダD21をパケット生成部21に供給する。
【0068】
パケット生成部21は、バイナリデータD19が埋め込まれたレイヤのパケットボディD20、パケットヘッダD21及び通常のレイヤのパケットD18を、パケットヘッダ、パケットボディの順番に、最上位レイヤから最下位レイヤまで並べ、データが埋め込まれて更新された符号化コードストリームD22を出力する。
【0069】
なお、データ埋め込み先のレイヤは、最上位レイヤ以外とする。すなわち、最上位レイヤは、画質に与える影響が最も大きいため、データ埋め込み先から除外する必要がある。逆に、最下位レイヤは、画質に与える影響が最も小さいため、データ埋め込み先として特に好ましい。
【0070】
但し、実験によれば最上位レイヤの次の下位レイヤを廃棄しても大きな画質劣化にならないことが判明しているため、埋め込みデータのサイズが大きい場合には、最上位レイヤ以外の複数レイヤに埋め込むようにしても構わない。この場合、図1においてデータ埋め込み対象となるレイヤのパケットD17は、複数レイヤのパケットが含まれることになる。
【0071】
データ埋め込みの一例を図9に示す。この図9は、元々のレイヤ数が4個であり、最下位のレイヤ3のデータが、あるバイナリデータによって置き換えられる例を示したものである。この際、バイナリデータのデータ長の情報がヘッダに記録される。
【0072】
このように本実施の形態における画像符号化装置1は、1つのデータストリーム中に、本来の画像の符号化コードストリームと埋め込み情報とを含め、コンパクト化して出力する。
【0073】
なお、バイナリデータを埋め込む際に、JPEG−2000で定義されているマーカ・コードが発生する可能性がある。すなわち、JPEG−2000では、特定範囲の値の符号(16進数表示でFF90からFFFF)がマーカ・コードとして予約されており、符号化コードストリーム中で特別な意味に用いられている。このため、埋め込むデータ中にマーカ・コードと一致する符号(以下、偽マーカ・コードという。)が存在すると、符号化コードストリーム中の正常な復号が妨げられることがある。
【0074】
そこで、埋め込むバイナリデータがマーカ・コードを含まない様に事前に変換しておく必要がある。偽マーカ・コードを回避する手段としては種々考えられるが、例えば、埋め込むバイナリデータに対してJPEG−2000で用いられている算術符号化を施すことが有効である。これは、JPEG−2000の算術符号化手段がマーカ・コードが発生しないように設計されており、また、既に実装されている算術符号化部をそのまま用いることができるためH/W規模も増えないで済むという利点があるためである。
【0075】
(1−2)
次に第1の実施の形態における画像復号装置の概略構成を図10に示す。図10に示すように、第1の実施の形態における画像復号装置30は、パケット解読部31と、レイヤ展開部32と、パケットヘッダ解読部33と、埋め込みデータ抽出部34と、算術復号部35と、ビットデモデリング復号部36と、コードブロック復元部37と、逆量子化部39と、ウェーブレット逆変換部40とから構成されている。ここで、算術復号部35と、ビットモデリング復号部36と、コードブロック復元部37とからEBCOT復号部38が構成される。
【0076】
パケット解読部31は、パケット化された符号化コードストリームD30を入力し、符号化コードストリームD30に含まれているパケット数や、パケットボディ、パケットヘッダの情報を解読する。パケット解読部31は、解読後の全てのパケット情報D31をレイヤ展開部32に供給する。
【0077】
レイヤ展開部32は、既に所定のレイヤ数にレイヤ化されている符号化コードストリームについて、パケットが指定のレイヤに配置されるように、パケットボディ及びパケットヘッダを並べる。そして、レイヤ展開部32は、データが埋め込まれたレイヤのパケットヘッダD32及びパケットボディD33をそれぞれパケットヘッダ解読部33、埋め込みデータ抽出部34に供給すると共に、データの埋め込まれていないレイヤのパケットD34を算術復号部35に供給する。
【0078】
パケットヘッダ解読部33は、レイヤ展開部32から供給されたパケットヘッダD32に基づいて、データの埋め込まれたパケットのデータ長の情報D35を埋め込みデータ抽出部34に供給する。
【0079】
埋め込みデータ抽出部34は、データが埋め込まれたレイヤのパケットボディD33とデータ長の情報D35とを用いて埋め込みデータD36を抽出し、この埋め込みデータD36を出力する。
【0080】
このように、本実施の形態における画像復号装置30は、データが埋め込まれていたレイヤのパケットを一切復号しない。これは、データが埋め込まれていたレイヤを他のレイヤと同様に復号すると、本来原画像とは関係のない情報である埋め込みデータも一緒に復号されてしまうため、画質劣化が大きくなるためである。
【0081】
算術復号部35は、データが埋め込まれていないレイヤのパケットD34のパケットボディ中のコーディングパス毎の符号化コードストリームを算術復号して、コーディングパス毎の量子化係数D37を生成し、ビットデモデリング復号部36は、コーディングパス毎の量子化係数D37からビットプレーン単位の量子化係数D38を復元する。そして、コードブロック復元部37は、ビットプレーン単位の量子化係数D38からコードブロック単位の量子化係数D39を復元する。コードブロック復元部37は、このコードブロック単位の量子化係数D39を逆量子化部39に供給する。
【0082】
逆量子化部39は、コードブロック復元部37から供給された量子化係数D39を逆量子化してウェーブレット変換係数D40に変換する。
【0083】
ウェーブレット逆変換部40は、ウェーブレット変換係数D40を逆変換して復号画像D41を出力する。
【0084】
以上のように、本実施の形態において画像符号化装置10は、1つのデータストリーム中に本来の画像の符号化コードストリームと埋め込みデータとを含め、画像復号装置30は、データが埋め込まれたレイヤのパケットヘッダから抽出したデータ長の情報に基づいてパケットボディから埋め込みデータを抽出し、出力する。このように、符号化コードストリームと共に画像に関連した各種情報を埋め込むことにより、例えば画像のセキュリティ、著作権保護、プライバシー保護等を図ることができる。
【0085】
また、データを埋め込むレイヤとして最上位レイヤ以外、特に最下位レイヤを選択することで、画質の劣化を殆ど伴わないで秘密通信を行うことができる。
【0086】
さらに、データが埋め込まれた後の符号化コードストリームもJPEG−2000規格に準拠しているため、汎用の画像復号装置で復号することが可能である。すなわち、図11に示すように元々のレイヤ数が4個であり最下位のレイヤ3のデータが、あるバイナリデータによって置き換えられているような場合、最下位レイヤを廃棄するのみで、画質を維持したまま画像を復号することができる。
【0087】
(2)第2の実施の形態
(2−1)
上述した第1の実施の形態では、データ埋め込み手段を画像符号化装置10の内部に有していたのに対して、本実施形態では、これらの手段を外部に有することを特徴としている。先ず本実施の形態におけるデータ埋め込みシステムの概略構成を図12に示す。図12に示すように、本実施の形態におけるデータ埋め込みシステム50は、画像符号化部51と、符号化コードストリーム解析・レイヤ化部52と、データ埋め込み部53とから構成されている。
【0088】
画像符号化部51は、JPEG−2000準拠のアルゴリズムに従って入力画像D50を符号化し、生成された符号化コードストリームD51を符号化コードストリーム解析・レイヤ化部52に供給する。
【0089】
符号化コードストリーム解析・レイヤ化部52は、先ず符号化コードストリームD51の内容を解析する。解析する内容としては、例えば原画像の解像度、コンポーネント数、タイルの有無、ウェーブレット変換のレベル数、使用したウェーブレット変換フィルタの種類、コードブロック(符号化単位のブロック)のサイズ等が挙げられる。次に符号化コードストリーム解析・レイヤ化部52は、符号化コードストリームD51を所定のレイヤに展開する。なお、予め符号化コードストリームD51が所定のレイヤ数にレイヤ化されていた場合には、この処理を省略する。符号化コードストリーム解析・レイヤ化部52は、このレイヤ化された符号化コードストリームD52をデータ埋め込み部53に供給する。
【0090】
データ埋め込み部53は、レイヤ化された符号化コードストリームD52の最上位レイヤ以外のレイヤ、特に最下位レイヤに外部からのバイナリデータD53を埋め込む。ここで、バイナリデータD53としては、第1の実施の形態と同様に、画像に関する各種情報、例えばその画像を撮影した日時や場所等のGPS情報、氏名・住所・電話番号等の所有者情報が挙げられる。そして、データ埋め込み部53は、バイナリデータが埋め込まれた符号化コードストリームD54を出力する。なお、このデータ埋め込み部53としては、例えば図13に示すような構成とすることができる。これは、図1に示した画像符号化装置10の後段の構成と同様であるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0091】
(2−2)
次に第2の実施の形態におけるデータ抽出システムの概略構成を図14に示す。図14に示すように、本実施の形態におけるデータ抽出システム70は、埋め込みデータ抽出部71と、画像復号部72とから構成されている。
【0092】
埋め込みデータ抽出部71は、既に所定のレイヤ数にレイヤ化されている符号化コードストリームD70について、パケットが指定のレイヤに配置されるように、パケットボディ及びパケットヘッダを並べる。そして、データが埋め込まれたレイヤのパケットヘッダから抽出したデータ長の情報に基づいてパケットボディから埋め込みデータD71を抽出し、この埋め込みデータD71を出力する。埋め込みデータ抽出部71は、データが埋め込まれていないレイヤのパケットD72については、そのまま画像復号部72に供給する。したがって、パケットD72は、最初の符号化コードストリームD70よりも、データが埋め込まれていたレイヤ数分だけレイヤが少なくなっている。なお、この埋め込みデータ抽出部71としては、例えば図15に示すような構成とすることができる。これは、図10に示した画像復号装置30の前段の構成と同様であるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0093】
画像復号部72は、JPEG−2000準拠のアルゴリズムに従ってデータが埋め込まれていないレイヤのパケットD72を復号し、復号画像D73を出力する。
【0094】
以上のように、本実施の形態では、画像符号化部51で符号化された符号化コードストリームの所定のレイヤに外部からのバイナリデータを埋め込み、埋め込みデータ抽出部71このデータを抽出して出力することができる。このバイナリデータとして、画像に関連した各種情報を埋め込むことにより、例えば画像のセキュリティ、著作権保護、プライバシー保護等を図ることができる。
【0095】
(3)第3の実施の形態
(3−1)
本実施の形態は、第1の実施の形態における画像符号化装置10の後段部分に関するものである。そこで、以下では、必要な部分のみ、図1と同一の符号を付し、図1を参照しながら説明する。
【0096】
レイヤ生成部18は、レート制御部17から供給されたレート制御終了後のコードブロック毎の符号化コードストリームD16を所定個数のレイヤに分ける。レイヤ生成部18は、複数レイヤに分割された符号化コードストリームのうち、データ埋め込み対象となるレイヤのパケットD17をデータ埋め込み部19に供給し、それ以外のパケットD18をパケット生成部21に供給する。
【0097】
データ埋め込み部19は、最下位レイヤのパケットD17のパケットボディの元々のデータを、埋め込まれるバイナリデータD19で置き換え、埋め込まれたレイヤのパケットD20をパケット生成部21に供給する。ここで、バイナリデータD19としては、上述と同様に、画像に関する各種情報、例えばその画像を撮影した日時や場所等のGPS情報、氏名・住所・電話番号等の所有者情報が挙げられる。
【0098】
パケットヘッダ記録部20は、埋め込まれるバイナリデータD19のデータ長の情報を記録して、更新されたパケットヘッダD21をパケット生成部21に供給する。
【0099】
パケット生成部21は、バイナリデータD19が埋め込まれた最下位レイヤのパケットボディD20、パケットヘッダD21及び通常のレイヤのパケットD18を、パケットヘッダ、パケットボディの順番に、最上位レイヤから最下位レイヤまで並べ、データが埋め込まれて更新された符号化コードストリームD22を出力する。この際、パケット生成部21は、通常のレイヤパケットD18から最上位レイヤのパケットを選択して抽出し、最下位レイヤの1つ上位レイヤのパケットを、抽出した最上位レイヤのパケットで置き換える処理を行う。
【0100】
以上の処理を具体的に図16に示す。なお、この図16は、元々のレイヤ数が4個である例について説明するものである。データ埋め込み部19は、最下位のレイヤ3のデータを、あるバイナリデータによって置き換える。また、パケットヘッダ記録部20は、このバイナリデータのデータ長の情報をヘッダに記録する。さらに、パケット生成部21は、最下位レイヤの1つ上位レイヤであるレイヤ2のデータを、最上位のレイヤ0のデータで置き換える。この結果、最終的にパケット生成部21から出力される符号化コードストリームD22は、最下位レイヤにデータ埋め込みがなされ、その1つ上位レイヤには最上位レイヤのパケットがあり、それ以外のレイヤは不変という内容になる。
【0101】
(3−2)
次に復号側における処理について図17を参照しながら説明する。なお、図17に示す画像復号装置90の基本的な構成は図10に示した画像復号装置30と同様であるため、同様な構成については図10と同一の符号を付し、必要な部分のみ説明する。
【0102】
パケット解読部31は、パケット化された符号化コードストリームD30を入力し、符号化コードストリームD30に含まれているパケット数や、パケットボディ、パケットヘッダの情報を解読する。パケット解読部31は、解読後の全てのパケット情報D31をレイヤ展開部32に供給する。
【0103】
レイヤ展開部32は、既に所定のレイヤ数にレイヤ化されている符号化コードストリームについて、パケットが指定のレイヤに配置されるように、パケットボディ及びパケットヘッダを並べる。そして、レイヤ展開部32は、データが埋め込まれたレイヤのパケットヘッダD32及びパケットボディD33をそれぞれパケットヘッダ解読部33、埋め込みデータ抽出部34に供給すると共に、下位2つ以外のレイヤのパケットD34を算術復号部35に供給する。したがって、上述した第1の実施の形態と比較して、復号対象となるレイヤ数は1つ少なくなる。さらにレイヤ展開部32は、最上位レイヤのパケットD90と最下位レイヤの1つ上位レイヤのパケットD91とをレイヤデータ比較部91に供給する。
【0104】
パケットヘッダ解読部33は、レイヤ展開部32から供給されたパケットヘッダD32に基づいて、データの埋め込まれたパケットのデータ長の情報D35を埋め込みデータ抽出部34に供給する。
【0105】
埋め込みデータ抽出部34は、データが埋め込まれたレイヤのパケットボディD33とデータ長の情報D35とを用いて埋め込みデータD36を抽出し、この埋め込みデータD36を出力する。
【0106】
レイヤデータ比較部91は、最上位レイヤのパケットD90と最下位レイヤの1つ上位レイヤのパケットD91とを比較する。
【0107】
すなわち、JPEG−2000が利用される分野であるデジタルカメラや監視カメラでは、撮影して得られた画像をそのまま証拠写真として利用するケースが多い。例えば事故写真や見合い写真、工事現場写真、清掃現場写真等がそれに該当する。これらの画像は改竄されてしまう可能性があるが、使用目的からして決して改竄されてはならないものである。したがって、何らかの形で改竄された場合にその証拠が残る、又は判明するような手段が施されている必要がある。
【0108】
ここで、元々の符号化コードストリームを1度復号して何らかの改竄を行い、再符号化した場合には、最下位レイヤの1つ上位レイヤの内容は更新されてしまう。そこで、本実施の形態のように、最上位レイヤのパケットD90と最下位レイヤの1つ上位レイヤのパケットD91とを比較することにより、改竄の有無を判別することができる。
【0109】
改竄の有無を判別するだけの目的であるならば、最下位レイヤの1つ上位レイヤに書き込むレイヤは、最上位レイヤでなくてもよい。しかし、最上位レイヤのデータを書き込むことにより、例えば最上位レイヤのパケットD90と最下位レイヤの1つ上位レイヤのパケットD91とを後段の算術復号部35以降に入力させて実際に最上位レイヤの復号画像を目で比較し、改竄の有無を視覚的に判断がすることができる。
【0110】
なお、本実施の形態では、最下位レイヤにバイナリデータを埋め込み、最下位レイヤの1つ上位レイヤに最上位レイヤのデータを埋め込むものとして説明したが、これに限定されるものではなく、それらの順番を逆にしても構わない。すなわち、最下位レイヤに最上位レイヤのデータを埋め込み、最下位レイヤの1つ上位レイヤにバイナリデータを埋め込むようにしても構わない。
【0111】
(4)第4の実施の形態
(4−1)
上述した第3の実施の形態では、データ埋め込み手段を画像符号化装置の内部に有していたのに対して、本実施形態では、これらの手段を外部に有することを特徴としている。なお、実際の構成は第2の実施の形態で説明したデータ埋め込みシステム50と同様でよい。また、データ埋め込み部53としては、例えば図13に示すような構成とすることができる。但し、パケット生成部21は、通常のレイヤパケットD18から最上位レイヤのパケットを選択して抽出し、最下位レイヤの1つ上位レイヤのパケットを、抽出した最上位レイヤのパケットで置き換える処理を行う。
【0112】
(4−2)
次に第4の実施の形態におけるデータ抽出システムについて説明する。第3の実施の形態では、画像復号装置の内部に最下位レイヤのデータとその1つ上のレイヤのデータとを分離・抽出する手段を有していたのに対し、本実施形態ではそれらを外部に有することを特徴としている。なお、実際の構成は第3の実施の形態で説明したデータ抽出システム70と同様でよい。また、埋め込みデータ抽出部71としては、例えば図18に示すような構成とすることができる。これは、図17に示した画像復号装置90の後段の構成と同様であるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0113】
以上のように、本実施の形態において画像符号化部51は、符号化された符号化コードストリームの所定のレイヤ、例えば最下位レイヤに外部からのバイナリデータを埋め込むと共に、最下位レイヤの1つ上位レイヤに最上位レイヤのデータを埋め込む。そして、埋め込みデータ抽出部71は、この埋め込みデータを抽出して出力する。また、埋め込みデータ抽出部71は、最上位レイヤのデータと最下位レイヤの1つ上位レイヤのデータとを抽出して比較し、改竄の有無を判別することができる。
【0114】
(5)第5の実施の形態
(5−1)
上述の実施の形態では、画像のセキュリティ、著作権保護、プライバシー保護等を図るために、符号化コードストリームの例えば最下位レイヤに画像に関連した各種情報を埋め込み、復号側でこの埋め込みデータを抽出し出力するものとして説明した。しかしながら、符号化コードストリーム中に埋め込むデータとしては、上述したような画像に関連したデータに限定されるものではなく、例えば最上位レイヤのデータとしてもよい。
【0115】
以下、このように最上位レイヤのデータを符号化コードストリーム中に重複して埋め込む画像符号化装置について、詳細に説明する。ここで、図19に示す画像符号化装置110の基本的な構成は図1に示した画像符号化装置10と同様であるため、同様な構成については図1と同一の符号を付し、必要な部分のみ説明する。
【0116】
レイヤ生成部111は、レート制御部17から供給されたレート制御終了後のコードブロック毎の符号化コードストリームD16を所定個数のレイヤに分ける。そして、レイヤ生成部111は、複数レイヤに分割された符号化コードストリームのうち、最上位レイヤのデータD110をレイヤデータ置換部112及びパケット生成部113に供給し、埋め込み先のレイヤのパケットD111をレイヤデータ置換部112に供給する。また、レイヤ生成部111は、それ以外のレイヤのデータD112をパケット生成部113に供給する。
【0117】
なお、埋め込み先のレイヤは、最上位レイヤ以外とする。すなわち、最上位レイヤは、画質に与える影響が最も大きいため、埋め込み先から除外する必要がある。逆に、最下位レイヤは、画質に与える影響が最も小さいため、埋め込み先として特に好ましい。
【0118】
レイヤデータ置換部112は、埋め込み先のレイヤのデータD111の部分に、最上位レイヤのデータD110を入れ替える処理を行う。この結果、最下位レイヤのデータD111には、最上位レイヤのデータD110がコピーされる。そして、レイヤデータ置換部112は、置換後の埋め込み先レイヤのデータD113をパケット生成部113に供給する。
【0119】
以上の処理を具体的に図20に示す。なお、この図20は、元々のレイヤ数が4個であり、埋め込み先のレイヤを最下位のレイヤ3とする例について説明するものである。図20(A)に示すように、レイヤデータ置換部112は、最上位のレイヤ0のデータを、最下位のレイヤ3のデータの場所にコピーする。
【0120】
ここで、最上位レイヤと最下位レイヤとのデータ部分の大きさが常に同じになるとは限らない。例えば、図20(B)に示すように、最下位レイヤのデータ部分よりも、最上位レイヤのデータ部分の方が大きい場合が考えられる。この場合には、最下位レイヤのデータ部分に最上位レイヤのデータがコピーされることにより、全レイヤのデータサイズは、増大する。一方、図20(C)に示すように、最下位レイヤのデータ部分の大きさが、最上位レイヤのデータ部分の大きさよりも大きい場合には、最下位レイヤのデータ部分に最上位レイヤのデータがコピーされることにより、全レイヤのデータサイズは縮小する。
【0121】
なお、上述の説明では、最上位レイヤ以外、例えば最下位レイヤのデータに対して最上位レイヤのデータをコピーしたが、例えば最上位レイヤ以外のパケットヘッダの情報を、同位置にある最上位レイヤのパケットヘッダの情報で置き換え、最上位レイヤ以外のパケットボディの情報を、同位置にある最上位レイヤのパケットボディの情報で置換するようにしてもよい。この場合には、コピーする必要はなく、データの内容を書き換える。
【0122】
パケット生成部113は、置換後の埋め込み先レイヤのデータD113、最上位レイヤのデータD110及びそれ以外のレイヤのデータD111をパケットヘッダとパケットボディとから成るパケットに構成し、最終的な符号化コードストリームD114を出力する。
【0123】
このように本実施の形態における画像符号化装置110は、符号化コードストリーム中の所定のレイヤのデータ部分に最上位レイヤのデータをコピーし、最上位レイヤのデータを重複して出力する。
【0124】
(5−2)
次に第5の実施の形態における画像復号装置の概略構成を図21に示す。図21に示す画像復号装置130の基本的な構成は図10に示した画像復号装置30と同様であるため、同様な構成については図10と同一の符号を付し、必要な部分のみ説明する。
【0125】
パケット解読部131は、パケット化された符号化コードストリームD130を入力し、符号化コードストリームD130に含まれているパケット数や、パケットボディ、パケットヘッダの情報を解読する。パケット解読部131は、解読後の全てのパケット情報D131をレイヤ展開部132に供給する。
【0126】
レイヤ展開部132は、既に所定のレイヤ数にレイヤ化されている符号化コードストリームについて、パケットが指定のレイヤに配置されるように、パケットボディ及びパケットヘッダを並べる。そして、レイヤ展開部132は、最上位レイヤのデータD132をエラー検知部133及びレイヤデータ復元部134に供給すると共に、最下位レイヤのデータD133をレイヤデータ復元部134に供給する。また、レイヤ展開部132は、それ以外のレイヤのデータD134を算術復号部35に供給する。
【0127】
エラー検知部133は、最上位レイヤのデータD132、例えばパケットヘッダ及びパケットボディが正しく検出或いは解読できたか否かを示す制御コードD135をレイヤデータ復元部134に送信する。
【0128】
レイヤデータ復元部134は、エラー検知部133から、最上位レイヤのデータD132が正しく検出できなかった旨の制御コードD135を受信すると、最下位レイヤのデータD133のパケットヘッダ及びパケットボディを解読し、これらを最上位レイヤに入れ、置換後の最上位レイヤのデータD136を算術符号化部35に供給する。なお、解読された最下位レイヤのパケットは、復号対象から除外される。これは、復号の過程で本来の画像の最下位レイヤのデータでないものを復号すると、画面全体にノイズが発生してしまうためである。一方、レイヤデータ復元部134は、エラー検知部133から、最上位レイヤのデータD132が正しく検出できた旨を示す制御コードD135を受信すると、最下位レイヤのデータD133を廃棄し、最上位レイヤのデータD136を算術符号化部35に供給する。
【0129】
以上の処理を具体的に図22に示す。なお、この図22は、元々のレイヤ数が4個であり、最下位であるレイヤ3のデータ部分に最上位であるレイヤ0のデータが埋め込まれている例について説明するものである。エラー検知部133が最上位レイヤのデータを正しく検出できなかったことを検知すると、レイヤデータ復元部134は、最下位レイヤのデータを最上位レイヤに埋め込む。
【0130】
なお、最下位レイヤのデータも解読不能の場合には画像を復元することができないが、どちらのレイヤのデータも解読できないことは稀であるため、実用上、問題はない。
【0131】
以上のように、本実施の形態において画像符号化装置110は、符号化コードストリーム中の所定のレイヤのデータ部分に最上位レイヤのデータをコピーし、最上位レイヤのデータを重複して出力し、画像復号装置130は、最上位レイヤのデータを正しく検出できなかったことを検知すると、当該所定レイヤのデータを最上位レイヤに埋め込む。
【0132】
このように、画質に与える影響が最も大きい最上位レイヤのデータを重複して符号化コードストリーム中に埋め込むことにより、何らかの原因で最上位レイヤのデータが欠落してしまった場合にも埋め込んだデータを用いることができ、画質を維持することができる。また、最上位レイヤのデータを重複して埋め込むレイヤとして、特に最下位レイヤを選択することで、画像の劣化を極力低減することができる。
【0133】
なお、重複して符号化コードストリーム中に埋め込むレイヤとしては、最上位レイヤに限定されるものではないが、画質に与える影響が最も大きい最上位レイヤのデータを重複させることが、画質を維持する上で最も好ましい。
【0134】
(6)第6の実施の形態
(6−1)
上述した第5の実施の形態では、レイヤデータ置換手段を画像符号化装置110の内部に有していたのに対して、本実施形態では、これらの手段を外部に有することを特徴としている。先ず本実施の形態におけるレイヤデータ置換システムの概略構成を図23に示す。図23に示すように、本実施の形態におけるレイヤデータ置換システム150は、画像符号化部151と、符号化コードストリーム解析・レイヤ化部152と、レイヤデータ置換部153とから構成されている。
【0135】
画像符号化部151は、JPEG−2000準拠のアルゴリズムに従って入力画像D150を符号化し、生成された符号化コードストリームD151を符号化コードストリーム解析・レイヤ化部152に供給する。
【0136】
符号化コードストリーム解析・レイヤ化部152は、先ず符号化コードストリームD151の内容を解析する。解析する内容としては、例えば原画像の解像度、コンポーネント数、タイルの有無、ウェーブレット変換のレベル数、使用したウェーブレット変換フィルタの種類、コードブロック(符号化単位のブロック)のサイズ等が挙げられる。次に符号化コードストリーム解析・レイヤ化部152は、符号化コードストリームD151を所定のレイヤに展開する。なお、予め符号化コードストリームD151が所定のレイヤ数にレイヤ化されていた場合には、この処理を省略する。符号化コードストリーム解析・レイヤ化部152は、このレイヤ化された符号化コードストリームD152をレイヤデータ置換部153に供給する。
【0137】
レイヤデータ置換部153は、レイヤ化された符号化コードストリームD152の最上位レイヤ以外のレイヤ、例えば最下位レイヤに対して、最上位レイヤのデータをコピーする。そして、レイヤデータ置換部153は、最終的な符号化コードストリームD153を出力する。なお、このデータ置換部153としては、例えば図24に示すような構成とすることができる。これは、図19に示した画像符号化装置110の後段の構成と同様であるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0138】
(6−2)
次に第6の実施の形態におけるレイヤデータ復元システムの概略構成を図25に示す。図25に示すように、本実施の形態におけるデータ復元システム170は、レイヤデータ逆置換部171と、画像復号部172とから構成されている。
【0139】
レイヤデータ逆置換部171は、既に所定のレイヤ数にレイヤ化されている符号化コードストリームD170について、パケットが指定のレイヤに配置されるように、パケットボディ及びパケットヘッダを並べる。そして、最上位レイヤのデータ、例えばパケットヘッダ及びパケットボディが正しく検出或いは解読できなかった場合に、例えば最下位レイヤのデータのパケットヘッダ及びパケットボディを解読し、これらを最上位レイヤに入れる。レイヤデータ逆置換部171は、このようにして復元した符号化コードストリームD171を画像復号部172に供給する。なお、このレイヤデータ逆置換部171としては、例えば図26に示すような構成とすることができる。これは、図21に示した画像復号装置130の前段の構成と同様であるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0140】
画像復号部172は、JPEG−2000準拠のアルゴリズムに従って符号化コードストリームD171を復号し、復号画像D172を出力する。
【0141】
以上のように、本実施の形態においてレイヤデータ置換部153は、レイヤ化された符号化コードストリームの例えば最下位レイヤに対して最上位レイヤのデータをコピーし、レイヤデータ逆置換部171は、最上位レイヤのデータを正しく検出できなかったことを検知すると、例えば最下位レイヤのデータを最上位レイヤに埋め込む。
【0142】
これにより、何らかの原因で最上位レイヤのデータが欠落してしまった場合にも埋め込んだデータを用いることができ、画質を維持することができる。
【0143】
(7)その他
本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0144】
例えば、上述の実施の形態では、ハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではなく、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、記録媒体に記録して提供することも可能であり、また、インターネットその他の伝送媒体を介して伝送することにより提供することも可能である。
【0145】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明に係る画像符号化装置及びその方法は、入力画像を算術符号化して符号化コードストリームを生成し、この符号化コードストリームを複数のレイヤに分割して各レイヤ毎に複数のパケットを生成し、最上位レイヤ以外の所定レイヤ、例えば最下位レイヤにおけるパケットのデータを算術符号化された任意のバイナリデータで置換する。
【0146】
また、本発明に係る画像復号装置及びその方法は、上述の画像符号化装置からの符号化コードストリームを入力し、符号化側で算術符号化されたバイナリデータの埋め込まれた所定レイヤ、例えば最下位レイヤにおけるパケットからバイナリデータを抽出して出力し、この所定レイヤ以外の符号化コードストリームを復号する。
【0147】
このような画像符号化装置及び方法、並びに画像復号装置及び方法では、符号化側において、符号化コードストリームの所定レイヤ、例えば最下位レイヤに算術符号化されたバイナリデータを埋め込み、復号側において、そのレイヤからバイナリデータが抽出して、出力する。
【0148】
ここで、画像に関連した各種情報を埋め込むことにより、例えば画像のセキュリティ、著作権保護、プライバシー保護等を図ることができる。また、データを埋め込むレイヤとして、特に最下位レイヤを選択することで、画質の劣化を殆ど伴わないで秘密通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態における画像符号化装置の概略構成を説明する図である。
【図2】第2レベルまでウェーブレット変換した場合のサブバンドを説明する図である。
【図3】コードブロックとサブバンドの関係を説明する図である。
【図4】ビットプレーンの説明する図であり、同図(A)は、計16個の係数から成る量子化係数を示し、同図(B)は、係数の絶対値のビットプレーンを示し、同図(C)は、符号のビットプレーンを示す。
【図5】コードブロック内のコ−ディングパスの処理手順を説明する図である。
【図6】コ−ドブロック内の係数のスキャン順序を説明する図である。
【図7】レイヤ0乃至レイヤ2のレイヤとパケット構造を説明する図である。
【図8】パケットヘッダ及びパケットボディを説明する図である。
【図9】最下位レイヤにバイナリデータを埋め込む具体例を説明する図である。
【図10】第1の実施の形態における画像復号装置の概略構成を説明する図である。
【図11】 最下位レイヤに埋め込まれていたバイナリデータを廃棄する具体例を説明する図である。
【図12】第2の実施の形態におけるデータ埋め込みシステムの概略構成を説明する図である。
【図13】同データ埋め込みシステムにおけるデータ埋め込み部の詳細な構成を説明する図である。
【図14】第2の実施の形態におけるデータ抽出システムの概略構成を説明する図である。
【図15】第2の実施の形態における埋め込みデータ抽出部の詳細な構成を説明する図である。
【図16】最下位レイヤより1つ上位レイヤに、最上位レイヤのデータを埋め込む具体例を説明する図である。
【図17】第3の実施の形態における画像復号装置の概略構成を説明する図である。
【図18】第4の実施の形態のデータ抽出システムにおける埋め込みデータ抽出部の詳細な構成を説明する図である。
【図19】第5の実施の形態における画像符号化装置の概略構成を説明する図である。
【図20】最下位レイヤのデータに、最上位レイヤのデータをコピーする具体例を説明する図であり、同図(A)は、最下位レイヤのデータと最上位レイヤのデータとが同サイズである例を示し、同図(B)は、最下位レイヤのデータよりも最上位レイヤのデータが大きい例を示し、同図(C)は、最下位レイヤのデータよりも最上位レイヤのデータが小さい例を示す。
【図21】第5の実施の形態における画像復号装置の概略構成を説明する図である。
【図22】最上位レイヤのデータが解読不可の場合に、最下位レイヤのデータを解読して復号する具体例を説明する図である。
【図23】第6の実施の形態におけるレイヤデータ置換システムの概略構成を説明する図である。
【図24】同レイヤデータ置換システムにおけるレイヤデータ置換部の詳細な構成を説明する図である。
【図25】第6の実施の形態におけるレイヤデータ復元システムの概略構成を説明する図である。
【図26】同レイヤデータ復元システムにおけるレイヤデータ逆置換部の詳細な構成を説明する図である。
【符号の説明】
10 画像符号化装置、18 レイヤ生成部、19 データ埋め込み部、20パケットヘッダ記録部、21 パケット生成部、30 画像復号装置、31 パケット解読部、32 レイヤ展開部、33 パケットヘッダ解読部、34 埋め込みデータ抽出部、50 データ埋め込みシステム、51 画像符号化部、52 符号化コードストリーム解析・レイヤ化部、53 データ埋め込み部、70データ抽出システム、71 埋め込みデータ抽出部、72 画像復号部、90画像復号装置、91 レイヤデータ比較部、110 画像符号化装置110、111 レイヤ生成部、112 レイヤデータ置換部、113 パケット生成部、130 画像復号装置、131 パケット解読部、132 レイヤ展開部、133 エラー検知部、134 レイヤデータ復元部、150 レイヤデータ置換システム、151 画像符号化部、152 符号化コードストリーム解析・レイヤ化部、153 レイヤデータ置換部、170 データ復元システム、171 レイヤデータ逆置換部、172 画像復号部
Claims (7)
- 入力画像を算術符号化し、符号化コードストリームを生成する算術符号化手段と、
上記符号化コードストリームを複数のレイヤに分割するレイヤ分割手段と、
各レイヤ毎に複数のパケットを生成するパケット生成手段と、
最上位レイヤ以外の所定レイヤにおける上記パケットのデータを算術符号化された任意のバイナリデータで置換する置換手段と
を備えることを特徴とする画像符号化装置。 - 上記置換手段は、最下位レイヤにおける上記パケットのデータを上記バイナリデータで置換することを特徴とする請求項1記載の画像符号化装置。
- 上記置換手段は、上記所定レイヤにおけるパケットボディに上記バイナリデータを埋め込み、上記所定レイヤにおけるパケットヘッダに上記バイナリデータのデータ量を記録することを特徴とする請求項1記載の画像符号化装置。
- 上記置換手段は、最下位のレイヤ及びその1つ上位のレイヤにおける上記パケットのデータを所定レイヤのデータ及び任意のバイナリデータで置換することを特徴とする請求項1記載の画像符号化装置。
- 入力画像を算術符号化し、符号化コードストリームを生成する算術符号化工程と、
上記符号化コードストリームを複数のレイヤに分割するレイヤ分割工程と、
各レイヤ毎に複数のパケットを生成するパケット生成工程と、
最上位レイヤ以外の所定レイヤにおける上記パケットのデータを算術符号化された任意のバイナリデータで置換する置換工程と
を有することを特徴とする画像符号化方法。 - 画像符号化装置において入力画像を算術符号化して符号化コードストリームを生成し、上記符号化コードストリームを複数のレイヤに分割して各レイヤ毎に複数のパケットを生成し、最上位レイヤ以外の所定レイヤにおける上記パケットのデータを算術符号化された任意のバイナリデータで置換して得た符号化コードストリームを入力して上記入力画像を復号する画像復号装置であって、
上記所定レイヤにおける上記パケットから上記バイナリデータを抽出して出力するデータ抽出手段と、
上記所定レイヤ以外の上記符号化コードストリームを復号する復号手段と
を備えることを特徴とする画像復号装置。 - 画像符号化装置において入力画像を算術符号化して符号化コードストリームを生成し、上記符号化コードストリームを複数のレイヤに分割して各レイヤ毎に複数のパケットを生成し、最上位レイヤ以外の所定レイヤにおける上記パケットのデータを算術符号化された任意のバイナリデータで置換して得た符号化コードストリームを入力して上記入力画像を復号する画像復号方法であって、
上記所定レイヤにおける上記パケットから上記バイナリデータを抽出して出力するデータ抽出工程と、
上記所定レイヤ以外の上記符号化コードストリームを復号する復号工程と
を有することを特徴とする画像復号方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002123044A JP3720791B2 (ja) | 2002-04-24 | 2002-04-24 | 画像符号化装置及び方法、並びに画像復号装置及び方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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