JP3705430B2 - 光信号伝送試験方法および光伝送路模擬装置 - Google Patents

光信号伝送試験方法および光伝送路模擬装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、光信号が伝搬する光ファイバ、光増幅中継器などの光伝送路の偏波モード分散による伝送特性の劣化を評価する光伝送試験方法および光伝送路を模擬する光伝送路模擬装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超高速光伝送および長距離光伝送では、光伝送路において光信号の群速度が2つの直交する偏波主軸により異なるという偏波モード分散(PMD:Polarization Mode Dispersion)による伝送品質の劣化が大きな問題となる。PMD特性は、光ファイバに加わる応力や環境温度の変化により経時変化を示すため、PMDによる伝送品質劣化は適応的に補償する必要がある[文献1:高橋ら]。PMDによる伝送品質劣化は、群遅延時間差(DGD:Differential Group Delay)や光ファイバへの入射光の偏光状態(SOP:State Of Polarization)など複数 の物理量に依存し、時間的に複雑な変化を示す。このため、PMD補償装置や超高速および長距離光伝送システムを研究開発する上で、複雑な経時変化を示す光伝送路を模擬して光伝送特性の試験を行うことが必要不可欠である。
【0003】
光伝送路を模擬する従来方法として、伝送品質劣化が依存する物理量のうち、DGDの値を変化させるPMDエミュレータがある。この従来のPMDエミュレータの構成を図10に示す。この伝送模擬装置では、送信側伝送装置11からの光信号を偏波分離手段12により直交する偏波によって2つの光信号に分配し、その分配された片方の信号光に可変遅延手段13により遅延を与え、分配された他方の光信号に可変遅延手段13で生じる損失と同じ損失を固定減衰器14によって与え、可変遅延手段13の透過信号光と固定減衰器14の透過信号光とを合波手段15で合波して受信側伝送装置16に入射するように系を構成する。
【0004】
可変遅延手段13によって一方の信号光に与える遅延量を制御することで、分波された2つの偏波状態によって伝搬遅延が異なるDGDを実現する。このようにして、超高速および長距離光伝送システムにおいて大きな問題となるDGDによる伝送品質劣化を模擬し、PMD補償器や送受信装置の性能を評価することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
敷設ファイバにはDGD値が波長に依存して変化する高次のPMDが存在し、超高速光伝送システムでは信号帯域が大きくなる為、単なるDGDだけでなく波長によってDGD値が変化する高次のPMDが伝送品質に与える影響も無視できなくなる[文献2:H.Rosenfeld]。従来の技術では、偏波によって分配した片 方の遅延を変化させることで直交偏波間での群遅延差DGD(1次のPMD)値しか変化させることができなかった。つまりDGD値が波長に依存して変化する高次のPMDを模擬することはできなかった。
【0006】
この発明は、1次および高次のPMD値を変化させることのできる光信号伝送試験方法および光伝送路模擬装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明の1観点では、送信信号光を直交する偏波によって分配し、分配された片方の信号光に波長によって異なる遅延(分散)を与え、偏波によって分配された他方の信号光に波長に依存しない遅延を与え、これら分散が与えられた信号光と遅延が与えられた信号光を合波して出射する。
この発明の他の観点では、送信信号光を直交する偏波によって分配し、分配された片方の信号光に波長によって異なる遅延(分散)を与え、また波長に依存しない遅延を与え、これら分散及び遅延が与えられた信号光と、前記分配された他方の信号光とを合波して出射する。
【0008】
これらの構成により、DGD値が波長に依存して変化する高次のPMDを模擬することができる。波長に依存しない遅延を変化させることで、任意のDGD(一次のPMD)値を設定することができ、分散値(波長によって異なる遅延値)を制御することで任意の高次のPMDを実現できる。従って、実際の敷設ファイバにより近い環境を模擬し、PMD補償器や送受信装置の性能評価を行うことが可能となる。
ここで、送信側伝送装置から入力された信号光を偏波により2つの経路に分配し、一方の経路を通過する信号光に可変遅延手段により波長に依存しない遅延を与えると共に分散付与手段により波長によって異なる遅延(分散)を与え、他方の経路を通過する信号光に第2の分散付与手段により分散を与える。両経路を通過した2つの信号光を合波手段により合波し、受信側伝送装置へ出力することにより、一次および高次のPMDの再現、一次および高次のPMD値の変化、群速度分散の再現、一次および高次のPMD、群速度分散の同時再現を実施することができる。
更に、第2の分散付与手段に可変減衰手段を直列接続する構成を付加することにより、可変減衰手段の減衰率を変化調整して両経路を通過する光信号の減衰を等しくすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下にこの発明の実施の形態を実施例により図面を参照して説明する。
図1はこの発明の実施例を示す。この実施例の光伝送路模擬装置は、信号光を直交する偏波によって分配する偏波分離手段12と、波長に依存しない可変遅延手段13と、波長により異なる遅延を与える分散付与手段21と、可変遅延手段13の透過光と分散付与手段21の透過光とを合波する合波手段15と、可変遅延手段13および分散付与手段21を制御する制御手段22とから構成される。
【0010】
送信側伝送装置11から入射された信号光は偏波分離手段12で偏波によって2つの経路23および24に分配され、一方の経路23を通る信号光は可変遅延手段13により波長に依存しない遅延が与えられ、他方の経路24を通る信号光は分散付与手段21で波長によって異なる遅延(分散)が与えられる。これら遅延が与えられた経路23よりの信号光と分散が与えられた経路24よりの信号光が合波手段15により合波されて、受信側伝送装置16へ出射される。
可変遅延手段13によって一方の経路23を通る信号光に与える遅延を制御することで、一次のPMD(DGD)値を変化させることができる。また、他方の経路24を通る信号光に与える分散値を制御することで、高次のPMD値を変化させることができる。従って、実際の敷設ファイバにより近い環境を模擬し、PMD補償器や光送受信装置の性能評価を行うことが可能となる。制御手段22はこれに設定された遅延値および分散値をそれぞれ信号光に付与するように、可変遅延手段13および分散付与手段21を制御する。
【0011】
図2は、この発明の他の実施例を示す。図1に示した実施例と異なる点は可変遅延手段13が設けられた経路23に、可変減衰手段26を設けられていることである。
この可変減衰手段26によって経路23の信号光の減衰率を制御することで、下記の条件でも偏波によって分配された2つの光信号の減衰率を等しくすることができる。▲1▼分散付与手段21の分散特性を変化させたときに損失も変化する場合、▲2▼分散付与手段21の損失が波長に依存して変化する場合。なお可変減衰手段26の減衰特性の制御は制御手段22により行う。
【0012】
図3はこの発明の更に他の実施例を示し、図1と対応する部分に同一参照番号を付けてある。この実施例では偏波分離手段12より信号光は経路23と24とに分離され、その一方の経路23に可変遅延手段13と分散付与手段21が直列に挿入され、他方の経路24には必要に応じて固定または可変の減衰器27が挿入される。経路23及び24の両透過信号光は合波手段15で合波される。
なお図1に示した例においても、可変遅延手段13での損失と分散付与手段21での損失とが異なる場合は、両経路23と24における損失が等しくなるように破線で示すように、経路23と24の一方に固定減衰器28を挿入することが好ましい。
【0013】
図4は、図1に示した実施例において、分散付与手段21としてファイバーブラッグレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)を用いて構成した例であ る。図4において図1と対応する部分に同一参照番号を付けてある。分散付与手段21として、経路24に光サーキュレータ21aが挿入され、偏波分離手段12よりの信号光は光サーキュレータ21aに入射され、光サーキュレータ21a内を通りその次のポートに接続されたファイバーブラッググレーティング(FBG)21bに入射される。この入射光はその波長に応じてファイバーブラッググレーティング21b内を伝搬して反射し、その反射光は光サーキュレータ21aに再び入射して、光サーキュレータ21a内を通り経路24に出射して合波手段15に達する。このようにして信号光は波長に応じて異なる遅延が光サーキュレータ21a及びFBG21bにより与えられる。
【0014】
この分散付与手段21においてはFBG21bにピエゾ素子などを用いて応力を加えることで分散特性を変化させることができる。例えば図4Aの破線曲線31の分散特性を実線曲線32の分散特性に変更することができる。あるいはFBG21bの温度を変化させることやFBG21bに温度勾配を付けることによっても、分散特性を制御できる。
また、送信側伝送装置11が出射する信号光、つまり偏波分離手段12に入射する信号光の波長を例えば図5Bに示すように、λ1からλ2に変化させることでも信号光に付与される分散値を制御することができる。偏波分離手段12に入射する信号光の波長を変化させる手段としては、一般には送信側伝送装置11内における光源の波長制御手段を用いればよい。あるいは偏波分離手段12の前段に光波長変換手段を挿入して送信側伝送装置11からの信号光の波長を変換して偏波分離手段12に入射してもよい。
【0015】
分散付与手段21としてはサーキュレータ21aおよびFBG21bにより構成する場合に限らず、例えば、分散補償光ファイバやアレー導波路格子(AWG:Arrayed waveguide grating)型分散補償器(アレー導波路格子形光分波器の各 分波光路に異なる遅延量の光遅延素子を挿入したもの)を用いてもよい。なお、FBGは小型で可変にすることができ、AWGは小型ではあるが比較的高価であり、分散補償光ファイバは入手し易く、安価かつ安定性がよいが可変にし難い。このようにして、高次のPMD値を制御することが可能である。
【0016】
分散特性や信号光の波長を変化させたときに高次のPMDだけでなくDGD値も変化する場合には、偏波によって分配された他方の光信号の遅延量を可変遅延手段13(図2)によって調整することで、DGD値は一定のまま、高次のPMD値のみを変化させることが出来る。
さらに、FBG21bの分散特性が持つリップルによって、現場の敷設ファイバが示す3次以上の高次PMD特性(DGD値の2次以上の波長微分に依存して大きく変化)を模擬することが可能である。図6Aは敷設ファイバのDGDスペクトル特性[文献3:H.Rosenfeld ]を示し、図6BはFBG21bを用いた伝送路模擬装置のDGDスペクトル特性の一例を示す。変調帯域において両者同程度のリップルがあり、この伝送路模擬装置が敷設ファイバのDGDスペクトル特性を模擬できることが判る。信号の伝送時には信号光は変調に応じた帯域幅(変調帯域)を信号光波長を中心にもつ。この変調帯域における遅延、分散特性をこの発明では偏波分離手段12に入射される信号光の波長を変化させて試験することができ、また模擬することができる。
【0017】
制御手段22によって可変遅延手段13における遅延量の制御と、分散付与手段21の分散特性の制御、もしくは、送信側光伝送装置11から出射される信号光の波長の制御をすることによって分散付与手段21において付与される分散量を経時的に変化させる。このことにより、温度、圧力、風、振動などにより複雑な経時変化を示す光伝送路を模擬して、光伝送装置の伝送特性やPMD補償器の評価が可能となる。
一般に光伝送路の遅延、分散量は無線のレーリイフェイジングのような確率分布をもってランダムに変化するもので、PMDによる品質劣化はバースト的に生じる。従って可変遅延手段13、分散付与手段21の遅延、分散の経時変化は、上記遅延量と上記分散量の値をそれぞれ設定した任意の確率分布に従うようにランダムに変動させるとよい。遅延量を任意の確率分布に従うようにランダムに変動させる手法の一例を図7に示す。ステップS1で遅延量が従う確率分布P(x)(例えば、マクスウェル分布)と、遅延量の最小値Dmin ・最大値Dmax と、サンプル数nと変動周期Tとを設定する。ステップS2でxがDmin 〜Dmax の範囲でのP(x)の最大値Pmax を計算する。次に、ステップS3において発生範囲がDmin 〜Dmax の乱数DR 、および、発生範囲が0〜Pmax の乱数PR をそれぞれ発生させる。
【0018】
ステップS4でPR <P(DR )であるかを判断する。つまりPR の値がDR を遅延量としたときのP(x)の値、つまり、P(DR )の値より小さければ、ステップS5でDR の値を遅延量と決定する。つまり、図8に示す遅延量と確率密度との関係を示す確率分布特性P(x)を満す乱数組(DR1,PR1)は採用され、分布特性から外れた乱数組(DR2,PR2)は不採用となり、ステップS2の乱数発生過程へ戻る。ステップS6で前回の遅延変動から変動周期Tの時間が経過するのを待ち、経過したら、ステップS7で可変遅延手段13を制御し遅延量をDR に変化させステップS8でこの遅延量の変化回数がn回になったかを判定し、n回になっていなければステップS2に戻り、次の遅延量を決めるために乱数発生過程へ戻る。
【0019】
この様にすると、遅延値のマクスウェル分布の値が大きいほど、その遅延量が採用される確率が上がり、採用される遅延量DR の確率分布はマクスウェル分布に従う。また、決定した遅延量をランダムな経時変化データとして保存しておいて、後に保存データに従って遅延量を変動させても良い。保存データとして敷設ファイバのDGD値の変動データの測定値を用いても良い。この場合、全く同じ条件での遅延量の変動が再現でき、伝送特性評価の再現性を確認するのに有効である。上記手法により遅延量だけでなく分散値も任意の確率分布に従うように変動させることが出来る。実際に敷設されている光ファイバは、DGD値の確率分布はマクスウェル分布に従うと報告されている[文献3:C.D.Poole et al ]。従って、上記遅延量の確率分布がマクスウェル分布に従うよう変動させることによって、実際の敷設光ファイバを模擬することが可能となる。
【0020】
実際に光伝送路の遅延値、分散値の変動が生じる時間間隔は一定しないが、空中に設置された架線など変動が速い場合は10分〜20分程度から海底ケーブルなど安定したものは数時間程度の内であるが、変動周期Tは分単位〜時間単位が考えられ、また変調信号の劣化への影響の点からは、変動が使用(伝送)ビット周期と同程度となると誤りとなる点から、バースト的誤りのおそれを知る点からすれば変動周期Tは使用ビット周期の10倍程度以上が好ましいが、上限は対象となる光伝送路の遅延値、分散値の変動が生じる時間間隔程度にすればよい。
このように設定された確率分布に従う、ランダムに変化する遅延量(分散量)を発生させる装置は図7に示す手法を実行するものとして例えば図9Aに示すものが考えられる。
【0021】
入力部41から遅延量が従う確率分布P(x)、遅延量の最小値Dmin 、最大値Dmax 、サンプル数n、変動周期Tなどが入力され、これらは記憶部42に記憶され、ステップS2における計算がPmax 計算部43で行われ、ステップS3で発生される乱数DR ,PR が乱数生成部44で生成され、ステップS4で行われる、発生乱数が設定確率分布内にあるか否かの判定が判定部45で行われ、ステップS6における変動周期Tを経過したか否かがタイマ46で決定され、ステップS7における決定した遅延量の可変遅延手段への設定制御は遅延量設定部47で行われ、遅延量設定回数がn回になったか否かの判定や全体の制御は制御部48で行われる。
図9Aに示した装置は制御手段22内に設けられる。この装置をコンピュータによりプログラムを実行して機能させることもできる。この場合はこの遅延量変動生成設定プログラムがプログラムメモリ49に格納され、このプログラムCPU乃至マイクロプロセッサよりなる制御部48により実行し、ブロック43〜47で示す各部の機能が実行される。
【0022】
予め保存したランダムな経時変化データを利用する場合は、例えば図9Bに示すように、記憶部51に前述した遅延量の経時変化データが格納され制御部52は設定された変動周期Tの経過をタイマ53の制御、監視により検出し、変動周期Tの経過ごとに記憶部51から経時変化データを順次1つづつ読み出して遅延量設定部54によりその読み出した1つの遅延量を可変遅延手段13に設定するようにされる。
図9A及びBに示した装置は分散値の変動生成にも同様に適用できる。
上述において、可変遅延手段13、分散付与手段21に対する制御は片方ずつ行う場合、同時に行う場合がある。
【0023】
図11を参照して第4の実施例を説明する。この第4の実施例は、送信側伝送装置11から入力する光信号を偏波によって分配する偏波分離手段12と、波長に依存しない遅延を与える可変遅延手段13と、波長により異なる遅延を与える分散付与手段21および第2の分散付与手段21’と、偏波により分配された2つの光信号を合波する合波手段15と、可変遅延手段13、分散付与手段21および第2の分散付与手段21’を制御する制御手段22を具備している。送信側伝送装置11から入力された信号光を偏波により2つの経路に分配し、一方の経路を通過する信号光に可変遅延手段13により波長に依存しない遅延を与えると共に分散付与手段21により波長によって異なる遅延(分散)を与え、他方の経路を通過する信号光に第2の分散付与手段21’により分散を与える。両経路を通過した2つの信号光を合波手段15により合波し、受信側伝送装置16へ出力する。
ここで、以上の伝送路模擬装置の第4の実施例は、一方の経路において可変遅延手段13および分散付与手段21により与えられる遅延と他方の経路において第2の分散付与手段21’により与えられる遅延の違いにより、一次および高次のPMDを再現することができる。
そして、可変遅延手段13を制御して一方の経路を通過する信号光に与える波長に依存しない遅延の量を変化させることにより、一次のPMD(DGD)値を変化させることができる。
また、双方の経路を通過する信号光に与える分散値をそれぞれ分散付与手段21および第2の分散付与手段21’により制御することにより、高次のPMD値を変化させることができる。
更に、両経路に与える分散付与手段21と第2の分散付与手段21’の分散値を等しくすることにより、波長により伝搬遅延が変化する群速度分散を再現することができる。
また、両経路に与える遅延の波長依存性を制御することにより一次のPMD、高次のPMD、群速度分散を同時に再現することができる。
図12を参照して第5の実施例を説明する。この第5の実施例は、図11を参照して図示説明された第4の実施例において、他方の経路において第2の分散付与手段21’に可変減衰手段26を直列接続したものに相当する。
ところで、分散付与手段21および第2の分散付与手段21’は、その分散特性、即ち、分散値を変化させると、その損失も変化する。分散付与手段の分散特性を変化させたことに起因するこの損失の変化は、可変減衰手段26の減衰率を変化調整することにより、両経路を通過する光信号の減衰を等しくすることができる。そして、分散付与手段21および第2の分散付与手段21’は、波長に依存してその損失が変化する。この場合も、可変減衰手段26の減衰率を変化調整することにより、両経路を通過する光信号の減衰を等しくすることができる。
図13は一次および高次のPMD、群速度分散を同時に模擬した場合の各経路に与える分散値の波長依存性を示す図である。各経路に等しく与えられる分散が群速度分散に対応しており、各経路に与えられる分散の差が二次のPMDに対応している。分散の傾きの差は三次のPMDに対応する。
このように、実際の敷設ファイバにより近い環境を模擬し、PMD補償器や送受信装置の性能評価を行うことが可能となる。
【発明の効果】
この発明によれば、直交偏波間での群遅延差(DGD)だけでなく、波長によりDGD値が変化する高次のPMDを実現することが出来る。実際の敷設ファイバで起こるPMDの経時変化もDGDおよび高次のPMDを例えばコンピュータ制御により変化させることで実現させることも可能となる。従って、実際の敷設ファイバにより近い環境を模擬し、PMD補償器や送受信装置の性能評価を行うことが可能となる。
参考文献
[1] T.Takahashi et al.,Electronics Letters,vol.30,no.4,p.348,1994.
[2] H.Rosenfeld et al.,OFC 2001,PD27-1,(2001).
[3] C.D.Poole et al.,Opt.Lett.,no.16,p.372(1991).
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明装置の実施例の構成を示すブロック図。
【図2】この発明装置の他の実施例の構成を示すブロック図。
【図3】この発明装置の更に他の実施例の構成を示すブロック図。
【図4】図1に示した実施例において分散付与手段21を具体化した例を示すブロック図。
【図5】信号光に付与する分散値の制御方法を説明するためのDGD値−波長特性を示す図。
【図6】Aは敷設ファイバのDGDスペクトル特性の例を示す図、Bはこの発明の伝送路模擬装置により得られたDGDスペクトル特性の一例を示す図である。
【図7】遅延量制御手法の一例の手順を示す流れ図。
【図8】遅延量の確率密度分布を示す図。
【図9】遅延量の経時的変化させる装置の例を示す機能構成図。
【図10】従来の光伝送路模擬装置の構成を示す図。
【図11】第4の実施例を説明するブロック図。
【図12】第5の実施例を説明するブロック図。
【図13】PMDおよび群速度分散を同時に模擬する場合の各経路の分散を示す図。

Claims (17)

  1. 光伝送装置の送信側と受信側の間にある伝送路における偏波モード分散(PMD)による信号波形劣化を模擬する光信号伝送試験方法において、
    送信側から出射される信号光を直交する2つの偏波へ分波し、
    その分波された一方の信号光に波長に依存しない遅延を与え、前記分波された他方の信号光に波長によって異なる遅延(分散)を与えた後、これら2つの信号光を合波して受信する系を構成し、
    前記遅延と前記分散を制御して一次および高次のPMDを変化させることを特徴とする光信号伝送試験方法。
  2. 光伝送装置の送信側と受信側の間にある伝送路における偏波モード分散(PMD)による信号波形劣化を模擬する光信号伝送試験方法において、
    送信側から出力される光信号を直交する2つの偏波へ分波し、一方の信号光に波長に依存しない遅延および波長によって異なる遅延(分散)を与え、他方の信号光に分散を与えた後、2つの信号光を合波して受信する系を構成し、前記遅延と前記分散2つを制御し、一次および高次のPMDを変化させることを特徴とする光信号伝送試験方法。
  3. 請求項1および請求項2の内の何れかに記載される光信号伝送試験方法において、
    上記遅延の値および/または前記分散の値を時間の経過と共に変動させることを特徴とする光信号伝送試験方法。
  4. 請求項3の光信号伝送試験方法において、
    前記遅延の値および/または前記分散の値の確率分布を、それぞれ予め決めた分布に従うようランダムに変動させることを特徴とする光信号伝送試験方法。
  5. 請求項3の光信号伝送試験方法において、
    前記遅延の値および/または前記分散の値を予め求めた経時変化データに従って変動させることを特徴とする光信号伝送試験方法。
  6. 請求項1ないし請求項5の内の何れかに記載される光信号伝送試験方法において、
    前記光伝送装置の送信側から出射される信号光の波長を変化させることを特徴とする光信号伝送試験方法。
  7. 光伝送信号の偏波モード分散による波形劣化を模擬する光伝送路模擬装置において、
    偏波によって信号光を分配する光分配手段と、
    前記光分配手段によって分配された一方の信号光に設定した波長に依存しない遅延を与える可変遅延手段と、
    前記光分配手段によって分配された他方の信号光に設定した分散(波長によって異なる遅延)を与える分散付与手段と、
    前記可変遅延手段により遅延が与えられた光信号と前記分散付与手段により分散が与えられた信号光とを合波する合波手段と、
    前記可変遅延手段を設定した遅延値に、前記分散付与手段を、設定した分散値にそれぞれ制御する制御手段とを具備することを特徴とする光伝送路模擬装置。
  8. 光伝送信号の偏波モード分散による波形劣化を模擬する光伝送路模擬装置において、
    偏波によって信号光を分配する光分配手段と、
    前記光分配手段によって分配された一方の信号光に設定した波長に依存しない遅延を与える可変遅延手段と、
    前記可変遅延手段と直列に設けられ、前記分配された一方の信号光を設定した割合で減衰させる可変減衰手段と、
    前記光分配手段によって分配された他方の信号光に設定した分散(波長によって異なる遅延)を与える分散付与手段と、
    前記可変遅延手段及び前記可変減衰手段を透過した信号光と、前記分散付与手段を透過した信号光とを合波する合波手段と、
    前記可変遅延手段、前記分散付与手段および前記可変減衰手段を、それぞれ設定した遅延値、分散値および減衰割合に制御する制御手段とを
    具備することを特徴とする光伝送路模擬装置。
  9. 光伝送信号の偏波モード分散による波形劣化を模擬する光伝送路模擬装置において、
    偏波によって信号光を分配する光分配手段と、
    前記光分配手段によって分配された一方の信号光に設定した波長に依存しない遅延を与える可変遅延手段と、
    前記可変遅延手段と直列に設けられ、設定した分散(波によって異なる遅延)を与える分散付与手段と、
    前記可変遅延手段及び前記分散付与手段を透過した信号光と、前記分配された他方の信号光とを合波する合波手段と、
    前記可変遅延手段および前記可変分散付与手段を、それぞれ設定した遅延値および分散値に制御する光伝送路模擬装置。
  10. 光伝送信号の偏波モード分散による波形劣化を模擬する装置において、
    偏波によって信号光を分配する光分配手段と、前記光分配手段によって分配された一方の信号光に設定した遅延を与える可変遅延手段と、前記可変遅延手段と直列に設けられ、設定した分散(波長によって異なる遅延)を与える分散付与手段と、前記光分配手段によって分配された他方の信号光に設定した分散を与える第2の分散付与手段と、前記分散付与手段を通過した信号光と前記第2の分散付与手段を通過した信号光とを合波する合波手段と、前記可変遅延手段、前記分散付与手段および第2の分散付与手段を設定した遅延値と分散値に制御する制御手段を具備することを特徴とする伝送路模擬装置。
  11. 光伝送信号の偏波モード分散による波形劣化を模擬する装置において、
    偏波によって信号光を分配する光分配手段と、前記光分配手段によって分配された一方の信号光に設定した遅延を与える可変遅延手段と、前記可変遅延手段と直列に設けられ、設定した分散(波長によって異なる遅延)を与える分散付与手段と、前記光分配手段によって分配された他方の信号光を設定した割合で減衰させる可変減衰手段と、前記可変減衰手段と直列に設けられ、設定した分散を与える第2の分散付与手段と、前記分散付与手段を通過した信号光と前記第2の分散付与手段を通過した信号光とを合波する合波手段と、前記可変遅延手段および前記分散付与手段、第2の分散付与手段および前記可変減衰手段をそれぞれ設定した遅延値と分散値と減衰割合に制御する制御手段を具備することを特徴とする伝送路模擬装置。
  12. 請求項6ないし請求項11の内の何れかに記載される光伝送路模擬装置において、
    前記分散付与手段はファイバーグレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)により構成されていることを特徴とする光伝送路模擬装置。
  13. 請求項6ないし請求項11の内の何れかに記載される光伝送路模擬装置において、
    上記分散付与手段は分散補償光ファイバーにより構成されていることを特徴とする光伝送路模擬装置。
  14. 請求項6ないし請求項11の内の何れかに記載される光伝送路模擬装置において、
    上記分散付与手段はアレー導波路格子(AWG:Arrayed waveguide grating )型分散補償器により構成されていることを特徴とする光伝送路模擬装置。
  15. 請求項6ないし請求項11の内の何れかに記載される光伝送路模擬装置において、
    前記光分配手段に入射される前記信号光の波長を変化させる波長変化手段を備えることを特徴とする光伝送路模擬装置。
  16. 請求項6ないし請求項11の内の何れかに記載される光伝送路模擬装置において、
    前記制御手段は予め設定した確率分布となる遅延の値および/または分散の値を所定時間ごとにランダムに発生させる手段と、前記発生した遅延値および分散値を前記設定した遅延値、分散値とする手段とを備えることを特徴とする光伝送路模擬装置。
  17. 請求項6ないし請求項11の内の何れかに記載される光伝送路模擬装置において、
    前記制御手段は遅延値および分散値のランダムな経時変化データを格納する記憶部と、所定時間ごとに前記経時変化データの遅延値および/または分散値を読み出して前記設定した遅延値および分散値とする手段とを備えることを特徴とする光伝送路模擬装置。
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