JP3691440B2 - スライディングモード制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スライディングモード制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、制御対象物の複数の状態量(例えば、制御対象物の変位、変位速度等)を所望の目標状態量に制御する場合には、例えばPID制御や最適レギュレータ等を用いたフィードバック制御が一般に行われている。
【0003】
しかしながら、PID制御等の従来の制御手法では、外乱や、制御対象物の特性変化等に対する状態量の収束の速応性や安定性を十分に確保することが困難なものとなっていた。また、最適レギュレータにあっては、制御に際して制御対象物のモデルを構築する必要があり、そのモデルと実際の制御対象物との誤差(モデル誤差)が制御対象物の動的な特性変化等によってある程度大きくなっていくと、状態量の収束の速応性や安定性を十分に確保することが困難である。
【0004】
このため、近年では、現代制御のスライディングモード制御によって、制御対象物の状態量を制御することが行われるようになってきている。
【0005】
このスライディングモード制御は、制御対象物の複数の状態量を変数とする線形関数により表される超平面(図7参照)をあらかじめ構築しておき、それらの状態量をハイゲイン制御によって、超平面上に高速で収束させ、さらに、所謂、等価制御入力によって、状態量を超平面上に拘束しつつ超平面上の所要の平衡点(目標状態量に対応する点)に収束させる、可変構造型のフィードバック制御手法である。
【0006】
このようなスライディングモード制御は、制御対象の複数の状態量が超平面上に収束してしまえば、外乱等の影響をほとんど受けずに、超平面上の平衡点に状態量を安定に収束させることができるという優れた特性をもっており、従って、外乱等に対する状態量の収束の速応性やその安定性を高めることが可能である。
【0007】
ところで、かかるスライディングモード制御により制御対象物の状態量を制御する場合、その収束の速応性や安定性を十分に確保する上では、制御対象物に存するむだ時間を考慮することが望ましい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる背景に鑑み、制御対象物の状態量をスライディングモード制御を用いて制御する場合に、制御対象物のむだ時間を考慮して、制御対象物の状態量の目標状態量への収束の速応性やその安定性を高めることができるスライディングモード制御方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のスライディングモード制御方法は、かかる目的を達成するために、制御対象物の出力の複数の状態量を制御すべき状態量として該複数の状態量を変数とする線形関数によりスライディングモード制御用の超平面を設定し、該状態量を該超平面上に収束させ、さらに、該状態量を該超平面上に拘束しつつ該超平面上の平衡点に収束せしめて該状態量を該平衡点により表される目標状態量に制御するように前記制御対象物の入力を操作するスライディングモード制御方法において、前記制御対象物の入力及び出力間のむだ時間後の前記複数の状態量を、該状態量の現在の検出値と該制御対象物の現在までの入力とから推定する状態予測部を備え、該状態予測部により推定された前記複数の状態量の推定値を前記線形関数の変数として用いたことを特徴とする。
【0010】
かかる本発明によれば、制御対象物の状態量の目標状態量への収束の速応性やその安定性を高めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図1乃至図17を参照して説明する。尚、本実施形態では、内燃機関の空燃比制御をスライディングモード制御を用いて行う場合を例にとって説明する。
【0012】
図1を参照して、1は本実施形態においてスライディングモード制御を用いて空燃比制御を行う例えば4気筒のエンジン(内燃機関)であり、このエンジン1の各気筒毎の排気管2はエンジン1の近傍で単一の主排気管3に集合され、この主排気管3に二つの三元触媒装置4,5が上流側から順に介装されている。尚、下流側の触媒装置5はこれを省略してもよい。
【0013】
このエンジンシステムの空燃比制御を行う本実施形態の空燃比制御装置は、触媒装置4の上流側でエンジン1の各気筒毎の排気管2の集合箇所に設けられた第1排気ガスセンサとしての広域空燃比センサ6と、触媒装置4の下流側(触媒装置5の上流側)で主排気管3に設けられた第2排気ガスセンサとしてのO2センサ(酸素濃度センサ)7と、これらのセンサ6,7の出力等に基づき後述の制御を行う制御ユニット8とにより構成されている。尚、制御ユニット8には、前記広域空燃比センサ6やO2センサ7の他に、図示しない回転数センサや吸気圧センサ、冷却水温センサ等の各種のセンサの検出信号が与えられるようになっている。
【0014】
広域空燃比センサ6は、O2センサにより構成されたものであり、触媒装置4の上流側の排気管2の集合箇所における排気ガスの空燃比を示す酸素濃度(これはエンジン1に供給された混合気の空燃比に相当する)に応じたレベルの信号を出力する。この場合、広域空燃比センサ6の出力信号は、制御ユニット8に設けられたフィルタ9を介して高周波ノイズが除去された後にリニアライザ10によって、排気ガスの酸素濃度(空燃比)の広い範囲にわたって、それに比例したレベルの信号に変換される。以下、本実施形態では、出力信号をこのようにリニアライズしてなる広域空燃比センサ6をLAFセンサ6と称する。
【0015】
また、触媒装置4の下流側のO2センサ7は、触媒装置4を通過した排気ガスの酸素濃度(触媒装置4を通過した後の排気ガスの空燃比)に応じたレベルの信号を出力する。この場合、このO2センサ7の出力信号は、図2に示すように、エンジン1に供給される空燃比(排気ガスの空燃比)が所定の適正値の近傍範囲に存するような状態で、その排気ガスが触媒装置4を通過した後の酸素濃度にほぼ比例した高感度な変化を生じるものとなっている。尚、O2センサ7の出力信号は制御ユニット8に設けられたフィルタ11により高周波ノイズが除去される。
【0016】
制御ユニット8はマイクロコンピュータを用いて構成されたものであり、その主要な機能的構成として、エンジン1への基本燃料噴射量Timを求める基本燃料噴射量算出部12と、エンジン1の排気還流率(エンジン1の吸入空気中に含まれる排気ガスの割合)や、エンジン1の図示しないキャニスタのパージ時にエンジン1に供給される燃料のパージ量、エンジン1の冷却水温、吸気温等を考慮して基本燃料噴射量Timを補正するための第1補正係数KTOTALを求める第1補正係数算出部13と、LAFセンサ6の箇所の目標空燃比からその目標空燃比に対応したエンジン1の吸入空気の充填効率を考慮して基本燃料噴射量Timを補正するための第2補正係数KCMDMを求める第2補正係数算出部14と、エンジン1の基準空燃比KBS(LAFセンサ6の箇所の基準空燃比)を設定する基準空燃比設定部15と、その基準空燃比KBSをO2センサ7の出力に基づき補正してLAFセンサ6の箇所の目標空燃比KCMDを求める目標空燃比算出部16と、この目標空燃比KCMDにLAFセンサ6の箇所の空燃比を収束させるようにエンジン1の燃料噴射量(燃料供給量)をLAFセンサ6の出力に基づきフィードバック制御するフィードバック制御部17とを備えている。
【0017】
この場合、基本燃料噴射量算出部12は、エンジン1の回転数と吸気圧とから、それらにより規定される基準の燃料噴射量をあらかじめ設定されたマップを用いて求め、その基準の燃料噴射量をエンジン1の図示しないスロットル弁の有効開口面積に応じて補正することで基本燃料噴射量Timを算出する。
【0018】
尚、このような基本燃料噴射量Timや、前記第1補正係数KTOTAL、第2補正係数KCMDMの具体的な算出手法は、特開平5−79374号公報等に本願出願人が開示しているので、ここでは詳細な説明を省略する。また、第1補正係数KTOTAL及び第2補正係数KCMDMによる基本燃料噴射量Timの補正は、第1補正係数KTOTAL及び第2補正係数KCMDMを基本燃料噴射量Timに乗算することで行われ、これにより要求燃料噴射量Tcylが得られる。
【0019】
また、基準空燃比設定部15は、エンジン1の回転数と吸気圧とから、それらにより規定されるエンジン1の基準空燃比KBSをあらかじめ設定されたマップを用いて求める。
【0020】
目標空燃比算出部16は、LAFセンサ6の箇所からO2センサ7の箇所にかけての主排気管3の触媒装置4を含む排気系(図1で参照符号Aを付した部分)の状態量(詳しくはO2センサ7の箇所での酸素濃度の値、及びその変化量もしくは変化速度等の変化度合)を該排気系Aに存するむだ時間を考慮して推定する状態予測部18と、その状態予測部18により推定された状態量に基づき本発明に係わる適応スライディングモード制御を用いて前記基準空燃比KBSの補正量を求める適応スライディングモード制御部19とを具備し、求められた補正量により基準空燃比KBSを補正する(補正量を基準空燃比KBSに加算する)ことで、前記目標空燃比KCMDを算出する。かかる目標空燃比算出部16の状態予測部18及び適応スライディングモード制御部19の詳細は後述する。
【0021】
フィードバック制御部17は、本実施形態では、LAFセンサ6の検出空燃比が前記目標空燃比に収束するように、エンジン1の各気筒への全体的な燃料噴射量をフィードバック制御する大局的フィードバック制御部20と、エンジン1の各気筒毎の燃料噴射量をフィードバック制御する局所的フィードバック制御部21とにより構成されている。
【0022】
ここで、大局的フィードバック制御部20は、LAFセンサ6の検出空燃比が目標空燃比に収束するように、前記要求燃料噴射量Tcylを補正するフィードバック補正係数KFBを求めるものである。この場合、大局的フィードバック制御部20は、LAFセンサ6の検出空燃比と目標空燃比とからそれらの偏差が解消するように周知のPID制御を用いてフィードバック補正係数KFBを求めるPID制御部22と、LAFセンサ6の検出空燃比と目標空燃比とからエンジン1の運転状態の変化や特性変化等の動的変化を考慮してフィードバック補正係数KFBを適応的に求める漸化式形式の制御器である適応制御部23(図ではSTRと称している)とをそれぞれ独立的に具備している。そして、大局的フィードバック制御部20は、それらのPID制御部22及び適応制御部23により各別に求められるフィードバック補正係数KFBを切換部24で適宜、切り換えて、いずれか一方のフィードバック補正係数KFBを前記要求燃料噴射量Tcylに乗算してこれを補正する。以下、PID制御部22によるフィードバック補正係数KFBをKLAFと称し、適応制御部23によるフィードバック補正係数KFBをKSTRと称する。かかる大局的フィードバック制御部20の詳細は後述する。
【0023】
尚、LAFセンサ6の出力は、PID制御部22と適応制御部23とに、それぞれの制御特性に合わせた周波数帯域のフィルタ24,25を介して入力される。
【0024】
一方、局所的フィードバック制御部21は、LAFセンサ6の検出空燃比(エンジン1の気筒毎の排気管2の集合部の空燃比)から、各気筒毎の実空燃比#nA/F(n=1,2,3,4) を推定するオブザーバ26と、このオブザーバ26により推定された各気筒毎の実空燃比#nA/F から各気筒毎の空燃比のばらつきを解消するよう、PID制御を用いて各気筒毎の燃料噴射量のフィードバック補正係数#nKLAFをそれぞれ求める複数(気筒数個)のPID制御部27とを具備する。
【0025】
ここで、オブザーバ26は、それを簡単に説明すると、各気筒毎の実空燃比#nA/Fの推定を次のように行うものである。すなわち、エンジン1からLAFセンサ6にかけてのシステムを、各気筒毎の実空燃比#nA/Fを入力として、排気管2の集合部にLAFセンサ6により検出される空燃比を出力するシステムと考え、これを、LAFセンサ6の検出応答遅れ(例えば一次遅れ)や、排気管2の集合部の空燃比に対する各気筒毎の空燃比の時間的寄与度を考慮して、モデル化する。そして、そのモデルの基で、LAFセンサ6の検出空燃比から、逆算的に各気筒毎の実空燃比#nA/F を推定する。
【0026】
尚、このようなオブザーバ26は、本願出願人が例えば特開平7−83094号公報に詳細に開示しているので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0027】
また、局所的フィードバック制御部21の各PID制御部27は、LAFセンサ6の検出空燃比を、前回のサイクルタイムで各PID制御部27により求められたフィードバック補正係数#nKLAFの全気筒についての平均値により除算してなる値を各気筒の空燃比の目標値として、その目標値とオブザーバ26により求められた各気筒毎の実空燃比#nA/Fとの偏差が解消するように、今回サイクルタイムにおける、各気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAFを求める。そして、局所的フィードバック制御部21は、前記要求燃料噴射量Tcylに大局的フィードバック制御部20のフィードバック補正係数KFBを乗算・補正してなる値に、各気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAFを乗算することで、各気筒の出力燃料噴射量#nTout(n=1,2,3,4)を求める。
【0028】
このようにして求められた各気筒の出力燃料噴射量#nToutは、制御ユニット8に備えた付着補正部28により吸気管の壁面付着を考慮した補正が各気筒毎になされた後、エンジン1の図示しない燃料噴射装置に与えられ、その付着補正がなされた出力燃料噴射量#nToutで、エンジン1の各気筒への燃料噴射が行われるようになっている。尚、上記付着補正については、本願出願人が例えば特開平8−21273号公報に詳細に開示しているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0029】
次に、前記目標空燃比算出部16の状態予測部18及び適応スライディングモード制御部19を詳細に説明する。
【0030】
本実施形態では、目標空燃比算出部16は、触媒装置4の下流側のO2センサ7の箇所における排気ガスの酸素濃度を触媒装置4の排気ガス浄化能力が最大となる所定の適正値に整定させるように、前記基準空燃比KBSを補正して、触媒装置4の上流側のLAFセンサ6の箇所における目標空燃比KCMDを求めるものであり、LAFセンサ6の箇所からO2センサ7の箇所にかけての主排気管3の触媒装置4を含む排気系A(図1参照)を制御対象(プラント)としている。そして、上記のように基準空燃比KBSを補正するための補正量を、状態予測部18及び適応スライディングモード制御部19により、制御対象である上記排気系Aに存するむだ時間を考慮して適応スライディングモード制御を用いて求めるものである。尚、以下の説明に際して、LAFセンサ6の箇所の空燃比をCAT前A/Fと称し、O2センサ7の箇所の酸素濃度をCAT後A/Fと称する。
【0031】
上記のように制御対象である排気系A(以下、対象排気系Aという)にむだ時間を考慮した適応スライディングモード制御を適用するために、本実施形態では、まず、対象排気系Aを図3に示すようにむだ時間を含むバネマス系(二次遅れ系)によりモデリングした。
【0032】
図3において、このバネマス系では、質量体29(この質量Mは“1”とする)がバネ定数Kのバネ30と減衰係数Cの減衰器31とにより支持されており、質量体29に加わる加振力がCAT前A/Fに相当するものとし、その加振力による質量体29の変位量x1がCAT後A/Fに相当するものとする。また、CAT前A/Fは、前記フィードバック制御部17等により制御可能な空燃比成分u(ここでは単に入力uと称する)と、ノイズ等の制御不能な空燃比成分L(ここでは外乱Lと称する)との総和(加算したもの)であるとする。そして、これらの入力u及び外乱Lには、排気系Aのむだ時間dが含まれるものとし、むだ時間d前の入力u(t−d)及び外乱L(t−d)がこのバネマス系の加振力として入力されるのとする。
【0033】
このようなバネマス系モデルにおいて、質量体29の変位量に相当するCAT後A/Fの値をx1、その変化速度をx2とすると、そのモデルの状態方程式は、前記バネ定数K、減衰係数C等を用いて次式(1)により表される。
【0034】
【数1】
【0035】
そして、この状態方程式(1)をブロック図で示すと、図4に示すように対象排気系Aのプラントモデルが得られる。尚、同図において“s”はラプラス演算子である。
【0036】
本実施形態の状態予測部18及び適応スライディングモード制御部19は、このような対象排気系Aのプラントモデルの基で構築されたものであり、以下にこれらの詳細を説明する。
【0037】
まず、状態予測部18は、後に詳細を説明する適応スライディングモード制御部19による適応スライディングモード制御に際して、対象排気系Aのむだ時間dを補償するためのものであり、LAFセンサ6により検出されるCAT前A/FとO2センサ7により検出されるCAT後A/Fとから、現在までのCAT前A/Fに対応して排気系Aのむだ時間d後にO2センサ7により検出されるCAT後A/Fの状態量を推定するものである。ここで、上記状態量は、本実施形態では、O2センサ7により検出されるCAT後A/Fの値(実際にはO2センサの出力レベル)と、そのCAT後A/Fの変化量もしくは変化速度(実際にはO2センサの出力レベルの変化量もしくは変化速度)との二つである。
【0038】
状態予測部18は、このような推定を行うために、次のような処理を行うように構築されている。
【0039】
すなわち、状態予測部18は、前記図4のプラントモデルからむだ時間項(図4の“e-ds”で表された部分)を省き、且つ、前記各定数C,K,bをそれぞれあらかじめ定めた設定値CM,KM,bMで置き換えてなる図5に示す遅れ要素のモデル(プラントモデル)を用いて、前記の推定を行う。この場合、図5の遅れ要素のモデルでは、前記式(1)に対応する状態方程式は、次式(2)により表される。
【0040】
【数2】
【0041】
ここで、図6及び式(2)において、x1M,x2Mは、図5のプラントモデルにおけるCAT後A/Fの値、及びその変化量もしくは変化速度(状態量)である。尚、上記設定値CM,KM,bMは実験等に基づき定める。
【0042】
そして、状態予測部18は、この式(2)の入力U(t)として、前記LAFセンサ6により実際に検出されたCAT前A/Fを用いて、状態方程式(2)を時系列で解き、上記状態量x1M,x2Mを求める。さらに、この求めた状態量x1M,x2Mと現在時刻tのCAT後A/Fの状態量x1,x2とから次式(3)により、現在時刻tからむだ時間d後の前記CAT後A/Fの状態量の推定値x1ハット(=CAT後A/Fの推定値)、x2ハット(=CAT後A/Fの変化量もしくは変化速度の推定値)を求める。
【0043】
【数3】
【0044】
ここで、式(3)において、“eAt”は状態方程式(2)を解いた時に得られる行列指数関数であり、“dM”は対象排気系Aのむだ時間dの設定値(同定値)である。この場合、むだ時間dMは実際のむだ時間dと同じか、もしくは大きめの値に設定されている(dM≧d)。また、式(3)の第1項では、O2センサ7の出力により実際に得られた状態量x1,x2(CAT後A/Fの値、及びその変化量もしくは変化速度)を用いる。
【0045】
上式(3)において、右辺第1項は、現在時刻tから対象排気系Aのむだ時間d後の時刻t+dまでの間で対象排気系Aに入力される入力U(時刻t−dから時刻tまでのCAT前A/F)が“0”である場合に、むだ時間d後にO2センサ7により検出されるCAT後A/Fの状態量を推定する演算項である。
【0046】
また、式(3)の右辺第2項及び第3項は、現在時刻tからむだ時間d後の時刻t+dまでの間で対象排気系Aに入力される入力U(時刻t−dから時刻tまでのCAT前A/F)によるむだ時間d後のO2センサ7により検出されるCAT後A/Fの状態量の変化量を推定する演算項である。
【0047】
このような推定演算を行う状態予測部18は、それをブロック図で表すと、図6に示すように構成されている。すなわち、該状態予測部18は、その構成を大別すると前記式(3)の右辺第1項の推定演算を行う推定部32と、前記状態方程式(2)を解く演算や式(3)の右辺第2項及び第3項の推定演算を行う推定部33とにより構成されている。
【0048】
そして、推定部32には、前記の推定演算を行うために、O2センサ7の出力から実際に得られる状態量(CAT後A/Fの値x1、及びその変化量もしくは変化速度x2)が与えられる。この場合、O2センサ7の出力により得られる状態量は必要に応じて要素34によりフィルタリングやスケーリングが施されて、推定部32に与えられる。尚、図6では、説明の便宜上、O2センサ7から直接的にCAT後A/Fの値x1、及びその変化量もしくは変化速度x2の両者が与えられるように記載したが、実際には、CAT後A/Fの変化量もしくは変化速度x2は、制御ユニット8内で演算により求められる。
【0049】
また、推定部33には、前記の推定演算を行うために、LAFセンサ6の出力から実際に得られるCAT前A/Fが前記入力U(=u+L)として与えられる。この場合、LAFセンサ6の出力により得られるCAT前A/Fは必要に応じて要素35によりフィルタリングやスケーリングが施されて、推定部33に与えられる。
【0050】
そして、状態予測部18は、各推定部32,33により求められた値を加算し、それを、むだ時間d後にO2センサ7により検出されるCAT後A/Fの状態量の推定値x1ハット,x2ハットとして適応スライディングモード制御部19に出力する。この場合、各推定部32,33により求められた値は、それぞれ必要に応じて要素36,37によりフィルタリングやスケーリングが施された後に加算され、さらに、その加算結果(むだ時間d後のCAT後A/Fの状態量の推定値x1ハット,x2ハット)も、必要に応じて要素38によりフィルタリングやスケーリングが施された後に適応スライディングモード制御部19に出力される。以下、前記推定値x1ハット,x2ハットを推定状態量x1ハット,x2ハットと称する。
【0051】
次に、適応スライディングモード制御部19を詳説する。
【0052】
ここで、まず、一般的なスライディングモード制御について図7を参照して簡単に説明しておく。
【0053】
スライディングモード制御は、可変構造型のフィードバック制御手法であり、この制御手法においては、例えば制御対象の状態量をx1,x2の二つとした場合、これらの状態量x1,x2を変数とする線形関数σ=s1 x1+s2 x2(s1,s2は係数)を用いて、σ=0により表される超平面Hをあらかじめ設計しておく。この超平面Hは位相空間が二次系の場合は、しばしば切換線(S)と呼ばれ、線形関数σは切換関数と呼ばれている。位相空間の次数が大きくなると、切換線から切換面となり、さらには幾何学的に図示できなくなる超平面になる。尚、超平面はすべり面と呼ばれることもある。
【0054】
そして、例えば図7の点Pで示すように、状態量x1,x2がσ≠0となっている場合に、所謂、到達則に従って、状態量x1,x2をハイゲイン制御によって超平面H(σ=0)上に高速で収束させ(モード1)、さらに所謂、等価制御入力によって、状態量x1,x2を超平面H上に拘束しつつ超平面H上の平衡点(収束点、x1=x2=0の点)に収束させる(モード2)ものである。
【0055】
このようなスライディングモード制御においては、状態量x1,x2を超平面H上に収束させさえすれば、等価制御入力によって、外乱等の影響を受けることなく、極めて安定に状態量x1,x2を超平面H上の平衡点に収束させることができるという特性をもっている。従って、上記モード1において状態量x1,x2をいかにして安定に超平面H上に収束させるかが重要な課題となる。この場合、外乱等の影響があると、一般には、前記到達則だけでは、状態量x1,x2を超平面H上に安定に収束させることが困難である。このため、近年では、例えばコロナ社により1994年10月20日に発刊された「スライディングモード制御 −非線形ロバスト制御の設計理論−」と題する文献の第134頁〜第135頁に見られるように、到達則に加えて、外乱の影響を排除しつつ状態量を超平面上に収束させるための適応則を用いた適応スライディングモード制御という手法が提案されている。
【0056】
本実施形態の前記適応スライディングモード制御部19は、このような適応スライディングモード制御を用いて、前記CAT後A/Fの推定状態量x1ハット,x2ハットから、前記基準目標空燃比の補正量を算出するものであり、次のように構築されている。
【0057】
まず、適応スライディングモード制御部19の適応スライディングモード制御に必要な超平面及び前記等価制御入力の構築について説明する。
【0058】
本実施形態では、適応スライディングモード制御部19は、CAT後A/Fを所定の適正値に整定させるように基準空燃比KBSの補正量を求めるものであるので、前記CAT後A/Fの推定状態量x1ハット,x2ハット(CAT後A/Fのむだ時間d後の値の推定値、及びその変化量もしくは変化速度の推定値)の目標値(すなわち収束させるべき値)を、それぞれ“適正値”及び“0”とする。
【0059】
そこで、上記適正値の値をqとして、適応スライディングモード制御を行うための超平面を次式(4)の線形関数により表す。
【0060】
【数4】
【0061】
一方、前記推定状態量x1ハット,x2ハットを用いた場合、対象排気系Aのむだ時間dは状態予測部18により補償されるので、この場合の対象排気系Aのプラントモデルは、図5に示した形で、同図の状態量x1M,x2Mを推定状態量x1ハット,x2ハットで置き換えたもので表される。
【0062】
従って、そのプラントモデルの状態方程式は次式(5)で表される。
【0063】
【数5】
【0064】
ここで、状態方程式(5)において、式(4)に基づき次式(6)で表される線形変換を行い、
【0065】
【数6】
【0066】
さらに、外乱Lを“0”と置くと、次式(7)が得られる。
【0067】
【数7】
【0068】
ここで、式(4)により表される超平面を用いてスライディングモード制御を行う場合、前述の如く、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面上に拘束しつつその超平面上の平衡点に収束させる前記モード2では、次式(8)の条件を満たさなければならない。
【0069】
【数8】
【0070】
従って、前記式(7)から前記モード2で必要な等価制御入力ueq(=u)は、次式(9)により表される。
【0071】
【数9】
【0072】
次に、この等価制御入力ueqによって、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面上に拘束した状態では、σ=0であるので、式(7)の下段式から次式(10)が得られる。
【0073】
【数10】
【0074】
ここで、簡略化のためにs1=k,s2=1(k=s1/s2)とし、また、推定状態量x1ハットの目標値q(適正値)が時刻t<0では“0”(一定値)で、時刻t≧0では“q”(一定値)となるステップ関数入力であることを考慮して、式(10)をラプラス変換すると、次式(11)が得られる。
【0075】
【数11】
【0076】
式(11)において、X1ハットは、推定状態量x1ハットをラプラス変換したもので、sはラプラス演算子である。
【0077】
故に、式(11)を逆ラプラス変換すると、推定状態量x1ハットは、時間軸上で、次式(12)により表される。
【0078】
【数12】
【0079】
従って、式(12)において、k>0(s1>0,s2=1)とすれば、推定状態量x1ハットは、t→∞で目標値qに収束する。尚、このことは、式(11)の特性根−k(制御系の極)が、図8に示すように、複素平面上の安定領域(極の実部が負となる領域)に配置されることを意味する。
【0080】
よって、本実施形態で用いる超平面は、次式(13)により設定する。
【0081】
【数13】
【0082】
尚、式(13)のkの具体的な値は、各種実験やシミュレーションに基づき、基本的には推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面上に迅速に(略最短時間で)収束するように設定する。また、このkの値は、本発明を適用した本実施形態では、適宜、変更するようにしているのであるが、これについては後述する。また、本実施形態では、適応スライディングモード制御部19を、サーボ型コントローラとして構築したため、推定状態量x1ハットの目標値qをq≠0としているが、レギュレータ型のコントローラとして構築する場合には、推定状態量x1ハットの目標値を“0”として本実施形態と同様に構築することができる。
【0083】
次に、本実施形態の適応スライディングモード制御部19における適応スライディングモード制御の到達則は、上記のように構築された超平面σ=0を用いて以下のように構築されている。
【0084】
スライディングモード制御の到達則は、線形関数σを超平面(σ=0)に収束させるための制御則であり、この到達則には、種々のものが公知となっている。そして、本実施形態では、それらの到達則のうち、最も超平面への収束時間が短い加速率則を採用した。
【0085】
この加速率則では、σの動特性(σの値の時間的変化率)が次式(14)により表されるように制御する。
【0086】
【数14】
【0087】
式(14)において、J,αは、あらかじめ設定する正の定数であり、特に0<α<1である。また、sgn(σ)は、σの符号関数で、σ<0のときsgn(σ)=−1、σ=0のときsgn(σ)=0、σ>0のときsgn(σ)=1である。
【0088】
ここで、前記式(13)を時間微分し、さらに、外乱L=0として、前記状態方程式(5)を用いると、次式(15)が得られる。
【0089】
【数15】
【0090】
従って、式(14)と式(15)とから、対象排気系Aへの入力usl(=u)は、次式(16)となる。
【0091】
【数16】
【0092】
この式(16)により表される対象排気系Aへの入力uslが、本実施形態において、外乱L=0とした場合に、CAT後A/Fを適正値qに整定させるために対象排気系Aに与えるべき入力(CAT前A/F)である。ここで、上式(16)の第1項及び第2項は、σ=0の時、すなわち、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面上に収束したとき、前記式(9)により表された等価制御入力ueqと一致する。すなわち、
【0093】
【数17】
【0094】
尚、このことは、式(9)においてs1/s2=kとし、さらに式(13)をい用いてqをx1ハット,x2ハットにより表して、それを式(9)に代入すれば、明らかとなる。
【0095】
また、式(16)の第3項は、外乱L=0とした場合に、前記の到達則に従って、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面上に収束させるための制御入力を示すものである。以下、この到達則に基づく制御入力を到達制御入力urchと称する。すなわち、
【0096】
【数18】
【0097】
次に、本実施形態の適応スライディングモード制御部19における適応スライディングモード制御の適応則は、以下のように構築されている。
【0098】
前述のように、本実施形態における超平面や等価制御入力ueq、到達制御入力urchの構築は、外乱L=0との前提の基で行ったが、対象排気系Aには、実際には種々の外乱が存在し、また、上記超平面等を構築する上で用いたプラントモデルには、実際の対象排気系Aに対してモデル誤差が存在する。この場合、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面上に収束すれば、前記の等価制御入力ueqによって、推定状態量x1ハット,x2ハットは、外乱やモデル誤差の影響を受けることなく、超平面上の平衡点に収束するのであるが、超平面上に収束していない段階にあっては、前記到達則による到達制御入力urchでは、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面に収束させることができない。
【0099】
本実施形態の適応スライディングモード制御部19で用いる適応則は、このような不都合を解消するためのものである。
【0100】
本実施形態では、適応スライディングモード制御部19に適応則を構築するにあたって、外乱Lが時間や推定状態量x1ハット,x2ハットに依存することなく不変なものであるとし、次式(19)により表せる前記線形関数σの積算項uadpを適応則項(以下、uadpを適応制御入力と称する)として、前記式(16)の右辺に付加し、対象排気系Aへの最終的な入力uslとして求めることとした。
【0101】
【数19】
【0102】
従って、適応則を用いた対象排気系Aへの入力uslは、次式(20)により求められる。
【0103】
【数20】
【0104】
尚、この式(20)は、適応スライディングモード制御の最も簡単な形式のものであり、さらに発展させた適応則を用いることも可能である。
【0105】
本実施形態の適応スライディングモード制御部19は、式(20)の演算を行うことで、対象排気系Aへの入力uslを求める。この場合、本実施形態では、推定状態量x1ハットを適正値qに整定させる(x1ハット=q,x2ハット=0とする)ように、前記基準空燃比KBS を補正し、それによって間接的にCAT後A/Fを適正値qに整定させるものであるので、適応スライディングモード制御部19は、式(20)により求められる入力uslを基準空燃比KBS の補正量として出力する。以下、式(20)により求められる入力uslを基準空燃比補正量uslと称する。
【0106】
以上のように構築された適応スライディングモード制御部19は、それをブロック図で表すと、図9に示すように構成されている。すなわち、該適応スライディングモード制御部19は、その主要な構成として、前記等価制御入力ueqを求める等価制御入力演算部39と、前記到達制御入力urch及び適応制御入力uadpの総和unl(=urch+uadp、以下、非線形入力と称する)を求める非線形入力演算部40とを具備し、これらの演算部39,40に、状態予測部18により求められた推定状態量x1ハット,x2ハットが前記要素38を介して与えられる。
【0107】
そして、適応スライディングモード制御部19は、基本的には、これらの演算部39,40により求められた等価制御入力ueqと、非線形入力unlとを加算してなる前記基準空燃比補正量usl(=ueq+unl)を出力し、それが必要に応じて要素41によってスケーリングやフィルタリングが施された後、図示しないメモリに保持される。この場合、基準空燃比補正量uslの算出は、あらかじめ定められた所定周期(一定周期)のサイクルタイムで行われるようになっている。
【0108】
また、この適応スライディングモード制御部19や前記状態予測部18を具備した前記目標空燃比算出部16は、上記メモリに保持された基準空燃比補正量uslを基準空燃比KBSに加算することで、該基準空燃比KBSを補正して前記目標空燃比KCMDを求める。この場合、目標空燃比算出手段16による目標空燃比KCMDの算出は、適応スライディングモード制御部19による基準空燃比補正量uslの算出とは非同期で、エンジン1のクランク角周期(所謂TDC)に同期して行われるのであるが、これについては後述する。
【0109】
前記図9に示したようにように、本実施形態の適応スライディングモード制御部19は、前記演算部39,40の他に、さらに適応スライディングモード制御の安定性を判別する安定性判別部42と、その判別結果に応じて基準空燃比KBSの補正を制限する補正制限部43とを具備している。
【0110】
ここで、安定性判別部42は、前記基準空燃比補正量uslの算出が行われる毎に、図16のフローチャートに示すように安定性の判別を行う。すなわち、安定性判別部42は、まず、前記式(13)で表される線形関数σ(これは、図9に示す非線形入力演算部40により求められる)の時間的変化率σドット(σの時間微分値)を求める(STEP16−1)。そして、線形関数σの絶対値があらかじめ定めた所定値σ1よりも大きいか(|σ|>σ1)、または、σドットの値があらかじめ定めた所定値σ2(>0)よりも大きいか(σドット>σ2)を判断する(STEP16−2)。この判断で、|σ|>σ1またはσドット>σ2であれば(STEP16−2でYES)、安定性判別部42は、適応スライディングモード制御が不安定であると判別して(STEP16−3)今回の安定性判別を終了する。尚、この場合に、不安定と判断される状態は、前記推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面σ=0から大きく離間しているか、または、超平面σ=0から離間する方向に大きな時間的変化を生じている状態である。
【0111】
STEP16−2の条件を満たしていない場合には(STEP16−2でNO)、次に安定性判別部42は、σの値とσドットの値との積σ・σドット(これはσに関するリアプノフ関数σ2/2の時間微分関数に相当する)がこれに対応してあらかじめ定めた所定値a(≧0)よりも大きいか(σ・σドット>a)を判断する(STEP16−4)。この判断で、σ・σドット>aであれば、(STEP16−4でYES)、安定性判別部42は、適応スライディングモード制御が不安定であると判別して(STEP16−3)、今回の安定性判別を終了する。そして、STEP16−4の条件を満たしていない場合には、安定性判別部42は、適応スライディングモード制御が安定であると判別して(STEP16−5)今回の安定性判別を終了する。尚、この場合、不安定と判断される状態は、σ2が増加する側で、前記推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面(σ=0)から離間する方向へ変移している状態である。
【0112】
尚、本実施形態では、STEP16−2、STEP16−4の二つの条件で安定性を判別するようにしたが、どちらか一方のみで判別してもよく、さらには、STEP16−2の中の一つの条件のみで判別してもよい。
【0113】
このような安定性判別部42による適応スライディングモード制御の安定性判別により、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面σ=0に収束しない虞れのある状況では、制御が不安定であると判断されることとなる。
【0114】
そして、前記補正制限部43は、安定性判別部42により、適応スライディングモード制御が不安定であると判別された場合には、今回のサイクルタイムで適応スライディングモード制御部19により算出された前記基準空燃比補正量uslの出力を阻止して、適応スライディングモード制御部19の出力を前回のサイクルタイムで算出された基準空燃比補正量uslに保持し、これにより、該基準空燃比補正量uslによる基準空燃比KBSの補正を制限する。
【0115】
また、安定性判別部42により、制御が安定であると判別された場合には、補正制限部43は、今回のサイクルタイムで算出された前記基準空燃比補正量uslをそのまま出力せしめる。
【0116】
尚、本実施形態では、適応スライディングモード制御が不安定である場合に、基準空燃比補正量uslを前回のサイクルタイムで算出された基準空燃比補正量uslに保持して基準空燃比KBSの補正を制限するようにしたが、適応スライディングモード制御が不安定である場合に、基準空燃比補正量uslを強制的に“0”として(基準空燃比KBSの補正を行わないようにする)、その補正を制限するようにしてもよい。
【0117】
ところで、本実施形態で用いる適応スライディングモード制御において、前記推定状態量x1ハット,x2ハットが前記式(13)の超平面σ=0又はその近傍(σ≒0)に収束した段階において、推定状態量x1ハット,x2ハットの目標値“q”,“0”(超平面の平衡点)への収束の安定性は、該超平面σ=0の傾きが大きい程、換言すれば、式(13)中の係数k(>0)の値が大きい程、高くなる。このことは、前記図8に示した制御系の極−kが実軸の負方向で大きくなる程、系の安定性が高まることと等価である。また、前記式(12)から明らかなように、係数kの値が大きいほど、超平面上では、推定状態量x1ハット,x2ハットの目標値“q”,“0”への収束時間も短くなる(速応性が高まる)。従って、この観点からすれば、係数kは、その値をなるべく大きなものに設定することが好ましい。
【0118】
しかるに、式(13)中の係数kの値を大きくしすぎると、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面σ=0に収束していない段階では、同式(13)から明らかなように、線形関数σの値も大きなものとなり、従って、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面上に収束させるための前記非線形入力unl(=urch+uadp)も大きなものとなる(式(18),(19)参照)。そして、該非線形入力unlが過大なものとなると、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面に対し振動的な応答を生じたりして、超平面上への収束時間が長くなってしまい、その収束安定性や速応性が低下する。従って、この観点からすれば、係数kの値はあまり大きなものとすることは好ましくない。
【0119】
そこで、本実施形態の適応スライディングモード制御部19は前述の構成に加えて、さらに、前記図9に示したように、式(13)中の係数kの値を可変とすることで適応スライディングモード制御の超平面を可変とする超平面可変制御部44(超平面設定手段)を具備している。
【0120】
この場合、本実施形態の超平面可変制御部44は、次のようにして、適応スライディングモード制御の超平面を可変制御する。
【0121】
すなわち、本実施形態では、超平面可変制御部44は、現在の前記係数kの値を用いて前記線形関数σの値を推定状態量x1ハット,x2ハットから前記式(13)に従って求め、求めたσの値の絶対値|σ|の大きさに応じて、次式(21)のようにあらかじめ定義されたパラメータfの値を求める。
【0122】
【数21】
【0123】
ここで、上式(21)において、σlimitは、現在の推定状態量x1ハット,x2ハットに対応した線形関数σが、超平面σ=0とほぼ一致している状態であるか否か、すなわち、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面σ=0にほぼ収束しているか否かを判断するためにあらかじめ定めた所定の閾値である。
【0124】
そして、超平面可変制御部44は、このようにして定まるパラメータfの値を適応スライディングモード制御のサイクルタイム毎に積算して、次式(22)に示すようにその積算値sum(f)を求め、
【0125】
【数22】
【0126】
その求めた積算値sum(f)から次式(23)により今回の係数kの値を決定する。
【0127】
【数23】
【0128】
上式(23)において、k0は、超平面を規定する係数kの初期値(>0)であり、γは係数kの値の変化速度を調整するための所定のゲイン係数である。初期値k0は、前記推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面σ=0に最も短い時間で収束するように設定されている。
【0129】
超平面可変制御部44は、このようにして式(23)により求めた係数kの値を、前記等価制御入力演算部39や、非線形入力演算部40、安定性判別部42にそれらの前述の演算や判別を行うための係数kの値として与える。
【0130】
尚、本実施形態では、係数kの値が負の値となったり、初期値k0よりも小さくなるのを防止するために、式(22)により求められる積算値sum(f)がsum(f)<0である場合には、式(23)におけるsum(f)の値を強制的に“0”として補正係数kを求める(この場合、k=k0となる)。また、係数kの値が過剰に大きくなり過ぎると、係数kの値を減少させるべき場合に、その減少が遅れることなるので、これを回避するために、式(22)により求められる積算値sum(f)があらかじめ定めた所定値αよりも大きくなった場合には、式(23)におけるsum(f)の値を強制的に“α”として補正係数kを求める(この場合、k=k0+α=係数kの上限値となる)
このようにして求められる係数kは、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面σ=0に収束していない段階では、前記パラメータfの値が初期値k0の近傍で変動し、従って、該初期値k0を前述のように設定しておくことで、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面σ=0にほぼ最短時間で収束させることができることとなる。そして、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面σ=0にほぼ収束した段階では、前記パラメータfの値がほぼ定常的に“1”に固定されるため、係数kの値が徐々に増加する。従って、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面σ=0にほぼ収束した段階では、本実施形態の適応スライディングモード制御に使用する超平面は、図10に示すように、傾きが次第に増加され、これにより、前述のように推定状態量x1ハット,x2ハットの目標値“q”,“0”(超平面の平衡点)への収束の安定性が高められると同時に、その収束が短時間で行われる(速応性が高まる)こととなる。尚、このように係数kの値を次第に大きくしていくということは、前記図8の複素平面上で制御系の極−kを実軸Reの負方向の安定領域側へと移動させていくことと等価である。
【0131】
尚、超平面を可変とするための係数kの値の設定の仕方は、上記の態様に限られるものではなく、例えば式(21)で用いたパラメータfの値として、“1”及び“−1”以外の組み合わせ(“2”と“−1”、“1”と“−2”等)を用いてもよい。このような組み合わせを用いることで、線形関数σの値が超平面σ=0にほぼ一致したか否かで超平面の変化速度を異ならせることが可能となる。さらに、パラメータfの値を線形関数σの値の関数として与え、線形関数σの値に応じて超平面を変化させるようにしてもよい。また、式(23)のγの値を、式(22)により求められる値の変化方向(増加傾向か減少傾向か)に応じて異ならせることや、γの値を線形関数σの値に応じて変更することも可能である。このように超平面を可変化する手法は、その制御対象に応じて最適なものを選択することが可能で、係数kの具体的な求め方は、制御の安定性や速応性を考慮して実験等を通じて定めればよい。
【0132】
以上説明した内容が、本実施形態で用いる適応スライディングモード制御の詳細である。
【0133】
次に、前記図1で示した大局的フィードバック制御部20に具備した前記適応制御部23を詳説する。
【0134】
同図1を参照して、大局的フィードバック制御部20は、前述のようにLAFセンサ6の箇所の空燃比(CAT前A/F)を、目標空燃比算出部16により前述の通り求められる目標空燃比KCMDに収束させるようにフィードバック制御を行うものであるが、このとき、このようなフィードバック制御を周知のPID制御だけで行うようにすると、エンジン1の運転状態の変化や経年的特性変化等、動的な挙動変化に対して、安定した制御性を確保することが困難である。
【0135】
このため、本実施形態の大局的フィードバック制御部20では、周知のPID制御を行うPID制御部22と共に、上記のような動的な挙動変化を補償することができる適応制御部23を具備し、それらの制御部22,23により各別に求められるフィードバック補正係数KFBを切り換えてフィードバック制御を行うようにしている。
【0136】
この場合、上記適応制御部23は、I.D.ランダウ等により提唱されているパラメータ調整則を用いて、図11に示すように、複数の適応パラメータを設定するパラメータ調整部45と、設定された適応パラメータを用いて前記フィードバック補正係数KSTRを算出する補正係数算出部46とにより構成されている。
【0137】
ここで、パラメータ調整部45について説明すると、ランダウ等の調整則では、離散系の制御対象の伝達関数B(Z-1)/A(Z-1)の分母分子の多項式を一般的に次式(24),(25)のようにおいたとき、パラメータ調整部45が設定する適応パラメータθハット(j)(jは制御サイクルの番数を示す。以下、同様)は、式(26)のようにベクトル(転置ベクトル)で表される。また、パラメータ調整部45への入力ζ(j)は、式(27)のように表される。この場合、本実施形態では、フィードバック制御部20の制御対象であるエンジン1が一次系で3制御サイクル分のむだ時間dp(エンジン1の燃焼サイクルの3サイクル分の時間)を持つプラントと考え、式(24)〜式(27)でm=n=1,dp=3とし、設定する適応パラメータはs0,r1,r2,r3,b0の5個とした(図11参照)。尚、式(27)の上段式及び中段式におけるus,ysは、それぞれ、制御対象への制御入力(操作量)及び制御対象の出力(制御量)を一般的に表したものであるが、本実施形態では、上記制御入力はフィードバック補正係数KSTR、制御対象(エンジン1)の出力は前記LAFセンサ6により実際に検出されるCAT前A/F(これを以下、KACTと称する)であるので、パラメータ調整部45への入力をζ(j)は、式(27)の下段式により表す(図11参照)。
【0138】
【数24】
【0139】
【数25】
【0140】
【数26】
【0141】
【数27】
【0142】
ここで、前記式(26)に示される適応パラメータθハットは、適応制御部23のゲインを決定するスカラ量要素b0ハット-1(j)、操作量を用いて表現される制御要素BRハット(Z-1,j)、及び制御量を用いて表現される制御要素S(Z-1,j)からなり、それぞれ、次式(28)〜(30)により表現される(図11の補正係数算出部46のブロック図を参照)。
【0143】
【数28】
【0144】
【数29】
【0145】
【数30】
【0146】
パラメータ調整部45は、これらのスカラ量要素や制御要素の各係数を設定して式26に示す適応パラメータθハットとして補正係数算出部46に与えるもので、現在から過去に渡る操作量としてのフィードバック補正係数KSTRと制御量であるCAT前A/F(=KACT)とを用いて、CAT前A/Fが前記目標空燃比に一致するように、適応パラメータθハットを算出する。
【0147】
この場合、具体的には、適応パラメータθハットは、次式(31)により算出する。
【0148】
【数31】
【0149】
同式(31)において、Γ(j)は、適応パラメータθハットの設定速度を決定するゲイン行列(m+n+dp)、eアスタリスク(j)は、適応パラメータθハットの推定誤差を示すもので、それぞれ式(32),(33)のような漸化式で表される。
【0150】
【数32】
【0151】
【数33】
【0152】
ここで、式(33)中の“D(Z-1)”は、収束性を調整するための、漸近安定な多項式であり、本実施形態ではD(Z-1)=1としている。
【0153】
尚、式(33)のλ1(j),λ2(j)の選び方により、種々の具体的なアルゴリズムが得られる。例えば、λ1(j)=1、λ2(j)=λ(0<λ<2)とすると、漸減ゲインアルゴリズム(λ=1の場合には最小自乗法)、λ1(j)=λ1(0<λ1<1)、λ2(j)=λ2(0<λ2<λ)とすると、可変ゲインアルゴリズム(λ2=1の場合には重み付き最小自乗法)、λ1(j)/λ2(j)=ηとおき、λ3を式(34)のように表したとき、λ1(j)=λ3とすると、固定トレースアルゴリズムとなる。ここで、式(34)中の“trΓ(0)”は、行列Γ(0)のトレース関数で、行列Γ(0)の対角成分の和(スカラー量)である。また、λ1(j)=1、λ2(j)=0のとき、固定ゲインアルゴリズムとなる。この場合は、式(32)から明らかな如く、Γ(j)=Γ(j-1)となり、よってΓ(j)は固定値となる。エンジン1の燃料噴射あるいは空燃比等の時変プラントでは、漸減ゲインアルゴリズム、可変ゲインアルゴリズム、固定ゲインアルゴリズム、および固定トレースアルゴリズムのいずれもが適している。
【0154】
【数34】
【0155】
前述のようにパラメータ調整部45に設定される適応パラメータθハット(s0,r1,r2,r3,b0)と、前記目標空燃比算出部16により前述の通り算出される目標空燃比KCMDM とを用いて、補正係数算出部46は、次式(35)の漸化式により、フィードバック補正係数KSTRを求める。図11の補正係数算出部46は、同式(35)の演算をブロック図で表したものである。
【0156】
【数35】
【0157】
ここで、同式(35)中の“d'”は、前記目標空燃比KCMDに対応するCAT前A/FがLAFセンサ6により検出されるまでのむだ時間であり、このむだ時間d'は、本実施形態ではクランク角周期(所謂TDC)を単位として12サイクル分の時間(=4・dp)である。
【0158】
このように構築された適応制御部23は、前述したことから明らかなように、制御対象であるエンジン1の動的な挙動変化を考慮した漸化式形式の制御器であり、換言すれば、エンジン1の動的な挙動変化を補償するために、漸化式形式で記述された制御器である。そして、より詳しくは、漸化式形式の適応パラメータ調整機構を備えた制御器と定義することができる。
【0159】
尚、この種の漸化式形式の制御器は、所謂、最適レギュレータを用いて構築する場合もあるが、この場合には、一般にはパラメータ調整機構は備えられていない。
【0160】
以上が、本実施形態で採用した適応制御部23の詳細である。
【0161】
尚、適応制御部23共に、大局的フィードバック制御部20に具備したPID制御部22は、一般のPID制御と同様に、LAFセンサ6により検出されるCAT前空燃比(KACT)と、その目標空燃比KCMDとの偏差から、比例項(P項)、積分項(I項)及び微分項(D項)を算出し、それらの各項の総和をフィードバック補正係数KLAFとして算出する。この場合、本実施形態では、フィードバック補正係数KLAFを燃料噴射量に乗算して該燃料噴射量を補正するので、CAT前空燃比(KACT)と、その目標空燃比KCMDとの偏差が“0”のときに、フィードバック補正係数KLAFを“1”とするため、積分項(I項)の初期値を“1”としている。また、比例項、積分項及び微分項のゲインは、エンジン1の回転数と吸気圧とから、あらかじめ定められたマップを用いて決定される。
【0162】
また、大局的フィードバック制御部20の前記切換部24は、エンジン1の冷却水温の低温時や、高速回転運転時、吸気圧の低圧時等、エンジン1の燃焼が不安定なものとなりやすい場合、あるいは、目標空燃比KCMDの変化が大きい時や、空燃比のフィードバック制御の開始直後等、これに応じたLAFセンサ6の検出空燃比KACTが、そのLAFセンサ6の応答遅れ等によって、信頼性に欠ける場合、あるいは、エンジン1のアイドル運転時のようエンジン1の運転状態が極めて安定していて、適応制御部23による高ゲイン制御を必要としない場合には、PID制御部22により求められるフィードバック補正係数KLAFを燃料噴射量を補正するためのフィードバック補正係数KFBとして出力し、上記のような場合以外の状態で、適応制御部23により求められるフィードバック補正係数KSTRを燃料噴射量を補正するためのフィードバック補正係数KFBとして出力する。これは、適応制御部23が、高ゲイン制御で、LAFセンサ6による検出されるCAT前A/Fを急速に目標空燃比KCMDに収束させるように機能するため、上記のようにエンジン1の燃焼が不安定となったり、LAFセンサ6の検出空燃比KACTの信頼性に欠ける等の場合に、適応制御部23のフィードバック補正係数KSTRを用いると、かえって空燃比の制御が不安定なものとなる虞れがあるからである。
【0163】
このような切換部24の作動は、例えば特願平7−227303号に本願出願人が詳細に開示しているので、ここでは、詳細な説明を省略する。
【0164】
次に、本実施形態の空燃比制御装置の全体的作動を説明する。
【0165】
図1及び図13のフローチャートを参照して、まず、エンジン1の各気筒毎の出力燃料噴射量#nTout(n=1,2,3,4)の算出について説明すると、制御ユニット8は、各気筒毎の出力燃料噴射量#nToutをエンジン1のクランク角周期と同期したサイクルタイムで次のような算出処理を行う。
【0166】
まず、前記LAFセンサ6及びO2センサ7を含む各種センサの出力が読み込まれた後(STEP13−1)、基本燃料噴射量算出部12によって、前述の如くエンジン1の回転数及び吸気圧に対応する燃料噴射量をスロットル弁の有効開口面積に応じて補正してなる基本燃料噴射量Timが求められる(STEP13−2)。さらに、第1補正係数算出部13によって、エンジン1の冷却水温やキャニスタのパージ量等に応じた第1補正係数KTOTALが算出され(STEP13−3)、また、基準空燃比設定部15によって、エンジン1の回転数及び吸気圧に応じた基準空燃比KBSが設定される(STEP13−4)。
【0167】
次いで、目標空燃比算出部16において、適応スライディングモード制御部19によって算出された基準空燃比補正量uslが図示しないメモリから読みだされ(STEP13−5)、この基準空燃比補正量uslをSTEP13−4で設定された基準空燃比KBSに加算して、該基準空燃比KBSを補正することで、目標空燃比KCMDが求められる(STEP13−6)。
【0168】
また、局所的フィードバック制御部21において、オブザーバ26によりLAFセンサ6の出力から推定された各気筒毎の実空燃比#nA/Fに基づき、PID制御部27により、各気筒毎のばらつきを解消するようにフィードバック補正係数#nKLAFが算出され(STEP13−7)、さらに、大局的フィードバック制御部20により、フィードバック補正係数KFB が算出される(STEP13−8)。
【0169】
この場合、フィードバック補正係数KFBの算出は、前記STEP13−1で読み込まれた各種センサの出力や、STEP13−6で求められた目標空燃比KCMDを用いて、図14のフローチャートに示すように行われる。すなわち、適応制御部23と、PID制御部22とにより、それぞれLAFセンサ6により検出されたCAT前A/Fを目標空燃比KCMDに収束させるようにフィードバック補正係数KSTR及びKLAFが求められる(STEP14−1,14−2)。そして、前述のように切換部24において、エンジン1の燃焼やLAFセンサ6の検出空燃比が不安定なものとなりやすい状態であるか否か等により、適応制御を行うべき運転領域であるか否かが判断され(STEP14−3)、適応制御を行うべき運転領域では、適応制御部23により求められたフィードバック補正係数KSTRが、エンジン1の燃料噴射量を補正するためのフィードバック補正係数KFB として求められ(STEP14−4)、PID制御を行うべき運転領域では、PID制御部22により求められたフィードバック補正係数KLAFが、フィードバック補正係数KFBとして求められる(STEP14−5)。
【0170】
尚、この場合、フィードバック補正係数KFBを、フィードバック補正係数KLAFからフィードバック補正係数KSTRに切り換える際には、該補正係数KFBの急変を回避するために、適応制御部23は、今回のサイクルタイムに限り、補正係数KFB(=KSTR)を前回の補正係数KFB(=KLAF)に保持するように、補正係数KSTRを求める。同様に、補正係数KFBを、補正係数KSTRから補正係数KLAFに切り換える際には、PID制御部22は、自身が前回のサイクルタイムで求めた補正係数KLAFが、前回の補正係数KFB(=KSTR)であったものとして、今回の補正係数KLAFを算出する。
【0171】
図13に戻って、前述のフィードバック補正係数KFBの算出後、さらに、前記STEP13−6で求められた目標空燃比KCMDに応じた第2補正係数KCMDMが第2補正係数算出部14により算出される(STEP13−9)。
【0172】
次いで、制御ユニット8は、前述のように求められた基本燃料噴射量Timに、第1補正係数KTOTAL、第2補正係数KCMDM、フィードバック補正係数KFB、及び各気筒毎のフィードバック補正係数#nKLAFを乗算することで、各気筒毎の出力燃料噴射量#nToutを求める(STEP13−10)。そして、この各気筒毎の出力燃料噴射量#nToutが、付着補正部28によって、エンジン1の吸気管の壁面付着を考慮した補正を施した後(STEP13−11)、エンジン1の図示しない燃料噴射装置に出力される(STEP13−12)。
【0173】
そして、エンジン1にあっては、各気筒毎の出力燃料噴射量#nToutに従って、各気筒への燃料噴射が行われる。
【0174】
以上のような各気筒毎の出力燃料噴射量#nToutの算出及びそれに応じたエンジン1への燃料噴射がエンジン1のクランク角周期に同期したサイクルタイムで逐次行われ、これによりLAFセンサ6により検出されるCAT前A/Fが、目標空燃比算出部16により算出された目標空燃比KCMDに収束するように、エンジン1の運転状態が制御される。この場合、特に、フィードバック補正係数KFBとして、適応制御部23により求めたフィードバック補正係数KSTRを使用している状態では、エンジン1の運転状態の変化や特性変化等の挙動変化に対して、高い安定性を有して、CAT前A/Fが迅速に目標空燃比KCMDに収束制御される。
【0175】
一方、前記STEP13−5で読みだされる基準空燃比uslは、所定周期(一定周期)のサイクルタイム毎に、図15のフローチャートに示すように求められる。
【0176】
すなわち、図6、図9及び図15を参照して、LAFセンサ6及びO2センサ7の出力が読み込まれた後(STEP15−1)、状態予測部18により、対象排気系Aのむだ時間d後のCAT後A/Fの推定状態量x1ハット及びx2ハット(CAT後A/Fの値の推定値、及びその変化量もしくは変化速度の推定値)が前記式(2),(3)に従って求められる(STEP15−2)。
【0177】
次いで、適応スライディングモード制御部19において、超平面可変制御部44により前述の通り前記係数kの値が設定された後(STEP15−3)、等価制御入力演算部39により前記式(17)に従って等価制御入力ueqが算出される(STEP15−4)。さらに、非線形入力算出部19により、線形関数σの値が式(13)に従って算出された後(STEP15−5)、適応制御入力uadp(適応則項)が前記式(19)に従って算出される(STEP15−6)。
【0178】
さらに、非線形入力演算部40において、線形関数σの絶対値があらかじめ定めた微小な所定値εと比較され(STEP15−7)、このとき、|σ|>εであれば、到達制御入力urch(到達則項)が前記式(18)に従って算出される(STEP15−8)。また、|σ|≦εであれば、すなわち、推定状態量x1ハット,x2ハットがほぼ超平面上に収束している状態では、到達制御入力urchを強制的に“0”とする(STEP15−9)。
【0179】
次いで、基準空燃比補正量uslが、上記のように求められた等価制御入力ueq、到達制御入力urch及び適応制御入力uadpから前記式(20)に従って算出される(STEP15−10)。
【0180】
次いで、前記安定性判別部42により、前述の図16のフローチャートに従って適応スライディングモード制御の安定性が判別され(STEP15−11)、この判別結果が“安定”であれば(STEP15−12でYES)、STEP15−10で求められた基準空燃比補正量uslが前記補正制限部43を介して出力される(STEP15−13)。また、上記判別結果が“不安定”であれば(STEP15−12でNO)、前回のサイクルタイムで求められた基準空燃比補正量uslが今回の基準空燃比補正量uslとされ(STEP15−14)、それが、STEP15−13で出力される。尚、STEP15−13で出力された基準空燃比補正量uslは図示しないメモリに保持され、それが、前記図13のSTEP13−5において読みだされて(この読み出し手法については、後に説明を行う)、目標空燃比KCMDの算出に使用される。
【0181】
このようにして、適応スライディングモード制御部19により求められる基準空燃比補正量uslは、前述の如く、O2センサ7により検出されるCAT後A/Fを所定の適正値qに収束させるように求められるものであるので、この基準空燃比補正量uslにより基準空燃比KBSを補正してなる目標空燃比KCMDに、CAT前A/Fを前記フィードバック制御部17によりフィードバック制御を行うことで、CAT後A/Fが、フィードバック制御部17によるフィードバック制御を介して間接的に、適正値qに制御される。
【0182】
この場合、適応スライディングモード制御部19により行うスイライディングモード制御は、所定の適正値qに整定させるべきCAT後A/Fの状態量(CAT後A/Fの値及びその変化速度)が前記超平面上に収束しさえすれば、前記等価制御入力ueqによって外乱や制御対象のモデル誤差等の影響を受けることなく、該状態量が超平面上の平衡点(収束点)に安定に収束させることができるという特性を持っている。従って、CAT後A/Fの状態量を前記超平面上に収束させさえすれば、エンジン1の運転状態の変化や、触媒装置4の経年劣化等によらずにCAT後A/Fを適正値qに整定させることができる。
【0183】
そして、CAT後A/Fの状態量を前記超平面上に収束させるに際しては、本実施形態では、適応則を用いて外乱等の影響を考慮した適応スライディングモード制御を採用しているため、CAT後A/Fの状態量が超平面上に収束していない段階では、外乱やモデル誤差の影響を極力小さいものとして、安定に該状態量を超平面上に収束させることができる。
【0184】
この場合、スライディングモード制御の制御対象である対象排気系Aには一般に比較的長いむだ時間dが存在し、このむだ時間dは制御の不安定さを招く虞れがある。しかるに、本実施形態では、基準空燃比補正量uslを適応スライディングモード制御を用いて求めるに際して、O2センサ7によりリアルタイムで検出されるCAT後A/Fの状態量をそのまま用いるのではなく、上記むだ時間dを状態予測部18により補償してなる推定状態量x1ハット,x2ハットを用いるため、極めて安定してそれらの推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面上に収束させることができる。そして、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面上に収束してしまえば、スライディングモード制御が本来有する特性によって、そのらの推定状態量x1ハット,x2ハットの推定誤差も吸収されてしまう。
【0185】
従って、本実施形態の空燃比制御装置によれば、CAT後A/Fを、エンジン1の運転状態の変化や触媒装置4の劣化、外乱、モデル誤差等によらずに、極めて高い精度で適正値qに整定させることができ、これにより、エンジン1の空燃比を、触媒装置4の排気ガス浄化能力が最大限に発揮されるような空燃比に制御することができ、最適なエミッション性を確保することができる。
【0186】
また、本実施形態では、前記超平面可変制御部44によって、CAT後A/Fの推定状態量x1ハット,x2ハットの超平面への収束状況に応じて、その超平面を規定する係数kを変更して、該超平面を可変としているので、推定状態量x1ハット,x2ハットの超平面への収束を短時間で安定して行うことができると同時に、推定状態量x1ハット,x2ハットが超平面に収束した状態でも、推定状態量x1ハット,x2ハットを超平面上の平衡点、すなわち、x1ハット,x2ハットの目標状態量であるx1ハット=q,x2ハット=0となる収束点に短時間で安定して収束させることができる。従って、CAT後A/Fを短い収束時間(高い速応性)で且つ高度な安定性で迅速に適正値qに整定させることができる。
【0187】
ところで、本実施形態において、前記フィードバック制御部17による出力燃料噴射量#nToutの算出(各補正係数の算出や目標空燃比の算出を含む)は、エンジン1の回転に同期して行う必要があることから、前述の如くクランク角周期に同期したサイクルタイムで行われる。従って、出力燃料噴射量#nToutの算出タイミングは、図12の上段に示すように示すように一定の時間間隔では行われず、不規則な時間間隔となる。
【0188】
一方、適応スライディングモード制御部19による基準空燃比補正量uslの算出は、同図12の下段に示すように所定周期CTのサイクルタイムで行われて、算出された基準空燃比補正量uslが図示しないメモリに保持される。そして、メモリに保持された基準空燃比補正量uslは、基準空燃比補正量uslが新たに求められる毎に更新される。従って、基準空燃比補正量uslの算出及びその保持のタイミングは、出力燃料噴射量#nToutの算出と非同期なものとなる。この場合、本実施形態では、基準空燃比補正量uslの算出の周期CTは、通常のクランク角周期よりも長いものとされている。
【0189】
このように本実施形態では、基準空燃比補正量uslの算出を、出力燃料噴射量#nToutの算出と非同期で行うようにしているため、基準空燃比補正量uslを用いて目標空燃比KCMDを算出し、さらに出力燃料噴射量#nToutを算出する処理は次のように行っている。
【0190】
すなわち、同図12に示すように、目標空燃比KCMDを算出し、さらに出力燃料噴射量#nToutを算出する際には、それ以前で最新に適応スライディングモード制御部19により算出されてメモリに保持された基準空燃比補正量uslを用いる。但し、この場合、出力燃料噴射量#nToutの算出タイミングと、基準空燃比補正量uslの算出タイミングとがたまたま一致した場合には、既にメモリに保持されている基準空燃比補正量uslを用いて出力燃料噴射量#nToutを算出し、その後に、新たに求められた基準空燃比補正量uslをメモリに保持させる。
【0191】
このように、基準空燃比補正量uslの算出を、出力燃料噴射量#nToutの算出とをそれぞれ独立したサイクルタイムで行うようにすることで、適応スライディングモード制御部19とフィードバック制御部17とをそれぞれの制御特性や制御対象に適合したサイクルタイムで、演算処理を行うことができる。特に、適応スライディングモード制御部19による基準空燃比補正量uslの算出を対象排気系Aに存する比較的長いむだ時間dと応答遅れ時間に対応して、比較的長い周期CTのサイクルタイムで行うようにすることで、サイクルタイムが一定ならば式(3)におけるdMは一定で良いため、その演算負荷が軽減されると共に、基準空燃比補正量uslの算出をその演算誤差を排除しつつ高精度で行うことができる。そして、その結果、CAT後A/Fの適正値qへの整定の精度を高めることができる。
【0192】
次に、本実施形態の空燃比制御装置による制御のシミュレーションについて説明する。
【0193】
本願発明者等は、本実施形態の空燃比制御装置において、図17(a)に示すようにCAT前A/Fに外乱Lを与えたときの、CAT後A/Fの収束性についてシミュレーションを行った。その結果を図17(b)に示す。また、これと比較するために、基準空燃比補正量を従来のPID制御を用いて求めた場合についても、同様のシミュレーションを行った。その結果を図17(c)に示す。
【0194】
図17(b)に見られるように、本実施形態によれば、CAT前A/Fは外乱Lによらずに極めて精度よく適正値qに整定し、また、適正値qに収束するまでの時間も短時間で済む。
【0195】
これに対して、従来のPID制御を用いた場合には、CAT後A/Fが適正値qに対して変動を生じ、該適正値qに精度よく収束させることができないものとなった。
【0196】
このことから、本実施形態の空燃比制御装置では、基準空燃比補正量の算出に適応スライディングモード制御を用いることで、外乱等によらずに極めて高い精度でCAT後A/Fを適正値qに整定させることができることが判る。
【0197】
次に、本発明の他の実施形態を図18を参照して説明する。尚、本実施形態は前述の図1の空燃比制御装置の一部のみを変更したものであるので、同一構成部分については、図1のものと同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0198】
図18を参照して、本実施形態の空燃比制御装置は、大局的フィードバック制御部20の構成のみを図1のものと異なるものとしたものであり、この大局的フィードバック制御部20は、図1のものと同様にPID制御部22、適応制御部23及び切換部24を具備する一方、LAFセンサ6から前記フィルタ24,25を介してそれぞれ得られるCAT前A/F(=KACT)をそれぞれ前記目標空燃比算出部16により前述の通り算出される目標空燃比KCMDにより除算する(CAT前A/Fと目標空燃比KCMDとの比KACT/KCMDを求める)除算部47,48と、その比KACT/KCMDの目標値(=1)を設定する目標値設定部49とを備えている。この場合、除算部47,48により比KACT/KCMDを求めるに際しては、LAFセンサ6から得られるCAT前A/F(=KACT)と目標空燃比算出部16により算出される目標空燃比KCMDとの間に前記式(35)に示したむだ時間d’が存在するため、各除算部47,48には、目標空燃比KCMDがむだ時間d’分の調整を行うむだ時間調整部50を介して与えられるようになっている。
【0199】
そして、除算部47,48によりそれぞれ求められた比KACT/KCMDがPID制御部22及び適応制御部23に与えられると共に、その比の値の目標値(=1)が目標値設定部49からPID制御部22及び適応制御部23に与えられ、該PID制御部22及び適応制御部23は、それぞれ与えられた比KACT/KCMDが目標値(=1)に一致するように、図1のものと同様にフィードバック補正係数KLAF,KSTRを求めるようにしている。この場合、適応制御部23は、前記式(35)中の“KCMD(j-d')”と“KACT(j)”をそれぞれ“1”、“KACT/KCMD”で置き換えた形の漸化式によりフィードバック補正係数KSTRを求めることとなる。
【0200】
他の構成は、図1のものと全く同一である。
【0201】
このような大局的フィードバック制御部20を備えた本実施形態の空燃比制御装置では、適応スライディングモード制御を用いて補正してなる目標空燃比KCMDとLAFセンサ6により検出されるCAT前A/Fとの比KACT/KCMDが“1”に一致するように、換言すれば、目標空燃比KCMDとCAT前A/Fとが一致するようにフィードバック補正係数KFB(=KLAFまたはKSTR)が大局的フィードバック制御部20により求められるので、図1のものと同様の作用効果を奏することはもちろんである。そして、さらに、大局的フィードバック制御部20がフィードバック補正係数KFB求める際の目標値が“1”に固定されるため、図1のもののように、目標空燃比KCMD(これは時々刻々変動する)を目標値とする場合に較べて大局的フィードバック制御部20による制御の安定性が向上する。特に、大局的フィードバック制御部20の適応制御部23にあっては、目標値が固定されることで、前述したような適応パラメータθの変化が小さくなるため、該適応制御部23の安定性が大幅に向上する。
【0202】
尚、本実施形態では、目標空燃比KCMDとLAFセンサ6により検出されるCAT前A/Fとの比KACT/KCMDを目標値“1”に収束させるようにしたが、目標空燃比KCMDとLAFセンサ6により検出されるCAT前A/Fとの偏差を求め、その偏差がなくなるように(偏差の目標値を“0”とする)制御してもよい。さらには、スライディングモード制御部19の出力uslにより直接的にCAT前A/Fの検出値を補正し、それを別途求めた目標値に一致させるように制御することも可能である。
【0203】
また、以上説明した各実施形態では、第1排気ガスセンサとして、広域空燃比センサ(LAFセンサ)6を用いたが、第1排気ガスセンサは排気ガスの空燃比を検出できるものであれば、通常のO2センサ等、他の形式のセンサを用いてもよい。
【0204】
また、前記各実施形態では、第2排気ガスセンサとして酸素濃度センサ(O2センサ)7を用いたが、第2排気ガスセンサは、制御すべき触媒装置下流の排気ガスの特定成分の濃度を検出できるセンサであれば、他のセンサを用いてもよい。すなわち、例えば触媒装置下流の排気ガス中の一酸化炭素(CO)を制御する場合はCOセンサ、窒素酸化物(NOX)を制御する場合にはNOXセンサ、炭化水素(HC)を制御する場合にはHCセンサを用いる。三元触媒装置を使用した場合には、上記のいずれのガス成分の濃度を検出するようにしても、触媒装置の浄化性能を最大限に発揮させるように制御することができる。また、還元触媒装置や酸化触媒装置を用いた場合には、浄化したいガス成分を直接検出することで、浄化性能の向上を図ることができる。
【0205】
また、前記各実施形態では、内燃機関の空燃比をスライディングモード制御を用いて制御するものを説明したが、本発明はこれに限らず、任意の制御対象物の状態量を制御する場合に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した内燃機関の空燃比制御装置の一実施形態の全体的システム構成図。
【図2】図1の空燃比制御装置で使用するO2 センサの出力特性図。
【図3】図1の空燃比制御装置における制御対象のモデルを説明するための説明図。
【図4】図3のモデルのブロック図。
【図5】図1の空燃比制御装置の状態予測部内の推定部に使用するモデルのブロック図。
【図6】図1の空燃比制御装置における状態予測部のブロック図。
【図7】スライディングモード制御を説明するための説明図。
【図8】図1の空燃比制御装置における制御系の極配置を示す説明図。
【図9】図1の空燃比制御装置における適応スライディングモード制御部のブロック図。
【図10】図9の適応スライディングモード制御部が使用する超平面の説明図。
【図11】図1の空燃比制御装置における適応制御部のブロック図。
【図12】図1の空燃比制御装置における出力燃料噴射量と基準空燃比補正量との算出タイミングを説明するための説明図。
【図13】図1の空燃比制御装置の作動を説明するためのフローチャート。
【図14】図1の空燃比制御装置の作動を説明するためのフローチャート。
【図15】図1の空燃比制御装置の作動を説明するためのフローチャート。
【図16】図1の空燃比制御装置の作動を説明するためのフローチャート。
【図17】図1の空燃比制御装置と従来の装置とのシミュレーション結果を示す説明図。
【図18】本発明のスライディングモード制御方法を適用した内燃機関の空燃比制御装置の他の実施形態の全体的システム構成図。
【符号の説明】
A…制御対象物(排気系)、σ…線形関数。
Claims (1)
- 制御対象物の出力の複数の状態量を制御すべき状態量として該複数の状態量を変数とする線形関数によりスライディングモード制御用の超平面を設定し、該状態量を該超平面上に収束させ、さらに、該状態量を該超平面上に拘束しつつ該超平面上の平衡点に収束せしめて該状態量を該平衡点により表される目標状態量に制御するように前記制御対象物の入力を操作するスライディングモード制御方法において、
前記制御対象物の入力及び出力間のむだ時間後の前記複数の状態量を、該状態量の現在の検出値と該制御対象物の現在までの入力とから推定する状態予測部を備え、該状態予測部により推定された前記複数の状態量の推定値を前記線形関数の変数として用いたことを特徴とするスライディングモード制御方法。
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