JP3691413B2 - 超臨界媒体中での固体改質方法 - Google Patents
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- Y02P20/54—Improvements relating to the production of bulk chemicals using solvents, e.g. supercritical solvents or ionic liquids
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、超臨界媒体中での固体改質方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、固体物質の微粒子化や乾燥、結晶の転移等の操作を簡便、かつ効果的なものとし、新しい固体状態の創製も可能とする、超臨界媒体中での固体改質方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
従来、各種の医薬品の調製法においては、再結晶法やスプレードライ法などの物質の三態を制御することにより、無水物結晶や、結晶多形のうちの準安定形あるいはアモルファスのような新しい固体状態を作り出すことにより調製されている。
【0003】
しかしながら、これら従来の方法においては、生成される固体状態は、そのサイズには制約があって、たとえば結晶形態の微細化、微粒子化が容易ではないことや、脱水、脱溶剤、乾燥等が必ずしも容易ではない等の問題があった。つまり、固体状態の改質について充分に満足できるだけの自由度に乏しいのが実情であった。
【0004】
一方、最近、超臨界流体に注目が集まっている。超臨界状態は、物質の三態のいずれにも属さない新しい物質の状態であり、気体の持つ拡散性と液体の持つ物質を溶かし出す性質の両方を併せ持つ。この超臨界状態を経由した乾燥では、気−液界面が存在しないため、界面張力が働くことがないため、タンパク製剤の乾燥や電子基板の洗浄、乾燥などにも応用が期待されており、現在、物理・物理化学の分野で精力的に研究が進められている。
【0005】
医薬品物質の固体状態の改質について、このような特徴のある超臨界流体の応用は大いに期待されることである。
実際、超臨界二酸化炭素を調整しチャンバーにこれを流入させることにより、溶媒を脱離あるいは薬物の溶解特性を変化させることにより結晶を晶析させる手法、あるいは、超臨界状態で薬物を溶解させこれを脱超臨界状態にすることにより晶析させる方法が提案されている。
【0006】
だが、現状においては、これらの方法でも、超臨界流体への溶媒の溶解度が低いことから、結晶形態の変換や、脱水、脱溶剤、乾燥等を効率的に行うことや、新しい固体状態を創製することにはあまり成功していない。
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題点を解消し、超臨界流体のもつ特徴を生かし、医薬品の固体物質のサイズや結晶形態の変更、脱水、脱溶剤、乾燥等の改質を容易とし、新しい固体状態の創製をも可能とする、超臨界媒体中での固体改質方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、超臨界媒体中において液体共存系固体の脱液体による改質を行う方法であって、前記液体の吸収材もしくは吸着材を存在させることを特徴とする超臨界媒体中での固体改質方法を提供する。
【0009】
第2には、液体共存系固体が水和物固体であって、脱水改質を行うことを特徴とする上記の超臨界媒体中での固体改質方法を、第3には、固体の微小化もしくは微粒子化を行うことを特徴とする超臨界媒体中での固体改質方法を、第4には、固体形態を変化させることを特徴とする超臨界媒体中での固体改質方法を提供する。
【0010】
そして、この出願の発明は、第5には、固体を液体共存系固体へと変換し、次いで脱液体することを特徴とする上記いずれかの超臨界媒体中での固体の改質方法を提供する。
【0011】
また、第6には、溶液を超臨界媒体中で脱液体して溶液に含有されている物質の固体状態を改質する方法であって、前記液体の吸収材もしくは吸着材を存在させることを特徴とする固体改質方法を提供し、第7には、薬物を含有する溶液を脱液体して薬物の個体状態を改質する方法をも提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0013】
まず、この発明の方法が対象としている液体共存系の固体であるが、このものは、固体状態にあって、しかも水や有機物等のその単独物質としては常温常圧においては液体として存在する物質が共存されているものを意味している。たとえばその代表例としては水和物、水和物結晶が例示される。もちろん、このような液体共存系固体を形成する固体物質としては、有機物あるいは無機物のいずれであってもよい。
【0014】
これらの液体共存系固体の超臨界媒体中での脱液体のために存在させることになる該液体の吸収材あるいは吸着材としては各種のものであってよく、たとえばシリカゲルやモレキュラーシーブ等がその例として示される。
【0015】
超臨界媒体としては各種のものであってよく、対象とする固体物質の種類、その性質に応じて、たとえばそれらの分野をもたらさない温度や圧力において超臨界状態となるもの、さらには通常は非反応性の媒体が使用されることになる。この発明において代表的な超臨界媒体としては、二酸化炭素(CO2)、エタン、プロパン、ブタン、エタノール、ベンゼン、アンモニア等が例示されることになる。なかでも、取扱いの容易性等の観点からは、二酸化炭素(CO2)が示される。この二酸化炭素(CO2)の場合には、臨界温度31.0℃、臨界圧力7.38MPaである。
【0016】
そして、この出願の発明においては、固体状態の改質は、各種の目的において行われることになる。たとえば、固体の微小化、もしくは微粒子、脱水、脱溶剤、乾燥、結晶等の体形態の変化等が考慮される。
【0017】
これらの目的に応じて、たとえばこの出願の発明では、医薬品原末等の固体物質を水和物あるいは溶剤付加物の形態に変換し、次いでこの発明の方法を適用するようにしてもよい。
【0018】
また、この出願の発明においては、従来の脱溶媒法により薬物等の溶液から固体を変性調整する際に、超臨界状態を経由することで、気液界面が存在しないことからその活性を保つことができる。つまり、この出願の発明によれば、前記のとおり、薬物等を含有する溶液を超臨界媒体中で上記と同様の方法により脱液体して、溶液に含有されていた薬物等の物質の固体状態を効果的に改質することが可能となる。
【0019】
この出願の発明の方法によれば、媒体中に吸収相や吸着相を共存させることにより、超臨界条件下の薬物等の固体物質の溶液中の溶媒等の液体分子を脱液体化することにより超臨界条件で固相を分離調整することができ、条件により従来法よりも急激な脱溶媒現象が起こり従来にはない特性の微粒子や新しい個体状態が出現する。
【0020】
超臨界条件下での操作については対象とする固体物質の種類や性質に応じて定めることができ、また超臨界生成のための装置(チャンバー等)については従来より知られている手段を踏まえて適宜に構成することができる。
【0021】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく発明の実施の形態について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【0022】
【実施例】
<試料>
日本薬局方カルバマゼピン原末(桂化学株式会社、Lot No. CEJ−2−1)
<操作>
1.超臨界状態二酸化炭素中でのカルバマゼピン二水和物の脱水によるナノパーティクルの調製
カルバマゼピン二水和物の調製:原末を60℃エタノール−精製水(1:2)混液から再結晶し、得られた結晶を吸引ろ過し濾紙で水分を除いて試料とした。再結晶を室温で行って得られた比較的大きな結晶と、氷冷しながら再結晶させて得られた比較的小さな結晶を調製した。
【0023】
▲1▼ 装置:臨界脱水装置
▲2▼ 脱水条件:圧力 80kg/cm2以上
温度 52℃
臨界状態を保持するためには、温度、圧力共に臨界点(圧力75.4kg/cm2、温度31℃)に対し15〜20%の上乗せ幅の保持が必要である。
【0024】
▲3▼ 方法:チャンバ内にカルバマゼピン二水和物と3gのシリカゲルを入れ、液化炭酸ガスを注入した後、チャンバ内の温度と圧力共に臨界点以上に保持し超臨界状態二酸化炭素内で17時間脱水を行った。脱水が完全に行われたかどうかの確認には示差走査肩熱量計を用いた。測定条件、測定方法を以下に示す。
【0025】
▲4▼ 装置:示差走査熱量計(DSC−3100、(株)マックサイエンス)
条件:測定温度範囲 25〜200℃
昇温速度:10/min
測定雰囲気:N2ガス
流量:30ml/min
試料重量:約5mg
方法:試料をアルミパンに充填し、アルミ蓋をして上記条件で測定した。
【0026】
2.走査型電子顕微鏡(SEM)による形態観察
試料:カルバマゼピン原末、カルバマゼピン二水和物、60℃乾燥カルバマゼピン、臨界脱水処理物
なお、60℃乾燥物の調製では、操作1と同じ方法で二水和物を調製し、60℃で3時間乾燥した。
【0027】
装置:操作型電子顕微鏡(JSM−7200LV、日本電子(株)製)、及びイオンスパッタリング装置(JFC−1100、日本電子(株)製)
方法:両面接着テープを用いて試料粉末を試料台に固定した後、表面を金でコーティング処理して検鏡した。
<結果>
1.超臨界二酸化炭素中でのカルバマゼピン二水和物の脱水によるナノパーティクスの調製
脱水が完全に終了していることを確認するために、カルバマゼピン二水和物、臨界脱水処理後の粉末をそれぞれ示差走査型熱量計で測定した。結果を図1および図2に示した。
【0028】
この図1および図2より二水和物結晶中の結晶水は超臨界二酸化炭素内での脱水で完全に脱水されていることが確認できた。
2.走査型電子顕微鏡(SEM)による形態観察
図3にカルバマゼピン原末結晶、図4にカルバマゼピン二水和物結晶、図5に臨界脱水処理後カルバマゼピン結晶、図6に60℃乾燥後結晶のSEM写真を示した。
【0029】
図3からカルバマゼピン結晶はいびつな形態をしており、その粒径も数十μmの不均一なものであることがわかる。図4から二水和物の表面は滑らかであることが観察できた。そして図5からは、臨界脱水処理をしたことでカルバマゼピン結晶は幅が1〜2μmの微細な針状結晶になっているのが観察できた。一方、図6からは、60℃乾燥物の結晶表面はわずかに毛羽立ったようになっているのが観察できたが、それは表面のわずかな部分に止まっているのがわかる。
【0030】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、超臨界流体のもつ特徴を生かし、医薬品の固体物質のサイズや結晶形態の変更、脱水、脱溶剤、乾燥等の改質を容易とし、新しい固体状態の創製をも可能とする、超臨界媒体中での固体改質方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カルバマゼピン二水和物の示差熱測定の結果を例示した図である。
【図2】臨界脱水後のカルバマゼピンの示差熱測定の結果を示した図である。
【図3】カルバマゼピン原末結晶のSEM写真である。
【図4】カルバマゼピン二水和物結晶のSEM写真である。
【図5】臨界脱水後のカルバマゼピン結晶のSEM写真である。
【図6】60℃乾燥後のカルバゼピン結晶のSEM写真である。
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、超臨界媒体中での固体改質方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、固体物質の微粒子化や乾燥、結晶の転移等の操作を簡便、かつ効果的なものとし、新しい固体状態の創製も可能とする、超臨界媒体中での固体改質方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
従来、各種の医薬品の調製法においては、再結晶法やスプレードライ法などの物質の三態を制御することにより、無水物結晶や、結晶多形のうちの準安定形あるいはアモルファスのような新しい固体状態を作り出すことにより調製されている。
【0003】
しかしながら、これら従来の方法においては、生成される固体状態は、そのサイズには制約があって、たとえば結晶形態の微細化、微粒子化が容易ではないことや、脱水、脱溶剤、乾燥等が必ずしも容易ではない等の問題があった。つまり、固体状態の改質について充分に満足できるだけの自由度に乏しいのが実情であった。
【0004】
一方、最近、超臨界流体に注目が集まっている。超臨界状態は、物質の三態のいずれにも属さない新しい物質の状態であり、気体の持つ拡散性と液体の持つ物質を溶かし出す性質の両方を併せ持つ。この超臨界状態を経由した乾燥では、気−液界面が存在しないため、界面張力が働くことがないため、タンパク製剤の乾燥や電子基板の洗浄、乾燥などにも応用が期待されており、現在、物理・物理化学の分野で精力的に研究が進められている。
【0005】
医薬品物質の固体状態の改質について、このような特徴のある超臨界流体の応用は大いに期待されることである。
実際、超臨界二酸化炭素を調整しチャンバーにこれを流入させることにより、溶媒を脱離あるいは薬物の溶解特性を変化させることにより結晶を晶析させる手法、あるいは、超臨界状態で薬物を溶解させこれを脱超臨界状態にすることにより晶析させる方法が提案されている。
【0006】
だが、現状においては、これらの方法でも、超臨界流体への溶媒の溶解度が低いことから、結晶形態の変換や、脱水、脱溶剤、乾燥等を効率的に行うことや、新しい固体状態を創製することにはあまり成功していない。
【0007】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来技術の問題点を解消し、超臨界流体のもつ特徴を生かし、医薬品の固体物質のサイズや結晶形態の変更、脱水、脱溶剤、乾燥等の改質を容易とし、新しい固体状態の創製をも可能とする、超臨界媒体中での固体改質方法を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、超臨界媒体中において液体共存系固体の脱液体による改質を行う方法であって、前記液体の吸収材もしくは吸着材を存在させることを特徴とする超臨界媒体中での固体改質方法を提供する。
【0009】
第2には、液体共存系固体が水和物固体であって、脱水改質を行うことを特徴とする上記の超臨界媒体中での固体改質方法を、第3には、固体の微小化もしくは微粒子化を行うことを特徴とする超臨界媒体中での固体改質方法を、第4には、固体形態を変化させることを特徴とする超臨界媒体中での固体改質方法を提供する。
【0010】
そして、この出願の発明は、第5には、固体を液体共存系固体へと変換し、次いで脱液体することを特徴とする上記いずれかの超臨界媒体中での固体の改質方法を提供する。
【0011】
また、第6には、溶液を超臨界媒体中で脱液体して溶液に含有されている物質の固体状態を改質する方法であって、前記液体の吸収材もしくは吸着材を存在させることを特徴とする固体改質方法を提供し、第7には、薬物を含有する溶液を脱液体して薬物の個体状態を改質する方法をも提供する。
【0012】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0013】
まず、この発明の方法が対象としている液体共存系の固体であるが、このものは、固体状態にあって、しかも水や有機物等のその単独物質としては常温常圧においては液体として存在する物質が共存されているものを意味している。たとえばその代表例としては水和物、水和物結晶が例示される。もちろん、このような液体共存系固体を形成する固体物質としては、有機物あるいは無機物のいずれであってもよい。
【0014】
これらの液体共存系固体の超臨界媒体中での脱液体のために存在させることになる該液体の吸収材あるいは吸着材としては各種のものであってよく、たとえばシリカゲルやモレキュラーシーブ等がその例として示される。
【0015】
超臨界媒体としては各種のものであってよく、対象とする固体物質の種類、その性質に応じて、たとえばそれらの分野をもたらさない温度や圧力において超臨界状態となるもの、さらには通常は非反応性の媒体が使用されることになる。この発明において代表的な超臨界媒体としては、二酸化炭素(CO2)、エタン、プロパン、ブタン、エタノール、ベンゼン、アンモニア等が例示されることになる。なかでも、取扱いの容易性等の観点からは、二酸化炭素(CO2)が示される。この二酸化炭素(CO2)の場合には、臨界温度31.0℃、臨界圧力7.38MPaである。
【0016】
そして、この出願の発明においては、固体状態の改質は、各種の目的において行われることになる。たとえば、固体の微小化、もしくは微粒子、脱水、脱溶剤、乾燥、結晶等の体形態の変化等が考慮される。
【0017】
これらの目的に応じて、たとえばこの出願の発明では、医薬品原末等の固体物質を水和物あるいは溶剤付加物の形態に変換し、次いでこの発明の方法を適用するようにしてもよい。
【0018】
また、この出願の発明においては、従来の脱溶媒法により薬物等の溶液から固体を変性調整する際に、超臨界状態を経由することで、気液界面が存在しないことからその活性を保つことができる。つまり、この出願の発明によれば、前記のとおり、薬物等を含有する溶液を超臨界媒体中で上記と同様の方法により脱液体して、溶液に含有されていた薬物等の物質の固体状態を効果的に改質することが可能となる。
【0019】
この出願の発明の方法によれば、媒体中に吸収相や吸着相を共存させることにより、超臨界条件下の薬物等の固体物質の溶液中の溶媒等の液体分子を脱液体化することにより超臨界条件で固相を分離調整することができ、条件により従来法よりも急激な脱溶媒現象が起こり従来にはない特性の微粒子や新しい個体状態が出現する。
【0020】
超臨界条件下での操作については対象とする固体物質の種類や性質に応じて定めることができ、また超臨界生成のための装置(チャンバー等)については従来より知られている手段を踏まえて適宜に構成することができる。
【0021】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく発明の実施の形態について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。
【0022】
【実施例】
<試料>
日本薬局方カルバマゼピン原末(桂化学株式会社、Lot No. CEJ−2−1)
<操作>
1.超臨界状態二酸化炭素中でのカルバマゼピン二水和物の脱水によるナノパーティクルの調製
カルバマゼピン二水和物の調製:原末を60℃エタノール−精製水(1:2)混液から再結晶し、得られた結晶を吸引ろ過し濾紙で水分を除いて試料とした。再結晶を室温で行って得られた比較的大きな結晶と、氷冷しながら再結晶させて得られた比較的小さな結晶を調製した。
【0023】
▲1▼ 装置:臨界脱水装置
▲2▼ 脱水条件:圧力 80kg/cm2以上
温度 52℃
臨界状態を保持するためには、温度、圧力共に臨界点(圧力75.4kg/cm2、温度31℃)に対し15〜20%の上乗せ幅の保持が必要である。
【0024】
▲3▼ 方法:チャンバ内にカルバマゼピン二水和物と3gのシリカゲルを入れ、液化炭酸ガスを注入した後、チャンバ内の温度と圧力共に臨界点以上に保持し超臨界状態二酸化炭素内で17時間脱水を行った。脱水が完全に行われたかどうかの確認には示差走査肩熱量計を用いた。測定条件、測定方法を以下に示す。
【0025】
▲4▼ 装置:示差走査熱量計(DSC−3100、(株)マックサイエンス)
条件:測定温度範囲 25〜200℃
昇温速度:10/min
測定雰囲気:N2ガス
流量:30ml/min
試料重量:約5mg
方法:試料をアルミパンに充填し、アルミ蓋をして上記条件で測定した。
【0026】
2.走査型電子顕微鏡(SEM)による形態観察
試料:カルバマゼピン原末、カルバマゼピン二水和物、60℃乾燥カルバマゼピン、臨界脱水処理物
なお、60℃乾燥物の調製では、操作1と同じ方法で二水和物を調製し、60℃で3時間乾燥した。
【0027】
装置:操作型電子顕微鏡(JSM−7200LV、日本電子(株)製)、及びイオンスパッタリング装置(JFC−1100、日本電子(株)製)
方法:両面接着テープを用いて試料粉末を試料台に固定した後、表面を金でコーティング処理して検鏡した。
<結果>
1.超臨界二酸化炭素中でのカルバマゼピン二水和物の脱水によるナノパーティクスの調製
脱水が完全に終了していることを確認するために、カルバマゼピン二水和物、臨界脱水処理後の粉末をそれぞれ示差走査型熱量計で測定した。結果を図1および図2に示した。
【0028】
この図1および図2より二水和物結晶中の結晶水は超臨界二酸化炭素内での脱水で完全に脱水されていることが確認できた。
2.走査型電子顕微鏡(SEM)による形態観察
図3にカルバマゼピン原末結晶、図4にカルバマゼピン二水和物結晶、図5に臨界脱水処理後カルバマゼピン結晶、図6に60℃乾燥後結晶のSEM写真を示した。
【0029】
図3からカルバマゼピン結晶はいびつな形態をしており、その粒径も数十μmの不均一なものであることがわかる。図4から二水和物の表面は滑らかであることが観察できた。そして図5からは、臨界脱水処理をしたことでカルバマゼピン結晶は幅が1〜2μmの微細な針状結晶になっているのが観察できた。一方、図6からは、60℃乾燥物の結晶表面はわずかに毛羽立ったようになっているのが観察できたが、それは表面のわずかな部分に止まっているのがわかる。
【0030】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、超臨界流体のもつ特徴を生かし、医薬品の固体物質のサイズや結晶形態の変更、脱水、脱溶剤、乾燥等の改質を容易とし、新しい固体状態の創製をも可能とする、超臨界媒体中での固体改質方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】カルバマゼピン二水和物の示差熱測定の結果を例示した図である。
【図2】臨界脱水後のカルバマゼピンの示差熱測定の結果を示した図である。
【図3】カルバマゼピン原末結晶のSEM写真である。
【図4】カルバマゼピン二水和物結晶のSEM写真である。
【図5】臨界脱水後のカルバマゼピン結晶のSEM写真である。
【図6】60℃乾燥後のカルバゼピン結晶のSEM写真である。
Claims (7)
- 超臨界媒体中において液体共存系固体の脱液体による改質を行う方法であって、前記液体の吸収材もしくは吸着材を存在させることを特徴とする超臨界媒体中での固体改質方法。
- 液体共存系固体が水和物固体であって、脱水改質を行うことを特徴とする請求項1の超臨界媒体中での固体改質方法。
- 固体の微小化もしくは微粒子化を行うことを特徴とする請求項1または2の超臨界媒体中での固体改質方法。
- 固体形態を変化させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかの超臨界媒体中での固体改質方法。
- 固体を液体共存系固体へと変換し、次いで脱液体することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの超臨界媒体中での固体の改質方法。
- 溶液を超臨界媒体中で脱液体して溶液に含有されている物質の固体状態を改質する方法であって、前記液体の吸収材もしくは吸着材を存在させることを特徴とする超臨界媒体中での固体改質方法。
- 薬物を含有する溶液を脱液体して薬物の固体状態を改質することを特徴とする請求項6の固体改質方法。
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JP2001202697A JP3691413B2 (ja) | 2001-07-03 | 2001-07-03 | 超臨界媒体中での固体改質方法 |
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CN103610664B (zh) * | 2013-12-11 | 2015-09-16 | 中国药科大学 | 一种制备卡马西平聚乳酸-羟基乙酸共聚物微胶囊的方法 |
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2001
- 2001-07-03 JP JP2001202697A patent/JP3691413B2/ja not_active Expired - Fee Related
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