JP3691323B2 - 建設機械の油圧制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建設機械におけるブームシリンダやスティックシリンダ等の油圧アクチュエータの作動を制御する建設機械の油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図6は従来の建設機械の油圧制御装置を示す回路図である。この従来技術は代表的な油圧式建設機械である油圧ショベルの油圧制御装置であり、図6に示すように、エンジン1の動力で駆動する斜板式可変容量型油圧ポンプとして構成される第1,第2のメインポンプ2,3を備え、これらのメインポンプ2,3から吐出される圧油を操作レバー8cの操作量に応じて開度量が変化するコントロール弁(制御弁)を介して複数の油圧シリンダ(アクチュエータ)に供給すべく構成されている。なお、ここでは簡単のために第1メインポンプ2により駆動される油圧シリンダ5と、この油圧シリンダ5に圧油を供給するコントロール弁7のみを代表して図示している。
【0003】
コントロール弁7は、図6に示すようにスプール(流量制御スプール)の位置を3つの位置7a,7b,7cに連続的に切り替え可能なスプール弁として構成され、位置7aに切り換えられたときには、油圧シリンダ5のピストン側油室5aとメインポンプ2とが連通し、ロッド側油室5bとタンク10とが連通するようになっている。また、位置7cに切り換えられたときには、油圧シリンダ5のロッド側油室5bとメインポンプ2とが連通し、ピストン側油室5aとタンク10とが連通するようになっている。そして、中間の位置7bではメインポンプ2とタンク10とが連通するようになっている。
【0004】
コントロール弁7の切り換え操作は、オペレータの手動操作によりリモコン弁(パイロット操作弁)8を介して行なわれるようになっている。リモコン弁8はパイロットポンプ4に接続される調圧弁部8a,8bと操作レバー8cとから構成されており、一方の調圧弁部8aはコントロール弁7の一方の圧力室7dに接続され、他方の調圧弁部8bはコントロール弁7の他方の圧力室7eに接続されている。そして、操作レバー8cの操作方向により何れかの調圧弁部8a,8bが選択され、例えば、操作レバー8cが図6中時計回りに操作されたときには調圧弁部8aが選択されるようになっている。この選択された調圧弁部8aでは、パイロットポンプ4から供給された圧油が操作レバー8cの操作量(操作角度θ)に応じたパイロット圧(2次圧)に調整され、このパイロット圧がコントロール弁7の圧力室7dに導入されるようになっている。
【0005】
このとき、コントロール弁7のスプールの位置は内蔵されている図示しないスプリングと圧力室7dに導入されたパイロット圧とのバランスにより連続的に変化し、パイロット圧が大きいほどスプールは中間位置7bから位置7a側に移動するようになっている。なお、操作レバー8cが図6中反時計回りに操作されたときには、パイロット圧は圧力室7e側に導入されるので、パイロット圧が大きいほどスプールは中間位置7bから位置7c側に移動するようになっている。
【0006】
このときのパイロット圧に対する油圧シリンダ5,メインポンプ2及びタンク10を結ぶ各通路の開口特性(絞り特性)は、一例として図7に示すように設定されている。すなわち、図7に示すように、パイロット圧が大きいほど油圧シリンダ5とメインポンプ2とを結ぶ通路(P−C通路)の開口面積、及び油圧シリンダ5とタンク10とを結ぶ通路(C−T通路)の開口面積は大きくなり、メインポンプ2とタンク10とを結ぶバイパス通路の開口面積は逆に縮小していくような特性に設定されている。これにより、コントロール弁7では、操作レバー8cを操作してパイロット圧を適宜調整することで、油圧シリンダ5,メインポンプ2及びタンク10を結ぶ各通路を流れる圧油の流量を制御できるようになっている。
【0007】
また、メインポンプ2とタンク10とを結ぶバイパス通路にはオリフィス11がそなえられ、オリフィス11の上流側圧力はポンプレギュレータ9に導入されるようになっている。ポンプレギュレータ9は斜板式可変容量型油圧ポンプとして構成されるメインポンプ2の斜板角を調整する手段であり、導入される圧力が小さいほど斜板角を大きく変位させるようになっている。これにより、例えば操作レバー8cが大きく操作されたときには、パイロット圧の増大に伴い図7に示す絞り特性にしたがってバイパス通路の開口面積は小さくなるため、バイパス通路へ流れる圧油量が絞られてオリフィス11の上流側圧力は小さくなり、メインポンプ2からの圧油の吐出量が増大するようになっている。
【0008】
ところで、油圧ショベルは、図8に示すように、上部旋回体100と下部走行体101と作業装置102とから構成され、作業装置102は、主にブーム103,スティック104,バケット108等から構成されている。ブーム103は上部旋回体100に対して回動可能に枢着され、ブーム103の先端には同じく鉛直面内に回動可能にスティック104が接続されている。
【0009】
また、上部旋回体100とブーム103との間には、ブーム103を駆動するためのブーム駆動用油圧シリンダ105が設けられるとともに、ブーム103とスティック104との間には、スティック104を駆動するためのスティック駆動用油圧シリンダ106が設けられている。また、スティック104とバケット108との間には、バケット108を駆動するためのバケット駆動用油圧シリンダ107が設けられている。
【0010】
油圧ショベルでは、これらの各油圧シリンダ105〜107を伸縮駆動させ、ブーム103,スティック104等の作業装置102を駆動させることで掘削等の各種作業を行なうことが可能であり、このような各種作業における一動作として、例えば図8中矢印A方向へスティック104を下降させるスティックイン操作が行なわれる場合がある。
【0011】
スティック104を下降させるにはスティック駆動用油圧シリンダ106を伸長させればよいが、図6中の油圧シリンダ5がこのスティック駆動用油圧シリンダ106であるとすると、操作レバー8cを図6中時計回りに操作すればよい。この操作によりコントロール弁7のスプールは中間位置7bから位置7a側に移動し、これにより油圧シリンダ5のピストン側油室5aとメインポンプ2とが連通してメインポンプ2からの圧油が油路を通じて油圧シリンダ5のピストン側油室5aへ供給される。また、油圧シリンダ5のロッド側油室5bとタンク10とが連通してロッド側油室5b内の圧油が油路を通じてタンクへ排出される。これにより、油圧シリンダ5が伸長してスティック104は図8中矢印Aで示すように下側へ回動される。
【0012】
このようにスティック104を下側へ回動させる場合には、油圧シリンダ5(スティック駆動用油圧シリンダ106)に作用する荷重の方向と油圧シリンダ5の伸長方向とが一致する。このため、コントロール弁7が中間位置7bから位置7a側に切り換わってP−C通路,C−T通路が開き圧油が流れるようになったときには、この伸長方向と同一方向の荷重を受けて油圧シリンダ5は急激に伸長しようとする。
【0013】
ところが、エンジン回転速度が低くメインポンプ2からピストン側油室5aに供給される圧油の流入量が少ない場合には、油圧シリンダ5の伸長速度に圧油の供給量が追いつかない。このため、ピストン側油室5a内が負圧になってしまい、キャビテーションが発生して異音や振動の発生原因になってしまう。
ここで、スティック104を自重で下降させるときの油圧シリンダ5の伸長速度は、油圧シリンダ5に作用する重量と油圧シリンダ5のロッド側油室5bからの圧油の排出量とのバランスによって決まる。つまり、油圧シリンダ5の伸長速度は、油圧シリンダ5のロッド側油室5bとタンク10との間の油路(作動油排出通路)の開口面積の大きさによって決まり、開口面積を絞るほど圧油の排出流量を少なくして油圧シリンダ5の伸長速度を低下させることができる。
【0014】
このため、従来の油圧制御装置では、エンジン回転速度が低くメインポンプ2からの圧油の吐出流量が少ない場合でも油圧シリンダ5の伸長速度が過大になってピストン側油室5a内が負圧になることがないように、図7に示すコントロール弁7のC−T通路の開口特性を設定していた。つまり、操作レバー8cが最大に操作されてパイロット圧が最大になったときにはC−T通路の開口面積は最大になるが、このC−T通路の最大開口面積を、エンジン回転速度が低くメインポンプ2からの圧油の吐出流量が少ない場合でも負圧にならないような値に設定していた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のようにコントロール弁7のC−T通路の開口特性をエンジン回転速度が低いときでもピストン側油室5a内が負圧にならないような特性に設定した場合、逆にエンジン回転速度が高いときに不具合が生じてしまう。
つまり、エンジン回転速度が高いときにはメインポンプ2からの圧油の吐出流量が増大してピストン側油室5aへの流入流量は増大するが、このピストン側油室5aへの流入流量の増大に応じてロッド側油室5bからタンク10への圧油の排出流量も増大する。ところが、コントロール弁7のC−T通路は、圧油の排出量を少なくして油圧シリンダ5の伸長速度を低下させることができるように絞られているため、多量の圧油を排出しようとするとこのC−T通路の絞り部分において圧力損失が生じてしまう。このため、油圧シリンダ5(スティック駆動用油圧シリンダ106)を伸長してスティック104を下降させるのに、C−T通路の絞りにおいて生じた圧力損失分だけの余計なエネルギが必要になり、燃費が悪化してしまう。
【0016】
そして、上記の課題はスティック駆動用油圧シリンダ106に限られるものでなく、ブーム駆動用油圧シリンダ105やバケット駆動用油圧シリンダ107等、作用する荷重の方向と伸長方向とが一致する油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)であれば同様に生じうる課題である。
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、制御弁の圧油給排通路の開口面積をエンジン回転速度に応じて調整できるようにすることで、エンジン回転速度が低くポンプ吐出流量が不足したときには開口面積を絞って油圧アクチュエータでの負圧の発生を防止することや、エンジン回転速度が高くポンプ吐出流量が増大したときには開口面積を大きくして圧力損失に伴う燃費の悪化を防止することを可能にした、建設機械の油圧制御装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
このため、本発明の建設機械の油圧制御装置(請求項1)は、エンジンにより駆動されるメインポンプと、該メインポンプから吐出される圧油により駆動される油圧アクチュエータと、パイロットポンプから吐出される圧油を操作部材の操作量に応じたパイロット圧に調整するパイロット操作弁と、該油圧アクチュエータからタンクへの圧油給排通路に介装され、該パイロット操作弁から供給されるパイロット圧により操作される流量制御スプールをそなえた制御弁と、該エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサと、該パイロット操作弁から該制御弁へのパイロット圧油供給通路にそなえられた圧力調整弁と、該圧力調整弁を操作して該制御弁に供給されるパイロット圧を該エンジン回転速度センサにより検出されるエンジン回転速度に応じた圧力に制御する制御手段とをそなえ、該流量制御スプールの移動量が最大のときの前記の油圧アクチュエータからタンクへの圧油給排通路の開口面積が、該エンジン回転速度センサにより検出される該エンジン回転速度が最大で該メインポンプからの吐出流量が最大の状態において、該油圧アクチュエータで負圧が発生しない範囲で最大の開口面積に設定されていることを特徴としている。
【0018】
なお、好ましくは、該制御手段により、該エンジン回転速度センサにより検出されるエンジン回転速度が低いほど該制御弁に供給されるパイロット圧も低くなるように該圧力調整弁を操作する(請求項2)。そして、該エンジン回転速度が最大回転速度よりも低い場合には、該開口面積は、該パイロット圧に応じた面積に制限される(請求項5)。
より好ましくは、該圧力調整弁を該パイロット圧油供給通路からの分岐通路に設けられた電磁比例リリーフ弁として構成するとともに、該制御手段により、エンジン回転速度に応じて設定された所定のリリーフ圧に基づき該電磁比例リリーフ弁を開閉制御する(請求項3)。
【0019】
或いは、該圧力調整弁を該パイロット圧油供給通路からの分岐通路に設けられたアンロード弁として構成するとともに、該制御手段により、該エンジン回転速度センサにより検出されるエンジン回転速度に応じて該アンロード弁の弁開度を制御する(請求項4)。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図3は本発明の第1実施形態としての建設機械の油圧制御装置を示すものであり、図1はその全体構成を示す回路図、図2は本油圧制御装置にかかるパイロット圧に対するP−C通路,C−T通路,バイパス通路の開口特性を示す図、図3は本油圧制御装置にかかるエンジン回転速度に応じたパイロット圧の制御特性を示す図である。
【0021】
まず、図1を用いて本油圧制御装置の構成について説明する。ただし、図1において前述した従来の建設機械の油圧制御装置(図6参照)と同一の部位については同一の符号を用いている。
本油圧制御装置は、図8に示した油圧ショベル等の建設機械に適用されるものであり、スティック駆動用油圧シリンダ,ブーム駆動用油圧シリンダ,バケット駆動用油圧シリンダ等、作用する荷重の方向と伸長方向とが一致する油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)に用いて好適の油圧制御装置である。
【0022】
図1に示すように、本油圧制御装置は、エンジン1の動力で駆動する第1,第2のメインポンプ2,3を備えている。これらのメインポンプ2,3は、タンク10内の作動油を圧油として吐出するもので、斜板式可変容量型油圧ポンプとして構成されており、前述のようにバイパス通路内の作動油の圧力をポンプレギュレータに導いて斜板の傾きを機械的に変更するように構成されている。
【0023】
そして、本油圧制御装置は、従来と同様にメインポンプ2,3から吐出される圧油をコントロール弁(制御弁)を介して複数の油圧シリンダ(アクチュエータ)に供給すべく構成されている。ただし、ここでも簡単のために第1メインポンプ2により駆動される油圧シリンダ5と、この油圧シリンダ5に圧油を供給するコントロール弁7のみを代表して図示している。建設機械が油圧ショベルの場合、この油圧シリンダ5は、スティック駆動用油圧シリンダ,ブーム駆動用油圧シリンダ又はバケット駆動用油圧シリンダに該当する。
【0024】
コントロール弁7は、後述するリモコン弁(パイロット操作弁)8からのパイロット圧により操作される流量制御スプールをそなえており、このスプールの移動により、油圧シリンダ5への圧油の供給方向を切り換えることができるようになっている。すなわち、スプールが位置7aにあるときには、油圧シリンダ5のピストン側油室5aとメインポンプ2とが連通し、ロッド側油室5bとタンク10とが連通する。また、スプールが位置7cにあるときには、油圧シリンダ5のロッド側油室5bとメインポンプ2とが連通し、ピストン側油室5aとタンク10とが連通する。そして、スプールが位置7bにあるときには、メインポンプ2とタンク10とが連通しバイパスされる。
【0025】
リモコン弁8はパイロットポンプ4に接続される調圧弁部8a,8bと操作レバー8cとから構成されており、一方の調圧弁部8aはパイロットライン(パイロット圧油供給通路)15aによりコントロール弁7の一方の圧力室7dに接続され、他方の調圧弁部8bはパイロットライン15bによりコントロール弁7の他方の圧力室7eに接続されている。そして、操作レバー8cの操作方向により何れかの調圧弁部8a,8bが選択され、選択された何れかの調圧弁部8a,8bでは、パイロットポンプ4から供給された圧油が操作レバー8cの操作量(操作角度θ)に応じたパイロット圧(2次圧)に調整され、このパイロット圧がコントロール弁7の何れかの圧力室7d,7eに導入されるようになっている。なお、パイロット圧は、例えば図3中に実線で示すような特性で、レバー操作量θの増大に応じて増加し得るようになっている。
【0026】
このとき、コントロール弁7のスプールの位置は内蔵されている図示しないスプリングと圧力室7d又は7eに導入されたパイロット圧とのバランスにより連続的に変化し、パイロット圧が大きいほどスプールは中間位置7bから位置7a又は7c側に移動する。そして、このパイロット圧の導入に伴うスプールの移動により、油圧シリンダ5,メインポンプ2及びタンク10を結ぶ各通路の開口面積は、図2に示すように連続的に変化するようになっている。
【0027】
すなわち、図2に示すように、パイロット圧が大きいほど油圧シリンダ5とメインポンプ2とを結ぶ通路(P−C通路,圧油供給通路)の開口面積、及び油圧シリンダ5とタンク10とを結ぶ通路(C−T通路,圧油排出通路)の開口面積は大きくなり、メインポンプ2とタンク10とを結ぶバイパス通路の開口面積は逆に縮小していく。
【0028】
ここで、P−C通路,バイパス通路のパイロット圧に対する開口特性は従来と同様であるが、C−T通路については従来(破線で示す)に比較してパイロット圧に対する開口度が大きく設定されている。これは、従来はエンジン回転速度が低くポンプ吐出流量が小さい状態で油圧シリンダ5のピストン側油室5aが負圧になるのを防止することを目的としてC−T通路の開口特性を絞り気味に設定していたのに対し、本油圧制御装置では、エンジン回転速度が高くポンプ吐出流量が大きい状態でのC−T通路における圧力損失を防止することを目的としてC−T通路の開口特性を設定したことによる。具体的には、本油圧制御装置では、スプールの移動量が最大のときのC−T通路の開口面積が、エンジン回転速度が最大でポンプ吐出流量が最大の状態において油圧シリンダ5のピストン側油室5aが負圧にならない最大の開口面積になるように開口特性を設定している。
【0029】
以上のようにコントロール弁7におけるC−T通路の開口特性を設定することで、エンジン回転速度が高くポンプ吐出流量が大きい状態でのC−T通路における圧力損失を防止することが可能になるが、逆にエンジン回転速度が低くポンプ吐出流量が小さい状態ではピストン側油室5aが負圧になってしまう。そこで、本油圧制御装置では、以下に説明する新たな構成要素を付加することで、エンジン回転速度が低くポンプ吐出流量が小さい状態でピストン側油室5aが負圧になってしまうことを防止している。
【0030】
つまり、本油圧制御装置では、リモコン弁8の調圧弁部8aとコントロール弁7の圧力室7dとを結ぶパイロットライン15aから分岐してタンク10に通じる油路16を設け、この油路16に圧力調整弁としての電磁比例リリーフ弁17を介装している。また、エンジン1には、エンジン回転速度を検出するためのエンジン回転速度センサ14をそなえている。
【0031】
電磁比例リリーフ弁17は、エンジン回転速度センサ14で検出されたエンジン回転速度に基づきコントローラ20により開閉制御されるようになっている。詳述すると、コントローラ20では、電磁比例リリーフ弁17を開閉操作する閾値としてのリリーフ圧がエンジン回転速度に応じて設定している。具体的には、リリーフ圧はエンジン回転速度が最大のときを最大値としてエンジン回転速度が低くなるほど低くなるように設定されている。なお、上記のリリーフ圧の最大設定値は、リモコン弁8からコントロール弁7に供給しうるパイロット圧の最大値以上に設定されている。
【0032】
そして、コントローラ20は、パイロット圧がエンジン回転速度センサ14で検出されたエンジン回転速度に応じて決まるリリーフ圧よりも高いときには電磁比例リリーフ弁17を開操作し、逆にパイロット圧がリリーフ圧よりも低いときには電磁比例リリーフ弁17を閉操作するようになっている。このコントローラ20による電磁比例リリーフ弁17の制御により、コントロール弁7の圧力室7dに供給されるパイロット圧は、エンジン回転速度に応じた所定のリリーフ圧に制限されるようになっている。
【0033】
本発明の第1実施形態としての建設機械の油圧制御装置は上述のように構成されているので、オペレータが油圧シリンダ5を伸長させるべく操作レバー8cを操作したときには次のように作用する。
まず、エンジン回転速度が高い場合、例えば、最大回転速度の場合には、上述のようにコントローラ20におけるリリーフ圧の設定値は最大値となるため、図3に示すように、操作レバー8cの操作量θに応じたパイロット圧がコントロール弁7の圧力室7dに供給される。つまり、操作レバー8cの操作量θを大きくすれば、それに応じて圧力室7dに供給されるパイロット圧も大きくなる。
【0034】
したがって、操作レバー8cの操作量θを最大値θmaxにしたときには、パイロット圧も最大値Pmaxになり、このときには、図2に示すようにC−T通路の開口面積は最大になる。そして、このときのコントロール弁7のC−T通路の開口面積は、上述したようにエンジン回転速度が最大でポンプ吐出流量が最大の状態において油圧シリンダ5のピストン側油室5aが負圧にならない最大の開口面積Amaxであるので、コントロール弁7のC−T通路における圧力損失は最小限になる。
【0035】
一方、エンジン回転速度が最大回転速度よりも低い場合には、図3中一点鎖線で示すようにパイロット圧の最大値はエンジン回転速度に応じた所定のリリーフ圧P1に制限されるので、操作レバー8cの操作量θを大きくしていくと、ある操作量θ1以上では圧力室7dに供給されるパイロット圧は一定圧P1になる。このため、いくら操作レバー8cの操作量θを大きくしても、コントロール弁7のC−T通路の開口面積は上記のパイロット圧(リリーフ圧)P1に応じた面積A1(A1<Amax)に制限されるので、ロッド側油室5bからの圧油の排出速度が制限され、これにより油圧シリンダ5の伸長速度にメインポンプ2からの圧油の供給量が追いつかずにピストン側油室5a内が負圧になってしまうことが防止される。
【0036】
また、エンジン回転速度がさらに低下した場合には、メインポンプ2からの吐出流量もさらに低下するが、図3中二点鎖線で示すようにパイロット圧の最大値は、このさらに低下したエンジン回転速度に応じた所定のリリーフ圧P2(P2<P1)に制限される。このため、いくら操作レバー8cの操作量θを大きくしても、ある操作量θ2以上では圧力室7dに供給されるパイロット圧は一定圧P2に制限され、コントロール弁7のC−T通路の開口面積はリリーフ圧P2に応じた面積A2に制限されることになる。このときのC−T通路の開口面積A2は、前述の開口面積A1よりも狭くなっているので(A2<A1)、ロッド側油室5bからの圧油の排出速度はさらに制限される。したがって、エンジン回転速度の低下に伴いメインポンプ2からの吐出流量がさらに低下した場合でも、油圧シリンダ5の伸長速度にメインポンプ2からの圧油の供給量が追いつかずにピストン側油室5a内が負圧になってしまうことはない。
【0037】
以上のように、本油圧制御装置によれば、エンジン回転速度センサ14で検出されたエンジン回転速度に基づきパイロットライン15aに設けられた電磁比例リリーフ弁17を開閉操作することによって、パイロット操作弁8からコントロール弁7の圧力室7dに供給されるパイロット圧をエンジン回転速度に応じて制御することが可能である。
【0038】
このため、エンジン回転速度が低くポンプ吐出流量が少ないときにはコントロール弁7のC−T通路の開口面積を絞ってロッド側油室5bからの圧油の排出速度を制限することができるので、スティックイン操作等が行なわれ油圧シリンダ5の伸長方向と荷重の作用方向とが一致したときでも、油圧シリンダ5の伸長速度にメインポンプ2からの圧油の供給量が追いつかずにピストン側油室5a内が負圧になってしまうことがないという利点がある。
【0039】
また、このようにエンジン回転速度に応じてコントロール弁7のC−T通路の開口面積を調整できることから、従来のようにポンプ吐出流量の少ない低エンジン回転速度時を基準として開口特性を設定する必要がない。このため、コントロール弁7のC−T通路の最大開口面積は従来より大きく設定でき、エンジン回転速度が高くポンプ吐出流量が増大したときには、エンジン回転速度に応じてC−T通路を大きく開いて圧力損失を低減させることができ、圧力損失に伴う燃費の悪化を防止することができるという利点がある。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態としての建設機械の油圧制御装置について、図4,図5を用いて説明する。なお、図4はその全体構成を示す回路図、図5は本油圧制御装置にかかるエンジン回転速度に応じたパイロット圧の制御特性を示す図である。
まず、図4を用いて本実施形態にかかる油圧制御装置の構成について説明する。ただし、前述した第1実施形態の建設機械の油圧制御装置(図1参照)と同一の部位については同一の符号を用いるものとする。そして、既に説明した同一部位については詳細な説明を省略し、ここでは第1実施形態の建設機械の油圧制御装置との相違点にのみ重点的に説明する。
【0041】
本油圧制御装置も第1実施形態と同様にメインポンプ2から吐出された圧油を油圧シリンダ5に供給するコントロール弁7をそなえているが、このコントロール弁7のパイロット圧に対する開口特性は、第1実施形態と同様にエンジン回転速度が高くポンプ吐出流量が大きい状態でのC−T通路における圧力損失を防止することを目的として設定されている(図2参照)。
【0042】
このため、逆にエンジン回転速度が低くポンプ吐出流量が小さい状態では、スティックイン操作等が行なわれ油圧シリンダ5の伸長方向と荷重の作用方向とが一致したとき、油圧シリンダ5の伸長速度にメインポンプ2からの圧油の供給量が追いつかずにピストン側油室5a内が負圧になってしまう虞があるが、本油圧制御装置では、第1実施形態とは異なる新たな構成要素を付加することでこれを解消している。
【0043】
つまり、本油圧制御装置では、図4に示すように、第1実施形態と同様にリモコン弁8の調圧弁部8aとコントロール弁7の圧力室7dとを結ぶパイロットライン15aから分岐してタンク10に通じる油路16を設け、この油路16に圧力調整弁としてのアンロード弁21を介装している。
アンロード弁21は、スプリングとソレノイドとの力のバランスにより内蔵するスプールの移動量が調整されるようになっており、スプールの移動量に応じてタンク10に通じる油路16の開口面積が変化するようになっている。ソレノイドはコントローラ22からの信号により制御されており、コントローラ22では、エンジン回転速度センサ14で検出されたエンジン回転速度に基づきソレノイドを制御し、それにより油路16の開口面積、即ち、弁開度を制御するようになっている。
【0044】
詳述すると、コントローラ22では、アンロード弁21の弁開度を制御するためのソレノイドへの出力値をエンジン回転速度に応じて設定している。具体的には、ソレノイドへの出力値はエンジン回転速度が最大のときを最小値として、エンジン回転速度が低くなるほど大きくなるように設定されている。このような設定によりエンジン回転速度が最大のときにアンロード弁21は全閉になり、エンジン回転速度が低くなるにつれ次第に弁開度が大きくなっていく。したがって、本油圧制御装置では、エンジン回転速度が低くなるにつれパイロットライン15aからタンク10にアンロードされる圧油量が増加していき、コントロール弁7の圧力室7dに供給されるパイロット圧は低下するようになっている。
【0045】
本発明の第2実施形態としての建設機械の油圧制御装置は上述のように構成されているので、オペレータが油圧シリンダ5を伸長させるべく操作レバー8cを操作したときには次のように作用する。
まず、エンジン回転速度が高い場合、例えば、最大回転速度の場合には、上述のようにアンロード弁21は全閉状態になるため、図5中実線で示すように、第1実施形態の場合(図3参照)と同様に操作レバー8cの操作量θに応じたパイロット圧がコントロール弁7の圧力室7dに供給される。したがって、操作レバー8cの操作量θを最大値θmaxにしたときにはパイロット圧は最大値Pmaxになり、コントロール弁7のC−T通路の開口面積も最大値Amaxになって(図2参照)、C−T通路における圧力損失は最小限に抑えられる。
【0046】
一方、エンジン回転速度が最大回転速度よりも低い場合には、アンロード弁21はエンジン回転速度に応じた弁開度になり、その弁開度に応じてパイロットライン15aからタンク10に圧油がアンロードされる。これにより、図5中一点鎖線で示すように、パイロット圧は最大回転速度時のパイロット圧(実線で示す)よりも全域で低下することになり、操作レバー8cの操作量θを最大値θmaxにしたときのパイロット圧P3は、最大回転速度時に得られるパイロット圧Pmaxよりも低下する。このため、コントロール弁7のC−T通路の開口面積は操作量θに対し最大回転速度時と比べ全体的に低下し、且つ最大値θmaxにしても上記のパイロット圧P3に応じた最大面積A3(A3<Amax)に制限されるので、ロッド側油室5bからの圧油の排出速度が制限され、これにより油圧シリンダ5の伸長速度にメインポンプ2からの圧油の供給量が追いつかずにピストン側油室5a内が負圧になってしまうことが防止される。
【0047】
また、エンジン回転速度がさらに低下した場合にはメインポンプ2からの吐出流量もさらに低下するが、このさらに低下したエンジン回転速度に応じてアンロード弁21の弁開度が大きくなるので、図5中二点鎖線で示すようにパイロット圧は全域で低下し、その最大値P4もさらに低下する(P4<P3)。このため、コントロール弁7のC−T通路の開口面積は操作量θに対し前述の場合よりさらに全体的に低下し、且つ最大値θmaxにしても上記のパイロット圧P4に応じた最大面積A4(A4<A3)に制限されるので、ロッド側油室5bからの圧油の排出速度はさらに制限される。したがって、エンジン回転速度の低下に伴いメインポンプ2からの吐出流量がさらに低下した場合でも、油圧シリンダ5の伸長速度にメインポンプ2からの圧油の供給量が追いつかずにピストン側油室5a内が負圧になってしまうことはない。
【0048】
以上のように、本油圧制御装置によれば、エンジン回転速度センサ14で検出されたエンジン回転速度に基づきパイロットライン15aに設けられたアンロード弁21の弁開度を制御することによって、パイロット操作弁8からコントロール弁7の圧力室7dに供給されるパイロット圧をエンジン回転速度に応じて制御することが可能であり、第1実施形態と同様に、エンジン回転速度が低くポンプ吐出流量が少ないときにはコントロール弁7のC−T通路の開口面積を絞って油圧シリンダ5のピストン側油室5aでの負圧の発生を防止できるようにしたり、エンジン回転速度が高くポンプ吐出流量が増大したときには開口面積を大きくして圧力損失に伴う燃費の悪化を防止できるようにしたりすることが可能になるという利点がある。
【0049】
さらに、本油圧制御装置によれば、第1実施形態のようにパイロット圧の上限値をエンジン回転速度に応じて制限するのではなく、レバー操作量θに対するパイロット圧の変化量をエンジン回転速度に応じて全域で調整するので、レバー操作の途中でパイロット圧が制限されることがなく、レバー操作量θに応じてパイロット圧を上昇させることができ、広域な操作性を維持することができるという利点もある。
【0050】
以上、本発明の建設機械の油圧制御装置について、2つの実施形態を説明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できるものである。例えば、上述の実施形態では、圧力調整弁として電磁比例リリーフ弁とアンロード弁とを採用しているが、本発明にかかる圧力調整弁はこれに限定されるものではなく、パイロット圧を圧力センサで検出し、エンジン回転速度に応じて設定されるパイロット圧を設定値とする圧力フィードバック制御等、エンジン回転速度に応じて圧力を調整するよう制御可能なものであればよい。また、この制御は電気信号による制御のみならず油圧信号により制御するようにしてもよい。
【0051】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の建設機械の油圧制御装置(請求項1〜5)によれば、パイロット操作弁から制御弁へのパイロット圧油供給通路にそなえられた圧力調整弁の操作によって、制御弁に供給されるパイロット圧をエンジン回転速度センサにより検出されるエンジン回転速度に応じた圧力に制御することができるので、流量制御スプールの移動量により決まる圧油給排通路の開口面積をエンジン回転速度に応じた値に調整することができ、エンジン回転速度が低くポンプ吐出流量が不足したときには開口面積を絞って油圧アクチュエータでの負圧の発生を防止できるようにしたり、エンジン回転速度が高くポンプ吐出流量が増大したときには開口面積を大きくして圧力損失に伴う燃費の悪化を防止できるようにしたりすることが可能になるという利点がある。
【0052】
また、圧力調整弁をパイロット圧油供給通路からの分岐通路に設けられたアンロード弁として構成し、エンジン回転速度に応じてアンロード弁の弁開度を制御する場合(請求項4)には、操作部材の操作量に対するパイロット圧の変化量がエンジン回転速度に応じて調整されるようになるので、操作部材の操作量に応じてパイロット圧を変化させることができ、広域な操作性を維持することができるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としての建設機械の油圧制御装置の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての建設機械の油圧制御装置にかかるパイロット圧に対するP−C通路,C−T通路,バイパス通路の開口特性を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態としての建設機械の油圧制御装置にかかるエンジン回転速度に応じたパイロット圧の制御特性を示す図である。
【図4】本発明の第2実施形態としての建設機械の油圧制御装置の構成を示す回路図である。
【図5】本発明の第2実施形態としての建設機械の油圧制御装置にかかるエンジン回転速度に応じたパイロット圧の制御特性を示す図である。
【図6】従来の建設機械の油圧制御装置の構成を示す回路図である。
【図7】従来の建設機械の油圧制御装置にかかるパイロット圧とP−C通路,C−T通路,バイパス通路の開口面積との関係を示す図である。
【図8】従来の建設機械を示す模式的斜視図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2,3 メインポンプ
4 パイロットポンプ
5 油圧シリンダ(油圧アクチュエータ)
5a ピストン側油室
5b ロッド側油室
7 コントロール弁(制御弁)
7a,7b,7c 切り換え位置
7d,7e 圧力室
8 リモコン弁(パイロット操作弁)
8c 操作レバー(操作部材)
10 タンク
14 エンジン回転速度センサ
15a,15b パイロットライン(パイロット圧油供給通路)
16 油路(分岐路)
17 電磁比例リリーフ弁
20,22 コントローラ(制御手段)
21 アンロード弁
Claims (5)
- エンジンにより駆動されるメインポンプと、
該メインポンプから吐出される圧油により駆動される油圧アクチュエータと、
パイロットポンプから吐出される圧油を操作部材の操作量に応じたパイロット圧に調整するパイロット操作弁と、
該油圧アクチュエータからタンクへの圧油給排通路に介装され、該パイロット操作弁から供給されるパイロット圧により操作される流量制御スプールをそなえた制御弁と、
該エンジンの回転速度を検出するエンジン回転速度センサと、
該パイロット操作弁から該制御弁へのパイロット圧油供給通路にそなえられた圧力調整弁と、
該圧力調整弁を操作して該制御弁に供給されるパイロット圧を該エンジン回転速度センサにより検出されるエンジン回転速度に応じた圧力に制御する制御手段とをそなえ、
該流量制御スプールの移動量が最大のときの前記の油圧アクチュエータからタンクへの圧油給排通路の開口面積が、該エンジン回転速度センサにより検出される該エンジン回転速度が最大で該メインポンプからの吐出流量が最大の状態において、該油圧アクチュエータで負圧が発生しない範囲で最大の開口面積に設定されている
ことを特徴とする、建設機械の油圧制御装置。 - 該制御手段は、該エンジン回転速度センサにより検出されるエンジン回転速度が低いほど該制御弁に供給されるパイロット圧も低くなるように該圧力調整弁を操作する
ことを特徴とする、請求項1記載の建設機械の油圧制御装置。 - 該圧力調整弁が該パイロット圧油供給通路からの分岐通路に設けられた電磁比例リリーフ弁として構成されるとともに、該制御手段は、エンジン回転速度に応じて設定された所定のリリーフ圧に基づき該電磁比例リリーフ弁を開閉制御する
ことを特徴とする、請求項2記載の建設機械の油圧制御装置。 - 該圧力調整弁が該パイロット圧油供給通路からの分岐通路に設けられたアンロード弁として構成されるとともに、該制御手段は、該エンジン回転速度センサにより検出されるエンジン回転速度に応じて該アンロード弁の弁開度を制御する
ことを特徴とする、請求項2記載の建設機械の油圧制御装置。 - 該エンジン回転速度センサにより検出される該エンジン回転速度が最大回転速度よりも低い場合には、該開口面積は、該パイロット圧に応じた面積に制限される
ことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の建設機械の油圧制御装置。
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