JP3687386B2 - Aeを予知因子に用いる岩盤構造物等の脆性材料の崩壊時期の予測方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、AE(アコースティックエミッション)を予知因子に用いる岩盤構造物等の脆性材料の崩壊(破壊)時期の予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
岩盤構造物の崩壊の予知分野においては、「ヒズミ」を予知因子とするのが一般的である。すなわち、岩盤試料に軸圧を加えると瞬間的圧縮に続いて時間の経過とともにヒズミ速度が漸減する第1次クリープが生じ、続いてヒズミ速度が一定の第2次クリープの段階に入り、ある時間経過後、今度は逆にヒズミ速度が次第に増大する第3次クリープの段階を経て破壊に至る経過が見られる。このクリープ曲線は模式的に図8に示される通りである。
【0003】
叙上の第3次クリープは破壊現象と密接に関連を持つものと考えられ、歪速度と残存寿命との間には簡単な法則が認められ、岩石のクリープ試験(一定応力を加えた状態で破壊させる試験)時の破壊直前におけるひずみ挙動は下記の数式1のような形で表すことができることが報告されている(福井他:「一軸圧縮荷重下での岩石のクリープ特性」,資源と素材,Vol.105, No.7, pp.521-526, 1989)。
【0004】
【数1】
【0005】
上記の歪速度と残存寿命との間の関係は両対数座標上で直線となるが、これは、残存寿命が歪速度に逆比例することを示すものであって、金属および合金などの実験によって今や確実な知識とされているものと同じ意義を有するものであり、土についてもこの関係が成立すると考えられている。
そこで、地盤(土砂)のクリープ破壊までの時間を予測する方法の一つとして数式1の成立を前提にして下記の数式8が提案されている(斎藤:「斜面崩壊発生時期の予知」,土と基礎,17-2, pp.29-38, 1969)。数式8は地盤のクリープ破壊直前のひずみ(変位)挙動に数式1が成り立つものと仮定して、図9に示すようなひずみの計測値を用いて破壊時刻の予測を行う方法である。
【0006】
【数8】
【0007】
その要領は、曲線上の3点が与えられれば、算出できることに基づいたもので、図9において、クリープ曲線上に3点A1,A2,A3 をとり、相隣る2点間の移動間隔を等しくする。図ではこの間隔をΔlであらわしている。また、その3点の時間をそれぞれt1,t2,t3 とする。つぎにA2 を通り時間軸に平行な直線上にA1 およびA3 を投影し、それぞれA1'およびA3'とする。A1'A2 およびA1'A3'の中点をそれぞれMおよびNとし、図のようにA2 を通る縦線上にそれぞれMA2,NA2 に等しくM' A2,N' A2 になるように点M',N' をとる。M' を通り時間軸に平行な直線とA1'N' を通る直線との交点を求めれば、この点の時間が破壊時間trをあらわす。破壊時間の表示方法として図に示すように最終使用値に対応する位置にとるのがわかりやすい。
【0008】
この証明は下記の数式9のようにして得られる。
【0009】
【数9】
【0010】
また長方形の対角線上の1点を通って両平行辺に平行に引いた直線で区切られてできた2つの小長方形は互に面積が等しいことから、交点の時間をtr'とすると下記の数式10の如くなる。
【0011】
【数10】
【0012】
以上の式を合わせると下記の数式11の如くなり、この式と数式8とを比較してtr'はtrに等しいことがわかる。
【0013】
【数11】
【0014】
この図式解法によるときわめてジン速に破壊時間を求めることができる。
一方、所謂AE手法とは破壊の前兆として発生する微小音を計測する技術である。破壊に近づくにつれて微小音の発生数が顕著になっていくため、微小音の発生数により破壊の危険度(近々に破壊するかどうか)の概略評価を行うことができるというものである。
【0015】
AEを予知因子に用いたものとしては、例えば、特開平51−77375号公報、特開昭51−77376号公報では圧力容器の破壊予知に、又、特開平6−58911号公報にあっては、磁性金属で製造されたタービン構造物の余寿命診断に利用する提案がなされている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術で述べたAE手法は、全て予じめ同材料の試験片の破壊試験をとり行って、そのデータとの照合から破壊を予知するもので、略同一の条件下での試験データを確保せねばならず、もとより岩盤への応用は非現実的である。
一方、ひずみ挙動を予知因子とする岩石の破壊予知については、一般的に岩盤等の脆性材料が破壊に至る際に発生するひずみ(変位)は、地盤(土砂)に比べて小さいため計測が困難である。このためひずみ(変位)を用いた破壊予測は破壊に至るまでに発生するひずみが大きい地盤(土砂)には有効であるが、岩盤のような脆性材料の破壊予測に適用することは困難である。さらには、ひずみ発生部に正しく計測器の設置がなされなければ効果がない。
【0017】
以上の如く、岩盤構造物の崩壊予知については、実用的な予測方法は提供されていないのが現状である。
本発明は、叙上の事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ひずみと異なり、破壊予知因子として破壊部に厳格に一致させて計測機器の設置が要求されずに済むと共に計測容易なAE手法を用いて、岩盤構造物の崩壊を予測する方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のAEを予知因子に用いる岩盤構造物等の脆性材料の崩壊時期の予測方法は、岩盤構造物について、破壊直前におけるAE発生数と破壊寿命は既述の歪速度と残存寿命と同様の関係を持ち良く似た形の下記数式2で表わされるとの発見に基づき、歪速度と残存寿命で開発の図式解法の転用による式中の不定数の解明、計測から算出するとしたものである。
【0019】
【数2】
【0020】
また、岩盤構造物について、破壊直前におけるAE発生数と破壊寿命は上記数式2で表わされ、かつ、その対数表示によるグラフ上直線関係を呈することを利用して破壊前における各時刻でのAE発生数の集計データから作成時刻を破壊時刻としたところの破壊寿命とAE発生数のデータを作成し、これを基に破壊時刻を任意に仮定して、夫々の上記グラフを作成し、これ等のグラフ中から直線を呈するものを選定し、破壊寿命の最小値を読み取ることにより破壊寿命を予測するとしたものである。
【0021】
すなわち、発明者等が凝灰石を用い室内で一定応力のもとでのクリープ試験を実施した結果、図1に一例を示すように破壊直前におけるAE発生数と破壊寿命は数式1に良く似た形の下記の数式2で表すことができることが明らかとなった。
【0022】
【数2】
【0023】
また、一軸圧縮試験(応力を一定速度で増加させて破壊させる試験)を行った場合においても、図2に一例を示すように破壊直前においては数式2が成り立つことが発見された。
よって、この関係を利用して歪での図式解法をAEに用いての予測が可能となる。
【0024】
また、岩盤構造物について、破壊直前におけるAE発生数と破壊寿命は下記数式2で表わされ、
【0025】
【数2】
【0026】
その対数表示によるグラフ上直線関係を呈することを利用して、破壊前における各時刻のAE発生数の集計データから、作成時刻を破壊時刻としたところの破壊寿命とAE発生数のデータを作成し、これを基に破壊時刻を任意に仮定して、夫々の上記グラフを作成し、これ等のグラフ中から直線を呈するものを選定して破壊寿命の最小値を読み取ることにより破壊寿命を予測するとしたものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
請求項1の発明において、破壊の予測を行う材料について、数式2におけるaおよびbをあらかじめ求めておくことにより、任意の時刻でのAE計測データを数式2に代入することで、破壊寿命Tを予測することが可能となる。破壊寿命Tの具体的な予測手法の一例を以下に示す。
【0028】
破壊寿命の予測を行う材料から発生するAEの累積値と時刻の関係が図3に示すように実測されたものとする。このとき、任意の時刻t1およびt2におけるAE発生数の累積値H1およびH2から数式3のようにAE発生数を定義する。
【0029】
【数3】
【0030】
また、上記のtを下記の数式4
【0031】
【数4】
【0032】
と定義して数式2に代入すると、下記の数式5となる。
【0033】
【数5】
【0034】
数式5のうち未知数はtrのみであり、求めたい破壊寿命Tは、下記の数式6である。
【0035】
【数6】
【0036】
よって、数式5をTについて解くと下記の数式7が得られ、数式7によって破壊寿命Tを求めることが可能となる。
【0037】
【数7】
【0038】
なお、上述の如く破壊直前のAE発生数と破壊寿命との関係はひずみ速度と破壊寿命との関係とよく似た挙動を示す。ここで、数式2におけるaの値が、a≒1とみなせる場合には、数式2は数式1と同じ形となる。よって、斎藤が提案した数式8に使用する変数t1、t2およびt3を改良して用いることにより、AEデータを用いて破壊寿命を用いることができる。なお、この場合に数式8で用いるt1、t2およびt3は、AE発生数の増加量が等しい3点の時刻とすればよい。
【0039】
図2の事実から、本手法はクリープ破壊時だけでなく応力が増加して破壊に至る際にも使用することができるものと考えられる。
本手法は一種類の凝灰石での実測データをもとに発明したものであるが、数式2が成り立つ材料であれば任意の材料に対して用いることができる。
また、請求項2の発明においては、数式2は、破壊寿命を横軸に、また、AE発生数を縦軸に取ったグラフ上で直線関係を呈することを利用して、以下の予測方法がなし得る。
【0040】
すなわち、その手順は、
(1) AE計測器で計測されるデータは各時間毎のAE発生数である。計測データは計測器に一旦記憶され、これを定期的にパーソナルコンピュータに取り込み、パーソナルコンピュータ内部にデータベースを作成する。データベースはある時刻(何日の何時何分から何分間)におけるAE発生数のデータが集計されている。たとえば図4に示すような形である。
(2) 定期的にこのデータベースを利用して以下のようなデータを作成する。すなわち、データを作成する時刻を破壊時刻と仮定し、破壊寿命とAE発生数のデータを作成する。例えば24時を破壊時刻と仮定すれば破壊寿命を求めた例は図5に示すような形になる。なお、図4に示したデータの場合、23:55〜24:00の300秒の間に測定したAEデータは55であり、破壊寿命としては300秒の中間値として150秒と定義した。
(3) この破壊寿命を横軸に、また、AE発生数を縦軸に取った両対数グラフを作成する。また、破壊時刻を種々に仮定して破壊寿命とAE発生数を求めたデータについても同様にグラフを複数作成する。このようにして作成したグラフのうち、グラフが直線を示すものを選定しグラフ上の破壊寿命の最小値を読み取ることにより破壊寿命を予測する。
【0041】
具体的に述べる。
ここでは机上の検討により前述の破壊予測手法を実施した例を説明する。用いたデータは人工的に作成したものである。
(a) まず、架空のデータとして図6に示すようなデータを作成した。このデータは破壊に至る際のAE発生特性が、下記の数式12で表されるものと仮定して、
【0042】
【数12】
【0043】
破壊までの時間(破壊寿命)とAE発生数との関係を人工的に作成したものである(表1に示す)。
【0044】
【表1】
【0045】
(b) 以下にAEデータを15000秒まで計測した場合について、0〜15000秒までのデータを用いて破壊までの時間を推定する方法を下記の表2で説明する。
【0046】
【表2】
【0047】
15000秒の時点を破壊点と仮定した場合の破壊寿命とAE発生数との関係は表2(a)で表される。このデータをグラフ化したものが図7(a)である。
(c) 実際には破壊は15000秒よりも後に起こっている。たとえば、破壊点を16000秒の時点と仮定すると、破壊寿命とAE発生数との関係は表2(b)で表される。このデータをグラフ化したものが図7(b)である。
(d) 同様に17000秒から20000秒の間において1000秒間隔で同様な手順でデータをグラフ化したものを図7(c)〜(f)に示す。
(e) 図7(a)〜(f)のうち、仮定した破壊寿命が正しい場合には、グラフは直線関係を示すことは明らかである。また、仮定した破壊寿命が実際よりも小さい場合にはグラフは上に凸の曲線、また、逆に大きい場合には下に凸の曲線となる。
(f) 図7(a)〜(f)のうち最も直線性が高いと思われるグラフを選択する。この場合(d)となる。(d)のグラフで示される破壊寿命の最小値は3250秒である。
(g) ここで用いたデータは500秒間隔のデータのため、3250秒から250秒を引いたものすなわち3000秒を破壊寿命とする。
(h) 以上が破壊寿命を予測する方法である。この方法の場合、破壊寿命とAE発生数が両対数グラフ上で直線関係を示すことを利用しているため、直線の傾きや切片の値を必要としない点で優れている。また、破壊点を種々に仮定してグラフを作成する作業は、簡単なプログラムを組むことで可能である。
【0048】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成されるので、以下の如き効果を奏する。
計測上有利なAE手法をもって初めて岩盤構造物等の脆性材料の崩壊時期を予測し得ることを可能にした。
橋梁等の寿命判定上有効と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明発見の係わる一定応力を加えた状態で破壊させるクリープ実験データである。
【図2】同じく一軸圧縮試験データである。
【図3】本発明における時刻とAE発生数の累積値との関係を示すグラフである。
【図4】本発明におけるデータベース形式の一例である。
【図5】本発明における破壊寿命とAE発生数のデータである。
【図6】本発明における架空データのグラフである。
【図7】本発明における仮定した破壊寿命とAE発生数との関係を示すグラフである。
【図8】岩石のクリープ破壊試験におけるクリープ曲線である。
【図9】ひずみと時間との関係を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、AE(アコースティックエミッション)を予知因子に用いる岩盤構造物等の脆性材料の崩壊(破壊)時期の予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
岩盤構造物の崩壊の予知分野においては、「ヒズミ」を予知因子とするのが一般的である。すなわち、岩盤試料に軸圧を加えると瞬間的圧縮に続いて時間の経過とともにヒズミ速度が漸減する第1次クリープが生じ、続いてヒズミ速度が一定の第2次クリープの段階に入り、ある時間経過後、今度は逆にヒズミ速度が次第に増大する第3次クリープの段階を経て破壊に至る経過が見られる。このクリープ曲線は模式的に図8に示される通りである。
【0003】
叙上の第3次クリープは破壊現象と密接に関連を持つものと考えられ、歪速度と残存寿命との間には簡単な法則が認められ、岩石のクリープ試験(一定応力を加えた状態で破壊させる試験)時の破壊直前におけるひずみ挙動は下記の数式1のような形で表すことができることが報告されている(福井他:「一軸圧縮荷重下での岩石のクリープ特性」,資源と素材,Vol.105, No.7, pp.521-526, 1989)。
【0004】
【数1】
【0005】
上記の歪速度と残存寿命との間の関係は両対数座標上で直線となるが、これは、残存寿命が歪速度に逆比例することを示すものであって、金属および合金などの実験によって今や確実な知識とされているものと同じ意義を有するものであり、土についてもこの関係が成立すると考えられている。
そこで、地盤(土砂)のクリープ破壊までの時間を予測する方法の一つとして数式1の成立を前提にして下記の数式8が提案されている(斎藤:「斜面崩壊発生時期の予知」,土と基礎,17-2, pp.29-38, 1969)。数式8は地盤のクリープ破壊直前のひずみ(変位)挙動に数式1が成り立つものと仮定して、図9に示すようなひずみの計測値を用いて破壊時刻の予測を行う方法である。
【0006】
【数8】
【0007】
その要領は、曲線上の3点が与えられれば、算出できることに基づいたもので、図9において、クリープ曲線上に3点A1,A2,A3 をとり、相隣る2点間の移動間隔を等しくする。図ではこの間隔をΔlであらわしている。また、その3点の時間をそれぞれt1,t2,t3 とする。つぎにA2 を通り時間軸に平行な直線上にA1 およびA3 を投影し、それぞれA1'およびA3'とする。A1'A2 およびA1'A3'の中点をそれぞれMおよびNとし、図のようにA2 を通る縦線上にそれぞれMA2,NA2 に等しくM' A2,N' A2 になるように点M',N' をとる。M' を通り時間軸に平行な直線とA1'N' を通る直線との交点を求めれば、この点の時間が破壊時間trをあらわす。破壊時間の表示方法として図に示すように最終使用値に対応する位置にとるのがわかりやすい。
【0008】
この証明は下記の数式9のようにして得られる。
【0009】
【数9】
【0010】
また長方形の対角線上の1点を通って両平行辺に平行に引いた直線で区切られてできた2つの小長方形は互に面積が等しいことから、交点の時間をtr'とすると下記の数式10の如くなる。
【0011】
【数10】
【0012】
以上の式を合わせると下記の数式11の如くなり、この式と数式8とを比較してtr'はtrに等しいことがわかる。
【0013】
【数11】
【0014】
この図式解法によるときわめてジン速に破壊時間を求めることができる。
一方、所謂AE手法とは破壊の前兆として発生する微小音を計測する技術である。破壊に近づくにつれて微小音の発生数が顕著になっていくため、微小音の発生数により破壊の危険度(近々に破壊するかどうか)の概略評価を行うことができるというものである。
【0015】
AEを予知因子に用いたものとしては、例えば、特開平51−77375号公報、特開昭51−77376号公報では圧力容器の破壊予知に、又、特開平6−58911号公報にあっては、磁性金属で製造されたタービン構造物の余寿命診断に利用する提案がなされている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術で述べたAE手法は、全て予じめ同材料の試験片の破壊試験をとり行って、そのデータとの照合から破壊を予知するもので、略同一の条件下での試験データを確保せねばならず、もとより岩盤への応用は非現実的である。
一方、ひずみ挙動を予知因子とする岩石の破壊予知については、一般的に岩盤等の脆性材料が破壊に至る際に発生するひずみ(変位)は、地盤(土砂)に比べて小さいため計測が困難である。このためひずみ(変位)を用いた破壊予測は破壊に至るまでに発生するひずみが大きい地盤(土砂)には有効であるが、岩盤のような脆性材料の破壊予測に適用することは困難である。さらには、ひずみ発生部に正しく計測器の設置がなされなければ効果がない。
【0017】
以上の如く、岩盤構造物の崩壊予知については、実用的な予測方法は提供されていないのが現状である。
本発明は、叙上の事情に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ひずみと異なり、破壊予知因子として破壊部に厳格に一致させて計測機器の設置が要求されずに済むと共に計測容易なAE手法を用いて、岩盤構造物の崩壊を予測する方法を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のAEを予知因子に用いる岩盤構造物等の脆性材料の崩壊時期の予測方法は、岩盤構造物について、破壊直前におけるAE発生数と破壊寿命は既述の歪速度と残存寿命と同様の関係を持ち良く似た形の下記数式2で表わされるとの発見に基づき、歪速度と残存寿命で開発の図式解法の転用による式中の不定数の解明、計測から算出するとしたものである。
【0019】
【数2】
【0020】
また、岩盤構造物について、破壊直前におけるAE発生数と破壊寿命は上記数式2で表わされ、かつ、その対数表示によるグラフ上直線関係を呈することを利用して破壊前における各時刻でのAE発生数の集計データから作成時刻を破壊時刻としたところの破壊寿命とAE発生数のデータを作成し、これを基に破壊時刻を任意に仮定して、夫々の上記グラフを作成し、これ等のグラフ中から直線を呈するものを選定し、破壊寿命の最小値を読み取ることにより破壊寿命を予測するとしたものである。
【0021】
すなわち、発明者等が凝灰石を用い室内で一定応力のもとでのクリープ試験を実施した結果、図1に一例を示すように破壊直前におけるAE発生数と破壊寿命は数式1に良く似た形の下記の数式2で表すことができることが明らかとなった。
【0022】
【数2】
【0023】
また、一軸圧縮試験(応力を一定速度で増加させて破壊させる試験)を行った場合においても、図2に一例を示すように破壊直前においては数式2が成り立つことが発見された。
よって、この関係を利用して歪での図式解法をAEに用いての予測が可能となる。
【0024】
また、岩盤構造物について、破壊直前におけるAE発生数と破壊寿命は下記数式2で表わされ、
【0025】
【数2】
【0026】
その対数表示によるグラフ上直線関係を呈することを利用して、破壊前における各時刻のAE発生数の集計データから、作成時刻を破壊時刻としたところの破壊寿命とAE発生数のデータを作成し、これを基に破壊時刻を任意に仮定して、夫々の上記グラフを作成し、これ等のグラフ中から直線を呈するものを選定して破壊寿命の最小値を読み取ることにより破壊寿命を予測するとしたものである。
【0027】
【発明の実施の形態】
請求項1の発明において、破壊の予測を行う材料について、数式2におけるaおよびbをあらかじめ求めておくことにより、任意の時刻でのAE計測データを数式2に代入することで、破壊寿命Tを予測することが可能となる。破壊寿命Tの具体的な予測手法の一例を以下に示す。
【0028】
破壊寿命の予測を行う材料から発生するAEの累積値と時刻の関係が図3に示すように実測されたものとする。このとき、任意の時刻t1およびt2におけるAE発生数の累積値H1およびH2から数式3のようにAE発生数を定義する。
【0029】
【数3】
【0030】
また、上記のtを下記の数式4
【0031】
【数4】
【0032】
と定義して数式2に代入すると、下記の数式5となる。
【0033】
【数5】
【0034】
数式5のうち未知数はtrのみであり、求めたい破壊寿命Tは、下記の数式6である。
【0035】
【数6】
【0036】
よって、数式5をTについて解くと下記の数式7が得られ、数式7によって破壊寿命Tを求めることが可能となる。
【0037】
【数7】
【0038】
なお、上述の如く破壊直前のAE発生数と破壊寿命との関係はひずみ速度と破壊寿命との関係とよく似た挙動を示す。ここで、数式2におけるaの値が、a≒1とみなせる場合には、数式2は数式1と同じ形となる。よって、斎藤が提案した数式8に使用する変数t1、t2およびt3を改良して用いることにより、AEデータを用いて破壊寿命を用いることができる。なお、この場合に数式8で用いるt1、t2およびt3は、AE発生数の増加量が等しい3点の時刻とすればよい。
【0039】
図2の事実から、本手法はクリープ破壊時だけでなく応力が増加して破壊に至る際にも使用することができるものと考えられる。
本手法は一種類の凝灰石での実測データをもとに発明したものであるが、数式2が成り立つ材料であれば任意の材料に対して用いることができる。
また、請求項2の発明においては、数式2は、破壊寿命を横軸に、また、AE発生数を縦軸に取ったグラフ上で直線関係を呈することを利用して、以下の予測方法がなし得る。
【0040】
すなわち、その手順は、
(1) AE計測器で計測されるデータは各時間毎のAE発生数である。計測データは計測器に一旦記憶され、これを定期的にパーソナルコンピュータに取り込み、パーソナルコンピュータ内部にデータベースを作成する。データベースはある時刻(何日の何時何分から何分間)におけるAE発生数のデータが集計されている。たとえば図4に示すような形である。
(2) 定期的にこのデータベースを利用して以下のようなデータを作成する。すなわち、データを作成する時刻を破壊時刻と仮定し、破壊寿命とAE発生数のデータを作成する。例えば24時を破壊時刻と仮定すれば破壊寿命を求めた例は図5に示すような形になる。なお、図4に示したデータの場合、23:55〜24:00の300秒の間に測定したAEデータは55であり、破壊寿命としては300秒の中間値として150秒と定義した。
(3) この破壊寿命を横軸に、また、AE発生数を縦軸に取った両対数グラフを作成する。また、破壊時刻を種々に仮定して破壊寿命とAE発生数を求めたデータについても同様にグラフを複数作成する。このようにして作成したグラフのうち、グラフが直線を示すものを選定しグラフ上の破壊寿命の最小値を読み取ることにより破壊寿命を予測する。
【0041】
具体的に述べる。
ここでは机上の検討により前述の破壊予測手法を実施した例を説明する。用いたデータは人工的に作成したものである。
(a) まず、架空のデータとして図6に示すようなデータを作成した。このデータは破壊に至る際のAE発生特性が、下記の数式12で表されるものと仮定して、
【0042】
【数12】
【0043】
破壊までの時間(破壊寿命)とAE発生数との関係を人工的に作成したものである(表1に示す)。
【0044】
【表1】
【0045】
(b) 以下にAEデータを15000秒まで計測した場合について、0〜15000秒までのデータを用いて破壊までの時間を推定する方法を下記の表2で説明する。
【0046】
【表2】
【0047】
15000秒の時点を破壊点と仮定した場合の破壊寿命とAE発生数との関係は表2(a)で表される。このデータをグラフ化したものが図7(a)である。
(c) 実際には破壊は15000秒よりも後に起こっている。たとえば、破壊点を16000秒の時点と仮定すると、破壊寿命とAE発生数との関係は表2(b)で表される。このデータをグラフ化したものが図7(b)である。
(d) 同様に17000秒から20000秒の間において1000秒間隔で同様な手順でデータをグラフ化したものを図7(c)〜(f)に示す。
(e) 図7(a)〜(f)のうち、仮定した破壊寿命が正しい場合には、グラフは直線関係を示すことは明らかである。また、仮定した破壊寿命が実際よりも小さい場合にはグラフは上に凸の曲線、また、逆に大きい場合には下に凸の曲線となる。
(f) 図7(a)〜(f)のうち最も直線性が高いと思われるグラフを選択する。この場合(d)となる。(d)のグラフで示される破壊寿命の最小値は3250秒である。
(g) ここで用いたデータは500秒間隔のデータのため、3250秒から250秒を引いたものすなわち3000秒を破壊寿命とする。
(h) 以上が破壊寿命を予測する方法である。この方法の場合、破壊寿命とAE発生数が両対数グラフ上で直線関係を示すことを利用しているため、直線の傾きや切片の値を必要としない点で優れている。また、破壊点を種々に仮定してグラフを作成する作業は、簡単なプログラムを組むことで可能である。
【0048】
【発明の効果】
本発明は以上の如く構成されるので、以下の如き効果を奏する。
計測上有利なAE手法をもって初めて岩盤構造物等の脆性材料の崩壊時期を予測し得ることを可能にした。
橋梁等の寿命判定上有効と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明発見の係わる一定応力を加えた状態で破壊させるクリープ実験データである。
【図2】同じく一軸圧縮試験データである。
【図3】本発明における時刻とAE発生数の累積値との関係を示すグラフである。
【図4】本発明におけるデータベース形式の一例である。
【図5】本発明における破壊寿命とAE発生数のデータである。
【図6】本発明における架空データのグラフである。
【図7】本発明における仮定した破壊寿命とAE発生数との関係を示すグラフである。
【図8】岩石のクリープ破壊試験におけるクリープ曲線である。
【図9】ひずみと時間との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 岩盤構造物について破壊直前におけるAE発生数と破壊寿命は下記数式2で表わされることを利用して、
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