JP3684217B2 - 物体表面の構造線の自動抽出システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面の形状が格子型ディジタル標高モデルで記述されている物体表面の構造線を自動的に抽出する、物体表面の構造線の自動抽出システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
遺跡の発掘調査報告書の作成においては、発掘された石器や土器などの遺物(以降単に「遺物」という)ごとに、表面の尾根線や谷線といった構造線(以降単に「構造線」という)を抽出した記録図面を作成することが重要な作業の1つになっている。
従来、遺物の構造線の識別は目視により行われ、記録図面は人手により描画されてきている。しかしながら、この図面作成方法によれば、例えば大きさが5cm×10cm程度の石器の記録図面を作成するのに、熟練者でも約8時間を要すると言われている。
したがって、とくに遺物数が多い遺跡の発掘調査では、報告書作成に多くの時間と費用を要するものとなり、遺物の記録図面作成の効率化および低価格化が望まれている。
【0003】
発明者は、正方格子型のディジタル標高モデル(以降「格子型ディジタル標高モデル」(DEM)という)から地形図を立体的に表示する際に、尾根や谷を表示するため「開度」という地形特徴量を提案し、「8方位開度演算」という尾根・谷の構造線を抽出する方法を地形図に適用して良好な結果を得ている(例えば、横山他,「開度による地形特徴の表示」,写真測量とリモートセンシング Vol.38, No.4,1999 参照)。このとき、格子型ディジタル標高モデルを入力データとしてコンピュータ・システムで開度の演算を行い、抽出した構造線にもとづいて地形図を描画している。
したがって、遺物の表面形状においても、同様の方法を用いることで、構造線を自動的に抽出することが可能である。
以降、従来技術である8方位開度演算による構造線の抽出方法を説明する。
【0004】
(8方位開度演算による構造線の抽出)
開度は、対象領域が格子型ディジタル標高モデル(DEM)で記述されていることを前提として、「地上開度」と「地下開度」の2種類が定義されている。以下、図1および図2を用いて、「8方位地上開度」と「8方位地下開度」について説明する。
【0005】
8方位地上開度とは、着目する標本格子点(以降「着目格子点」という)から8方位(北、北東、東、南東、南、南西、西、北西)を見渡したときに、距離Lの範囲に空だけを見ることができる最大の天頂角φの平均である。ここでLは、指定するパラメータである。いっぽう、8方位地下開度は、着目格子点から8方位を見渡したときに、距離Lの範囲に地下だけを見ることができる最大の天底角ψの平均である。
【0006】
図1(a)において、φは、着目格子点である山頂(A1)から距離L以内で東および西方向に空だけを見ることができる最大の天頂角である。また、図1(b)において、φは、着目格子点である窪地(A2)から距離L以内で東および西方向に空だけを見ることができる最大の天頂角である。なお、この最大天頂角を、以降「地上角」という。
8方位地上開度は方位別の地上角の平均値であるため、図1(a),(b)に示すように、山頂や尾根部のように周囲から地上に突き出ている地点では地上開度は大きく、窪地や谷部のように周囲から地中に食い込んでいる地点では地上開度は小さい。
図1(c)において、ψは、着目格子点である山頂(A1)から距離L以内で東および西方向に地下だけを見ることができる最大の天底角である。また、図1(d)において、ψは、着目格子点である窪地(A2)から距離L以内で東および西方向に地下だけを見ることができる最大の天底角である。なお、この最大天底角を、以降「地下角」という。
8方位地下開度は方位別の地下角の平均値であるため、図1(c),(d)に示すように、山頂や尾根部のように周囲から地上に突き出ている地点では地下開度は小さく、窪地や谷部のように周囲から地中に食い込んでいる地点では地下開度は大きい。
格子型ディジタル標高モデルの格子点についての地上開度を画像化したものを「地上開度図」といい、地下開度を画像化したものを「地下開度図」という。地上開度図は、凸地形の判読に便利であり、地下開度図は、凹地形の判読に便利である。
【0007】
図2は、基本的な地形と、8方位地上開度および8方位地下開度との対応関係を示した一覧表である。
図2において、基本地形欄に示した基本地形図の中の黒い丸印は、着目格子点である。地上開度欄および地下開度欄の8角形グラフは、平地の地上角および地下角(それぞれ90度となる)を5目盛として、着目格子点から見た方位別の地上角および地下角を相対的尺度で示したものである。8角形グラフに表示しているDの値は、北を0度とする時計回りの角度の値であり、8方位は0度から45度ごとに順次現れるものとなる。すなわち、D=0は北、D=45は北東、D=90は東、D=135は南東、D=180は南、D=225は南西、D=270は西、D=315は北西を表している。
【0008】
図2の一覧表によれば、基本的な地形と、8方位地上開度および8方位地下開度との対応関係は次の通りである。
平地の場合(図2中の1)、地上角、地下角ともに、8方位すべてにおいてほぼ90度(8角形グラフの5目盛)である。したがって、8方位地上開度および8方位地下開度は、ともに中くらいの値である。
山頂の場合(図2中の2)、地上角は8方位すべてにおいて90度より非常に大きく、地下角は8方位すべてにおいて90度より非常に小さい。したがって、8方位地上開度は非常に大きく、8方位地下開度は非常に小さい。
窪地の場合(図2中の3)、地上角は8方位すべてにおいて90度より非常に小さく、地下角は8方位すべてにおいて90度より非常に大きい。したがって、8方位地上開度は非常に小さく、8方位地下開度は非常に大きい。
南北に走る尾根の場合(図2中の4)、地上角は南北方面においてはほぼ90度であり、東西方面においては90度より大きい。また地下角は南北方面においては90度に近く、東西方面においては90度より小さい。したがって、8方位地上開度は大きく、8方位地下開度は小さい。
南北に走る谷の場合(図2中の5)、地上角は南北方面においてはほぼ90度であり、東西方面においては90度より小さい。また地下角は南北方面においてはほぼ90度であり、東西方面においては90度より大きい。したがって、8方位地上開度は小さく、8方位地下開度は大きい。
【0009】
東西の谷と南北の尾根による鞍部の場合(図2中の6)、地上角は南北方面においては90度より大きく、東西方面においては90度より小さい。また地下角は南北方面においては90度より小さく、東西方面においては90度より大きい。したがって、8方位地上開度および8方位地下開度は、ともに中くらいの値である。
東向きの一様な斜面の場合(図2中の7)、地上角は南北方面においてはほぼ90度であり、東方面においては90度より大きく、西方面においては90度より小さい。また地下角は南北方面においてはほぼ90度であり、東方面においては90度より小さく、西方面においては90度より大きい。したがって、8方位地上開度および8方位地下開度は、ともに中くらいの値である。
西側の平地と東側の下向斜面との境界の場合(図2中の8)、地上角は南北方面および西方面においてはほぼ90度であり、東方面においては90度より大きい。また地下角は南北方面および西方面においてはほぼ90度であり、東方面においては90度より小さい。したがって、8方位地上開度はやや大きく、8方位地下開度はやや小さい。
西側の平地と東側の上向斜面との境界の場合(図2中の9)、地上角は南北方面および西方面においてはほぼ90度であり、東方面においては90度より小さい。また地下角は南北方面および西方面においてはほぼ90度であり、東方面においては90度より大きい。したがって、8方位地上開度はやや小さく、8方位地下開度はやや大きい。
【0010】
前述したとおり、発明者は、格子型ディジタル標高モデルから地形図を立体的に表示する際に、8方位開度演算を用いることで効果を上げている。図3(a),(b)および図4(a),(b)を用いて、以下にその効果を示す。
【0011】
図3(a)は演算対象領域(岩手山を中心とする北緯39度36分〜39度57分及び東経140度44分〜141度23分)の地勢図である。地勢図のほぼ中央に岩手山(2,038m)があり、その南麓には雫石盆地があり、東麓には北上川上流部の平地が広がっている。この平地の東側からは姫神山(1,124m)を中心とする北上高地西部の山々が迫ってきている。また岩手山の西側は奥羽山脈であり、八幡平(1,613m)から秋田駒ケ岳(1,637m)にかけての一帯は火山地形を形成しており、南西部には五番森(1,048m)を中心とする非火山性地形が広がっている。
【0012】
図3(a)に示す地勢図の格子型ディジタル標高モデルから、ラプラシアンの演算を用いて作成した地形図を、図3(b)に示す。ラプラシアンの演算は、空間2次微分に基づいたエッジ検出の画像処理方法として知られており、格子型ディジタル標高モデルに適用した場合には凹凸地形の特徴抽出方法として知られている。ラプラシアンは一般に凹型の地形では正の大きな値を示し、凸型の地形では負の小さな値を示す。また平地や単調斜面のような勾配の変化が小さな地形においては0に近い値を示す。図3(b)では、ラプラシアン値が大きい地点ほど黒く、小さい地点ほど白く表示してあり、尾根線や谷線はそれぞれ白および黒の線として現れている。
【0013】
一方、図4(a),(b)は、同じく図3(a)に示す地勢図の格子型ディジタル標高モデルから、着目格子点からの距離Lを0.5kmとして8方位開度演算を用いて作成した地上開度図、地下開度図である。
図4(a)はL=0.5kmの地上開度図である。開度が大きいほど白く表示していることから、頂上および、頂上から伸びている尾根線は白く、谷線は黒く現れ、平地や斜面などは中間のグレーとして現れている。尾根線は、周囲(計算距離Lの範囲内で)に比べて標高が高いほど白く、地形が急峻であるほど細い。同様に谷線は、谷が深いほど黒く、谷底が狭いほど細い。前者の典型には岩手山山頂から伸びる尾根線があり、後者の典型には岩手山の南西麓に延びている葛根田峡谷がある。
図4(b)はL=0.5kmの地下開度図である。開度が大きいほど白く表示している。深い谷ほど白く、底が広い谷ほど太く現れている。図4(a)の地上開度と図4(b)の地下開度は対応関係にあるが、それぞれ異なった観点からの地形特徴を表示している。このため、例えば、共に白い部分に着目した判読が容易である意味からは、図4(a)は尾根線を主体とした地形判読に適しており、図4(b)は谷線を主体とした地形判読に適している。
【0014】
図4(a)および図4(b)をみると、図3(b)に示したラプラシアンの演算を用いて作成した地形図に比較して、尾根線や谷線がより鮮明に表示されていることがわかる。
地形図の表示において上述のような効果が得られることから、遺物の表面形状においても、地形と同様の格子型ディジタル標高モデルを作成し、その格子型ディジタル標高モデルに対して8方位開度演算を行えば、構造線を自動的に、かつ、従来の他の演算方法よりも効果的に抽出することができる。
【0015】
図13は、物体表面の構造線を自動的に抽出するためのシステムの構成図である。スキャナ131は例えばレーザプロファイラなど、物体表面を走査するためのスキャナである。処理装置132はシステムを制御する装置であり、各処理を行うプログラムなどを格納している。表示装置133は例えばディスプレイなどの表示装置である。入力装置134は例えばキーボードやマウスなどの入力装置である。なお、処理装置132、表示装置133、入力装置134は、一般的に用いられているパーソナル・コンピュータを使用することができる。出力装置135は例えばプリンタなどの出力装置である。
以下、図13のシステム構成図を用いて、遺物の表面の構造線を自動的に抽出するまでの手順を説明する。
【0016】
まず、遺物をスキャナ131で走査して、輪郭および高さなどの表面形状をディジタル化したデータを作成し、処理装置132に取り込む。次に、取り込んだ表面形状のディジタルデータを、処理装置132に格納しているメッシュ化プログラムによりメッシュ化し、遺物の表面形状の格子型ディジタル標高モデルを作成する。
次に、作成した格子型ディジタル標高モデルから表面の構造線を抽出して、画像として出力する。構造線は、処理装置132に格納している構造線抽出プログラムにより計算され抽出される。例えば、構造線の抽出に前述の8方位開度演算を使用する場合、構造線抽出プログラムは、格子型ディジタル標高モデルの各格子点について8方位開度を算出し、構造線を抽出するプログラムである。
算出された8方位開度および、抽出した構造線は、同じく処理装置132に格納している画像処理プログラムにより画像データ化され、表示装置133に表示される。また、画像データは出力装置135を用いて紙などに印刷することもできる。
【0017】
図5、図6は、上記の手順により作成された遺物の画像である。図5(a),(b)は、上記の方法で記述された遺物の格子型ディジタル標高モデルを、陰影起伏図で表した画像である。いっぽう、図6(a),(b)は、同じ格子型ディジタル標高モデルの全格子点に対して8方位地上開度演算を行なった結果の画像である。8方位地上開度が大きいほど黒く表示してあり、黒い線に該当する部分が遺物表面の尾根線に相当する構造線を示す。図6の8方位地上開度図をみると、8方位開度演算により遺物の構造線が効果的に抽出されていることがわかる。
【0018】
このように、遺物についても表面形状が格子型ディジタル標高モデル(DEM)で記述されていれば、構造線を8方位開度演算により自動的に、かつ、効果的に抽出することができる。しかしながら、地形の凹凸は隆起や水文浸食によって形成されるために大きな標高の変化を伴っているのに対して、遺物表面の凹凸は、剥離、押圧、研磨などによって作られているために、標高の変化は一般に小さい。このような遺物表面に従来の8方位開度演算を適用した場合には、抽出できない構造線も少なくない。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来は手作業により行われていた遺物の記録図面作成を、コンピュータ・システムを用いて自動的に行う。このとき、遺物など、地形に比較して小さい標高変化を伴う凹凸構造をもつ物体の表面形状についても効果的に構造線を抽出し、より鮮明な記録図面を作成することができる、物体表面の構造線の自動抽出方法を提供する。
これにより、記録図面作成の時間および費用を削減する。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明は、物体表面の構造線を自動的に抽出する自動抽出システムであって、格子型ディジタル標高モデルの着目する格子点の8方位の地上角及び/又は地下角を算出する8方位開度算出手段と、各格子点に対して、前記8方位開度算出手段からの地上角から2方位最大地上開度の算出、及び/又は、前記8方位開度算出手段からの地下角から2方位最大地下開度の算出を行う2方位最大開度算出手段と、前記2方位最大開度算出手段からの開度値により、前記格子点が線形状をなしている部分を物体表面の構造線として識別する構造線識別手段とを備えることを特徴とする物体表面の構造線の自動抽出システムである。
さらに、前記8方位開度算出手段は、前記格子型ディジタル標高モデルの着目する格子点の方位別の地上角及び/又は地下角を算出する際に、着目格子点の標高に定数のバイアス値を加えて、前記地上角についてはバイアス付地上開度の算出、及び/又は前記地下角についてはバイアス付地下開度の算出を行ってもよい。
さらに、前記構造線識別手段は、前記2方位最大開度算出手段からの開度値に閾値処理を行ない、前記格子点が線形状をなしている部分を物体表面の構造線として識別するものであってもよい。
上記の物体表面の構造線の自動抽出システムをコンピュータ・システムに構築させるプログラムや、そのプログラムを記録した記録媒体も、本発明である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明は、従来の8方位開度演算を遺物などの物体向けに改良した「2方位最大開度演算」および「バイアス付開度演算」による構造線の自動抽出方法を提供する。
以降、図を用いて本発明の実施の形態を説明する。まず、2方位最大開度演算を用いた物体表面の構造線の自動抽出方法を説明し、次に、バイアス付開度演算を用いた物体表面の構造線の自動抽出方法を説明する。
なお、本実施形態の構造線の自動抽出システムは、前述で説明した図13と同様のシステム構成を用いるものとする。
【0022】
(2方位最大開度演算による構造線の抽出)
2方位最大開度演算は、遺物など、小さい標高変化を伴う凹凸構造をもつ物体表面の構造線を効果的に抽出することができる方法である。
前述した8方位地上開度および8方位地下開度は、8方位の地上角φおよび地下角ψの平均値であったが、2方位最大地上開度および2方位最大地下開度は、以下のように算出する。
【0023】
まず、8方位の地上角φおよび地下角ψをもとに次の8つの概念、すなわち、(1)φ1:北と南の地上角の和
(2)φ2:北東と南西の地上角の和
(3)φ3:東と西の地上角の和
(4)φ4:南東と北西の地上角の和
(5)ψ1:北と南の地下角の和
(6)ψ2:北東と南西の地下角の和
(7)ψ3:東と西の地下角の和
(8)ψ4:南東と北西の地下角の和
を導入する。また、次の2つの定義を行なう。
(定義1)着目格子点の計算距離Lの2方位最大地上開度φB(以降、着目格子点の2方位最大地上開度という)とは、φ1〜φ4の中の最大値、すなわち、φB=MAX{φ1,φ2,φ3,φ4}を意味する。
(定義2)着目格子点の計算距離Lの2方位最大地下開度ψB(以降、着目格子点の2方位最大地下開度という)とは、ψ1〜ψ4の中の最大値、すなわち、ψB=MAX{ψ1,ψ2,ψ3,ψ4}を意味する。
【0024】
さて、格子型ディジタル標高モデルの全格子点に対して上記に定義した2方位最大開度を算出し、画像データを作成する。
2方位最大開度演算では、作成した画像データにおいて、地上開度の大きい部分を凸の構造線とし、地下開度の大きい部分を凹の構造線として抽出するため、8方位の平均値を採用している8方位開度演算に比較して、構造線を効果的に抽出することができる。このため、遺物のような起伏の少ない物体表面において効果的である。図7および図8を用いて、以下にその効果を示す。
【0025】
図7(a),(b)は、前述の図5(a),(b)と同じ格子型ディジタル標高モデルの全格子点に対して2方位最大地上開度演算を行なった結果の画像である。2方位最大地上開度が大きいほど黒く表示してあり、黒い線に該当する部分が遺物表面の尾根線である。8方位地上開度演算により作成した図6に比較して、構造線がより鮮明に抽出されている。
さらに、図7の画像データに閾値処理を行なって、大きな2方位最大地上開度を持つ格子点が線形状をなしている部分を、凸の構造線として識別することができる。この識別した構造線に基づいて、遺物の記録図面を作成することができる。図8(a),(b)は、図7(a),(b)の画像データを用いて、構造線の識別を行うことにより作成した記録図面の例である。
同様に、2方位最大地下開度図の画像データに閾値処理を行なえば、大きな2方位最大地下開度を持つ格子点が線形状をなしている部分を、凹の構造線として識別することができる。
このように、2方位最大開度演算を用いることで、8方位開度演算を用いた場合よりも、構造線をより効果的に抽出することができる。さらに、開度演算により作成された画像データは電子的なデータとして保存や利用ができる。例えば、そのデータを用いて描画ソフトウェアなどにより自動的に記録図面を作成することができる。その結果、手作業による記録図面の作成と比較して、時間や費用を削減することができる。
【0026】
(バイアス付開度演算による構造線の抽出)
前述したように、2方位最大開度演算を用いれば遺物の構造線を効果的に抽出することができる。しかしながら、格子型ディジタル標高モデルにおいて、着目格子点の近傍格子点にノイズがある場合には、実際よりも小さな開度が算出されてしまい、充分な効果が得られないことがある。
図9は、格子型ディジタル標高モデルの着目格子点Gから方位Dの地形断面における計算距離Lの地上角φおよび地下角ψを示した地形断面図を示したものである。図9に示したような場合には、ノイズとなる近傍格子点がないため、実際と同じ開度を算出することができる。
しかしながら、実際には格子型ディジタル標高モデルにはノイズが加わっていることが多い。図10は、近傍格子点にノイズが加わっていた場合に算出される地上角φおよび地下角ψの例を示している。近傍格子点のノイズのために、実際よりも小さな地上角φおよび地下角ψが算出されていることがわかる。
このため、開度演算処理においては、格子型ディジタル標高モデルのノイズの影響を軽減するための方策が必要となる。
【0027】
以降説明するバイアス付開度演算は、ノイズによる影響を軽減する演算方法である。
図11は、図10に示した格子型ディジタル標高モデルと同じものである。図11のφdは、図10のノイズの影響を受けている格子型ディジタル標高モデルの着目格子点Gの方位D、計算距離Lの地上角の算出において、Gの標高をdだけ嵩上げして算出した地上角であり、これを「バイアス付地上角」と呼ぶものとする。また、ψdは、Gの標高をdだけ嵩上げして算出した地下角であり、これを「バイアス付地下角」と呼ぶものとする。また、バイアス付地上角およびバイアス付地下角から算出した地上開度および地下開度を、それぞれ「バイアス付地上開度」および「バイアス付地下開度」と呼ぶものとする。ここで、定数dは、格子型ディジタル標高モデルのノイズの大きさを考慮して決められるものであり、例えばノイズの標準偏差の2倍程度以下を基準に設定するものとする。
前述で説明した8方位開度演算および2方位最大開度演算において、バイアス付開度演算を導入することによって、格子型ディジタル標高モデルにノイズがある場合にも構造線を効果的に抽出することができる。図12を用いて、以下にその効果を示す。
図12(a),(b)は、図5(a),(b)と同じ格子型ディジタル標高モデルにd=0.025mmのバイアスを付加した場合の、バイアス付2方位最大地上開度の演算処理を行った結果の画像である。同じ格子型ディジタル標高モデルに2方位最大地上開度の演算を行った結果である図7に比較して、構造線がより鮮明に抽出されていることがわかる。
【0028】
【発明の効果】
本発明における物体表面の構造線の自動抽出システムによれば、遺物の表面形状を格子型ディジタル標高モデルで記述し、開度演算により自動的に構造線を抽出して記録図面を描画するので、従来の手作業による記録図面の作成に比較して、時間および費用を削減することができる。さらに、開度演算により作成される画像データは電子的なデータであるため、保存や利用が便利である。
さらに、開度演算において、2方位最大開度演算やバイアス付開度演算を用いることで、遺物など、地形に比較して小さい標高変化を伴う凹凸構造をもつ物体の表面形状についても効果的に構造線を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】山頂および窪地を着目格子点とした地上角φおよび地下角ψを示した図である。
【図2】基本的な地形と、8方位地上開度および8方位地下開度との対応関係を示した一覧表である。
【図3】(a)図3(b)に示す地形図、および図4(a),(b)に示す8方位開度図の作成対象領域の地勢図である。
(b)図3(a)に示す地勢図の格子型ディジタル標高モデルから、ラプラシアンの演算を用いて作成した地形図である。
【図4】(a)図3(a)に示す地勢図の格子型ディジタル標高モデルから、8方位開度演算を用いて作成した地上開度図である。
(b)図3(a)に示す地勢図の格子型ディジタル標高モデルから、8方位開度演算を用いて作成した地下開度図である。
【図5】ある遺物の格子型ディジタル標高モデルから作成した陰影起伏図である。
【図6】図5と同じ遺物の格子型ディジタル標高モデルから作成した8方位地上開度図である。
【図7】図5と同じ遺物の格子型ディジタル標高モデルから作成した2方位最大地上開度図である。
【図8】図7の2方位最大地上開度図の画像データから描画ソフトウェアを用いて作成した遺物の記録図面である。
【図9】着目格子点Gから方位Dの地形断面における計算距離Lの地上角φおよび地下角ψを示した図である。
【図10】着目格子点Gの近傍にノイズがある場合に算出される地上角φおよび地下角ψを示した図である。
【図11】着目格子点Gから方位Dの地形断面における計算距離L、嵩上げ量dのバイアス付地上角φdおよびバイアス付地下角ψdを示した図である。
【図12】図5と同じ遺物の格子型ディジタル標高モデルから作成したバイアス付2方位最大地上開度図である。
【図13】本発明のシステム構成図の例である。
Claims (5)
- 物体表面の構造線を自動的に抽出する自動抽出システムであって、
格子型ディジタル標高モデルの着目する格子点の8方位の地上角及び/又は地下角を算出する8方位開度算出手段と、
各格子点に対して、前記8方位開度算出手段からの地上角から2方位最大地上開度の算出、及び/又は、前記8方位開度算出手段からの地下角から2方位最大地下開度の算出を行う2方位最大開度算出手段と、
前記2方位最大開度算出手段からの開度値により、前記格子点が線形状をなしている部分を物体表面の構造線として識別する構造線識別手段と
を備えることを特徴とする物体表面の構造線の自動抽出システム。 - 請求項1に記載の物体表面の構造線の自動抽出システムにおいて、
前記8方位開度算出手段は、前記格子型ディジタル標高モデルの着目する格子点の方位別の地上角及び/又は地下角を算出する際に、着目格子点の標高に定数のバイアス値を加えて、前記地上角についてはバイアス付地上開度の算出、及び/又は前記地下角についてはバイアス付地下開度の算出を行う
ことを特徴とする物体表面の構造線の自動抽出システム。 - 請求項1又は2に記載の物体表面の構造線の自動抽出システムにおいて、
前記構造線識別手段は、前記2方位最大開度算出手段からの開度値に閾値処理を行ない、前記格子点が線形状をなしている部分を物体表面の構造線として識別する
ことを特徴とする物体表面の構造線の自動抽出システム。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の物体表面の構造線の自動抽出システムをコンピュータ・システムに構築させるプログラムを記録した記録媒体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の物体表面の構造線の自動抽出システムをコンピュータ・システムに構築させるプログラム。
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