JP3671106B2 - Method for producing spherical carbon polymer, electrolyte solution used for the production, and spherical carbon polymer - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラーレン分子の電解重合による球状炭素重合体の製造方法、その製造に用いる電解質溶液、並びに球状炭素重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フラーレンは、C60〔図29(A)及び(B)参照〕やC70〔図30(A)及び(B)参照〕等からなる球状炭素分子の総称で、1985年に炭素のレーザーアブレーションによるクラスタービームの質量分析スペクトル中に発見された(Kroto,H.W.; Heath,J.R.; O'Brien,S.C.; Curl,R.F.; Smalley,R.E. Nature 1985, 318,162. 参照)。
【0003】
ダイヤモンド、グラファイトに次ぐ第3の結晶炭素として球状炭素化合物であるフラーレンの存在が明らかにされ、マクロ量の合成法が確立されたのは1990年になってからである(Kratschmer,W.; Fostiropoulos,K.; Huffman,D.R. Chem.Phys.Lett. 1990, 170,167.及び Kratschmer,W.; Lamb,L.D.; Fostiropoulos,K.;Huffman,D.R. Nature 1990, 347,354.参照)。
【0004】
1990年に炭素電極のアーク放電法によるフラーレン(C60)の製造方法が発見されて以来、フラーレンは炭素系半導体材料等として注目されてきた。フラーレン分子は真空下或いは減圧下において容易に気化できることから、蒸着薄膜を形成し易い素材である。
【0005】
フラーレンは、炭素のみからなる一連の球状炭素化合物であり、炭素60個からなるC60及びそれ以上の偶数個の炭素からなるいわゆるHigher Fullerenes の総称であり、12個の5員環と20個又はそれ以上の6員環を含んでいる。即ち、60個、70個、76個、78個、80個、82個又は84個等(炭素原子数は幾何学的に球状構造を形成し得る数から選択される。)の炭素原子が球状に結合してクラスター(分子集合体)を構成してなる球状炭素Cn であって、それぞれ、C60、C70、C76、C78、C80、C82、C84等のように表される。
【0006】
例えばC60は、正二十面体の頂点をすべて切り落として正五角形を出した“切頭二十面体”と呼ばれる多面体構造を有し、図29に示すように、この多面体の60個の頂点をすべて炭素原子Cで置換したクラスターであり、公式サッカーボール型の分子構造を有する。同様に、図30に示すC70、またC76、C84等は、いわばラグビーボール型の分子構造を有する。
【0007】
こうしたフラーレンは、その用途等について種々研究が進められており、例えば、C60フラーレンにアルカリ金属をドープした物質が超電導性を示すことが確認されたことから、電子材料として応用が盛んに研究されている。
【0008】
しかしながら、最も大量に得ることのできるC60やC70等のフラーレン分子においては、分子内の双極子モーメントがゼロであることから、分子間の結合にはファン・デル・ワールス力しか働かず、真空蒸着法等により得られる蒸着薄膜は脆弱である。フラーレンを用いた薄膜電子デバイスを作成する上で、このような脆弱さは、デバイスの安定性等に対して問題となる。
【0009】
また、蒸着法によるフラーレン薄膜(フラーレン蒸着薄膜:以下、同様)は、フラーレン分子間に酸素分子が拡散進入することによって薄膜内に常磁性中心が発現し、この薄膜の安定性の点で問題があった。
【0010】
このようなフラーレン蒸着薄膜の脆弱さに対処する方法として、近年、フラーレン分子同士を重合する、いわゆるフラーレンポリマー薄膜(フラーレン重合薄膜)の製造方法が提唱されている。
【0011】
まず、フラーレン分子の2量体や3量体等のフラーレン重合体を作成する方法として、光誘起によるフラーレン重合体の作成方法が知られている〔(a) Rao,A.M.; Zhou,P.; Wang,K.A.; Hager,G.T.; Holden,J.M.; Wang,Y.; Lee,W.T.; Bi,X.X.; Eklund,P.C.; Cornett,D.S.; Duncan,M.A.; Amster,I.J. Science 1993, 256,955. (b) Cornett,D.C.; Amster,I.J.; Duncan,M.A.; Rao,A.M.; Eklund,P.C. J.Phys.Chem.1993, 97,5036. (c) Li,J.; Ozawa,M.; Kino,N.; Yoshizawa,T.; Mituki,T.; Horiuchi,H.; Tachikawa,O.; Kishino,K.; Kitazawa,K. Chem.Phys.Lett.1994, 227,572.参照〕。
【0012】
しかしながら、この方法では、予め作成したフラーレン蒸着薄膜に対して光照射を行ってフラーレン分子を重合させており、フラーレン分子の重合に際して、前記フラーレン蒸着薄膜の体積収縮が起きるために、その表面に無数のひび割れ等が生じてしまい、強度や表面性等の点で問題があった。従って、光誘起によるフラーレン重合薄膜の作成方法では、大面積にわたって均一かつ表面性の優れた薄膜を作成することは極めて困難であった。
【0013】
さらに、圧力や熱を加えフラーレン分子同士を衝突させることによってフラーレン重合体を作成できることが知られているが、フラーレン重合体の作成が限界であって、フラーレン重合体による薄膜(即ちフラーレン重合薄膜)の形成は困難である〔1.分子衝突法 (a)Yeretzian,C.; Hansen,K.; Diederich,F.; Whetten,R.L. Nature 1992, 359,44. (b)Whetten,R.L.; Yeretzian,C. Int.J.Mod.Phys,1992, B6,3801 (c)Hansen,K.; Yeretzian,C.; Whetten,R.L. Chem.Phys.Lett.1994, 218,462 (d)Seifelt,G.; Schmidt,R.; Int.J.Mod.Phys,1992, B6,3845.2.イオンビーム法 (a)Seraphin,S.; Zhou,D.; Jiao,J. J.Mater.Res.1993, 8,1995. (b)Gaber,H.; Busmann,H.G.; Hiss,R.; Hertel,I.V.; Romberg,H.; Fink,J.; Bruder,F.; Brenn,R. J.Phys.Chem,1993, 97,8244.3.圧力法 (a)Duclos,S.J.; Brister,K.; Haddon,R.C.; Kortan,A.R.; Thiel,F.A. Nature 1991, 351,380. (b)Snoke,D.W.; Raptis,Y.S.; Syassen,K. 1 Phys.Rev.1992, B45,14419. (c)Yamazaki,H.; Yoshida,M.; Kakudate,Y.; Usuda,S.; Yokoi,H.; Fujiwara,S.; Aoki,K.; Ruoff,R.; Malhotra,R.; Lorents,D.J. J.Phys.Chem. 1993, 97,11161. (d)Rao,C.N.R.; Govindaraj,A.; Aiyer,H.N.; Seshadri,R. J.Phys.Chem. 1995,99,16814.参照〕。
【0014】
また、粉末状のC60分子をKCNと振動しながら混合することによって、18%程度の収率でC60分子の〔2+2〕付加体(C120 分子)が得られることが知られている(Guan-Wu Wang, Koichi Komatsu, Yasujiro Murata, Motoo Shiro, Nature, 5 June 1997, 583〜586 ページ)。
【0015】
しかしながら、この方法は、生成物中のC120 の割合、即ち純度が20%程度とかなり低く、しかも毒性のあるCN化合物を触媒として使用しており、また、固相(粉末状)での反応であってフラーレンの環状付加体からなる薄膜の形成は困難であり、生成量や生成面積の点でも不十分であって、生成しても2量体しか出来ない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
このように、真空蒸着法、光重合法、分子衝突法等のフラーレン重合法又はフラーレン薄膜の製造方法に対処するために、本発明者は、マイクロ波を用いたプラズマ重合法によるフラーレン重合薄膜の製造方法を提唱している。この方法で得られるフラーレン重合薄膜は、フラーレン分子の電子励起状態を経て重合したフラーレン重合体薄膜である(Takahashi,N.; Dock,H.; Matsuzawa,N.; Ata,M.; J.Appl.Phys.1993,74, 5790参照)。
【0017】
このようにして得られるマイクロ波誘起フラーレン重合薄膜は、フラーレン蒸着薄膜に比較して、その強度が格段に増加し、緻密であり、かつ柔軟性に富む薄膜である。
【0018】
すなわち、フラーレン蒸着薄膜では、フラーレン分子同士の隙間に酸素や水等の分子が拡散、侵入して、薄膜の電子物性に大きく影響を与えるが、マイクロ波誘起によるフラーレン重合薄膜では、真空中と大気中とで電子物性がほとんど変化しないことから、その薄膜の緻密さによって酸素等の分子の薄膜内への拡散侵入が有効に抑えられていると思われる。
【0019】
実際に、このような方法で得られたフラーレン重合薄膜のレーザーアブレーション法による飛行時間型質量分析を行うと、フラーレンの多量体が生成していることが分かった。また、フラーレン重合薄膜の電子物性は、その重合形態に大きく依存するものと考えられる。実際に、このような薄膜から得られる質量分析結果は、本発明者によるC60分子のアルゴンプラズマ重合薄膜の質量分析結果と極めてよく似ている(Ata,M.; Takahashi,N.; Nojima,K. J.Phys.Chem.1994, 98, 9960. 及び Ata,M.; Kurihara, K,; Takahashi,N. J.Phys.Chem.1995, 101, 5. 参照)。
【0020】
また、このようにして得られたフラーレン重合薄膜のミクロ構造を推定するにあたっては、パルスレーザ励起の飛行時間型質量分析、いわゆるTOF−MSが有用である。
【0021】
一般に、高分子量のポリマーを非破壊で測定するには、マトリックスアシスト法が用いられる。しかしながら、フラーレン重合体を溶解する溶媒が存在しないことなどから、重合体の実際の分子量分布を直接評価することは困難である。
【0022】
また、レーザーデソープションイオン化飛行時間型質量分析法(Laser Desortion Ionization Time-of-Flight Mass Spectroscopy :LDITOF−MS)による質量評価も、適当な溶媒が無いこと、C60分子とマトリックス分子との反応によりマトリックスアシスト法で行えないこと等の理由により、実際の質量分布を正確に評価することは困難である。
【0023】
しかしながら、重合構造に関しては、C60が重合を起こさない程度のレーザーパワーのアブレーションで観測したLDITOF−MSの多量体のピーク位置や2量体のプロフィールから知見を得ることができる。例えば、プラズマパワー50Wで得られたC60重合膜のLDITOF−MSによれば、C60分子間の重合は4個の炭素のロスを伴う過程が最も確率的に高いことを示した。
【0024】
即ち、2量体の質量領域において図31(a)で示されるC120 等はマイナープロダクトであり、最も高い確率で生成するのはC116 である。また、半経験的レベルのC120 の2量体の計算に基づいて、このC116 は、図31(b)に示すようなD2h対称C116 であると考えられる。
【0025】
このC116 はC58の再結合で得られるが、C60のイオン化状態を含む高い電子励起状態からC2 の脱離により開殻して、C58が生成することが報告されている [(a)Fieber-Erdmann, M. et al, Z.Phys. D 1993, 26, 308. (b)Petrie, S. et al, Nature 1993, 356, 426. (c)Eckhoff, W. C. ; Scuseria, G. E., Chem. Phys. Lett. 1993, 216, 399. 参照] 。
【0026】
この開殻C58分子が5員環2個が隣接する構造へ転移する以前に2分子で結合すれば、図31(b)で示されるC116 が得られる。
【0027】
しかし、本発明者は、C60のプラズマ重合の初期過程はあくまでも励起3重項メカニズムによる〔2+2〕環状付加反応であると考えている。また、最も高い確率で生成するC116 は、C60の電子励起3重項状態から〔2+2〕環状付加反応により生成した(C60)2 のシクロブタン環を形成する4個のsp3 炭素原子の脱離と、2個のC58開殻分子の再結合によると考えている。
【0028】
例えば、TOF−MS(飛行時間型質量分析:以下、同様)のイオン化ターゲット上のC60微結晶に強いパルスレーザー光を照射した場合、上記マイクロ波誘起による重合の場合と同様に、フラーレンの電子励起状態を経る重合が起きるが、C60光重合体のピークと共にC58、C56等のイオンも観測される。しかし、C58 2+或いはC2 + 等のフラグメントイオンは観測されないことから、上記 Fieber-Erdmann らの文献に述べられているようなC60 3+から直接C58 2+とC2 + へのフラグメンテーションはこの場合には考えられない。
【0029】
また、C2 F4 ガスプラズマ中でC60を気化させ成膜した場合、そのLDITOF−MSにはC60のF或いはC2 F4 のフラグメクトイオンの付加体のみが観測され、C60重合体は観測されない。
【0030】
このようにC60重合体の観測されないLDITOF−MSにおいては、C58、C56等のイオンも観測されないという特徴がある。これらの観測結果もまた、C2 のロスがC60重合体を経てから起きることを支持している。
【0031】
上述したように、マイクロ波励起プラズマ重合法によるフラーレン重合体の生成プロセスでは、フラーレン分子間の重合に際してC2 ユニットの損失が観測されるが、重合体形成に際するC2 のロスが〔2+2〕環状付加反応による1,2−(C60)2 〔図31(a)〕から直接起きるかどうかという事が問題となる。ここで、Murry らは1,2−(C60)2 の構造緩和のプロセスを提唱している [(a)Murry, R. L. et al, Nature 1993, 366, 665. (b)Stout, D. L. et al, Chem. Phys. Lett. 1993, 214, 576. Osawa, E.参照] 。
【0032】
すなわち、Murry らによれば、図31(a)で示す1,2−(C60)2 の構造緩和の初期過程は、クロスリンク部位の最も歪みの大きい1,2−C−C結合の開裂した図32のC120 (b)の構造を経て、Stone-Wales 転移〔Stone, A. J. ; Wales, D. J. Chem. Phys. Lett. 1986, 128, 501. (b)Saito, R. Chem. Phys. Lett. 1992, 195, 537.参照〕によるはしご型のクロスリンクを有するC120 (c)(図33参照)からC120 (d)(図34参照)の生成であるとしている。1,2−(C60)2 〔図31(a)〕からC120 (b)(図32)へはエネルギー的に不安定化するが、さらにC120 (c)(図33)からC120 (d)(図34)と転移するに連れて再度安定化する。
【0033】
このように、マイクロ波励起プラズマ重合法によるフラーレン重合体の生成プロセスでは、図31(a)に示した〔2+2〕環状付加反応による1,2−(C60)2 は、その構造緩和プロセスによって、図31(b)に示したD2h対称C116 に速やかに構造変化するものと考えられる。
【0034】
以上述べたように、フラーレン分子の気相反応による重合体薄膜の形成プロセスでは、〔2+2〕環状付加反応〔[2+2] Cycloaddition〕による重合体構造を選択的に得ることは困難である。また、フラーレン分子の固相反応では、生産性良くフラーレンの環状付加重合体、さらには環状付加重合体からなる薄膜を得ることは難しい。
【0035】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液相中での電解重合によって、フラーレン分子の環状付加重合体(特に、〔2+2〕環状付加重合体)からなる電気伝導性等の電子物性に優れた球状炭素重合体の製造方法、その製造方法の実施に使用する電解質溶液、並びに球状炭素重合体を提供することにある。
【0036】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述した課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、特定の溶液中での電解重合によって、フラーレン分子の環状付加重合体からなる電子物性に優れた球状炭素重合体が得られることを見出した。
【0037】
即ち、本発明は、非水溶媒中に、Cn (但し、nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子を溶解し、これを電解重合して前記フラーレン分子の環状付加重合体からなる球状炭素重合体を得る、球状炭素重合体の製造方法(以下、本発明の製造方法と称する。)を提供するものである。
【0038】
また、本発明は、本発明の製造方法の実施に用いる電解質溶液として、非水溶媒中に、Cn (但し、nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子を溶解し、これを電解重合して前記フラーレン分子の環状付加重合体からなる球状炭素重合体を得るに際して用いられ、前記フラーレン分子と、支持電解質と、前記フラーレン分子を溶解する第1溶媒と前記支持電解質を溶解する第2溶媒との混合溶媒からなる非水溶媒とを主成分とする電解質溶液(以下、本発明の電解質溶液と称する。)も提供するものである。
【0039】
さらに、本発明は、Cn (但し、nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子を電解重合して得られ、支持電解質から供された対イオンを含む環状付加重合体からなる球状炭素重合体(以下、本発明の球状炭素重合体と称する。)を提供するものである。
【0040】
なお、本発明で言うところの電解重合とは、あらかじめ前記フラーレン分子を非水溶媒に溶解し、この溶液に電気的エネルギーを作用させること(即ち、電気分解又は電解)によって、フラーレン分子の環状付加重合体からなる球状炭素重合体を得るものである。
【0041】
また、前記環状付加重合体とは、互いに異なる若しくは同一のフラーレン分子同士が、例えば、そのシクロヘキサトリエニル部位に付加した1,2−サイクル結合によるシクロブタン環を介して付加重合した重合体であって、2量体またはそれ以上の重合体を含むものである。
【0042】
また、本発明の製造方法によれば、特に、電解重合の際の温度、さらには支持電解質の種類を適宜選択することによって、電解質溶液(非水溶媒)中での電気分解によるフラーレンの電解重合薄膜を製造することが可能であり、簡便な製造装置で、均一かつ大面積のフラーレン電解重合薄膜の形成が可能である。また、得られるフラーレン電解重合薄膜は、前述したフラーレン蒸着薄膜よりも電気伝導性に優れ、経時劣化も少なく、耐候性に優れた薄膜となり得る。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明においては、前記環状付加重合体として、複数の前記フラーレン分子がそのシクロヘキサトリエニル部位に付加した1,2−サイクル結合によって互いに重合してなる(Cn )m 〔但し、nは前述したと同様であって、mは任意の自然数である。〕で表される重合体を得ることができる。
【0044】
すなわち、例えば図3に示す如く、C60の1位、2位のシクロヘキサトリエニル部位に付加する1,2−サイクル結合によって、C60分子間が、炭素原子1と炭素原子2と炭素原子3と炭素原子4とからなるシクロブタン環を介して重合した重合体(〔2+2〕環状付加重合体)が挙げられる。
【0045】
なお、図3に示す球状炭素重合体はC60の2量体であるが、図4に示す如くC60の3量体、図5に示す如くC60の4量体も本発明の製造方法によって得ることができ、さらに、平面的に若しくは立体的に、これらの球状炭素重合体が付加重合した多量体も得ることができる。さらに、図20〜28に示すようなC70分子が環状付加した2量体又はそれ以上の多量体を得ることもできる。
【0046】
また、本発明においては、前記フラーレン分子としてC60及び/又はC70からなるフラーレン分子を使用することができる。
【0047】
すなわち、本発明においては、原料となるフラーレン分子として、図29に示すC60分子や図30に示すC70分子、さらにはこれらの混合物を用いることもできる。C70分子を用いた場合も、C60分子と同様に、2量体若しくはそれ以上の多量体を形成することができ、さらに、前記混合物を用いる場合は、C60分子とC70分子との多量体が形成される。
【0048】
なお、一般に、炭素電極のアーク放電で得られるススからトルエン、ベンゼン、二硫化炭素等の有機溶媒で抽出されたフラーレン分子は、C60やC70の他にも、C76、C78、C80、C82、C84等のいわゆる高次フラーレン分子も含むことがある。本発明においては、C76、C78、C80、C82、C84等の高次フラーレン分子を原料として用いることも可能である。
【0049】
また、本発明においては、前記非水溶媒に支持電解質を含有させることが望ましい。
【0050】
この支持電解質としては、例えば、テトラブチルアンモニウムパークロライド、リチウムテトラフルオロボラート(LiBF4 )、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6 )、過酸化ナトリウム(NaClO4 )、LiCF3 SO3 、リチウムヘキサフルオロアーセナイト(LiAsF6 )などを使用することができるが、これらの支持電解質を使用した場合、得られる球状炭素重合体は電解質溶液中で沈殿物であることが多い。
【0051】
これに対して、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4 )又はtert−ブチルアンモニウムパークロレート塩を用いると、電解重合反応の際の温度にもよるが、電解用の電極上に薄膜として球状炭素重合体(以下、電解重合薄膜と称することがある。)を得ることもできる。
【0052】
また、本発明では、前記非水溶媒(即ち、本発明の電解質溶液)として、前記フラーレン分子を溶解する第1溶媒と、前記支持電解質を溶解する第2溶媒との混合溶媒を使用することが望ましい。なお、前記第1溶媒と前記第2溶媒との混合割合は、第1溶媒:第2溶媒=1:10〜10:1(容量比)が望ましい。
【0053】
前記第1溶媒としては、π電子系を有する極性の低い溶媒を使用することが好ましく、例えば、二硫化炭素、トルエン、ベンゼン及びオルトジクロルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶媒等が挙げられる。
【0054】
また、前記第2溶媒としては、極性が高く、誘電率の大きい溶媒を使用することが好ましく、例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルアセトアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種の溶媒等が挙げられる。なかでも、アセトニトリルが特に好ましい。
【0055】
すなわち、本発明によれば、上述した溶媒や支持電解質を用いて、原料となるフラーレン分子を非水溶媒に溶解し、さらに、この溶媒に電解を容易に起こさせるための支持電解質を共存させ、電気的エネルギー(ポテンシャル)を印加することにより、フラーレン分子の環状付加重合体、さらには電解重合薄膜を形成することができる。
【0056】
ここで、一般に、フラーレン分子類は、二硫化炭素(CS2 )、トルエン、ベンゼン、オルトジクロルベンゼン等のπ電子系を有する極性の低い溶媒にしか溶解せず、n−ヘキサン等の脂肪族系溶媒に対する溶解度さえ極めて低い。当然、極性溶媒には溶解せず、このことがフラーレン分子の電解重合を行う際の最大の問題点である。
【0057】
なぜならば、通常、電解重合で用いられる支持電解質は、水などの極性溶媒にしか溶解しないからである。
【0058】
従って、フラーレン分子の電解重合を行うには、フラーレン分子及び支持電解質の両者を溶解させるような溶媒系を選択する必要があるが、このような要求を満たす溶媒は単体では存在しない。この要求を満たすためには、フラーレン分子を溶解する溶媒と支持電解質を溶解する溶媒との混合溶媒を用いるが、単に、このような溶媒を用いただけでは、フラーレン分子及び支持電解質の両方或いは一方の溶解度が十分でないことが多い。
【0059】
一般に、水系の溶媒は誘電率が大きく、塩である支持電解質を溶解するためには優れた溶媒であるが、水はフラーレン分子を溶解することが可能な二硫化炭素、トルエン、ベンゼン、オルトジクロルベンゼン等のπ電子系を有する極性の低い溶媒とは溶解しない。
【0060】
従って、混合溶媒を調製する際に用いる前記第2溶媒としては、有機溶媒でしかも極性が高く、かつ誘電率の大きいものを選ぶ必要がある。このような条件を満たす溶媒としては前述した溶媒が挙げられるが、最も適切なものはアセトアニリルであり、このアセトアニリルからなる溶媒は、電解容器(電解セル)中で支持電解質を用いて有機物のラジカルを調製する際に用いられる溶媒である。
【0061】
ただし、本発明で用いる溶媒が、アセトアニリルと、二硫化炭素、トルエン、ベンゼン、オルトジクロルベンゼン等のπ電子系を有する極性の低い溶媒との混合溶媒に限定されるものではない。
【0062】
また、本発明においては、前記非水溶媒中に不活性ガスを導入しながら前記電解重合を行うことが望ましい。
【0063】
例えば、アセトアニリルと、二硫化炭素、トルエン、ベンゼン、オルトジクロルベンゼン等のπ電子系を有する極性の低い溶媒との混合溶媒を用いることにより、支持電解質及びフラーレン分子の両方を溶解させる溶媒を得ることが可能であるが、更に、この溶媒を電解セル中に封入し、溶媒中に含まれる酸素ガス等を十分に脱気することが望ましい。例えば、酸素ガスを取り除くことによって、得られる球状炭素重合体、さらには電解重合薄膜中に酸素原子が取り込まれるのを防ぎ、常磁性中心の発現を抑制して前記重合体、さらには前記薄膜の安定性を向上することができる。
【0064】
次に、本発明で使用できる電解重合装置の一例を図1に示す。もちろんこのような装置に限定されるものではない。
【0065】
電解セル1には、例えば陽極としての電極4と陰極としての電極5とが配され、また、これらの電極間の電圧値或いは電流値が一定となり得るように、ポテンショスタット9に接続された参照電極6が設けられていて、電極4と電極5との間に所定の電気的ポテンシャルが印加されるようになされている。
【0066】
また、電解セル1には、溶媒2中の酸素ガス等の除去のために不活性ガス8を導入するガス導入管7が設けられている。さらに、電解セル1の下部には、マグネチックスターラー3が設けられており、電解セル1内に配される図示省略した攪拌子を動作させるべく構成されている。
【0067】
このような構成の電解重合装置を用い、原料となるフラーレン分子(以下、原料フラーレンと称することがある。)、前記支持電解質、前記第1溶媒及び前記第2溶媒を主成分とする非水溶媒(即ち、本発明の電解質溶液)を電解セル1中に配し、ポテンショスタット9を動作させて、電極4−電極5間に所定の電気エネルギーを作用させると、フラーレン分子は負ラジカル(アニオンラジカル)となり、負電極上に薄膜として、及び/又は、沈殿物として形成される。なお、沈殿物として得られた球状炭素重合体は、濾過、乾燥等の手段により容易に回収することが可能であり、回収された球状炭素重合体は、固めたり、樹脂に練り込んで、例えば薄膜として使用することができる。
【0068】
なお、電極4及び電極5は金属電極であることが望ましいが、他の導電性材料で形成されていてもよく、また、ガラスやシリコン等の基板上に金属等の導電性材料を蒸着したものを用いてもよい。また、参照電極6の種類は用いる支持電解質にも依存するが、特定の金属に限定されるものではない。
【0069】
また、不活性ガス8による脱気は、ヘリウムガスのバブリングによっても行うことができるが、ヘリウムガスの代わりに、窒素、アルゴン等の他の不活性ガスを用いてもよい。なお、厳密に酸素ガス等を除くためには、電解前に、あらかじめ脱水剤を用い、さらに真空脱気を行って、それぞれの溶媒をアンプルに保存し、真空ラインを通じて電解セル1中に導入することも可能である。
【0070】
また、前記支持電解質に関しても、上述したような支持電解質を使用することができ、その種類は特に限定されるものではないが、上述したように、電極(特に陰極)上に形成され得る電解重合薄膜の物性は、用いる電解質により多少異なることがある。
【0071】
例えば、支持電解質としてtert−ブチルアンモニウムパークロレート塩を用い、この塩から供されるアンモニウム塩のような大きな正イオンが対イオン(カウンターイオン:counter ion )として存在する場合に得られる球状炭素重合体は、この正イオンとフラーレン分子とが配位結合を形成し、錯塩の状態で電極上に薄膜(又は沈殿物)として生成し、力学的にもろい傾向があるが、支持電解質として例えば過塩素酸リチウムを用い、この化合物から供されるリチウムイオンが対イオンとして存在する場合に得られる球状炭素重合体は、例えば電極上に薄膜として形成され、力学的に強固かつ安定であり、鏡面を呈する。
【0072】
また、上記装置では、電解重合を行っている間、マグネチックスターラー3を用いて溶液の攪拌を行うことができるが、このスターラーはヒーターを兼ね備えていてもよく、球状炭素重合体を形成するための電気的ポテンシャルを印加している間、その温度を適宜コントロールすることができる。
【0073】
なお、本発明においては、前記電解重合の際の温度を50℃未満とすることが望ましい。この際の温度が50℃以上になると、本発明の球状炭素重合体は沈殿物として得られる割合が多くなり、また、使用する溶媒の沸点を越えてしまうことがある。
【0074】
また、本発明においては、直流電流を印加することによって前記電解重合を行うことが望ましく、さらに、電圧一定下で前記直流電流の印加を行うことが望ましい。
【0075】
すなわち、電解重合のための電気的ポテンシャル(特に電圧)を、例えばポテンショスタットを用いて印加することができるが、このポテンシャルのかけ方は、電流一定モード若しくは電圧一定モードのいずれかを選択することができる。但し、電流一定モードで前記ポテンシャルをかけた場合、電極上に高抵抗の薄膜が形成されて電流値が低下する傾向があり、電圧が高くなりすぎることがある。このような状況では、フラーレン分子のポリアニオンの状態が不安定になって、一定の反応を維持するのが困難となることがある。
【0076】
なお、単にポテンシャル一定の条件下で電解重合を行う場合、図1に示したようなポテンショスタットを用いなくても、例えば、市販の乾電池と可変抵抗とを組み合わせた簡単なDC電源を用いることも可能である。
【0077】
次に、本発明に基づく球状炭素重合体の構造例を説明する。
【0078】
なお、本発明に基づいて得られる球状炭素重合体は、フラーレン分子のアニオンラジカルと電気的に中性の分子等との間の付加反応によって形成される環状付加重合体からなる球状炭素重合体であって、本発明においては、前記電解重合に用いる電極上に薄膜として、及び/又は、前記電解重合における沈殿物として前記球状炭素重合体を得ることができる。
【0079】
前記球状炭素重合体の構造を2次元的に考えた場合、上述したように、部分構造として2量体(図3参照)の形成が考えられるが、さらに、図4(C60の3量体)及び図5(C60の4量体)に示すような部分構造が可能であると考えられており、平面的に或いは立体的にこの部分構造が連なった重合体、さらにはこの重合体からなる薄膜であると考えられる。もちろん、分子としてのC120 、C180 、C240 等の球状炭素重合体を含む薄膜の可能性も考えられる。
【0080】
一般に、フラーレン分子はラジカルスポンジという言葉で代表されるように、ラジカル種が存在する場合には、容易に付加反応を起こし、ラジカルアダクトを形成する。これはフラーレン分子中の炭素原子がsp2 とsp3 との中間の原子価状態にあることに起因する。すなわち、フラーレン分子同士のラジカルアダクト形成に伴うsp3 の原子価状態の形成が容易であるからである。
【0081】
また、本発明に基づき、前記電解重合装置を用いて種々の支持電解質の存在下で電解重合薄膜の形成を試みた結果、溶解したフラーレン分子が電気的に負のアニオンラジカルとなり、さらにアニオンラジカル同士或いは電気的に中性のフラーレン分子と反応して前記電極上にフラーレン重合薄膜として形成されるためには、上述した支持電解質の選択に加えて、極めて微妙な温度、或いは電解ポテンシャルのコントロールが必要である。
【0082】
すなわち、溶解して電荷を帯びたフラーレン分子は容易に形成できるが、その重合が電極表面ではなく溶媒中で起きた場合には、フラーレン重合体の溶解度の低さから、この重合体は沈殿することが多い。沈殿物が多くなると、電極表面上での薄膜の形成が少なくなることがある。
【0083】
従って、フラーレン重合体、即ち、環状付加重合体からなる球状炭素重合体を薄膜として得ようとする場合は、沈殿物が少なくなるような条件下でその電解重合反応を行うことが望ましい。特に、反応を加速するための加熱を行わず、リチウムイオンを支持電解質の正イオン(即ち、対イオン)として前記反応を行う場合に、強固で光沢のある薄膜を得ることができる。
【0084】
なお、本発明においては、本発明に基づく電解重合反応において、支持電解質から供された対イオン(例えばリチウムイオン)が前記環状付加重合体に含まれることがある。
【0085】
本発明においては、このように、対イオンが含まれたままの環状付加重合体からなる球状炭素重合体、さらには電解重合薄膜とすることもできるが、この対イオンをある程度除去することもできる。
【0086】
例えば、前記環状付加重合体を水溶液などの溶液中に配し、この溶液を加熱沸騰させると同時に、前記電解重合の際に印加するポテンシャルとは逆のポテンシャルを印加することによって前記対イオンを除去することができる。
【0087】
次に、本発明で用いる原料フラーレンの製造方法を説明する。この原料フラーレンは、例えば図2に示す製造装置によって製造することができる。
【0088】
まず、一対の高純度グラファイト(又は炭素)製の対向電極(グラファイト電極)12及び12’からなるカーボンアーク部を有する真空容器10内に基板13を配し、容器10中のガス(特に空気)18を排気口16から図示省略した真空ポンプで排気した後、不活性ガス(例えばヘリウムなど)17を導入口15から導入して容器10の内圧をほぼ真空状態に調節する。
【0089】
次いで、グラファイト製の高純度カーボン棒の端部を対向させ、電源14から所定の電圧及び電流を印加し、カーボン棒12及び12’の端部をアーク放電状態にし、この状態を所定時間維持する。
【0090】
この間に、カーボン棒12及び12’は気化し、容器10の内壁面に設けられた基板13上にフラーレンを含むスス状の物質が析出する。次いで、容器10の冷却後、スス状の物質が付着した基板13を取り出し、フラーレンを含むスス状の物質を得ることができる。なお、基板13を配さず、容器10の内壁に生成したスス状の物質を回収してもよい。
【0091】
ここで得られる物質は、多くはススとして容器(チャンバー)10の内壁などに付着し、一般に、このススはC60やC70等の種々のフラーレン分子を含んでおり、フラーレンスーツと呼ばれている。このススは、適切な条件下では約10%又はそれ以上の前記フラーレン分子を含むことがある。
【0092】
また、フラーレン分子は、得られたフラーレンスーツからトルエンや二硫化炭素等のπ電子系の溶媒で抽出されるが、この抽出液を蒸発した段階で得られるフラーレンは粗製フラーレンと称されるものであり、C60やC70の他、C76、C78、C80、C82、C84等の高次フラーレンを含むものである。
【0093】
さらに、この粗製フラーレンは、例えばカラムクロマトグラフィーによって、単体のC60やC70として分離精製が可能である。
【0094】
次に、C60分子をモデルとし、上述した電解重合反応が熱力学的に可能かどうか、半経験的レベルの分子軌道計算に基いて説明する。なお、ここで考える対イオンはリチウムイオンとする。
【0095】
リチウム原子のパラメータが設定されているMNDO(半経験的分子軌道法)近似の計算結果によれば、C60、C60-Li 、C120-Li、C120-Li2 に対して以下のような生成熱の値が予測される。計算結果は次の通りである。
C60 : 864.4181kcal/mol
C60-Li : 763.001 kcal/mol
C120-Li :1525.716 kcal/mol
C120-Li2 :1479.057 kcal/mol
【0096】
ここで、C120 は、図31(a)に示したように環状付加したC60の2量体〔1,2−(C60)2 〕であり、図示省略するが、リチウムイオンはC60重合体のクロスリンク構造の2つのフラーレン分子に挟まれた構造(C120-Li又はC120-Li2 )が最も安定である。なお、前記化合物中のリチウムを含む系の計算はすべて非制限ハートリーフォック法により行った。
【0097】
この計算結果から、次の(1)〜(3)に示すような結果が導かれる。
【0098】
(1)C60は、リチウムが配位することにより大きく安定化する。これは、C60の最低空軌道が自由電子に比べて著しく低い位置に存在することによるものである。
(2)(C60)+(C60-Li )=(C120-Li)+Q
の反応熱Qは、−106.3kcal/molと予測され、発熱反応であり、得られるC120-Liは大きく安定化する。
(3)2(C60-Li )=(C120-Li2 )+Q
の反応熱は、−46.945kcal/molと予測され、同じく発熱反応である。
【0099】
これらの計算結果はあくまでも真空中での始状態と終状態とのエネルギー差であり、反応のポテンシャル障壁を求めるものではない。しかしながら、反応に際して立体障害等のエントロピーの寄与が少ない場合には系の自由エネルギーとの良好な関係を持つことから、上記反応は容易に起こることがこの計算結果からも支持される。
【0100】
以上、C60分子についてその生成熱に関するモデル計算を行ったが、次に、図20〜図28を参照してC70分子の場合を考える。
【0101】
C70分子間の重合を理解することは、C60分子の場合より複雑である。ここで便宜的に用いるC70分子の炭素原子のナンバリングを図35に示す。
【0102】
C70の105本のC−C結合は、図35に示すナンバリングシステムを用いるとC(1)−C(2)、C(2)−C(4)、C(4)−C(5)、C(5)−C(6)、C(5)−C(10)、C(9)−C(10)、C(10)−C(11)、C(11)−C(12)で代表される8種類のC−C結合に分類され、このうちC(2)−C(4)、C(5)−C(6)はC60のC=C結合と同程度の二重結合性を有している。
【0103】
更に、この分子のC(9)、C(10)、C(14)、C(15)を含む6員環のπ電子は非極在化し、5員環を形成するC(9)−C(10)結合が二重結合性を帯びると同時に、C(11)−C(12)結合が単結合性となる。
【0104】
次に、C70の重合プロセスを、二重結合性のC(2)−C(4)、C(5)−C(6)、C(9)−C(10)、C(10)−C(11)について考える。C(11)−C(12)結合はほぼ単結合であるが、2つの6員環にわたる結合(6,6−ring fusion )であるので、この結合の付加反応性についても吟味する。
【0105】
まず、C70の〔2+2〕環状付加反応を考える。この5種類のC−C結合〔C(2)−C(4)、C(5)−C(6)、C(9)−C(10)、C(10)−C(11)及びC(11)−C(12)〕の〔2+2〕環状付加反応からは25種類のC70の2量体が得られるが、計算の便宜のために同じC−C結合間の9種の付加反応のみを考える。
【0106】
下記の表1にMNDO/AM−1及びPM−3レベルの2分子のC70からC140 の生成過程の反応熱(ΔHf O (r) )を示す。表中、C140 (a)(図20)と(b)(図21)、C140 (c)(図22)と(d)(図23)、C140 (e)(図24)とC140 (f)(図25)及びC140 (g)(図26)とC140 (h)(図27)はそれぞれC(2)−C(4)、C(5)−C(6)、C(9)−C(10)、C(10)−C(11)結合のanti-syn異性体のペアである。C(11)−C(12)結合間の付加反応ではD2h対称のC140 (i)(図28)のみが得られる。なお、各図中、上図はC140 分子の上面側から見たモデル図であり、下図は側面から見たモデル図である。
【0107】
【0108】
ここで、ΔHf 0(r)AM−1及びΔHf°(r)PM−3とは、J. J. P. Stewartによる半経験的分子起動法であるMNDO法のパラメタリゼーションを用いる場合の反応熱の計算値である。
【0109】
また、クロスリンクのナンバーリングシステムは図35に示し、これはC70のナンバリングに準ずるものである。なお、「’」印は同じナンバリングを有する隣のC70のものである。更に、結合長とは、前述のMNDO/AM−1法に基づく反応熱の計算値から予測された前記クロスリンクを構成するシクロブタン環のC−C原子間の結合距離である。
【0110】
表1から、anti-syn異性体間のエネルギー差は認められない。また、C(2)−C(4)及びC(5)−C(6)結合間の付加反応は、C60の付加反応と同程度に発熱的であり、逆にC(11)−C(12)結合間の付加反応は大きく吸熱的である。
【0111】
ところで、C(1)−C(2)結合は明らかに単結合であるが、この結合間の環状付加反応の反応熱はAM−1及びPM−3レベルでそれぞれ+0.19及び−1.88kcal/molとなり、表1のC140 (g)とC140 (h)の反応熱とほぼ等しい。このことは、C(10)−C(11)結合間の付加反応も熱力学的に起き得ないことを示唆している。従って、C70分子間の付加重合反応はC(2)−C(4)及びC(5)−C(6)結合で優先的に起き、C(9)−C(10)結合間の重合は起きたとしてもその確率は低いものと考えられる。
【0112】
なお、単結合性であるC(11)−C(12)結合間の反応熱がC(1)−C(2)結合間の反応熱より大きく吸熱的になるのは、C140 (i)のシクロブタン構造、とりわけC(11)−C(12)結合の歪みが極めて大きいことによると考えられる。
【0113】
また、このような〔2+2〕環状付加体に際してのクロスリンク結合に隣接するsp2 炭素の2PZ ローブ(電子雲)の重なりの効果を評価するために、C70の2量体、C70−C60重合体及びC70H2 の生成熱の比較を行った。詳細な数値データは割愛するが、この重なりによる効果はC140 (a)〜(h)にわたってほぼ無視できると思われる。
【0114】
上述した計算結果は、あくまでもMNDO近似レベルでの計算結果であるが、この結果からも、本発明によれば、C70分子の環状付加重合体(図20〜図28)からなる球状炭素重合体が容易に生成されることが伺える。
【0115】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0116】
実施例1
まず、図2に説明した装置を用いて、C60分子やC70分子を含む粗製フラーレンを作製した。
【0117】
直径10mm、長さ35cmのグラファイトロッド(カーボン棒)12を正極とし、ヘリウム雰囲気で100Torr下、150アンペアの直流電流によるアーク放電を行った。
【0118】
原料として用いたグラファイトロッドはほとんど気化し、フラーレンを含むスス(フラーレンスーツ)が得られた後、用いた電極の極性を逆にして、本来の負極12’上に堆積したカーボンナノチューブ等の堆積物をさらに気化させてススとした。
【0119】
次いで、水冷された反応室(真空容器)10内に堆積したススを掃除機で回収し、これをトルエンで抽出して粗製フラーレンを得た。さらに、得られた粗製フラーレンをヘキサンで洗浄、乾燥後、真空昇華によって精製した。このようにして得られたフラーレンサンプルの飛行時間型質量分析(以下、TOF−MSと称することがある)の結果、主としてC60及びC70が、C60:C70=約9:1の割合で含まれる混合物を得た。
【0120】
次いで、得られた粗製フラーレンをトルエン−ヘキサン混合溶媒に溶解させ、活性アルミナを充填したカラムで分離抽出を行った。用いたカラムは、長さ200cm、直径5cmである。
【0121】
次いで、分離されたC60及びC70を、それぞれヘキサンで洗浄した後、高真空中において昇華精製した。C60の昇華の際の温度を570℃とし、C70の昇華の際の温度を580℃とした。TOF−MSを用いて純度の確認を行った結果、両サンプルともに、C60に対するC70の存在率、或いは、C70に対するC60の存在率は、それぞれ1%以下であることが確認された。
【0122】
以下、このように分離したサンプルをC60、C70と呼び、粗製フラーレンを昇華しただけのサンプル(C60:C70=約9:1の混合物)をフラーレン混合物と称する。
【0123】
次に、図1に示した装置を用いてフラーレン分子の電解重合を行った。
【0124】
参照電極6として銀電極、電極4及び5として白金電極を用い、また3gのLiClO4 を支持電解質とし、さらにトルエン:アセトニトリル=3:1の混合溶媒500mLを使用して、500mgのC60を溶解し、C60溶解液を調製した。なお、このC60溶解液はC60の飽和した溶液である。
【0125】
まず、この溶液を用いて還元ポテンシャルを測定した結果、図7に示すような酸化還元ポテンシャルカーブを得て、第1イオン化ポテンシャル(約−0.7〜−0.6V)、第2イオン化ポテンシャル(約−1.0〜−0.9V)などのポテンシャルを決定することができた。なお、この時の掃引速度は100mV/sである。
【0126】
また、酸化還元ポテンシャルの同じ領域での繰り返し10サイクルの測定を行った結果を図8に示す。わずかずつではあるが、ポテンシャル曲線に変化が見られ、何らかの反応が進行していることがわかる。
【0127】
次に、室温(25℃)で、第1イオン化ポテンシャルでの低電圧モードで電解を行い、白金電極(負極)上にフラーレン電解重合薄膜を形成した。電解重合を行った後、フーリエ変換赤外スペクトル(FTIR)及び13C核磁気共鳴スペクトルを測定した。FTIRの測定結果を図9に、13C核磁気共鳴スペクトルの測定結果を図11に示す。また、比較として、C60蒸着膜のFTIR測定結果を図10に示した。
【0128】
図9に示したFTIRの測定結果は、図10に示したフラーレン蒸着薄膜のFTIR測定結果と大きく異なり、C60が本来の構造では存在していないことを示した。
【0129】
また、13C核磁気共鳴スペクトルの測定に際しては、Cross-Polarizationの手法を用いることができないことから、単にマジックアングルスピニングのみを用いたマススペクトルの測定とした。但し、炭素核の磁化を磁場に対して90度フリップさせて感度を稼いだものの、自由誘導減衰が数マイクロ秒で収束し、適切な窓関数の設定を行ってフーリエ変換した場合でも比較的ブロードな吸収となったが、図11のスペクトル図に示すように、明らかにC60の本来の吸収周波数10kHzから低波数側でブロードな広がりを持つsp3 炭素に帰属される吸収線(0〜8kHz)が明瞭に観測された。
【0130】
なお、この観測における急速な自由誘導減衰が生じる理由は、リチウムイオンの残存により、C60ポリマー中での不対電子の存在がその大きな磁気的感受率から、炭素核の緩和、とりわけ横緩和に対して大きく影響を与えていると考えられる。
【0131】
また、得られた薄膜を有する白金電極を高純水中に配し、重合過程で印加したポテンシャルとは逆のポテンシャルをかけてリチウムイオンの除去を試みたが、結果をほとんど変わらなかった。従って、このような薄膜中に存在するリチウムイオン等の対イオンとC60ポリマーとの分極構造は容易に取り除けないことが分かった。
【0132】
次に、窒素レーザ励起の飛行時間型質量分析計を用いてフラーレン電解重合薄膜の質量分析を行った。その結果を図12に示す。
【0133】
これまでの検討から、図3に示したような重合体〔1,2−(C60)2 〕をレーザ励起のアブレーションやイオン化等を行うことはできないことが分かっている。従って、正確に重合構造を反映した質量分析が可能かどうかは問題があるが、図12に示すように、少なくともC60のシーケンシャルピークが観測されているという事実から、C60分子はその構造を残したまま、前述したような構造で3次元的に重合しているものと考えられる。
【0134】
なお、図12においては、窒素レーザ励起の飛行時間型質量分析計を用いて質量分析をするに際し、レーザパワーを、このレーザによるC60の重合が起きない程度まで抑えていることから、フラーレン重合体のピーク(質量数m/z=1440付近)は極めて弱い存在率として得られている。このことは、C60が電解重合膜中で本来の骨格を保存していることを示している。
【0135】
また、図13に示したフラーレン蒸着薄膜のラマンシフトと図14に示した電解重合膜のラマンシフトとを比較すると、本実施例ではフラーレンのケージ構造がC60そのままでは存在していないことが伺える。
【0136】
なお、得られた薄膜のX線回折を測定したが、薄膜中での周期的構造の存在は確認されなかった。これは、フラーレン分子の重合体構造が得られているためであると考えられる。
【0137】
また、図示省略するが、得られた電解重合薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)写真から、完全に鏡面化した薄膜が得られていることがわかった。なお、このように鏡面化した薄膜は、安定性に優れた薄膜であり、経時劣化が少なく、耐候性に優れた薄膜である。
【0138】
次に、得られた電解重合薄膜の導電性、バンドギャップの決定を行った。まず、導電性及びバンドギャップの決定に用いた手法を説明する。
【0139】
電解重合の際の電極上に形成されたC60電解重合薄膜を、純水中で十分に洗浄し、真空中で十分に乾燥させた。次いで、図6に示したように電極を形成した。即ち、タングステンフィラメントによる金蒸着装置を用い、白金電極23上に形成されたフラーレン電解重合薄膜22上に金電極21を形成した。
【0140】
このように電解重合薄膜22をサンドイッチ状に構成したものをパラメータアナライザのチャック24上に置き、電極基板としての白金電極23をチャック24に接触させた。
【0141】
次いで、図示省略したパラメータアナライザの端子の1つをチャック24に直結し、パラメータアナライザの他方の端子をポジショナー探針20に接続し、ポジショナー探針(測定チップ)20を金電極21に接着させた。チャック24側を一定値(0V)とし、ポジショナー探針20側から±5Vの電圧を振り、電流値の測定を行った。
【0142】
また、チャック24の内側に設置されている図示省略したペリチェ素子により、−60℃から+150℃までの温度範囲で電流−電圧特性を観測し、アレニウスの式に従って電気伝導度及びバンドギャップを測定した。
【0143】
なお、このような測定は全てチャック24周りを乾燥高純度窒素ガス雰囲気として行った。また、金電極21及び白金電極23とフラーレン電解重合薄膜22との接合はオーム接触(オーミック)である。
【0144】
以下、電気的な測定データはこのような方法により決められたものである。なお、膜厚は接触型膜厚計で測定し、常磁性スピン数は電子スピン共鳴法で測定した値である。
【0145】
なお、本実施例では、5cm×5cmの面積サイズの電解重合薄膜が得られた。また、得られた電解重合薄膜の重量は50mgであり、原料フラーレン(500mg)から電解重合薄膜への収率は10%程度であった。
【0146】
下記の値は、本実施例で得られたフラーレン電解重合薄膜の物性値である。
膜厚(接触膜厚計):30nm
電気伝導度 :1.1×10-6S/cm
バンドギャップ :1.9eV
常磁性スピン数 :2.5×1018spins/g
【0147】
従って、本実施例では、電気伝導性に優れると同時に、優れた半導体的性質を有するフラーレン薄膜を得ることができた。
【0148】
実施例2
実施例1で得られた電解重合薄膜を純水中に設置し、電解重合の際に印加したポテンシャルとは逆のポテンシャルをかけてリチウムイオンを除くことを試みた。その後、実施例1と同様に金電極を作製し(図6)、実施例1と同様の測定を行った。この測定結果を次に示す。
膜厚(接触膜厚計):33nm
電気伝導度 :1.0×10-6S/cm
バンドギャップ :1.9eV
常磁性スピン数 :1.8×1018spins/g
【0149】
従って、実施例1に比べて常磁性スピン数の減少割合が少なく、このような条件では、十分にリチウムイオンを取り除くことはできていない。
【0150】
実施例3
実施例1で得られた電解重合薄膜を純水中に設置し、電解重合の際に印加したポテンシャルとは逆のポテンシャルをかけ、さらにこの溶液を加熱沸騰させてリチウムイオンを除くことを試みた。その後、実施例1と同様に金電極を作製し(図6)、実施例1と同様の測定を行った。測定結果を次に示す。
膜厚(接触膜厚計):33nm
電気伝導度 :0.4×10-6S/cm
バンドギャップ :2.0eV
常磁性スピン数 :0.5×1018spins/g
【0151】
従って、実施例1に比べて常磁性スピン数の減少割合が比較的大きく、電解重合の際に印加したポテンシャルとは逆のポテンシャルをかけ、さらに加熱沸騰させることによって、かなり有効にリチウムイオンを取り除くことができるものと考えられる。
【0152】
実施例4
実施例1における支持電解質としてのLiClO4 の代わりにtert−ブチルアンモニウムパークロレート塩を用い、この際の溶媒としてトルエンとアセトニトリルとの混合比をトルエン:アセトニトリル=6:1とした以外は、実施例1と同様にして、酸化還元ポテンシャルの測定及びそのサイクル特性の測定、さらに、透過型電子顕微鏡による薄膜評価を行い、さらに、その物性値(膜厚、電気伝導度、バンドギャップ及び常磁性スピン数)の測定を行った。
【0153】
図15は、単位秒当たり10mVの掃引速度で掃引した場合の酸化還元ポテンシャルを示し、図16は、単位秒当たり50mVの掃引速度で掃引した場合の酸化還元ポテンシャルを示し、図17は、単位秒当たり100mVの掃引速度で掃引した場合の酸化還元ポテンシャルを示すものである。
【0154】
図15〜図17より、掃引速度にほとんど関係なく、明瞭な還元ピークが観測された。
【0155】
次に、図18に5サイクルの掃引結果を示す。なお、掃引速度は100mV/sである。図18より、わずかずつではあるが、酸化還元ポテンシャルカーブがずれていることから、明らかに何らかの反応が起きていることが示唆された。
【0156】
次に、図19に、得られた電解重合薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。すなわち、得られた電解重合薄膜は完全な鏡面状態とはなっておらず、サブミクロンサイズの粒子状の集合体が観測される。
【0157】
また、次に、得られた薄膜の物性値を示す。
膜厚(接触膜厚計):233nm
電気伝導度 :1.5×10-6S/cm
バンドギャップ :2.0eV
常磁性スピン数 :0.2×1018spins/g
【0158】
実施例5
支持電解質として、テトラブチルアンモニウムパークロライド、リチウムテトラフルオロボラート(LiBF4 )、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6 )、過酸化ナトリウム(NaClO4 )、LiCF3 SO3 、リチウムヘキサフルオロアーセナイト(LiAsF6 )をそれぞれ用いて、実施例1と同様の測定を行った。得られた重合体は電解重合溶液中ですべて沈殿し、白金電極状での薄膜の形成は確認されなかったが、アモルファスな重合体の形成を確認した。なお、この重合体はLi塩となっていた。
【0159】
実施例6
実施例1と同様の系で、C70の電解重合薄膜の形成を行った。
【0160】
白金電極上に得られた電解重合薄膜は、C60のそれに比べると鏡面性はやや低いものの、良好な重合薄膜の形成が見られた。得られた薄膜の物性値は次の通りである。
膜厚(接触膜厚計):27nm
電気伝導度 :1.8×10-6S/cm
バンドギャップ :1.9eV
常磁性スピン数 :2.2×1018spins/g
【0161】
実施例7
電解重合の際の温度を50℃とした以外は、実施例1と同様にして電解重合薄膜の形成を試みた。なお、溶媒の沸点等の関係から、これ以上の温度では支持電解質は危険なことがある。
【0162】
薄膜の形成は短時間で進行し、沈殿物が生じると共に薄膜が得られた。この沈澱物は、アモルファスな重合体であって、Li塩を形成していた。
【0163】
実施例8
電解重合の際の温度を60℃とした以外は、実施例5と同様にして、種々の支持電解質を用いて電解重合薄膜の形成を試みた。実施例5の常温(25℃)の場合と同様に、得られた重合体は電解重合溶液中ですべて沈殿し、白金電極状での薄膜の形成は確認されなかった。
【0164】
比較例1
実施例1で得られるC60及びC70の混合フラーレンを原料として蒸着薄膜を作製し、その物性値に関して実施例1と同様の評価を行った。以下、その測定結果を示す。
膜厚(接触膜厚計):33nm
電気伝導度 :1.1×10-13 S/cm
バンドギャップ :1.6eV
常磁性スピン数 :9.6×1016spins/g
【0165】
すなわち、電気伝導度が大きくなり、常磁性スピン数が少なくなっているが、これは、リチウムイオンが存在せず、なおかつ酸素分子又は酸素原子が蒸着薄膜中に拡散、侵入したことによるものと考えられる。なお、下記比較例2及び3も同様のことが言える。
【0166】
比較例2
実施例1で得られるC60を原料として蒸着薄膜を形成し、その物性値に関して実施例1と同様の評価を行った。以下、その測定結果を示す。
膜厚(接触膜厚計):45nm
電気伝導度 :0.4×10-13 S/cm
バンドギャップ :1.6eV
常磁性スピン数 :8.5×1016spins/g
【0167】
比較例3
実施例1で得られるC70を原料として蒸着薄膜を形成し、その物性値に関して実施例1と同様の評価を行った。以下、その測定結果を示す。
膜厚(接触膜厚計):28nm
電気伝導度 :0.04×10-13 S/cm
バンドギャップ :1.7eV
常磁性スピン数 :6.3×1016spins/g
【0168】
【発明の作用効果】
本発明の製造方法によれば、非水溶媒中に、Cn (但し、nは幾何学的に球状化合物を形成し得る整数である。)で表されるフラーレン分子を溶解し、これを電解重合して前記フラーレン分子の環状付加重合体からなる球状炭素重合体を得るので、液相での電解重合反応による環状付加重合体からなる球状炭素重合体の形成が可能であり、簡便に、かつ効率良く電気伝導性等の電子物性に優れた球状炭素重合体を形成することができる。
【0169】
特に、前記球状炭素重合体からなる薄膜を形成することも可能であり、この薄膜は、電気伝導性に優れ、経時劣化も少なく、耐候性にも優れた炭素薄膜となり得る。
【0170】
また、本発明の電解質溶液は、非水溶媒中に、Cn (但し、nは前記と同様である。)で表されるフラーレン分子を溶解し、これを電解重合して前記フラーレン分子の環状付加重合体からなる球状炭素重合体を得るに際して用いられ、前記フラーレン分子と、支持電解質と、前記フラーレン分子を溶解する第1溶媒と前記支持電解質を溶解する第2溶媒との混合溶媒からなる非水溶媒を主成分とする電解質溶液であるので、フラーレン分子と支持電解質との両者を溶解し、電気分解及び重合反応を可能とする電解質溶液を構成する。
【0171】
さらに、本発明の球状炭素重合体は、Cn (但し、nは前記と同様である。)で表されるフラーレン分子を電解重合して得られ、支持電解質から供された対イオンを含む環状付加重合体からなる球状炭素重合体であって、特に、電気伝導性に優れ、経時的な劣化も少なく、耐候性にも優れた炭素薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法に使用可能な電解重合装置の一例の要部概略図である。
【図2】同、原料フラーレンの製造装置の一例の概略断面図である。
【図3】本発明の球状炭素重合体の部分構造の一例としてC60分子の2量体構造〔1,2−(C60)2 〕を示す図である。
【図4】同、球状炭素重合体の他の部分構造の一例としてC60分子の3量体構造(C180 )を示す図である。
【図5】同、球状炭素重合体の他の部分構造の一例としてC60分子の4量体構造(C240 )を示す図である。
【図6】本実施例で用いた薄膜の電子物性測定装置の概略断面図である。
【図7】実施例1で得られた酸化還元ポテンシャルカーブである。
【図8】同、酸化還元ポテンシャルのサイクル特性である。
【図9】同、電解重合薄膜の赤外スペクトル(FRIR)である。
【図10】フラーレン蒸着膜の赤外スペクトル(FRIR)である。
【図11】実施例1で得られた電解重合薄膜の13C核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)である。
【図12】同、電解重合薄膜の飛行時間型質量分析計(TOF−MS)による質量分析結果である。
【図13】フラーレン蒸着膜のラマンシフトである。
【図14】実施例1で得られた電解重合薄膜のラマンシフトである。
【図15】実施例4で得られた酸化還元ポテンシャル(掃引速度10mV/s)である。
【図16】同、酸化還元ポテンシャル(掃引速度50mV/s)である。
【図17】同、酸化還元ポテンシャル(掃引速度100mV/s)である。
【図18】同、酸化還元ポテンシャルのサイクル特性である。
【図19】同、電解重合薄膜の透過型電子顕微鏡写真(TEM)である。
【図20】本発明の球状炭素重合体の部分構造の一例としてC70の2量体〔C140 (a)〕を示す図である。
【図21】同、球状炭素重合体の部分構造の他の一例としてC70の2量体〔C140 (b)〕を示す図である。
【図22】同、球状炭素重合体の部分構造の他の一例としてC70の2量体〔C140 (c)〕を示す図である。
【図23】同、球状炭素重合体の部分構造の他の一例としてC70の2量体〔C140 (d)〕を示す図である。
【図24】同、球状炭素重合体の部分構造の他の一例としてC70の2量体〔C140 (e)〕を示す図である。
【図25】同、球状炭素重合体の部分構造の他の一例としてC70の2量体〔C140 (f)〕を示す図である。
【図26】同、球状炭素重合体の部分構造の他の一例としてC70の2量体〔C140 (g)〕を示す図である。
【図27】同、球状炭素重合体の部分構造の他の一例としてC70の2量体〔C140 (h)〕を示す図である。
【図28】同、球状炭素重合体の部分構造の他の一例としてC70の2量体〔C140 (i):D2h対称〕を示す図である。
【図29】C60分子の分子構造を示す図である。
【図30】C70分子の分子構造を示す図である。
【図31】 [2+2] 環状付加反応による1,2−(C60)2 の分子構造(a)、D2h対称のC116 の分子構造(b)である。
【図32】1,2−(C60)2 の構造緩和過程と生じると考えられるC120 (b)の分子構造である。
【図33】同、構造緩和過程と生じると考えられるC120 (c)の分子構造である。
【図34】同、構造緩和過程と生じると考えられるC120 (d)の分子構造である。
【図35】C70分子のナンバリングシステムを説明するための図である。
【符号の説明】
1…電解セル、2…溶媒、3…マグネチックスターラー、
4、5…電極、6…参照電極、7…ガス導入管、8…不活性ガス、
9…ポテンショスタット、10…真空容器、
12、12’…グラファイト電極(対向電極)、13…基板、
14…電源、15…ガス導入口、16…ガス排出口、
17、18…ガス、20…ポジショナー探針、21…金電極、
22…フラーレン電解重合薄膜、23…電極、24…チャック[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to a method for producing a spherical carbon polymer by electrolytic polymerization of fullerene molecules, an electrolyte solution used for the production, and a spherical carbon polymer.
[0002]
[Prior art]
Fullerene is C60[See FIGS. 29 (A) and 29 (B)] and C70[See FIGS. 30 (A) and 30 (B)] is a generic name for spherical carbon molecules, etc., and was discovered in a mass spectrometry spectrum of a cluster beam by laser ablation of carbon in 1985 (Kroto, HW; Heath, JR; O'Brien, SC; Curl, RF; Smalley, RE Nature 1985, 318, 162.).
[0003]
It was not until 1990 that the existence of fullerene, a spherical carbon compound, was clarified as the third crystalline carbon after diamond and graphite, and a macroscopic synthesis method was established (Kratschmer, W .; Fostiropoulos Huffman, DR Chem. Phys. Lett. 1990, 170, 167. and Kratschmer, W .; Lamb, LD; Fostiropoulos, K .; Huffman, DR Nature 1990, 347, 354.).
[0004]
Fullerene by carbon arc discharge method in 1990 (C60Since the discovery of the production method, fullerene has attracted attention as a carbon-based semiconductor material. Since fullerene molecules can be easily vaporized under vacuum or reduced pressure, the fullerene molecules are easy to form a deposited thin film.
[0005]
Fullerene is a series of spherical carbon compounds consisting only of carbon, and C is composed of 60 carbons.60And so-called Higher Fullerenes consisting of an even number of carbons, and includes 12 5-membered rings and 20 or more 6-membered rings. That is, 60, 70, 76, 78, 80, 82, 84, etc. (the number of carbon atoms is selected from a number that can form a spherical structure geometrically) is spherical. Spherical carbon C that forms a cluster (molecular assembly) by bonding tonAnd C respectively60, C70, C76, C78, C80, C82, C84And so on.
[0006]
For example C60Has a polyhedral structure called “truncated icosahedron” in which all the vertices of the regular icosahedron are cut off to form a regular pentagon, and as shown in FIG. 29, all the 60 vertices of this polyhedron are carbon atoms This is a cluster substituted with C and has an official soccer ball type molecular structure. Similarly, C shown in FIG.70And C76, C84Have a rugby ball type molecular structure.
[0007]
Such fullerenes have been studied for various uses, such as C60Since it has been confirmed that a substance in which fullerene is doped with an alkali metal exhibits superconductivity, its application as an electronic material has been actively studied.
[0008]
However, the most obtainable C60Or C70In the case of fullerene molecules such as, since the dipole moment in the molecule is zero, only Van der Waals force acts on the bond between molecules, and the deposited thin film obtained by vacuum deposition or the like is fragile. In making a thin film electronic device using fullerene, such vulnerability is a problem for the stability of the device.
[0009]
In addition, fullerene thin films by vapor deposition (fullerene vapor-deposited thin film: hereinafter the same) have paramagnetic centers in the thin film due to the diffusion and entry of oxygen molecules between fullerene molecules, which is problematic in terms of stability. there were.
[0010]
As a method for coping with the weakness of such a fullerene vapor-deposited thin film, in recent years, a so-called fullerene polymer thin film (fullerene polymerized thin film) production method for polymerizing fullerene molecules has been proposed.
[0011]
First, as a method for producing a fullerene polymer such as a dimer or trimer of a fullerene molecule, a method for producing a fullerene polymer by light induction is known [(a) Rao, AM; Zhou, P .; Wang, KA; Hager, GT; Holden, JM; Wang, Y .; Lee, WT; Bi, XX; Eklund, PC; Cornett, DS; Duncan, MA; Amster, IJ Science 1993, 256, 955. (b) Cornett, DC; Amster, IJ; Duncan, MA; Rao, AM; Eklund, PCJPhys. Chem. 1993, 97, 5036. (c) Li, J .; Ozawa, M .; Kino, N .; Yoshizawa, T .; Mituki, T .; Horiuchi, H .; Tachikawa, O .; Kishino, K .; Kitazawa, K. Chem. Phys. Lett. 1994, 227, 572.].
[0012]
However, in this method, light irradiation is performed on a fullerene vapor-deposited thin film prepared in advance to polymerize fullerene molecules. When fullerene molecules are polymerized, volume shrinkage of the fullerene vapor-deposited thin film occurs. Cracks and the like occurred, and there were problems in terms of strength and surface properties. Accordingly, it has been extremely difficult to produce a thin film having a uniform surface and excellent surface properties over a large area by the method for producing a photoinduced fullerene polymer thin film.
[0013]
Furthermore, it is known that fullerene polymers can be produced by applying pressure and heat to collide with fullerene molecules. However, the production of fullerene polymers is limited, and a fullerene polymer thin film (ie fullerene polymer thin film) Is difficult to form [1. Molecular collision method (a) Yeretzian, C .; Hansen, K .; Diederich, F .; Whetten, RL Nature 1992, 359, 44. (b) Whetten, RL; Yeretzian, C. Int. J. Mod. Phys, 1992, B6, 3801 (c) Hansen, K .; Yeretzian, C .; Whetten, RL Chem. Phys. Lett. 1994, 218, 462 (d) Seifelt, G .; Schmidt, R .; Int. J. Mod. Phys 1992, B6, 384.5.2. Ion beam method (a) Seraphin, S .; Zhou, D .; Jiao, JJ Mater. Res. 1993, 8, 1995. (b) Gaber, H .; Busmann, HG; Hiss, R .; Hertel, IV; Romberg, H .; Fink, J .; Bruder, F .; Brenn, RJPhys. Chem, 1993, 97, 8244.3. Pressure Method (a) Duclos, SJ; Brister, K .; Haddon, RC; Kortan, AR; Thiel, FA Nature 1991, 351, 380. (b) Snoke, DW; Raptis, YS; Syassen, K. 1 Phys. Rev. 1992, B45, 14419. (c) Yamazaki, H .; Yoshida, M .; Kakudate, Y .; Usuda, S .; Yokoi, H .; Fujiwara, S .; Aoki, K .; Ruoff, R .; Malhotra Lorents, DJJPhys. Chem. 1993, 97, 11161. (d) Rao, CNR; Govindaraj, A .; Aiyer, HN; Seshadri, RJPhys. Chem. 1995, 99, 16814.).
[0014]
Powdered C60By mixing the molecules with KCN while vibrating, C in a yield of about 18%.60[2 + 2] adducts of molecules (C120Molecule) is known (Guan-Wu Wang, Koichi Komatsu, Yasujiro Murata, Motoo Shiro, Nature, 5 June 1997, pages 583-586).
[0015]
However, this method does not provide C in the product.120Ratio, that is, the purity is as low as about 20%, and a toxic CN compound is used as a catalyst, and it is a reaction in a solid phase (in powder form), and is a thin film composed of a fullerene cycloadduct. Formation is difficult, and the amount and area of generation are insufficient, and only dimers can be formed even if they are generated.
[0016]
[Problems to be solved by the invention]
Thus, in order to deal with fullerene polymerization methods such as vacuum deposition, photopolymerization, and molecular collision methods, or production methods of fullerene thin films, the present inventor has developed fullerene polymerization thin films by plasma polymerization using microwaves. Proposes a manufacturing method. The fullerene polymer thin film obtained by this method is a fullerene polymer thin film polymerized through the electronically excited state of fullerene molecules (Takahashi, N .; Dock, H .; Matsuzawa, N .; Ata, M .; J. Appl Phys. 1993, 74, 5790).
[0017]
The microwave-induced fullerene polymer thin film thus obtained is a thin film that has a remarkably increased strength, is dense, and is flexible as compared with a fullerene vapor-deposited thin film.
[0018]
That is, in fullerene vapor-deposited thin films, molecules such as oxygen and water diffuse and invade into the gaps between fullerene molecules, greatly affecting the electronic properties of the thin film. Since the electronic properties hardly change between the inside and the inside, it is considered that diffusion and penetration of molecules such as oxygen into the thin film is effectively suppressed by the denseness of the thin film.
[0019]
Actually, when the time-of-flight mass spectrometry by the laser ablation method of the fullerene polymer thin film obtained by such a method was performed, it was found that a fullerene multimer was formed. Moreover, it is thought that the electronic physical property of a fullerene polymerization thin film largely depends on the polymerization form. In fact, the mass spectrometric result obtained from such a thin film is60Very similar to the results of mass spectrometry of molecular argon plasma polymerized thin films (Ata, M .; Takahashi, N .; Nojima, KJPhys. Chem. 1994, 98, 9960. and Ata, M .; Kurihara, K, ; See Takahashi, NJPhys. Chem. 1995, 101, 5.).
[0020]
In estimating the microstructure of the fullerene polymer thin film thus obtained, pulsed laser excitation time-of-flight mass spectrometry, so-called TOF-MS is useful.
[0021]
In general, the matrix assist method is used for non-destructive measurement of high molecular weight polymers. However, it is difficult to directly evaluate the actual molecular weight distribution of the polymer because there is no solvent for dissolving the fullerene polymer.
[0022]
In addition, mass evaluation by laser desorption ionization time-of-flight mass spectrometry (LDIOF-MS) also shows that there is no suitable solvent.60It is difficult to accurately evaluate the actual mass distribution due to the fact that it cannot be performed by the matrix assist method due to the reaction between molecules and matrix molecules.
[0023]
However, with regard to the polymer structure, C60Can be obtained from the peak positions of LITOF-MS multimers and dimer profiles observed by laser power ablation to the extent that no polymerization occurs. For example, C obtained with plasma power 50W60According to LITOF-MS of the polymerized film, C60Intermolecular polymerization showed that the process with the loss of 4 carbons was the most stochastic.
[0024]
That is, in the mass region of the dimer, C shown in FIG.120Etc. are minor products, and the one with the highest probability is C116It is. Semi-empirical C120Based on the calculation of the dimer of116Is D as shown in FIG.2hSymmetric C116It is thought that.
[0025]
This C116Is C58Is obtained by recombination of C60From high electronically excited states including the ionized state of C2Is released by desorption of C58[(A) Fieber-Erdmann, M. et al, Z. Phys. D 1993, 26, 308. (b) Petrie, S. et al, Nature 1993, 356, 426. (c) Eckhoff, WC; see Scuseria, GE, Chem. Phys. Lett. 1993, 216, 399.].
[0026]
This open shell C58If two molecules are bonded before the transition to an adjacent structure of two five-membered rings, the C shown in FIG.116Is obtained.
[0027]
However, the inventor60The initial process of plasma polymerization is considered to be a [2 + 2] cycloaddition reaction by an excited triplet mechanism. Also, C generated with the highest probability116Is C60Produced by the [2 + 2] cycloaddition reaction from the electronically excited triplet state of60)24 sps forming the cyclobutane ring ofThreeCarbon atom desorption and two C58This is thought to be due to recombination of open shell molecules.
[0028]
For example, C on an ionization target of TOF-MS (time-of-flight mass spectrometry: hereinafter the same)60When the microcrystal is irradiated with a strong pulsed laser beam, polymerization through the electronically excited state of fullerene occurs as in the case of the above-described polymerization induced by microwaves.60C with photopolymer peak58, C56Etc. are also observed. But C58 2+Or C2 +Since no fragment ions such as the above are observed, C as described in the above Fieber-Erdmann et al.60 3+Directly from C58 2+And C2 +Fragmentation to is not considered in this case.
[0029]
C2FFourC in gas plasma60When the film is vaporized, the LDIOF-MS has C60F or C2FFourOnly the adduct of Fragmet ion is observed and C60No polymer is observed.
[0030]
C60In LDIOF-MS where no polymer is observed, C58, C56Such ions are not observed. These observations are also2Loss is C60Supports what happens after going through the polymer.
[0031]
As described above, in the process of producing a fullerene polymer by the microwave-excited plasma polymerization method, C2Unit loss is observed, but C during polymer formation2Loss of 1,2- (C due to [2 + 2] cycloaddition reaction60)2Whether or not it occurs directly from [FIG. 31 (a)] is a problem. Where Murry et al. 1,2- (C60)2[(A) Murry, RL et al, Nature 1993, 366, 665. (b) Stout, DL et al, Chem. Phys. Lett. 1993, 214, 576. Osawa, See E.].
[0032]
That is, according to Murry et al., 1,2- (C60)2The initial process of structural relaxation of C is shown in FIG. 32 where the most strained 1,2-C—C bond in the cross-link site is cleaved.120Through the structure of (b), the Stone-Wales transition [Stone, AJ; Wales, DJ Chem. Phys. Lett. 1986, 128, 501. (b) Saito, R. Chem. Phys. Lett. 1992, 195, 537 C with ladder-type cross links120(C) (see FIG. 33) to C120It is assumed that (d) is generated (see FIG. 34). 1,2- (C60)2[Fig. 31 (a)] to C120(B) Although it becomes energetically unstable to (FIG. 32), C120(C) (FIG. 33) to C120(D) It stabilizes again as it changes to (FIG. 34).
[0033]
Thus, in the production process of the fullerene polymer by the microwave excitation plasma polymerization method, 1,2- (C by the [2 + 2] cycloaddition reaction shown in FIG.60)2Is shown in FIG. 31 (b) by the structure relaxation process.2hSymmetric C116It is thought that the structure changes rapidly.
[0034]
As described above, in the process of forming a polymer thin film by a gas phase reaction of fullerene molecules, it is difficult to selectively obtain a polymer structure by a [2 + 2] cycloaddition reaction [[2 + 2] Cycloaddition]. In the solid phase reaction of fullerene molecules, it is difficult to obtain a fullerene cycloaddition polymer or a thin film made of a cycloaddition polymer with good productivity.
[0035]
The present invention has been made in view of the above-described circumstances, and an object of the present invention is to provide an electricity composed of a cycloaddition polymer of fullerene molecules (particularly, a [2 + 2] cycloaddition polymer) by electrolytic polymerization in a liquid phase. An object of the present invention is to provide a method for producing a spherical carbon polymer excellent in electronic properties such as conductivity, an electrolyte solution used for carrying out the production method, and a spherical carbon polymer.
[0036]
[Means for Solving the Problems]
As a result of intensive studies to solve the above-mentioned problems, the present inventor can obtain a spherical carbon polymer excellent in electronic physical properties composed of a cycloaddition polymer of fullerene molecules by electrolytic polymerization in a specific solution. I found out.
[0037]
That is, the present invention relates to C in a non-aqueous solvent.n(Where n is an integer that can geometrically form a spherical compound.) A fullerene molecule represented by the following formula is dissolved, and this is electropolymerized to form a spherical addition polymer of the fullerene molecule. A method for producing a spherical carbon polymer (hereinafter referred to as the production method of the present invention) is provided.
[0038]
Further, the present invention provides an electrolyte solution used for carrying out the production method of the present invention in a non-aqueous solvent, Cn(Where n is an integer that can geometrically form a spherical compound.) A fullerene molecule represented by the following formula is dissolved, and this is electropolymerized to form a spherical addition polymer of the fullerene molecule. An electrolyte comprising, as a main component, a fullerene molecule, a supporting electrolyte, and a nonaqueous solvent composed of a mixed solvent of a first solvent that dissolves the fullerene molecule and a second solvent that dissolves the supporting electrolyte A solution (hereinafter referred to as the electrolyte solution of the present invention) is also provided.
[0039]
Furthermore, the present invention provides Cn(Where n is an integer capable of forming a spherical compound geometrically) and is obtained by electropolymerizing a fullerene molecule represented by a cyclic addition polymer containing a counter ion provided from a supporting electrolyte. A spherical carbon polymer (hereinafter referred to as the spherical carbon polymer of the present invention) is provided.
[0040]
The electrolytic polymerization referred to in the present invention means that the fullerene molecules are cyclically attached by dissolving the fullerene molecules in a non-aqueous solvent in advance and applying electric energy to the solution (that is, electrolysis or electrolysis). A spherical carbon polymer composed of a polymer is obtained.
[0041]
The cycloaddition polymer is a polymer obtained by addition polymerization of mutually different or identical fullerene molecules via, for example, a cyclobutane ring by a 1,2-cycle bond added to the cyclohexatrienyl moiety. Includes dimers or higher polymers.
[0042]
In addition, according to the production method of the present invention, fullerene electropolymerization by electrolysis in an electrolyte solution (non-aqueous solvent), in particular, by appropriately selecting the temperature during electropolymerization and further selecting the type of supporting electrolyte A thin film can be produced, and a uniform and large-area fullerene electrolytic polymerization thin film can be formed with a simple production apparatus. In addition, the fullerene electropolymerized thin film obtained can be a thin film having excellent electrical conductivity, less deterioration over time, and excellent weather resistance than the above-described fullerene vapor-deposited thin film.
[0043]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
In the present invention, as the cycloaddition polymer, a plurality of the fullerene molecules are polymerized with each other by 1,2-cycle bonds added to the cyclohexatrienyl moiety (Cn)m[However, n is the same as described above, and m is an arbitrary natural number. ] Can be obtained.
[0044]
That is, for example, as shown in FIG.60By a 1,2-cycle bond added to the cyclohexatrienyl site at
[0045]
Incidentally, the spherical carbon polymer shown in FIG.60As shown in FIG.60The trimer of C, as shown in FIG.60These tetramers can also be obtained by the production method of the present invention, and further, a multimer obtained by addition polymerization of these spherical carbon polymers can be obtained planarly or sterically. Furthermore, C as shown in FIGS.70It is also possible to obtain a dimer in which molecules are cycloadded or a multimer higher than that.
[0046]
In the present invention, the fullerene molecule is C.60And / or C70Fullerene molecules consisting of can be used.
[0047]
That is, in the present invention, as the fullerene molecule as a raw material, C shown in FIG.60Numerator and C shown in FIG.70Molecules and even mixtures thereof can be used. C70When using molecules, C60Like molecules, dimers or higher multimers can be formed, and when the mixture is used, C60Molecule and C70Multimers with molecules are formed.
[0048]
In general, fullerene molecules extracted from soot obtained by arc discharge of a carbon electrode with an organic solvent such as toluene, benzene, carbon disulfide are C60Or C70Besides, C76, C78, C80, C82, C84And so-called higher-order fullerene molecules. In the present invention, C76, C78, C80, C82, C84It is also possible to use higher-order fullerene molecules such as
[0049]
In the present invention, it is preferable that the nonaqueous solvent contains a supporting electrolyte.
[0050]
Examples of the supporting electrolyte include tetrabutylammonium perchlorate, lithium tetrafluoroborate (LiBF).Four), Lithium hexafluorophosphate (LiPF)6), Sodium peroxide (NaClO)Four), LiCFThreeSOThreeLithium hexafluoroarsenite (LiAsF6However, when these supporting electrolytes are used, the obtained spherical carbon polymer is often a precipitate in the electrolyte solution.
[0051]
In contrast, for example, lithium perchlorate (LiClOFour) Or tert-butylammonium perchlorate salt, depending on the temperature during the electropolymerization reaction, a spherical carbon polymer (hereinafter sometimes referred to as an electropolymerized thin film) as a thin film on the electrode for electrolysis. You can also get
[0052]
In the present invention, a mixed solvent of a first solvent that dissolves the fullerene molecules and a second solvent that dissolves the supporting electrolyte may be used as the non-aqueous solvent (that is, the electrolyte solution of the present invention). desirable. The mixing ratio of the first solvent and the second solvent is preferably 1st solvent: 2nd solvent = 1: 10 to 10: 1 (volume ratio).
[0053]
As the first solvent, a low-polarity solvent having a π-electron system is preferably used. For example, at least one solvent selected from the group consisting of carbon disulfide, toluene, benzene, and orthodichlorobenzene, etc. Is mentioned.
[0054]
Further, as the second solvent, it is preferable to use a solvent having a high polarity and a large dielectric constant. For example, at least one solvent selected from the group consisting of acetonitrile, dimethylformamide, dimethylsulfoxide, and dimethylacetamide, etc. Is mentioned. Of these, acetonitrile is particularly preferable.
[0055]
That is, according to the present invention, using the above-described solvent and supporting electrolyte, the fullerene molecule as a raw material is dissolved in a non-aqueous solvent, and further, the supporting electrolyte for causing electrolysis to easily occur in this solvent coexists. By applying electric energy (potential), it is possible to form a cycloaddition polymer of fullerene molecules, and further an electropolymerized thin film.
[0056]
Here, in general, fullerene molecules are carbon disulfide (CS).2), Soluble only in a low-polarity solvent having a π-electron system such as toluene, benzene, or orthodichlorobenzene, and even the solubility in an aliphatic solvent such as n-hexane is extremely low. Of course, it does not dissolve in a polar solvent, and this is the biggest problem when performing electropolymerization of fullerene molecules.
[0057]
This is because the supporting electrolyte usually used in electrolytic polymerization is soluble only in a polar solvent such as water.
[0058]
Therefore, in order to perform the electropolymerization of fullerene molecules, it is necessary to select a solvent system that dissolves both the fullerene molecules and the supporting electrolyte, but there is no single solvent that satisfies such requirements. In order to satisfy this requirement, a mixed solvent of a solvent that dissolves the fullerene molecule and a solvent that dissolves the supporting electrolyte is used. However, if only such a solvent is used, the fullerene molecule and / or the supporting electrolyte are used. Often the solubility is not sufficient.
[0059]
In general, an aqueous solvent has a large dielectric constant and is an excellent solvent for dissolving the supporting electrolyte, which is a salt, but water is a carbon disulfide, toluene, benzene, orthodioxide capable of dissolving fullerene molecules. It does not dissolve in solvents with low polarity having a π electron system such as chlorobenzene.
[0060]
Therefore, it is necessary to select an organic solvent having a high polarity and a high dielectric constant as the second solvent used when preparing the mixed solvent. Examples of the solvent satisfying such conditions include the above-mentioned solvents. The most suitable solvent is acetanilyl, and the solvent made of acetanilyl is used to remove organic radicals using a supporting electrolyte in an electrolytic vessel (electrolysis cell). It is a solvent used in the preparation.
[0061]
However, the solvent used in the present invention is not limited to a mixed solvent of acetanilyl and a low-polarity solvent having a π-electron system such as carbon disulfide, toluene, benzene, or orthodichlorobenzene.
[0062]
In the present invention, it is desirable to perform the electrolytic polymerization while introducing an inert gas into the non-aqueous solvent.
[0063]
For example, by using a mixed solvent of acetanilyl and a low-polarity solvent having a π-electron system such as carbon disulfide, toluene, benzene, and orthodichlorobenzene, a solvent that dissolves both the supporting electrolyte and the fullerene molecule is obtained. In addition, it is desirable to enclose this solvent in an electrolytic cell and sufficiently deaerate oxygen gas contained in the solvent. For example, by removing oxygen gas, oxygen atoms are prevented from being taken into the obtained spherical carbon polymer, and further, the electropolymerized thin film, and the expression of paramagnetic centers is suppressed to suppress the polymer, and further the thin film of the thin film. Stability can be improved.
[0064]
Next, an example of an electropolymerization apparatus that can be used in the present invention is shown in FIG. Of course, it is not limited to such an apparatus.
[0065]
The
[0066]
The
[0067]
Using the electropolymerization apparatus having such a configuration, a non-aqueous solvent containing as a main component fullerene molecules as raw materials (hereinafter sometimes referred to as raw material fullerene), the supporting electrolyte, the first solvent, and the second solvent. (Ie, the electrolyte solution of the present invention) is placed in the
[0068]
The
[0069]
Degassing with the
[0070]
Further, regarding the supporting electrolyte, the supporting electrolyte as described above can be used, and the type thereof is not particularly limited, but as described above, the electrolytic polymerization that can be formed on the electrode (particularly the cathode). The physical properties of the thin film may vary slightly depending on the electrolyte used.
[0071]
For example, a spherical carbon polymer obtained when a tert-butylammonium perchlorate salt is used as a supporting electrolyte and a large positive ion such as an ammonium salt provided from this salt is present as a counter ion. The positive ions and fullerene molecules form a coordination bond and form as a thin film (or precipitate) on the electrode in the form of a complex salt, which tends to be fragile mechanically. A spherical carbon polymer obtained when lithium is used and a lithium ion provided from this compound is present as a counter ion is formed, for example, as a thin film on an electrode, is mechanically strong and stable, and exhibits a mirror surface.
[0072]
In the above apparatus, the solution can be stirred using the
[0073]
In the present invention, it is desirable that the temperature during the electrolytic polymerization is less than 50 ° C. When the temperature at this time is 50 ° C. or higher, the ratio of the spherical carbon polymer of the present invention obtained as a precipitate increases, and the boiling point of the solvent used may be exceeded.
[0074]
In the present invention, it is desirable to perform the electrolytic polymerization by applying a direct current, and it is desirable to apply the direct current under a constant voltage.
[0075]
That is, an electric potential (especially voltage) for electrolytic polymerization can be applied using, for example, a potentiostat, and this potential is applied by selecting either the constant current mode or the constant voltage mode. Can do. However, when the potential is applied in the constant current mode, a high-resistance thin film is formed on the electrode and the current value tends to decrease, and the voltage may become too high. In such a situation, the state of the polyanion of the fullerene molecule may become unstable, and it may be difficult to maintain a certain reaction.
[0076]
In the case where the electropolymerization is simply performed under a constant potential condition, for example, a simple DC power source combining a commercially available dry battery and a variable resistor may be used without using a potentiostat as shown in FIG. Is possible.
[0077]
Next, the structural example of the spherical carbon polymer based on this invention is demonstrated.
[0078]
The spherical carbon polymer obtained based on the present invention is a spherical carbon polymer comprising a cyclic addition polymer formed by an addition reaction between an anion radical of a fullerene molecule and an electrically neutral molecule. In the present invention, the spherical carbon polymer can be obtained as a thin film on the electrode used for the electrolytic polymerization and / or as a precipitate in the electrolytic polymerization.
[0079]
When the structure of the spherical carbon polymer is considered two-dimensionally, as described above, formation of a dimer (see FIG. 3) is considered as a partial structure.60) And FIG. 5 (C60It is thought that a partial structure as shown in Fig. 4) is possible, a polymer in which the partial structures are connected in a planar or three-dimensional manner, and a thin film made of this polymer. . Of course, C as a molecule120, C180, C240The possibility of a thin film containing a spherical carbon polymer such as is also conceivable.
[0080]
In general, as represented by the term radical sponge, fullerene molecules easily undergo an addition reaction when a radical species is present to form a radical adduct. This is because the carbon atom in the fullerene molecule is sp2And spThreeThis is due to being in an intermediate valence state. That is, sp associated with radical adduct formation between fullerene moleculesThreeThis is because it is easy to form a valence state.
[0081]
Further, based on the present invention, as a result of attempting to form an electropolymerized thin film in the presence of various supporting electrolytes using the electropolymerization apparatus, the dissolved fullerene molecule becomes an electrically negative anion radical, Alternatively, in order to form a fullerene polymer thin film on the electrode by reacting with electrically neutral fullerene molecules, in addition to the selection of the supporting electrolyte described above, it is necessary to control the temperature or electrolytic potential very delicately. It is.
[0082]
That is, fullerene molecules that are dissolved and charged can be easily formed, but if the polymerization occurs in a solvent rather than the electrode surface, the polymer precipitates due to the low solubility of the fullerene polymer. There are many cases. When the amount of precipitate increases, the formation of a thin film on the electrode surface may decrease.
[0083]
Therefore, when it is intended to obtain a fullerene polymer, that is, a spherical carbon polymer composed of a cycloaddition polymer, as a thin film, it is desirable to carry out the electrolytic polymerization reaction under conditions such that precipitates are reduced. In particular, when the reaction is performed using lithium ions as positive ions (ie, counter ions) of the supporting electrolyte without heating for accelerating the reaction, a strong and glossy thin film can be obtained.
[0084]
In the present invention, in the electrolytic polymerization reaction based on the present invention, a counter ion (for example, lithium ion) provided from the supporting electrolyte may be contained in the cyclic addition polymer.
[0085]
In the present invention, a spherical carbon polymer composed of a cycloaddition polymer containing a counter ion as described above, or an electropolymerized thin film can be used, but the counter ion can be removed to some extent. .
[0086]
For example, the counter-ion is removed by placing the cycloaddition polymer in a solution such as an aqueous solution, heating the solution to boiling, and applying a potential opposite to the potential applied during the electropolymerization. can do.
[0087]
Next, the manufacturing method of the raw material fullerene used by this invention is demonstrated. This raw material fullerene can be produced by, for example, a production apparatus shown in FIG.
[0088]
First, a
[0089]
Next, the ends of the graphite high-purity carbon rods are made to face each other, a predetermined voltage and current are applied from the
[0090]
During this time, the
[0091]
Most of the substances obtained here adhere to the inner wall of the container (chamber) 10 as soot.60Or C70And so on, and is called a fullerene suit. This soot may contain about 10% or more of the fullerene molecule under appropriate conditions.
[0092]
In addition, fullerene molecules are extracted from the obtained fullerene suit with a π-electron solvent such as toluene or carbon disulfide, and the fullerene obtained at the stage of evaporation of this extract is called crude fullerene. Yes, C60Or C70And C76, C78, C80, C82, C84High-order fullerene such as
[0093]
Further, the crude fullerene is separated from the simple C by, for example, column chromatography.60Or C70Separation and purification are possible.
[0094]
Next, C60Whether or not the above-described electropolymerization reaction is thermodynamically possible with a model of a molecule will be described based on a semi-empirical level molecular orbital calculation. The counter ion considered here is lithium ion.
[0095]
According to the calculation result of the MNDO (semi-empirical molecular orbital method) approximation in which the parameters of the lithium atom are set, C60, C60-Li, C120-Li, C120-Li2 In contrast, the following heat generation values are predicted. The calculation results are as follows.
C60 : 864.4181 kcal / mol
C60-Li: 763.001 kcal / mol
C120-Li: 1525.716 kcal / mol
C120-Li2 : 1479.057 kcal / mol
[0096]
Where C120Is a cyclically added C as shown in FIG.60Dimer [1,2- (C60)2Although not shown, lithium ions are C60Structure of polymer cross-link structure sandwiched between two fullerene molecules (C120-Li or C120-Li2) Is the most stable. In addition, all the calculations of the system containing lithium in the compound were performed by the unrestricted Hartree-Fock method.
[0097]
From the calculation results, the following results (1) to (3) are derived.
[0098]
(1) C60Is greatly stabilized by coordination of lithium. This is C60This is due to the fact that the lowest empty orbit of lies at a position significantly lower than the free electrons.
(2) (C60) + (C60-Li) = (C120-Li) + Q
The reaction heat Q is estimated to be −106.3 kcal / mol, which is an exothermic reaction, and the obtained C120-Li is greatly stabilized.
(3) 2 (C60-Li) = (C120-Li2+ Q
The reaction heat is predicted to be −46.945 kcal / mol, which is also an exothermic reaction.
[0099]
These calculation results are merely energy differences between the initial state and the final state in vacuum, and do not determine the potential barrier of the reaction. However, this calculation result supports that the above reaction easily occurs because the entropy such as steric hindrance contributes to the free energy of the system when the contribution is small.
[0100]
C60A model calculation was performed on the heat of formation of the molecule. Next, with reference to FIGS.70Consider the case of molecules.
[0101]
C70Understanding intermolecular polymerization is C60More complex than molecules. C used here for convenience70The numbering of carbon atoms in the molecule is shown in FIG.
[0102]
C70The 105 C—C bonds of C (1) -C (2), C (2) -C (4), C (4) -C (5), C using the numbering system shown in FIG. (5) -C (6), C (5) -C (10), C (9) -C (10), C (10) -C (11), represented by C (11) -C (12) Are classified into eight types of C—C bonds, among which C (2) -C (4) and C (5) -C (6) are C60Have the same double bond property as C = C bond.
[0103]
Further, the 6-membered ring π electrons including C (9), C (10), C (14), and C (15) of this molecule are nonpolarized to form a 5-membered ring C (9) -C (10) The bond is double-bonded, and at the same time, the C (11) -C (12) bond is single-bonded.
[0104]
Next, C70For the double bond C (2) -C (4), C (5) -C (6), C (9) -C (10), C (10) -C (11) Think. The C (11) -C (12) bond is almost a single bond, but since it is a bond across two 6-membered rings (6,6-ring fusion), the addition reactivity of this bond will also be examined.
[0105]
First, C70Consider the [2 + 2] cycloaddition reaction. These five types of C—C bonds [C (2) -C (4), C (5) -C (6), C (9) -C (10), C (10) -C (11) and C From the [2 + 2] cycloaddition reaction of (11) -C (12)], 25 types of C70However, for convenience of calculation, only nine addition reactions between the same C—C bonds are considered.
[0106]
Table 1 below shows two molecules of C at the MNDO / AM-1 and PM-3 levels.70To C140Heat of reaction in the production process (ΔHf O(r)). In the table, C140(A) (FIG. 20) and (b) (FIG. 21), C140(C) (FIG. 22) and (d) (FIG. 23), C140(E) (Fig. 24) and C140(F) (FIG. 25) and C140(G) (FIG. 26) and C140(H) (FIG. 27) shows C (2) -C (4), C (5) -C (6), C (9) -C (10), and C (10) -C (11) bonds, respectively. A pair of anti-syn isomers. In addition reaction between C (11) -C (12) bonds, D2hSymmetrical C140(I) Only (FIG. 28) is obtained. In each figure, the upper figure is C.140It is a model figure seen from the upper surface side of a molecule, and the lower figure is a model figure seen from the side.
[0107]
[0108]
Where ΔHf 0(r) AM-1 and ΔHf ° (r) PM-3 are calculated values of the heat of reaction when using the parameterization of the MNDO method, which is a semi-empirical molecular start-up method by J. J. P. Stewart.
[0109]
The cross-link numbering system is shown in FIG.70This is equivalent to the numbering. Note that the “’ ”mark indicates the adjacent C having the same numbering.70belongs to. Further, the bond length is a bond distance between C-C atoms of the cyclobutane ring constituting the cross-link predicted from the calculated value of heat of reaction based on the above-mentioned MNDO / AM-1 method.
[0110]
From Table 1, no energy difference between anti-syn isomers is observed. In addition, the addition reaction between the C (2) -C (4) and C (5) -C (6) bonds is represented by C60The addition reaction between the C (11) -C (12) bonds is largely endothermic.
[0111]
By the way, although the C (1) -C (2) bond is clearly a single bond, the reaction heat of the cycloaddition reaction between these bonds is +0.19 and −1.88 kcal at the AM-1 and PM-3 levels, respectively. / mol, C in Table 1140(G) and C140It is almost equal to the heat of reaction of (h). This suggests that the addition reaction between C (10) -C (11) bonds cannot occur thermodynamically. Therefore, C70The intermolecular addition polymerization reaction occurs preferentially at the C (2) -C (4) and C (5) -C (6) bonds, and the polymerization between the C (9) -C (10) bonds occurs. However, the probability is low.
[0112]
Note that the heat of reaction between C (11) -C (12) bonds, which are single bonds, is more endothermic than the heat of reaction between C (1) -C (2) bonds.140It is considered that the distortion of the cyclobutane structure (i), particularly the C (11) -C (12) bond, is extremely large.
[0113]
Also, sp adjacent to the crosslink bond in such a [2 + 2] cycloaddition22P of carbonZIn order to evaluate the effect of the lobe (electron cloud) overlap, C70Dimer of C70-C60Polymer and C70H2Comparison of heat of formation was performed. Although detailed numerical data is omitted, the effect of this overlap is C140It seems that it is almost negligible over (a) to (h).
[0114]
The above-described calculation result is only a calculation result at the MNDO approximation level, but from this result, according to the present invention, C70It can be seen that a spherical carbon polymer composed of a molecular cycloaddition polymer (FIGS. 20 to 28) is easily formed.
[0115]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described with reference to specific examples, but the present invention is not limited to the following examples.
[0116]
Example 1
First, using the apparatus described in FIG.60Molecule or C70Crude fullerene containing molecules was prepared.
[0117]
Using a graphite rod (carbon rod) 12 having a diameter of 10 mm and a length of 35 cm as a positive electrode, arc discharge was performed with a direct current of 150 amperes under 100 Torr in a helium atmosphere.
[0118]
The graphite rod used as a raw material is almost vaporized, soot (fullerene suit) containing fullerene is obtained, and then the polarity of the electrode used is reversed, and deposits such as carbon nanotubes deposited on the original negative electrode 12 ' Vaporized further and made soot.
[0119]
Subsequently, the soot deposited in the water-cooled reaction chamber (vacuum vessel) 10 was collected with a vacuum cleaner, and extracted with toluene to obtain a crude fullerene. Furthermore, the obtained crude fullerene was washed with hexane, dried and then purified by vacuum sublimation. As a result of time-of-flight mass spectrometry (hereinafter sometimes referred to as TOF-MS) of the fullerene sample thus obtained,60And C70But C60: C70= A mixture with a ratio of about 9: 1 was obtained.
[0120]
Subsequently, the obtained crude fullerene was dissolved in a toluene-hexane mixed solvent, and separation and extraction were performed with a column filled with activated alumina. The column used has a length of 200 cm and a diameter of 5 cm.
[0121]
Then the separated C60And C70Each was washed with hexane and purified by sublimation in a high vacuum. C60The temperature during the sublimation of 570 ° C., C70The temperature during sublimation was set to 580 ° C. As a result of confirming the purity using TOF-MS, both samples were C60Against C70Presence rate, or C70Against C60It was confirmed that the presence rate of each was 1% or less.
[0122]
Hereinafter, the sample thus separated is referred to as C.60, C70This is a sample (C60: C70= About 9: 1 mixture) is referred to as a fullerene mixture.
[0123]
Next, fullerene molecules were electropolymerized using the apparatus shown in FIG.
[0124]
A silver electrode is used as the reference electrode 6, a platinum electrode is used as the
[0125]
First, as a result of measuring the reduction potential using this solution, an oxidation-reduction potential curve as shown in FIG. Potentials such as about -1.0 to -0.9 V) could be determined. The sweep speed at this time is 100 mV / s.
[0126]
In addition, FIG. 8 shows the results of repeated measurements of 10 cycles in the same region of the redox potential. Although it is slight, a change is seen in the potential curve, indicating that some kind of reaction is in progress.
[0127]
Next, electrolysis was performed in a low voltage mode at the first ionization potential at room temperature (25 ° C.) to form a fullerene electropolymerized thin film on the platinum electrode (negative electrode). After performing the electropolymerization, Fourier transform infrared spectrum (FTIR) and13C nuclear magnetic resonance spectra were measured. The FTIR measurement results are shown in FIG.13The measurement result of C nuclear magnetic resonance spectrum is shown in FIG. For comparison, C60The FTIR measurement result of the deposited film is shown in FIG.
[0128]
The FTIR measurement result shown in FIG. 9 is significantly different from the FTIR measurement result of the fullerene deposited thin film shown in FIG.60Showed that it does not exist in its original structure.
[0129]
Also,13In the measurement of C nuclear magnetic resonance spectrum, since the method of cross-polarization cannot be used, the mass spectrum was simply measured using only magic angle spinning. However, although the magnetization of the carbon nuclei was flipped 90 degrees with respect to the magnetic field to increase sensitivity, the free induction decay converged in a few microseconds, and even when the Fourier transform was performed by setting an appropriate window function, it was relatively broad. As shown in the spectrum diagram of FIG.60Sp with broad broadening on the low wavenumber side from the original absorption frequency of 10kHzThreeAbsorption lines (0 to 8 kHz) attributed to carbon were clearly observed.
[0130]
The reason why the rapid free induction decay occurs in this observation is that the remaining lithium ions cause C60The presence of unpaired electrons in the polymer is considered to have a great influence on the relaxation of carbon nuclei, especially lateral relaxation, due to its large magnetic susceptibility.
[0131]
Further, the platinum electrode having the obtained thin film was placed in high-purity water, and an attempt was made to remove lithium ions by applying a potential opposite to the potential applied in the polymerization process, but the results were almost unchanged. Therefore, counter ions such as lithium ions present in such a thin film and C60It was found that the polarization structure with the polymer cannot be easily removed.
[0132]
Next, the fullerene electropolymerized thin film was subjected to mass spectrometry using a nitrogen laser-excited time-of-flight mass spectrometer. The result is shown in FIG.
[0133]
From the examination so far, the polymer [1,2- (C60)2It is known that laser ablation and ionization cannot be performed. Accordingly, it is problematic whether mass spectrometry that accurately reflects the polymerized structure is possible, but as shown in FIG.60From the fact that a sequential peak of60It is considered that the molecules are three-dimensionally polymerized with the structure as described above while keeping the structure.
[0134]
In FIG. 12, when performing mass analysis using a nitrogen laser-excited time-of-flight mass spectrometer, the laser power is expressed as C60Therefore, the peak of the fullerene polymer (mass number m / z = 1440 vicinity) is obtained as a very weak abundance. This means that C60Shows that the original skeleton is preserved in the electropolymerized membrane.
[0135]
Further, comparing the Raman shift of the fullerene vapor-deposited thin film shown in FIG. 13 with the Raman shift of the electrolytic polymerized film shown in FIG.60It can be said that it does not exist as it is.
[0136]
In addition, although the X-ray diffraction of the obtained thin film was measured, presence of the periodic structure in a thin film was not confirmed. This is presumably because a polymer structure of fullerene molecules has been obtained.
[0137]
Although not shown in the drawing, it was found from a transmission electron microscope (TEM) photograph of the obtained electropolymerized thin film that a completely mirror-finished thin film was obtained. Note that the mirror-finished thin film is a thin film having excellent stability, little deterioration with time, and excellent weather resistance.
[0138]
Next, the conductivity and band gap of the obtained electropolymerized thin film were determined. First, the method used for determining the conductivity and the band gap will be described.
[0139]
C formed on the electrode during electropolymerization60The electropolymerized thin film was sufficiently washed in pure water and sufficiently dried in vacuum. Next, electrodes were formed as shown in FIG. That is, the gold electrode 21 was formed on the fullerene electropolymerization thin film 22 formed on the platinum electrode 23 using a gold vapor deposition apparatus using a tungsten filament.
[0140]
The electropolymerized thin film 22 thus configured in a sandwich shape was placed on a chuck 24 of a parameter analyzer, and a platinum electrode 23 as an electrode substrate was brought into contact with the chuck 24.
[0141]
Next, one terminal of the parameter analyzer (not shown) is directly connected to the chuck 24, the other terminal of the parameter analyzer is connected to the
[0142]
Further, current-voltage characteristics were observed in a temperature range from −60 ° C. to + 150 ° C. with a Peltier element (not shown) installed inside the chuck 24, and the electrical conductivity and band gap were measured according to the Arrhenius equation. .
[0143]
Note that all such measurements were performed in a dry high purity nitrogen gas atmosphere around the chuck 24. Further, the junction between the gold electrode 21 and the platinum electrode 23 and the fullerene electrolytic polymerization thin film 22 is ohmic contact (ohmic).
[0144]
Hereinafter, the electrical measurement data is determined by such a method. The film thickness was measured with a contact-type film thickness meter, and the paramagnetic spin number was a value measured with an electron spin resonance method.
[0145]
In this example, an electrolytic polymerization thin film having an area size of 5 cm × 5 cm was obtained. Moreover, the weight of the obtained electropolymerization thin film was 50 mg, and the yield from the raw material fullerene (500 mg) to the electropolymerization thin film was about 10%.
[0146]
The following values are physical property values of the fullerene electropolymerized thin film obtained in this example.
Film thickness (contact film thickness meter): 30 nm
Electrical conductivity: 1.1 × 10-6S / cm
Band gap: 1.9 eV
Paramagnetic spin number: 2.5 × 1018spins / g
[0147]
Therefore, in this example, it was possible to obtain a fullerene thin film having excellent electrical conductivity and at the same time excellent semiconductor properties.
[0148]
Example 2
The electrolytic polymerization thin film obtained in Example 1 was placed in pure water, and an attempt was made to remove lithium ions by applying a potential opposite to the potential applied during the electrolytic polymerization. Thereafter, a gold electrode was produced in the same manner as in Example 1 (FIG. 6), and the same measurement as in Example 1 was performed. The measurement results are shown below.
Film thickness (contact film thickness meter): 33 nm
Electrical conductivity: 1.0 × 10-6S / cm
Band gap: 1.9 eV
Paramagnetic spin number: 1.8 × 1018spins / g
[0149]
Therefore, the rate of decrease in the number of paramagnetic spins is smaller than in Example 1, and lithium ions cannot be sufficiently removed under such conditions.
[0150]
Example 3
The electrolytic polymerization thin film obtained in Example 1 was placed in pure water, applied with a potential opposite to the potential applied during the electrolytic polymerization, and the solution was heated to boiling to remove lithium ions. . Thereafter, a gold electrode was produced in the same manner as in Example 1 (FIG. 6), and the same measurement as in Example 1 was performed. The measurement results are shown below.
Film thickness (contact film thickness meter): 33 nm
Electrical conductivity: 0.4 × 10-6S / cm
Band gap: 2.0 eV
Paramagnetic spin number: 0.5 × 1018spins / g
[0151]
Therefore, the reduction rate of the paramagnetic spin number is relatively large compared to Example 1, and the lithium ion is removed quite effectively by applying a potential opposite to the potential applied during the electropolymerization and further heating and boiling. Can be considered.
[0152]
Example 4
LiClO as supporting electrolyte in Example 1FourInstead of tert-butylammonium perchlorate salt, the redox potential of the redox potential was the same as in Example 1 except that the mixing ratio of toluene and acetonitrile was 6: 1 as toluene: acetonitrile. Measurement and measurement of the cycle characteristics, thin film evaluation with a transmission electron microscope, and measurement of physical properties (film thickness, electrical conductivity, band gap and paramagnetic spin number) were performed.
[0153]
FIG. 15 shows the redox potential when swept at a sweep rate of 10 mV per unit second, FIG. 16 shows the redox potential when swept at a sweep rate of 50 mV per unit second, and FIG. It shows the redox potential when swept at a sweep rate of 100 mV per hit.
[0154]
From FIG. 15 to FIG. 17, a clear reduction peak was observed regardless of the sweep speed.
[0155]
Next, FIG. 18 shows the sweep results of 5 cycles. The sweep speed is 100 mV / s. From FIG. 18, although the oxidation-reduction potential curve is shifted little by little, it is suggested that some kind of reaction is apparently occurring.
[0156]
Next, FIG. 19 shows a transmission electron microscope (TEM) photograph of the obtained electrolytic polymerization thin film. That is, the obtained electropolymerized thin film is not in a perfect mirror state, and submicron-sized particulate aggregates are observed.
[0157]
Next, physical property values of the obtained thin film are shown.
Film thickness (contact film thickness meter): 233 nm
Electrical conductivity: 1.5 × 10-6S / cm
Band gap: 2.0 eV
Paramagnetic spin number: 0.2 × 1018spins / g
[0158]
Example 5
As the supporting electrolyte, tetrabutylammonium perchlorate, lithium tetrafluoroborate (LiBF)Four), Lithium hexafluorophosphate (LiPF)6), Sodium peroxide (NaClO)Four), LiCFThreeSOThreeLithium hexafluoroarsenite (LiAsF6), And the same measurement as in Example 1 was performed. The obtained polymer was all precipitated in the electrolytic polymerization solution, and formation of a thin film in the form of a platinum electrode was not confirmed, but formation of an amorphous polymer was confirmed. This polymer was a Li salt.
[0159]
Example 6
In the same system as in Example 1, C70The electrolytic polymerization thin film was formed.
[0160]
The electropolymerized thin film obtained on the platinum electrode is C60Although the specularity was slightly lower than that of, the formation of a good polymerized thin film was observed. The physical properties of the obtained thin film are as follows.
Film thickness (contact film thickness meter): 27nm
Electrical conductivity: 1.8 × 10-6S / cm
Band gap: 1.9 eV
Paramagnetic spin number: 2.2 × 1018spins / g
[0161]
Example 7
The formation of an electrolytic polymerization thin film was attempted in the same manner as in Example 1 except that the temperature during the electrolytic polymerization was set to 50 ° C. Note that the supporting electrolyte may be dangerous at higher temperatures due to the boiling point of the solvent and the like.
[0162]
The formation of the thin film proceeded in a short time, and a thin film was obtained while a precipitate was formed. This precipitate was an amorphous polymer and formed a Li salt.
[0163]
Example 8
An attempt was made to form an electropolymerized thin film using various supporting electrolytes in the same manner as in Example 5 except that the temperature during electropolymerization was set to 60 ° C. As in the case of normal temperature (25 ° C.) in Example 5, all of the obtained polymer was precipitated in the electrolytic polymerization solution, and formation of a thin film in the form of a platinum electrode was not confirmed.
[0164]
Comparative Example 1
C obtained in Example 160And C70A vapor-deposited thin film was prepared using the mixed fullerene as a raw material, and the same evaluation as in Example 1 was performed with respect to its physical property values. The measurement results are shown below.
Film thickness (contact film thickness meter): 33 nm
Electrical conductivity: 1.1 × 10-13S / cm
Band gap: 1.6 eV
Paramagnetic spin number: 9.6 × 1016spins / g
[0165]
That is, the electrical conductivity increases and the paramagnetic spin number decreases, but this is thought to be due to the absence of lithium ions and the diffusion and penetration of oxygen molecules or oxygen atoms into the deposited thin film. It is done. The same applies to Comparative Examples 2 and 3 below.
[0166]
Comparative Example 2
C obtained in Example 160As a raw material, a deposited thin film was formed, and the same evaluation as in Example 1 was performed with respect to the physical property values. The measurement results are shown below.
Film thickness (contact film thickness meter): 45nm
Electrical conductivity: 0.4 × 10-13S / cm
Band gap: 1.6 eV
Paramagnetic spin number: 8.5 × 1016spins / g
[0167]
Comparative Example 3
C obtained in Example 170As a raw material, a deposited thin film was formed, and the same evaluation as in Example 1 was performed with respect to the physical property values. The measurement results are shown below.
Film thickness (contact film thickness meter): 28nm
Electrical conductivity: 0.04 × 10-13S / cm
Band gap: 1.7 eV
Paramagnetic spin number: 6.3 × 1016spins / g
[0168]
[Effects of the invention]
According to the production method of the present invention, C is added to the non-aqueous solvent.n(Where n is an integer that can geometrically form a spherical compound.) A fullerene molecule represented by the following formula is dissolved, and this is electropolymerized to form a spherical addition polymer of the fullerene molecule. Therefore, it is possible to form a spherical carbon polymer comprising a cycloaddition polymer by an electropolymerization reaction in a liquid phase, and a spherical carbon polymer having excellent electronic properties such as electrical conductivity can be obtained easily and efficiently. Can be formed.
[0169]
In particular, it is possible to form a thin film made of the spherical carbon polymer, and this thin film can be a carbon thin film having excellent electrical conductivity, little deterioration with time, and excellent weather resistance.
[0170]
In addition, the electrolyte solution of the present invention contains C in a non-aqueous solvent.n(Wherein n is the same as described above) and is used to obtain a spherical carbon polymer comprising a cyclic addition polymer of the fullerene molecule by dissolving the fullerene molecule represented by Since the electrolyte solution is mainly composed of a nonaqueous solvent composed of a mixed solvent of a molecule, a supporting electrolyte, a first solvent that dissolves the fullerene molecule, and a second solvent that dissolves the supporting electrolyte, the fullerene molecule and the support An electrolyte solution that dissolves both the electrolyte and enables electrolysis and polymerization reaction is formed.
[0171]
Furthermore, the spherical carbon polymer of the present invention is Cn(Wherein n is the same as described above) is a spherical carbon polymer obtained by electrolytic polymerization of a fullerene molecule represented by a cyclic addition polymer containing a counter ion provided from a supporting electrolyte, In particular, it is possible to form a carbon thin film having excellent electrical conductivity, little deterioration with time, and excellent weather resistance.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a schematic view of the essential part of an example of an electropolymerization apparatus that can be used in the production method of the present invention.
FIG. 2 is a schematic cross-sectional view of an example of a raw material fullerene production apparatus.
FIG. 3 shows an example of a partial structure of the spherical carbon polymer of the present invention.60Dimer structure of molecule [1,2- (C60)2FIG.
FIG. 4 shows the C as an example of another partial structure of a spherical carbon polymer.60Molecular trimer structure (C180).
FIG. 5 shows the C as an example of another partial structure of a spherical carbon polymer.60Molecular tetramer structure (C240).
FIG. 6 is a schematic cross-sectional view of a thin-film electronic property measuring apparatus used in this example.
7 is a redox potential curve obtained in Example 1. FIG.
FIG. 8 is a cycle characteristic of the oxidation-reduction potential.
FIG. 9 is an infrared spectrum (FRIR) of the electropolymerized thin film.
FIG. 10 is an infrared spectrum (FRIR) of a fullerene deposited film.
11 is a graph showing the results of electrolytic polymerization thin film obtained in Example 1. FIG.13C nuclear magnetic resonance spectrum (13C-NMR).
FIG. 12 shows the results of mass spectrometry of an electropolymerized thin film using a time-of-flight mass spectrometer (TOF-MS).
FIG. 13 is a Raman shift of a fullerene deposited film.
14 is a Raman shift of the electropolymerized thin film obtained in Example 1. FIG.
15 is a redox potential (sweep speed of 10 mV / s) obtained in Example 4. FIG.
FIG. 16 shows the oxidation-reduction potential (
FIG. 17 shows the oxidation-reduction potential (sweep speed: 100 mV / s).
FIG. 18 shows the cycle characteristics of the oxidation-reduction potential.
FIG. 19 is a transmission electron micrograph (TEM) of the electropolymerized thin film.
FIG. 20 shows C as an example of a partial structure of the spherical carbon polymer of the present invention.70Dimer [C140It is a figure which shows (a)].
FIG. 21 shows another example of a partial structure of a spherical carbon polymer.70Dimer [C140It is a figure which shows (b)].
FIG. 22 shows another example of a partial structure of a spherical carbon polymer.70Dimer [C140(C)].
FIG. 23 shows C as another example of a partial structure of a spherical carbon polymer.70Dimer [C140(D)].
FIG. 24 shows another example of a partial structure of a spherical carbon polymer.70Dimer [C140It is a figure which shows (e)].
FIG. 25 shows another example of a partial structure of a spherical carbon polymer.70Dimer [C140(F)].
FIG. 26 shows another example of a partial structure of a spherical carbon polymer.70Dimer [C140(G)].
FIG. 27 shows another example of a partial structure of a spherical carbon polymer.70Dimer [C140(H)].
FIG. 28 shows another example of a partial structure of a spherical carbon polymer.70Dimer [C140(I): D2hFIG.
FIG. 29 C60It is a figure which shows the molecular structure of a molecule | numerator.
FIG. 30C70It is a figure which shows the molecular structure of a molecule | numerator.
FIG. 31: [2 + 2] 1,2- (C60)2Molecular structure (a), D2hSymmetrical C116Is the molecular structure (b).
FIG. 32
FIG. 33 shows a structure relaxation process and C considered to occur.120It is the molecular structure of (c).
FIG. 34 shows that C is considered to be caused by the structural relaxation process.120It is the molecular structure of (d).
FIG. 35C70It is a figure for demonstrating the numbering system of a molecule | numerator.
[Explanation of symbols]
1 ... electrolytic cell, 2 ... solvent, 3 ... magnetic stirrer,
4, 5 ... electrode, 6 ... reference electrode, 7 ... gas inlet tube, 8 ... inert gas,
9 ... Potentiostat, 10 ... Vacuum container,
12, 12 '... graphite electrode (counter electrode), 13 ... substrate,
14 ... Power source, 15 ... Gas inlet, 16 ... Gas outlet,
17, 18 ... gas, 20 ... positioner probe, 21 ... gold electrode,
22 ... Fullerene electropolymerized thin film, 23 ... Electrode, 24 ... Chuck
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