JP3668051B2 - 充停電判定および潮流計算における系統認識方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力系統監視制御システムにおいて使用される、充停電判定機能および潮流計算機能の系統状態認識方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電力系統を監視、制御するための電力系統監視制御システムにおける充停電判定機能、潮流計算機能が系統を認識するために、従来は図7に示すように、母線、発電機、開閉器間、分岐点、調相設備、中性点などの設備をノード、開閉器、変圧器、区間をブランチと設備モデル上定義していた。
【0003】
図8は、電気所およびこれら電気所間を結ぶ区間を従来のノード・ブランチモデルで表したものである。図において、BR1は遮断器(開閉器)に、BR2は断路器(開閉器)に、BR3は区間に、BR4はジャンパ(開閉器)に対応するブランチである。また、ND1は母線に、ND2は開閉器間に、ND4は分岐点に対応するノードである。なお、ND3は、区間に対応するBR3とジャンパに対応するBR4を分けるために、仮想的に定義したノードである。
【0004】
図9は、2つの変圧器間に中性点が存在する系統で、従来のノード・ブランチモデルを表したものである。BR1は遮断器(開閉器)に、BR2は断路器(開閉器)に、BR3は変圧器に対応するブランチである。また、ND1は母線に、ND2は開閉器間に、ND3は中性点に対応するノードである。
【0005】
図10は、母線に開閉器無しで直接発電機が繋がる系統で、従来のノード・ブランチモデルを表したものである。当該系統では、母線に対応するノードであるND1と発電機に対応するノードであるND2がブランチ無しで直接繋がる。
【0006】
充停電判定機能では、充停電判定処理の前処理として、ノードと当該ノードに隣接するブランチの接続を追い、電気的に接続する設備の集合である設備グループ(以下、設備Gと呼ぶ)を作成する(グルーピングを行う)。一方、潮流計算機能では、設備モデル上、インピーダンスを持つ設備である区間および変圧器のみをブランチとして潮流計算を行う。
【0007】
従来、図8の系統で、設備Gの作成を行う場合、ノードに隣接するブランチが開閉器に対応するブランチか、それ以外のブランチかを見分け、開閉器に対応するブランチであれば、当該開閉器が閉の場合のみ、電気的接続の検索処理を続ける。また、潮流計算を行う場合、設備モデル上インピーダンスを持たない開閉器のブランチはブランチとして扱わずに処理を行う必要があった。
【0008】
図9の系統で、設備Gの作成を行う場合、単純にノードとブランチの電気的な接続を追いグルーピングを行うと、中性点も設備Gに含まれ、変圧器1の充停電状態が変圧器2に反映されてしまうため、中性点で電気的接続を切る特殊処理を行う必要があった。
【0009】
図10の系統で、設備Gの作成を行う場合、母線のノードであるND1と発電機のノードであるND2の間にブランチが存在しないため、設備G作成処理内で、ノード間にブランチが存在しない場合の特殊処理を行う必要があった。
【0010】
図11は、従来のノード・ブランチモデルでの、充停電判定機能と潮流計算機能の処理のフローを表したものである。ST1はノードを順次取得する処理、ST2はノードに隣接するブランチを取得する処理、ST3はノードに隣接するブランチが存在するかを判定する処理、ST4はノードに隣接するブランチが存在しない場合ブランチを設定する処理、ST5はブランチが開閉器に対応するか判定する処理、ST6はブランチが開閉器以外の設備に対応する場合当該ブランチがインピーダンスを持っているか判定する処理、ST7は潮流計算用にノードを縮約する処理、ST8はブランチが開閉器対応の場合開閉器の開閉状態を判定する処理、ST9はブランチに隣接するST1で取得したノード以外のノードを取得する処理、ST10は取得したノードが中性点対応か判定する処理、ST11は設備Gの作成処理、ST12はST7にて縮約したノードに隣接するブランチを取得する処理、ST13は取得したブランチが開閉器対応か判定する処理、ST14は縮約したノードとブランチを基に潮流計算を行う処理を表している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来のノード・ブランチモデルでは、充停電判定機能と潮流計算機能の両機能共、ブランチが開閉器対応かそれとも区間または変圧器対応かを判別する必要があるため、双方の処理にとって問題があった。また、中性点が存在する場合や、ノードがブランチを介さず直接接続する場合、ノードとブランチの電気的接続の探索内で特殊処理を行う必要が発生し、処理が複雑になっていた。
【0012】
この発明は上記問題を解決するため、ノード・ブランチモデルを、充停電判定機能用のモデルと潮流計算機能用のモデルに分けることによって、処理を簡素化すると共に処理性能の向上を図るものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る充停電判定および潮流計算における系統認識方法は、電力系統の充停電判定機能および潮流計算機能で用いるノード・ブランチのモデルを、充停電判定機能用と潮流計算機能用に設備モデル上フラットに定義するものであって、ノード・ブランチのモデルを定義する際に、区間に隣接する開閉器間のノードを区間のノードに含めることによってノードとブランチの数を削減し、電気的繋がりのある設備のグルーピング処理の性能を向上させるようにしたものである。
【0014】
また、電力系統の充停電判定機能および潮流計算機能で用いるノード・ブランチのモデルを、充停電判定機能用と潮流計算機能用に設備モデル上フラットに定義するものであって、充停電判定機能の前処理である電気的繋がりのある設備のグルーピング処理時に、中性点をグルーピング対象のノードとしないことにより、充停電状態が中性点を介して他の設備に反映されることのないようにしたものである。
【0015】
また、電力系統の充停電判定機能および潮流計算機能で用いるノード・ブランチのモデルを、充停電判定機能用と潮流計算機能用に設備モデル上フラットに定義すると共に、ノードに対応する設備がブランチを介さず直接隣接する系統で、ノードに対応する設備間に仮想的なブランチである理論開閉器ブランチを設備モデル上設けることによって、電気的繋がりのある設備のグルーピング処理を簡易化するようにしたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
充停電判定機能用および、潮流計算機能用のノード・ブランチモデルを詳細に述べる。
【0017】
充停電判定機能用のノード・ブランチモデルとして以下のように「充停電ノード」と「開閉器ブランチ」を定義する。
充停電ノード :従来のノード・ブランチモデルのノードに該当する。従来のノードモ デルとの違いは、母線、発電機などの設備の他に、区間および変圧器 も充停電ノードと定義することである。
開閉器ブランチ:従来のノード・ブランチモデルのブランチに該当する。従来のプラン チモデルとの違いは、開閉器ブランチは、開閉器のみに対応する。区 間および変圧器は開閉器ブランチにならない。
【0018】
潮流計算機能用のノード・ブランチモデルとして以下のように「行」および「潮流ブランチ」を定義する。
行 :潮流計算で用いるノード潮流ブランチ(下記参照)で区切られる電気的 に接続する設備の集合である。
潮流ブランチ:インピーダンスを持っている設備に対応するブランチである。潮流計算 機能でブランチとして扱う。区間およ変圧器の1次、2次、3次巻線が 潮流ブランチに対応する。
内部ノード :潮流ブランチの両端に存在する仮想的なノード。内部ノードに隣接する 開閉器が切状態の場合、当該内部ノードが行になり、潮流計算で用いら れる。
【0019】
図1は、上記ノード・ブランチモデル定義を基にした、電力系統の各設備のノードとブランチの対応を表したものである。母線と発電機と開閉器間と分岐点と調相設備と区間と変圧器と中性点が充停電ノードに対応する。
【0020】
ブランチについて、開閉器ブランチは開閉器のみに対応する。潮流ブランチは、設備モデル上インピーダンスを持つ設備である、区間と変圧器に対応する。なお、変圧器に関しては、変圧器の1次、2次、3次の各巻線それぞれにインピーダンスを持たせ潮流計算を行うため、変圧器の潮流ブランチとしては最大3つ存在することとなる。
【0021】
次に、ノードとブランチの電気的接続を探索した結果得られる行と設備Gについて以下に記す。
【0022】
図1ではJND1とJND2とJND51とJND100とJND150とJND200とJND300とJND350が電気的に接続され、設備G1が生成された状態と、同時にJND50とJND101とJND151とJND201とJND301とJND351が電気的に接続され、設備G50が生成された状態を表している。
【0023】
また、行については、JND1とJND200が縮約されたGY1と、JND2とJND201が縮約されたGY2と、JND51とJND100とJND101が縮約されたGY51と、JND50とJND150とJND151とJND350とJND351が単独で縮約されたGY50とGY150とGY151とGY300とGY301が同時に生成された状態を表している。
【0024】
従来のノード・ブランチモデルでは、設備をノードとブランチという2種類の論理設備で定義していたのに対して、この発明に係るノード・ブランチモデルでは、設備を充停電判定用の充停電ノードと開閉器ブランチ、潮流計算用の行と潮流ブランチにフラットに分けて定義している。充停電判定機能では、開閉器のみに対応する開閉器ブランチを設備モデル上持つことにより、設備Gを生成する際、充停電ノードと当該充停電ノードに隣接する開閉器ブランチの電気的接続の検索を行うだけでよく、従来のように、ノード(充停電ノード)に隣接するブランチが開閉器に対応するブランチかどうかを見分けて電気的接続の検索を行う必要がなくなる。このことによって、処埋が簡素になり処理性能が向上する。
【0025】
−方、潮流計算機能では、設備モデル上インピーダンスを持つ設備を潮流ブランチとして定義することによって、潮流ブランチと潮流ブランチによって区切られる電気的繋がりのある設備の集合である行を使用して潮流計算を行えばよい。すなわち、従来のノード・ブランチモデル上での潮流計算のように、開閉器に対応するブランチをブランチとして扱わないという処理が無くなり、これにより、処理が簡素になり処理性能が向上する。
【0026】
実施の形態2.
図2は、電気所およびこれら電気所間を結ぶ区間を、この発明に係るノード・ブランチモデルである充停電ノードと開閉器ブランチで表したものである。JND1は母線に、JND2は開閉器間に、JND3は区間に、JND4は分岐点に対応する充停電ノードであり、KBR1は遮断器に、KBR2は断路器に、KBR3はジャンパに対応する開閉器ブランチである。
【0027】
この発明に係るノード・ブランチモデルでは区間に隣接する開閉器間を、区間の充停電ノードに縮約したため、図8の従来のノード・ブランチモデルでは、ノード数が17、ブランチ数が16なのに対して、図2のノード・ブランチモデルでは、ノード数が14、ブランチ数が13となり、ノード数、ブランチ数を削減することができる。これにより、電気的繋がりのある設備のグルーピング処理内でノードとブランチの接続を追う回数が少なくなり、充停電判定機能の処理性能が向上する。
【0028】
実施の形態3.
図3は、変圧器および中性点の系統をこの発明に係るノード・ブランチモデルである充停電ノードと開閉器ブランチで記したものである。JND1は母線に、JND2は開閉器間に、JND3は変圧器に対応する。また、KBR1は遮断器に、KBR2は断路器に対応する。ここで、中性点の充停電ノードは図1にも示しているように設備Gに含めない。このことにより、変圧器1と変圧器2は中性点を介して電気的接続関係を持たず、断路器1と断路器2が入状態でも変圧器1の充停電状態が中性点を介して変圧器2に反映されることが無くなる。すなわち、従来のように、中性点で電気的接続を切る特殊処理が不要となる。
【0029】
実施の形態4.
図4は、母線と発電機が開閉器無しで直接繋がる系統をこの発明に係るノード・ブランチモデルである充停電ノードと開閉器ブランチで記したものである。この発明に係るノード・ブランチモデルでは、母線と発電機のように充停電ノードに対応する設備が開閉器無しで直接繋がる場合、両設備の間に理論開閉器ブランチを設ける。このことにより、充停電ノードは必ず開閉器ブランチを介して隣接する充停電ノードに繋がることになる。よって、従来のように設備Gを作成する際のノード間にブランチが存在しない場合の特殊処理を行う必要は無くなる。
【0030】
実施の形態5.
図5は、行と潮流ブランチのノード・ブランチモデルを記した例である。FBR1はインピーダンスを持つ設備である区間に対応する潮流ブランチであり、GY1は閉状態の遮断器と断路器によって電気的に接続し、且つ潮流ブランチによって区切られる母線と開閉器間の集合である。また、潮流計算では、ノード・ブランチの繋がりの終端がノードで終わらないと計算ができないため、図5に記すように、この発明に係るノード・ブランチモデルでは、潮流ブランチの両端に内部ノードという論理設備を設けている。
【0031】
図5で、断路器Aが切状態の場合、区間Aの電気所B側に充停電ノードを縮約した行が生成されないため、内部ノードAが行となる(GY3)。なお、内部ノードは、電気的に接続している行に縮約されるため、図5の場合、内部ノードBと内部ノードCと内部ノードDと内部ノードEはGY2に縮約され、内部ノードFはGY1に縮約される。よって、内部ノードBと内部ノードCと内部ノードDと内部ノードEと内部ノードFはそれぞれ単独で行になることはない。このようにすることによって、ノードとブランチの繋がりは必ずノード(行)で終わるようになる。
【0032】
図6は、この発明に係るノード・ブランチモデルでの、充停電判定機能と潮流計算機能の処理のフローを表したものである。ST1は、充停電ノードを順次取得する処理、ST2は取得した充停電ノードに対応する設備が同時に潮流ブランチに対応するか判定する処理、ST3は行を生成する処理、ST4は充停電ノードに隣接する開閉器ブランチを取得する処理、ST5は取得した開閉器ブランチに対応する開閉器の開閉状態を判定する処理、ST6は開閉器ブランチに隣接するST1で取得した充停電ノード以外の充停電ノードを取得する処理、ST7は設備Gの作成処理、ST8はST3で生成した行に隣接する潮流ブランチを取得する処理、ST9は行と潮流ブランチを基に潮流計算を行う処理を表している。
【0033】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、ノード・ブランチモデルとして、設備を充停電判定用の充停電ノードと開閉器ブランチ、潮流計算用の行と潮流ブランチにフラットに分けて定義しているため、充停電判定および潮流計算の処埋が簡素になり処理性能が向上する。
【0034】
また、中性点で電気的接続を切る特殊処理や、設備Gを作成する際のノード間にブランチが存在しない場合の特殊処理を行う必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係る、ノード・ブランチモデル定義を基にした電力系統の各設備のノードとブランチの対応を表した図である。
【図2】 この発明の実施の形態2に係る、電気所およびこれら電気所間を結ぶ区間をノード・ブランチモデルである充停電ノードと開閉器ブランチで表した図である。
【図3】 この発明の実施の形態3に係る、変圧器および中性点の系統をノード・ブランチモデルである充停電ノードと開閉器ブランチで記した図である。
【図4】 この発明の実施の形態4に係る、母線と発電機が開閉器無しで直接繋がる系統をノード・ブランチモデルである充停電ノードと開閉器ブランチで記した図である。
【図5】 この発明の実施の形態5に係る、行と潮流ブランチのノード・ブランチモデルを記した図である。
【図6】 実施の形態5に係るノード・ブランチモデルでの、充停電判定機能と潮流計算機能の処理の流れを表すフローチャートである。
【図7】 従来の系統認識方法における母線、発電機、開閉器間、分岐点、調相設備、中性点などの設備をノード、開閉器、変圧器、区間をブランチと設備モデル上定義する図である。
【図8】 従来の系統認識方法における電気所およびこれら電気所間を結ぶ区間を従来のノード・ブランチモデルで表した図である。
【図9】 従来の系統認識方法における2つの変圧器間に中性点が存在する系統で、ノード・ブランチモデルを表した図である。
【図10】 従来の系統認識方法における母線に開閉器無しで直接発電機が繋がる系統で、ノード・ブランチモデルを表した図である。
【図11】 従来のノード・ブランチモデルでの充停電判定機能と潮流計算機能の処理の流れを表したフローチャートである。
【符号の説明】
JND1〜JND351 充停電ノード、
KBR1、KBR2 開閉機ブランチ、
FBR1〜FBR55 潮流ブランチ、
G1〜G50 設備グループ、GY1〜GY301 行、
ND1、ND2 ノード。
Claims (3)
- 電力系統の充停電判定機能および潮流計算機能で用いるノード・ブランチのモデルを、充停電判定機能用と潮流計算機能用に設備モデル上フラットに定義するものであって、ノード・ブランチのモデルを定義する際に、区間に隣接する開閉器間のノードを区間のノードに含めることによってノードとブランチの数を削減し、電気的繋がりのある設備のグルーピング処理の性能を向上させるようにしたことを特徴とする充停電判定および潮流計算における系統認識方法。
- 電力系統の充停電判定機能および潮流計算機能で用いるノード・ブランチのモデルを、充停電判定機能用と潮流計算機能用に設備モデル上フラットに定義するものであって、充停電判定機能の前処理である電気的繋がりのある設備のグルーピング処理時に、中性点をグルーピング対象のノードとしないことにより、充停電状態が中性点を介して他の設備に反映されることのないようにしたことを特徴とする充停電判定および潮流計算における系統認識方法。
- 電力系統の充停電判定機能および潮流計算機能で用いるノード・ブランチのモデルを、充停電判定機能用と潮流計算機能用に設備モデル上フラットに定義すると共に、ノードに対応する設備がブランチを介さず直接隣接する系統で、ノードに対応する設備間に仮想的なブランチである理論開閉器ブランチを設備モデル上設けることによって、電気的繋がりのある設備のグルーピング処理を簡易化するようにしたことを特徴とする充停電判定および潮流計算における系統認識方法。
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