JP3665304B2 - 無線通信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルラ通信技術に関し、特にcdma2000方式を採用し、かつ基地局が複数のアンテナを具備するアレイアンテナ型無線通信装置においてパケット通信を行うセルラ通信技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
cdma2000方式を採用したセルラ通信技術について、図7を参照して説明する。図7は、従来のセルラ通信技術に基づく無線通信システムにおける処理の流れを示す図である。簡単のため、第1及び第2の基地局AP1、AP2と端末局ATとの間の通信処理の流れに絞って説明する。
【0003】
図7に示すように、従来のセルラ通信技術に基づく無線通信システムにおける第1の基地局AP1と第2の基地局AP2とは、セクタを構成するための指向性アンテナを有している。ここで説明する無線通信システムは、cdma方式を採用しており、各基地局(AP1、AP2)は同一の周波数チャネルを使用しているため、互いの通信が干渉を引き起こしている。
【0004】
第1の基地局AP1はパイロット信号PS−1を、第2の基地局AP2はパイロット信号PS−2を送信している。端末ATにおいては、これらのパイロット信号PS−1、PS−2を受信し、それぞれの信号レベルを測定する(ステップ301)。
【0005】
端末ATでは、測定された信号レベルからC/I=(希望波電力)/(干渉波電力)を計算できる。計算されたC/Iに基づき、端末ATが、下り回線(基地局APから端末局ATへの送信)におけるデータレート(DRC)を予測する(ステップ302)。尚、C/IとDRCとは正の相関関係を有している。計算された送信データレートDRCは、端末ATから無線により最寄りの基地局である、例えば第1の基地局AP1に送信される(ステップ303)。
【0006】
この情報(DRC)に基づき、第1の基地局AP1に複数設けられている変調器のうち、端末ATによって選択されたデータレートDRCを指定して、ネットワークから送られてくるユーザ情報などの変調を行う(ステップ304)。変調された信号は、無線信号として基地局AP−1のアンテナから端末ATに送信される(ステップ305)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のように、従来のcdma方式を採用した無線通信システムにおいては、それぞれの基地局APは、1つのセルを例えば3つのセクタに分割する3つの指向性アンテナを有している。さらに、アレイアンテナ技術を併用する場合においては、上記セクタはさらに狭ビームのエリアに分割される。アレイアンテナでは、分割された狭ビームの内一部のビームだけを使って端末で通信を行うために他局への干渉を削減できるメリットがある。しかしながら、かかる無線通信システムにおいては、セクタ内を端末(移動局)ATが移動するため、干渉波の影響を低減しC/Iに関するより正確な調整を行うことができないという問題点があった。
【0008】
特に、パケット通信のように単発的な通信を行う無線通信システムにおいては、セルをセクタに分割するアレイアンテナのみでは対応しにくい。
本発明の目的は、cdma方式でパケット通信を行う場合に、干渉波の影響を低減しC/Iに関するより正確な調整を行うことができる無線通信技術を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば、複数の基地局であって、各基地局がそれぞれ備える複数のアンテナパタンのいずれかにより通信を行う基地局と、第1の端末局を含む少なくとも1以上の端末局と、を含んで構成される無線通信システムであって、前記第1の端末局は、複数の前記アンテナパタンから送信されたパイロット信号に基づき第1のアンテナパタンと該第1のアンテナパタンを有する第1基地局とを特定し、前記第1のアンテナパタンにより送信された信号の受信電力を推定するとともに、前記第1の基地局を除く複数の基地局が有する第2アンテナパタン群から送信された信号の受信電力の総和に基づき干渉電力を推定し、推定された前記受信電力を推定された前記干渉電力で除算して求めた計算値に基づいて、前記第1の基地局が前記第1の端末局に送信する際の送信信号のデータレートを求めることを特徴とする無線通信システムが提供される。
【0010】
前記第1の端末局は、複数の前記アンテナパタンから送信されたパイロット信号を受信し、最も高い信号電力で受信された第1のアンテナパタンと該第1のアンテナパタンを有する第1基地局とを特定し、前記第1のアンテナパタンにより送信された信号の受信電力を推定するとともに、前記第1の基地局を除く複数の基地局が有する第2アンテナパタン群から送信された信号であって、それぞれの基地局において最も低い信号電力で受信された信号の受信電力の総和からなる干渉電力を推定するのが好ましい。
上記無線通信システムによれば、それぞれが複数のアンテナパタンを有する複数の基地局を含むシステムにおいて、干渉電力に対する受信電力の比率が大きい良好な状態で通信を行うことができる。
【0011】
さらに、前記第1の端末局は、前記パイロット信号に基づいて信号品質を推定し、推定された信号品質を前記データレートとともに前記第1の基地局に送り、前記第1の基地局とその周辺の基地局との間で、前記信号品質が良くなるように送信アンテナのスケジューリングの調整を行うのが好ましい。
基地局同士が、信号品質が良くなるようにスケジューリング調整を行うことにより、良好な状態で通信を維持することができる。
【0012】
本発明の他の観点によれば、複数の基地局であって、各基地局が備える複数のアンテナパタンのいずれかにより通信を行う基地局と、第1の端末局を含む少なくとも1以上の端末局と、を含んで構成される無線通信システムであって、前記第1の端末局は、複数の前記アンテナパタンから送信されたパイロット信号を受信し、受信したパイロット信号に基づいて、送信対象となる第1基地局が備える第1のアンテナパタンにより送信された信号電力と前記第1のアンテナパタンにより信号が送信される確率とを乗算した値を受信電力と推定するとともに、前記第1の基地局を除く複数の基地局が有する第2アンテナパタン群のそれぞれにより送信されたそれぞれの信号と該信号がそれぞれのアンテナパタンから送信される確率とを乗算した値の総和を干渉電力と推定し、推定された前記受信電力を推定された前記干渉電力で除算して求めた計算値に基づいて、前記第1の基地局が前記第1の端末局に送信する際の送信データレートを求めることを特徴とする無線通信システムが提供される。
上記無線通信システムによれば、それぞれが複数のアンテナパタンを有する複数の基地局を含むシステムにおいて、干渉電力に対する受信電力の比率が大きい良好な状態で通信を行うことが簡単になる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について説明する前に、発明者が行った考察について説明する。
発明者は、パケット通信を行うcdma無線通信システムにおいて、セクタを更に細分化するアレイアンテナを付加することを思い付いた。
【0014】
アレイアンテナを有していない無線通信システムにおいては、上述のようにパケットを送信する場合に、端末ATが下り回線のデータレートDRCを決定することができた。パイロット信号PS及びユーザデータ信号が同じ固定のアンテナパタンによって送信されるため、パイロット信号からユーザデータ送信時の干渉状況を推定することができるためである。
【0015】
ところが、基地局にアレイアンテナを設けると、上記の条件が成立しない。すなわち、ユーザデータ信号は、アレイアンテナによって作成された個別のアンテナパタンによって送信されるため、パイロット信号PSからユーザデータ信号の干渉を予測できず、端末AT側において基地局APから端末ATへのデータの実送信時におけるC/Iが予測できない。従って、送信可能なデータレートDRCを正確に推定できず、スループットが低下する。
【0016】
特にパケット通信においては、これが一層困難である。なぜなら、基地局は各パケットをいつ送信するかを定めるパケットスケジューリングを行っていて、これによって干渉波である他基地局からの信号の通信相手となる端末が時間的に次々と変化するので、当然、その送信方向も時間的に変化するからである。
【0017】
そこで、発明者は、端末ATが基地局AP中の複数のアレイアンテナからそれぞれ送信された複数のパイロット信号を受信し、受信したそれぞれのパイロット信号に基づいてそれぞれの信号の信号品質を推定し、この信号品質に基づいて下り回線のデータレートDRCを求めることを思い付いた。
【0018】
推定されたそれぞれの信号の信号品質に基づいて下り回線のデータレートDRCを求めることにより、アンテナパタンが時間的に変化する無線通信システムにおいてパケット通信を行う場合にも、精度良くデータレートDRCを求めることができる。
上記考察に基づき、本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0019】
まず、本発明の第1の実施の形態による無線通信技術について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態による無線通信システムの概略的な構成を示す図であり、図2は、図1のより詳細な構成を示す図である。図3は、本発明の第1の実施の形態による無線通信技術における処理の流れを示す図であり、図4は、各ビーム毎に作成されている待ち行列の構成例を示す図である。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施の形態による無線通信システム1は、多数のセル11に分割されているセルラ網3と、セルラ網3の終端に設けられセルラ網を統括する終端部5と、データを供給するデータ供給元7とを有している。
セルラ網3は、多数の基地局AP10を中心とした例えば正六角形状の多数のセル11により構成されている。それぞれのセル11は、例えば120度の中心角を有する3つの扇形状のセクタ15−1、15−2及び15−3に分割されている。各セクタ15−1、15−2及び15−3には、それぞれアレイアンテナ17−1から17−3までが設けられている。このセルラ網3内に例えばある端末AT9が存在し、基地局AP10と通信を行う。
【0021】
図2は、各セクタ15−1から3までのうち、セクタ15−2内の構成を示す図である。他のセクタも同様の構成を有している。アレイアンテナ17−2は、例えばセクタを3分割する3つの第1から第3までのアンテナ23−1から23−3までを有している。第1から第3までのアンテナ23−1から23−3は、それぞれ、セクタ15−2をほぼ3分割する指向性のある狭ビームにより形成されるアンテナパタン25−1から25−3までを出しており、これらのアンテナパタンのいずれを用いて通信を行うかに関しては、端末AT9の位置により変化する。この際、通信を行わないアンテナはアンテナパタンを出さないため、干渉信号の影響をより低減させることができる。
【0022】
図3は、本発明の第1の実施の形態による無線通信技術によるパケット通信処理の流れを示す図である。図3において、図の上から下に向けて時間が経過する。図3に示すように、本実施の形態による無線通信システムは、説明の簡単のため、第1及び第2の基地局(AP1、AP2)が存在する環境を例示しているが、もちろん、基地局の数がさらに多くても良い。すなわち、基地局数には関係がない。
【0023】
第1及び第2の各基地局(AP1、AP2)は、それぞれにユニークなパイロット信号SP1、SP2を送信している。
但し、本実施の形態による無線通信システムにおいては、図7に示す無線通信システムと異なり、第1及び第2の各基地局(AP1,AP2)は、それぞれ3つのアンテナ23−1から23−3までを有するアレイアンテナ17−2を具備しており、アレイアンテナを有していない一般的なセクタ構成よりもより狭ビームによって通信を行う。
【0024】
従って、第1及び第2のそれぞれの基地局AP1、AP2は、これらのアレイアンテナ17−2の各アンテナ23−1から23−3までの全ての狭ビームでパイロット信号を送信する。全ての狭ビームでパイロット信号を送信することにより、(1)端末ATにおいて、各ビームの受信状態を把握することができる。また、(2)各狭ビームで送信された信号を同期検波することができる。
【0025】
但し、本実施の形態による無線通信技術においては、各狭ビームを識別する方法は問わない。例えばビーム毎に拡散するコードを変える方法であっても、ビーム毎にタイムスケジュールが決め時分割でビームを識別する方法であっても良い。
【0026】
端末ATでは、これらのパイロット信号PS1−1からPS1−3までとPS2−1からPS2−3までを受信し、それぞれの受信レベルを推定する(ステップ101)。
端末ATは、受信レベルが最も高いビームを送信した基地局(最寄りの基地局)に対してパケットの要求を行う。ここでは、第1の基地局AP1が選択されたものとする。端末ATは、C/Iから下り回線(基地局→端末)でのデータレート(DRC)を判断するが、一般的な従来の無線通信技術においては、以下の(1)式に基づいて最も強い信号のC/IからDRCを推定する。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、希望するデータを送信するのは1つのアンテナだけであり、従って希望波受信電力はCになる。干渉局となる基地局数がnであり、干渉電力Inはそれらの基地局からの干渉電力の総和として求められる。
これに対して、本実施の形態による無線通信技術においては、アレイアンテナが具備されていて、各パケットによって送信に使用されるアンテナパタンが異なる。従って、ある時間帯でパイロット信号により推定した信号が、実際に基地局APが信号を送信する時点でも同じC/Iになるという保証がない。
【0029】
そこで、端末ATは、「基地局APが連携して最も信号品質が良くなるように、時空間のパケットスケジューリング(調整)を行うことを前提として(見越して)」、DRCを決定する。すなわち、推定した基地局の全てのビームの受信電力のうち、信号に関して最も高い信号レベル(Cmax)のビームであって、かつ、干渉に関しては最も低い信号レベル(Imin)のビームで送信されたものと仮定してC/Iを計算し、次いでC/Iに基づいて、DRCを決定する。
複数の基地局APからの干渉を考慮する必要があるため、以下の(2)式のように、各基地局APに関して上記の思想に基づいて干渉電力を推定し、その和をトータルの干渉電力とし、信号電力と干渉電力との商からC/Iを計算する。
【0030】
【数2】
iはビーム番号、nは干渉局の番号である。
【0031】
(2)式の分子は、端末ATにおいて受信電力が最大となるビーム番号iにおける電力max{Ci}であり、一方、分母は各セクタからの干渉電力が最小となるビーム番号iにおける電力{In,i}の総和からなる。干渉に関しては、同じ基地局APにおいては狭ビームのうちの1つのみから信号が出るため、端末の方向を向いていない時に送信(106)を行うように調整(スケジューリング)を行うことで最小の干渉電力min{In,i}の総和を実効的な干渉電力とすることができる。
(2)式より求めたC/Iを用い、予め用意されている参照テーブル(図6を参照して後述する)を用いて、C/IからDRCを求める(ステップ101)。
【0032】
測定されたDRC及びパイロット電力あるいはビームの品質に関わる情報は、無線を介して第1の基地局AP1に送られる(ステップ102)。ビームの品質に関する情報は、例えば、それぞれのビームにおける電力(Ci)で表される。ここで第1の基地局AP1は、端末ATにとって受信信号レベルCが最も高いビームを所持する基地局である。第1の基地局AP1はネットワークとつながっており、第1の基地局AP1の配下にある端末に送るべきパケットが蓄積されている。
【0033】
ステップ102により、各基地局APはどの端末ATに対してどのビームにより送信すれば良いかを知るため、ビーム別に送信するべき情報に関する待ち行列を作っておく。待ち行列の構成例を図4に示す。図4に示すように、ビーム毎の待ち行列25−1から25−3までは、送信すべき情報のパケット31を含んでいる。例えば、待ち行列25−1においては、情報31−1−1のパケットを有している。待ち行列25−2においては、情報31−2−1と31−2−2とのパケットを有している。待ち行列25−3においては、情報31−3−1から4までのパケットを有している。
【0034】
基地局は、これらの待ち行列の内容に基づき、最も待ちパケットが多いビーム(図4では、25−3)を選択して送信ビームスケジュールを決める。最もパケット数が多いビームを選択することにより、トラヒック(輻輳)を効率よく処理することができる。また、蓄積されているパケット数が多いビームは、後にステップ105において選択する信号品質Ciが最も良い端末ATへの送信パケットを選択する際の選択枝が多くなり、良好な特性が期待できる。
【0035】
尚、最も多くのパケットが蓄積されたビームを連続的に選択すると、同一方向だけに送信が続くこととなるため問題がある。この対策としては、指標D/dに基づいてビームを決めることができる。ここで分子のDは、各ビームの待ち行列に蓄積されているパケット量を示し、分母のdは各ビームで最近送信されたパケット量を示す。このような指標を各ビームに対して作成し、ビーム間で指標を比較して、最も値が大きいものを選択すれば良い。
【0036】
次に、基地局間の通信について説明する。図3の符号103(103−1、103−2)は、基地局AP間の通信を示している。周辺の基地局間では、上記の送信ビームスケジュールの結果が共有されている。上記スケジュールが更新された際に、基地局APは、通信によりその情報を交換する。基地局AP間の通信は、無線であっても有線であってもよい。情報交換により、それぞれの基地局は、将来に向けてその周辺に存在する基地局における送信ビームのスケジュールを把握することができる。
【0037】
次に、パケットのスケジューリング(調整)を行うステップ105について説明する。上述のように、次にどのビームを用いて送信するかに関しては既に決まっており、ステップ105では、待ち行列に蓄積されたパケットのうちのいずれのパケットを送信するかについて決定する。また、周囲の基地局が、次のタイミングにおいてどのビームで送信するかに関しても上記情報交換により知っているため、その情報に基づいて、待ち行列内のパケットを送る際のC/Iを推定し、最もC/Iが高いパケットを送信する。C/Iの分子Cは信号電力であり、選択されたビームになる。
【0038】
尚、他の基地局についても、端末ATは、ステップ102により報告しているから、分母Iに関しても、該当するビームについて推定された信号電力の和を取ることで簡単に推定することができる。次いで商を取ることにより、C/Iを推定することができる。
【0039】
待ち行列に蓄積されているパケットについてこの計算を行い、最もC/Iが高いパケットを送信することにより、無線通信システムにおける最も高い性能を発揮することが期待できる。端末ATは、C/Iが最小になることを期待してDRCを決定しているため、送信される情報は最もこの期待に近いものとなる。従って、高いDRCを有する通信を行うことができる。
【0040】
最後に、基地局AP1は、端末ATが要求してきたDRCの伝送レートで、また、先に決定しているビームを用いてパケットを送信する(ステップ106)。尚、基地局APはベストエフォートとしてパケットを選択している場合には、端末ATが期待していたC/I以下のC/Iしか実現できない場合もある。しかし、単発の通信が失敗しても、その情報を別のデータに変換して異なる情報として送信するハイブリッドARQ技術を併用することにより、送信された情報は無駄にはならない。
【0041】
次に、本発明の第2の実施の形態による無線通信システムについて、図5を参照して説明する。図5は、本発明の第2の実施の形態による無線通信技術における無線通信方法の流れを示す図である。図5は、図面の上から下に向けて時間の経過を示す。説明の便宜上、図5においては、2つの基地局(第1の基地局AP1、第2の基地局AP2)が存在するシステムを例に説明するが、基地局の数が増加しても良い。
【0042】
本実施の形態による無線通信技術と、第1の実施の形態による無線通信技術との相違点について説明する。第1の相違点は、本実施の形態による無線通信技術においては、端末ATは下り回線の送信データレートDRCを決定するが、基地局APに送信するのはDRCのみであり、各ビームが送信しているビームの品質に関する信号品質情報を送信しない。第2の相違点は、基地局AP同士がビームのスケジューリング(調整)を行わない点である。第3の相違点は、要求された信号の送信は、例えばFIFO(First In−First Out)に基づく順序で行い、パケットのスケジューリングも行わない点である。
【0043】
本実施の形態による無線通信技術では、端末ATは、基地局APがランダムにビームを選択することを利用してDRCを決定する。基地局APは、FIFOでパケットを送信しているため、ビーム選択がランダムに行われる。例えば図5のように3つのビームPS−1からPS−3までをもつ基地局AP−1の場合には、各ビームが平均的には1/3の確率で選択されると考えれば良い(ステップ201)。
【0044】
端末ATは、ビーム毎に測定した受信レベルに対して、その確率Piで重み付けを行い、干渉電力Iの期待値を算出する。また、信号電力Cに関しては、常に端末ATの方にビームが向けられていることが約束されているため、そのビームによる受信電力Ciを信号電力とする。基地局AP(n)毎にPiCiの総和と、PiIn,iの総和を取り、これらの総和の商を取ることにより(3)式に基づいてC/Iを計算することができる。
【0045】
【数3】
【0046】
(3)式により求められたC/Iに基づき、第1の実施の形態による無線通信技術でも用いたテーブルと同様のテーブル(図6参照)により、C/Iと対応するDRCを決定する。
以上の課程を経て決定されたデータレートDRCは、無線により基地局AP1に送られ(ステップ202)、基地局APでは、FIFOに基づいてパケットを送出する。この際、第1の実施の形態による無線通信システムのように、第1の基地局AP−1と、隣接する第2の基地局AP−2とは情報交換を行わない。
【0047】
本実施の形態による無線通信技術では、隣接する基地局間の干渉に関するコントロールはされないことから、パケット衝突によるスループットの低下が生じる可能性はある。また、通信環境によっては、一部のビームにトラヒックが集中する場合もある。しかしながら、本実施の形態による無線通信技術では、下り回線の情報を端末ATから基地局APに送信しなくて良いこと、基地局AP−1、AP−2間の情報交換を行わなくても良いことから、システム構成が簡単になるという利点がある。
【0048】
次に、本発明の第3の実施の形態による無線通信技術について図面を参照して説明する。
第1又は第2の実施の形態による無線通信技術では、C/IからDRCを求めるテーブルを端末ATが予め有していることを前提としている。
本実施の形態による無線通信技術では、通信状況の変化に応じて各基地局APがC/IからDRCを求めるのに使用するテーブルの内容の変更を指示する。
【0049】
図6に、本実施の形態において用いるC/I−DRC変換テーブルの構成例を示す。図6に示すように、C/Iに対応して、DR1からDRnまでの複数(n)列のDRCが表示されている。ポインタPにより実線の矢印で示されている列が現在選択されているDRC列(図6ではDR2が選択されている。)である。現在は、C/IとDR2との対応関係により、C/IからDRCを求めている。このポインタPは、通信の状況により破線の矢印で示されるように左右のいずれかに向けて動き、その時点におけるC/IとDRnとの関係によりDRCを求めることができるようになっている。
【0050】
例えば、端末ATが推定したDRCに満たない通信状態は、上記のC/I→DRC変換テーブルのボーダ付近で発生しやすい。例えば、128kb/sと256kb/sとの境界が、例えばC/I=2dBであったとすると、C/I推定値が2dB付近で、256kb/sが指示された際に発生しやすい。C/I未達となる条件は、周囲の基地局の通信条件等によって変わるため、時間的、場所的に限定される。従って、基地局AP単位で、ダイナミックに上記図6に示すようにテーブルを書き換える(ポインタPの位置を左右に動かす)ことにより、すなわち、上記の場合には、DR1の列にポインタPを動かすことにより、低いDRCでデータを安全に送信することができる。より具体的にポインタを動かす指標について説明すると、例えばPER(パケットエラーレート、通信したパケットを誤り判定符号により誤り判定)により求められる通信の成功確率が大きい場合には、より高いDRCにより通信を行うようにポインタを動かす(図6では、右側にポインタPを動かす)。一方、通信の失敗の確率が大きい場合には、より低いDRCにより通信を行うようにポインタを動かす(図6では、左側にポインタPを動かす)。
例えば、時間的、場所的に厳しい状況であっても、例えば高すぎるDRC要求に起因する通信の失敗を避けることができる。
【0051】
テーブルの変更(更新)状況は、例えば共通制御情報をブロードキャストする共通制御チャネルにおいて報知すればよい。端末ATは、上記のテーブル更新情報に基づいてテーブルの値を変更する。各基地局APは、通信不良の発生率(FERなど)により上記テーブルを変更する。すなわち、通信不良によるNACK(Not Acknowledge)信号が端末ATから多く返信される場合には、DRCの値が低くなるようにテーブルの値を変更して(図6のポインタPを左側に移動させて)通信不良の発生を抑制する。他方、NACKが殆ど発生しない場合には、テーブルの値を変更しないか、或いはより高いDRCが得られるようにテーブルの値を変更する(図6のポインタPを右側に移動させる)。
【0052】
以上、本実施の形態による無線通信技術によれば、例えば通信不良の発生率などに応じて、C/IとDRCとの変換テーブルを変更し、不良の発生が多ければより低いDRCが得られるように、不良がほとんどなければより高いDRCが得られるようにすることで、その場所・時間でのデータ伝送速度(伝送レート)を最適化することができ、より安全かつ確実に高速通信を行うことができる。
以上、実施の形態に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。その他、種々の変更、改良、組み合わせが可能なことは当業者に自明であろう。
【0053】
尚、本明細書は以下の付記に記載されている開示を含むものとする。
(付記1)1つ以上の端末と無線通信を行う基地局装置において、上記端末は各基地局から少なくとも1つ以上のアンテナから送信された信号を受信して、それぞれの信号品質を推定し、かつ信号品質から推定される下り回線の伝送レート情報を作成するステップ1と、上記伝送レートと信号品質を上記基地局に送信するステップ2からなり、かつ上記基地局装置はネットワークから来た情報を蓄積し、蓄積された情報と上記の信号品質情報からどのアンテナあるいはアレイパタンを使って情報を送信するかを決定するステップ3(送信アンテナスケジュール)と、周辺基地局と通信して上記送信アンテナスケジュールの情報を共有するステップ4と、周囲基地局の送信アンテナスケジュールと自局の送信アンテナスケジュール、および上記の端末から送られてきた各アンテナの信号品質情報を総合して、どの端末への情報パケットを送るかを決めるステップ5と、上記ステップ5で決定した情報パケットを上記端末から送られてきた伝送レートで送信するステップ6からなることを特徴とする無線通信方法。
【0054】
(付記2)1つ以上の端末と無線通信を行う基地局装置において、上記端末は各基地局から少なくとも1つ以上のアンテナあるいはアレイパタンを使って送信された信号を受信して、それぞれの信号品質を推定し、かつ信号品質から推定される下り回線の伝送レート情報を作成するステップ7と、上記伝送レートを上記基地局に送信するステップ8からなり、ネットワークから送られてきた情報パケットを上記端末から送られてきた伝送レートで送信するステップ9からなることを特徴とする無線通信方法。
【0055】
(付記3)付記1又は2に記載される無線通信方法であって、ハイブリッドARQを併用することを特徴とする無線通信方法。
(付記4)付記2に記載される無線通信方法であって、上記ステップ7は、それぞれのアンテナあるいはアレイパタンを使って送信された情報の信号品質の期待値から下り回線の伝送レートを推定することを特徴とする無線通信方法。
【0056】
(付記5)付記1に記載される無線通信方法であって、上記ステップ1は、それぞれのアンテナあるいはアレイパタンを使って送信された情報の信号品質から最も良いものを選択して決定することを特徴とする無線通信方法。
(付記6)付記1に記載される無線通信方法であって、上記ステップ3は、最も多くのパケットを蓄積しているアレイパタンを優先して送信アンテナスケジューリングすることを特徴とする無線通信方法。
【0057】
(付記7)付記1に記載される無線通信方法の上記ステップ1あるいは付記2に記載される無線通信方法の上記ステップ7において、下り回線の伝送レートを決定する際に、測定された通信品質から伝送レートを算出する変換テーブルをもち、上記基地局からの指示により、上記変換テーブルの値を書きかえることを特徴とする無線通信方法。
【0058】
【発明の効果】
アレイアンテナを具備しパケット送信を行う基地局を有する無線通信システムにおいて、干渉波の影響を低減しC/Iに関するより正確な調整を行うことができる。従って、無線パケット通信をより良好かつ確実な条件の下で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 アレイアンテナを具備する、本発明の第1から第3までの実施の形態による無線通信システムの概略構成を示す平面図である。
【図2】 図1の1セルの構成をより詳細に示す平面図である。
【図3】 本発明の第1の実施の形態による無線通信技術における処理の流れを示す図である。
【図4】 本発明の第1の実施の形態による無線通信技術における待ち行列の構成例示す図である。
【図5】 本発明の第2の実施の形態による無線通信技術における処理の流れを示す図である。
【図6】 本発明の第3の実施の形態による無線通信技術における変換テーブルの構成例を示す図である。
【図7】 アレイアンテナを具備しない一般的なcdma無線通信システムにおける処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
P…ポインタ、1…無線通信システム、3…セルラ網、5…セルラ網の終端、7…データの供給元、AT(9)…端末局、AP(10)…基地局、11…セル、15−1〜3…セクタ、17−1〜3…アレイアンテナ、23−1〜3…アンテナ、25−1〜3…狭ビーム、PS…パイロット信号、101…受信信号レベル検出ステップ、102…DRC、受信レベル(伝搬路)送信ステップ、103−1、2…情報共有ステップ、104…送信アンテナスケジューリングステップ、105…パケットスケジューリングステップ、106…下り情報送信ステップ、207…FIFOパケットスケジューリングステップ、301…受信信号レベル検出ステップ、302…データレート決定ステップ、303…データレート送信ステップ、304…可変データレート変調ステップ、305…下りパケット送信ステップ。
Claims (8)
- 複数の基地局であって、各基地局がそれぞれ備える複数のアンテナパタンのいずれかにより通信を行う基地局と、第1の端末局を含む少なくとも1以上の端末局と、を含んで構成される無線通信システムであって、
前記第1の端末局は、複数の前記アンテナパタンから送信されたパイロット信号に基づき第1のアンテナパタンと該第1のアンテナパタンを有する第1基地局とを特定し、前記第1のアンテナパタンにより送信された信号の受信電力を推定するとともに、前記第1の基地局を除く複数の基地局が有する第2アンテナパタン群から送信された信号の受信電力の総和に基づき干渉電力を推定し、推定された前記受信電力を推定された前記干渉電力で除算して求めた計算値に基づいて、前記第1の基地局が前記第1の端末局に送信する際の送信信号のデータレートを求めることを特徴とする無線通信システム。 - 複数の基地局であって、各基地局がそれぞれ備える複数のアンテナパタンのいずれかにより通信を行う基地局と、第1の端末局を含む少なくとも1以上の端末局と、を含んで構成される無線通信システムであって、
前記第1の端末局は、複数の前記アンテナパタンから送信されたパイロット信号を受信し、最も高い信号電力で受信された第1のアンテナパタンと該第1のアンテナパタンを有する第1基地局とを特定し、前記第1のアンテナパタンにより送信された信号の受信電力を推定するとともに、前記第1の基地局を除く複数の基地局が有する第2アンテナパタン群から送信された信号であって、それぞれの基地局において最も低い信号電力で受信された信号の受信電力の総和からなる干渉電力を推定し、推定された前記受信電力を推定された前記干渉電力で除算して求めた計算値に基づいて、前記第1の基地局が前記第1の端末局に送信する際の送信信号のデータレートを求めることを特徴とする無線通信システム。 - さらに、前記第1の端末局は、前記パイロット信号に基づいて信号品質を推定し、推定された信号品質を前記データレートとともに前記第1の基地局に送り、
前記第1の基地局とその周辺の基地局との間で、前記信号品質が良くなるように送信アンテナのスケジューリングの調整を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信システム。 - 前記送信信号は、パケット信号であり、
前記スケジューリングの調整は、最も多くのパケット信号を蓄積しているアンテナパタン中のパケット信号を優先的に送信することを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。 - 複数の基地局であって、各基地局が備える複数のアンテナパタンのいずれかにより通信を行う基地局と、第1の端末局を含む少なくとも1以上の端末局と、を含んで構成される無線通信システムであって、
前記第1の端末局は、複数の前記アンテナパタンから送信されたパイロット信号を受信し、受信したパイロット信号に基づいて、送信対象となる第1基地局が備える第1のアンテナパタンにより送信された信号電力と前記第1のアンテナパタンにより信号が送信される確率とを乗算した値を受信電力と推定するとともに、前記第1の基地局を除く複数の基地局が有する第2アンテナパタン群のそれぞれにより送信されたそれぞれの信号と該信号がそれぞれのアンテナパタンから送信される確率とを乗算した値の総和を干渉電力と推定し、推定された前記受信電力を推定された前記干渉電力で除算して求めた計算値に基づいて、前記第1の基地局が前記第1の端末局に送信する際の送信データレートを求めることを特徴とする無線通信システム。 - 前記第1の端末局において実現される受信電力を干渉電力で除算した値が、前記第1の端末局における計算値よりも小さい場合に、
前記基地局は、送信データを異なるデータに変換し、変換後のデータを前記端末局に送ることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の無線通信システム。 - 前記計算値と前記データレートとの対応関係を規定する変換テーブルであって、通信不良の発生率に基づいて、前記計算値と前記データレートとの対応関係を変更することができる変換テーブルを有する
請求項1から6までのいずれか1項に記載の無線通信システム。 - 複数の基地局であって、各基地局がそれぞれ備える複数のアンテナパタンのいずれかにより通信を行う基地局と、第1の端末局を含む少なくとも1以上の端末局と、を含んで構成される無線通信システムに用いられるのに適しており、
複数の前記アンテナパタンから送信されたパイロット信号を受信し、最も高い信号電力で受信された第1のアンテナパタンと該第1のアンテナパタンを有する第1基地局とを特定し、前記第1のアンテナパタンにより送信された信号の受信電力を推定するとともに、前記第1の基地局を除く複数の基地局が有する第2アンテナパタン群から送信された信号であって、それぞれの基地局において最も低い信号電力で受信された信号の受信電力の総和からなる干渉電力を推定し、推定された前記受信電力を推定された前記干渉電力で除算して求めた計算値に基づいて、前記第1の基地局が前記第1の端末局に送信する際の送信信号のデータレートを求めるとともに、前記パイロット信号に基づいて信号品質を推定し、推定された信号品質を前記データレートとともに前記第1の基地局に送ることを特徴とする端末局。
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