JP3664966B2 - 秘密証拠供託方法および秘密証拠供託プログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、送信者が受信者に「情報Xの内容を既に決定していること」を証拠づける情報を「情報Xの内容」を秘密にしたまま提供し、時間が経過した後に送信者が「情報Xの内容」を開示するときに「情報Xの内容が変更されていないこと」を受信者に納得させることを可能にする秘密証拠供託方法および秘密証拠供託プログラムを記録した記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のコンピュータネットワークの発展に伴って各種の商取引などをネットワーク上で行う電子マネーや集団意志決定をネットワーク上で行う電子投票などに対する需要が高まっている。このような応用を考えるに当たって基本となる重要な要素技術の一つが秘密証拠供託である。秘密証拠供託の最も簡単な例はコイン投げもしくはビットコミットメントである。ここでAとBの二人の人間がコインを投げて二人とも同じ面が出ればAの勝ち、出た面が異なっていればBの勝ちとする。二人が同じ場所にいれば同時にコインを投げて互いに相手の行動を観察して結果を知ることができるので何の問題も生じない。しかし、AとBが異なる場所にいて通信回線を介してコイン投げをする場合、先に自分の結果を伝えるAの方は後手であるBが正直に結果を返信してきたかどうかについて全く確信がもてない。なぜならば後手のBは先手のAからの申告をもとにしていくらでも自分の結果をねつ造できるからである。
【0003】
このような局面は単なるゲームにとどまらず日常生活の様々な場面で現われる。例えば、先生が生徒にある問題を出して生徒が解けるかどうかを試してみようとする。生徒が首尾よく解答できたとしても、その生徒は先生が本当に初めから解答を知っていたかどうかをどうやったら確信できるだろうか。先生としては自分が解答を知っていることを証拠づけるための情報を伝えておかなければならないが、このときに解答の片鱗すらも生徒にもらさないようにしなくてはならない。このように二者間の取引において後手が先手の出方に応じて一方的に有利に行動できることの無いようにし、両者が公平な立場で安心して取引に応じることができるような仕組を実現することが秘密証拠供託方法の目的である。
【0004】
このような要請に応えるために、今日では公開鍵暗号方式等を応用したある種の暗号化セキュリティ処理技術が広く用いられている[文献1:太田、黒澤、渡部、「情報セキュリティの科学、講談社、1995]。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような現代暗号理論を駆使して構築された秘密証拠供託方式の信頼性は計算量理論によって裏付けされている。計算量理論では、ある問題を解くのに必要な計算時間が問題のサイズまたは複雑さの増大に応じてどのように増加するのかを評価することにより、その問題が実際に解ける問題なのか解けない問題なのかを判別している。ここでサイズnの増加に対して計算時間tが指数関数的に(t∝exp(n))天文学的な値にまで増大してしまう場合には、一般にその問題は解けないとみなされ、サイズnの有限多項式で表わされる時間内で解ける場合にはその問題は易しい問題(解ける問題)とみなされる。
【0006】
公開鍵暗号方式の信頼性はこのような計算量理論の前提に基づいており、今日一応広く受け入れられてはいる。しかしながら、暗号解読に利用できる計算機の計算能力の増大も今日極めて著しく、暗号系のサイズ(複雑さ)の増大との間にいたちごっこの関係が続いている。つまり、ある時期安全とみなされていた暗号系もそれからほどなくして解読可能となってしまうという懸念を本質的に解消することは不可能である。更に計算量理論的に難しいとされ、現代暗号の基礎となっている多くの数学的な問題に対して、高速解法(多項式計算時間内で解けてしまうような効率的な解法)が存在しないことが証明されているわけではなく、将来これらが発見される可能性が皆無なわけではない。
【0007】
このように現代暗号に基づく秘密証拠供託方式の信頼性および安全性は原理的には問題があるといわざるおえない。そこで原理的により信頼性の高い秘密証拠供託方式を検討することが重要な課題となる。
【0008】
一方、近年提唱されている量子暗号のアイディアによれば、計算量理論でなく、量子力学の不確定性原理によって信頼性を確保することが可能である[参考文献2:H.K.Lo,S.Popescu, and T.Spiller,ed.,Introduction to Quantum Computation and Information(World Scientific,Singapore,1998)。
【0009】
このような量子効果を利用して秘密証拠供託を行う方法については既に幾つかの研究がなされてはいるが、いずれも極めて数学的に複雑であるかまたは安全性の証明に疑問が残っている。更に、もし大規模な量子計算機が利用可能であれば、ありとあらゆる量子力学的な二者間秘密証拠供託は原理的に不可能であることが数学的に証明されてしまっている[参考文献2]。しかしながら、このような本格的な量子計算機を実際に構築することは物理的かつ技術的に極めて困難な課題であり、少なくともこれからの半世紀の間はその可能性を念頭におく必要はないと考えられる。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、量子力学の不確定性原理によって安全性が確保でき、大規模な量子計算機が実現されない間は十分に信頼性を維持することができる新規な秘密証拠供託方法および秘密証拠供託プログラムを記録した記録媒体を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1記載の本発明は、送信側においては、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子ないし粒子系を単位ビットの情報キャリアとして利用するに当たり、四つの互いに直交する量子力学的状態の組からなる第一および第二の異なる二組の互いに非直交な直交基底系をランダムに用いて、単位ビットを符号化した情報キャリアを発生し、該情報キャリアがM個で構成されるビット列をN個用意し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が0である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が0になるように情報キャリアを設定し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が1である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が1になるように情報キャリアを設定し、このように設定された全ての情報キャリアをその量子状態を保持したまま撹乱することなく伝送路を介して受信側に送信し、受信側においては、前記伝送路から受信した情報キャリアを前記第一および第二の直交基底系における量子状態の組合せ方とは異なる組合せ方により構成される第三または第四の直交基底系を用いて各情報キャリアの量子状態を測定し、各情報キャリア毎に測定結果を記録し、送信側においては、前記情報キャリアを送信した以降において全ての情報キャリアについて符号化に用いた直交基底の種類と量子状態を付加情報として受信側に公表し、受信側においては、前記測定結果を前記付加情報に基づいて解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定することを要旨とする。
【0012】
請求項1記載の本発明にあっては、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子または粒子系を情報キャリアとして、その量子状態に適切な方法でビット情報の符号化を行って送信し、かつ適切な方法で受信した情報キャリアの量子状態の測定を行って測定結果を得るとともに、この場合に多数の情報キャリアを用いることにより秘密証拠供託されたビット値が受信側で判明してしまう確率および送信側で後でビット値を変更してしまう確率を漸近的に0に近づけているため、量子力学の不確定性原理によって安全性が保証された秘密証拠供託方法を構築することができる。
【0013】
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載の発明において、送信側においては、複数の情報キャリアからなるブロックを構成して誤り訂正符号を導入し、各ブロック毎に単位ビットを割り当て、それぞれM個の単位ブロックから構成されるビット列をN個用意し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が0である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が0になるように設定し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が1である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が1になるように設定し、前記情報キャリアを送信した以降において全ての情報キャリアについて符号化に用いた前記直交基底の種類と量子状態に加えて、前記誤り訂正符号の種類を付加情報として受信側に公表し、受信側においては、前記誤り訂正符号を加えられた付加情報に基づいて前記測定結果を解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定することを要旨とする。
【0014】
請求項2記載の本発明にあっては、複数の情報キャリアからなるブロックを構成して誤り訂正符号を導入し、直交基底の種類と量子状態に加えて、誤り訂正符号の種類を付加情報として受信側に公表し、受信側では誤り訂正符号を加えられた付加情報に基づいて測定結果を解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定するため、伝送路に伝送誤りがあって、システムエラーにより情報キャリアの単位ビットの反転などが発生した場合でも、この導入した誤り訂正符号によりシステムエラーの影響を除去することができる。
【0015】
更に、請求項3記載の本発明は、送信側においては、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子ないし粒子系を単位ビットの情報キャリアとして利用するに当たり、四つの互いに直交する量子力学的状態の組からなる第一および第二の異なる二組の互いに非直交な直交基底系をランダムに用いて、単位ビットを符号化した情報キャリアを発生し、該情報キャリアがM個で構成されるビット列をN個用意し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が0である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が0になるように情報キャリアを設定し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が1である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が1になるように情報キャリアを設定し、このように設定された全ての情報キャリアをその量子状態を保持したまま撹乱することなく伝送路を介して受信側に送信し、受信側においては、前記伝送路から受信した情報キャリアを前記第一および第二の直交基底系における量子状態の組合せ方とは異なる組合せ方により構成される第三または第四の直交基底系を用いて各情報キャリアの量子状態を測定し、各情報キャリア毎に測定結果を記録し、送信側においては、前記情報キャリアを送信した以降において全ての情報キャリアについて符号化に用いた直交基底の種類と量子状態を付加情報として受信側に公表し、受信側においては、前記測定結果を前記付加情報に基づいて解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定する秘密証拠供託プログラムを記録媒体に記録することを要旨とする。
【0016】
請求項3記載の本発明にあっては、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子または粒子系を情報キャリアとして、その量子状態に適切な方法でビット情報の符号化を行って送信し、かつ適切な方法で受信した情報キャリアの量子状態の測定を行って測定結果を得るとともに、この場合に多数の情報キャリアを用いることにより秘密証拠供託されたビット値が受信側で判明してしまう確率および送信側で後でビット値を変更してしまう確率を漸近的に0に近づける秘密証拠供託プログラムを記録媒体に記録しているため、該記録媒体を用いて、その流通性を高めることができる。
【0017】
請求項4記載の本発明は、請求項3記載の発明において、送信側においては、複数の情報キャリアからなるブロックを構成して誤り訂正符号を導入し、各ブロック毎に単位ビットを割り当て、それぞれM個の単位ブロックから構成されるビット列をN個用意し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が0である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が0になるように設定し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が1である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が1になるように設定し、前記情報キャリアを送信した以降において全ての情報キャリアについて符号化に用いた前記直交基底の種類と量子状態に加えて、前記誤り訂正符号の種類を付加情報として受信側に公表し、受信側においては、前記誤り訂正符号を加えられた付加情報に基づいて前記測定結果を解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定する秘密証拠供託プログラムを記録媒体に記録することを要旨とする。
【0018】
請求項4記載の本発明にあっては、複数の情報キャリアからなるブロックを構成して誤り訂正符号を導入し、直交基底の種類と量子状態に加えて、誤り訂正符号の種類を付加情報として受信側に公表し、受信側では誤り訂正符号を加えられた付加情報に基づいて測定結果を解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定する秘密証拠供託プログラムを記録媒体に記録しているため、該記録媒体を用いて、その流通性を高めることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る秘密証拠供託方法を実施するシステム構成図である。図1を参照して、本実施形態の秘密証拠供託方法について説明する。図1に示す実施形態は、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子ないし粒子系を情報キャリアとして送信するための送信者側に設けられている送信装置1、この情報キャリアを受信して測定するための受信者側に設けられている受信装置2、および情報キャリアを送信者側の送信装置1から受信者側の受信装置2に伝送するための伝送路3から構成される第一の通信手段を備えている。また、送信者から受信者に対して後述する付加情報を送信する通常の商用通信システムである古典通信チャネル4が第二の通信手段として設けられいる。
【0020】
送信装置1は、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子ないし粒子系を情報キャリアとして発生し、それぞれ四つの互いに直交する量子状態の組からなる第一および第二の直交基底系の両方をランダムに用いて情報キャリアにビット値の符号化を行う。なお、具体的には、情報キャリアの具体例として偏光相関のある光子対[参考文献3:K.Shimizu and N.Imoto,“Communication channels secured from eavesdropping via transmission of photonic Bell states",Physical Review A,Vol.60,p.157,1999]や、四経路光干渉計中の単一光子[参考文献4:特願平11-197849号]などを利用することができる。
【0021】
また、受信装置2は、測定に際しては、第一および第二の直交基底系における量子状態の組合せ方とは異なる組合せ方により構成される第三または第四の直交基底系を用いて受信して測定結果を得る。なお、具体的には、情報キャリアとして偏光相関のある光子対を用いた場合にはベル状態解析装置[参考文献3]を、四経路光干渉計中の単一光子を用いた場合には適切な光干渉計と単一光子検出装置の組合せを受信装置として利用する[参考文献4]。伝送路3は、情報キャリアをその量子状態を乱すことなく送信装置1から受信装置2へと伝送することができる伝送媒体であればなんでもよいものである。
【0022】
このように構成される実施形態において、送信者は、時刻t1 において送信者が選択したビットの値が0か1のどちらであるのかを、t1 以後の時刻であるt2 において受信者をして確信せしめるに足りうる証拠として充分な情報を、選択したビット値自体を受信者に悟られることなしに時刻t1 において受信者に提供するために、前記第一の通信手段を利用する。
【0023】
また、前記時刻t2 において送信者は、受信者をして時刻t1 に提供された証拠情報に基づいて送信者により前記時刻t1 に選択されたビットの値を決定しうるに足りうる付加的な情報を受信者に提供するために該第二の通信手段を利用する。
【0024】
受信者は、時刻t1 において提供された証拠情報と時刻t2 において提供された付加情報との両者を用いることによってはじめて送信者が選択したビットの値を知ることが可能となる。
【0025】
送信装置1は、それぞれ四つの互いに直交する量子状態の組からなる第一および第二の直交基底系の両方をランダムに用いて単位ビットを符号化した情報キャリアを発生する。伝送路3は該情報キャリアを量子状態を保持したまま撹乱することなく受信装置2に伝える。受信装置2は、伝送路3から送られてきた情報キャリアを前記第一および第二の直交基底系における量子状態の組合せ方とは異なる組合せ方により構成される第三または第四の直交基底系を用いて受信し、測定結果を得る。
【0026】
ここで、送信者は、それぞれM個の情報キャリアから構成されるビット列をN個用意し、秘密証拠供託の対象となるビット値として0を選択した場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が0になるように設定し、また秘密証拠供託の対象となるビット値として1を選択した場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が1になるように設定する。
【0027】
送信者は、時刻t2 においてこの全ての情報キャリアについて符号化に用いた直交基底の種類と量子状態とを付加情報として受信者に公表する。受信者は、全ての情報キャリアについての測定結果を該付加情報に基づいて解析することにより、秘密証拠供託されたビットの値を判定する。そして、送信者が時刻t2 に提供する付加情報を操作することによって初めに選択したビットの値を変更することはできない。
【0028】
更に送信者は、複数個の情報キャリアからなるブロックを構成して誤り訂正符号を導入し、各ブロック毎に単位ビットを割り当ててそれぞれM個の単位ブロックから構成されるビット列をN個用意し、秘密証拠供託の対象となるビット値として0を選択した場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が0になるように設定し、また秘密証拠供託の対象となるビット値として1を選択した場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が1になるように設定する。
【0029】
また、送信者は、時刻t2 において全ての情報キャリアについて符号化に用いた直交基底の種類、送信量子状態、そして導入した誤り訂正符号の種類を付加情報として受信者に公表する。
【0030】
受信者は全ての情報キャリアについての測定結果を該付加情報に基づいて解析することにより秘密証拠供託されたビットの値を判定する。このとき、送信者が時刻t2 に提供する付加情報を操作することによって初めに選択したビットの値を変更することはできない。
【0031】
次に、上述した秘密証拠供託方法について具体的に説明する。
【0032】
送信者は、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子ないし粒子系に対して、異なる二組の互いに非直交な符号化基底系を用意し、両方の符号化基底をランダムに選択して情報キャリアとなる粒子ないし粒子系に1ビットの情報を符号化することとし、全部でM×N個の情報キャリアを準備し、M個の情報キャリアから構成されるビット列をN個用意する。
【0033】
もし秘密証拠供託の対象となるビット情報の値が0である場合には、一つのビット列に含まれるM個のビット値のブール代数総和が0になるようにM個の情報キャリアのビット値を設定する。一般に互いに異なるがそれぞれブール代数総和が0になるように設定されたN個のビット列を用意する。もし秘密証拠供託の対象となるビット情報の値が1である場合には、一つのビット列に含まれるM個のビット値のブール代数総和が1になるようにM個の情報キャリアのビット値を設定する。一般には互いに異なるがそれぞれブール代数総和が1になるように設定されたN個のビット列を用意する。そして、送信者は、送信装置1から伝送路3を介して全ての情報キャリアを一つ一つ順番に受信者に送信する。
【0034】
受信者は受信装置2での受信時に適切な量子状態測定を実行し、各情報キャリア毎に測定結果を記録し、その測定結果を送信者より供託された秘密証拠として保管しておく。この段階で受信者は各情報キャリアに符号化されたビット値をある確率a(a<1)で知ることは可能である。しかし全ての情報キャリアについてビット値が判明する確率(1−aM)はMが大きい場合には極めて0に近いた めに、受信者が送信者が供託したビットの値を知ることは事実上不可能とみなすことができる。
【0035】
送信者は、選択したビット値の情報を開示するとき、各情報キャリア毎に使用した符号化基底の種類と送信した量子状態を、秘密証拠を解読するために不可欠な付加情報として古典通信チャネル4を介して受信者に知らせる。
【0036】
受信者は、付加情報を用いて各情報キャリア毎に符号化されたビット値を決定し、各ビット列におけるビット値のブール代数総和を計算し、その結果がN個の全てのビット列について一致していればその値(0もしくは1)を送信者が供託したビットの値として受理する。もしN個のビット列の中にブール代数総和が異なるビット列があった場合には、受信者は送信者が手順を規則通りに履行しなかったものと判断し、秘密証拠供託を無効とする。
【0037】
送信者は、受信者に各情報キャリア毎に付加情報を知らせるときに付加情報の内容を意図的に偽ることによって一つの情報キャリアに符号化されたビット値をある確率b(b<1)で反転させることが可能であり、このことを利用すればM個の情報キャリアのうちのどれか一つのキャリアについて反転を試みることにより一つのビット列に符号化されたブール代数総和、すなわち供託ビットの値を変更することが可能である。しかしながら、N個のビット列の全てに対して供託ビットの値の変更に成功する確率(1−bN)は、Nが充分に大きい場合には極め て0に近いために、送信者が開示の段階で供託したビットの値を変更することは事実上不可能とみなすことができる。
【0038】
また、伝送路3に伝送誤りがある場合にはシステムエラーによって情報キャリアの単位ビットの値の反転が起こりうるため上記手順と手続きはそのままではうまく作用しない。しかしながら、通常の通信で用いられている誤り訂正符号を導入することによってシステムエラーの影響を除去することは本秘密証拠供託方式において可能である。
【0039】
誤り訂正符号を導入する場合、幾つか複数個の情報キャリアの組を一つのブロックとみなし、各ブロック毎にビット値を符号化する。すなわち、上記の手順において個々の情報キャリアが果たしていた役割を、個々のブロックが担うように変更したことになる。エラーによりブロック中の情報キャリアのビット値が反転したとしても、ブロック中の他の情報キャリアが正しく伝わっていれば、このエラーを訂正することができ、各ブロックに符号化されたビット値は最終的には正しく再現される。
【0040】
このようにしてM個のブロックからなるビット列をN個用意し、上記の手続きにしたがって秘密証拠供託の対象となるビット値をそれぞれのビット列に符号化することにより、システムエラーがある場合でもエラーが無い場合と同様に本秘密証拠供託方式を利用することが可能になる。
【0041】
次に、上述した秘密証拠供託方法の作用を[1]情報キャリアが一つしかない場合、[2]情報キャリアが多数個存在する場合、[3]誤り訂正符号を導入した場合について更に具体的に説明する。
【0042】
まず、情報キャリアが一つしかない場合について説明する。
【0043】
送信者は、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子または粒子系を単位ビット情報のキャリアとして利用する。ここでこれらの四つの互いに直交する量子状態を|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉とする。これらは一つの正規直交基底をなしており、情報キャリアの任意の量子状態はこれら四つの状態の線形結合で表わされる。ここでは|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉のそれぞれに対してベクトル表現
【数1】
を説明の都合上導入する。
【0044】
送信者は、単位ビットを情報キャリアに符号化して送信するときに、以下に示すような八種類の量子状態のいずれかをビット値が“0”か“1”であるかに依存して選択する。
【0045】
【数2】
これらの状態はいずれも|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉についての二項重ね合せ状態になっている。ここで量子状態の組{|A+〉,|B+〉,|A-〉,|B-〉}と、もう一つの組{|C+〉,|D+〉,|C-〉,|D-〉}はそれぞれ{|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉}とは異なるまた別の正規直交基底を成しておりそれらの要素は互いに非直交である。そこで前者をAB−符号化基底、後者をCD−符号化基底と呼ぶことにする。
【0046】
ビット値“0”を符号化する場合には、送信者は状態
|A+〉,|A-〉,|C+〉,|C-〉
のいずれか一つをランダムに選択して送信する。
【0047】
一方で、ビット値“1”を符号化する場合には、送信者は状態
|B+〉,|B-〉,|D+〉,|D-〉
のいずれか一つをランダムに選択して送信する。
【0048】
言い替えると、送信者はビット値を符号化する際、符号化基底(AB−符号化基底かCD−符号化基底か)と重ね合せの記号(+か−か)をランダムに選択することになる。そして情報キャリアを送る段階では、これらの選択肢の内容については秘密にしておく。ここで二つの符号化基底は互いに非直交なので、符号化に利用された基底が知らされていない場合には、受信者は送られた量子状態が何であるのかを決定することは不可能である。これは、未知の偏光状態をもつ単一光子に対して測定によりその偏光状態を決定することが不可能であるという量子力学の不確定性原理からの要請と物理的に同様な制約である。
【0049】
受信者は、送られてきた情報キャリアを測定する際に以下に示す二種類の測定方法のいずれかをランダムに採用する。前述したように、受信者は符号化基底と重ね合せの記号を知らされていないので送信された量子状態を測定により決定することはできないが、以下に示すように測定方法を工夫することでビット値に関する部分的な情報を得ることは可能である。
【0050】
第一の測定方法では、情報キャリアの状態を正規直交基底{|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉}に射影直交分解する。このとき受信者は|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉のいずれかの測定結果を得ることになる。図2に示すように、もし|P〉が得られたら、符号化基底の種類や重ね合せの記号(+−)の種類にかかわらずビット値が“0”であることが確定する。同様に|S〉が得られたら、ビット値が“1”であることが確定する。一方で|Q〉や|R〉が得られた場合には符号化基底の種類によってビット値が変わってしまうので測定結果だけからビット値を決めることはできない、つまりこの段階ではビット値は不確定である。受信者にとってビット値が確定するか不確定になるかの確率は、重ね合せの係数の振幅が
【数3】
であることから1/2である。
【0051】
もしビット値が不確定になった場合でも、後から符号化基底の種類を知らせてもらえさえすれば、受信者は測定結果をもとにして最終的にビット値を回復することが可能である。例えば|Q〉を得ていた場合、符号化基底がAB−基底であることがわかればビット値は“0”であったことが判明する。同様にCD−基底であれば“1”に確定する。
【0052】
第二の測定方法では、正規直交基底{|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉}に射影直交分解する前に、情報キャリアの量子状態に対してある変換U(状態ベクトルの回転/ユニタリ変換):
【数4】
を施し、その後で{|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉}を用いて測定を行う。変換Uによって情報キャリアの量子状態はそれぞれ以下のように変化するが、変換の後も|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉についての二項重ね合せ状態であることには変わりはない。
【0053】
重ね合せの符号が+である場合:
【数5】
重ね合せの符号が−である場合:
【数6】
第二の測定方法を採用した場合の測定結果と送信量子状態との関係を図3に示す。第一の測定方法を採用した場合とは異なり、|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉のうちのいかなる測定結果が得られていも受信者にとってビット値が確定することはない。なぜならば図3を見ればわかるように、重ね合せの記号が+か−かであるかによってビット値が反転してしまうからである。
【0054】
それでも尚、後で送信者から符号化基底の種類(AB−符号化基底かCD−符号化基底か)と重ね合せの記号(+か−)を知らされれば自分の測定結果をもとにして最終的にビット値を決定することができる。第二の測定方法を採用して変換Uを施すことは、正規直交基底{|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉}とはまた異なる正規直交基底を採用することと等価である。AB−基底、CD−基底をそれぞれ第一、第二の直交基底とすれば、{|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉}基底による測定と、変換Uの後に行う{|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉}基底による測定は、それぞれ第三、第四の直交基底を利用したものと考えることが可能である[参考文献3]。
【0055】
このように、受信者が情報キャリアに符号化されたビット値を測定によって決定できる確率は少なくとも1/2以下である(第一の測定方法を用いた場合には1/2、第二の測定方法を用いた場合には0)。送信者の立場では、これらはある確率で自分が選択したビット値を受信者に対して秘密にできることを意味している。
【0056】
そこで次に送信者が使用した符号化基底(AB−基底かCD−基底か)種類と重ね合せの記号(+か−か)を受信者に知らせる段階で、知らせる内容を意図的に偽ることによってビット値を反転することができるかどうかを考えてみる。ここで受信者がいつも第一の測定方法しか使用しないと仮定する。そのことを送信者が予め知っていれば、送信者は{|A+〉,|B+〉,|A-〉,|B-〉}や{|C+〉,|D+〉,|C-〉,|D-〉}といった状態を送る代わりに、いつも状態|Q〉や|R〉を送信すればよい。なぜならば、これらの状態は受信者にとってビット値不確定であり、後から知らせる符号化基底の種類次第でビット値はいくらでも操作可能だからである。従って、受信者が一種類の測定方法しか用いない場合には、送信者は後から幾らでもビット値を操作できる。
【0057】
ところがもし受信者が第一、第二の測定方法をランダムに併用した場合には、送信者は上記の方法によってビット値選択を先延ばしすることはできなくなる。例えば送信者が状態|Q〉を送り、受信者が第二の測定方法を採用した場合には、変換Uにより送信状態|Q〉は
【数7】
と変換されて、受信者は{|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉}のいずれかを確率1/4で得ることになる。送信者は受信者がどの測定結果を得るのか全くわからないので、もはや符号化基底や重ね合せの記号を後から操作してビット値を選択することはできなくなってしまう。これは送信者が状態|P〉,|R〉,|S〉を送った場合も同様である。このように受信者が二種類の測定方法を併用することにより送信者はビット値を後から変更することはできなくなる。
【0058】
上記のように送信者が{|P〉,|Q〉,|R〉,|S〉}のいずれかの状態を単独で送った場合、最終的に受信者が得るであろうビット値を送信者が制御することは全く不可能になってしまう。こうした事態を避けるためには、送信者はいずれかの二項重ね合せ状態((1)式参照)を送らなければならない。ここで例えば“0”を符号化して状態|A+〉を送ったとすれば、第一の測定方法を用 いた受信者は状態|P〉か|Q〉のどちらかを確率1/2で得ることになるが、送信者はどちらが得られたのかを知る術はない。このとき送信者がビット値を“1”に変更しようとして符号化基底を偽って(CD−基底)知らせた場合、ビット値の変更に成功する確率は1/2である。なぜならば受信者が状態|P〉を得ていた場合は既にビット値は“0”に決定してしまっているからである。更に受信者が第二の測定方法を用いている場合は、送信者は重ね合せの記号(+−)を偽ることでビット値を変更することはできる。しかし、送信者は「受信者が第一、第二の測定方法のどちらを選んだのか」を知る術はないのでこの方法が成功する確率も1/2にすぎない。
【0059】
以上説明したように、情報キャリアの数が一個の場合でも、送信者は少なくとも確率1/2でビット値を秘密証拠供託することが可能であり、また送信者によるビット値の変更は確率1/2で失敗することになる。そこで情報キャリアの個数を増やすことでこれらの確率を漸近的に0に近づけることにより秘密証拠供託方式として成立させることを試みる。
【0060】
従って、次に情報キャリアが多数個存在する場合について説明する。
【0061】
送信者と受信者は、ビット値の秘密証拠供託の手順として以下の約束事に従うことを取り決める。
【0062】
(1)情報キャリアの個数は全部でM×N個である。
【0063】
(2)送信者はM個の情報キャリアからなるビット列をN個準備して送信する。
【0064】
(3)Xi をi番目の情報キャリアのビット値とした場合(Xi ε|0,1|)、M個の情報キャリアのビット値のブール代数総和(つまりM個のビット値の和が偶数か奇数か)に秘密証拠供託するビット値を符号化する。
【0065】
【数8】
(4)(3)にしたがって全部でN個のビット列を用意する。そのとき全てのビット列について秘密証拠供託されたビット値は同じであるとする。しかし各々のビット列における0と1の配置は一般にビット列毎に異なっているものとする。例えばM=4の場合、“0”に対応したビット列には(0000),(0011),(0101),(1001),(1010),(1100),(0110),(1111)、“1”に対応したビット列には(0001),(0010),(0100),(1000),(1110),(1101),(1011),(0111)がそれぞれ対応している。
【0066】
(5)送信者は(3),(4)にしたがって個々の情報キャリアの量子状態にビット値を符号化して順番に送信する。そのとき前述した「情報キャリアが一つしかない場合」で説明した符号化法に従うものとする。
【0067】
(6)受信者は前述した「情報キャリアが一つしかない場合」で説明した測定方法によって個々の情報キャリア毎に測定結果を得る。
【0068】
M個の情報キャリアからなる一つのビット列に対して、受信者が秘密証拠供託されたビットの値を知ることができない確率P(0∩1)の最小値は
【数9】
で与えられる。これはM個の情報キャリアの全てについてビット値が確定できる確率(1/2)Mを1から引いたものにほかならない。受信者が受け取るビット 列の数はN個なので、N個のビット列の全てについてビット値が不明のままにとどまる確率は最小でも
【数10】
となる。
【0069】
供託した秘密証拠を開示する段階で、送信者は個々の情報キャリア毎に順番に使用した符号化基底(AB−符号化基底かCD−符号化基底か)と重ね合せの記号(+か−か)を受信者に知らせる。このときは通常の古典的な通信チャネル4を利用する。受信者はこの付加情報に基づいて個々の情報キャリアに符号化されたビット値を決定し、ブール代数総和を計算してビット列に符号化された秘密証拠供託ビットの値を割り出す。このときN個の全てのビット列について同じビット値が符号化されていることが確認できれば受信者はそのビット値を秘密証拠供託されたビット値として受理承認する。反対にビット列のブール代数総和が一致しなかった場合には、受理承認しない。つまり送信者が不正をはたらいたとみなす。
【0070】
一方で送信者が後から秘密証拠供託されたビット値を変更しようとしたとき、変更に失敗する確率は
【数11】
で与えられる。なぜならば一つのビット列についてビット値を変更する場合にはただ一つの情報キャリアのビット値反転を試みれば充分であるが、N個のビット列の全てについてこのような反転が成功する確率は(1/2)NでNに対して指 数的に減少していくからである。
【0071】
もしそれぞれの確率に対してP(0∩1)=1−10-9,P(0←×→1)=1−10-9を要請した場合にはMとNの値はそれぞれ35と30程度となる。全情報キャリアの個数は約1000個である。このようにMとNの数を大きくすることによって、供託したビット値が秘密に保たれる確率と事後変更が不可能である確率を指数関数的に1に漸近させることが可能になる。よって本発明は秘密証拠供託方法として成立すると考えることができる。
【0072】
次に、誤り訂正符号を導入した場合について説明する。
【0073】
前述した「情報キャリアが多数個存在する場合」で説明した秘密証拠供託方法は、送信装置、伝送路、受信装置にシステムエラーが内在する場合には作用しなくなる。なぜならば、「情報キャリアが多数個存在する場合」の方法では、一つのビット列に含まれるM個の単位ビットの中の一つがエラーで反転してしまっただけでも、そのビット列のブール代数総和は反転してしまうからである。この意味で、この方法のままではシステムエラーに対する耐性をもたない。そこでエラー耐性をもたせるために誤り訂正符号を導入する。
【0074】
前記「情報キャリアが一つしかない場合」で説明したように、受信者は送信者から符号化基底と重ね合せの記号を知らされることにより最終的には全ての情報キャリアについてビット値を決定することが可能である。従って容易に通常の誤り訂正符号[参考文献5:磯道、「情報理論」(電子情報通信学会偏)、コロナ社、1980]を簡単に導入することができる。
【0075】
例えば(3,1,2)−符号系を導入した場合、3個の情報キャリアをもって1個の単位ブロックと見なすことになる。対応する符号列は(000)と(111)であり、前記「情報キャリアが多数個存在する場合」の約束事(3)にしたがえば単位ブロックに割り振られたビットの値は“0”と“1”となる。(3,1,2)−符号系では、3個のビットのうちのどれか一つにだけエラーが生じた場合にはこれを検出して訂正することができる。つまり(001),(010),(100)のどれかを受信した場合、送信された符号列が(000)であったと見なすわけである。情報キャリアを受信しただけでは受信者にとってビット値は不確定となる場合が多いためにこの段階ではまだ誤り訂正を行うことはできないが、符号化基底と重ね合せの記号を知らされた後では各単位ビットの値が定まるので符号系にしたがって誤りを訂正できる。
【0076】
誤り訂正符号の導入は受信者をして送信者の供託ビットを推定し易くする。この効果をみるために送信者が(000)に符号化された単位ブロックを送った場合を想定する。送信者にとって最悪(すなわち供託ビットについてより多くの情報が受信者に漏れる)のケースは3個の情報キャリアの全てがエラー無しで伝わる場合である。この場合でも個々のキャリアについてビット値が不確定になる確率は少なくとも1/2以上なので、受信者は(000),(00?),(0?0),(?00),(0??),(??0),(?0?),(???)の八種類の受信パターンのいずれかをほぼ確率1/8で得ることになる。ここで?はビット値が不確定であることを意味する。(3,1,2)−符号系(つまり(000)と(111)を符号列とする符号系)ではどれか一つの単位ビットの値が0であることがわかれば、たちどころにブロックのビット値が“0”であることがわかってしまうため、上記の八種類のパターンのうちビット値が受信者にとって不明のままにとどまるのは(???)だけである。よってビット値が判明してしまう確率は単位ブロック当たり最悪7/8になる。
【0077】
この値7/8は、誤り訂正を行わない場合のビット値判明確率1/2と比べてかなり悪い。それでも、MB 個の単位ブロックを使用してビット列を作って前記約束事(3)にしたがって各ブロックのビット値を決めることにより、ビット列に秘密証拠供託されたビットの値が受信者に知られてしまう確率MB を増やすことによって漸近的に0に近づけることは可能である。このようにビット列当たりのキャリア数Mをビット列当たりの単位ブロック数MB に置き換えさえすれば、前記「情報キャリアが多数個存在する場合」で説明した秘密証拠供託方式はそのままの形式で成立する。
【0078】
この場合、受信者にとってN個のビット列の全てについてビット値が不明のままにとどまる確率の最小値は
【数12】
により与えられる。
【0079】
一方で送信者が後から秘密証拠供託されたビット値を変更しようとしたとき、変更に失敗する確率は
【数13】
で与えられる。なぜならば送信者が単位ブロックのビット値を反転させようとする場合、3個のキャリアのうちの一つについてビット反転に成功すれば充分だからである。具体的には予め(000)ではなく(001),(010),(100)などを送っておき、ビット反転の場合には1個のキャリアのビットを反転することで(011),(110),(101)などに変えることができれば誤り訂正の効果でこれらは(111)と見なされてしまうからである。
【0080】
もしそれぞれの確率に対してP(0∩1)=1−10-9,P(0←×→1)=1−10-9を要請した場合にはMB とNの値はそれぞれ約180と30程度となる。必要な全情報キャリアの個数は約16000個である。
【0081】
次に、図4に示すフローチャートを参照して、図1に示す実施形態の作用について説明する。
【0082】
まず、送信者は、秘密証拠供託の対象として受信者に送信されるビット値(0または1)を時刻t1 において選択する(ステップS11)。それから、それぞれM個の情報キャリアから構成されるビット列をN個用意し(ステップS13)、秘密証拠供託の対象となるビット値として0を選択した場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が0になるように情報キャリアを設定し、秘密証拠供託の対象となるビット値として1を選択した場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が1になるように情報キャリアを設定して、各情報キャリアの量子状態に各ビット値を符号化する(ステップS15)。
【0083】
なお、この場合、送信装置1、受信装置2、伝送路3にシステムエラーが内在する場合には、送信者は複数個の情報キャリアからなるブロックを構成して誤り訂正符号を導入し、各ブロック毎に単位ビットを割り当て、それぞれM個の単位ブロックから構成されるビット列をN個用意し、秘密証拠供託の対象となるビット値として0を選択した場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が0になるように設定し、また秘密証拠供託の対象となるビット値として1を選択した場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が1になるように設定する。
【0084】
次に、上述したように符号化した情報キャリアを伝送路3を介して受信装置2に送信する(ステップS17)。
【0085】
受信者は、時刻t1 において受信装置2で受信した情報キャリアに対して適切な測定方法で量子状態を測定し、全ての情報キャリアについての測定結果を記録する(ステップS19)。
【0086】
送信者は、時刻t1 以後の時刻t2 において古典通信チャネル4を用いて、前記測定結果に基づいて時刻t1 に送信者によって秘密証拠供託されたビットの値を決定しうるに足りうる付加情報を受信者に送信する(ステップS21)。具体的には、全ての情報キャリアについて符号化に用いた直交基底の種類と送信した量子状態とを付加情報として受信者に通知する。なお、上述したように、送信装置1、受信装置2、伝送路3にシステムエラーが内在する場合には、送信者は上述したように導入した誤り訂正符号の使用とその種類を前記直交基底の種類と量子状態に加えた付加情報として受信者に通知する。
【0087】
次に、受信者は、時刻t1 において得た測定結果を時刻t2 において通知された付加情報に基づいて解析し、送信者が時刻t1 において受信者に秘密証拠供託したビットの値を復号することができる(ステップS23)。
【0088】
この復号の結果、N個のビット列の全てについてブール代数総和が一致した場合には、そのビット値を秘密証拠供託されたビット値として受理認証するが、不一致が生じた場合には、送信者が不正をはたらいたものと判断する(ステップS25)。
【0089】
なお、上記実施形態の秘密証拠供託方法の処理手順をプログラムとして記録媒体に記録して、この記録媒体をコンピュータシステムに組み込むとともに、該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムにダウンロードまたはインストールし、該プログラムでコンピュータシステムを作動させることにより、秘密証拠供託方法を実施する秘密証拠供託システムとして機能させることができることは勿論であり、このような記録媒体を用いることにより、その流通性を高めることができるものである。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子または粒子系を情報キャリアとして、その量子状態に適切な方法でビット情報の符号化を行って送信し、かつ適切な方法で受信した情報キャリアの量子状態の測定を行って測定結果を得るとともに、この場合に多数の情報キャリアを用いることにより秘密証拠供託されたビット値が受信側で判明してしまう確率および送信側で後でビット値を変更してしまう確率を漸近的に0に近づけているので、量子力学の不確定性原理によって安全性が保証された秘密証拠供託方法を構築することができる。
【0091】
また、本発明によれば、複数の情報キャリアからなるブロックを構成して誤り訂正符号を導入し、直交基底の種類と量子状態に加えて、誤り訂正符号の種類を付加情報として受信側に公表し、受信側では誤り訂正符号を加えられた付加情報に基づいて測定結果を解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定するので、伝送路に伝送誤りがあっても、システムエラーにより情報キャリアの単位ビットの反転などが発生した場合でも、この導入した誤り訂正符号によりシステムエラーの影響を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る秘密証拠供託方法を実施するシステム構成図である。
【図2】図1に示す実施形態における送信量子状態/受信測定結果の量子状態の関係を示す図である。
【図3】図1に示す実施形態における送信量子状態/受信測定結果の量子状態の別の関係を示す図である。
【図4】図1に示す実施形態の作用を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 送信装置
2 受信装置
3 伝送路
4 古典通信チャネル
Claims (4)
- 送信側においては、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子ないし粒子系を単位ビットの情報キャリアとして利用するに当たり、四つの互いに直交する量子力学的状態の組からなる第一および第二の異なる二組の互いに非直交な直交基底系をランダムに用いて、単位ビットを符号化した情報キャリアを発生し、
該情報キャリアがM個で構成されるビット列をN個用意し、
秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が0である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が0になるように情報キャリアを設定し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が1である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が1になるように情報キャリアを設定し、
このように設定された全ての情報キャリアをその量子状態を保持したまま撹乱することなく伝送路を介して受信側に送信し、
受信側においては、前記伝送路から受信した情報キャリアを前記第一および第二の直交基底系における量子状態の組合せ方とは異なる組合せ方により構成される第三または第四の直交基底系を用いて各情報キャリアの量子状態を測定し、各情報キャリア毎に測定結果を記録し、
送信側においては、前記情報キャリアを送信した以降において全ての情報キャリアについて符号化に用いた直交基底の種類と量子状態を付加情報として受信側に公表し、
受信側においては、前記測定結果を前記付加情報に基づいて解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定すること
を特徴とする秘密証拠供託方法。 - 送信側においては、複数の情報キャリアからなるブロックを構成して誤り訂正符号を導入し、各ブロック毎に単位ビットを割り当て、それぞれM個の単位ブロックから構成されるビット列をN個用意し、
秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が0である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が0になるように設定し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が1である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が1になるように設定し、
前記情報キャリアを送信した以降において全ての情報キャリアについて符号化に用いた前記直交基底の種類と量子状態に加えて、前記誤り訂正符号の種類を付加情報として受信側に公表し、
受信側においては、前記誤り訂正符号を加えられた付加情報に基づいて前記測定結果を解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定すること
を特徴とする請求項1記載の秘密証拠供託方法。 - 送信側においては、四つの互いに直交する量子力学的状態を有する粒子ないし粒子系を単位ビットの情報キャリアとして利用するに当たり、四つの互いに直交する量子力学的状態の組からなる第一および第二の異なる二組の互いに非直交な直交基底系をランダムに用いて、単位ビットを符号化した情報キャリアを発生し、
該情報キャリアがM個で構成されるビット列をN個用意し、
秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が0である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が0になるように情報キャリアを設定し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が1である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ビットのブール代数総和が1になるように情報キャリアを設定し、
このように設定された全ての情報キャリアをその量子状態を保持したまま撹乱することなく伝送路を介して受信側に送信し、
受信側においては、前記伝送路から受信した情報キャリアを前記第一および第二の直交基底系における量子状態の組合せ方とは異なる組合せ方により構成される第三または第四の直交基底系を用いて各情報キャリアの量子状態を測定し、各情報キャリア毎に測定結果を記録し、
送信側においては、前記情報キャリアを送信した以降において全ての情報キャリアについて符号化に用いた直交基底の種類と量子状態を付加情報として受信側に公表し、
受信側においては、前記測定結果を前記付加情報に基づいて解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定すること
を特徴とする秘密証拠供託プログラムを記録した記録媒体。 - 送信側においては、複数の情報キャリアからなるブロックを構成して誤り訂正符号を導入し、各ブロック毎に単位ビットを割り当て、それぞれM個の単位ブロックから構成されるビット列をN個用意し、
秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が0である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が0になるように設定し、秘密証拠供託の対象として受信側に送信されるべく選択されたビット値が1である場合には、N個の全てのビット列においてM個の単位ブロックのビット値のブール代数総和が1になるように設定し、
前記情報キャリアを送信した以降において全ての情報キャリアについて符号化に用いた前記直交基底の種類と量子状態に加えて、前記誤り訂正符号の種類を付加情報として受信側に公表し、
受信側においては、前記誤り訂正符号を加えられた付加情報に基づいて前記測定結果を解析し、秘密証拠供託されたビット値を判定すること
を特徴とする請求項3記載の秘密証拠供託プログラムを記録した記録媒体。
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