JP3664179B2 - Hydraulic control device for automatic transmission - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動変速機の変速機構を油圧で変速制御する自動変速機用油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、回転駆動力を負荷に応じスムーズに伝達するため、車両用等に多く利用されている自動変速機は、制御弁により油圧を調節し各摩擦係合装置を制御して変速制御を行っている。変速制御は、乗員によりある程度任意のギア位置を選択するセレクトレバーによる手動制御と、エンジンのスロットル開度や車速などからエンジン制御コンピュータ(ECU)により適正なギア比になるように摩擦係合装置を決定する自動制御とにより行われる。回転駆動力を負荷に応じスムーズに伝達するため、複数の制御弁、アキュムレータ、電磁弁等を用いた油圧回路で自動変速機の個々の摩擦係合装置の油圧を制御することにより変速制御を実現している。このような構成では、自動変速機内の摩擦係合装置の数だけ制御弁が必要になるため、装置が大型化して多くの部品を必要とするとともに、装置が複雑で製造コストが高いという問題がある。
【0003】
このような問題を解決するため、複数の制御弁を1か所にまとめた集積弁により、装置の小型、軽量、簡素化を図ることが考えられる。このものでは、ECUフェイルシステム等により、電子制御の自動制御機能が故障しても乗員がセレクトレバーを操作することにより、前進や後退の選択や、ある程度、前進時の変速段の選択を行えるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の集積弁により自動変速を制御する装置の場合、制御弁の切換えを電気的手段のみで行っているので、ECUの故障や配線断線等の電気的異常発生時、変速切換え機能が完全に失われてしまうという問題がある。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で軽量化または小型化可能な自動変速機用油圧制御装置を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、異常発生時においてもフェイル処理により確実に油圧制御可能であるとともにフェイル処理による衝撃を低減する自動変速機用油圧制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明の請求項1記載の自動変速機用油圧制御装置は、
自動変速機に設けられる複数の摩擦締結要素に供給される油路を切換え、前記複数の摩擦締結要素の係合または解除を行うことにより複数の変速段を切換え制御する自動変速機用油圧制御装置であって、
自動制御による変速と手動による変速とを行う複数の制御弁、ならびに自動制御による変速または手動による変速のいずれか一方では回転機構により作動し、他方ではスライド機構により作動することで前記複数の制御弁を駆動する動力伝達部材を有する集積弁と、
自動制御による変速制御を行うために前記動力伝達部材を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段の非駆動時、前記駆動手段を所定位置に移動する弾性体と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また本発明の請求項2記載の自動変速機用油圧制御装置は、
前記駆動手段の非駆動時、前記弾性体により移動した前記駆動手段の所定位置では、前記複数の摩擦締結要素に供給される油路のうち少なくとも一つは、半開の状態とすることを特徴とする。
【0012】
【作用および発明の効果】
本発明の請求項1記載の自動変速機用油圧制御装置によると、駆動手段の非駆動時、弾性体により駆動手段を所定位置に移動することにより、駆動手段により駆動される動力伝達部材、動力伝達部材により駆動される制御弁を所定位置に移動することができる。これにより、自動制御側が異常なために制御不能になっても手動制御により自動変速機の制御を維持でき、特に下り坂や上り坂、山岳路、雪道発進等の場合に不都合が生じることが防げる。また油圧制御装置は自動、手動両制御機構を備えた集積弁によって軽量、コンパクトでなおかつ信頼性の高い自動変速機を提供できる。また、自動制御と手動制御との二自由度運動する集積弁において、駆動手段に弾性体が設けられるため弾性体から手動制御に働く力が抑制されるので、手動制御の操作性が向上するとともに、駆動手段を小型化し低消費動力な集積弁が実現できる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
本発明の自動変速機用油圧制御装置を車両用の自動変速機(以下、「自動変速機」をATという)に適用したシステム構成を図2に示す。図2において、EVは電磁弁を表し、MVは集積弁を表す。
【0018】
車両用ATの動作は、周知のように自動または手動でトランスミッション300内のギヤ接続が切換えられ、トルクコンバータ200に接続された図示しないエンジンからの回転力が車両の後輪または前輪に伝達される。集積弁60とその周辺装置全体は、トランスミッション300下部のAT内部の図示しないオイルパン内部にあり、オイルパン内部の油圧制御装置400の周囲は油圧回路のドレンになっている。
【0019】
トランスミッション300内には、エンジンの回転軸に直結して回転駆動される公知の油圧ポンプ56が設けられており、各油圧装置からオイルパン等に排出された駆動油を封入ポート57より吸入し、ライン圧制御弁64を介し各装置へ圧油を供給している。この油圧ポンプ56からの圧油は、変動のある高ポンプ油圧であり、電磁制御式圧力制御弁であるライン圧制御弁64により一定の高圧なライン圧に制御し各油圧機器へ供給される。油圧制御装置400には2つの係合油圧制御弁61、62が設けられており、トランスミッション300内にある後述する各摩擦係合装置の係合時に必要な所定の制御圧にライン圧制御弁64から供給される圧油のライン圧を任意に制御して集積弁60に圧油を供給している。
【0020】
集積弁60に供給されたライン圧または制御圧の圧油は、各スプール弁2、3、4、5、6、7、8を介し、連通ポート39、40、41、42、43、44、45よりトランスミッション300内の摩擦係合装置である多板クラッチ類C0、C1、C2や多板ブレーキ類B0、B1、B2、B3に供給されている。各摩擦係合装置は、トランスミッション300内にある図示しないプラネタリギア等の各変速比を構成するギアに連結されており、これら摩擦係合装置を係合または解除することにより、変速比を切換えて車両の変速制御を行っている。
【0021】
連結部11は、操作者が手動で前進、後退、ニュートラル、パーキング等、車両の駆動状態を操作するセレクトレバー500と機械的に接続されている。ライン圧制御弁64から供給された圧油は、さらにトルクコンバータ200のロックアップ(L/U)スリップ制御を行うため、ロックアップ油圧制御弁65を介しトルクコンバータ200に供給される。
【0022】
図1に示すように、ハウジング28のほぼ中央に設けられた窪み58内に円柱状のカムシャフト1が設けられ、このカムシャフト1は、軸受9、29に対し回転可能かつ軸方向に往復動可能に支持されている。軸受9、29は、本発明では、滑り軸受、玉軸受、コロ軸受や転がり軸受等を用いてもよい。軸受9はハウジング28の一端に圧入固定され、カムシャフト1の一端の軸受部34を案内する。軸受29は、カムシャフト1の他端部を案内しており、サイドハウジング30に圧入固定されている。サイドハウジング30はボルト37によりハウジング28に固定されている。円柱状のカムシャフト1の主要部分の外周面には各スプール弁2、3、4、5、6、7、8を駆動するカムとして凹凸が形成されている。カムシャフト1の軸受9近傍の円周面にカム面と反対側のスプール弁6、7、8側に、所定の円弧幅で所定の軸方向長さのギア歯53が形成されている。このため、カムシャフト1の回転駆動に用いるギアスペースを節約できカムシャフト1の全長を縮小できる。また、カムシャフト1の一端の軸受部34を他端部と異なる形状にするとともにカムシャフト1の最大外径とすることにより、短い軸長でカムシャフト1を支持可能であるためカムシャフト1の全長を縮小できる。またギア歯53は、カムシャフト1が軸方向に移動した場合においても、後述する中間ギア52との噛合が外れないよう軸方向にギア溝が延設されている。
【0023】
ギア歯53に対向する位置に、カムシャフト1の軸方向と平行な回転軸を有するステップモータ12が固定されている。ステップモータ12はハウジング12a内に駆動部を収容し固定子を形成している。図示しない電源から固定子である駆動部に駆動電流が供給され可動子である回転軸を回動させる。図3に示すように、ステップモータ12のハウジング12aには渦巻状のリターンスプリング54の一端が固定され、他端はステップモータ12のシャフトに固定されている。また、ステップモータ12のハウジングにはストッパピン55が設けられ、ステップモータ12のシャフトにはストッパレバー31が固定されている。ストッパピン55にストッパレバー31が当接することによりステップモータ12の回転角が制限されている。ステップモータ12の回転軸にギア13が同心円状に固定され、このギア13とギア歯53との間に、ギア歯53の形成されたカムシャフト1の外径よりも大きな外径の中間ギア52が固定部材32によりハウジング28に回転可能に取り付けられている。ギア歯53が形成されている位置におけるカムシャフト1の外径は、ギア13の外径よりも大きい。ステップモータ12の駆動力は、ギア13、中間ギア52からギア歯53に伝達し、カムシャフト1を回動駆動する。
【0024】
本実施例においては、ステップモータ12は、カムシャフト1と平行に設置しているので、ギア13とギア歯53との間に中間ギア52をただ一つ介在させるだけで、コンパクトな構成で大きな減速比が得られ集積弁60を小型化できる。さらにステップモータ12から中間ギア52に伝達するトルクよりも中間ギア52からギア歯53に伝達するトルクの方が大きくなるため、ステップモータ12のトルクを増幅してカムシャフト1に伝達できる。このため、ステップモータ12の駆動力を小さくできるので、ステップモータ12を小型化可能である。また、スプール弁SPの内、最外位置に配置されているスプール弁2と5間にカムシャフト1のカム面側に向けてステップモータ12を設置したことにより集積弁60の全長を短くできるのでさらに集積弁60を小型化できる。
【0025】
カムシャフト1の軸受29側の端部には、外部のセレクトレバー500と図示しないリンクを介し機械的に連結されている連結部11が設けられており、操作者がセレクトレバー500を操作することにより、連結部11はセレクトレバー500に連動しカムシャフト1を軸方向に駆動する。
集積弁60は、図1に示すように、ハウジング28内にスプール弁2、3、4、5、6、7、8(SPと総称する)を収容している。係合油圧制御弁61は制御圧ポート36からスプール弁2、3、4、5の制御圧ポート36a、36b、36c、36d(PC1と総称する)に接続され、係合油圧制御弁62は制御圧ポート38からスプール弁6、7、8の制御圧ポート38e、38f、38g(PC2と総称する)に接続されている。さらにライン圧制御弁64は、集積弁60にライン圧の圧油を直接供給するようにライン圧ポート35からライン圧ポート35a、35b、35c、35d、35e、35f、35g(PS と総称する)に接続されている。ドレン圧ポート48a、48b、48c、48d、48e、48f、48g(Dr と総称する)はドレン圧ポート48から図示しないドレンに接続している。ライン圧ポートPS 、制御圧ポートPC1、制御圧ポートPC2、ドレン圧ポートDr は、それぞれハウジング28内または外で連通している。図4から判るように、ライン圧ポートPS および制御圧ポートPC1、PC2はスプール弁を挟みドレン圧ポートDr と反対側で連通しているため、各ポートの断面積の拡大やポートの配置位置の自由度が増大する。これら油圧ポートPS 、PC1、PC2、Dr は、図1に示すように、カムシャフト側からドレン圧ポートDr 、制御圧ポートPC1またはPC2、ライン圧ポートPS となるように配置されている。本実施例では、ライン圧ポートPS および制御圧ポートPC1、PC2に対しドレン圧ポートDr をスプール弁SPを挟み反対側に連通させているが、本発明では、その組み合わせは設計上の制約について最適な組み合わせを選択すればよい。
【0026】
油路を切換えるスプール弁SPは、図1に示すように、カムシャフト1の軸に垂直な方向でカムシャフト1の両側に並んで配置されている。スプール弁SPは、それぞれハウジング28に設けられた円筒孔28a、28b、28c、28d、28e、28f、28gを軸方向に摺動可能に挿入されている。
次に、スプール弁5を例にしスプール弁SPの詳細な構造を説明する。他のスプール弁はスプール弁5と同一の構成である。
【0027】
図13(A)に示すようにスプール弁5は内部に空洞を有する円筒形をしており、その円筒の外側面中央部周囲に形成された環状の油路溝5aと、スプール弁5の内部に設けられた内円筒部5cに連通する油路溝5aに連通する油路孔5bが形成されている。そして、各スプール弁SPの油路孔は各円筒孔28a、28b、28c、28d、28e、28f、28gに連通するライン圧ポートPS 、制御圧ポートPC1、PC2,ドレン圧ポートDr と連通するよう構成されている。各スプール弁SP内に設けられた内円筒部はその一端がそれぞれキャップ53a、53b、53c、53d、53e、53f、53gにより封止されていて、キャップの内円筒部を通じ連通ポート39、40、41、42、43、44、45に連通している。
【0028】
そしてカムシャフト1と各スプール弁SPの未開口側底部の端面(図13(A)に示すスプール弁5では5dで表されている)との間に、カムシャフト1の軸の垂直方向に摺動可能にピン14、15、16、17、18、19、20がハウジング28に嵌挿され、カムシャフト1のカムの動きを各スプール弁SPに伝えている。カムシャフト1の動きに従って、スプール弁SPが各円筒孔28a、28b、28c、28d、29e、28f、28g内をスムーズにスライドするように、ピン14、15、16、17、18、19、20が当たるスプール弁SPの各未開口側に圧力抜きの小穴が設けられている。これはスプール弁SPの内部の油をスプール弁未開口側底部の下方へも供給することにより、スプール弁SPの内部の油圧による圧力と、スプール弁未開口側底部の面に働く油圧をバランスさせることにより、スプール弁SPを駆動するための力が軽減されるよう作用させるためのものである。またスプール弁SPは全て、スプリング21、22、23、24、25、26、27によってピン14、15、16、17、18、19、20とともにカムシャフト1側に押し付けられ、スプリング21、22、23、24、25、26、27はハウジング28に固定されたキャップ53a、53b、53c、53d、53e、53f、53gによって外部に飛び出さないように円筒孔28a、28b、28c、28d、29e、28f、28gに封止されている。
【0029】
各スプール弁SPがカムシャフト1の駆動により円筒孔28a、28b、28c、28d、29e、28f、28gを移動する際、各円筒孔28a、28b、28c、28d、29e、28f、28gに開口するライン圧ポートPS の位置と対向する位置に各スプール弁SPの油路溝および油路孔が位置決めされると、各ライン圧ポートPS に供給されるライン圧の圧油が各スプール弁SPの油路溝および油路孔を経由してスプール弁SPの内円筒部に供給され、さらに連通ポート39、40、41、42、43、44、45を経由して各摩擦係合装置にライン圧の圧油が供給される。
【0030】
また、ライン圧の圧油と同様に、制御圧ポートPC1、PC2から圧力調整された制御圧の圧油が各スプール弁SPに供給され、さらにスプール弁SPを介し各摩擦係合装置へ制御圧の圧油が供給される構成になっている。係合油圧制御弁61から制御圧ポート36に供給された制御圧の圧油は、制御圧ポートPC1に接続するスプール弁2、3、4、5にのみ供給される。同様に、係合油圧制御弁62から制御圧ポート38に供給された制御圧の圧油は、制御圧ポートPC2に接続するスプール弁6、7、8にのみ供給される。その結果、係合油圧制御弁62から供給された制御圧の圧油は多板ブレーキB1、B0、B2にのみ供給され、係合油圧制御弁61から供給された制御圧の圧油は多板ブレーキB3および多板クラッチC0、C2、C1にのみ供給されることとなる。
【0031】
スプール弁SPの油路溝がドレン圧ポートDr と連通する位置に位置決めされると、このスプール弁SPに連通する摩擦係合装置内の圧油がドレン圧ポートDr よりハウジング28の外部に排出される。
図2に示すように、トランスミッション300に連結している連通ポート39、40、41、42、43、44、45の内、トランスミッション300に設置されている多板クラッチC0、多板ブレーキB0に連通するポート39、43は、これらポートが同時に作動操作されると内部的な構造からトランスミッション300が駆動不能となり、損傷を与えてしまう恐れがあるので、同時に結合されるのを防ぐため二重結合防止弁63が介在している。その他の連通ポートは周知のトランスミッションに見られるように、他の多板クラッチ、ブレーキ類は連通ポートからの油圧で係合または解除されトランスミッション300内の変速のために複数のギアの連結状態を切換え、ATとしての変速制御がなされる。なおブレーキ類は実質的にクラッチと同類の摩擦要素であり、クラッチの片側をトランスミッションのボディに固定した構造となっているものがブレーキである。
【0032】
図1に示すカムシャフト1の周方向の位置は、図5に示すAT用ECU70からの指示によって制御され、ステップモータ12がカムシャフト1を回転させて、カムシャフト1の円周面に設けられたカムによりピン14、15、16、17、18、19、20を介してスプール弁SPの位置を制御し、それによりスプール弁SPに設けられた油路溝が各油圧ポートPS 、PC1、PC2、Dr と通じ所定の油圧が各連通ポート39、40、41、42、43、44、45に伝えられる。
【0033】
AT用ECU70は、図5に示すように加速に際し変速段を下段にシフトするためのキックダウン信号やセレクトレバー500がどのポジションにあるのかを示すセレクトレバー信号等と、エンジンの駆動を制御するエンジン(E/G)用ECU72からの信号によって、E/G用ECU72とデータを交換しながらステップモータ12を駆動するモータ位置信号を出力し、同時に各油圧制御信号を前述の係合油圧制御弁61、62、ライン圧制御弁64、ロックアップ油圧制御弁65に出力する。この時E/G用ECU72とAT用ECU70とが交換するデータとしては、図5に示すようにラジエータの水温、スロットル開度、クランクシャフトのクランク角、車速、タービン回転数等がある。
【0034】
カムシャフト1は、ある作動モードにおけるピン14、15、16、17、18、19、20との当接位置から周方向および軸方向にそれぞれ所定幅で同一径部分を設けてあるため、カムシャフト1が回転方向またはスライド方向に駆動され小さな範囲で移動しても、スプール弁SPが位置変化しない。このため、カムシャフト1の位置決めに若干のずれを許容している。さらに、カムシャフト1が回転方向またはスライド方向に全ストロークしたときにも、ピン14、15、16、17、18、19、20の側面と隣接スプールに対応したカムシャフト表面のカム凹凸との間には若干の余裕が設けてあり、万一の際にも、ピン14、15、16、17、18、19、20に大きな力が加わらないように考慮されている。また、カム凹凸の隅部には、ピン14、15、16、17、18、19、20先端の曲率よりも大きな曲率に加工が施されており、カム凹凸に対するピンの追従がスムーズに行えるように配慮してある。
【0035】
セレクトレバー500のシフト位置は、通常P(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、2(セカンド)、L(ロー)の6位置であるが、パーキングおよびニュートラルの位置については変速操作は実施されないので、自動変速処理が実施されたとしても、トランスミッション300はトルクを伝達しないように設定されている。図6は、セレクトレバー500の各レンジおよび各変速レンジにおいて各スプール弁SPがライン圧ポートPS 、ドレン圧ポートDr 、係合油圧制御弁61に連通する制御圧ポートPc1、係合油圧制御弁62に連通する制御圧ポートPc2の何れのポートに接続されるかを示した図である。また図4のPc1とPc2は二つの係合油圧制御弁61、62を用いているので違う記号としたが、とりうる圧力値の範囲(即ちライン圧を最高圧としてそれ以下の範囲)としては同じである。カムシャフト1のカム形状は、図6に示される油圧連通モードで決まるスプール弁位置となるよう設計される。なおこのようにして制御されるATの各クラッチ類、ブレーキ類の動作状態は図7に示すような構成となる。
【0036】
カムシャフト1は連結部11によってセレクトレバー500と連結しているので、運転者による手動操作でセレクトレバー500の位置選択が行われると、カムシャフト1はシャフト軸方向に移動し、カムシャフト1の軸方向の凹凸でカムシャフト1に接するピン14、15、16、17、18、19、20を動かし各スプール弁SPを制御する。また、AT用ECU70の指令によりステップモータ12を回転させ、カムシャフト1の円周方向の凹凸で各スプール弁SPの周方向位置を制御する。
【0037】
図8はスプール弁4および7についてDレンジ位置にあるカムシャフト1の軸方向断面図を示しており、変速段が第4速の位置にある状態である。スプール弁4および7にそれぞれ接しているピン16および19は、他端がいずれもカムシャフト1の最大径の位置に接しているのでスプール弁4および7を最大に押し上げている。従って、スプール弁4および7はライン圧ポート35c、35f(PS )と連通する位置に位置決めされ、スプール弁4および7に連通する多板クラッチC1および多板ブレーキB2にライン圧の圧油が供給される。
【0038】
この状態から、AT用ECU70の指令によるステップモータ12の回転に応じ、3速(3rd)、2速(2nd)、1速(1st)と、カムシャフト1は45°間隔で回転し、その回転に応じピン16および19はカムシャフト1の外周面に沿って移動する。図8に示した図の場合には、スプール弁4および7は3rdと4thにおいて同一の位置であるが、2ndの変速段ではピン19がカムシャフト1の中間径位置に移動し、スプール弁7は制御圧ポート38fに連通する位置に移動され、連通ポート44を介し多板ブレーキB2へ制御圧の圧油が供給される。1stの変速段においても同様に、図6に示す圧力分配が行われる。
【0039】
セレクトレバー500を順に、2(前進第2速)、D(前進自動変速段)、N(ニュートラル)、R(リバース)、P(パーキング)にシフトした場合、カムシャフト1は予め定められた距離だけ軸方向に移動する。すると、回転移動の場合と同様にしてスプール弁4および7は、図6に示す圧力分配が行われる。他の変速段および他のレンジおよび他のスプール弁においても同様の作動を示す。
【0040】
次にDレンジ位置における変速動作を説明する。他のレンジにおいても基本的な作動は同様である。
カムシャフト1は手動のDレンジの位置において、カムの凹凸によりピンを介しスプール弁SPを図6のDレンジの欄で示す油圧ポートで決まる油圧連通モードにする。そしてカムシャフト1に対するAT用ECU70の指示が、車速の4段階の内の1速モード(図6の1st)であると、図6、図7に示すように、多板クラッチC0は、図1のライン圧ポート(図6のPS )35からライン圧ポート35a、スプール弁2の油路溝、連通ポート39を介してライン圧を受けて作動状態となる。多板クラッチC1は同様に、制御圧ポート(図6のPC1)36から制御圧ポート36c、スプール弁4の油路溝、連通ポート41を介し制御圧を受け、車速等の状態によって制御圧が係合油圧制御弁61、62で調節され係合状態が制御される。また、多板クラッチC2および多板ブレーキB0はドレン圧ポート48d、48eを通じてドレン圧ポート48(図6のDr )に接続され、多板ブレーキB1、B2、B3もすべてドレン圧ポート48に接続される。
【0041】
そして1速モード状態からAT用ECU70が2速モード(図6の2nd)の指示状態になったとすると、AT用ECU70からの指示によってステップモータ12がカムシャフト1を2速モード位置に回転させ、各スプール弁SPの位置を変化させる。その結果、図6のDレンジの2ndの欄に示すように、多板クラッチC1はライン圧ポート35(図6のPS )に接続され、多板ブレーキB2は制御圧ポート38f(図6のPc2)に接続され、他のクラッチ、ブレーキは1速モードと同じ状態が保持される。これらのモードによって決まる油圧でトランスミッション300内のクラッチ類、ブレーキ類が作動し1速モードと異なる変速比である2速モードの変速状態となる。このように制御状態が決められてATとしての機能を果たす。他のレンジ位置でも、またシフトダウン操作でも同様な動作で制御される。
【0042】
手動でセレクトレバー500を切換えてレンジを変更すると、セレクトレバー500に連動した連結部11によってカムシャフト1がスライドさせられて各スプール弁SPの位置を切換え、図6の各レンジで指定するような油圧連通モードにする。その状態で同時にECU70による制御でステップモータ12によりカムシャフト1が回転駆動されて車速に対応した油圧連通モードになり、自動制御が続行される。
【0043】
次に、フェイルセーフ機能に付いて説明する。通常、フェイル発生は突然であり、車両においては走行中に発生することも考えられるため、フェイル発生と同時に対応する必要がある。ここで対応するフェイルセーフは、装置が機械的な破損を生じる程度までのフェイルではなく、自動制御機能が不能となった場合である。なんらかの理由で自動制御機能が不能状態になった場合、手動で変速操作を実施できるようにフェイルセーフ設定する。通常、従来の車両で実施されているように、ATにおけるファイルセーフは、変速状態を現状維持もしくは4速モード位置(高速モード側)にするようにしている。これは、フェイル時にシフトダウンが生じると、車両に突然エンジンブレーキがかかる状態となる場合があり、変速ショックを生じ危険であるため、必ず高速側にシフトアップするようにしてショックの生じる危険性を避けるように処置がとられている。
【0044】
図6の各油圧連通モードは、例として多板クラッチC0(スプール弁2)の欄で示すと、通常使用する範囲として本来太線の枠で囲った範囲内の連通位置が必要なだけである。即ち、Lレンジにおいては、スピードは1stおよび2nd状態だけであり、正常に動作している間は、3rdや4thに変速されることはない。同様に、2レンジにおいては、1st、2nd、3rdのみで、4thへは変速されない。N、R、Pレンジにおいては、その作動から変速されることはなく、1stのみである。そこで本実施例においては、フェイル(故障)時のフェイルセーフのため、未使用変速モード位置において、図6に示すように、油圧連通モードを限定しておく。即ち、高速側である油圧連通モード位置に太枠範囲の右端の油圧連通モードと同一の連通状態を維持するようになっている。例えばLレンジにおいては、Lレンジにおける最高速モードである2ndの油圧連通モードPS を未使用の3rd、4thに設定する。以下、2レンジ、Dレンジ、Nレンジ、Rレンジ、Pレンジにおいても同様である。
【0045】
さらに本実施例の場合、変速モード側、すなわちカムシャフト1の回転方向側にフェイルセーフモード位置を別途設けている(図6のフェイル欄)。このフェイルセーフモード位置の作用については後述する。まず4th位置をフェイルセーフ位置としている場合のフェイル時の動作について説明する。
何らかのフェイルが発生したものとAT用ECU70が判断すると、変速状態を決定しているカムシャフト1をステップモータ12の駆動でフェイルセーフ位置(4速モード位置)にシフトする。強制的にこのフェイルセーフ位置に固定することで、自動制御は不能となっても、上述のように各レンジにおける高速段と同じ連通モードを4thに設定するため、手動操作によるレンジ切換え動作は作動する。
【0046】
自動制御を行うAT用ECU70の処理プログラムのうち、フェイルに関する処理の流れの概略を示したものが図9(A)である。AT用ECU70は、各種のセンサなどの異常信号や演算結果の食い違いなどからフェイルかどうかの判定を行い、フェイルならば図9(A)のフローチャートのステップ610の判断でフェイル処理のステップ650へ移り、カムシャフト1をフェイルセーフ位置(4速モード位置)に移動させる。フェイルセーフ位置では完全には自動変速と同等の変速機能を実現しなくなるが(例えばLレンジで2nd発進となるなど)、手動制御により少なくとも変速させる機能は維持されることになる。
【0047】
ステップモータ12の駆動制御にフェイルが生じた場合、ステップモータ12の駆動を打ち切りリターンスプリング54によってフェイルセーフ位置(4速モード位置)まで強制的に移動させる。その場合が図9(B)に示すフローチャートである。AT用ECU70は各種センサからステップモータ12の駆動制御がフェイルしたと判断した場合、ステップモータ12をフリーの状態にし、カムシャフト1をリターンスプリング54の復元力でフェイルセーフ位置(4速モード位置)にシフトする。その状態でセレクトレバー500の操作による手動のP、R、N、D、2、Lレンジの選択がなされ、カムシャフト1は連結部11で移動させられて各スプール弁SPの位置を制御する。
【0048】
本構成の場合いずれの変速モード位置においてフェイルした場合においても変速ショックが軽減される構造となっている。例えば、セレクトレバー500が2レンジにあり、変速モードが2ndにある時フェイルしたとすると、カムシャフト1は、低速側である1st側へ移動することなく、フェイル時の2nd位置より順に、3rd位置を経由して4thへシフトすることとなり、順に高速段側へ切換わり、シフトダウン時に生じるようなエンジンブレーキによるショック等が発生しない。
【0049】
なお、このリターンスプリング54は、ハウジング内部に設けられる構成でも、別の機構による力を用いてもよい。また自動と手動とが入れ代わった構成の場合、このリターンスプリング54の力は、どの部位に設けようともカムシャフト1を軸方向にストッパ位置までスライドさせる力を蓄えさせる構成とし、さらには特に設けず、モータの力でリターンさせる構成であっても構わない。
【0050】
フェイル時のスプール弁の位置において、カムシャフト1はリターンスプリング54の復元力によってストッパレバー31がストッパピン55に当接する位置まで移動することから、カムシャフト1のフェイルセーフ位置として、通常利用されている4速モード位置ではなく、フェイルセーフモード位置を別途設けてもよい。図6では4thの隣のフェイル欄で示される。即ち、フェイルが発生する場合は突然の場合が殆どであり、どのような原因で発生するかが予想できない。場合によっては油圧調整がストップしてしまうこともありえる。そうすると油圧は急激に変化するので、油圧で作動させるクラッチ類も急激に変化する。するとATとしては変速ショックと呼ばれる急激なチェンジが生じることから、このような変速ショックを生じないようにする必要がある。そこで変速ショックを防ぐためにフェイルセーフモード位置として、各スプール弁の連通状態を通常使用しない半開の位置に固定し半連通状態にして、フェイルによる急激な油圧変化を避ける設定とする。これは特にクラッチ圧を直接制御する本発明のようなシステムのATに対して有効な設定である。油圧供給が正常のままの場合、半連通状態であっても制御は正常に保たれるので、半連通状態にすることは差し支えない。
【0051】
図10(A)は上記のフェイルセーフモード位置としてのスプール弁位置を決めるための、カムシャフト1の回転方向の凹凸断面(一部)である。横軸はカムシャフト1の回転方向を表しており、1速、2速、3速、4速モード位置およびフェイルセーフ位置を表している。縦軸はスプール弁の油路溝の位置で、各油圧ポートと連通する位置として、下からドレン圧ポートDr 、制御圧ポートPC1、PC2、ライン圧ポートPS 位置が示してある。図に示したハッチ付のグラフは、カムシャフト1を回転駆動させた際のスプール弁の油路溝位置を、スプール弁5に接続するクラッチC2におけるDレンジ、およびスプール弁8に接続するブレーキB1 における2レンジについて示してある。4速モード(4th)の位置にあるスプール弁5は、図10(B)に示すように、スプール弁5に設けられた油路溝がちょうどライン圧ポート35dに整合した位置となっている。それがフェイルセーフ位置になった場合、図10(C)に示すように、スプール弁5の位置が下にずれて、油路溝がライン圧ポート35dに対して半連通(半開)の位置になり、弁の開口度を狭くして油圧の変化を遮る状態になる。従ってフェイル時の油圧状態と著しく変化する場合においても、圧油は絞られた開口部から徐々に流入、流出することとなるので、フェイルセーフ位置へ変速されたときでも変速ショックを起こすことがない。
【0052】
図10(C)の位置は、図10(A)におけるスプール弁5に接続するクラッチC2のDレンジに限らず、他のスプール弁でも4速がライン圧ポートPS と連通される場合は同様である。図11(A)は同様に、DレンジにおけるクラッチC0に接続するスプール弁2と2レンジにおけるクラッチC2に接続するスプール弁5の油路溝の位置を示した図で、フェイル時にはスプール弁2は図11(B)に示す位置に設定される。正常な状態は図11(C)である。スプール弁2が制御圧ポート36aに連通する位置の場合、スプール弁2は上下どちらに移動しても半開状態とすることができ、カムシャフトの設計で望ましい方を選択すればよい。しかしながら、フェイルセーフ時のスプール弁位置は、もし4速モード位置を半連通状態にする位置に設定すると、スプール弁の移動量が少なくて済む。図12(A)では、2レンジにおけるスプール弁5がフェイルセーフ位置に位置決めされた際、下に移動して半開状態になった状態を示している。また、図10(A)に示すように、2レンジにおけるスプール弁8は、4速モードにおいてドレン圧の油圧ポート48gに通ずる位置にあり、これ以上下がらないので、図12(B)のように少し上げた位置にする。
【0053】
なお勿論、このフェイルセーフモード位置を設けたカムシャフトにおいて、フェイルセーフ機能として、必ずしもスプール弁をこのフェイルセーフモード位置にする必要はなく、モータによる移動で4速モード位置を利用しても構わない。また、他のフェイルセーフ手段として、スプール弁の油路孔もしくは油路溝の位置が油圧ポートの何れにも連通しない位置でロックする場合に備え、油路孔幅もしくは油路溝幅が、各油圧ポートのいずれかに必ず少なくとも僅かに連通している幅を有することを特徴とするようにスプール弁を構成しておいても良い。
【0054】
次に、ライン圧ポートPS 、制御圧ポートPC1、PC2、ドレン圧ポートDr の各配置は、カムシャフト1から遠い順に配置する構成とするとよい。このようにする理由は、スプール弁の位置によってピン14、15、16、17、18、19、20のカムシャフト側への突出割合が変わり、スプール弁内部の圧力の違いによってピンの押し戻される力が変化するためである。以下そのことを説明する。なおこの油圧連通路の配置の効果は、本実施例で示した集積弁の構成でなくとも、つまり単に自動制御だけ、もしくは手動制御だけの構成のものであっても同様なスプール弁の構成であれば同様な効果を有する。
【0055】
図13の(A)および(B)は、スプール弁5を例とし、スプール弁5の油路溝5aが各油圧連通路の各位置A、B、Cにあるとき、カムシャフト1が移動する際にピン17を押し上げるのに必要とする力を油圧を変化させて比較したものである。スプール弁5の油路溝5aが位置Cの場合、即ち最もスプール弁5が下がってカムシャフト1に近づいている場合、ピン17は最もカムシャフト1側に突き出していて、カムシャフト1が移動してピン17を押し上げようとするとき、d点を支点とする回転モーメントを受ける。従ってピン17の突出し長さが長いほど、ピン17に対するこじり力が大きく働くことになる。この場合、ピン17を押し上げる力が大きいと、こじる力も同様に大きくなってしまう。そこで、ピン17の突出し長さが長い位置Cの場合にピン17にかかる圧力が小さくなるような油圧連通モードを選択できれば、全体としてピン17を押し上げる力は少なくてすみ、ピン17をこじる力も大きくならずにすむ。これはスプール弁5の油路溝が各位置A、B、Cである時に、連通する供給油圧を図13(B)に示す黒点で表す関係とすれば、最大でも制御油圧の取る最大値、即ちライン圧と位置Bの線の交点のbという大きさの力でよいことになる。つまり、高圧となるライン圧を供給するポートを位置Aにし、最も低い圧力であるドレン圧のポートを位置Cとすることで、カムシャフト1の駆動力を低減でき、ピン変形の危険性を防ぐことができる。またカムシャフト1の駆動源であるステップモータ12の駆動力も小さくて済み、装置の大型化を防ぐことになる。さらに、手動の際のセレクトレバー500の操作力にも影響するので、より少ない力で駆動できる。
【0056】
また、制御圧ポートPC1またはPC2をライン圧ポートPS とドレン圧ポートDr との間に配置すると、圧力切換えの際、中間圧としての制御圧を必ず通過するのでショックなく切換えを行うために最も都合がよい。
ライン圧ポートPS 、制御圧ポートPC1、PC2、ドレン圧ポートDr は本実施例においてはハウジング28内または外で連通しているが、この様に構成すると、各油圧ポートの間隔が十分にない場合でも、各ポート間の隔壁の強度が十分にとれるという効果がある。
【0057】
以上説明した本発明の実施例では、図1に示すように、カムシャフト1の両側にスプール弁SPを配置したので、集積弁60はコンパクトな略平板状に構成されている。配置に上下の制約はないのでオイルパン内での配置も容易となる。本発明では、平板状に限らず、例えば、カムシャフト軸を中心として屈曲させるようにしてもよい。また本発明では、スプール弁列をカムシャフトの片側に一列に配置させ細長くした棒形状でももちろん構わない。これらの場合では、他の装置、特にAT本体のトランスミッションの形状に合わせて設置余裕の少ないオイルパン内部などの周辺にコンパクトに搭載することができる。
【0058】
また本実施例では、カムシャフト1に対するECU変速とマニュアル変速の割当は回転方向にECU変速、スライド方向にマニュアル変速を割り当てている。これは、回転方向にカム面の凹凸変化の頻度が少なくなるため、カムシャフト1の鋳造、成形等の加工が容易になり製作上極めて有利になるからである。本発明では、被駆動体であるカムシャフトの軸方向の直線運動によって自動制御を行い、回転運動によって手動制御を行なうことも可能である。この場合、駆動手段であるステップモータはカムシャフトに連動する配置となり、ステップモータの位置には歯車でセレクトレバーに機械的に接続されることになる。また本発明では、カムシャフトは図示した寸法に限らず、径を大きくして略円筒ドラムカムシャフトとしても構わない。またスプール弁の形状も、上述の機能を持つ油圧弁であれば円柱に限らず、どのような形状の弁であってもよい。なお一般的にスプール弁の個数や油圧連通モードは、トランスミッションの構造に依存して変わり、また多板ブレーキや多板クラッチの数や質によって設定条件も変化する。
【0059】
また本実施例では、カムシャフト1により各スプール弁SPを駆動したが、本発明では、自動、手動の機構を備えた油圧制御方式ならばどのように制御弁であるスプール弁を駆動してもよく、同様な効果を得ることができる。
また本実施例では軸方向の駆動はセレクトレバー500による手動操作によってなされているが、もちろん自動側即ちステップモータ12によって駆動される回転方向への駆動に適用する構成でも効果が同じである。
【0060】
また本実施例では、カムとカムシャフト1とを一体に形成したが、本発明では、外周面をカム形状としたカムリングをシャフトに嵌め込んで図1に示すカムシャフト構造としてもよく、その場合、ポート数変更やポート組み合わせ変更などに対応しやすくなる。例えば図示はしないが、各スプール弁のあるハウジングの円筒孔の周囲を1ブロックとして、カムシャフト軸方向に積み重ねるような構成にすることで変更は容易となる。従って、そのような構成は、集積弁が、油圧弁とそのハウジングを1ブロック単位として、該1ブロック単位を必要ポート数だけ積層したことを特徴とすることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例による自動変速機用油圧制御装置の集積弁を示す断面図である。
【図2】本実施例の自動変速機装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】図1のIII 方向矢視図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】本実施例の信号線の入出力状態を示すブロック図である。
【図6】集積弁の作動状態を示す連通動作モード図である。
【図7】トランスミッションの多板クラッチ、多板ブレーキの動作状態図である。
【図8】図4の断面位置におけるカムシャフトの断面形状を示す断面図である。
【図9】フェイル時判定を示すモータ制御のフローチャートである。
【図10】フェイルセーフ位置を有するカムシャフトの概略説明図およびスプール弁5の動作説明図である。
【図11】フェイルセーフ位置を有するカムシャフトの概略説明図およびスプール弁2の動作説明図である。
【図12】半連通状態によりフェイルセーフ制御を行うスプール弁5および8の動作説明図である。
【図13】(A)は、スプール弁5の詳細形状を示す断面図である。(B)は、圧力を変化させたときのスプール弁位置とスプール弁のピンを押し上げる力との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1 カムシャフト(動力伝達部材)
2、3、4、5、6、7、8 スプール弁(制御弁)
9 軸受
11 連結部
12 ステップモータ(駆動手段)
12a ハウジング(固定子)
13 ギア(回転機構)
14、15、16、17、18、19、20
ピン
28 ハウジング
29 軸受
34 軸受部
39、40、41、42、43、44、45
連通ポート
35a、35b、35c、35d、35e、35f、35g
ライン圧ポート
36a、36b、36c、36d、38e、38f、38g
制御圧ポート
52 中間ギア(回転機構)
53 ギア歯(伝達部)
54 リターンスプリング(弾性体)
61、62 係合油圧制御弁
64 ライン圧制御弁
70 AT用ECU
72 エンジン用ECU
200 トルクコンバータ
300 トランスミッション[0001]
[Industrial application fields]
The present invention relates to a hydraulic control device for an automatic transmission that controls a transmission mechanism of an automatic transmission with hydraulic pressure.
[0002]
[Prior art]
Conventionally, in order to smoothly transmit a rotational driving force according to a load, an automatic transmission that is widely used for vehicles or the like performs a shift control by adjusting a hydraulic pressure by a control valve and controlling each friction engagement device. Yes. Shift control is performed by manual control using a select lever that selects a certain gear position to some extent by the occupant, and by using a friction engagement device so that an appropriate gear ratio is obtained by an engine control computer (ECU) based on engine throttle opening, vehicle speed, and the like. It is performed by automatic control to determine. Shift control is realized by controlling the hydraulic pressure of each frictional engagement device of an automatic transmission with a hydraulic circuit using multiple control valves, accumulators, solenoid valves, etc. to smoothly transmit the rotational driving force according to the load doing. In such a configuration, control valves are required as many as the number of friction engagement devices in the automatic transmission, so that the size of the device is increased and many parts are required, and the device is complicated and the manufacturing cost is high. is there.
[0003]
In order to solve such a problem, it is conceivable to reduce the size, weight and simplification of the apparatus by using an integrated valve in which a plurality of control valves are integrated in one place. In this system, even if the electronic control automatic control function breaks down by the ECU fail system, etc., the occupant can operate the select lever to select forward or reverse, and to some extent, select the gear position during forward travel. It has become.
[0004]
[Problems to be solved by the invention]
However, in the case of such a device that controls automatic shift using the conventional integrated valve, the control valve is switched only by electric means. Therefore, when an electrical abnormality such as failure of the ECU or disconnection of wiring occurs, the shift switching is performed. There is a problem that the function is completely lost.
[0005]
The present invention has been made to solve such problems, and an object thereof is to provide a hydraulic control device for an automatic transmission that can be reduced in weight or size with a simple configuration.
Another object of the present invention is to provide a hydraulic control device for an automatic transmission that can reliably control the hydraulic pressure by fail processing even when an abnormality occurs and that reduces the impact of the fail processing.
[0006]
[Means for Solving the Problems]
In order to achieve the above object, a hydraulic control device for an automatic transmission according to
Hydraulic control device for automatic transmission that switches oil passages supplied to a plurality of frictional engagement elements provided in an automatic transmission and switches and controls a plurality of shift stages by engaging or releasing the plurality of frictional engagement elements Because
Multiple control valves for automatic and manual shifting , As well as either automatic shifting or manual shifting is operated by a rotating mechanism, and the other is operated by a slide mechanism. An integrated valve having a power transmission member for driving a plurality of control valves;
Drive means for driving the power transmission member to perform shift control by automatic control;
An elastic body that moves the driving means to a predetermined position when the driving means is not driven;
It is characterized by providing.
[0007]
According to a second aspect of the present invention, there is provided a hydraulic control device for an automatic transmission.
When the driving means is not driven, at a predetermined position of the driving means moved by the elastic body, at least one of the oil passages supplied to the plurality of frictional engagement elements is in a half-open state. Do .
[0012]
[Operation and effect of the invention]
According to the hydraulic control device for an automatic transmission according to
[0017]
【Example】
Hereinafter, the present invention will be described based on specific examples.
FIG. 2 shows a system configuration in which the hydraulic control device for an automatic transmission according to the present invention is applied to an automatic transmission for a vehicle (hereinafter, “automatic transmission” is referred to as AT). In FIG. 2, EV represents an electromagnetic valve, and MV represents an integrated valve.
[0018]
As is well known, the operation of the vehicle AT is automatically or manually switched in gear connection in the
[0019]
In the
[0020]
The line pressure or control pressure oil supplied to the
[0021]
The connecting
[0022]
As shown in FIG. 1, a
[0023]
A
[0024]
In the present embodiment, since the
[0025]
A connecting
As shown in FIG. 1, the
[0026]
As shown in FIG. 1, the spool valve SP for switching the oil passage is arranged side by side on both sides of the
Next, the detailed structure of the spool valve SP will be described using the
[0027]
As shown in FIG. 13 (A), the
[0028]
Then, between the
[0029]
When each spool valve SP moves through the
[0030]
In addition, the control pressure port P is the same as the line pressure pressure oil. C1 , P C2 The control pressure pressure oil whose pressure is adjusted is supplied to each spool valve SP, and the control pressure pressure oil is supplied to each friction engagement device via the spool valve SP. The control pressure pressure oil supplied from the engagement
[0031]
Oil passage groove of spool valve SP is drain pressure port D r When it is positioned at a position that communicates with the spool valve SP, the pressure oil in the friction engagement device that communicates with the spool valve SP is discharged to the drain pressure port D. r Then, it is discharged to the outside of the
As shown in FIG. 2, among the
[0032]
The circumferential position of the
[0033]
As shown in FIG. 5, the
[0034]
Since the
[0035]
The shift position of the
[0036]
Since the
[0037]
FIG. 8 is a sectional view in the axial direction of the
[0038]
From this state, according to the rotation of the
[0039]
When the
[0040]
Next, the shifting operation at the D range position will be described. The basic operation is the same in other ranges.
At the position of the manual D range, the
[0041]
From the first speed mode state, the
[0042]
When the range is changed by manually switching the
[0043]
Next, the fail safe function will be described. Usually, the occurrence of a failure is abrupt, and in a vehicle, it can be considered that the failure occurs during travel. The corresponding fail safe here is a case where the apparatus does not fail to the extent that mechanical damage occurs, but the automatic control function is disabled. If for some reason the automatic control function is disabled, the fail-safe setting is set so that the shifting operation can be performed manually. Usually, as implemented in a conventional vehicle, the file safe in AT is such that the shift state is maintained as it is or in the fourth speed mode position (high speed mode side). This is because if a downshift occurs during a failure, the engine may suddenly become engine braked and a shift shock may occur, which may be dangerous. Measures are taken to avoid it.
[0044]
Each hydraulic communication mode in FIG. 6 shows only a communication position within a range that is originally surrounded by a thick line as a range to be normally used as shown in the column of the multi-plate clutch C0 (spool valve 2) as an example. That is, in the L range, the speed is 1 st And 2 nd State only, while operating normally, 3 rd Or 4 th There is no speed change. Similarly, in 2 ranges, 1 st 2 nd 3 rd Only 4 th There is no gear shift. In the N, R, and P ranges, there is no shift from the operation, and 1 st Only. Therefore, in this embodiment, the hydraulic communication mode is limited as shown in FIG. 6 at the unused shift mode position in order to fail-safe at the time of failure (failure). That is, the same communication state as the hydraulic communication mode at the right end of the thick frame range is maintained at the hydraulic communication mode position on the high speed side. For example, in the L range, 2 is the fastest mode in the L range. nd Hydraulic communication mode P S Is unused 3 rd 4 th Set to. Hereinafter, the same applies to the 2 range, D range, N range, R range, and P range.
[0045]
Further, in the case of the present embodiment, a fail-safe mode position is separately provided on the speed change mode side, that is, on the rotation direction side of the camshaft 1 (failure column in FIG. 6). The operation of the fail safe mode position will be described later. First 4 th The operation at the time of fail when the position is set to the fail-safe position will be described.
When the
[0046]
FIG. 9A shows an outline of the processing flow regarding the failure among the processing programs of the
[0047]
When a failure occurs in the drive control of the
[0048]
In the case of this configuration, the shift shock is reduced when a failure occurs in any shift mode position. For example, the
[0049]
The
[0050]
Since the
[0051]
FIG. 10A is a concavo-convex cross section (a part) in the rotation direction of the
[0052]
The position of FIG. 10C is not limited to the D range of the clutch C2 connected to the
[0053]
Of course, in the camshaft provided with the fail-safe mode position, the spool valve does not necessarily have to be in the fail-safe mode position as a fail-safe function, and the 4-speed mode position may be used by movement by a motor. In addition, as another fail-safe means, the oil passage hole width or the oil passage groove width is provided for a case where the oil passage hole or the oil passage groove of the spool valve is locked at a position where it does not communicate with any of the hydraulic ports. The spool valve may be configured so as to have a width that always communicates with any one of the hydraulic ports at least slightly.
[0054]
Next, the line pressure port P S Control pressure port P C1 , P C2 , Drain pressure port D r Each of the arrangements may be arranged in the order far from the
[0055]
13A and 13B illustrate the
[0056]
Control pressure port P C1 Or P C2 Line pressure port P S And drain pressure port D r When the pressure is switched, the control pressure as an intermediate pressure always passes when switching pressure, so that it is most convenient for switching without shock.
Line pressure port P S Control pressure port P C1 , P C2 , Drain pressure port D r In this embodiment, the communication is performed inside or outside the
[0057]
In the embodiment of the present invention described above, as shown in FIG. 1, since the spool valves SP are arranged on both sides of the
[0058]
In this embodiment, the ECU shift and the manual shift are assigned to the
[0059]
In this embodiment, each spool valve SP is driven by the
In this embodiment, the axial driving is performed manually by the
[0060]
In this embodiment, the cam and the
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a cross-sectional view showing an integrated valve of a hydraulic control device for an automatic transmission according to an embodiment of the present invention.
FIG. 2 is a block diagram showing a system configuration of the automatic transmission device according to the present embodiment.
FIG. 3 is a view taken in the direction of the arrow III in FIG.
4 is a cross-sectional view taken along line IV-IV in FIG.
FIG. 5 is a block diagram illustrating an input / output state of a signal line according to the present exemplary embodiment.
FIG. 6 is a communication operation mode diagram showing an operation state of the integrated valve.
FIG. 7 is an operation state diagram of a multi-plate clutch and a multi-plate brake of the transmission.
8 is a cross-sectional view showing the cross-sectional shape of the camshaft at the cross-sectional position of FIG.
FIG. 9 is a flowchart of motor control showing determination at the time of failure.
10 is a schematic explanatory diagram of a camshaft having a fail-safe position and an operation explanatory diagram of a
11 is a schematic explanatory diagram of a camshaft having a fail-safe position and an operation explanatory diagram of the
FIG. 12 is an operation explanatory diagram of the
13A is a cross-sectional view showing a detailed shape of the
[Explanation of symbols]
1 Camshaft (power transmission member)
2, 3, 4, 5, 6, 7, 8 Spool valve (control valve)
9 Bearing
11 Connecting part
12 Step motor (drive means)
12a Housing (stator)
13 Gear (Rotation mechanism)
14, 15, 16, 17, 18, 19, 20
pin
28 Housing
29 Bearing
34 Bearing part
39, 40, 41, 42, 43, 44, 45
Communication port
35a, 35b, 35c, 35d, 35e, 35f, 35g
Line pressure port
36a, 36b, 36c, 36d, 38e, 38f, 38g
Control pressure port
52 Intermediate gear (rotating mechanism)
53 Gear teeth (transmission part)
54 Return spring (elastic body)
61, 62 Engagement hydraulic control valve
64 Line pressure control valve
70 ECU for AT
72 Engine ECU
200 Torque converter
300 transmission
Claims (2)
自動制御による変速と手動による変速とを行う複数の制御弁、ならびに自動制御による変速または手動による変速のいずれか一方では回転機構により作動し、他方ではスライド機構により作動することで前記複数の制御弁を駆動する動力伝達部材を有する集積弁と、
自動制御による変速制御を行うために前記動力伝達部材を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段の非駆動時、前記駆動手段を所定位置に移動する弾性体と、
を備えることを特徴とする自動変速機用油圧制御装置。Hydraulic control device for automatic transmission that switches oil passages supplied to a plurality of frictional engagement elements provided in an automatic transmission and switches and controls a plurality of shift stages by engaging or releasing the plurality of frictional engagement elements Because
A plurality of control valves for performing a shift by automatic control and a manual shift, and the plurality of control valves by operating either a shift by automatic control or a manual shift by a rotating mechanism and on the other by a slide mechanism An integrated valve having a power transmission member for driving
Drive means for driving the power transmission member to perform shift control by automatic control;
An elastic body that moves the driving means to a predetermined position when the driving means is not driven;
A hydraulic control device for an automatic transmission, comprising:
Priority Applications (1)
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