JP3663271B2 - 新規の分枝鎖エステル及びその製法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、触媒残分としてもっぱらマグネシウムイオンを含有する、電解質特性を有する置換基を有するポリオールと多価カルボン酸よりなる酸残基とからの新規分枝鎖エステル、その製造、このポリマーを薬物学的に活性の物質を放出するマイクロ粒子の製造に使用すること及びこのポリマーを用いて製造されたマイクロ粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロ粒子は、粒径範囲が約1μm〜約1000μmの微細粒子形である。構造に応じて、マイクロ粒子は、マイクロカプセルとマイクロ球にも区別できる。この場合、マイクロカプセルは、その中で薬物学的活性物質が担持剤で包囲されている核を構成している粒子であり、マイクロ球は、その中で薬物学的活性物質が粒子を構成している担持剤中に分散されている粒子と理解される。
【0003】
マイクロ粒子は、一般に、遅延された放出を示し、種々異なる方法で、例えば経口、非経腸、眼から、肺から又は傷中に撒布することにより適用されうる。特に、これらは、その小さい寸法に基づき適当な媒体中に懸濁されるので、非経腸的使用のために好適であり、小さい直径の注射針からの注射により比較的痛みが少なく適用することができる。
【0004】
このような処方物は、長時間保持性で一様な全身的又は局所的作用濃度が望ましい場合の全ての薬物学的活性物質にとって重要である。これは、経口適用時に分解されるか又は不充分に吸収され、非経腸的にのみ適用することのできる作用物質にとっては特に有利である。後者の例は、薬物学的に活性のペプチド、例えばペプチドホルモン又は蛋白質の場合である。
【0005】
ここで、インターロイキン(IL−1〜IL−15)、インターフェロン(IFN)、ノイロトロフィン(NT−1〜NT−3)、コロニー刺激性因子(CSF)、表皮成長因子(EGF)、神経成長因子、プロラクチン、黄体化ホルモン−放出ホルモン(LH−RH)、インシュリン、ソマトスタチン、グルカゴン、ガストリン、ペンタガストリン、ウロガストリン、カルシトニン、セクレチン、エンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシン、レニン、ブラデイキニン、チロシジン、グラミシジン、エリスロポエチン(EPO)、アンギオペプチン、ヒルジン、オキシトシン、バソプレシン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、脳誘導成長因子(BDGF)、これらの合成類縁体及び変性体並びにこれらの薬物学的活性フラグメントが特に重要である。
【0006】
一般に、マイクロ粒子には、全体の放出期間にわたってできるだけ一定の作用物質放出が望まれる。生分解可能な担体ポリマーの使用の際には、作用物質の放出は、そのポリマー中での拡散速度により、かつ、その分解速度により決められる。
【0007】
連続的適用の際の担体ポリマーの集塊を避けるために、これは作用物質放出の終了後にできるだけ完全に分解されるべきである。
【0008】
作用物質包埋用の生分解可能な担体ポリマーは、既に1973年に米国特許第3773919号明細書に記載されていた。ここでは、ヒドロキシカルボン酸、殊に乳酸及び/又はグリコール酸からのポリマーが提案されていた。乳酸及び/又はグリコール酸からのポリマーは、体内で加水分解されて、乳酸及び/又はグリコール酸にされ、これらは更に代謝されてCO及び水にされ、従って、殊に非経腸的遅延形の製造のために好適である。
【0009】
マイクロ粒子の形の作用物質包埋物は、この方法で、溶剤蒸発、相分離 又はスプレー乾燥により得ることができる。製造されたマイクロ粒子は、規則的に成形され、狭い粒径分布を有すべきである。こうして、単一な放出表面を達成することができ、その小さい直径を有する注射針からの適用可能性が確立できる。
【0010】
この方法で溶剤蒸発されたマイクロカプセルの製造は、溶解された形の壁形成性物質及び溶解されたか又は分散された形の作用物質を含有する溶液を連続的方法媒体中に分散させ、溶剤の一部を内相を形成する液滴からマイクロカプセルの形成下に蒸発させ、残りの溶剤をマイクロカプセルから抽出することにより行う。
【0011】
ポリ乳酸及びコポリ乳酸グリコール酸を用いて規則的に形成されたマイクロカプセルを得ることができるが、このマイクロカプセルは、大抵は、作用物質が製造の間に連続的方法で媒体中に移行し得、これによりカプセル化が留保されるので、所望よりも明らかに低い作用物質分を含有する。更に、取扱いが困難で、大きいバッチへの移行(規模拡大)が困難であり、このことはこの方法の大工業的な使用を妨げている欠点がある。
【0012】
相分離を用いるマイクロカプセルの製造は、カプセル中に入れるべき作用物質を、溶解形で壁形成性物質を含有する溶剤(A)の溶液中に懸濁させ、溶剤(A)と混合可能であるが、その中にはカプセル中に入れるべき作用物質及び壁形成性物質を溶かさない溶剤(B)を添加し、これにより壁形成性物質をマイクロカプセルの形成下に作用物質上に析出させることにより行う。
【0013】
相分離は、カプセル中に入れるべき作用物質の溶解性並びに形状及び粒度分布への高い要求を課す。不規則な粒子形状に基づき、不規則に成形されたマイクロカプセルが得られ、屡々使用溶剤中への作用物質の部分的溶解性の結果、作用物質も損失する。同様に、取扱いの困難及び大きいバッチへの移行(規模拡大)の困難が欠点である。全体的に、相分離は、作用物質含有マイクロカプセルの製造のために好適性が低い。
【0014】
スプレー乾燥を用いる作用物質を有するマイクロ粒子の製造は、溶解された形の担体物質及び溶解された又は分散された形の作用物質を含有する溶液を流動ガス状媒体中へスプレーすることにより行い、これにより差し当たり形成された液滴から溶剤が除去され、マイクロ粒子が残る。スプレー乾燥は、迅速に、かつ簡単に実施され、概して僅かのみの作用物質損失で有利に実施される。更に、この方法は、取扱いが良好であり、容易に大工業的規模に移行(規模拡大)することができる。
【0015】
しかしながら、マイクロ粒子は、乳酸及び/又はグリコール酸からのポリマーを用いると、スプレー乾燥によっては劣悪にのみ製造可能である。従って、ポリ乳酸の使用は、不規則な表面及び繊維類似物質の高い配分を有する非常に不規則に成形されたマイクロ粒子をもたらす(J.Pharm.Pharmacol.40,754-7(1988))。更に、EP 0315875 A1から、乳酸及びグリコール酸からのコポリマーを用いても、スプレー乾燥を用いては、マイクロ粒子は製造できないことが公知である。
【0016】
ポリ乳酸(PLA)及びポリ乳酸グリコール酸(PLGA)は、通常、錫含有触媒、殊にSn(II)−2−エチルヘキサン酸の存在下に、相応する環状ジマーの開環重合により製造され、この触媒はポリマーの製造の後にその中に残留する。しかしながら、錫含有触媒は毒物学的に無害ではなく、Sn(II)−2−エチルヘキサン酸に関しては、細胞培養時の細胞毒作用が記載されている(Tanzi M.C.,等:Cytotoxicity of some catalysts commonly used in the synthesis of Copolymers for biomedical use,J.Mat.Sci.:Materials in Medicine,5,393-396(1994))。従って、毒物学的観点から、このような残基を有しないポリマーが所望されている。
【0017】
ポリラクチド、殊にポリ−L−ラクチドの製造のために、Sn(II)−2−エチルヘキサン酸を生理学的に認容性のマグネシウムを含有するジブチルマグネシウムで代えることが提案された(Kricheldorf H.R.,Lee,S.R.:Polylactones:32.High-molecular-weight polylactides by ring-opening polymerization with dibutylmagnesium or butylmagnesium chloride,POLYMER 36,2995-3003(1995))。この論文は、高分子量ポリ乳酸、殊に光学的に純粋なポリ−L−乳酸の製造を記載している。しかしながら、高分子量ポリ乳酸、殊にポリ−L−乳酸は、比較的ゆっくり分解され、例えばマイクロ粒子のようなデポ形の処方のためには好適性が低い。この論文でも、デポ形の製造のためのポリマーも供給されるべきであるが、明確に迅速に分解し、マイクロ粒子の処方のために好適であるグリコール酸とのコポリマーは記載されていない。
【0018】
更に、ポリ乳酸(PLA)及びポリ乳酸グリコール酸(PLGA)は、屡々不満足な作用放出をするデポ形をもたらす。殊に、マイクロ粒子は、大抵、多相の放出経過を示し、当初、表面に存在する作用物質による著しく高められた放出を示す。殊に、ペプチド作用物質においては、著しく減少されたか又は存在しない放出の相に至り、これが再び後のポリマー物質分解により結果として担持している物質を放出させる。作用物質放出の終了の時点に、なおポリマー残分が存在する。
【0019】
WO95/23175は、電解質特性を有する置換基を有するポリオールと多価カルボン酸からの酸残基とからのエステルを記載している。慣用のポリラクチド−コグリコリドに比べて明らかに高い分子量減成(これは同様に明らかに高い質量損失を伴う)を示すポリマーが提供される。これから製造された仔牛血清アルブミンを有するマイクロカプセルの放出挙動は、ポリマーの物質分解と充分に平行して進行し、その放出挙動は、このポリマーの物質分解を介して制御できるようにみえる。この放出の終了後に、このポリマーは更に分解される。このことは、放出終了の際に、残留するポリマー残分の集塊の危険が生じることなしに、改めてこれが適用されうるので、短縮された適用間隔を有する放出系の製造を可能とする。
【0020】
デポ形として、実施例中にはもっぱらこの方法で溶剤蒸発製造されたマイクロカプセルが開示されている。このポリマーは、原則的にスプレー乾燥によっても適用できるが、主としてマイクロ粒子が得られる限り、これは、PLAの使用の場合と同様に、不規則な表面並びに高い繊維状物質分を有する。
【0021】
置換されたポリオールを、開環重合のために好適な触媒の存在下に、ヒドロキシカルボン酸の環状ジマーと反応させる方法でこのポリマーは製造される。公知の毒物学的問題にも関わらず、実施例で開示されているポリマーは、もっぱらその中に不利に残るSn(II)−2−エチルヘキサン酸の使用下に製造されている。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の課題は、前記の問題を有しないマトリックスポリマーを提供することであった。このマトリックスポリマーは、毒物学的に考慮すべき触媒残分を含有すべきではなく、スプレー乾燥により、繊維状物質を含有しない規則的に成形されたマイクロ粒子に加工可能であるべきである。更に、これは、高い作用物質負荷を可能にし、作用物質を遅延して、かつ変動せずに放出すべきである。この際、ポリマー分解の速度及び全時間は、放出終了後に、体内でのマトリックスポリマーの集塊の危険なしに、更なるデポ形の用量を適用することができるように作用物質放出の速度及び時間に適合すべきである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
意外にも、電解質特性を有する置換基少なくとも1個を有するポリオールを、触媒としてのジアルキルマグネシウムの使用下に、ヒドロキシカルボン酸と縮合させて分枝鎖エステルにする際に、所望の特性を有するマトリックスポリマーを提供できることを発見した。得られるエステルは、触媒残分としてもっぱら生理学的に認容性のマグネシウムイオンを含有し、スプレー乾燥を用いて、規則的な表面構造を有する球形で、分離されているマイクロ粒子に加工することができる。
【0024】
本発明の目的物は、電解質特性を有する置換基少なくとも1個を有するポリオールと多価カルボン酸からなる酸残基とからの分枝鎖エステルであり、これは500000までの重量平均分子量を有し、触媒残分としてもっぱら生体認容性のマグネシウムイオンを含有する。
【0025】
電解質特性を有する置換基とは、親水性媒体中で少なくとも部分的に解離された形で存在するものと理解される。
【0026】
同様に、本発明の目的は、電解質特性を有する置換基少なくとも1個を有するポリオールと多価カルボン酸からなる酸残基とからの反応生成物であり、これは500000までの分子量を有し、触媒残分としてもっぱら生体認容性のマグネシウムイオンのみを含有する。
【0027】
本発明によるポリエステル中に含有される電解質特性を有する置換基は、強酸又は弱酸から、又は強塩基又は弱塩基から形成することができ、その塩の形でも存在しうる。これらは強酸又は弱塩基から成るのが有利であり、その塩の形で存在する。
【0028】
従って、本発明の目的物は、電解質特性を有する置換基がスルホ基、1級、2級又は3級アミン又はカルボキシル基から構成される生成物でもある。
【0029】
電解質特性を有する置換基を有するポリオールは、同じ又は異なる、連鎖状の相互に連結された脂環式又は脂肪族単位から成っていてよく、線状又は環状構造を有していてよい。
【0030】
このようなポリオールは、例えば、炭水化物からの相応して置換されたポリマー又はオリゴマー、例えばインシュリン、デキストラン、キシラン、シクロデキストリン又は同じ又は異なるアルケン単位からの相応して置換されたポリマーから成っていてよく、例えば置換されたポリビニルアルコール又は置換された又は置換されていないポリビニルアルコール又は部分的にアセチル化されたポリビニルアルコールとアクリル酸、α−又はβ−メタクリル酸、アクリルアミン、α−又はβ−メタクリルアミン、アクリロニトリル又はα−又はβ−メタクリロニトリルとからのコポリマーであってよい。
【0031】
デキストランスルフェート、ジエチルアミノエチル−デキストラン、キシランスルフェート、ジエチルアミノエチル−キシラン、シクロデキストリンスルフェート、部分スルフェート化されたポリビニルアルコール、部分スルフェート化されたポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール又は部分アセチル化されたポリビニルアルコールとアクリル酸、アクリルアミン、アクリロニトリル、α−又はβ−メタクリル酸、α−又はβ−メタクリルアミン又はα−又はβ−メタクリロニトリルとからのコポリマー並びにこれらの塩が有利である。この際、特に、その相応するアルカリ金属塩、殊にNa−塩又はそのハロゲン塩、殊にクロリドが有利である。
【0032】
スルフェート化されたポリビニルアルコール又はそのコポリマーは、相応するポリ酢酸ビニル又はそのコポリマーをHSO/SOを含有する適当なアルコール、例えばエタノール中で、アルコール分解を用いてスルフェート化し、引き続き中和する方法で製造することができる。この反応を、例えば5%HSO/SO含有エタノール中で実施し、中和すると、ヒドロキシル基の約20%がスルフェート化される。
【0033】
ポリビニルアルコール又は部分アセチル化されたポリビニルアルコールを含有するコポリマーは、相応するポリ酢酸ビニルを含有するコポリマーの酸性又はアルカリ性加水分解により製造することができる。
【0034】
ポリマーのヒドロキシカルボン酸残基は、それぞれ1個のヒドロキシ基及び1個のカルボニル基を有する1、2、3又はそれ以上の特異性ヒドロキシカルボン酸から構成されていてよい。本発明により使用可能なヒドロキシカルボン酸の例は、乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、β−ヒドロキシ酪酸、δーヒドロキシバレリアン酸又はε−ヒドロキシカプロン酸である。
【0035】
乳酸及び/又はグリコール酸からの多価カルボン酸が有利である。特に、その酸残基がグリコール酸単位25〜50モル%より成る乳酸及びグリコール酸からのコポリマーが有利である。
【0036】
この際、乳酸単位は、光学的に純粋な形(D−又はL−乳酸)で、又はこれらの混合物として存在していてよい。
【0037】
本発明による置換されたポリオールエステルは、相応する置換されたポリオールとジマー又はラクトン形のヒドロキシカルボン酸1種以上とを、触媒としてのジアルキルマグネシウムの存在下に反応させることにより製造することができる。
【0038】
重合のために、反応成分を相互にかつ触媒と一緒に混合し、高められた温度で反応させる。
【0039】
この重合の際に、触媒中に含有されているアルキル基はポリマー中に包埋されず、アルカンとして放出される。その連鎖長及び反応条件に応じて、これらはガス又は液体として存在し、従って又はこれからガス抜きにより逃出するか又は生じるポリマーの精製時に有機溶剤と一緒にポリマーから除去される。
【0040】
本発明により、炭素原子1〜10の連鎖長を有するジアルキルマグネシウム化合物を使用することができる。C〜C−ジアルキルマグネシウム、特にジブチルマグネシウムが有利である。重合の際にジブチルマグネシウムから生じるブタンは0℃より低い沸点を有するので、これは重合反応の条件下で有利に遊離のガスとして逃出する。
【0041】
ジアルキルマグネシウム化合物の使用下でのポリマーの製造の際に、その特性は広い範囲内の反応条件の選択により制御することができる。
【0042】
この反応実施の後に、ブロック配列又は統計的分布を有するポリマーを得ることができる。ブロック配列を有するポリマーが所望の場合には、例えば先ずモノマーと重合させ、この重合をコモノマーの添加の後に継続させることにより、これを製造することができる。多かれ少なかれ統計的な配列は、双方のモノマーの同時重合により得ることができ、この際、高い温度は、統計的分布を促進する。
【0043】
本発明によるポリマーは、スプレー乾燥を用いて、繊維状の物質を含有しない規則的に成形されたマイクロ粒子に加工することができる。従って、本発明の目的は、このポリマーをスプレー乾燥を用いるマイクロ粒子の製造のために使用すること並びにこれにより製造されたマイクロ粒子である。
【0044】
このマイクロ粒子は、作用物質を本発明によるポリマーを溶解された形で含有する溶液中に溶かすか又は分散させ、引き続き、流動しているガス状媒体中にスプレーすることにより製造することができる。ポリマー溶液中に可溶である作用物質は、ポリマーを有する単一溶液としてスプレーすることができる。
【0045】
ポリマー溶液中ではなく水中に溶ける作用物質は、先ず水中に溶かされ、ポリマー溶液中に分散され、W/O−エマルジヨンとしてスプレーされる。この処置法は、良好な水溶性の作用物質、例えば特定の医薬物質 ペプチド及び蛋白質にとって好適である。
【0046】
水中にもポリマー溶液中にも充分に可溶性ではない作用物質は、ポリマー溶液中に分散させ、分散液としてスプレーさせる。高い包埋効果を得るために、マイクロ化された作用物質を使用するのが有利であり、この際、一般に、10μmより小さい粒径が望まれる。
【0047】
作用物質を分散して又は乳化して含有するポリマー溶液の高い微細性を得るためには、この分散を有利に機械的分散装置、例えば歯車リム分散棒(Zahnkaranzdispergierstabs)を用いて又は超音波を用いて行うのが有利である。
【0048】
本発明によるポリエステルは、記載の全ての方法で、繊維状物質を生じることなく、規則的に成形されたマイクロ粒子に加工することができる。従って、本発明の目的は、更に、本発明によるポリマーをスプレー乾燥を用いてマイクロ粒子の製造のために使用することであり、この際、作用物質は、スプレー乾燥で使用されるポリマー溶液中に溶解された又は分散された形で存在する。
【0049】
【実施例】
実施例は、本発明を説明するものであり、本発明をこれらに限定するものではない。
【0050】
幹物質(Rueckgratmaterial)としてのデキストランスルフェート−Na(DSS)を用いる分枝鎖PLGAの製造
例1
D,L−ラクチド(LA)28g、グリコリド(GA)22g及びモノマー当たりSO−基1〜2個を有するDSS(シグマ、分子量500000)0.5gを、100ml窒素フラスコ中に装入し、窒素で掃気し、窒素雰囲気下に油浴中で、170℃に加熱された油浴中で、モノマーが融解するまで加熱する。引き続き、絶えざる撹拌下にジブチルマグネシウム(ヘプタン中1m溶液)100mgをこの融液中にスプレーし、半時間後に反応温度を150℃まで低下させ、ここで反応を更に3.5時間継続させた。室温まで冷却の後に、生成物を塩化メチレン100ml中に溶かし、DDS−残分を除去するために蒸留水で3回洗浄した。その後、ポリマー溶液をガラスフィルター濾過器(#3)を通して濾過し、生成物をエタノール中で沈殿させ、真空中で恒量に達するまで数日間乾燥させた。
【0051】
幹物質としてのジエチルアミノエチルデキストラン(DEAED)を用いる分枝鎖PLGAの製造
例2
D,L−ラクチド(LA)28g、グリコリド(GA)22g及びモノマー当たりアミノ基1〜2個を有するDEAED(シグマ、分子量500000)0.5gを、100ml窒素フラスコ中に装入し、窒素で掃気し、窒素雰囲気下に油浴中で、モノマーが融解するまで150℃に加熱した。引き続き、絶えざる撹拌下にジブチルマグネシウム(ヘプタン中1m溶液)100mgを融解中にスプレーし、150℃で4時間反応を実施した。室温まで冷却の後に、生成物を塩化メチレン100ml中に溶解させ、DEAED−残分を除去するために蒸留水で3回洗浄した。その後、このポリマー溶液をガラスフィルター濾過器(#3)を通して濾過し、生成物をエタノール中で沈殿させ、真空中で恒量に達するまで数日間乾燥させた。
【0052】
製造されたエステルをCDCl中に溶かし、25℃で参照としてのテトラメチルシラン(TMS)の添加下に、NMR−スペクトルで同定した。
【0053】
Figure 0003663271
【0054】
製造されたエステルの分子量を、塩化メチレン中でのゲルパーミエシヨンクロマトグラフィを用いて測定した。この測定は、熱処理された組合せカラム(Lichirogel PS mix und Lichirogel PS 40、10μm、Merck)を用いて25℃で、示差屈折計(Merck-Hitachi RI-71)の使用下に実施した。較正のために、ポリスチレン標準(Merck、分子量3250;5100;19600;34500及び87000)を用いた。
【0055】
試験管内でのポリマー分解
2−R−バイアル中のポリマー各100mgに、等張塩化ナトリウム溶液2mlを加え、窒素雰囲気下に封じ、振動箱中で37℃でインキュベートした。特定の時間間隔の後に各2試料を取り出し、真空中で、室温で恒量になるまで乾燥させ、残留するポリマー質量を測定した。図1は、これから生じるポリマー1及び6の質量損失のグラフ表示を包含する。
【0056】
その都度の残留ポリマー残分を、ゲルクロマトグラフィを用いてその分子量の変化に関して検査した。図2は、これから生じるポリマー1及び6の分子量減成のグラフ表示を包含する。
【0057】
本発明によるポリマーは、通常の線状ポリラクチドコグリコリドに比べて、明らかに高められた分子量減成を示し、これは同様にポリマーの明らかに高められた質量損失を伴っている。
【0058】
エストラジオールで負荷されたマイクロ粒子の製造
ポリマー1及び6から、スプレー乾燥を用いてマイクロ粒子を製造した。このために、アセトン中のエストラジオール溶液(17β−エストラジオール−半水和物1.56%)を撹拌下に4.2%ポリマー溶液(塩化メチレン)中に加えて、エストラジオール及びポリマーを20%の重量割合で存在させた。得られた溶液を、実験室スプレー乾燥装置(Buechi 190 Mini Spray Dryer)を用いて次の条件下にスプレーした:充填温度:50℃、スプレー流 600 目盛、アスピレータ 17 目盛、スプレー速度20ml/min。
【0059】
生成物として、自由流動性の白色粉末はポリマー1を含有し、繊維状の物質を多く有する流動性の悪い粉末はポリマー6を含有した。収率は、理論量の57%(ポリマー1からのマイクロ粒子)及び理論量の54%(繊維状分を包含するポリマー6からのマイクロ粒子)であった。
【0060】
負荷率の測定のために、このマイクロ粒子をアセトニトリル中に溶かし、作用物質を水/メタノール1:1で抽出し、得られる溶液から濾過及び高圧液体クロマトグラフィ(RP18−カラム)を用いる分離の後に、280nmで光度測定した。負荷率として、20.0重量%(ポリマー1を有する生成物)及び19.7重量%(ポリマー6を有する生成物)が測定された。
【0061】
ロイプロレリン(Leuprorelin)で負荷されたマイクロ粒子の製造
ポリマー3からスプレー乾燥を用いてマイクロ粒子を製造した。このために、水性ロイプロレリン溶液(7%)を、歯車リム分散棒を用いる強い均質化の下に5%ポリマー溶液(ギ酸エチル)中に加えて、ロイプロレリン及びポリマーを4%の重量割合で存在させた。得られたエマルジヨンを均質化の更なる実施の際に、実験室スプレー乾燥装置(Huechi 190 Mini Spray Dryer)を用いて次の条件下にスプレーした:充填温度:60℃、スプレー流 500目盛、アスピレータ17 目盛、スプレー速度30ml/min。
【0062】
分離した球状粒子を有する自由流動性の白色粉末が得られ、収率は理論量の74%であった。
【0063】
このマイクロ粒子を、適当なガラス容器中に乾燥剤添加の下に−20℃で貯蔵した。
【0064】
負荷率の測定のために、このマイクロ粒子をアセトニトリル中に溶かして、作用物質を燐酸塩緩衝剤pH7.4を用いて抽出し、得られた溶液から、濾過及び高圧液体クロマトグラフィ(RP 18−カラム、溶離剤 水/アセトニトリル/TFA)を用いる分離の後に、220nmで光度測定をした。3.96重量%の負荷率が測定された。
【0065】
試験管内での作用物質放出
マイクロ粒子約20mg(正確に測定)をホースガラス容器(80ml)中に移し、燐酸塩−緩衝液(pH7.4)80mlを加えた。閉じられたガラスを、37℃で回転しているボトル装置中で10U/minで運動させた。予め決められた時間間隔の後に、このマイクロ粒子を濾過し、試料溶液を完全に新製燐酸塩緩衝液(pH7.4)で代え、放出を継続させた。試料溶液中の作用物質−濃度を高圧液体クロマトグラフィ(RP 18−カラム)を用い、溶離剤 水/アセトン/TFA(ロイプロレリン)又は水/アセトニトリル(エストラジオール)を用いて分離させ、220nm(ロイプロレリン)又は280nm(エストラジオール)で光度を測定した。
【0066】
エストラジオール含有マイクロ粒子の放出試験の結果が、図3に示されている。線状ポリラクチドコグリコリドからのマイクロ粒子に比べて、本発明によるポリマーからのマイクロ粒子は、明らかに低い当初作用物質放出(Burst−効果)を示し、かつ作用物質は殆ど全時間にわたって一定に放出される。
【0067】
更に、本発明によるポリマーからの放出挙動とその質量損失との対比(図1参照)は、前者が後者に対して充分に平行して経過することを示している。従って、放出挙動は、マトリックスポリマーの物質分解にわたり充分に制御されるとみえる。
【0068】
ロイプロレリンを含有するマイクロ粒子の放出試験の結果が、図4に示されている。本発明によるポリマーからの充分に直線状の放出経過は、マトリックスポリマーとしてのその有利な適性を追認している。
【0069】
本発明によるポリマーは、優れた放出挙動を有する。公知のポリマーとは反対に、これは、毒物学的に考慮すべき触媒残分は含有せず、スプレー乾燥を用いて、繊維状物質を生じることなしに、規則的に成形されたマイクロ粒子に加工することができる。
【0070】
このマイクロ粒子は、適当な媒体中での分散の後に、小さい直径を有する注射針から適用することができ、非経腸適用のために特に好適である。
【0071】
【表1】
Figure 0003663271

【図面の簡単な説明】
【図1】ポリマー1及び6の質量損失を示すグラフ
【図2】ポリマー1及び6の分子量減成を示すグラフ
【図3】エストラジオール含有マイクロ粒子の放出試験の結果を示すグラフ
【図4】ロイプロレリン含有マイクロ粒子の放出試験の結果を示すグラフ

Claims (13)

  1. 電解質特性を有する置換基少なくとも1個を有するポリオールと多価カルボン酸からなる酸残基とからなり、500000までの重量平均分子量を有し、触媒残分としてもっぱら生物相容性のマグネシウムイオンを含有することを特徴とする、分枝鎖エステル。
  2. 電解質特性を有する置換基は、スルホ基、1級、2級又は3級アミン又はカルボキシル基から構成されている、請求項1に記載の分枝鎖エステル
  3. 電解質特性を有する置換基少なくとも1個を有するポリオールは、デキストランスルフェート、ジメチルアミノエチル−デキストラン、キシラン−スルフェート、ジエチルアミノエチル−キシラン、シクロデキストリンスルフェート、部分スルフェート化されたポリビニルアルコール、部分スルフェート化されたポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール又は部分的にアセチル化されたポリビニルアルコールとアクリル酸、アクリルアミン、アクリロニトリル、α−又はβ−メタクリル酸、α−又はβ−メタクリルアミン又はα−又はβ−メタクリロニトリルとからのコポリマー並びにこれらの塩である、請求項1又は2に記載の分枝鎖エステル
  4. 電解質特性を有する置換基少なくとも1個を有するポリオールは、アルカリ金属塩、殊にNa−塩又はハロゲン塩、殊に塩化物として存在する、請求項1から3のいずれかに記載の分枝鎖エステル
  5. 多価カルボン酸からの形成された酸残基は、乳酸及び/又はグリコール酸からなっている、請求項1から4のいずれかに記載の分枝鎖エステル
  6. 酸残基は、グリコール酸単位25〜50モル%よりなっている、請求項5に記載の分枝鎖エステル
  7. 〜C10−ジアルキルマグネシウム、殊にC〜C−ジアルキルマグネシウムの使用下に重合することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の分枝鎖エステルの製法。
  8. ジブチルマグネシウムを重合触媒として使用する、請求項7に記載の分枝鎖エステルの製法。
  9. 反応成分を触媒と混合し、高めた温度で反応させる、請求項7及び8に記載の分枝鎖エステルの製法。
  10. 請求項1から6のいずれかに記載の分枝鎖エステルを含有する、医薬品用デポマトリックス。
  11. 請求項1から6のいずれかに記載の分枝鎖エステルを用い、少なくとも1種の作用物質を含有するマイクロ粒子を製造するために、その製造をスプレー乾燥により実施することを特徴とする、マイクロ粒子の製法。
  12. スプレー乾燥のために使用するポリマー溶液は、溶解された又は分散された形で作用物質を含有する、請求項11に記載の方法。
  13. 請求項1から6のいずれかに記載のポリマーを使用し、スプレー乾燥を用いて製造されたマイクロ粒子。
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