JP3656993B2 - 陽イオントラップ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、極めて微量にしか生成できずかつ短寿命の同位体を電子散乱実験の標的として利用するための陽イオントラップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
放射性元素(radioisotope:RI)のように、極めて微量にしか生成できず、しかも数秒間程度の短寿命の同位体に加速器等で加速した高速電子を衝突させ、その散乱現象を計測するRI電子散乱実験が計画されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来このような極微量元素等を標的とする場合、大規模な衝突型蓄積リングを建設する必要があった。しかし、衝突型蓄積リングは、電子を加速する電子リングの他に、放射性元素を加速する陽イオン加速リングが必要になり、放射性元素が極めて微量にしか生成できずかつ短寿命であるため、陽イオン加速リングが非常に大型で高価となる問題点があった。
【0004】
一方、電子ビーム型多価イオン源として、EBIS(Electron Beam Ion Source)が知られている。この装置は、磁場で絞り込んで高密度化した電子線を用い、電子線の空間電荷による動径方向の電場と軸方向に設けた外部電場とにより、生成イオンを電子線内に閉じ込めて逐次電離を行うものである。
【0005】
図8は、EBIS型多価イオン源の一例を示す図である。この例において、減圧したDRIFT TUBE内を低エネルギー(300keV以下程度)の連続電子ビームを通し、この電子ビーム中で陽イオンをトラップし、COMPENSATION COILによる外部電場によりイオンを閉じ込め多価イオンを生成する。生成した多価イオンは、外部電場を解除することにより、外部(この図で右方向)に多価イオンを照射し、種々の実験に用いることができる。
なおかかるEBIS型多価イオン源に関しては、例えば、小型多価イオン源の開発、日本物理学会誌、Vol.47,No.4,1992等に開示されている。
【0006】
このEBIS型多価イオン源は、電子ビーム中で陽イオンをトラップする機能を有することからRI電子散乱実験におけるターゲットとして用い、上述した大型で高価な陽イオン加速リングを省略することができる。
【0007】
しかしこの場合、イオン閉じ込め領域周辺に電子ビームを収束させるためのソレノイド磁場(図におけるMAIN COIL)などの外場発生装置を必要とし、散乱現象を計測する計測器等がコイルがあるため設置できず散乱実験のターゲットとしては極めて使用しにくい問題点がある。
【0008】
また、EBIS型多価イオン源の場合、トラップするための電子ビームが低エネルギー(300keV以下程度)であるので、トラップされたイオンは短時間に多価イオンとなり、トラップ電荷量がたちまち飽和してしまいトラップできる元素量が低く制限されてしまう。そのため、RI電子散乱実験におけるターゲットとしては陽イオンのイオン数がその分少なく、衝突確率(衝突効率)が低下する問題点がある。
【0009】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、(1)陽イオン加速リングを用いることなく陽イオンをトラップして電子散乱実験のターゲットとして用いることができ、(2)衝突位置近傍に散乱現象を計測するための計測器等を容易に設置でき、(3)トラップ電荷量が飽和しにくく陽イオンのイオン数を増して衝突確率(衝突効率)を高めることができる陽イオントラップ装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
電子蓄積リング中では、いわゆるイオントラップという、周回する電子ビームの安定性を損なう現象がある。これはリング中の残留ガスが自然に電子ビーム軌道上にトラップされるもので、従来この現象は電子リングの運転の立場から邪魔物とされ、トラップされた残留ガスイオンを素早く取り除くか、あるいはトラップさせないことに努力が払われてきた。本発明はこの現象に着目し、これを利用するものである。
【0011】
すなわち、本発明によれば、100MeV以上の高エネルギー電子ビーム(1)を形成する電子ビーム加速器(12)と、形成した高エネルギー電子ビームのビーム方向に静電ミラーポテンシャルを発生させトラップ領域(2)を形成するミラーポテンシャル発生装置(14)と、目的元素(3)の陽イオンをトラップ領域に入射させるためのイオン入射装置(16)とを備えたことを特徴とする陽イオントラップ装置が提供される。
【0012】
上記本発明の構成によれば、電子ビーム加速器(12)で100MeV以上の高エネルギー電子ビーム(1)を形成するので、磁場で絞り込むことなく電子ビーム(1)を直径2mm以下の高密度にすることができる。従って、従来不可欠であったMAIN COILなどの外場発生装置をなくし、衝突位置近傍に散乱現象等を計測するための計測器等を容易に設置できる。
なお、100MeV以上の高エネルギー電子ビーム(1)を用いる理由については、図5との関連で後述する。
【0013】
また、ミラーポテンシャル発生装置(14)により、高エネルギー電子ビームのビーム方向に静電ミラーポテンシャルを発生させトラップ領域(2)を形成するので、電子散乱実験等に使用する場合、入射した全粒子数が、衝突点(トラップ領域)に局在するので、リング中に分散している従来の衝突リング使用による散乱実験に比較して100倍以上に散乱効率が向上する。
【0014】
さらに、イオン入射装置(16)により、目的元素(3)の陽イオンをトラップ領域に入射させるので、放射性元素のように、極めて微量にしか生成できず、しかも数秒間程度の短寿命の同位体であっても、効率良く高速電子を衝突させ、その散乱現象を計測することができる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記イオン入射装置(16)は、目的元素(3)の陽イオンを発生する目的元素発生装置(17)と、発生した陽イオンを金属箔(4)上にインプラントするインプラント装置(18)と、インプラントした金属箔から目的元素のパルスイオンビーム(5)を発生させこれを電子ビーム加速器(12)の高エネルギー電子ビーム(1)上に向けて加速するパルスイオン源装置(19)と、電子ビーム加速器(12)に入射する前にパルスイオンビームを中性化する中性化装置(20)と、電子ビーム加速器(12)に入射した目的元素を再イオン化する再イオン化装置(21)とを有する。
【0016】
この構成により、目的元素発生装置(17)で目的元素(3)の陽イオンを発生させ、インプラント装置(18)で発生した陽イオンを金属箔(4)上にインプラントし、パルスイオン源装置(19)でインプラントした金属箔から目的元素のパルスイオンビーム(5)を発生させこれを電子ビーム加速器(12)の高エネルギー電子ビーム(1)上に向けて加速することができ、放射性元素のように、極めて微量にしか生成できず、しかも数秒間程度の短寿命の同位体であっても、その微量元素のパルスイオンビーム(5)を効率良く発生させ加速することができる。
【0017】
前記インプラント装置(18)は、陽イオンを加速する陽イオン加速器(18a)と、加速した陽イオンを金属箔(4)からなるテープ上にインプラントしこれを所定の位置まで移動するテープ転送装置(18b)とを有する。
この構成により、金属箔(4)上の狭い領域に目的元素(3)を蓄積することができ、その後パルスイオン源に送り、蓄積したものをまとめて一気にイオン化することができる。またインプラントした目的元素(3)を容易に所定の位置まで移動することができる。
【0018】
前記パルスイオン源装置(19)は、金属箔上にインプラントした目的元素を瞬間的に取り出す元素蒸発用パルスレーザー装置(19a)と、共鳴イオン化法によって純度の高い目的元素のパルスイオンビーム(5)を発生させるイオン化パルスレーザー装置(19b)と、発生したパルスイオンビームを高エネルギー電子ビーム(1)上に向けて加速するパルスイオン加速器(19c)とを有する。
この構成により、金属箔(4)上にインプラントした目的元素(3)を瞬間的に取り出し、パルスイオン化し、所定の方向に加速することができる。
【0019】
前記中性化装置(20)は、アルカリ金属蒸気を用いた荷電変換セルである。かかる荷電変換セルにより加速されたパルスイオンビームを確実に中性化してパルス状の中性ビームを生成できる。
【0020】
前記再イオン化装置(21)は、再イオン化レーザーを照射する再イオン化パルスレーザー装置である。
かかる再イオン化パルスレーザー装置により、トラップ領域(2)に到達したパルス状の中性ビームを再びイオン化し、ミラーポテンシャル発生装置(14)により、トラップ領域(2)に陽イオンを閉じ込めることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0022】
図1は、本発明の陽イオントラップ装置 を備えたRI電子散乱実験装置の全体構成図であり、図2は、本発明の陽イオントラップ装置 の全体構成図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、本発明の陽イオントラップ装置 10は、電子ビーム加速器12、ミラーポテンシャル発生装置14及びイオン入射装置16を備える。
【0024】
電子ビーム加速器12は、この例では電子リングであり、30Mev電子リニアック及び500MeVブースターリニアックで加速されたバンチ構造をもつ電子を更に加速して100MeV以上、好ましくは300〜500MeVの高エネルギー電子ビーム1を形成する。なお電子ビーム1の回転方向は、図1では右回転、図2では左回転に表示されているが、実質的には同一である。
【0025】
ミラーポテンシャル発生装置14は、形成した高エネルギー電子ビーム1のビーム方向に間隔を隔てた1対の電極14a(ミラーポテンシャル発生電極)とこれを正(+)のポテンシャルに印加する直流電源14bとからなり、電子ビーム1のビーム方向に静電ミラーポテンシャルを発生させ陽イオンを閉じ込めるトラップ領域2を形成する。
【0026】
イオン入射装置16は、目的元素3の陽イオン3をトラップ領域2に入射させるための装置である。図2に示すように、イオン入射装置16は、目的元素発生装置17、インプラント装置18、パルスイオン源装置19、中性化装置20および再イオン化装置21を有する。
【0027】
目的元素発生装置17は、目的元素3の陽イオンを発生する。インプラント装置18は、発生した陽イオンを金属箔4上にインプラントする。パルスイオン源装置19は、インプラントした金属箔4から目的元素のパルスイオンビーム5を発生させ、これを電子ビーム加速器12の高エネルギー電子ビーム1上に向けて加速する。中性化装置20は、電子ビーム加速器12に入射する前にパルスイオンビーム5を中性化する。再イオン化装置21は、電子ビーム加速器12に入射した目的元素3を再イオン化する。
【0028】
次に、EBISはソレノイド磁石などが必要だが、100MeV以上の高エネルギー電子ビ一ムではそれらが必要なく、遠方から電子ビームを収束できる理由を説明する。
【0029】
電子ビームが真空中を伝播する場合、電子同士の反発力によって各々の電子はまっすぐには走らず、集団は発散して行く。この発散を防ぐためには、その反発力以上の力を与える必要がある。反発力の強さは、同じ電流でも電子ビームの速度によって変化する。それは、走っている電子の静止座標系で見たときに電子の密度が高ければ反発力が強く、密度は低ければそれは小さい。この密度は電子ビームの相対論ファクター(Lorenz)に反比例する。したがって速度が大きいほど反発力は小さくなる。反発力は小さければ電子ビームにある軌道を与えると何もしなくてもその軌道を永遠と走り続けるが、反発力が大きい場合には発散を防ぎ、与えた軌道上を走らせるために常に補正する力が必要になる。
【0030】
EBISの場合電子エネルギーは約300keV以下であり、この場合電子の速度はβ=0.78〈光速の78%程度)であり、ローレンツ=1.6程度である。このようなビームでは、電子は周囲の電子による反発力を感じ、ほっておくと発散するので、ビームを細く維持するためにソレノイド磁場などの外場がつねに要求される。したがって、EBISの場合には、装置全体にそうした外場を作らざるを得ないのである。
【0031】
それに対して100MeV以上、例えば500MeVの高エネルギー電子ビームでは、ローレンツ値は1000程度であり、電子が他の電子から感じる反発力は上記EBISの1/625であり、ほとんど反発力を感じなくなる。したがって遠方から一旦軌道を与えてやれば、外場がなくても電子ビームは発散することなく所定の軌道を走る。したがって、遠方から必要なビームサイズに収束させるように電子ビーム軌道を作ることができ、トラッブを作りたい場所で何の収束用外場を置く必要がなくなる。
【0032】
従って、本発明では、電子ビーム加速器12で100MeV以上の高エネルギー電子ビーム1を形成するので、磁場で絞り込むことなく電子ビーム1を直径2mm以下の高密度にすることができ、従来不可欠であったMAIN COILなどの外場発生装置をなくし、衝突位置近傍に散乱現象等を計測するための計測器等を容易に設置できる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の陽イオントラップ装置 10をシミュレーション結果を含めて説明する。
【0034】
図3は、目的元素発生装置17、インプラント装置18およびパルスイオン源装置19の構成図である。
目的元素発生装置17は、図1に示すように加速器等で生成した微量元素(目的元素)を取り出すための微量元素発生装置である。
【0035】
インプラント装置18は、目的元素の陽イオンを加速する陽イオン加速器18a(例えば10〜50keV)と、加速した陽イオンを金属箔4からなるテープ上にインプラントしこれを所定の位置まで移動するテープ転送装置18bとを有する。なお図2の18cは陽イオンの方向を変える磁石である。
【0036】
パルスイオン源装置19は、テープ4上にインプラントした目的元素を瞬間的に取り出す元素蒸発用パルスレーザー装置19a(例えば約10nsec pulse)と、共鳴イオン化法によって純度の高い目的元素のパルスイオンビーム5を発生させるイオン化パルスレーザー装置19bと、発生したパルスイオンビーム5を高エネルギー電子ビーム1上に向けて加速するパルスイオン加速器19c(例えば約10keV)とを有する。なお図2の19dはパルスイオンビーム5の方向を変える磁石である。
【0037】
この構成により、例えばSnを目的元素とする場合、Pure Sn132の1μsec pulseを発生させてこれを電子ビーム加速器12の高エネルギー電子ビーム1上に向けて加速することができる。
【0038】
図4は、中性化装置20、再イオン化装置21およびミラーポテンシャル発生装置14の構成図である。この図において19eは静電四重極レンズ(Static−Q Lens)であり、磁石19dで方向を変えたパルスイオンビーム5をトラップ領域2の電子ビーム1上に収束させるようになっている。
また、中性化装置20は、アルカリ金属蒸気を用いた荷電変換セルであり、加速されたパルスイオンビームを中性化して中性ビームを生成する。
【0039】
再イオン化装置21は、再イオン化レーザーを照射する再イオン化パルスレーザー装置であり、トラップ領域2に到達したパルス状の中性ビームを再びイオン化し、ミラーポテンシャル発生装置14により、トラップ領域2に目的元素3の陽イオンを閉じ込める。
【0040】
図5は、電子ビームのエネルギー(横軸)と荷電変換断面積(縦軸)との関係図である。この図から300〜500MeVの高エネルギー電子ビーム1の場合、エネルギー依存性は小さく、Sn1+→Sn2+では10−18cm程度の断面積であることがわかる。
【0041】
多価イオンを生成する確率は、100MeV以上ではほとんど電子エネルギーに関係なく、一定で、その値は図5からEBISの電子エネルギー〈300keV以下)に対して1桁以上小さいことがわかる。従って、エネルギーが100MeV以上ではどんなに高いエネルギーでも今回のトラップの原理や利点を満足する。そのため、電子エネルギーは100MeV以上、好ましくは300〜500MeVであるのがよく、それ以上であってもよい。この多価イオン化の確率に対して高いエネルギーに対する実験値や理諭は明らかではない。しかし、高エネルギーになればなるほど電子のドブロイ波長は短くなるので、確率は電子のエネルギーではなく標的となる原子の大きさだけに依存するようになる。原子の大きさは変わらないので、結果的に電子エネルギーに依存しなくなっていくといえる。
【0042】
図6は、トラップ領域に形成されるポテンシャルの模式図である。この図において(A)は上から順に、時間に依存する電子バンチによるポテンシャル、軸方向閉じ込めのためのミラーポテンシャル、及び相互作用領域(トラップ領域)にトラップされたイオン自身のポテンシャルである。また(B)は全体のポテンシャルである。
この図から、電子バンチによるポテンシャルが1×1010個/バンチ、トラップされたイオン自身のポテンシャルが1×10電荷の想定されるRI電子散乱条件においても電子ビームのビーム方向に静電ミラーポテンシャルを発生させて安定したトラップ領域2を形成することができることがわかる。
【0043】
図7は、トラップされた陽イオンの軌跡を示す図である。この図において、(A)はトラップ領域2の側面図、(B)はビーム方向から見た図である。
この図から、Sn1+の軌跡は直径約2mmのトラップ領域2で安定してトラップされることがわかる。
【0044】
上述したように本発明の装置は、電子ビーム加速器12(または蓄積リング)、トラップを局在させるための静電ミラーポテンシャル発生装置14、およびイオン入射装置16からなる。
【0045】
入射するイオンは、目的の元素を選択できること、パルス状ビームであること、中性ビームであること、そしてトラップ領域での再イオン化の必要があることによって図2〜4のような装置の組み合わせによって構成される。
【0046】
まず、加速器等で生成した微量元素を取り出すための目的元素発生装置17とイオン源があり、ここから取り出された元素をパルス状ビームに整形するために一旦金属箔上の極く狭い領域に必要量に達するまで一定時間インプラントする。それを、パルスイオン源まで転送した後、レーザー等を用いた共鳴イオン化法によって純度の高い目的元素のパルスイオンビーム5を発生させる。
そのビームを質量分析した後に電子軌道上に入射するが、この際ビームは中性である必要から、アルカリ金属蒸気を用いた中性化装置20すなわち荷電変換セルを通す。ビーム自身は中性化装置20の上流に配置した静電四重極レンズ19eでトラップ点に収束させる。このとき中性化装置20がビームの軌道を疎外することはほとんどない。こうしてパルス状の中性ビームが生成される。
これは電子軌道上に設置した静電ミラーポテンシャル発生用の電極間に到着するとただちに、再イオン化用レーザー21によって再びイオン化される。このことによって、電子ビーム軌道上の電極間に挟まれた狭い領域(トラップ領域)にイオンは局在したままトラップされる。
【0047】
図2にも示すように、トラップ領域2の周辺にはなんら物理的物質(真空ダクトを除いて)が存在せず、完全な自由空間中にトラップが完成する。トラップ領域のサイズは、電子ビーム1の進行方向には、静電ミラーポテンシャル用電極の間隔によって調整でき、その垂直方向には電子ビームのサイズを変化させることで自由にコントロールされ得る。
【0048】
イオン入射装置16によって目的とする元素を10〜数10keVにパルス状ビームとして加速し、電子軌道上に入射する。このとき入射直前に中性化ガス中を通過させ中性にした上で、ビームが電子軌道上のミラーポテンシャルを発生させる電極間に到達した瞬間に再びレーザーを用いて瞬間的にイオン化する。
【0049】
これによって、進行方向には静電ミラーポテンシャルによって、また進行方向と垂直な方向には、高エネルギーのバンチした電子ビームが作るポテンシャルによって局所的にイオンはトラップされる。しかも特定の元素を強制的に入射するのでトラップ中の目的元素の純度が高い。トラップされたイオンは常に電子ビームの軌道上にあるので、電子ビームと常に衝突する可能性を持っている。使用する電子ビームは高エネルギーであるので、四重極磁石などで遠方から細く収束させることができ、トラップ領域でなんらの外場発生装置を必要としない。したがってトラップ周辺に測定のための自由な空間を用意できる。また高エネルギー電子ビームを用いることで、トラップされたイオンが多価イオンとなる確率がEBISに比較して1桁以上小さく、飽和電荷量に達するまでに比較的長い時間がかかるためイオントラップを長時間保持することができる。
【0050】
この技術を電子散乱実験等に使用する場合、入射した全粒子数が、衝突点に局在しているので、リング中に分散している従来の衝突リング使用による散乱実験に比較して100倍以上の散乱効率が向上する。さらに、大型の衝突リングが不要で非常にコンパクトな装置で同様の実験が可能であることで、経済的である。また、この技術は、電子散乱実験に限らず、極微量元素を測定対象とするあらゆる実験に対して、自由空間中に局在させられた高純度サンプルを提供する。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更できることは勿論である。
【0052】
【発明の効果】
上述したように、本発明は、加速器等を用いて極めて微量にしか生成できない短寿命同位体を電子散乱実験の標的として有効にかつ容易に利用するための技術である。従来このような極微量元素等を標的とする場合、大規模な衝突型蓄積リングを建設する必要があったが、この技術ではその必要がなく、さらに同量の標的を使用した場合の100倍以上の衝突効率を向上させることができる。また、使用する電子ビームは散乱実験に使用する高エネルギー電子ビームそのものであるので、トラップを制御するための外場発生装置などをトラップ近傍に配置する必要がなく、実験用の分析器となんら干渉することもなく測定ができる。
【0053】
従って、本発明の陽イオントラップ装置 は、(1)陽イオン加速リングを用いることなく陽イオンをトラップして電子散乱実験のターゲットとして用いることができ、(2)衝突位置近傍に散乱現象を計測するための計測器等を容易に設置でき、(3)トラップ電荷量が飽和しにくく陽イオンのイオン数を増して衝突確率(衝突効率)を高めることができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の陽イオントラップ装置 を備えたRI電子散乱実験装置の全体構成図である。
【図2】本発明の陽イオントラップ装置 の全体構成図である。
【図3】目的元素発生装置、インプラント装置およびパルスイオン源装置の構成図である。
【図4】中性化装置、再イオン化装置およびミラーポテンシャル発生装置の構成図である。
【図5】電子ビームのエネルギーと荷電変換断面積との関係図である。
【図6】トラップ領域に形成されるポテンシャルの模式図である。
【図7】トラップされた陽イオンの軌跡を示す図である。
【図8】EBIS型多価イオン源の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 高エネルギー電子ビーム、2 トラップ領域、
3 目的元素、4 金属箔、5 パルスイオンビーム、
10 陽イオントラップ装置 、12 電子ビーム加速器、
14 ミラーポテンシャル発生装置、16 イオン入射装置、
17 目的元素発生装置、18 インプラント装置、
18a 陽イオン加速器、18b テープ転送装置、
19 パルスイオン源装置、19a 元素蒸発用パルスレーザー装置、
19b イオン化パルスレーザー装置、19c パルスイオン加速器、
20 中性化装置(荷電変換セル)、
21 再イオン化装置(再イオン化パルスレーザー装置)

Claims (6)

  1. 100MeV以上の高エネルギー電子ビーム(1)を形成する電子ビーム加速器(12)と、形成した高エネルギー電子ビームのビーム方向に静電ミラーポテンシャルを発生させトラップ領域(2)を形成するミラーポテンシャル発生装置(14)と、目的元素(3)の陽イオンをトラップ領域に入射させるためのイオン入射装置(16)とを備えたことを特徴とする陽イオントラップ装置。
  2. 前記イオン入射装置(16)は、目的元素(3)の陽イオンを発生する目的元素発生装置(17)と、発生した陽イオンを金属箔(4)上にインプラントするインプラント装置(18)と、インプラントした金属箔から目的元素のパルスイオンビーム(5)を発生させこれを電子ビーム加速器(12)の高エネルギー電子ビーム(1)上に向けて加速するパルスイオン源装置(19)と、電子ビーム加速器(12)に入射する前にパルスイオンビームを中性化する中性化装置(20)と、電子ビーム加速器(12)に入射した目的元素を再イオン化する再イオン化装置(21)とを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の陽イオントラップ装置。
  3. 前記インプラント装置(18)は、陽イオンを加速する陽イオン加速器(18a)と、加速した陽イオンを金属箔(4)からなるテープ上にインプラントしこれを所定の位置まで移動するテープ転送装置(18b)とを有する、ことを特徴とする請求項2に記載の陽イオントラップ装置。
  4. 前記パルスイオン源装置(19)は、金属箔上にインプラントした目的元素を瞬間的に取り出す元素蒸発用パルスレーザー装置(19a)と、共鳴イオン化法によって純度の高い目的元素のパルスイオンビーム(5)を発生させるイオン化パルスレーザー装置(19b)と、発生したパルスイオンビームを高エネルギー電子ビーム(1)上に向けて加速するパルスイオン加速器(19c)とを有する、ことを特徴とする請求項2に記載の陽イオントラップ装置。
  5. 前記中性化装置(20)は、アルカリ金属蒸気を用いた荷電変換セルである、ことを特徴とする請求項2に記載の陽イオントラップ装置。
  6. 前記再イオン化装置(21)は、再イオン化レーザーを照射する再イオン化パルスレーザー装置である、ことを特徴とする請求項2に記載の陽イオントラップ装置。
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