JP3630081B2 - 通信装置用終端回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、共通の伝送線に接続された複数の通信装置間で信号の送受信を行う通信システムに使用される通信装置用終端回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、通信システム例えば車両内LANは、エンジン制御用、トランスミッション制御用、スリップ制御用及び車窓開閉制御用等の各電子制御装置(ECU)に通信装置としての機能を搭載した上で、各ECUを複数の伝送線からなる通信バスを共用するように接続した構成とされる。図6は、特開平9−64826号公報中に開示されたデータ通信装置の構成を一部簡略化した状態で示すものである。この場合、実際には、複数のECU100が共通の伝送線101に接続されると共に、その伝送線101の両端に夫々終端回路102が接続されて通信システム103が構築されており、図6は、この通信システム103におけるECU100及び終端回路102を一つずつのみ示している。
【0003】
通信システム103は、各ECU100間での通信データ(信号)に基づいて、伝送線101に流す電流の量を変化させて通信を行う方式のものである。ECU100には、図示しない制御回路で生成されたデータの送受信を行うための通信IC104、ドライバ回路105及び受信回路106が搭載されており、通信IC104からハイレベルのデータ(送信信号)を送信する場合には、伝送線101に所定量の電流を流し、ロウレベルのデータ(送信信号)を送信する場合には、伝送線101に電流を流さないようにして通信が行われる。
【0004】
通信IC104は、図示しない送信部及び受信部を含んで構成されており、ECU100内に設けられた図示しない電源回路で生成される定電圧を受けて動作する。送信部では、制御回路から受けた送信用データを所定電圧レベルの送信信号に変換してドライバ回路105に出力する。受信部では、受信回路106から受けた受信信号を所定電圧レベルの受信用データに変換して制御回路に出力する。
【0005】
ドライバ回路105は、図示はしないが、外部電源例えばバッテリから供給される電源電圧Vc により動作する。ドライバ回路105は、通信IC104から受けた送信信号に基づいて、送信信号のレベル変化時に電流量が緩やかに直線的に変化する台形状の波形の電流を生成し、その電流を伝送線101に供給する。受信回路106も、前記電源電圧Vc により動作するもので、内部で生成される判定電圧と伝送線101の電位(電圧レベル)とを比較して受信信号を生成し、通信IC104の受信部に出力する。
【0006】
終端回路102は、次のように構成されている。終端回路102において、npn型トランジスタ107は、そのコレクタが伝送線101に接続され、エミッタが終端抵抗108を介して接地されている。トランジスタ107のベースは、抵抗109を介して電源電圧Vc に接続されると共に、順方向に直列接続された2つのダイオード110及び111を介して接地されている。これによりトランジスタ107は、そのベース電位がダイオード110及び111の順方向電圧降下分の合計値に固定されるものであり、従って、伝送路101が所定電位以上になったときに導通状態を呈して当該伝送線101から電流を吸い込むようになる。
【0007】
この場合、トランジスタ107の導通状態は、そのエミッタ電位(抵抗108の両端電圧に相当)がダイオード一個分の順方向電圧降下と等しくなったときに安定する。このため、トランジスタ107が吸い込む電流は、ダイオード1個分の順方向電圧降下と抵抗108の抵抗値とで決まる一定電流となる。つまり、終端回路102は、定電流源として動作することになる。以下、上記トランジスタ107のコレクタ・エミッタ間に流れる電流をシンク電流と呼ぶことにする。このシンク電流の最大電流量は、抵抗108を所定値に設定することにより、ドライバ回路105が生成する最大電流量よりも小さくなるように設定されている。
【0008】
次に、この終端回路102の作用について説明する。
通信IC104の送信部から、電圧レベルがハイレベル及びロウレベルに急峻に変化する矩形波状の送信信号が出力されると、ドライバ回路105では、送信信号がロウレベルの時には零で、ハイレベルの時には所定量を有し、レベル変化時は零及び所定量との間で緩やかに直線的に変化する電流が生成され、この電流が伝送線101に供給される。即ち、伝送線101には、通信IC104の送信部から出力される矩形波状の送信信号に応じた台形状の電流が供給される。
【0009】
ドライバ回路105から伝送線101に供給される電流は、終端回路102のトランジスタ107を通り、シンク電流としてグランドに流出する。このとき、ドライバ回路105から伝送線101に供給される電流量がシンク電流の最大電流量を超えない場合には、終端回路102の入力インピーダンスは小となり、伝送線101の電位はロウレベルとなる。また、ドライバ回路105から伝送線101に供給される電流量が、トランジスタ107のシンク電流の最大電流量を超えている場合には、終端回路102の入力インピーダンスは大となり、伝送線101の電位はハイレベルとなる。この伝送線101の電位は、ドライバ回路105から伝送線101に供給される電流量と、シンク電流の最大電流量との大小関係が変化した時点で瞬時に切り替わるため、伝送線101の電位は、送信信号に応じて矩形波状に変化する。
【0010】
受信回路106では、伝送線101の電位と、内部で生成された判定電圧との比較により受信信号が生成され、この受信信号が通信IC104の受信部に出力される。このようにして、複数のECU100間で通信が行われる。
このような構成によれば、伝送線101から出力される送信信号の電圧レベル変化に応じて、伝送線101に供給する電流量を変化させ、この電流量の変化時(遷移状態時)の電流波形を緩やかに直線的に変化させることにより、伝送線101を流れる電流の波形を台形状にすることができるので、信号の高調波成分を抑制し、伝送線101から放射されるラジオノイズを低減させることができる。
【0011】
しかしながら、このような終端回路102では、常に電源電圧Vc が印加されて、抵抗108及び109、ダイオード110及び111に電流が流れているので、電力が無駄に消費されるという欠点があった。また、電源電圧Vc を供給するためのワイヤーハーネスが断線したり、イグニッションスイッチがオフされて電源電圧Vc の供給が断たれたときには、その時点で終端回路102が正常に動作できなくなるため、場合によっては通信システム全体に悪影響が出る恐れがあった。
【0012】
そこで、図7に示すように、伝送線101の信号の電位を利用して電源電圧を生成し、ECU100間で通信が行われている時にだけ動作させることにより、無駄な消費電力を抑えると共に、ワイヤハーネスの断線等による電源遮断時にも正常に動作するようにした終端回路200が提案されている。
【0013】
この終端回路200は、次のように構成されている。終端回路200に設けられた電流入力端子201は、伝送線101に接続されている。この信号入力端子201は、ダイオード202を順方向に介してnpn型トランジスタ203のコレクタに接続されており、そのトランジスタ203のエミッタは、終端抵抗204を介して接地されている。また、トランジスタ203のコレクタは、積分回路205を構成する抵抗206及びコンデンサ207を直列に介して接地されている。この場合、上記コンデンサ207には、抵抗208及び209の直列回路が並列に接続されると共に、図示極性のツェナダイオード210及びダイオード211の直列回路が並列に接続される。また、抵抗208及び209の共通接続点は、トランジスタ203のベースに接続されている。
【0014】
このように構成された終端回路200にあっては、伝送線101がハイレベルになった期間に、その伝送線101を電源として積分回路205内のコンデンサ207に充電し、伝送線101がロウレベルになった期間に、コンデンサ207の蓄積電荷により動作されることになる。従って、ワイヤハーネスの断線等により電源遮断状態となった場合でも、終端回路200の動作が保証される。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この終端回路200を使用した通信システムにおいて、伝送線101に出力される送信信号のレベル変化時に当該伝送線101に流れる電流は、積分回路205の動作に応じて歪みを生じることがあり、そのため、この電流の波形は、理想的な台形状とはならず、高調波成分に起因したラジオノイズを低減するという面で改善の余地が残されていた。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、電源が不用意に遮断されたときでも正常な動作状態を維持できると共に、低消費電力で、ラジオノイズを発生させない通信装置用終端回路を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために請求項1に記載した手段を採用できる。この手段によれば、伝送線の信号に基づいて、積分回路に電気的エネルギーを一時的に蓄えることにより、伝送線に出力された信号電圧或いは積分回路に蓄えられた電気的エネルギーで終端回路を駆動するようにしたので、専用の電源回路を設けずに済み、終端回路の消費電力を抑制することができる。
【0018】
しかも、逆流防止回路により、積分回路に蓄積された電気的エネルギーを放電する際に放電電流がスイッチング素子の導通路に流れ込まないようにしたので、積分回路に蓄えられた電気的エネルギーを有効に使用して、複雑な構成のスイッチング制御手段を駆動することができる。これにより、導通路及び伝送線に流れる電流の波形を台形状にすることが可能になり、従って、電流に含まれる高調波成分を抑制して、伝送線から放射されるラジオノイズを低減することができる。
【0019】
請求項2に記載した手段によれば、電源線に印加する電圧は、積分回路の蓄積エネルギーが小さいときには降圧回路の出力電圧を電源線に印加し、積分回路の蓄積エネルギーが大きくなると積分回路の出力電圧を該電源線に印加するように切り替えることができる。
【0020】
請求項3に記載した手段によれば、電源線に印可される電圧が、降圧回路の出力電圧から積分回路の出力電圧に切り替わるときに急峻に変化しないようにすることができる。
【0021】
請求項4に記載した手段によれば、伝送線に流す電流の量を変化させることにより信号の送受信を行う通信システムにおいて、請求項1と同様の効果が得られる。
【0022】
請求項5に記載した手段によれば、積分回路を簡単な構成にすることができ、製造コストを低く抑えることができる。
【0023】
請求項6に記載した手段によれば、基準電圧発生回路において、外部環境の変化に対しても安定な基準電圧を発生することができる。また、波形整形回路において、この基準電圧と伝送線に出力された信号電圧との比較に基づいて、スイッチング素子を制御することにより、導通路に流れる電流の波形の歪みが抑制された、即ち高調波成分が抑制された台形状にすることができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を車両内LANのための通信システムに適用した一実施例につき、図1乃至図5を参照して説明する。
図2は、通信装置たる複数の電子制御装置(ECU)1及びこれと1対1で対応するように設けられた複数の通信装置用終端回路2が共通の伝送線3に接続されて構築された通信システム4において、一つのECU1及び終端回路2の構成のみを示すものである。この通信システム4は、各ECU1間での通信データ(信号)に基づいて、伝送線3に流す電流の量を変化させて通信を行う方式のものである。
【0025】
ECU1は、外部電源例えばバッテリから供給される電源電圧Vc (例えば定格値で+12V)を受けて動作する。このECU1には、図示はしないが、エンジンやトランスミッション等の車両用負荷を制御するための制御信号を生成する制御回路(マイクロコンピュータ)や、生成された制御信号に基づいて、車両用負荷を駆動するための駆動回路が搭載されている。また、ECU1には、通信IC5、ドライバ回路6及び受信回路7が搭載されており、これらにより他のECU1とのデータの通信を行う。通信IC5は、前記制御回路と図示しない複数の信号線で接続されており、制御回路との間でデータの送受信を行う構成となっている。この通信IC5は、図示しない送信部及び受信部を含んで構成されており、ECU1内に設けられた図示しない電源回路で生成される駆動電圧Vd (例えば+5V)を受けて動作する。
【0026】
送信部は、制御回路から出力される送信用データを受けて、この送信用データを所定の電圧レベルの矩形波状の送信信号Tx に変換し、この送信信号Tx を信号線8を通じて出力する。受信部は、後述する受信回路7から出力される受信信号Rx を受けて、この受信信号Rx を所定の電圧レベルの受信用データに変換して制御回路に出力する。
【0027】
ドライバ回路6は、積分器9と電流源10とで構成されており、電源電圧Vc を受けて動作する。ドライバ回路6では、積分器9において、信号線8を通じて受けた送信信号Tx が積分され、電流源10において、積分器9により得られた積分値に応じて、送信信号Tx のレベル変化時に電流量が緩やかに直線的に変化する台形状の波形の電流が生成される。そして、この電流は、信号線11を介して伝送線3に出力される。
【0028】
受信回路7は、電源電圧Vc を分圧して判定電圧Vs を生成する分圧抵抗12及び13と、この判定電圧Vs と伝送線3の電位(電圧レベル)とを大小比較するコンパレータ14とで構成されている。判定電圧Vs は、コンパレータ14の反転入力端子に入力され、伝送線3の電位は、コンパレータ14の非反転入力端子に入力される。コンパレータ14の出力は、信号線15を介して、通信IC5内の前記図示しない受信部に与えられる。
【0029】
図1は、終端回路2の構成を示している。終端回路2に設けられた電流入力端子16は、伝送線3に接続されている。この電流入力端子16は、逆流防止用のダイオード17を順方向に介して信号線18に接続されている。この信号線18は、スイッチング素子たるnpn型トランジスタ19のコレクタ・エミッタ間及び終端抵抗20を直列に介して接地端子に接続されている。また、電流入力端子16は、逆流防止回路たるダイオード21を介して信号線22に接続されている。この信号線22は、降圧回路たるレベルシフト用のダイオード23及びOR回路24を構成するダイオード24aを順方向に介して電源線25に接続されると共に、積分回路26を構成する抵抗27及びインピーダンス素子たるコンデンサ28を直列に介して接地されている。
【0030】
上記積分回路26は、その出力端である抵抗27及びコンデンサ28の共通接続点が前記OR回路24のダイオード24bを順方向に介して電源線25に接続されている。この電源線25には、夫々後述する基準電圧発生回路29の電源入力端子30(図3参照)及び波形整形回路31の電源入力端子32(図4参照)が接続されている。尚、これら基準電圧発生回路29及び波形整形回路31で、スイッチング制御手段が構成されている。
【0031】
図3は、基準電圧発生回路29の構成例を示している。この図3において、前記電源線25に接続された電源入力端子30は、定電流源33の図示しない電源端子に接続されており、定電流源33の図示しない電流出力端子は、基準電圧Vg の出力端子34に接続されている。出力端子34と接地端子との間には、抵抗35及びnpn型トランジスタ36のコレクタ・エミッタ間の直列回路、抵抗37、npn型トランジスタ38のコレクタ・エミッタ間及び抵抗39の直列回路、npn型トランジスタ40のコレクタ・エミッタ間が夫々並列接続されている。この場合、トランジスタ36及び38の各ベースが互いに接続されると共に、一方のトランジスタ36は、そのコレクタ・ベース間が短絡された状態とされており、これにより、トランジスタ35及び36、抵抗35、37及び39でカレントミラー回路41が構成されている。また、トランジスタ38のコレクタとトランジスタ40のベースとが互いに接続されている。
【0032】
図4は、波形整形回路31の構成例を示している。この図4において、前記信号線18に接続された信号入力端子42は、コンパレータ43の非反転入力端子に接続され、前記基準電圧発生回路29からの基準電圧Vg を受ける基準電圧入力端子44は、コンパレータ43の反転入力端子に接続されている。コンパレータ43の出力は、電子スイッチ45に対しこれをオンオフするための制御信号として与えられる。
【0033】
前記電源線25に接続された電源入力端子32は、定電流源46の図示しない電源入力端子に接続されている。この定電流源46の図示しない電流出力端子は、前記電子スイッチ45を介して定電流源47の図示しない電源入力端子に接続されており、この定電流源47の図示しない電流出力端子は接地されている。尚、定電流源46の出力電流量は、定電流源47の出力電流量の例えば2倍になるように設定されている。また、定電流源47の入出力端子間には、コンデンサ48及び図示極性のツェナダイオード49の並列回路が接続されている。
【0034】
電子スイッチ45の出力側端子(定電流源47の電源入力端子)は、オペアンプ50の非反転入力端子に接続されている。このオペアンプ50の反転入力端子は、前記トランジスタ19のエミッタに接続され、その出力端子は、当該トランジスタ19のベースに接続されている。これによりオペアンプ50とトランジスタ19とで、帰還型のボルテージフォロア51が構成されている。
【0035】
次に、本実施例の作用について、図5をも参照して説明する。まず初めに、この通信システム4における通信方式の概略について説明し、次に、終端回路2の作用について、通信IC5内の図示しない送信部から出力される送信信号Tx がロウレベルからハイレベルに変化する場合、及びハイレベルからロウレベルに変化する場合に分けて説明する。
【0036】
この通信システム4は、ECU1内の図示しない制御回路で生成される通信用データ(信号)に基づいて、伝送線3に流す電流の量を変化させて通信を行う方式のものである。具体的には、該ECU1からデータを送信する場合において、通信IC5の送信部から送信する送信信号Tx がハイレベルの期間は伝送線3に所定量の電流を流し、ロウレベルの期間は伝送線3に電流を流さないようにして通信が行われる。
【0037】
また、該ECU1がデータを受信する場合には、詳細は後述するが、伝送線3に電流が流れているときには伝送線3の電位(電圧レベル)がハイレベルとなり、伝送線3に電流が流れていないときには伝送線3の電位がロウレベルとなるように制御し、その伝送線3の電位に基づいて受信用データの判定を行う。このようにして、共通の伝送線3で接続された複数のECU1間で、データ通信が行われる。
【0038】
(1):送信信号Tx がロウレベルからハイレベルに変化する場合
通信IC5の送信部から出力される送信信号Tx の電圧レベルがロウレベルからハイレベルに急峻に変化すると、ドライバ回路6では、積分器9において、この送信信号の電圧レベルがロウレベルからハイレベルまで緩やかに直線的に増加する積分信号に変換され、電流源10において、この積分信号に応じて零から所定値まで緩やかに直線的に増加する電流が生成される。そして、この生成された電流が、伝送線3に供給される。ここで、ドライバ回路6から伝送線3に電流の供給が開始される時点を、電流増加開始時点Aと呼ぶことにする。
【0039】
電流増加開始時点Aでは、終端回路2の入力インピーダンスは大であるため伝送線3の電位は、図5(a)に示すように、ロウレベルからハイレベルに急峻に立ち上がる。これにより、終端回路2内の電源線25に対し、ダイオード21、23及びOR回路24内のダイオード24aを介して所定レベル(=伝送線3の電位−(ダイオードの順方向電圧降下Vf )×3)の電圧Ve が印加されると同時に、積分回路26内のコンデンサ28に対する充電が抵抗27を通じて開始される。この状態で、伝送線3の電位がハイレベルに保たれると、図5(b)に示すように、コンデンサ28の電位がその積分時定数に応じたカーブで上昇するようになる。これに応じて、コンデンサ28の端子電圧が、「電圧Ve +コンデンサ24bの順方向電圧降下Vf 」まで上昇すると、そのコンデンサ28の端子電圧がOR回路24内のダイオード24bを介して電源線25に印加開始されるようになる(図5中のOR回路切り替え時点B)。
【0040】
つまり、図5(c)に示すように、OR回路切り替え時点Bにおいて、電源線25に対する電源供給経路が、OR回路24のダイオード24a側からダイオード24b側に切り替わるようになる。従って、積分回路26の時定数を、伝送線3の電位がハイレベル状態にある期間中に上記のようなOR回路24の切り替え動作が完了する値に設定することが望ましい。但し、上記時定数を下げるために抵抗27の抵抗値を小さくした場合には、突入電流が増加して出力電流波形が理想値からずれる原因になり、また、コンデンサ28の容量を小さくした場合には、そのコンデンサ28に蓄えられる電荷量が減り、伝送線3の電位がロウレベルに下がった期間において電源線25の出力で駆動可能な回路の規模が小さくなるため、これらの事情を考慮して積分回路26の時定数を設定することになる。
【0041】
このように電流増加開始時点Aから所定期間が経過したときに、電源線25の電圧が、当初の電圧Ve から積分回路26の出力電圧に応じたものに連続的に切り替わる結果、その電源線25の電圧の急峻な変化が抑制される。
【0042】
<基準電圧発生回路29の作用>
基準電圧発生回路29は、電流増加開始時点Aの直後に電源入力端子30に電圧Ve が印加されると、カレントミラー回路41が動作する。そして、出力端子34からは、トランジスタ38のコレクタ・エミッタ間電圧と、抵抗37及び39の電圧降下分とを合わせた電圧が、基準電圧Vg として出力される。この基準電圧Vgは、抵抗35、37及び39の抵抗値を調節することにより、例えば5Vになるように設定されている。尚、この基準電圧発生回路29は、トランジスタ40の働きにより、電源入力端子30に印加される電圧の値が所定値以上で変動したり、温度変動が生じても、常に一定の基準電圧Vg が生成されるように動作する。
【0043】
<波形整形回路31の作用>
波形整形回路31は、電流増加開始時点Aの直後に電源入力端子32に電圧Ve が印加されると、まず、コンパレータ43にて、信号入力端子42の電位(伝送線3の電位−ダイオードの順方向電圧降下Vf )と、基準電圧入力端子44の電位(Vg )との比較が行われる。電流増加開始時点Aの直後は伝送線3の電位はハイレベルになっているので、信号入力端子42の電位の方が基準電圧入力端子44の電位よりも高くなり、コンパレータ43からはハイレベル信号が出力され、電子スイッチ45はオンする。
【0044】
これにより、定電流源46から所定量の電流が出力される。この定電流源46の電流供給能力は、定電流源47のそれの2倍に設定されているので、定電流源46から出力される電流の半分は定電流源47を介して接地側に終出されるが、残りの半分の電流はコンデンサ48への充電電流となる。そして、コンデンサ48の端子間電圧が緩やかに直線的に増加するのに伴い、オペアンプ50の非反転入力端子の電位は緩やかに直線的に上昇し、これに追随しながらオペアンプ50の出力電圧も0Vから緩やかに直線的に上昇する。そして、トランジスタ19のベース・エミッタ間の電位差が所定値を超えた時点で導通路たるコレクタ・エミッタ間が導通し、緩やかに直線的に上昇する電流(以下、シンク電流と称す)が流れる。従って、伝送線3に流れる電流もシンク電流に追随したものとなり、その波形は、図5(d)に示すように、緩やかに直線的に増加するものとなる。
【0045】
このシンク電流の増加は、コンデンサ48の端子間電圧が所定電圧値に達し、ツェナダイオード49が導通する時点で止まり、以降のシンク電流の電流量は一定となる。尚、この波形整形回路31は、ツェナダイオード49が導通した時点でのシンク電流の電流量が、ドライバ回路6から伝送線3に供給する最大電流量よりも小さくなるように構成されている。このように電流増加開始時点A以降の所定期間に伝送線3に流れる電流の波形は、図5(d)に示すように、緩やかに直線的に増加し、ツェナダイオード49が導通した時点で一定になるように制御される。
【0046】
(2):送信信号Tx がハイレベルからロウレベルに変化する場合
通信IC5の送信部から出力される送信信号Tx の電圧レベルがハイレベルからロウレベルに急峻に変化すると、ドライバ回路6では、積分器9において、この送信信号の電圧レベルがハイレベルからロウレベルまで緩やかに直線的に減少する積分信号に変換され、電流源10において、この積分信号に応じて所定値から零まで緩やかに直線的に減少する電流が生成される。そして、この生成された電流は、伝送線3に供給される。ここで、伝送線3へ供給される電流が減少を開始した時点を、電流減少開始時点Cと呼ぶこととする。
【0047】
電流減少開始時点Cの直後には、伝送線3から終端回路2に流れ込む電流の電流量が減少することにより、伝送線3の電位は、図5(a)に示すように、ハイレベルからロウレベルへ急峻に立ち下がる。これにより、コンデンサ28に蓄積された電荷の放電が開始され、積分回路26の出力電圧波形は、図5(b)に示すような積分カーブを描きながら減少するものとなり、OR回路24の出力電圧波形も、図5(d)に示すような積分回路26の出力電圧波形に追随したものとなる。従って、電流供給停止開始時点C以降の所定期間は、電源入力端子30及び32には、基準電圧発生回路29及び波形整形回路31が駆動可能な電圧が印加される。
【0048】
<基準電圧発生回路29の作用>
基準電圧発生回路29では、駆動可能な所定期間は基準電圧Vg が生成され、出力端子34から出力される。
<波形整形回路31の作用>
波形整形回路31では、駆動可能な所定期間に以下の動作が行われる。まず、電流減少開始時点Cの直後に信号入力端子32の電位がロウレベルに立ち下がり、信号入力端子42の電位(0V)の方が基準電圧入力端子44の電位(Vg )よりも低くなるので、コンパレータ43はロウレベルの信号を出力し、電子スイッチ45はオフする。
【0049】
これにより、定電流源46からの電流の供給は停止する。そして、コンデンサ48に蓄積された電荷の放電が開始され、その放電電流は定電流源47を介して接地側に流出する。この放電により、オペアンプ50の反転入力端子の電位は緩やかに直線的に下降し、これに追随してオペアンプ50の出力電圧も緩やかに直線的に下降する。そして、トランジスタ19に流れるシンク電流の電流量も緩やかに直線的に減少し、従って、伝送線3に流れる電流は、電流源10から供給される電流に追随するものとなり、その波形は、図5(f)に示すような緩やかに直線的に減少するものとなる。
【0050】
尚、伝送線3の電位は、図5(a)に示すように、電流減少開始時点Cの直後に、ハイレベルからロウレベルに急峻に立ち下がるが、実際には完全にロウレベルにはならずに若干の電位が残り、その後、緩やかに直線的に減少しながらロウレベルまで立ち下がるものとなる。これは、トランジスタ19のシンク電流が減少する過程で、終端回路2の入力インピーダンスが変化することに起因したものと考えられる。但し、この残留電位は、受信回路の判定電圧Vs より低いので、受信用データの判定時への影響はない。
【0051】
以上説明したように、本実施例によれば、伝送線3の電位がハイレベルの時には、コンデンサ28に電荷を蓄積し、伝送線3の電位がロウレベルの時には、この電荷を放電して基準電圧発生回路29及び波形整形回路31を駆動するようにしたので、終端回路2を駆動するための専用の電源回路を設けずに済み、終端回路2の消費電力を抑制することができる。しかも、ダイオード29により、コンデンサ28から電荷を放電する際に、その放電電流がトランジスタ19のシンク電流に流れ込まないようにしたので、送信信号Tx がハイレベルからロウレベルに変化する場合に、コンデンサ35に蓄積された電荷を有効に利用して、複雑な構成の基準電圧発生回路29及び波形整形回路31を駆動することができる。これにより、伝送線3に流れる電流の波形を緩やかに増減する台形状にすることができ、それ故、伝送線3に流れる電流に含まれる高調波成分を抑制して、伝送線3から放射されるラジオノイズを低減することができる。
【0052】
また、外部環境の変化等に対しても非常に安定した基準電圧を発生する基準電圧発生回路29を使用して、この基準電圧と伝送線の電位に応じた電圧との比較に基づいてトランジスタ19に流れるシンク電流を制御するようにしたので、伝送線3に流れる電流の歪みを非常に少なくすることができる。
また、OR回路24を設け、積分回路26の時定数を調節することにより、伝送線3の電位がハイレベル状態の期間中に、電源線25に印加される電圧が、降圧回路(ダイオード23)の出力電圧から積分回路26の出力電圧へと連続的に切り替わるようにしたので、電源線25に印加される電圧が急峻に変化するのを抑制することができ、従って、基準電圧発生回路29及び波形整形回路31を安定に動作させることができる。
また、積分回路26は、抵抗27及びコンデンサ28で構成したので、構成を簡単にすることができ、しかも、製造コストを低く抑えることができる。
【0053】
尚、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、次のような変形、拡張が可能である。
本実施例では、伝送線に流す電流の量を変化させて通信を行う方式の通信システムに適用したが、これに限定されるものではなく、伝送線の電圧レベルを変化させて通信を行う方式のものにも適用できる。また、伝送線に流す電流の量を変化させて通信を行う方式のものにおいて、ドライバ回路は、電流を供給するだけのものには限定されず、電流を吸い込む過程を備えたものでもよい。
【0054】
本実施例では、積分回路は、抵抗及びコンデンサで構成したが、抵抗及びインピーダンス素子で構成すればよく、例えば、インピーダンス素子として、コイルを使用してもよい。
本実施例では、スイッチング素子は、トランジスタで構成したが、FETで構成してもよい。
本実施例では、スイッチング素子の構成をエミッタフォロア回路型の構造としたが、これに限定されるものではなく、例えば、カレントミラー回路型の構造としてもよい。
【0055】
本実施例では、スイッチング制御手段は、基準電圧発生回路及び波形整形回路で構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、基準電圧は、外部電源で生成されたものを使用するようにして、波形整形回路だけを設けるようにしてもよい。
本実施例の通信システムでは、ECUと終端回路とが1対1になるように複数の終端回路を設けたが、これに限定されるものではなく、1本の伝送線に1つ以上の終端回路を設ければよい。尚、1つの伝送線に複数の終端回路を設けることにより、一部の終端回路が故障しても、他の終端回路でそれを補うことができるので、1つの伝送線に対して終端回路は複数設けたほうがよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す回路図
【図2】通信システムの構成図
【図3】基準電圧発生回路の回路図
【図4】波形整形回路の回路図
【図5】終端回路動作時の各部の電圧及び電流の波形図
【図6】従来例を示す図2相当図
【図7】従来例を示す図1相当図
【符号の説明】
図面中、1はECU(電子制御装置)、2は通信装置用終端回路、3は伝送線、4は通信システム、5は通信IC、6はドライバ回路、7は受信回路、19はトランジスタ(スイッチング素子)、21はダイオード(逆流防止回路)、23はダイオード(降圧回路、電圧印加回路)、24はOR回路、26は積分回路、27は抵抗、28はコンデンサ(インピーダンス素子)、29は基準電圧発生回路、31は波形整形回路を示す。

Claims (6)

  1. 共通の伝送線に接続された複数の通信装置間で信号の送受信を行う通信システムに設けられる通信装置用終端回路において、
    導通状態で前記伝送線に流れる電流を終端抵抗を通じて流出させるように接続されたスイッチング素子と、
    前記スイッチング素子から独立した電源線に対して前記伝送線に出力された信号電圧を逆流防止回路を通じて印加する電圧印加回路と、
    前記伝送線に出力された信号の電気的エネルギーの一部を逆流防止回路を介して取り込んで蓄積し、その蓄積エネルギーに応じた電圧出力を前記電源線に印加する積分回路と、
    前記電源線を電源として動作するように設けられ、前記伝送線に出力された信号に基づいて、前記終端抵抗に流れる電流が所定の台形状の波形になるように前記スイッチング素子を制御するスイッチング制御手段とを具備したことを特徴とする通信装置用終端回路。
  2. 前記電圧印加回路は、前記電源線への印加電圧が、前記積分回路の最大蓄積エネルギー時の前記電源線への印加電圧よりも小さくなるように、前記伝送線に出力された信号電圧を降圧する降圧回路であることを特徴とする請求項1記載の通信装置用終端回路。
  3. 前記電圧印加回路及び積分回路の出力は、ダイオードで構成されたOR回路を介して前記電源線に印加されることを特徴とする請求項1又は2記載の通信装置用終端回路。
  4. 前記通信システムは、共通の伝送線に接続された複数の通信装置間で当該伝送線に流す電流の量を変化させることにより信号の送受信を行う構成のものであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の通信装置用終端回路。
  5. 前記積分回路は、抵抗及びインピーダンス素子で構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の通信装置用終端回路。
  6. 前記スイッチング制御手段は、所定の基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、
    前記基準電圧と前記伝送線の電位に応じた電圧との比較に基づいて、前記導通路に流れる電流の波形が台形状になるように前記スイッチング素子を制御する波形整形回路とで構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の通信装置用終端回路。
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