JP3628132B2 - 電動アクチュエータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動アクチュエータに関するものであり、特に組立ロボットなどの自動省力化装置において、送り運動や回転運動のための動力を発生する部分に使用するのに好適な電動アクチュエータに関するもので、より詳しくは負荷機構に対する保護機能を備えた回転形サーボモータやリニアサーボモータなど動力発生装置を備えた電動アクチュエータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
組立ロボットなどの自動省力化装置においては、並進運動や回転運動の動力源として主に電磁現象を利用したサーボモータを動力発生装置とする電動アクチュエータが利用されている。この電動アクチュエータとその制御装置を含む駆動システムには、電動アクチュエータに負荷される運動機構部に何らかの障害が生じたときに、動力の発生あるいは動力の伝達を停止する保護機能を設ける必要がある。特に、組立ロボットなどによる人身事故の発生を防止したり、運動機構部に発生した障害を最小限に止めるためには、電動アクチュエータの駆動システムと自動省力化装置全体はフェールセーフな設計が成されなければならない。
【0003】
従来は、上記のような危険を防止するために、電動アクチュエータの動力発生装置として用いられるサーボモータ等の電機子に流れる過電流を検出したり、センサにより障害物の接近を検出することなどによって異常の発生を検出している。そして異常の発生を検出すると、駆動システム側に設けたコンピュータを用いて、ソフトウエア上の制御により電動アクチュエータの動力発生と動力伝達を停止することが行われている。また別の対策としては、組立ロボットなどの自動省力化装置を設置した周囲にデットスペースを設け、ロボットと人間を隔離することによって安全を確保することが行われている。
【0004】
更に、従来、電動アクチュエータと負荷との間に設置することを目的としたトルクリミッタ付きのトルク伝達装置[特願平5−275194号(特開平7−131970号),特願平5−296184号(特開平7−154957号)]も提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、異常発生時にソフトウエア上の制御によって電動アクチュエータの動力発生と動力伝達を停止する場合には、異常の検出とその信号処理のための回路構成ならびにソフトウエアの制御アルゴリズムが複雑となり、更に、その複雑さに伴って信頼性が低下する問題が生じる。
【0006】
また、自動省力化装置の周囲にデットスペースを設けることは、生産ラインの省スペース設計の弊害となる。
【0007】
また、トルクリミッタ付きのトルク伝達装置などをアクチュエータと負荷との間に設置することは、自動省力化装置などの小型化設計の弊害となる。
【0008】
本発明の目的は、異常発生時に、ハードウエアによって動力(またはトルク)の伝達を有限時間内に遮断することができる電動アクチュエータを提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、異常発生時に、簡単な構造のハードウエアによって動力(またはトルク)の伝達を有限時間内に遮断することができる電動アクチュエータを提供することにある。
【0010】
本発明の更に他の目的は、磁気カップリングを用いてしかも異常発生時に励磁電流を制御することなく動力(またはトルク)の伝達を迅速に遮断することができる電動アクチュエータを提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、動力(またはトルク)の伝達の遮断と一緒に動力発生装置への電気エネルギーの供給も停止して、より安全性を高めた電動アクチュエータを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、磁気カップリングの脱調を簡単な構造で検出して動力発生装置への電気エネルギーの供給の停止を指令する停止信号を出力できる電動アクチュエータを提供することにある。
【0013】
より具体的に言えば、本発明は、ソフトウエア制御によらず、電動アクチュエータ内部に設けたハードウエア機構によって動力(トルク)の伝達と有限時間内での動力(トルク)の遮断とを行なうことができ、システムのフェールセーフ設計と小型軽量化設計に適した本質的に安全な電動アクチュエータを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電気エネルギーを運動エネルギーに変換して動力を発生する動力発生装置と、動力を負荷に伝達する動力伝達機構と、動力伝達機構に組み込まれて動力(またはトルク)が負荷に伝達されるのを遮断する動力遮断機構(またはトルク遮断機構)とを備えた電動アクチュエータを対象とする。動力発生装置としては、サーボモータ等の回転電動機やリニアモータ等の非回転電動機を用いることができる。特に、動力発生装置と、動力伝達機構と動力遮断機構とを、1つのユニット(1つの製品)として構成すると、取扱いが容易である上、全体形状をコンパクトなものとすることができる。
【0015】
本発明では、動力遮断機構(またはトルク遮断機構)として、負荷の変化を検出することなく、負荷から受ける力(またはトルク)が予め定めた上限値よりも大きくなると負荷への動力の伝達(またはトルク)を遮断するように構成されたものを用いる。このような構成を採用すると、電動アクチュエータで駆動される負荷(運動機構部)が物体に衝突したような場合に、衝突の検出や電動アクチュエータのソフトウエア制御によらずに、ハードウエアのみによって、負荷への動力伝達の遮断を行うことができる。
【0016】
前述の動力遮断機構(またはトルク遮断機構)としては、動力(またはトルク)が直接伝えられる駆動側部材と、磁気吸引力を利用する磁気カップリングにより駆動側部材と連結されて負荷に動力(またはトルク)を伝達する被駆動側部材と、駆動側部材及び被駆動側部材の少なくとも一方に設けられて磁気吸引力を発生する磁気吸引力発生手段とを具備し、被駆動側部材に負荷から加わる力(またはトルク)が磁気カップリングのカップリング力(脱出トルク)よりも大きくなると磁気カップリングが脱調状態になって負荷への動力(またはトルク)の伝達を遮断するように構成されたものを用いることができる。このように動力(またはトルク)伝達と動力(またはトルク)遮断の機構を磁気カップリングで構成すると、動力(またはトルク)伝達の遮断には磁気カップリング部が本質的に持つ脱調現象を利用することができるので、動力(またはトルク)伝達の遮断を瞬時に行うことができて、異常の発生に迅速に対処できる。
【0017】
磁気吸引力発生手段は、電磁コイルでもよいが、電磁コイルを用いると励磁電流の通電回路等が必要になって、構造が複雑になる。また脱調時に電磁コイル内に誘導電流が流れ、脱出トルクを増大させ、しかも力の持続時間を増加させる。そこで磁気吸引力発生手段を、駆動側部材と被駆動側部材の対向面にそれぞれ複数の磁極を形成するように駆動側部材及び被駆動側部材に設けられた永久磁石から構成するのが好ましい。永久磁石を用いると励磁電流の供給が不要であるため、構造が簡単になる。また永久磁石の磁極面に複数のスリットまたは溝を形成しておくと、脱調時に永久磁石の表面に渦電流が発生するのを抑制して、脱出トルクの増加を低減できる。
【0018】
なお電磁カップリングにおいて、複数の磁極を駆動側部材の移動方向に沿って並べる場合に、各磁極の前記移動方向の磁極寸法は、磁気カップリングが脱調状態に至るまでに負荷に加わる力とその持続時間との積が負荷に応じて予め定められる安全領域内に入るように定めるのが好ましい。即ち磁気カップリングが脱調状態に至るまでの時間が、安全の確保に必要な時間(安全と定められた有限時間)内に入るようにするのが好ましい。このようにすると、磁極寸法を適宜に設定することにより、脱調に至るまでの時間を任意に設定して、負荷が何かに衝突した際の安全性を確保できる。なお永久磁石を用いる場合には、各磁極を構成する永久磁石の前記移動方向の寸法を適宜に定めればよい。
【0019】
更に、動力遮断機構(トルク遮断機構)における動力(またはトルク)の遮断動作を検出して停止信号を出力する遮断動作検出手段と、停止信号が入力されると動力発生装置への電気エネルギーの供給を停止する電気エネルギー供給停止手段とを更に設けてもよい。なお遮断動作検出手段と電気エネルギー供給停止手段とを設けずに、動力遮断機構の動力の遮断動作と同期して動力発生装置への電気エネルギーの供給を直接遮断する電気エネルギー供給遮断手段を設けてもよい。これらの手段を設けると、磁気カップリングの脱調に同期して電動アクチュエータの動力発生装置に供給される電気エネルギーを停止または遮断することができて、迅速に電動アクチュエータを停止させることができるとともに、異常の発生原因が除去されない状態で、再度電動アクチュエータが動作するのを防止できる。
【0020】
本発明を回転軸を有する電動機を動力発生装置として用いた場合について説明すると、本発明は、回転軸を有する電動機と、回転軸の回転トルクを負荷に伝達するトルク伝達機構と、トルク伝達機構に組み込まれて回転トルクが負荷に伝達されるのを遮断するトルク遮断機構(動力遮断機構)とを備えればよい。そしてトルク遮断機構は、回転トルクにより直接駆動されて回転する駆動側回転部材と、磁気吸引力を利用する磁気カップリングにより駆動側回転部材と連結されて負荷に回転トルクを伝達する被駆動側回転部材と、駆動側回転部材及び被駆動側回転部材の少なくとも一方に設けられて磁気吸引力を発生する磁気吸引力発生手段とを具備し、被駆動側回転部材に負荷から加わるトルクが磁気カップリングの脱出トルクよりも大きくなると磁気カップリングが脱調状態になって負荷への回転トルクの伝達を遮断するように構成する。
【0021】
この場合にも、トルク遮断機構におけるトルクの伝達を遮断する動作を検出して停止信号を出力する遮断動作検出手段と、停止信号が入力されると電動機への電気エネルギーの供給を停止する電気エネルギー供給停止手段とを更に設けてもよいのは勿論である。そしてこの場合の遮断動作検出手段を、駆動側回転部材に駆動側回転部材と同心的に配置された導電性を有する駆動側のスリップリングと、被駆動側回転部材に被駆動側回転部材と同心的に配置された導電性を有する被駆動側のスリップリングと、駆動側のスリップリングと被駆動側のスリップリングとの間に配置されて、磁気カップリングが結合状態にあるときに駆動側のスリップリング及び被駆動側のスリップリングを電気的に接続し、磁気カップリングが脱調状態になると両者の電気的接続を遮断する電気的接続機構と、電動機のケース等の非回転部に取付けられて駆動側のスリップリング及び被駆動側のスリップリングと常時接触する少なくとも一対の摺動接点とから構成することができる。電気的接続機構は駆動側のスリップリング及び被駆動側のスリップリングにそれぞれ固定され、磁気カップリングが結合状態にあるときに駆動側のスリップリング及び被駆動側のスリップリングを電気的に接続するように相互に接触し、磁気カップリングが脱調状態になると両者の電気的接続を遮断する少なくとも一対のバネ接点によって構成することができる。これら一対のバネ接点は、一対の摺動接点の集電動作の邪魔にならないように設ける。
【0022】
なお前述の2つのスリップリングを用いた遮断動作検出手段の構造をそのまま利用して、磁気カップリングが脱調状態になったときに電動機への電機子電流の供給を直接遮断することができる。具体的には、単相の電動機の場合には、少なくとも一対の摺動接点を通して、電動機の電機子巻線に電機子電流を供給するようにする。このようにすると、磁気カップリングが脱調状態になったときに、一対のバネ接点が非接触状態となって電動機への電機子電流の供給を直接且つ直ちに遮断できる。電動機が多相(n相)の電動機の場合には、多相の電機子巻線にそれぞれ対応して駆動側及び被駆動側のスリップリング、摺動接点、接点バネの構造をn組用意して、これらの組の摺動接点を通してn相の電機子巻線にそれぞれ電機子電流を供給すればよい。
【0023】
なお遮断動作検出手段は、遮断動作が行われたことを検出できるものであれば、どのような構造を有していてもよい。遮断動作検出手段の一例では、例えば、駆動側部材及び被駆動側部材の一方に設けられて駆動側部材及び被駆動側部材の他方に設けられた磁力発生手段から発生する磁束の変化で誘起電圧を発生するサーチコイルを用いる。この場合、電気エネルギー供給停止手段はサーチコイルに誘起した誘起電圧を停止信号として動作するように構成すればよい。磁気カップリングが脱調状態になると、駆動側部材と被駆動側部材との間に相対的回転が発生する。そのため駆動側部材及び被駆動側部材の一方にサーチコイルを設けておくことにより、脱調の発生と同時にサーチコイルに電圧が誘起される。このようにサーチコイルを用いると、確実に且つ簡単に脱調の発生を検出できる。
【0024】
サーチコイルに誘起された誘起電圧は、ブラシ構造で出力させてもよいが、寿命を考慮すると、回転変圧器を用いるのが好ましい。回転変圧器を用いる場合には、一次巻線をサーチコイルが設けられた駆動側部材及び被駆動側部材の一方に設け、二次巻線を非回転部に設ければよい。このようにすると非接触でサーチコイルに誘起された電圧を取出すことができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。
【0026】
まず、本発明の第1の実施の形態の例として、電気エネルギーを運動エネルギーに変換して動力を発生する動力発生装置として回転電機を用いた電動アクチュエータについて説明する。図1は、この電動アクチュエータ1の一部を断面にして示した構造図である。この電動アクチュエータ1は、動力発生装置としての電動機2と、センサ部3と、電動機の回転軸から出力される動力(または回転トルク)を負荷に伝達する動力伝達部4とを備えている。ここで使用する電動機としては、直流電動機,同期電動機,誘導電動機等の各種の電動機を用いることができる。センサ部3は、電動機2をサーボモータとして動作させるために使用する速度センサ及び位置センサを構成する検出機器(例えばエンコーダ等)を含んで構成されている。
【0027】
動力伝達部4は、電動機2のハウジング2aの端部に取付けられたケーシング5の内部に動力伝達機構(またはトルク伝達機構)の主要部分が収納された構造を有している。ケーシング5の電動機2側の端部5aの内部には、電動機2の回転軸2bが挿入配置されている。またケーシング5の非電動機2側の端部5bの内周部には、出力軸6を回転自在に支持するベアリング7が嵌合されて固定されている。電動機2の回転軸2bと出力軸6とは、軸線が一致するように並んで配置されており、回転軸2bの端部と出力軸6の内端部6aとは僅かなギャップGを介して対向している。出力軸6の外端部6bには、負荷が取付けられる。
【0028】
回転軸2bには、非磁性材料により一体構造とされた永久磁石支持体8が固定されている。この永久磁石支持体8は、回転軸2bの外周に嵌合されて固定される第1の筒状部8aと、この第1の筒状部8aの一端から径方向外側に延びる板状の環状部8bと、環状部8bの径方向外側端部から回転軸2bの軸線方向に延びる第2の筒状部8cとから構成されている。第2の筒状部8cの内周部には、磁性材料により一体構造とされた環状ヨーク9が嵌合されて固定されている。そしてこの環状ヨーク9の内周面上には、複数の永久磁石10…が固定されている。また出力軸6の内端部6aの外周には、導磁性材料からなる環状の永久磁石支持体11が嵌合されており、この永久磁石支持体11の外周面上には複数の永久磁石12…が固定されている。
【0029】
この例では永久磁石支持体8と環状ヨーク9とにより、回転軸2bから動力(またはトルク)が直接伝えられる駆動側部材が構成され、永久磁石支持体8と環状ヨーク9と永久磁石10…とにより第1の磁気カップリング部材13(図2)が構成されている。また永久磁石支持体11により磁気吸引力を利用する磁気カップリングにより駆動側部材と連結されて負荷に動力(またはトルク)を伝達する被駆動側部材が構成され、永久磁石支持体11と永久磁石12…とにより第2の磁気カップリング部材14が構成されている。そして永久磁石10…及び12…によって、磁気吸引力を発生する磁気吸引力発生手段が構成されている。またこれら第1及び第2の磁気カップリング部材13及び14により、電動機2から動力(またはトルク)が負荷に伝達されるのを遮断する動力遮断機構(またはトルク遮断機構)を構成する磁気カップリング15が構成されている。
【0030】
この磁気カップリング15は、被駆動側部材を構成する出力軸6に、図示しない負荷から加わる力(またはトルク)が磁気カップリングのカップリング力(脱出トルク)よりも大きくなると、磁気カップリング15が脱調状態になって出力軸6を介して負荷へ動力(またはトルク)が伝達されるのを遮断する。このような機能を有効に発揮するように、この例では、永久磁石10…及び永久磁石12…の配置態様を図2に示す通りにしている。永久磁石10…及び永久磁石12…は、2つの永久磁石を隣接して配置して構成した複数の組磁石を周方向に一定の間隔を開けて配置するように取付けられている。この一定の間隔は、磁気カップリング15が脱調状態になって、第1の磁気カップリング部材13と第2の磁気カップリング部材14との間に相対的な回転が発生したときに、容易に再カップリングしないように定められている。組磁石を構成する隣接して配置された2つの永久磁石は、N極とS極の組み合わせである。環状ヨーク9に固定された永久磁石10…からなる複数の組磁石と永久磁石支持体11に固定された永久磁石12からなる複数の組磁石とは、カップリング状態において、互いに吸引し合うように配列されている。また永久磁石10…及び永久磁石12…の磁極幅寸法(周方向の寸法即ち回転軸2bの回転方向の寸法)は、出力軸6に負荷から加わる力が磁気カップリング15のカップリング力よりも大きくなると磁気カップリング15が直ちに脱調状態となるように定めてある。より具体的には、永久磁石10…及び永久磁石12…の磁極幅寸法については、磁気カップリングが脱調状態に至るまでに負荷に加わる力とその持続時間との積が負荷に応じて予め定められる安全領域内に入るように定める。即ち、磁気カップリングが脱調状態に至るまでの時間が、安全の確保に必要な時間(安全と定められた有限時間)内に入るように磁極幅寸法を定める。なおこの点については後に説明する。
【0031】
磁気カップリング15は電動機2で発生した動力を出力軸6に伝達すると共に、その動力を遮断する機能を本質的に持っている。
【0032】
次に、図3に基づき磁気カップリング15の動力伝達と遮断の作用を詳しく説明する。図3は、図2に示した磁気カップリングを構成する永久磁石10…及び12…の1つの組磁石即ち1極対分の径方向断面を円周方向に展開して示したものである。第1及び第2の磁気カップリング部材13及び14を介して出力軸6に伝達されるトルクTc は仮想変位の原理より以下のように表される。
【0033】
Tc =−(δWg /δθ) …(1)
Wg =(Vg /4πμo )∫(Bg )2 dθ …(2)
ただし、Wg は空隙16に蓄えられる磁気エネルギーであり、θは円周方向の空間角であり、Vg は空隙16の全体積であり、Bg は空隙16の磁束密度であり、μo は真空の透磁率である。こで、空隙の磁束密度Bg の基本波成分によるトルクを考えると、出力軸6に伝達されるトルクTc は、
Tc =Tpo sin(pθ) …(3)
と表される。(3)式のpは永久磁石10…及び12の極対数(即ち一方の磁気カップリング部材13または14に設けられる組磁石の数)であり、Tpoは伝達トルクの最大値である。このトルクTc の振幅を磁気カップリング15の脱出トルクと言う。
【0034】
磁気カップリング15の脱出トルクTpoと出力軸6に負荷される負荷トルクTL との間に、
Tpo>TL …(4)
なる関係が満足される場合には、電動機2の回転軸2bからの動力(回転トルク)は磁気カップリング15を介して出力軸6に伝達される。一方、
Tpo<TL …(5)
なる関係が満足される場合には、磁気カップリング15は脱調状態となって、電動機2の回転軸2bからの動力(回転トルク)を出力軸6に伝達することはできない。すなわち、(1)式,(2)式及び(3)式に基づいて設定された脱出トルクの値を超える大きさの負荷トルクが出力軸6に加わると、電動機2から出力軸6への動力伝達は遮断される。
【0035】
図4(A)には、この例について計算した第1及び第2の磁気カップリング部材13及び14の相対角変位θとトルクTc の関係を示す。(3)式から明らかなように、トルクTc の最大値すなわち脱出トルクは、
θ=±π/(2p) …(6)
の角変位で生じる。出力軸6に過大な負荷トルクが加わった場合、安全と定められた有限時間以内の短時間のうちに動力遮断が行われることが望ましいので、(6)式で表される角変位は小さい方がよい。従って、第1及び第2の磁気カップリング部材13及び14に永久磁石10及び12によって構成する複数の磁極は、磁極幅寸法(周方向の寸法)の小さい多極の永久磁石で構成されることが好適である。
【0036】
図4(B)に示すように、磁極幅寸法をτとして、磁気カップリングの空隙内径をDとした場合には、これらの間に
τ=πD/(2p) …(7)
なる関係がある。
【0037】
いま(6)式で表される角変位θを(6)式と(7)式とを用いて表すと、
θ=τ/D …(8)
と表される。
【0038】
磁気カップリングによって伝達されるトルクTcにより駆動される機構(負荷)が、ある物体に衝突した場合に生じる力Fの時間変化は図4(C)のようになる。ここで一般に、力Fの最大値が一定のもとでは、持続時間Δtが短いほど力積(F×Δt)は小さい。また、ある一定の負荷条件のもとでは、磁気カップリングが脱調にいたるまでの時間tは、脱調にいたるまでの角変位θと正の相関を持つ。したがって脱調にいたるまでの時間tを短くするためには、(8)式で表される角変位θを小さくすればよい。(8)式から明らかなように、角変位θを小さくするためには、磁気カップリングの磁極幅寸法τを小さくして、空隙内径Dを大きく設計すればよいことになる。空隙内径Dを大きくすると、装置の全体寸法が大きくなるため、磁極幅寸法τを小さくして、角変位θを小さくすることにより、脱調にいたるまでの時間tを短くするのが好ましい。
【0039】
図4(D)には、磁気カップリングを内蔵した電動アクチュエータの脱出トルク特性を示す。この図から分かるように、磁極幅寸法τが大きくなるほど(τ1 <τ2 <τ3 )、同じ力F1 が加わったとしたとすると、持続時間t1 が長くなって、力積(F1 ×t1 )が大きくなる。例えば、力F1 が加わったときに、持続時間がt1 以内に入るようにするためには、磁極幅寸法τとしてτ1 を選択することになる。この場合、図4(D)の磁極幅τ1 の特性曲線が、安全曲線となり、その内側の領域が安全領域となり、その外側の領域が危険領域となる。このことは、力積が安全曲線の安全領域に入るように磁極幅寸法τを決定するればよいことを意味する。
【0040】
なお、磁極を多極の永久磁石で構成すると、第1及び第2の磁気カップリング部材13及び14のねじり剛性も向上する。さらに、磁極幅寸法の小さい永久磁石で構成することにより、脱調時に生じる渦電流による脱出トルクの増加を低減できる。図5に示すように、永久磁石Mの磁極面に複数のスリットまたは溝Sを形成しても、磁極面に渦電流が発生するのを抑制できる。なお、磁気カップリング15の複数の磁極を、多極の電磁石で構成してもよい。但しその場合には、磁気カップリングが大型化するとともに、脱調時に電磁石の電磁コイルに誘導電流が流れ、脱出トルクが増大し、また力の持続時間が増大する。したがって多極の永久磁石で構成することが好ましい。
【0041】
図1に戻って、第2の磁気カップリング部材14の少なくとも1つの永久磁石12には、その外側を囲むようにしてサーチコイル18が取付けてある。サーチコイル18は、第1の磁気カップリング部材13の永久磁石10…から発生する磁束と空間的に直交するように、1つ以上の永久磁石12に巻かれている。出力軸6には、磁気カップリング15に隣接して、サーチコイル18に直列接続された一次巻線W1を有する回転変圧器19の一次側巻線ユニット19aが固定されている。この一次側巻線ユニット19aは、出力軸6に嵌合された環状の絶縁樹脂製のボビンに一次巻線W1の巻線導体が巻回された構造を有している。また回転変圧器19の二次側巻線ユニット19bは、ケーシング5に取付けられている。二次側巻線ユニット19bは、ケーシング5の内壁部にネジ止めされた取付具20を介してケーシング5に対して固定されている。二次側巻線ユニット19bは、一次側巻線ユニット19aを周方向から囲むように構成された環状の絶縁樹脂製のボビンに、一次巻線W1から発生する磁束が鎖交するように二次巻線W2が巻回された構造を有している。この例では、サーチコイル18と回転変圧器19とにより、磁気カップリング15における動力(またはトルク)の遮断動作を検出して停止信号を出力する遮断動作検出手段が構成されている。なお回転変圧器19の二次巻線W2の出力用リード線は、ケーシング5の外周部に設けた貫通孔21を通してケーシング5の外部に引き出される。
【0042】
二次巻線W2の出力用リード線から出力された信号は、電動機2の図示しない制御装置に停止信号として入力される。制御装置には、この停止信号を受信すると電動機2への電気エネルギーの供給を停止する電気エネルギー供給停止手段を設ける。なおこの電気エネルギー供給停止手段は、電動機2自体に制御装置が内蔵されている場合には、電動機2の内部に設けることになる。電気エネルギー供給停止手段は、例えば電動機2に電機子電流を流す回路の途中に制御可能なスイッチを設け、停止信号の入力に応じてこのスイッチを開くことにより、電機子電流の供給を停止するように構成することができる。
【0043】
次に、このサーチコイル18と回転変圧器19の作用を図6に基づいて説明する。図6は、サーチコイル18と回転変圧器19の一次巻線W1及び二次巻線W2の等価回路である。前述の(4)式が満足される負荷条件では、磁気カップリング15の第1及び第2の磁気カップリング部材13及び14は、磁気吸引力で吸引し合って同期して回転するため、サーチコイル18には鎖交して変化する磁束は発生しない。したがってサーチコイル18には電圧は誘起されない。そして前述の(5)式が満足される負荷条件、すなわち、磁気カップリング15が脱調状態となって、第1及び第2の磁気カップリング部材13及び14の間に相対的な回転が発生し、両者の間に相対角速度が生じ、サーチコイル18には永久磁石10…から出る磁束が変化しながら鎖交する。その結果サーチコイル18には、誘起電圧が発生する。この誘起電圧は、回転変圧器19の一次巻線W1に電流を流し、この電流で発生した磁束が二次巻線W2と鎖交して、二次巻線の両端に電圧が現れる。この電圧が停止信号となる。このようにして、電動機2の回転軸2bと出力軸6との間の動力伝達の遮断に同期して停止信号を電動機2の外部に取り出すことができる。
【0044】
以上のように、電気エネルギーを運動エネルギーに変換する電動機2と、その動力を出力軸6に伝達または遮断する機構を多極の磁気カップリング15で構成すると、磁気カップリング15で設定された脱出トルクを越えたトルクは出力軸6に伝達されない。さらに、動力伝達の遮断に同期して信号を発生する機構をサーチコイル18と回転変圧器19とで構成することによって、動力伝達の遮断に同期して発生した信号を利用して電動機2に供給される電気エネルギーを遮断することが可能になる。
【0045】
図7に、この例の電動アクチュエータを用いた出力軸に負荷を取付け、この負荷に物体を衝突させたときのトルク特性と負荷側に生じる力の実測値の一例を示す。図7において、曲線aは衝突時のトルク変化であり、曲線bは負荷側に生じる力の変化である。回転軸2bから出力軸6への伝達トルクは、磁気カップリング15の脱出トルクで制限され、それに伴い負荷側に生じる力も制限されていることが判る。しかも、この例では、磁気カップリング15の永久磁石10…及び12の幅寸法を狭くして多極構造にしているため、衝撃力の持続時間は約40msec. と短いことが確認される。
【0046】
次に本発明の別の実施の形態について説明する。図8は、本発明を適用した電動アクチュエータ101の一部を断面にして示した構造図である。この例も図1の例と同様に、動力発生装置として電動機102とセンサ部103(図8では内部を省略してある)と動力伝達部104とを備えている。この例では、図1の例と異なって、電動機102の回転軸と出力軸106とが一体になっている。電動機102の両側にはブラケット105a及び105bが取付けられている。そして2つのブラケット105a及び105bには、それぞれ出力軸106を支持するベアリング107が固定されている。
【0047】
電動機102は、ステータ側に電機子鉄心102aと電機子巻線102bとを備え、ロータ側に界磁磁石102cを備えた永久磁石同期電動機である。前述のブラケット105a及び105bは、電機子鉄心102aに対して固定されている。そして電機子巻線102bは、電機子鉄心102aの内周側に設けた突極部に適宜に巻装されている。ロータは、回転軸として用いられる出力軸106に対して回転自在に嵌合された一対のオイルレスメタル109と、このオイルレスメタル109がインサート成形された永久磁石支持体108と、この永久磁石支持体108に支持された複数の永久磁石からなる界磁磁石102cとから構成される。オイルレスメタル109は、潤滑油の給油を必要としないベアリングである。
【0048】
永久磁石支持体108は、このオイルレスメタル109が固定される第1の筒状部108aと、この第1の筒状部108aの一端に一体に設けられて出力軸106の一部の周囲を囲むように軸線方向に延びる第2の筒状部108bとから構成される。第2の筒状部108bの内周部には、複数の磁極を構成する複数の永久磁石110が周方向に並ぶように固定されている。また出力軸106には、外周に複数の磁極を構成する複数の永久磁石112を備えた環状の永久磁石支持体111が固定されている。永久磁石支持体111は、環状のボスを介して出力軸106に固定されている。永久磁石支持体111は、複数の永久磁石112が固定される第1の部分111aと、この第1の部分111aよりも大径の第2の部分111bとを一体に備えている。永久磁石支持体108及び111に固定される永久磁石110…及び112…の配列は、図1及び図2に示した第1の実施の形態の例の永久磁石10…及び12…と同じである。
【0049】
この例では永久磁石支持体108により、電動機102から動力(またはトルク)が直接伝えられる駆動側部材が構成され、永久磁石支持体108と永久磁石110…とにより第1の磁気カップリング部材113が構成されている。また永久磁石支持体111により磁気カップリング115により駆動側部材と連結されて負荷に動力(またはトルク)を伝達する被駆動側部材が構成され、永久磁石支持体111と永久磁石112…とにより第2の磁気カップリング部材114が構成されている。そして永久磁石110…及び112…によって、磁気吸引力を発生する磁気吸引力発生手段が構成されている。またこれら第1及び第2の磁気カップリング部材113及び114により、電動機102から動力(またはトルク)が負荷に伝達されるのを遮断する動力遮断機構(またはトルク遮断機構)を構成する磁気カップリング115が構成されている。
【0050】
電動機102で発生した動力(トルク)は磁気カップリング115を介して出力軸106に伝達されると共に、第1の例で詳述したように、磁気カップリング115の脱出トルクを超えた動力(トルク)は遮断される。
【0051】
図8に示した電動アクチュエータにおいては、動力遮断機構におけるトルクの伝達を遮断する動作を検出して停止信号を出力する遮断動作検出手段が、導電性を有する第1及び第2のスリップリング(駆動側のスリップリング及び被駆動側のスリップリング)116及び117と第1及び第2のバネ接点118及び119と、第1及び第2の摺動接点120a及び121aを備えた摺動接点構造体120及び121とから構成される。
【0052】
第1のスリップリング116は、駆動側回転部材を構成する永久磁石支持体108の第2の筒状部108bの外周に、絶縁材料により形成された環状の絶縁リング122を介して出力軸106と同心的に配置されている。また第2のスリップリング117は、被駆動側回転部材を構成する永久磁石支持体111の第2の部分111bの外周に、絶縁リング123を介して出力軸106と同心になるように配置されている。第1及び第2のバネ接点118及び119は、それぞれ第1のスリップリング116と第2のスリップリング117の対向端面に固定されている。第1及び第2のバネ接点118及び119は、磁気カップリング115が結合状態にあるときに第1のスリップリング116及び第2のスリップリング117を電気的に接続し、磁気カップリング115が脱調状態になると両者の電気的接続を遮断する電気的接続機構を構成している。
【0053】
摺動接点構造体120及び121はブラケット105aに取付けられている。摺動接点構造体120及び121は、それぞれ第1のスリップリング及び第2のスリップリング116及び117と常時接触する一対の摺動接点120a及び121aと,摺動接点120a及び121aを出力軸106の径方向に移動自在に収納する絶縁材料からなる筒状の接点収納体120b及び121bと、接点収納体120b及び121bの内部に配置されて、摺動接点120a及び121aを径方向内側に付勢するスプリングSPと、摺動接点120a及び121aと電気的に接続された図示しない端子部とを備えて構成されている。
【0054】
図9には、スリップリング116及び117と、バネ接点118及び119と摺動接点120a及び121aとの位置関係を概略的に示してある。摺動接点120a及び121aは、それぞれスリップリング116及び117の外周面を周方向に摺動する。バネ接点118及び119はそれぞれスリップリング116及び117に固定されている。磁気カップリング115の第1及び第2の磁気カップリング部材113及び114が同期回転している場合は、バネ接点118及び119は接触していて、第1及び第2の磁気カップリング部材113及び114を相互に電気的に接続している。磁気カップリングが脱調状態となって、第1及び第2の磁気カップリング部材113及び114との間に相対的な回転が発生した場合には、瞬時にバネ接点118及び119は非接触となる。第1及び第2の磁気カップリング部材113及び114との間に発生する相対的な回転が1回以上になる場合には、バネ接点118及び119は接触と非接触とを繰り返すことになる。第1のスリップリング及び第2のスリップリング116及び117と常時接触する一対の摺動接点120a及び121aを直流電源の正と負の出力に接続する。このようにしておくと、動力伝達時には、摺動接点120a−スリップリング116−バネ接点118−バネ接点119−スリップリング117−摺動接点121aで構成される回路に常時連続的に電流が流れる。一方、磁気カプリング115が脱調状態になって動力伝達が遮断される場合には、前述の回路はバネ接点118及び119の部分で切り離され、この回路には連続した電流が流れなくなる。この例では、この電流の通電停止または断続を停止信号として利用する。
【0055】
なおこの例では、出力軸106に対して電動機102のロータの一部を構成する永久磁石支持体108はオイルレスメタル109で回転自在に支持されているので、磁気カップリング115が結合状態にあって、第1及び第2の磁気カップリング部材113及び114が同期回転しているときは、出力軸106とロータ(永久磁石支持体108)とは同期回転する。しかし磁気カップリング115が脱調状態になると、少なくとも永久磁石支持体108は出力軸106の周囲を回転して両者の間に相対変位が生じる。前述の停止信号を利用して、図示しない電気エネルギー供給停止手段を作動させて電動機102への電機子電流の供給を停止すれば、電動機102は停止する。
【0056】
上記の構造を利用して、電磁カップリング115が脱調状態になったときに、電動機102の電機子巻線102bに流す電機子電流を直接遮断するように構成することができる。即ち、摺動接点120a−スリップリング116−バネ接点118−バネ接点119−スリップリング117−摺動接点121aで構成される回路を通して、電動機102の電機子巻線102bに電機子電流を供給するようにする。このようにすると、磁気カップリング115が脱調状態になって、磁気カップリング部材113及び114の間に相対的な回転が発生すると、脱調に同期してバネ接点118及び119が非接触となるため電機子電流を直接遮断できる。このような用途で用いる場合、スリップリング等からなるこの構造は、磁気カップリング115(動力遮断機構)の動力の遮断動作と同期して、電動機102(動力発生装置)への電気エネルギーの供給を遮断する電気エネルギー供給遮断手段を構成することになる。このような電気エネルギー供給遮断手段の構造を採用する場合には、電動機102が直流機であればスリップリング116,117と摺動接点120a,121a及びバネ接点118,119の構成は一組でよい。しかし電動機102が三相交流電動機のような多相電動機の場合は、これらの構成を三組用意して、電動機の各相の電機子巻線に電機子電流を流すようにすればよい。図10は、例えば三相交流電動機の電機子電流を上記構成を用いて通電する場合の構成の概念図を示している。これらの図において、116A〜116Cは相互に電気的に絶縁された三相分の駆動側のスリップリングであり、117A〜117Cは相互に電気的に接続された被駆動側のスリップリングであり、118A〜118C及び119A〜119Cはバネ接点であり、120ac〜120aa及び121ac〜121aaは摺動接点である。このような構成を採用すると、摺動接点120ac〜120aaを通して、電動機の電機子巻線に電機子電流を供給できる。そして磁気カップリングが脱調状態になったときには、バネ接点118A〜118C及び119A〜119Cが非接触状態となって電動機への電機子電流の供給を直接且つ直ちに遮断できる。
【0057】
なおこの第2の実施の形態のように出力軸と電動機の回転軸とを共用する場合に、第1の実施の形態において採用したサーチコイルをセンサとする遮断動作検出手段を用いてもよいのは勿論である。
【0058】
図11は、本発明の第3の実施の形態の例の概略構成を示している。第1の実施例の形態及び第2の実施の形態は、動力発生装置として回転形の電動機を用いた電動アクチュエータの例であるが、本発明は動力発生装置として並進運動を行うリニアモータを用いるリニア電動アクチュエータにも適用できる。図11において、201はリニアモータである。このリニアモータ201は、ステータ側に電機子鉄心201aを備えており、この電機子鉄心201aの磁極部には電機子巻線201bが巻回されて、固定側磁極が形成されている。202は可動体であり、この可動体202は、可動体本体203と、可動体本体203の一対の対向壁部204,204に固定された一対のガイドピン205,205と、このガイドピン205,205に両端が摺動自在に支持された可動子206とを備えている。そして可動体本体203と可動子206の対向面には、それぞれ複数の磁極を構成する複数の永久磁石207…と複数の永久磁石208…とが移動方向に所定の間隔を開けて配置されている。また可動子206のステータ側の面には、リニアモータ201の界磁極を構成する永久磁石201cが移動方向に所定の間隔を開けて固定されている。
【0059】
この例では、可動子206によってリニアモータ201から動力(またはトルク)が直接伝えられる駆動側部材が構成され、可動子206と永久磁石208…とにより第1の磁気カップリング部材209が構成されている。また可動体本体203により磁気カップリングにより駆動側部材と連結されて負荷に動力(またはトルク)を伝達する被駆動側部材が構成され、可動体本体203と永久磁石207…とにより第2の磁気カップリング部材210が構成されている。そして永久磁石207…及び208…によって、磁気吸引力を発生する磁気吸引力発生手段が構成されている。またこれら第1及び第2の磁気カップリング部材209及び210により、リニアモータ201から動力(またはトルク)が負荷に伝達されるのを遮断する動力遮断機構(またはトルク遮断機構)を構成する磁気カップリング211が構成されている。
【0060】
この例では、磁気カップリング211が連結状態にあるときに、可動子206及び可動体本体203は同期して動き、磁気カップリング211が脱調状態になると可動子206がガイドピン205にガイドされて動くだけで、可動体本体203には動力(トルク)は伝達されない。
【0061】
なおこの例においても、前述の同様の遮断動作検出手段や、電気エネルギー供給停止手段や、電気エネルギー供給遮断手段を更に備えていてもよいのは勿論である。
【0062】
上記構成の各例によれば、電動アクチュエータに負荷された運動機構部が物体に接触したとき、例えば、運動部位と静止部位との間に人体などが挟まれた場合にも、異常の検出や電動アクチュエータのソフトウエア制御によらずに、電動アクチュエータから負荷への動力が瞬時に遮断される。このため、システムのフェールセーフな設計に適した、本質的に安全な電動アクチュエータを提供することができる。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、電動アクチュエータで駆動される負荷(運動機構部)が物体に衝突したような場合に、衝突の検出や電動アクチュエータのソフトウエア制御によらずに、ハードウエアのみによって、負荷への動力伝達の遮断を行うことができる利点がある。
【0064】
また動力(またはトルク)の伝達と動力(またはトルク)の遮断を行う機構を磁気カップリングで構成すると、動力(またはトルク)伝達の遮断を瞬時に行うことができて、異常の発生に迅速に対処できる。
【0065】
更に磁気カップリングの磁極を永久磁石で構成すると、構造が簡単になって、電動アクチュエータを小形に構成することができる。
【0066】
また磁気カップリングの脱調に同期して動力発生装置に供給される電気エネルギーを遮断する電気エネルギー供給遮断手段を設けると、異常の発生検出と同期して動力発生装置を迅速に停止させることができる。
【0067】
また磁気カップリングの脱調に同期して発生する停止信号を発生する遮断動作検出手段を設けて、電動アクチュエータの動力発生装置に供給される電気エネルギーを停止または遮断すると迅速に電動アクチュエータを停止させることができるとともに、異常の発生原因が除去されない状態で、再度電動アクチュエータが動作するのを防止できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の電動アクチュエータの構造を示す一部断面図である。
【図2】図1の例で用いる磁気カップリングの構成を示す径方向断面図である。
【図3】本発明で用いる磁気カップリング部の作用を説明するために用いる説明図である。
【図4】(A)は本発明における磁気カップリングの角変位θとトルクTc の関係を示す図であり、(B)は磁極幅寸法τと磁気カップリングの空隙内径Dとの関係を示す図であり、(C)は衝突時の力の時間変化を示す図であり、(D)は電動アクチュエータの脱出トルク特性を示す図である。
【図5】(A)及び(B)は、図1の例で用いることができる永久磁石の平面図及び側面図である。
【図6】図1の例で用いるサーチコイルと回転変圧器の構成図である。
【図7】図1の例について行った衝突試験で得たトルク変化及び負荷側に生じる力の変化を示す特性図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の構造を示す一部断面図である。
【図9】図7の例で用いるブラシとスリップリングの構成を示す図である。
【図10】三相交流電動機を用いる場合のブラシとスリップリングの構成を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態の構造概念を示す図である。
【符号の説明】
1,101 電動アクチュエータ
2,102 電動機(動力発生装置)
3,103 センサ部
4,104 動力伝達部
5 ケーシング
6,106 出力軸
8,11,108,111 永久磁石支持体
10,12,110,112 永久磁石
13,113 第1の磁気カップリング部材
14,114 第2の磁気カップリング部材
15,115 磁気カップリング(動力遮断機構またはトルク遮断機構)
18 サーチコイル
19 回転変圧器
116,117 スリップリング
118,119 バネ接点
120,121 摺動接点構造体
120a,121a 摺動接点

Claims (8)

  1. 回転軸を有する電動機と、
    前記回転軸の回転トルクを負荷に伝達するトルク伝達機構と、
    前記トルク伝達機構に組み込まれて前記回転トルクが前記負荷に伝達されるのを遮断するトルク遮断機構とが1つのユニットとして構成され、
    前記トルク遮断機構は、前記回転トルクにより直接駆動されて回転する駆動側回転部材と、磁気吸引力を利用する磁気カップリングにより前記駆動側回転部材と連結されて前記負荷に前記回転トルクを伝達する被駆動側回転部材と、前記駆動側回転部材及び前記被駆動側回転部材の少なくとも一方に設けられて前記磁気吸引力を発生する磁気吸引力発生手段とを具備し、前記被駆動側回転部材に前記負荷から加わるトルクが前記磁気カップリングの脱出トルクよりも大きくなると前記磁気カップリングが脱調状態になって前記負荷への前記回転トルクの伝達を遮断するように構成されており、
    前記磁気吸引力発生手段は、前記駆動側部材と前記被駆動側部材の対向面にそれぞれ複数の磁極を形成するように前記駆動側部材及び前記被駆動側部材に設けられた永久磁石からなり、
    前記複数の磁極は前記駆動側部材の移動方向に沿って並んでおり、各磁極の前記移動方向の磁極幅寸法が、前記負荷に物体が衝突した場合に生じる力の力積が前記力とその持続時間とにより定まる安全曲線の安全領域に入るように定められていることを特徴とする電動アクチュエータ。
  2. 前記永久磁石の磁極面には、前記磁気カップリングが脱調状態になると発生する渦電流の発生を抑制するように複数のスリットまたは溝が形成されている請求項1に記載の電動アクチュエータ。
  3. 前記トルク遮断機構におけるトルクの伝達を遮断する動作を検出して停止信号を出力する遮断動作検出手段と、
    前記停止信号が入力されると前記電動機への電気エネルギーの供給を停止する電気エネルギー供給停止手段とを更に備えている請求項1に記載の電動アクチュエータ。
  4. 前記遮断動作検出手段は、
    前記駆動側回転部材に前記駆動側回転部材と同心的に配置された導電性を有する駆動側のスリップリングと、
    前記被駆動側回転部材に前記被駆動側回転部材と同心的に配置された導電性を有する被駆動側のスリップリングと、
    前記駆動側のスリップリングと前記被駆動側のスリップリングとの間に配置されて、前記磁気カップリングが結合状態にあるときに前記駆動側のスリップリング及び前記被駆動側のスリップリングを電気的接続し、前記磁気カップリングが脱調状態になると前記両者の電気的接続を遮断する電気的接続機構と、
    非回転部に取付けられて前記駆動側のスリップリング及び前記被駆動側のスリップリングと常時接触する一対の摺動接点を有する摺動接点構造体とから構成されている請求項3に記載の電動アクチュエータ。
  5. 前記電動機はn(nは正の整数)相の電機子巻線を有しており、
    前記駆動側回転部材に前記駆動側回転部材と同心的に配置された導電性を有するn個の駆動側のスリップリングと、
    前記被駆動側回転部材に前記被駆動側回転部材と同心的に配置された導電性を有するn個の被駆動側のスリップリングと、
    前記n個の駆動側のスリップリングと前記n個の被駆動側のスリップリングとの間にそれぞれ配置されて、前記磁気カップリングが結合状態にあるときに対応する前記駆動側のスリップリング及び前記被駆動側のスリップリングを電気的に接続し、前記磁気カップリングが脱調状態になると前記両者の電気的接続を遮断する電気的接続機構と、
    非回転部に取付けられて前記n個の駆動側のスリップリング及び前記n個の被駆動側のスリップリングとそれぞれ常時接触するn組の少なくとも一対の摺動接点を有する摺動接点構造体とを具備し、
    前記電動機の前記n相の電機子巻線に前記n組の少なくとも一対の摺動接点を通してそれぞれ電機子電流を供給することを特徴とする請求項1に記載の電動アクチュエータ。
  6. 前記電気的接続機構は、前記駆動側のスリップリング及び前記被駆動側のスリップリングにそれぞれ固定され、前記磁気カップリングが結合状態にあるときに前記駆動側のスリップリング及び前記被駆動側のスリップリングを電気的に接続するように相互に接触し、前記磁気カップリングが脱調状態になると前記両者の電気的接続を遮断する少なくとも一対のバネ接点によって構成されている請求項4または5に記載の電動アクチュエータ。
  7. 前記遮断動作検出手段は、前記駆動側部材及び前記被駆動側部材の一方に設けられて前記駆動側部材及び前記被駆動側部材の他方に設けられた前記磁気吸引力発生手段から発生する磁束の変化で誘起電圧を発生するサーチコイルを具備し、
    前記電気エネルギー供給停止手段は前記サーチコイルに誘起した誘起電圧を前記停止信号として動作するように構成されている請求項3に記載の電動アクチュエータ。
  8. 前記サーチコイルに誘起された誘起電圧は、一次巻線が前記サーチコイルが設けられた前記駆動側部材及び前記被駆動側部材の一方に設けられ、二次巻線が非回転部に設けられている回転変圧器を介して出力される請求項7に記載の電動アクチュエータ。
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