JP3625783B2 - 磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型かつ高画質のビデオテ―プなどで要求される高密度記録・高出力でノイズの十分に低減された磁気記録媒体に関する。
とくに、磁気テ―プなど磁性塗膜とバツクコ―ト層を有して、支持体、磁性塗膜、バツクコ―ト層の合計全体の厚みが14μm以下のテ―プ状のものを巻回するタイプの磁気記録媒体において、長年の保存によつてもノイズが上昇することのないように信頼性を確保することを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体は、一般に、ポリエステルフイルムなどの支持体上に、磁性粉末、結合剤、無機粉末、潤滑剤などを有機溶媒中に混練分散してなる磁性塗料を塗布、乾燥した磁性塗膜を形成して、成り立つている。とくに、ビデオテ―プなどでは、走行性の改善のために、支持体の背面に結合剤、無機粉末、潤滑剤などを含む塗膜によるバツクコ―ト層を形成している。
【0003】
磁気ヘツドやガイドロ―ラ―と接触するときに摩耗が生じないようにするために、磁性塗膜にもバツクコ―ト層にも、モ―ス硬度5以上の無機粉末を含ませることが提案されている。バツクコ―ト層については、特開昭62−112号、同62−38525号、同62−38526号、同62−38527号、同62−38528号などの各公報に、磁性塗膜については、特公昭47−18572号、同48−15003号、同49−39402号、同52−28642号、同52−49961号、同55−15771号などの各公報に開示されている。
【0004】
ところで、高密度記録を達成するには、記録波長を短くすることが必要で、このため記録波長よりも短い微細な磁性粉末が用いられている。また、高い出力を得るために、磁気特性を上昇させる種々の提案がなされており、たとえば、特公昭61−37761号公報などに代表されるように、磁気特性を向上させるために飽和磁化の高い強磁性金属粉末を用い、高出力を達成するようにしている。また、ノイズ低減のために、ス―パ―カレンダ―処理により磁性塗膜の表面仕上げ処理をして塗膜表面を平滑にしてノイズを低減することが、特公昭52−17404号、同60−12688号などの各公報に提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、強磁性金属粉末を磁気記録素子として使用し、表面仕上げ処理を経て得られた磁気記録媒体は、当初はノイズも低いが、保存後にはノイズが上昇してしまうという問題があつた。この問題は、磁性粉末の粒子径が小さいときでしかも酸化鉄系磁性粉末よりも軟らかい金属磁性粉末を用いた場合に顕著であり、およそ0.8μm以下の記録波長に対応する周波数の信号に対するノイズが保存後に上昇するということが明らかとなつた。
【0006】
このような問題は、種々の試作品についてほぼ満遍なく起つたのであるが、ただバツクコ―ト層を設けずに作製した磁気記録媒体においてのみ、保存後も当初の低減されたノイズを維持したのである。したがつて、このような問題はバツクコ―ト層に原因があると考え、種々検討したところ、磁気テ―プを巻いたときにバツクコ―ト層の表面の凹凸が磁性塗膜の表面に転写し、これによつて磁性塗膜の表面にできる凹凸がノイズの原因であると考えられた。
【0007】
このようなノイズの上昇は、とくに、支持体、磁性塗膜、バツクコ―ト層の合計全体の厚みが14μm以下のテ―プ状のものを巻回するタイプの磁気記録媒体で著しいことが認められた。これは、全厚20μm程度の厚手のものに比べて、単位巻き径に対する巻き回数が多く、とくにハブの最内側に近接したところでの巻き締まりが著しいことも原因の一つとして考えられる。
【0008】
この問題に類似の現象としては、既に、特開昭60−32122号公報にも指摘されており、バツクコ―ト層中のモ―ス硬度5以上の無機粉末の粒径が0.2μmを超えずかつこれより多い量の軟質無機粉末とを組み合せて用いることにより、テ―プガイドなどの傷つきを防止することが述べられている。特開昭63−255584号公報においても、バツクコ―ト層表面の凹凸が磁性塗膜へ移り磁気記録媒体のS/NやC/Nを低下させる現象についての認識がされており、塗膜に残存する溶剤量が関係すると指摘されている。
【0009】
しかしながら、これらの文献に開示する技術は、磁性粉末としていわゆるCo含有酸化鉄磁性粉末を用いたものに関し、支持体、磁性塗膜、バツクコ―ト層の合計全体の厚みが20μm程度のVHS方式の磁気記録媒体について述べられたものであり、このようなVHS方式では白色レベルの最短記録波長が1.3μmであるにすぎない。すなわち、これらの文献は、強磁性金属粉末を磁気記録素子として使用し中心記録波長が0.8μm以下の磁気記録媒体におけるノイズの低減についてなんらの示唆も与えるものではなかつた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、まず、第一に、磁性塗膜やバツクコ―ト層の傷つき易さは、塗膜に含まれる粉末の硬さだけでなく、その粒径に依存し粒径が一定以上に小さいと塗膜の補強効果が低下するという事実を見い出し、この事実に鑑みて、磁気記録テ―プを巻いたときにバツクコ―ト層に含まれるモ―ス硬度5以上の無機粉末が、磁性塗膜の表面を傷つけることがないようにするために、このようなバツクコ―ト層の無機粉末を、金属磁性粉末の長軸径よりも小さくしなければならないことを見い出した。
【0011】
また、第二に、バツクコ―ト層には走行性の改善のため、カ―ボンブラツクを含ませる必要がある。このこと自体は、10〜30mμの微粒子のカ―ボンブラツクと200〜500mμの粗粒子のカ―ボンブラツクと0.2μm以下の非磁性粉末とを含ませて、ドロツプアウトの増加を抑え、走行耐久性を良好にするという特開昭62−8328号公報などで既に述べられている。しかし、この文献では、カ―ボンブラツクの一次粒子の粒径や凝集体の径と、磁性塗膜中の強磁性金属粉末の長軸径との関係については、言及しておらず、また、粒子径が小さい強磁性金属粉末を用いた場合の0.8μm以下の記録波長に対応する周波数の信号に対するノイズとの関係についての検討もなされていない。
【0012】
本発明者らは、バツクコ―ト層のカ―ボンブラツクの一次粒子の粒径や凝集体の径と、磁性塗膜中の強磁性金属粉末の長軸径との関係について検討した結果、カ―ボンブラツクの一次粒子の粒径や凝集体の径が磁性粉末よりも大きい場合、結果として高出力低ノイズの要求に十分に応えれるものであることがわかつた。これは、高記録密度の要請、とくに磁性塗膜の薄膜化に対応した約3.0μm以下の厚さの磁性塗膜を持つ磁気記録媒体において、顕著に現れる。
【0013】
また、本発明者らは、支持体の両面にそれぞれ磁性塗膜とバツクコ―ト層を設けて、高い出力を発揮させ、しかも中心記録波長0.8μm以下の高密度記録において、長期間の保存にもかかわらず、ノイズの上昇を可及的に抑制し得る磁気記録媒体を得るには、磁性塗膜に印加磁場10KOe測定条件下で0.85以上の角型比をもたせるのが好ましいこと、磁性塗膜の保磁力を1,500Oe以上とするのが好ましいこと、磁性塗膜の表面平滑性を中心線平均粗さで0.004μm以下に規制するのが好ましいこと、さらにバツクコ―ト層の表面平滑性も中心線平均粗さで0.01μm以下とし、また金属磁性粉末の長軸径よりも小さく規制するのが好ましいことがわかつた。
【0014】
また、カ―ボンブラツクなどは一般に軟質であつて、バツクコ―ト層中に含ませたものがテ―プの巻回によつて磁性塗膜の表面を傷つけることは、従来予想もしなかつたことである。ところが、中心記録波長0.8μm以下程度の高密度記録を達成するために、磁性粉末の長軸径を0.2μm以下と小さくし、かつ金属の磁性粉末を主体的に含む磁性塗膜では、塗膜の補強効果が十分とはいえないうえに、高密度記録が要請する薄手テ―プの多数回巻きという過酷条件下で強い巻き締め力が掛けられることもあつて、カ―ボンブラツクといえども粒径の小さなものは磁性塗膜の表面を傷つける場合があることを知つた。
【0015】
また、この場合、バツクコ―ト層中に、一次粒子または凝集体として、金属磁性粉末の長軸径よりも大きい径のカ―ボンブラツクを含ませると、小粒径のものはその間隙に入り込み、バツクコ―ト層の表面に突出しないために、好ましいこと、またバツクコ―ト層中に含ませるモ―ス硬度5以上の無機粉末の粒径を、金属磁性粉末の長軸径よりも小さくするのが好ましいこと、さらには、このように構成した磁気テ―プを、ポリオキシメチレン樹脂などのハブの周囲にバツクコ―ト層を内側にして巻いた場合に、ABS樹脂とモ―ス硬度2〜4の顔料を含むカセツト本体に収容するのが好ましいことなども、判明した。
【0016】
本発明は、以上の知見に基づき、さらに検討を加え、なされたものである。
すなわち、本発明は、支持体の一面に金属磁性粉末を含み、中心線平均粗さで0.004μm以下の表面平滑性を有する磁性塗膜を、他面に一次粒子もしくは凝集体のカ―ボンブラツクを含み、中心線平均粗さで0.01μm以下の表面平滑性を有するバツクコ―ト層を、それぞれ設けた、中心記録波長0.8μm以下の高密度記録に用いられるテ―プ状の磁気記録媒体であって、ハブにバックコート層を内側にして巻かれ、上記ハブのテープ巻き周面のひけが5μm以内に管理されていることを特徴とする磁気記録媒体(請求項1)を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明における支持体の素材としては、非磁性材料として、ポリエチレンテレフタレ―ト、ポリエチレン−2,6−ナフタレ―トなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフイン類、セルロ―ストリアセテ―ト、セルロ―スダイアセテ―トなどのセルロ―ス誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリカ―ボネ―ト、ポリイミド、ポリアミドなどが挙げられる。これらの中でも、二軸配向型のポリエチレンテレフタレ―ト、ポリエチレン−2,6−ナフタレ―トなどのポリエステル類であつて、かつ長手方向の弾性率が700Kg/mm2 以上、幅方向の弾性率が400Kg/mm2 以上であり、また表面粗さが0.01μm以下であるものがとくに望ましい。
【0018】
このような支持体上に、有機溶媒に溶解したバインダ樹脂中に金属磁性粉末を含ませ、これをよく分散させた磁性塗料を塗布して、磁場配向処理を行ないつつ乾燥させて、磁性塗膜を形成する。
【0019】
磁性塗膜に用いられる金属磁性粉末としては、Fe 、Co 、Ni などの金属、Fe 、Co 、Ni 、Zn などを組み合せた合金、これら金属や合金の表面にFe 、Al 、Si などの酸化物の皮膜を形成した強磁性微粉末などが挙げられる。これらの金属磁性粉末の長軸径は、中心記録波長との関係上0.8μm以下であるのがよく、また分解能の観点から0.2μm以下であるのがよい。
【0020】
これらの中でも、鉄を主体としマンガンを鉄に対して0.1重量%以上含む金属磁性粉末の使用が望ましい。とくに、マンガンを鉄に対して0.1重量%以上含み、かつカルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属をマンガンに対して1〜50倍量含む金属磁性粉末が、比較的硬くて磁気特性および電磁変換特性にすぐれ、十分に硬いので、長軸径が0.2μm以下であるような補強効果のあまり期待できない磁性塗膜がバツクコ―ト層表面のモ―ス硬度5以上の無機粉末から損傷を受けることを防止する効果が高いので、好ましい。
【0021】
とくに、マンガンは酸化物や酸水酸化物として金属磁性粉末の表面に存在させると、均一かつ緻密な被膜が形成されるため、酸化マンガン、水酸化マンガンなどとして表面に存在させるのが好ましい。また、ニツケル、コバルトの金属元素を含む合金粉末で、ニツケルの重量割合が2重量%以上で、ニツケルに対するコバルトの重量割合が110重量%以上の範囲にあるように組成を調整すると、60℃で湿度90%の環境に7日間放置したときでも飽和磁化(σs)の減少率が30%以下となるので好ましい。また、異方性磁界分布の半値幅を保磁力で割つた商の値が3.2以上であることが消去特性の保持のために望ましい。
【0022】
本発明において、必要により用いることのできるモ―ス硬度5以上の無機粉末としては、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物などが挙げられる。これらの中でも、α−Fe2 O3 ▲6▼、Al2 O3 ▲9▼、Cr2 O3 ▲9▼、SiO2 ▲6▼、TiO2 ▲6▼、ZrO2 ▲6▼、SiC▲9▼、TiC▲9▼、hBN▲9▼、SiN4 ▲9▼(たとえば、▲6▼はモ―ス硬度6であることを示す)などが好ましいものとして使用できる。これらの無機粉末については、種々の粒径のものが容易に入手できるので、本発明の上記の知見に沿つて適宜選択することができる。
【0023】
本発明においてとくにバツクコ―ト層に用いられるカ―ボンブラツクとしては、チヤンネルブラツク、フア―ネスブラツク、アセチレンブラツク、サ―マルブラツクのいずれでも利用できるが、アセチレンブラツクがとくに好ましい。また、特開昭61−22424号公報に開示されているような表面がグラフアイト層で包まれたグラフアイト化カ―ボンブラツクを使用することもできる。
【0024】
カ―ボンブラツクの市販品には、米国キヤボツト社製のものとして、粒径18mμのブラツクパ―ル700、粒径20mμのモ―ガルL、粒径27mμのELFTEXpellets−115、同リ―ガル3001、粒径30mμのバルカンXC−72、粒径75mμのスタ―リングNS、同スタ―リングRなど、コロンビアンカ―ボン社製のものとして、粒径13mμのラ―ベン8000、粒径20mμのラ―ベン5250、粒径30mμのラ―ベン890、粒径62mμのラ―ベン450、粒径70mμのラ―ベン410、粒径280mμ(0.28μm)のラ―ベンMT−Pビ―ズ、粒径300mμ(0.30μm)のラ―ベンセバカルブMT−CIなどが、好適なものとして用いられる。
【0025】
また同様に、旭カ―ボン社製のものとして、粒径75mμのHS−500、粒径35mμの#60H、東海カ―ボン社製のものとして、粒径20mμのシ−スト5H、オランダ国アクゾ社製のものとして、粒径30mμのケツチエンブラツクEC、三菱化成社製のものとして、粒径20mμの#4040、粒径23mμの#4330BS、粒径45mμの#4350BS、粒径80mμの#4010などが、好適なものとして用いられる。
【0026】
このように、カ―ボンブラツクは種々の粒径のものが容易に入手できるので、本発明の上記の知見に沿つて、金属磁性粉末の長軸径との兼ね合いで、設計上適宜選択することができるが、粒径が比較的小さな場合には、そのカ―ボンブラツク自身のストラクチヤ―形成能力を利用して、数個の一次粒子が纏まつた凝集体を形成させることが望ましい。この場合には纏まつた凝集体があたかも一個のカ―ボンブラツク粒子の如く機能するからである。
【0027】
これらのカ―ボンブラツクと必要により無機粉末について、前記粒径の関係を満たすように、バツクコ―ト層形成用の塗料中に混入すればよい。また、必要により、磁性塗膜形成用の塗料中に混入することもできる。
【0028】
磁性塗膜およびバツクコ―ト層に用いられるバインダ樹脂としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコ―ル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体などの塩化ビニル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フエノキシ樹脂、ポリビニルブチラ―ル樹脂、セルロ―ス誘導体、エポキシ樹脂またはこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
また、これらの樹脂に、水酸基や、カルボン酸、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、アミン、アンモニウム塩などの親水性極性基を導入して塗膜構成材料としての粉末粒子の分散性を改善したり、アクリル系の二重結合を導入して電子線の照射によつて硬化するようにしてもよい。とくに、磁性塗膜のバインダ樹脂には、前記した塩化ビニル系樹脂に上記のような親水性極性基を導入してなる親水性極性基含有塩化ビニル系樹脂を含むものが好ましく用いられる。
【0030】
これら塗膜などを形成するための塗料の調製に用いられる溶媒としては、エタノ―ル、プロパノ―ル、ブタノ―ルなどのアルコ―ル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエ―テル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、メチレンクロライド、エチレンクロライド、クロロホルムなどの塩素化炭化水素などが挙げられるが、シクロヘキサノン−トルエンの混合系溶媒が望ましい。
【0031】
上記の磁性塗膜には、他に添加剤として、飽和または不飽和の高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級アルコ―ル、シリコ―ンオイル、鉱物油、食用油、フツソオイルなどの潤滑剤が使用できる。
【0032】
このような組成は、所定量をボ―ルミルやサンドミルにて分散し、磁性塗料およびバツクコ―ト層用塗料とし、前記の支持体上に塗布することによつて達成される。塗料の分散に際して、最も注意すべきことの一つは、無機粉末やカ―ボンブラツクの粒子に余分の力を掛けて、設計通りに配合されたカ―ボンブラツクの粒径に変化を与えないように配慮することである。
【0033】
塗布に際しては、磁性塗膜を先に塗布し乾燥前に磁場配向を行い、塗膜の表面平滑化処理を行つて一旦巻き取つてから、裏面にバツクコ―ト層を塗布するのが望ましい。この工程の順序については、特公昭58−23647号公報に詳述されている。磁性塗膜およびバツクコ―ト層は、単独でも複数層塗布してもよく、同時に塗布することも差し支えない。
【0034】
塗布が完了した磁気記録媒体は、スリツト装置によつて所定のテ―プ幅に裁断され、通常バツクコ―ト層を内側にして個別のバブに巻かれて、テ―プカセツト本体に収容される。巻芯となるハブには半径方向の強い巻き締め力が印加されるから、テ―プにカ―ルを生じさせないようにするため、そのテ―プ巻き周面のひけを5μm以内に管理することが望ましい。
【0035】
支持体、磁性塗膜、バツクコ―ト層の合計厚みとしては、好ましくは14μm以下となるようにされているのがよい。この場合、長手方向の弾性率が幅方向の弾性率よりも大きく、かつ幅方向の弾性率の2倍を超えないことが望ましい。また、長手方向の弾性率が1,000Kg/mm2 以上であることが望ましい。磁性塗膜は、また、直径6mmの鋼球を5グラムの荷重で押し付けて23メ―トルに渡つて走行させたときにも鋼球の摩耗による体積減少量が20×10−5mm3 以下となるように規制することが好ましい。
【0036】
長手方向の弾性率を幅方向の弾性率よりも大きくすること、および幅方向の弾性率の2倍を超えないようにすることは、適当な支持体選択、磁性粒子の磁場配向による機械的な制御により達成することができる。また、長手方向の弾性率を1,000Kg/mm2 以上とすることは、各塗布膜の結合剤樹脂の硬化条件を適切に選択することにより達成することができる。さらに、磁性塗膜の摩耗による体積減少量を20×10−5mm3 以下となるように規制するには、モ―ス硬度5以上の無機粉末を適当量含ませること、表面平滑化処理の条件の選択、乾燥条件の選択などにより達成することができる。
【0037】
このような磁気記録テ−プは、バツクコ―ト層側がテ―プカセツト本体のテ―プガイド部材と接することから、ノイズの低減のためには、テ―プカセツト本体や少なくともテ―プガイドの部分は、ABS樹脂を用いるのが好ましく、また、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどのモ−ス硬度2〜4の顔料を含ませて、バツクコ―トの損傷を防ぐことが望ましい。
【0038】
カセット本体には、さらに静電ノイズ低減のために、カ―ボンブラツクや、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの第四級アンモニウム塩などの帯電防止剤、エチレンビスステアロアミドなどの溶融樹脂流動剤を含ませるのが好ましい。このようなカセツト本体の製作は、通常これらの組成物を溶融し、射出成形により金型に鋳込むようにすればよい。
【0039】
以上のように、本発明の上記構成によれば、小型かつ高画質のビデオテ―プなどで要求される、中心記録波長が0.8μm以下程度の短波長記録において、高出力であり、かつ保存によつてノイズが上昇するという現象が可及的に抑制された磁気記録媒体を得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下に、本発明を、実施例および比較例を含むいくつかの実験により、さらに具体的に説明する。なお以下、部とあるのは重量部を意味する。
【0041】
実験1
(A)磁性塗膜の形成
保磁力1600Oe、飽和磁化量120emu/g、長軸径0.18μm、軸比10の、表面にアルミナがコ―トされた、鉄を主体としそれぞれ鉄に対し0.2重量%のマンガンおよび1.0重量%のカルシウムを含有する強磁性金属鉄粉末100部と、重合度340の水酸基含有塩化ビニル系樹脂10部と、熱可塑性ポリウレタン樹脂7部と、粒径0.2μmのアルミナ8部と、ミリスチン酸2部と、粒径0.8μmのベンガラ(α−Fe2 O3 )2部と、カ―ボンブラツクとして、粒径80mμの三菱化成社製の#4010を1部と、粒径20mμの東海カ―ボン社製のシ―スト5Hを2部との混合物を、それぞれ70部づつのシクロヘキサノンとトルエンとに配合した組成物を、ボ―ルミル中で96時間混練分散したのち、さらに三官能性ポリイソシアネ−ト化合物5部を加え、よく撹拌混合して、磁性塗料を調製した。
【0042】
この磁性塗料を、厚さが10μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレ―トフィルムからなる支持体上に、塗膜の厚さが2. 5μmとなるように塗布、乾燥し、カレンダ処理を行い、磁性塗膜を形成した。
【0043】
(B)バツクコ―ト層の形成
カ―ボンブラツクとして、粒径20mμの東海カ―ボン社製のシ―スト5Hを60部と、粒径280mμ(0.28μm)のコロンビアンカ―ボン社製のラ―ベンMT−Pビ―ズを7.5部と、粒径0.05μmの炭酸カルシウム30部と、粒径0.1μmのベンガラ2.5部と、熱可塑性ポリウレタン樹脂45部と、ニトロセルロ―ス40部と、三官能性イソシアネ―ト架橋剤15部とを、330部づつのシクロヘキサノンおよびトルエンに配合し、この組成物をボ―ルミル中で96時間混練分散して、バツクコ―ト層用塗料を調製した。
【0044】
このバツクコ―ト層用塗料を、前記の磁性塗膜を形成した支持体の背面に、厚さが1. 0μmとなるように塗布、乾燥して、バツクコ―ト層を形成したのち、60℃で20時間キユアした。このようにして得られた磁気記録媒体は、全厚が13.5μmであつた。これを、所定幅に裁断してテ―プとし、バツクコ―ト層を内側にして、テ―プ巻周面のひけが0.1μm以内に加工されたポリオキシメチレン樹脂の射出成形品からなるハブに巻いた。
【0045】
(C)カセツト本体の作製
電気化学工業社製のABS樹脂NA−1060を100部と、カ―ボンブラツクをフエロシアニンブル―で処理した着色剤23部、炭酸カルシウム(粒径0.5μm)35部、ポリオキシエチレンアルキルアミン12部およびエチレンビスステアロアミド3部を加え、ヘンシエルミキサ―により110℃で1分間混練し、220℃で二軸押出し機により押出し加工してペレツト化した。さらに、前記のABS樹脂1,500部とともに、加熱炉で240℃にして溶融し、金型温度30℃でカセツト本体を射出成形した。このカセツト本体内に、前記のハブ巻きテ―プを収容して、磁気記録媒体を組み立てた。
【0046】
実験2
実験1のバツクコ―ト層の形成において、カ―ボンブラツクとして、粒径280mμ(0.28μm)のコロンビアンカ―ボン社製のラ―ベンMT−Pビ−ズ7.5部に代えて、同量の粒径300mμ(0.30μm)のラ−ベンセバカルブMT−CIを使用した以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0047】
実験3
実験1のバツクコ―ト層の形成において、カ―ボンブラツクとして、粒径280mμ(0.28μm)のコロンビアンカ―ボン社製のラ―ベンMT−Pビ―ズ7.5部に代えて、同量の粒径80mμの三菱化成社製の#4010を使用し、さらにバツクコ―ト層用塗料の調製に際し、組成物をボ―ルミル中で96時間混練分散する代わりに、ボ―ルミル中で22時間混練分散した以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。ボ―ルミル中で22時間混練分散した時点で、塗料を観察したところ、カ―ボンブラツク粒子は平均13個づつストラクチヤ―を形成し、凝集体の径は210mμであつた。
【0048】
実験4
実験1のバツクコ―ト層の形成において、カ―ボンブラツクとして、粒径280mμ(0.28μm)のコロンビアンカ―ボン社製のラ―ベンMT−Pビ―ズ7.5部に代えて、同量の粒径80mμの三菱化成社製の#4010を用いた以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。ボ―ルミル中で96時間混練分散した時点で、塗料を観察したところ、カ―ボンブラツク粒子はほとんどストラクチヤ―を形成しておらず、一次粒子の径は80mμであつた。
【0049】
実験5
実験1のバツクコ―ト層の形成において、粒径0.1μmのベンガラ2.5部に代えて、同量の粒径0.8μmのベンガラを使用した以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0050】
実験6
実験1の磁性塗膜の形成において、強磁性金属鉄粉末の代わりに、同量の保磁力1600Oe、飽和磁化量120emu/g、長軸径0.35μm、軸比10の強磁性金属粉末を使用し、また、実験1のバツクコ―ト層の形成において、粒径0.1μmのベンガラ2.5部に代えて、同量の粒径0.8μmのベンガラを用いた以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0051】
実験7
実験1のバツクコ―ト層の形成において、粒径0.1μmのベンガラ2.5部に代えて、同量の粒径0.8μmのベンガラを用い、かつカ―ボンブラツクとして、粒径280mμ(0.28μm)のコロンビアンカ―ボン社製のラ―ベンMT−Pビ―ズ7.5部に代えて、同量の粒径80mμの三菱化成社製の#4010を用いた以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0052】
実験8
実験1において、バツクコ―ト層の形成後、所定幅に裁断したテ―プを、バツクコ―ト層を内側にして、ハブに巻くにあたり、このハブとして、テ―プ巻周面のひけが13μmであるポリオキシメチレン樹脂の射出成形品(成形後の加工がなされておらず、ひけが管理されていない)からなるものを用いた以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0053】
つぎに、上記の実験1の磁気記録媒体について、その弾性率を測定した。この結果は、長手方向の弾性率が1,100Kg/mm2 で、幅方向の弾性率が700Kg/mm2 であつた。また、磁性塗膜に対して、直径6mmの鋼球を5グラムの荷重で押しつけて23メ―トルに渡つて走行させたときにも、鋼球の摩耗による体積減少量は、15×10−5mm3 であつた。
【0054】
また、上記の実験1〜8の各磁気記録媒体について、磁性塗膜およびバツクコ―ト層の表面平滑性を、触針式表面粗さ計により、触針のR=2μm、カツトオフ0. 08mmの条件で測定して、中心線平均粗さで表した。また、印加磁場10KOe測定条件下での角型比と磁性塗膜の保磁力を測定した。さらに、7MHzの信号を入力し、再生したときの6MHzでのノイズレベルについて、ハブ巻き直後と60日保存後とでそれぞれ測定し、保存前後のノイズレベルの変化を実験1のハブ巻き直後のノイズレベルを標準0dBとして、dB単位でノイズ比として表した。結果は、下記の表1に示されるとおりであつた。
【0055】
【0056】
なお、上記の実験では、磁性塗膜中にモ―ス硬度5以上の無機粉末としてアルミナやベンガラを含ませているが、これらの無機粉末を含ませないで上記同様の実験を行つたときでも、傾向的に、上記同様の結果が得られることがわかつた。この結果からも明らかなように、本発明の構成を採用した磁気記録媒体は、60日保存後でもノイズの上昇が抑えられていた。これに対して、本発明の構成を採用しない磁気記録媒体は、保存後にノイズが上昇した。
【0057】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、前記特定の構成を採用したことにより、長期間の保存によつてもノイズが上昇することがない、短波長記録に適した磁気記録媒体を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型かつ高画質のビデオテ―プなどで要求される高密度記録・高出力でノイズの十分に低減された磁気記録媒体に関する。
とくに、磁気テ―プなど磁性塗膜とバツクコ―ト層を有して、支持体、磁性塗膜、バツクコ―ト層の合計全体の厚みが14μm以下のテ―プ状のものを巻回するタイプの磁気記録媒体において、長年の保存によつてもノイズが上昇することのないように信頼性を確保することを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
磁気記録媒体は、一般に、ポリエステルフイルムなどの支持体上に、磁性粉末、結合剤、無機粉末、潤滑剤などを有機溶媒中に混練分散してなる磁性塗料を塗布、乾燥した磁性塗膜を形成して、成り立つている。とくに、ビデオテ―プなどでは、走行性の改善のために、支持体の背面に結合剤、無機粉末、潤滑剤などを含む塗膜によるバツクコ―ト層を形成している。
【0003】
磁気ヘツドやガイドロ―ラ―と接触するときに摩耗が生じないようにするために、磁性塗膜にもバツクコ―ト層にも、モ―ス硬度5以上の無機粉末を含ませることが提案されている。バツクコ―ト層については、特開昭62−112号、同62−38525号、同62−38526号、同62−38527号、同62−38528号などの各公報に、磁性塗膜については、特公昭47−18572号、同48−15003号、同49−39402号、同52−28642号、同52−49961号、同55−15771号などの各公報に開示されている。
【0004】
ところで、高密度記録を達成するには、記録波長を短くすることが必要で、このため記録波長よりも短い微細な磁性粉末が用いられている。また、高い出力を得るために、磁気特性を上昇させる種々の提案がなされており、たとえば、特公昭61−37761号公報などに代表されるように、磁気特性を向上させるために飽和磁化の高い強磁性金属粉末を用い、高出力を達成するようにしている。また、ノイズ低減のために、ス―パ―カレンダ―処理により磁性塗膜の表面仕上げ処理をして塗膜表面を平滑にしてノイズを低減することが、特公昭52−17404号、同60−12688号などの各公報に提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、強磁性金属粉末を磁気記録素子として使用し、表面仕上げ処理を経て得られた磁気記録媒体は、当初はノイズも低いが、保存後にはノイズが上昇してしまうという問題があつた。この問題は、磁性粉末の粒子径が小さいときでしかも酸化鉄系磁性粉末よりも軟らかい金属磁性粉末を用いた場合に顕著であり、およそ0.8μm以下の記録波長に対応する周波数の信号に対するノイズが保存後に上昇するということが明らかとなつた。
【0006】
このような問題は、種々の試作品についてほぼ満遍なく起つたのであるが、ただバツクコ―ト層を設けずに作製した磁気記録媒体においてのみ、保存後も当初の低減されたノイズを維持したのである。したがつて、このような問題はバツクコ―ト層に原因があると考え、種々検討したところ、磁気テ―プを巻いたときにバツクコ―ト層の表面の凹凸が磁性塗膜の表面に転写し、これによつて磁性塗膜の表面にできる凹凸がノイズの原因であると考えられた。
【0007】
このようなノイズの上昇は、とくに、支持体、磁性塗膜、バツクコ―ト層の合計全体の厚みが14μm以下のテ―プ状のものを巻回するタイプの磁気記録媒体で著しいことが認められた。これは、全厚20μm程度の厚手のものに比べて、単位巻き径に対する巻き回数が多く、とくにハブの最内側に近接したところでの巻き締まりが著しいことも原因の一つとして考えられる。
【0008】
この問題に類似の現象としては、既に、特開昭60−32122号公報にも指摘されており、バツクコ―ト層中のモ―ス硬度5以上の無機粉末の粒径が0.2μmを超えずかつこれより多い量の軟質無機粉末とを組み合せて用いることにより、テ―プガイドなどの傷つきを防止することが述べられている。特開昭63−255584号公報においても、バツクコ―ト層表面の凹凸が磁性塗膜へ移り磁気記録媒体のS/NやC/Nを低下させる現象についての認識がされており、塗膜に残存する溶剤量が関係すると指摘されている。
【0009】
しかしながら、これらの文献に開示する技術は、磁性粉末としていわゆるCo含有酸化鉄磁性粉末を用いたものに関し、支持体、磁性塗膜、バツクコ―ト層の合計全体の厚みが20μm程度のVHS方式の磁気記録媒体について述べられたものであり、このようなVHS方式では白色レベルの最短記録波長が1.3μmであるにすぎない。すなわち、これらの文献は、強磁性金属粉末を磁気記録素子として使用し中心記録波長が0.8μm以下の磁気記録媒体におけるノイズの低減についてなんらの示唆も与えるものではなかつた。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、まず、第一に、磁性塗膜やバツクコ―ト層の傷つき易さは、塗膜に含まれる粉末の硬さだけでなく、その粒径に依存し粒径が一定以上に小さいと塗膜の補強効果が低下するという事実を見い出し、この事実に鑑みて、磁気記録テ―プを巻いたときにバツクコ―ト層に含まれるモ―ス硬度5以上の無機粉末が、磁性塗膜の表面を傷つけることがないようにするために、このようなバツクコ―ト層の無機粉末を、金属磁性粉末の長軸径よりも小さくしなければならないことを見い出した。
【0011】
また、第二に、バツクコ―ト層には走行性の改善のため、カ―ボンブラツクを含ませる必要がある。このこと自体は、10〜30mμの微粒子のカ―ボンブラツクと200〜500mμの粗粒子のカ―ボンブラツクと0.2μm以下の非磁性粉末とを含ませて、ドロツプアウトの増加を抑え、走行耐久性を良好にするという特開昭62−8328号公報などで既に述べられている。しかし、この文献では、カ―ボンブラツクの一次粒子の粒径や凝集体の径と、磁性塗膜中の強磁性金属粉末の長軸径との関係については、言及しておらず、また、粒子径が小さい強磁性金属粉末を用いた場合の0.8μm以下の記録波長に対応する周波数の信号に対するノイズとの関係についての検討もなされていない。
【0012】
本発明者らは、バツクコ―ト層のカ―ボンブラツクの一次粒子の粒径や凝集体の径と、磁性塗膜中の強磁性金属粉末の長軸径との関係について検討した結果、カ―ボンブラツクの一次粒子の粒径や凝集体の径が磁性粉末よりも大きい場合、結果として高出力低ノイズの要求に十分に応えれるものであることがわかつた。これは、高記録密度の要請、とくに磁性塗膜の薄膜化に対応した約3.0μm以下の厚さの磁性塗膜を持つ磁気記録媒体において、顕著に現れる。
【0013】
また、本発明者らは、支持体の両面にそれぞれ磁性塗膜とバツクコ―ト層を設けて、高い出力を発揮させ、しかも中心記録波長0.8μm以下の高密度記録において、長期間の保存にもかかわらず、ノイズの上昇を可及的に抑制し得る磁気記録媒体を得るには、磁性塗膜に印加磁場10KOe測定条件下で0.85以上の角型比をもたせるのが好ましいこと、磁性塗膜の保磁力を1,500Oe以上とするのが好ましいこと、磁性塗膜の表面平滑性を中心線平均粗さで0.004μm以下に規制するのが好ましいこと、さらにバツクコ―ト層の表面平滑性も中心線平均粗さで0.01μm以下とし、また金属磁性粉末の長軸径よりも小さく規制するのが好ましいことがわかつた。
【0014】
また、カ―ボンブラツクなどは一般に軟質であつて、バツクコ―ト層中に含ませたものがテ―プの巻回によつて磁性塗膜の表面を傷つけることは、従来予想もしなかつたことである。ところが、中心記録波長0.8μm以下程度の高密度記録を達成するために、磁性粉末の長軸径を0.2μm以下と小さくし、かつ金属の磁性粉末を主体的に含む磁性塗膜では、塗膜の補強効果が十分とはいえないうえに、高密度記録が要請する薄手テ―プの多数回巻きという過酷条件下で強い巻き締め力が掛けられることもあつて、カ―ボンブラツクといえども粒径の小さなものは磁性塗膜の表面を傷つける場合があることを知つた。
【0015】
また、この場合、バツクコ―ト層中に、一次粒子または凝集体として、金属磁性粉末の長軸径よりも大きい径のカ―ボンブラツクを含ませると、小粒径のものはその間隙に入り込み、バツクコ―ト層の表面に突出しないために、好ましいこと、またバツクコ―ト層中に含ませるモ―ス硬度5以上の無機粉末の粒径を、金属磁性粉末の長軸径よりも小さくするのが好ましいこと、さらには、このように構成した磁気テ―プを、ポリオキシメチレン樹脂などのハブの周囲にバツクコ―ト層を内側にして巻いた場合に、ABS樹脂とモ―ス硬度2〜4の顔料を含むカセツト本体に収容するのが好ましいことなども、判明した。
【0016】
本発明は、以上の知見に基づき、さらに検討を加え、なされたものである。
すなわち、本発明は、支持体の一面に金属磁性粉末を含み、中心線平均粗さで0.004μm以下の表面平滑性を有する磁性塗膜を、他面に一次粒子もしくは凝集体のカ―ボンブラツクを含み、中心線平均粗さで0.01μm以下の表面平滑性を有するバツクコ―ト層を、それぞれ設けた、中心記録波長0.8μm以下の高密度記録に用いられるテ―プ状の磁気記録媒体であって、ハブにバックコート層を内側にして巻かれ、上記ハブのテープ巻き周面のひけが5μm以内に管理されていることを特徴とする磁気記録媒体(請求項1)を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明における支持体の素材としては、非磁性材料として、ポリエチレンテレフタレ―ト、ポリエチレン−2,6−ナフタレ―トなどのポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフイン類、セルロ―ストリアセテ―ト、セルロ―スダイアセテ―トなどのセルロ―ス誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂、ポリカ―ボネ―ト、ポリイミド、ポリアミドなどが挙げられる。これらの中でも、二軸配向型のポリエチレンテレフタレ―ト、ポリエチレン−2,6−ナフタレ―トなどのポリエステル類であつて、かつ長手方向の弾性率が700Kg/mm2 以上、幅方向の弾性率が400Kg/mm2 以上であり、また表面粗さが0.01μm以下であるものがとくに望ましい。
【0018】
このような支持体上に、有機溶媒に溶解したバインダ樹脂中に金属磁性粉末を含ませ、これをよく分散させた磁性塗料を塗布して、磁場配向処理を行ないつつ乾燥させて、磁性塗膜を形成する。
【0019】
磁性塗膜に用いられる金属磁性粉末としては、Fe 、Co 、Ni などの金属、Fe 、Co 、Ni 、Zn などを組み合せた合金、これら金属や合金の表面にFe 、Al 、Si などの酸化物の皮膜を形成した強磁性微粉末などが挙げられる。これらの金属磁性粉末の長軸径は、中心記録波長との関係上0.8μm以下であるのがよく、また分解能の観点から0.2μm以下であるのがよい。
【0020】
これらの中でも、鉄を主体としマンガンを鉄に対して0.1重量%以上含む金属磁性粉末の使用が望ましい。とくに、マンガンを鉄に対して0.1重量%以上含み、かつカルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属をマンガンに対して1〜50倍量含む金属磁性粉末が、比較的硬くて磁気特性および電磁変換特性にすぐれ、十分に硬いので、長軸径が0.2μm以下であるような補強効果のあまり期待できない磁性塗膜がバツクコ―ト層表面のモ―ス硬度5以上の無機粉末から損傷を受けることを防止する効果が高いので、好ましい。
【0021】
とくに、マンガンは酸化物や酸水酸化物として金属磁性粉末の表面に存在させると、均一かつ緻密な被膜が形成されるため、酸化マンガン、水酸化マンガンなどとして表面に存在させるのが好ましい。また、ニツケル、コバルトの金属元素を含む合金粉末で、ニツケルの重量割合が2重量%以上で、ニツケルに対するコバルトの重量割合が110重量%以上の範囲にあるように組成を調整すると、60℃で湿度90%の環境に7日間放置したときでも飽和磁化(σs)の減少率が30%以下となるので好ましい。また、異方性磁界分布の半値幅を保磁力で割つた商の値が3.2以上であることが消去特性の保持のために望ましい。
【0022】
本発明において、必要により用いることのできるモ―ス硬度5以上の無機粉末としては、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物などが挙げられる。これらの中でも、α−Fe2 O3 ▲6▼、Al2 O3 ▲9▼、Cr2 O3 ▲9▼、SiO2 ▲6▼、TiO2 ▲6▼、ZrO2 ▲6▼、SiC▲9▼、TiC▲9▼、hBN▲9▼、SiN4 ▲9▼(たとえば、▲6▼はモ―ス硬度6であることを示す)などが好ましいものとして使用できる。これらの無機粉末については、種々の粒径のものが容易に入手できるので、本発明の上記の知見に沿つて適宜選択することができる。
【0023】
本発明においてとくにバツクコ―ト層に用いられるカ―ボンブラツクとしては、チヤンネルブラツク、フア―ネスブラツク、アセチレンブラツク、サ―マルブラツクのいずれでも利用できるが、アセチレンブラツクがとくに好ましい。また、特開昭61−22424号公報に開示されているような表面がグラフアイト層で包まれたグラフアイト化カ―ボンブラツクを使用することもできる。
【0024】
カ―ボンブラツクの市販品には、米国キヤボツト社製のものとして、粒径18mμのブラツクパ―ル700、粒径20mμのモ―ガルL、粒径27mμのELFTEXpellets−115、同リ―ガル3001、粒径30mμのバルカンXC−72、粒径75mμのスタ―リングNS、同スタ―リングRなど、コロンビアンカ―ボン社製のものとして、粒径13mμのラ―ベン8000、粒径20mμのラ―ベン5250、粒径30mμのラ―ベン890、粒径62mμのラ―ベン450、粒径70mμのラ―ベン410、粒径280mμ(0.28μm)のラ―ベンMT−Pビ―ズ、粒径300mμ(0.30μm)のラ―ベンセバカルブMT−CIなどが、好適なものとして用いられる。
【0025】
また同様に、旭カ―ボン社製のものとして、粒径75mμのHS−500、粒径35mμの#60H、東海カ―ボン社製のものとして、粒径20mμのシ−スト5H、オランダ国アクゾ社製のものとして、粒径30mμのケツチエンブラツクEC、三菱化成社製のものとして、粒径20mμの#4040、粒径23mμの#4330BS、粒径45mμの#4350BS、粒径80mμの#4010などが、好適なものとして用いられる。
【0026】
このように、カ―ボンブラツクは種々の粒径のものが容易に入手できるので、本発明の上記の知見に沿つて、金属磁性粉末の長軸径との兼ね合いで、設計上適宜選択することができるが、粒径が比較的小さな場合には、そのカ―ボンブラツク自身のストラクチヤ―形成能力を利用して、数個の一次粒子が纏まつた凝集体を形成させることが望ましい。この場合には纏まつた凝集体があたかも一個のカ―ボンブラツク粒子の如く機能するからである。
【0027】
これらのカ―ボンブラツクと必要により無機粉末について、前記粒径の関係を満たすように、バツクコ―ト層形成用の塗料中に混入すればよい。また、必要により、磁性塗膜形成用の塗料中に混入することもできる。
【0028】
磁性塗膜およびバツクコ―ト層に用いられるバインダ樹脂としては、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコ―ル共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体などの塩化ビニル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フエノキシ樹脂、ポリビニルブチラ―ル樹脂、セルロ―ス誘導体、エポキシ樹脂またはこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
また、これらの樹脂に、水酸基や、カルボン酸、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、アミン、アンモニウム塩などの親水性極性基を導入して塗膜構成材料としての粉末粒子の分散性を改善したり、アクリル系の二重結合を導入して電子線の照射によつて硬化するようにしてもよい。とくに、磁性塗膜のバインダ樹脂には、前記した塩化ビニル系樹脂に上記のような親水性極性基を導入してなる親水性極性基含有塩化ビニル系樹脂を含むものが好ましく用いられる。
【0030】
これら塗膜などを形成するための塗料の調製に用いられる溶媒としては、エタノ―ル、プロパノ―ル、ブタノ―ルなどのアルコ―ル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエ―テル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、メチレンクロライド、エチレンクロライド、クロロホルムなどの塩素化炭化水素などが挙げられるが、シクロヘキサノン−トルエンの混合系溶媒が望ましい。
【0031】
上記の磁性塗膜には、他に添加剤として、飽和または不飽和の高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級アルコ―ル、シリコ―ンオイル、鉱物油、食用油、フツソオイルなどの潤滑剤が使用できる。
【0032】
このような組成は、所定量をボ―ルミルやサンドミルにて分散し、磁性塗料およびバツクコ―ト層用塗料とし、前記の支持体上に塗布することによつて達成される。塗料の分散に際して、最も注意すべきことの一つは、無機粉末やカ―ボンブラツクの粒子に余分の力を掛けて、設計通りに配合されたカ―ボンブラツクの粒径に変化を与えないように配慮することである。
【0033】
塗布に際しては、磁性塗膜を先に塗布し乾燥前に磁場配向を行い、塗膜の表面平滑化処理を行つて一旦巻き取つてから、裏面にバツクコ―ト層を塗布するのが望ましい。この工程の順序については、特公昭58−23647号公報に詳述されている。磁性塗膜およびバツクコ―ト層は、単独でも複数層塗布してもよく、同時に塗布することも差し支えない。
【0034】
塗布が完了した磁気記録媒体は、スリツト装置によつて所定のテ―プ幅に裁断され、通常バツクコ―ト層を内側にして個別のバブに巻かれて、テ―プカセツト本体に収容される。巻芯となるハブには半径方向の強い巻き締め力が印加されるから、テ―プにカ―ルを生じさせないようにするため、そのテ―プ巻き周面のひけを5μm以内に管理することが望ましい。
【0035】
支持体、磁性塗膜、バツクコ―ト層の合計厚みとしては、好ましくは14μm以下となるようにされているのがよい。この場合、長手方向の弾性率が幅方向の弾性率よりも大きく、かつ幅方向の弾性率の2倍を超えないことが望ましい。また、長手方向の弾性率が1,000Kg/mm2 以上であることが望ましい。磁性塗膜は、また、直径6mmの鋼球を5グラムの荷重で押し付けて23メ―トルに渡つて走行させたときにも鋼球の摩耗による体積減少量が20×10−5mm3 以下となるように規制することが好ましい。
【0036】
長手方向の弾性率を幅方向の弾性率よりも大きくすること、および幅方向の弾性率の2倍を超えないようにすることは、適当な支持体選択、磁性粒子の磁場配向による機械的な制御により達成することができる。また、長手方向の弾性率を1,000Kg/mm2 以上とすることは、各塗布膜の結合剤樹脂の硬化条件を適切に選択することにより達成することができる。さらに、磁性塗膜の摩耗による体積減少量を20×10−5mm3 以下となるように規制するには、モ―ス硬度5以上の無機粉末を適当量含ませること、表面平滑化処理の条件の選択、乾燥条件の選択などにより達成することができる。
【0037】
このような磁気記録テ−プは、バツクコ―ト層側がテ―プカセツト本体のテ―プガイド部材と接することから、ノイズの低減のためには、テ―プカセツト本体や少なくともテ―プガイドの部分は、ABS樹脂を用いるのが好ましく、また、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどのモ−ス硬度2〜4の顔料を含ませて、バツクコ―トの損傷を防ぐことが望ましい。
【0038】
カセット本体には、さらに静電ノイズ低減のために、カ―ボンブラツクや、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどの第四級アンモニウム塩などの帯電防止剤、エチレンビスステアロアミドなどの溶融樹脂流動剤を含ませるのが好ましい。このようなカセツト本体の製作は、通常これらの組成物を溶融し、射出成形により金型に鋳込むようにすればよい。
【0039】
以上のように、本発明の上記構成によれば、小型かつ高画質のビデオテ―プなどで要求される、中心記録波長が0.8μm以下程度の短波長記録において、高出力であり、かつ保存によつてノイズが上昇するという現象が可及的に抑制された磁気記録媒体を得ることができる。
【0040】
【実施例】
以下に、本発明を、実施例および比較例を含むいくつかの実験により、さらに具体的に説明する。なお以下、部とあるのは重量部を意味する。
【0041】
実験1
(A)磁性塗膜の形成
保磁力1600Oe、飽和磁化量120emu/g、長軸径0.18μm、軸比10の、表面にアルミナがコ―トされた、鉄を主体としそれぞれ鉄に対し0.2重量%のマンガンおよび1.0重量%のカルシウムを含有する強磁性金属鉄粉末100部と、重合度340の水酸基含有塩化ビニル系樹脂10部と、熱可塑性ポリウレタン樹脂7部と、粒径0.2μmのアルミナ8部と、ミリスチン酸2部と、粒径0.8μmのベンガラ(α−Fe2 O3 )2部と、カ―ボンブラツクとして、粒径80mμの三菱化成社製の#4010を1部と、粒径20mμの東海カ―ボン社製のシ―スト5Hを2部との混合物を、それぞれ70部づつのシクロヘキサノンとトルエンとに配合した組成物を、ボ―ルミル中で96時間混練分散したのち、さらに三官能性ポリイソシアネ−ト化合物5部を加え、よく撹拌混合して、磁性塗料を調製した。
【0042】
この磁性塗料を、厚さが10μmの二軸配向ポリエチレンテレフタレ―トフィルムからなる支持体上に、塗膜の厚さが2. 5μmとなるように塗布、乾燥し、カレンダ処理を行い、磁性塗膜を形成した。
【0043】
(B)バツクコ―ト層の形成
カ―ボンブラツクとして、粒径20mμの東海カ―ボン社製のシ―スト5Hを60部と、粒径280mμ(0.28μm)のコロンビアンカ―ボン社製のラ―ベンMT−Pビ―ズを7.5部と、粒径0.05μmの炭酸カルシウム30部と、粒径0.1μmのベンガラ2.5部と、熱可塑性ポリウレタン樹脂45部と、ニトロセルロ―ス40部と、三官能性イソシアネ―ト架橋剤15部とを、330部づつのシクロヘキサノンおよびトルエンに配合し、この組成物をボ―ルミル中で96時間混練分散して、バツクコ―ト層用塗料を調製した。
【0044】
このバツクコ―ト層用塗料を、前記の磁性塗膜を形成した支持体の背面に、厚さが1. 0μmとなるように塗布、乾燥して、バツクコ―ト層を形成したのち、60℃で20時間キユアした。このようにして得られた磁気記録媒体は、全厚が13.5μmであつた。これを、所定幅に裁断してテ―プとし、バツクコ―ト層を内側にして、テ―プ巻周面のひけが0.1μm以内に加工されたポリオキシメチレン樹脂の射出成形品からなるハブに巻いた。
【0045】
(C)カセツト本体の作製
電気化学工業社製のABS樹脂NA−1060を100部と、カ―ボンブラツクをフエロシアニンブル―で処理した着色剤23部、炭酸カルシウム(粒径0.5μm)35部、ポリオキシエチレンアルキルアミン12部およびエチレンビスステアロアミド3部を加え、ヘンシエルミキサ―により110℃で1分間混練し、220℃で二軸押出し機により押出し加工してペレツト化した。さらに、前記のABS樹脂1,500部とともに、加熱炉で240℃にして溶融し、金型温度30℃でカセツト本体を射出成形した。このカセツト本体内に、前記のハブ巻きテ―プを収容して、磁気記録媒体を組み立てた。
【0046】
実験2
実験1のバツクコ―ト層の形成において、カ―ボンブラツクとして、粒径280mμ(0.28μm)のコロンビアンカ―ボン社製のラ―ベンMT−Pビ−ズ7.5部に代えて、同量の粒径300mμ(0.30μm)のラ−ベンセバカルブMT−CIを使用した以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0047】
実験3
実験1のバツクコ―ト層の形成において、カ―ボンブラツクとして、粒径280mμ(0.28μm)のコロンビアンカ―ボン社製のラ―ベンMT−Pビ―ズ7.5部に代えて、同量の粒径80mμの三菱化成社製の#4010を使用し、さらにバツクコ―ト層用塗料の調製に際し、組成物をボ―ルミル中で96時間混練分散する代わりに、ボ―ルミル中で22時間混練分散した以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。ボ―ルミル中で22時間混練分散した時点で、塗料を観察したところ、カ―ボンブラツク粒子は平均13個づつストラクチヤ―を形成し、凝集体の径は210mμであつた。
【0048】
実験4
実験1のバツクコ―ト層の形成において、カ―ボンブラツクとして、粒径280mμ(0.28μm)のコロンビアンカ―ボン社製のラ―ベンMT−Pビ―ズ7.5部に代えて、同量の粒径80mμの三菱化成社製の#4010を用いた以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。ボ―ルミル中で96時間混練分散した時点で、塗料を観察したところ、カ―ボンブラツク粒子はほとんどストラクチヤ―を形成しておらず、一次粒子の径は80mμであつた。
【0049】
実験5
実験1のバツクコ―ト層の形成において、粒径0.1μmのベンガラ2.5部に代えて、同量の粒径0.8μmのベンガラを使用した以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0050】
実験6
実験1の磁性塗膜の形成において、強磁性金属鉄粉末の代わりに、同量の保磁力1600Oe、飽和磁化量120emu/g、長軸径0.35μm、軸比10の強磁性金属粉末を使用し、また、実験1のバツクコ―ト層の形成において、粒径0.1μmのベンガラ2.5部に代えて、同量の粒径0.8μmのベンガラを用いた以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0051】
実験7
実験1のバツクコ―ト層の形成において、粒径0.1μmのベンガラ2.5部に代えて、同量の粒径0.8μmのベンガラを用い、かつカ―ボンブラツクとして、粒径280mμ(0.28μm)のコロンビアンカ―ボン社製のラ―ベンMT−Pビ―ズ7.5部に代えて、同量の粒径80mμの三菱化成社製の#4010を用いた以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0052】
実験8
実験1において、バツクコ―ト層の形成後、所定幅に裁断したテ―プを、バツクコ―ト層を内側にして、ハブに巻くにあたり、このハブとして、テ―プ巻周面のひけが13μmであるポリオキシメチレン樹脂の射出成形品(成形後の加工がなされておらず、ひけが管理されていない)からなるものを用いた以外は、すべて実験1と同様にして、磁気記録媒体を作製した。
【0053】
つぎに、上記の実験1の磁気記録媒体について、その弾性率を測定した。この結果は、長手方向の弾性率が1,100Kg/mm2 で、幅方向の弾性率が700Kg/mm2 であつた。また、磁性塗膜に対して、直径6mmの鋼球を5グラムの荷重で押しつけて23メ―トルに渡つて走行させたときにも、鋼球の摩耗による体積減少量は、15×10−5mm3 であつた。
【0054】
また、上記の実験1〜8の各磁気記録媒体について、磁性塗膜およびバツクコ―ト層の表面平滑性を、触針式表面粗さ計により、触針のR=2μm、カツトオフ0. 08mmの条件で測定して、中心線平均粗さで表した。また、印加磁場10KOe測定条件下での角型比と磁性塗膜の保磁力を測定した。さらに、7MHzの信号を入力し、再生したときの6MHzでのノイズレベルについて、ハブ巻き直後と60日保存後とでそれぞれ測定し、保存前後のノイズレベルの変化を実験1のハブ巻き直後のノイズレベルを標準0dBとして、dB単位でノイズ比として表した。結果は、下記の表1に示されるとおりであつた。
【0055】
【0056】
なお、上記の実験では、磁性塗膜中にモ―ス硬度5以上の無機粉末としてアルミナやベンガラを含ませているが、これらの無機粉末を含ませないで上記同様の実験を行つたときでも、傾向的に、上記同様の結果が得られることがわかつた。この結果からも明らかなように、本発明の構成を採用した磁気記録媒体は、60日保存後でもノイズの上昇が抑えられていた。これに対して、本発明の構成を採用しない磁気記録媒体は、保存後にノイズが上昇した。
【0057】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、前記特定の構成を採用したことにより、長期間の保存によつてもノイズが上昇することがない、短波長記録に適した磁気記録媒体を提供することができる。
Claims (1)
- 支持体の一面に金属磁性粉末を含み、中心線平均粗さで0.004μm以下の表面平滑性を有する磁性塗膜を、他面に一次粒子もしくは凝集体のカ―ボンブラツクを含み、中心線平均粗さで0.01μm以下の表面平滑性を有するバツクコ―ト層を、それぞれ設けた、中心記録波長0.8μm以下の高密度記録に用いられるテ―プ状の磁気記録媒体であって、ハブにバックコート層を内側にして巻かれ、上記ハブのテープ巻き周面のひけが5μm以内に管理されていることを特徴とする磁気記録媒体。
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