JP3620790B2 - 車輪踏面の損傷状態検出方法および装置 - Google Patents

車輪踏面の損傷状態検出方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の振動や騒音の原因となる車輪踏面の損傷状態を精度よく検出することができる車輪踏面の損傷状態検出方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両の車輪踏面には、フラット、熱亀裂、剥離等のさまざまな損傷が発生する。フラットは、降雨等の影響により車輪とレールとの摩擦力が低下した状態で制動力が加えられたり、急ブレーキ等の過大な制動力が加えられることにより車輪がレール上を滑走し、踏面が局部的に摩耗して生じた平らな部分である。熱亀裂は車輪が制輪子との摩擦熱等によって塑性領域に及ぶ加熱冷却を繰り返すことにより、内部応力が集中して生じる亀裂である。剥離はフラットや熱亀裂などが進展し、相隣接する亀裂が重なってその表面層が剥離したものである。
【0003】
上記した車輪踏面の損傷は、安全、乗り心地、騒音、軌道保守等の様々な点で問題となるため、検車担当者は全車両の車輪踏面の損傷状況を把握し、車輪転削等の対策を講ずる必要がある。このため従来は、乗務員や社員の申告および日常検査(列車検査、月検査)での目視検査の結果を台帳に記入するなどして管理されていた。永年にわたり行なわれてきたこのような人の目や耳による検査は、それ自体は信頼性が高いものである。しかし人手に頼る方法は多くの手数を要するうえ、全車両の状況を全体的に把握することが困難であるという大きな問題があった。
【0004】
そこでこのような人手に頼った方法から脱却するために、レールや枕木等に振動加速度計を設置して車両走行時の振動を検出し、その加速度ピーク値の大小により損傷状態の程度を評価する試みが従来よりなされている。ところが、この加速度ピーク値検出法には次のような多くの実用上の問題が残されており、信頼性に乏しい面がある。
【0005】
第1に、レール、枕木、砕石等から構成される鉄道の軌道は3次、4次の共振系であり、車両通過時にはレールも複雑に振動している。このためレールの振動加速度を検出したとき、車輪踏面の損傷がレールと当たることにより発生する衝撃波形(概ね100Hz〜1kHz)にレールの共振波形(1kHz前後)が重畳された波形を検出することとなり、損傷の程度が加速度ピーク値にそのまま反映されない。例えば、図18の上段と下段は検出された加速度の波形を示すグラフであるが、実際の損傷の程度はほとんど同じであるにもかかわらず、加速度ピーク値が大きく異なっている。
【0006】
第2に、単一の損傷は小さい場合でも比較的大きな加速度ピーク値を示すことがある。一方、損傷が連続しているような場合には、加速度ピーク値にはそれに見合うだけの大きな値が出ることが少ないため、連続した損傷が評価されない。このように、加速度ピーク値は形状による影響が大きく、その大きさを正しく示しにくい。
【0007】
第3に、腹に響くような重い低音(低周波音)を発生する損傷は、高音を発生する損傷よりもその程度が大きい傾向があるにもかかわらず、加速度ピーク値としてはそれほど大きな値を示さないことが多い。すなわち加速度ピーク値には、損傷の程度が正しく反映されない。
【0008】
第4に、車輪踏面に凸傷があるとレールに直接衝撃を与えるので、損傷自体は小さいにもかかわらず、非常に大きい加速度ピーク値を示す傾向にある。
【0009】
第5に、損傷部の角が取れると加速度ピーク値は減少してしまう。
【0010】
第6に、ブレーキが制輪子を車輪踏面に接触させる形式であって、鋳鉄制輪子などの車輪踏面に対する攻撃性が高い制輪子を使用している場合には、合成制輪子などの車輪踏面に対する攻撃性が低い制輪子を使用している場合に比べて踏面の表面粗さが大きいために、損傷がないにもかかわらず走行音、振動ともに大きくなり、加速度ピーク値に現れる。例えば図19にその一例を示す。
【0011】
上記したように、従来知られていた加速度ピーク値による損傷状態検出方法は、車輪踏面の実際の損傷状態とは異なる要因に左右され易く、実用性に問題が多い。図20は出願人会社における時速75km前後で走行する列車の実測値を、横軸に損傷状態の程度を聴覚により判定した聴覚判定値を取り、縦軸に加速度ピーク値を取ったグラフとしてまとめたものである。なお聴覚判定値は永年の経験により実際の損傷状態とよく一致することが確認されている。このグラフの場合、加速度ピーク値と聴覚判定値との相関係数は0.69に過ぎない。特に、聴覚判定値が大きい領域ではそのばらつきが大きく、加速度ピーク値による損傷状態検出方法では、損傷を過大評価したり過小評価するばかりでなく、重大な損傷を見落とす可能性があることが分かる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、レールの共振、微細な凸傷、踏面の表面粗さ等の影響を排除し、さらに大きな損傷や連続した損傷を正しく評価しながら、車輪踏面の実際の損傷状況を人手に頼ることなく正確に検出することができる車輪踏面の損傷状態検出方法および装置を提供するためになされたものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた請求項1の発明は、鉄道の軌道またはその近傍に設置した検出装置により、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出して、レールと接触する車輪踏面の損傷状態を検出する方法であって、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正したうえ、補正された信号波形に基づいて車輪踏面の損傷状態を検出することを特徴とするものである。
【0014】
また同一の課題を解決するためになされた請求項2の発明は、鉄道の軌道またはその近傍に設置した検出装置により、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出して、レールと接触する車輪踏面の損傷状態を検出する方法であって、検出信号から車輪踏面の局所的な損傷の大きさまたは車輪一周分に相当する時間幅を観察時間とした実効値、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを算出し、その算出値に基づいて車輪踏面の損傷状態を検出することを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1と請求項2の発明を組み合わせたものであり、鉄道の軌道またはその近傍に設置した検出装置により、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出して、レールと接触する車輪踏面の損傷状態を検出する方法であって、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正したうえ、さらにその補正信号の実効値、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを算出し、その算出値に基づいて車輪踏面の損傷状態を検出することを特徴とするものである。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1の発明を実施する装置の発明であり、鉄道の軌道またはその近傍に設置され、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出する検出装置と、この検出装置から入力された検出信号を処理する処理装置とからなり、この処理装置が、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正する手段と、補正された信号波形に基づいて車輪踏面の損傷状態の程度を検出する手段とを含むことを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の発明は請求項2の発明を実施する装置の発明であり、鉄道の軌道またはその近傍に設置され、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出する検出装置と、この検出装置から入力された検出信号を処理する処理装置とからなり、この処理装置が、検出信号から車輪踏面の局所的な損傷の大きさまたは車輪一周分に相当する時間幅を観察時間とした実効値、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを算出する手段と、その算出値に基づいて車輪踏面の損傷状態の程度を検出する手段とを含むことを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の発明は請求項3の発明を実施する装置の発明であり、鉄道の軌道またはその近傍に設置され、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出する検出装置と、この検出装置から入力された検出信号を処理する処理装置とからなり、この処理装置が、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正する手段と、その補正信号の実効値、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを算出する手段と、その算出値に基づいて車輪踏面の損傷状態の程度を検出する手段とを含むことを特徴とするものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1において、1はレール、枕木等から構成される鉄道の軌道であり、2は軌道1またはその近傍に取りつけられた検出装置である。軌道1は営業運転用のものをそのまま用い、その上を鉄道車両がほぼ一定速度で走行する区間を選択することが好ましい。しかし検査用の特別な軌道1を用いてもよいことはいうまでもない。この実施形態では、検出装置2として片側レールにつき3個の加速度検出器をレールに固定してレールの振動を検出しているが、鉄道車両が軌道1を走行する際に発生する衝撃的な振動を検出することができるものであれば、下記のような各種の検出装置2を用いることができる。
【0020】
すなわち、振動の検出装置としては加速度検出器のほか、速度検出器、変位検出器等を用いることができる。加速度、速度、変位は微分または積分により相互に変換できるものであるから、検出手段としては実質的に等価なものである。
【0021】
このほか、軌道1またはその近傍には、車号検出器3や車輪検出器4が設置され、検出装置2により検出された信号波形がどの鉄道車両のどの車輪によるものかを特定できるようにしておく。なお、この実施形態では3個の検出装置2に対応させて4個の車輪検出器4が配置されており、車輪の移動につれて信号を取り出す検出装置2を順次切り替えるようになっている。
【0022】
検出装置2により検出された検出信号は、信号増幅回路5で増幅され、アナログフィルタ回路6でノイズを除去されたうえ、A/D変換回路7でディジタル信号に変換され、車輪抽出回路8へ入力される。一方、車輪検出器4からの信号もディジタル入力回路12を経由して入力される。車輪抽出回路8は、入力された検出信号を、各車輪ごとの検出信号に分離、合成する。
【0023】
この車輪抽出回路8から得られる加速度の振動波形は例えば図2に示す通りであり、従来の加速度ピーク値を用いた検出方法では、この波形をそのまま使用している。しかし本発明では、検出信号を周波数特性補正回路9において低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正することにより、前記した加速度ピーク値検出法の欠点を解消している。検出信号が加速度信号である場合、この周波数特性補正曲線は例えば図3に示すとおりである。
【0024】
この周波数特性補正曲線の特徴は、約1kHz以上の周波数をカットするのみならず、約1kHz以下の部分を100Hz前後の低域周波数に向けて次第に強調した点にある。換言すれば、高域周波数ほど信号を減衰させ、低域周波数に向かうほど信号を強調させてある。図3では概ね100Hz〜1kHzの周波数領域で周波数特性補正曲線はほぼ直線的になっているが、必ずしも直線である必要はなく適当な曲線としてもよい。
【0025】
このような周波数特性補正曲線を採用したことにより、車輪踏面の表面粗さに起因する高周波数領域(約1kHz以上)は減衰またはカットされ、また車輪踏面の損傷に起因する概ね100Hz〜1kHzの周波数領域は低域周波数に向かうほど強調される。このように低域周波数ほど強調する周波数特性補正曲線を使用した点に本発明の大きな特徴があり、大きな損傷や腹に響くような重い低音(低周波音)を発生する損傷は強調される。一方、高域周波数に向かうほど減衰されるので、小さな凸傷等による信号は減衰され、重畳されていたレールの共振(1kHz前後)による信号は大きく減衰またはカットされる。更に、車両の走行速度が遅くなると加速度などの検出信号は低周波数側に移行するとともに小さくなる傾向にあるが、このような低域周波数ほど強調する周波数特性補正曲線を使用することにより、走行速度の影響も緩和される。一方、車輪荷重のためにレールが弾性的に曲げ変形することにより発生する数10Hz以下の振動は、図4に示すような周波数特性補正曲線を用いてカットまたは減衰させてもよいが、検出信号が加速度信号である場合にはもともと低域周波数は減衰されているため、図3、図4の何れの周波数特性補正曲線を用いても実際上の問題はない。
【0026】
なお、検出信号が振動速度である場合には図5に示すような周波数特性補正曲線を用いることが好ましく、検出信号が振動変位である場合には図6に示すような周波数特性補正曲線を用いることが好ましい。前記したように加速度、速度、変位は相互に微分・積分により自由に変換でき、検出信号としては実質的に等価である。このため、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には、図5、図6のように加速度信号の場合の周波数特性補正曲線を速度信号あるいは変位信号用に数学的に変換した等価な周波数特性補正曲線を用いれば、検出信号が加速度信号である場合と同様に処理することができる。なお、図3〜図6の縦軸は、入出力振幅比を表している。本発明ではこれらの周波数特性補正曲線の形状が重要であり、縦軸の値を定数倍または定数分の1にしてもよいことはいうまでもない。
【0027】
このように図2に示した検出信号を周波数特性補正回路9において低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正すると、図7に示す補正された信号波形が得られる。図2の信号波形と図7の信号波形とを比較すると、高周波がカットされているのみならず、Aの記号をつけた部分に比較してB、Cの記号をつけた部分が減衰されている。
【0028】
これらのA、B、Cの信号波形の原因は、同一の車輪上の3箇所に存在する図8、図9、図10に示した損傷である。図示のように、図8に示す損傷が最大であり、図9、図10に示す損傷はそれに比べてかなり小さいが、図2に示した検出信号では損傷の大きさによる差異が明確ではない。これに比較して、図7に示す補正された信号波形ではAの信号波形が強調され、実際の損傷状態とよく一致することが分かる。
【0029】
このようにして、周波数特性補正回路9において補正された検出信号は図1に示す最大値またはピーク値検出回路10でピーク値を読み取り、車号検出器3からの車号信号と組み合わせて損傷状態のデータとして出力される。
【0030】
図11は出願人会社における実測値を、横軸に損傷状態の程度を聴覚判定した値を取り、縦軸に図3に示す周波数特性補正曲線を用いて補正された加速度ピーク値を取ったグラフとして示したものである。元となる実測値は前記した図20に示したものと同一である。このように本発明の方法により得られた補正された加速度ピーク値は、聴覚判定値との相関係数が従来の0.69から0.81まで大幅に上昇し、強い相関の領域に入ったことが分かる。
【0031】
以上に説明した請求項1、4の発明では、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正したうえ、補正された信号波形に基づいて車輪踏面の損傷状態を検出した。これに対し、請求項2、5の発明では図12に示すように、検出信号を例えば実効値算出回路11に入力し、信号波形の実効値を算出する。実効値は波形xの二乗平均の平方根を意味するが、特に観察時間をTとして数1で定義される実効値(rms値)を用いることが好ましい。これは衝撃振動瞬時値をある程度の時間幅を考慮して評価した値を意味する。
【0032】
【数1】
Figure 0003620790
【0033】
その結果、積分する時間幅に相当する車輪踏面の距離幅と比較し、局部的に生じている損傷は小さく評価され、連続的に生じている損傷は大きく評価される。損傷の大きさが積分する時間幅と一致したとき実効値は最大となる。本発明においては、観察時間Tは車輪踏面の局所的な損傷の大きさまたは車輪一周分に相当する時間幅とした。すなわち、観察時間Tを車輪踏面の局所的な損傷の大きさに対応するおよそ100〜300mmに相当する移動時間とした場合、連続的な損傷の周方向の長さを加味して評価することができ、実際の車輪の損傷状態を正確に示すことができる。一方、観察時間Tとして車輪一周分の移動時間を採用すれば、車輪踏面の全周における損傷の度合いを正確に把握することができる。観察時間Tを一定とする代わりに、移動距離を一定として算出した観察時間T´を用いてもよいことは言うまでもない。
【0034】
図13は図12の実効値算出回路11からの出力波形のグラフである。元の検出信号は図2に示したものである。図2ではA、B、Cの信号波形の差異はあまり明確ではなかったのに対し、図13ではA、B、Cの差が明確になり、前述した図8、9、10の損傷状態を正確に反映した内容となっている。なお検出信号の実効値のほか、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを用いてもほぼ同様の結果を得ることができる。
【0035】
図14は図12の最大値またはピーク値検出回路10で処理された値と聴覚判定値との関係を示すグラフである。このグラフにおける相関係数は、0.81であり、強い相関を示すことが分かる。すなわち、加速度実効値を用いて損傷状態の検出を行えば、加速度ピーク値を用いて検出する方法に比べ正確な検出が可能である。
【0036】
請求項3、6の発明は上記した発明を組み合わせたもので、図15に示すように、検出信号を周波数特性補正回路9において、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正したうえ、更に、例えば実効値算出回路11に入力して実効値を算出し、その出力波形に基づいて車輪踏面の損傷状態を検出するものである。なお検出信号の実効値のほか、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを用いてもほぼ同様の結果を得ることができる。
【0037】
図16は図15の実効値算出回路11からの出力波形を示すグラフである。A、B、Cの差異がより明確になっており、図8、図9、図10の損傷の程度とよく一致している。更に、図13と比較すると、損傷部分と損傷のない部分との差異もより明確となっている。また図17は図15の最大値またはピーク値検出回路10で処理された値と聴覚判定値との関係を示すグラフである。このグラフにおける相関係数は、0.86であり、図11や図14よりも更に強い相関を示している。特に、聴覚判定値が中程度より大きい範囲ではばらつきが著しく減少しており、損傷状態を精度よく検出することができることが分かる。
【0038】
なお、上記した実施形態においては処理装置を複数の回路の組み合わせとして説明したが、請求項4〜6の発明の処理装置はコンピュータ等を用いてソフトウェアにより構成してもよいことはいうまでもない。
【0039】
【発明の効果】
以上に説明した本発明の効果を要約すると下記の通りである。
まず請求項1、4の発明によれば、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正し、その算出値に基づいて車輪踏面の損傷状態を検出することにより、レールの共振や車輪踏面の表面粗さに起因する振動などの影響を減衰またはカットすることができる。また重い低音(低周波音)を発生する大きな損傷による信号は強調され、小さな損傷による信号は減衰されることにより、損傷の大きさに比例した正確な評価ができる。更に、車両の走行速度の影響も緩和される。このように、従来の加速度ピーク値検出法ではレールの共振や車輪踏面の損傷の形状による影響が大きかった点を改良し、車輪踏面の損傷の大きさを確実に捕捉でき、実際の損傷の大きさを人手に頼らずに正確に評価することが可能となる。
【0040】
また請求項2、5の発明によれば、検出信号から車輪踏面の局所的な損傷の大きさまたは車輪一周分に相当する時間幅を観察時間とした実効値、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを算出し、その算出値に基づいて車輪踏面の損傷状態を検出することにより、周方向の長さを加味して評価することができる。その結果、局部的に生じている小さい損傷は小さく評価され、連続的に生じている損傷や大きい損傷は大きく評価されるため、損傷の程度が確実に捕捉でき、実際の損傷の大きさを人手に頼らずに正確に評価することが可能になる。
【0041】
更に請求項3、6の発明は、上記した2つの発明の利点を兼ね備えたものとなり、実際の損傷状態を正確に検出することが可能となる。これらの発明によれば、検出装置を設置した軌道上を走行する全車両の全車輪の損傷状況を自動的に検出することが可能となり、鉄道車両の安全、乗り心地、騒音、軌道保守等の様々な点に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1、4の発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】検出信号の振動波形図である。
【図3】検出信号が振動加速度である場合の周波数特性補正曲線である。
【図4】検出信号が振動加速度である場合の周波数特性補正曲線の変形例である。
【図5】検出信号が振動速度である場合の周波数特性補正曲線である。
【図6】検出信号が振動変位である場合の周波数特性補正曲線である。
【図7】図3の周波数特性補正曲線を用いて補正された信号波形図である。
【図8】Aの信号波形の原因である車輪踏面の損傷を示す斜視図である。
【図9】Bの信号波形の原因である車輪踏面の損傷を示す斜視図である。
【図10】Cの信号波形の原因である車輪踏面の損傷を示す斜視図である。
【図11】図1の最大値またはピーク値検出回路で処理された値と聴覚判定値との関係を示すグラフである。
【図12】請求項2、5の発明の実施形態を示すブロック図である。
【図13】図12の実効値算出回路からの出力波形図である。
【図14】図12の最大値またはピーク値検出回路で処理された値と聴覚判定値との関係を示すグラフである。
【図15】請求項3、6の発明の実施形態を示すブロック図である。
【図16】図15の実効値算出回路からの出力波形図である。
【図17】図15の最大値またはピーク値検出回路で処理された値と聴覚判定値との関係を示すグラフである。
【図18】車輪踏面の損傷に起因する加速度波形図である。
【図19】車輪踏面の表面粗さに起因する加速度波形図である。
【図20】従来法による加速度ピーク値と聴覚判定値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 軌道
2 検出装置
3 車号検出器
4 車輪検出器
5 信号増幅回路
6 アナログフィルタ回路
7 A/D変換回路
8 車輪抽出回路
9 周波数特性補正回路
10 最大値またはピーク値検出回路
11 実効値算出回路
12 ディジタル入力回路

Claims (6)

  1. 鉄道の軌道またはその近傍に設置した検出装置により、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出して、レールと接触する車輪踏面の損傷状態を検出する方法であって、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正したうえ、補正された信号波形に基づいて車輪踏面の損傷状態を検出することを特徴とする車輪踏面の損傷状態検出方法。
  2. 鉄道の軌道またはその近傍に設置した検出装置により、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出して、レールと接触する車輪踏面の損傷状態を検出する方法であって、検出信号から車輪踏面の局所的な損傷の大きさまたは車輪一周分に相当する時間幅を観察時間とした実効値、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを算出し、その算出値に基づいて車輪踏面の損傷状態を検出することを特徴とする車輪踏面の損傷状態検出方法。
  3. 鉄道の軌道またはその近傍に設置した検出装置により、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出して、レールと接触する車輪踏面の損傷状態を検出する方法であって、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正したうえ、さらにその補正信号の実効値、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを算出し、その算出値に基づいて車輪踏面の損傷状態を検出することを特徴とする車輪踏面の損傷状態検出方法。
  4. 鉄道の軌道またはその近傍に設置され、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出する検出装置と、この検出装置から入力された検出信号を処理する処理装置とからなり、この処理装置が、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正する手段と、補正された信号波形に基づいて車輪踏面の損傷状態の程度を検出する手段とを含むことを特徴とする車輪踏面の損傷状態検出装置。
  5. 鉄道の軌道またはその近傍に設置され、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出する検出装置と、この検出装置から入力された検出信号を処理する処理装置とからなり、この処理装置が、検出信号から車輪踏面の局所的な損傷の大きさまたは車輪一周分に相当する時間幅を観察時間とした実効値、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを算出する手段と、その算出値に基づいて車輪踏面の損傷状態の程度を検出する手段とを含むことを特徴とする車輪踏面の損傷状態検出装置。
  6. 鉄道の軌道またはその近傍に設置され、鉄道車両が走行する際に車輪損傷により発生する衝撃的なレールの振動を検出する検出装置と、この検出装置から入力された検出信号を処理する処理装置とからなり、この処理装置が、検出信号が加速度信号である場合には低域周波数をより強調する周波数特性補正曲線を用いて補正し、検出信号が速度信号あるいは変位信号である場合には加速度信号の場合の周波数特性補正曲線と等価な周波数特性補正曲線を用いて補正する手段と、その補正信号の実効値、絶対値の平均値、二乗平均値の何れかを算出する手段と、その算出値に基づいて車輪踏面の損傷状態の程度を検出する手段とを含むことを特徴とする車輪踏面の損傷状態検出装置。
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