JP3616121B2 - X線管 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、X線CTスキャナ装置等に使用されるX線管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からX線CTスキャナ装置等には回転陽極X線管が使用されており、この回転陽極X線管は通常、発熱量が大きい。この様な回転陽極X線管の構造の一例を図4に示す。図4を参照するに、陽極シャフト9に支持された円板状ターゲット11を、真空状態にしたインサートチューブ1内で高速回転させ、カソード15から発射させた電子を円板状ターゲット11の傾斜面とした焦点13に衝突させ、焦点13から発射されるX線をインサートチューブ1の側面から外部に放射させるようにしている。
【0003】
図5は従来のX線管の取付状態を示す図である。図5を参照するに、回転陽極X線管は冷却用の絶縁油が充填されたハウジング容器31の中に収められており、回転陽極X線管はインサートチューブ1外に突き出ている陽極シャフト9の末端を固定部5として固定具39に取り付けて、固定具39をハウジング容器31中に固定するようにし、ハウジング容器31の下部に設けられた放射口41よりX線を放射するようにしていた。
【0004】
インサートチューブ1外の陽極シャフト9の側面部に位置する所に、ステータコイル33が設けられており、陽極シャフト9の一部をベアリング等で支えられた回転子構造にし、ステータコイル33で回転子を高速回転させるようにし、回転子に直結されている円板状ターゲット11を回転させていた。
【0005】
なお、ベローズ35がハウジング容器31の右側面に設けられているが、ハウジング容器31内に充填されている絶縁油の体積膨脹対策用の空間であり、側面に空気出入口の開口37を設けて、空間の大きさを変化させて内圧を調整するものである。
【0006】
円板状ターゲット11が表面に衝突する電子のエネルギにより徐徐に温度上昇する際に、熱伝導による熱拡散のため、時間の経過と共に円板状ターゲット11全体も温度上昇し、さらに陽極シャフト9をも温度上昇させる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の回転陽極X線管の取付方法は、陽極シャフト9の末端を固定部5として固定具39に取り付けるようにし、陽極シャフト9で支持された円板状ターゲット11の傾斜面(焦点13)に電子を衝突させて、インサートチューブ1の下部側面からX線を放射するようにしている。そのため、陽極シャフト9が温度上昇し熱膨張により長さが変化すると焦点13が移動し、X線が放射される方向が振れるようになり、検出側においてX線撮像装置等で、特に薄いスライス像を作るためのスリットを含む光学系に変化をもたらすようになる。これにより、同一X線測定条件下であっても得られるデータが変動し、得られる画像にアーチファクトを発生させるといった問題が生じ、この補正のためハード及びソフト面で複雑な補正手段を講じて補正を行わなければならなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、シャフトが温度上昇して熱膨張しても焦点が移動しないX線管及びその取付部材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本願発明のX線管は、封止される管内に収容され電子を射出するカソードと、このカソードと対向して配置される円盤状のターゲットと、このターゲットをその一方の側の端部で保持し、回転子を有するシャフトと、このシャフトの他方の側を保持する面と、ハウジング容器に固定する固定部を有し、前記シャフトがターゲットの方向へ熱膨張して伸長するとき、当該シャフトの伸長を前記保持する面と前記固定部との間の長さの熱による伸びで相殺して前記ターゲットの変位を相殺する取付部材とを有することを特徴とする。
【0010】
【作用】
本願発明のX線管は、電子を射出するカソードと対向して配置されるターゲットをシャフトの一方の側の端部で保持し、このシャフトがターゲットの方向へ熱膨張して伸長するとき、このシャフトの他方の側に設けられた取付部材が当該シャフトの伸長を相殺する方向に熱膨張してターゲットの変位を相殺するので、ターゲットの位置を常に同一に保つことが出来る。
【0012】
【実施例】
以下、本発明の一実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るCT用X線管の取付方式の一実施例を示す構造図であり、図中、図4で示したものと同一のものは同一の記号で示している。
【0013】
取付具3としては、例えば、一端を開口部17とし他端を終端面19とした円筒形状のものを用い、開口部17の大きさをインサートチューブ1の陽極シャフト9側を挿入できる大きさとし、終端面19でインサートチューブ1外の陽極シャフト9の固定部5を保持するようにしている。
【0014】
開口部17の外側には取付具3の固定部7を設けて、固定部7を他の装置、例えば図5に示すようなハウジング容器31の内部に固定して、CT用X線管を定置させるようにする。
【0015】
円板状ターゲット11からの熱は、熱伝導による熱拡散のため、時間の経過と共に陽極シャフト9及び取付具3に伝えられる。
従って、温度上昇による陽極シャフト9の長手方向の伸びは、温度上昇による取付具3の固定部7と終端面19間の長さの伸びで吸収して、ターゲット11をほぼ所定位置に定置させることが可能となり、ターゲット11に設けられた焦点13が移動しないように補正して、X線が放射される方向が振れないようにすることができる。
【0016】
図2(A)は、本実施例におけるCT用X線管の取付を示す図であり、(B)は材質選択の説明図である。
固体の線膨脹係数をαとし、0°Cにおける長さをL0とし、t°Cにおける長さをLtとすると、線膨脹係数αは次のように定義される。
【0017】
【数1】
α=(1/L0)・(dLt/dt) (1)
図2(A)において、陽極シャフト9の0°Cにおける長さをL1とし、取付具3の陽極シャフト9に沿った固定部7と終端面19間の0°Cにおける長さをL2とし、各々の材料の膨脹係数をαI及びα2すると、(1)式より、
【0018】
【数2】
dL1=αI・L1・dt (2)
dL2=α2・L2・dt (3)
図2(B)は材質選択の説明図であり、各材料の線膨脹係数を示している。
【0019】
例えば、陽極シャフト9の材質を線膨脹係数5.1×(10の−6乗)のニッケル鋼とし、取付具3の材質を線膨脹係数27.5×(10の−6乗)のジュラルミンとし、陽極シャフト9の方が発熱体に近いため、陽極シャフト9と取付具3の温度勾配を2:1とし、陽極シャフト9の0°Cにおける長さを100mmとしたとする。
【0020】
温度上昇による陽極シャフト9の長手方向の伸びを取付具3の伸びで吸収するためには、(2)式=(3)式の関係が成り立つ必要があり、従って、(2)及び(3)式に上記値を代入し演算すると、
L2=(5.1/27.5)・100・2
であり、これからL2はおおよそ37mmであることが算出される。
【0021】
従って、取付具3の陽極シャフト9に沿った固定部7と終端面19間の0°Cにおける長さを37mmとすれば、温度上昇による陽極シャフト9の長手方向の伸びを、温度上昇による取付具3の固定部7と終端面19間の長さの伸びで吸収することができる。
【0022】
従って、ターゲット11をほぼ所定位置に定置させることが可能となり、ターゲット11に設けられた焦点13が移動しないように補正して、X線が放射される方向が振れないようにすることができる。
【0023】
図5に示すステータコイル33は、取付具3の固定部7よりインサートチューブ1の中央側に配置するようにして、陽極シャフト9の一部に構成した回転子を回転させる。
【0024】
なお、取付具3を陽極シャフト9の温度変化量に近づけるため、取付具3を取付具3の外周部から断熱する断熱措置を施すようにしても良い。
図3は、本発明に係るCT用X線管の他の実施例を示す構造図であり、図中、図1で示したものと同一のものは同一の記号で示している。
【0025】
図1の実施例との相違は、円筒形状の直径を大きくした取付具21を用いるようにした点である。
図1の実施例と同様に、取付具21は、一端を開口部27とし他端を終端面25とした円筒形状のものを用い、開口部27の大きさをインサートチューブ1の円板状ターゲット11の取付部の最大直径とほぼ等しくし、終端面25でインサートチューブ1外の陽極シャフト9の固定部5を保持するようにし、開口部27の外側には取付具21の固定部23を設けて、固定部23を他の装置、例えば図5に示すようなハウジング容器31の内部に固定して、CT用X線管を定置させるようにする。
【0026】
このように構成すれば、取付具21は発熱部である円板状ターゲット11、あるいは陽極シャフト9の輻射熱を受け、この熱を利用して取付具21の陽極シャフト9に沿った固定部23及び終端面25間の長さの伸びで、焦点13の位置が移動しないように補正して、X線が放射される方向が振れないようにすることができる。
【0027】
図5に示すステータコイル33は、取付具21の円筒形状の中に収めるようにして、陽極シャフト9の一部に構成した回転子を回転させる。
なお、上記実施例では取付具3及び21の形状を円筒形状として示しているが、円筒形状に限定されるものではなく、断面形状が略コ字状に形成されたものを使用すれば方形でも楕円形でも良く、さらには筒状に限定されるものでも無い。
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、温度上昇による陽極シャフト9の長手方向の伸びと、温度上昇による取付具3、あるいは取付具21の固定部と保持部間の長さの伸びとが、ほぼ同じとなるように使用する材料を選択することにより、陽極シャフト9が温度上昇しても、ターゲット11をほぼ所定位置に定置させることが可能となり、ターゲット11に設けられた焦点13が移動しないように補正して、X線が放射される方向が振れないようにすることができる。
【0029】
従って、焦点13の熱による移動を自動的に取付具3、あるいは取付具21で補正できるようになり、従来行われてきたシステムとしての複雑な補正や、補正のため大量のデータを用意するといったことは不必要となるためコストを低減させ、また補正のための処理が不要となるため処理速度を向上させ、補正のための補正データの更新等の定期的保守が不要になるといった効果がある。
【0030】
尚、本実施例では取付具の伸長方向が陽極シャフトの伸長方向と同一軸上で反対方向の場合について説明したが、これに限定されること無く、例えば陽極シャフトの軸に平行な軸上で合っても良い。また、陽極シャフトの伸長量が相殺されれば良いことから、陽極シャフトの伸長方向とは所定の角度を有して取付具を配設するようにしても良い。この様にすることにより、陽極シャフトの材質と取付具の材質の差異によって生じる熱膨張の温度勾配の差を前記所定の角度の調整によって解消することが可能となる。具体的には取付具の形状を円錐台状にしても良く、この場合、ターゲットの焦点面の幅内で行われることが好ましい。従って、ターゲットの焦点面の幅を拡げてもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、温度上昇によるシャフトの伸びを取付部材の熱膨張により相殺することができるため焦点の移動を防止することが可能となる。又、焦点の移動を防止するための複雑な補正が不必要でありコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るX線管の一実施例を示す構造図である。
【図2】(A)は、本発明のX線管の取付方式の原理を示す原理図であり、(B)は材質選択の説明図である。
【図3】本発明に係るX線管の取付方式のその他の実施例を示す構造図である。
【図4】X線管の構造図である。
【図5】従来例のX線管の取付状態を示す構造図である。
【符号の説明】
1 インサートチューブ
3、21 取付具
5、7、23、 固定部
9 陽極シャフト
11 ターゲット
13 焦点
15 カソード
17、27 開口部
19、25 終端面
31 ハウジング容器
33 ステータコイル
35 ベローズ
37 開口
39 固定具
41 放射口
Claims (1)
- 封止される管内に収容され電子を射出するカソードと、
このカソードと対向して配置される円盤状のターゲットと、
このターゲットをその一方の側の端部で保持し、回転子を有するシャフトと、
このシャフトの他方の側を保持する面と、ハウジング容器に固定する固定部を有し、前記シャフトがターゲットの方向へ熱膨張して伸長するとき、当該シャフトの伸長を前記保持する面と前記固定部との間の長さの熱による伸びで相殺して前記ターゲットの変位を相殺する取付部材とを有することを特徴とするX線管。
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