JP3596558B2 - 高純度水素・酸素ガス発生装置 - Google Patents

高純度水素・酸素ガス発生装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、純水を直接電気分解することにより高純度の水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水素ガス・酸素ガス発生装置に関するものであり、特に半導体製造過程においてシリコン酸化膜や各種CVD膜、エピタキシャル成長膜などの薄膜、厚膜を生成させるための各種成膜工程、あるいは熱処理工程、さらには原子力発電装置の冷却水配管系の腐食防止や火力発電装置冷却用、また窯業やファインセラミック工業、そのほか各種工業において必要とされる高純度の水素ガスおよび酸素ガスを発生させるための装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来一般に水素ガスは、石油化学工業やソーダ工業で発生する副成ガスから精製して、ガス圧縮機によりガスボンベに高圧充填したり、冷却・液化したりして輸送や貯蔵を行ないやすい形態とし、半導体製造設備などに供給して使用するのが通常であった。しかしながら、水素ガスを高圧充填したガスボンベは、充填圧力そのものが危険であるばかりでなく、輸送時や貯蔵時に漏洩して引火、爆発する危険性がある。
【0003】
一方酸素ガスは、空気を冷却して深冷分離し、液体酸素として精製し、その液体酸素の状態のままで半導体製造工程等の消費場所に輸送し、そのまま液体状態で貯蔵して、使用時に気化してガス状態で使用したり、あるいはガスボンベに高圧充填された状態で輸送、貯蔵、消費したりするのが通常である。この場合酸素は、水素とは異なり、それ自体で燃焼、爆発するものではないが、強い支燃性があるため、鉄等の金属をも燃焼させ、また可燃物と混合されれば強力な爆発物となったりするため、輸送時や貯蔵、使用時に水素と同様な危険性がある。
【0004】
前述のような高圧充填した高圧水素ガスボンベや液体酸素、高圧酸素ガスボンベの輸送、貯蔵に関しては、最近では人口密集地を通ってこのような危険物を輸送したり人口密集地に貯蔵したりすることに対して住民の危険意識が強くなり、また実際に事故に対するリスクは極めて大きなものとなっており、また輸送コストも年々高くなっている。そこで輸送上の危険がなくかつ輸送コストも削減できるような、高純度水素ガスや高純度酸素ガスの安定供給設備を開発することが強く求められている。
【0005】
ところで、前述のような問題の解決策としては、水素ガスや酸素ガスを消費する工場内に、水の電気分解によって水素ガスおよび酸素ガスを発生させる水電解装置を設置することが従来から考えられており、また一部では実施されている。この場合、工場内で必要な時に必要な量だけ水素ガス、酸素ガスを発生させることができるため、貯蔵や輸送の必要がなく、したがってそれに伴なう危険性を回避することができる。
【0006】
しかしながら従来の一般的な水電解装置では、KOH等の電解質を純水に溶解させて電気抵抗を下げる必要があり、これらのKOH等の電解質が不純物として発生ガス中に混入するため、各種機器の腐食や製品劣化等の問題があり、したがって水の電気分解による水素・酸素ガス発生装置は余り普及していないのが実情であった。例えば半導体製造工業においては、アルカリ不純物が製品の素子の電気特性の劣化要因となっているから、KOH等のアルカリ電解質で汚染されたガスは半導体製造工業では不適当とされていた。
【0007】
ところで最近に至り、固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成した水電解膜によって水電解セル内を陽極室と陰極室とに仕切り、陽極室に外部から純水を導入して、純水を直接電気分解するようにした高純度水素・酸素ガス発生装置が開発されている。この種の固体高分子電解質膜を用いた装置では、KOH等のアルカリ電解質による汚染の問題を解消することは可能となった。しかしながら、固体高分子電解質膜を用いた水電解膜は、薄くかつ脆弱であってその耐圧が低いため、水電解膜によって仕切られた陽極室側の酸素ガスと陰極室側の水素ガスとの差圧によって水電解膜が破壊されるおそれがある。そのため固体高分子電解質膜を水電解膜に用いた水素・酸素ガス発生装置は、その信頼性が低くならざるを得ず、また大型化することが困難であった。
【0008】
ここで、水電解セル内の陽極室側と陰極室側との差圧は、陽極室側で発生する酸素ガスと陰極室側で発生する水素ガスの使用状況によって変化する。すなわち、水の電気分解で発生する水素ガスと酸素ガスの容積比は2:1であるが、実際の使用状況下では、2:1の割合で使用されることは稀であって、いずれかのガスが余分となるかまたはいずれかのガスが不足することとなるのが通常である。その場合一般には酸素ガスを捨て、水素ガスの使用量に合せて水素・酸素ガス発生装置を作動させる方法が適用されることが多いが、この場合消費される側のガス圧が低下し、捨てる側のガス圧は高くなるから、これらのガス圧力に大きな差が生じ、その圧力の差が水電解セルの陽極室と陰極室とを隔てる水電解膜に差圧として作用して、薄くて脆弱な水電解膜を破壊するおそれがあったのである。
【0009】
そしてまた、一般に水の電気分解で発生する水素ガスと酸素ガスとは、それぞれ水に混合された状態となっているから、その気液混合物を酸素ガス側、水素ガス側の各気液分離装置においてガスと水とに分離する必要があるが、この場合気液分離装置において分離された水を排水する際には、排水された水が占めていた容積分だけ、ガスが占めている部分の容積が大きくなるから、その分ガス圧力が低下することになる。各気液分離装置は、水電解セルの陽極室もしくは陰極室に連通しているから、陽極室に連通している酸素側の気液分離装置の酸素ガス圧力と、陰極室に連通している水素側の気液分離室の水素ガス圧力とのうち、いずれか一方が気液分離装置からの排水によって大きく低下すれば、それが水電解セル内の陽極室と陰極室とを隔てる水電解膜に大きな差圧として作用してしまう。したがって水素ガス側、酸素ガス側の各気液分離装置の排水を適切に行なわなければ、水電解セルの陽極室と陰極室とを隔てる水電解膜に作用する差圧が大きくなってしまい、薄くて脆弱な水電解膜を破壊してしまうおそれがある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように固体高分子電解質膜からなる水電解膜を用いて純水を直接電気分解させて高純度の水素ガスと酸素ガスを発生させる装置では、水電解セル内の陽極室と陰極室とを隔てる水電解膜が薄くて脆弱であるため、陽極室側と陰極室側との差圧によって水電解膜が破壊するおそれがある。その差圧が発生する原因としてはいくつかのものがあるが、大きな原因としては前述のように気液分離装置における排水の問題がある。また発生した水素ガス、酸素ガスの使用量のばらつきも差圧発生の原因となっている。
【0011】
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、固体高分子電解質膜からなる水電解膜を用いて純水を直接電気分解することにより高純度の水素ガス、酸素ガスを発生する装置において、水電解膜に作用する差圧を可及的に少なくし得るように制御できる構成とし、これによって薄くて脆弱な固体高分子電解質膜からなる水電解膜の差圧による破壊の発生を防止し、安全性、信頼性を高めるとともに、大型化も可能にした高純度水素・酸素ガス発生装置を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するため、この発明では、陽極室で発生した酸素ガスと純水との混合物を酸素ガスと純水とに分離するための気液分離装置、および陰極室で発生した水素ガスと純水との混合物を水素ガスと純水とに分離するための気液分離装置のそれぞれにおいて、排水を適切に制御し得るようにして、水電解セル内の陽極室と陰極室とを隔てる水電解膜に大きな差圧が生じないように構成した。またこの発明は、発生した水素ガス、酸素ガスの使用量のばらつきにともなう圧力変動が水電解セル内の水電解膜に差圧として可及的に作用しないように構成した。
【0013】
具体的には、請求項1の発明の高純度水素・酸素ガス発生装置は、固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成してなる水電解膜によって隔てられた陽極室と陰極室とを有する水電解セルと、前記水電解セルに純水を供給する純水供給手段と、前記水電解セル内の水電解膜の金属電極に直流電流を供給するための水電解用直流電源手段と、前記水電解セルの陽極室において純水の電気分解により発生した酸素と純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置と、前記水電解セルの陰極室において純水の電気分解により発生した水素と純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置、とを有してなる高純度水素・酸素ガス発生装置において、前記第1の気液分離装置および第2の気液分離装置は、それぞれ水素ガスもしくは酸素ガスと純水との混合物が流入して上部に分離したガスを溜める分離室と、その分離室の底部から純水を排出するための排水弁と、分離室の上部からガスを外部へ導くためのガス導出配管とを備えており、しかも各分離室の内部には、純水の水位の変動に伴なって上下動するフロートが配設され、かつ各フロートには永久磁石が設けられ、前記各分離室の外部には、前記各永久磁石との間の磁気力によって前記各永久磁石とともに上下動する第2の永久磁石が設けられるとともに、その第2の永久磁石の磁気を検知してフロートの上下方向の位置を検出する検出手段が設けられており、さらにその検出手段からの検出信号に応じて前記各排水弁を制御する水位制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
そして請求項2の発明の高純度水素・酸素ガス発生装置は、固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成してなる水電解膜によって隔てられた陽極室と陰極室とを有する水電解セルと、前記水電解セルに純水を供給する純水供給手段と、前記水電解セル内の水電解膜の金属電極に直流電流を供給するための水電解用直流電源手段と、前記水電解セルの陽極室において純水の電気分解により発生した酸素と純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置と、前記水電解セルの陰極室において純水の電気分解により発生した水素と純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置、とを有してなる高純度水素・酸素ガス発生装置において、前記第1の気液分離装置および第2の気液分離装置は、それぞれ水素ガスもしくは酸素ガスと純水との混合物が流入して上部に分離したガスを溜める分離室と、その分離室の底部から純水を排出するための排水弁と、分離室の上部からガスを外部へ導くためのガス導出配管とを備えており、しかも各分離室の内部には、純水の水位の変動に伴なって上下動するフロートが配設され、かつ各フロートには永久磁石が設けられ、さらに前記各分離室の外部には、前記各永久磁石の磁気力によって永久磁石とともに上下動する表示部材と、表示部材の上下方向の位置を検出する検出手段とが設けられており、さらにその検出手段からの検出信号に応じて前記排水弁を制御する水位制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
また請求項3の発明は、請求項2に記載の高純度水素・酸素ガス発生装置において、前記分離室内に上下方向に沿ってガイド管が挿入されており、そのガイド管の外側を前記フロートの永久磁石が取囲む構成とされており、さらに前記表示部材が、ガイド管内に上下方向に移動可能に収容されているものである。
【0017】
さらに請求項4の発明の高純度水素・酸素ガス発生装置は、固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成してなる水電解膜によって隔てられた陽極室と陰極室とを有する水電解セルと、前記水電解セルに純水を供給する純水供給手段と、前記水電解セル内の水電解膜の金属電極に直流電流を供給するための水電解用直流電源手段と、前記水電解セルの陽極室において純水の電気分解により発生した酸素と純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置と、前記水電解セルの陰極室において純水の電気分解により発生した水素と純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置、とを有してなる高純度水素・酸素ガス発生装置において、前記第1の気液分離装置および第2の気液分離装置は、それぞれ水素ガスもしくは酸素ガスと純水との混合物が流入して上部に分離したガスを溜める分離室と、その分離室から純水を排出するための少なくとも一つの排水口と、その分離室の上部からガスを外部へ導くためのガス導出配管とを備えており、しかも各分離室の内部には、純水の水位の変動に伴なって上下動するフロートが配設され、かつ前記排水口はその少なくとも一つは分離室の内面のうち垂直な壁面に形成されており、前記フロートにはその垂直壁面の排水口を遮蔽し得る遮蔽部が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
また請求項5の発明は、請求項4に記載の高純度水素・酸素ガス発生装置において、前記フロートにさらに永久磁石が設けられ、また排水口として、前記垂直壁面の排水口のほかに分離室底部に別に排水口が設けられていて、その排水口に開閉弁が接続されており、また分離室の外部には前記永久磁石に感応してその永久磁石の位置を検出する検出手段が設けられており、さらにその検出手段からの検出信号に応じて前記排水弁を制御する水位制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0019】
さらに請求項6の発明の高純度水素・酸素ガス発生装置は、固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成してなる水電解膜によって隔てられた陽極室と陰極室とを有する水電解セルと、前記水電解セルに純水を供給する純水供給手段と、前記水電解セル内の水電解膜の金属電極に直流電流を供給するための水電解用直流電源手段と、前記水電解セルの陽極室において純水の電気分解により発生した酸素と純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置と、前記水電解セルの陰極室において純水の電気分解により発生した水素と純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置、とを有してなる高純度水素・酸素ガス発生装置において、前記第1の気液分離装置に、酸素ガスリーク弁および酸素ガス遮断弁と酸素ガス圧力検知器が設けられ、また前記第2の気液分離装置に水素ガスリーク弁および水素ガス圧力検知器が設けられ、さらに前記酸素ガス圧力検知器と水素ガス圧力検知器との差分圧力信号に応じて前記酸素ガスリーク弁および酸素ガス遮断弁を制御するための水素−酸素ガス差圧制御手段を備えていることを特徴とするものである。
【0020】
さらにまた請求項7の発明の高純度水素・酸素ガス発生装置は、固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成してなる水電解膜によって隔てられた陽極室と陰極室とを有する水電解セルと、前記水電解セルに純水を供給する純水供給手段と、前記水電解セル内の水電解膜の金属電極に直流電流を供給するための水電解用直流電源手段と、前記水電解セルの陽極室において純水の電気分解により発生した酸素と純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置と、前記水電解セルの陰極室において純水の電気分解により発生した水素と純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置、とを有してなる高純度水素・酸素ガス発生装置において、前記第1の気液分離装置にガス導出配管を介して酸素ガスタンクが接続され、また前記第2の気液分離装置の水素ガス導出口に、ガス導出配管を介して水素ガスタンクが接続され、前記酸素側のガス導出配管には、第1の気液分離装置内のガス圧力が設定圧力を越えれば開放されかつ設定圧力以下で閉じる第1の保圧弁が設けられ、前記水素側のガス導出配管には、前記第1の保圧弁と同じ設定圧に予め設定された第2の保圧弁が設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
【作用】
請求項1の発明の高純度水素・酸素ガス発生装置では、純水の電気分解によって水電解セルの陽極室で発生した酸素ガスは純水とともに第1の気液分離装置に流入し、その第1の気液分離装置の分離室内において酸素ガスが純水から分離されて分離室の上部に溜まる。また同様に水電解セルの陰極室で発生した水素ガスは純水とともに第2の気液分離装置に流入し、その第2の気液分離装置の分離室内において水素ガスが純水から分離されて分離室の上部に溜まる。一方各気液分離装置で酸素ガスもしくは水素ガスと分離された純水は、各分離室の底部側に溜まり、水位制御手段によって制御される排水弁を介して排出されることになる。
【0022】
ここで、各気液分離装置における分離室中の純水にはフロートが浮かんでおり、このフロートは純水の水面の変動とともに上下動する。そして、フロートに設けられた永久磁石に連動して、分離室外部の第2の永久磁石が上下動し、その第2の永久磁石の位置が、同じく分離室外部の検出手段によって検出され、その検出手段からの検出信号に応じて水位制御手段により排水弁が制御される。すなわち、第2の永久磁石の位置は分離室内の水面位置に対応するから、水面位置に応じて排水弁が制御されることになる。したがって例えば水面位置が常時一定の位置あるいは予め定めた小さい範囲内の位置を維持するように排水を制御することが可能となり、その結果、排水に起因して分離室内の水面が大きく変動しないことになるから、水面上のガスが占める部分の容積も大きく変動することがなくなる。そのため排水に起因して水電解セルの陽極室と陰極室とを隔てている水電解膜に加わる差圧が大きくなることを防止できる。
【0023】
ここで、第2の永久磁石は分離室の外部に位置するため、この第2の永久磁石の位置によって目視によっても分離室内の水面位置を確認することができる。すなわち第2の永久磁石は、目視確認用の水面位置表示部材を兼ねることになる。
【0024】
一方請求項2の発明の装置の場合も、フロートとともに上下動する表示部材によって、目視によってフロートの位置、すなわち分離室内の水面位置を確認することができ、同時にその表示部材の位置が検出手段によって検出されて、請求項1の発明の場合と同様に分離室内の水面位置に応じて排水弁を制御することができる。
【0025】
なお請求項3の発明の装置の場合、表示部材はガイド管の管壁を介してフロート側の永久磁石によって囲まれるため、永久磁石の磁力により表示部材を非接触の状態で上下に浮動させることができる。
【0026】
さらに請求項4の発明の装置の場合は、フロートに設けられている遮蔽部が、排水口(分離室の内面のうち垂直な壁面に形成されている排水口)を遮蔽し得るように構成されている。したがって分離室内の水面の変動に伴なってフロートが上下動すれば、それに伴なって遮蔽部材により上記排水口が開放もしくは閉塞されたり、あるいは排水口の開口度が変化して、排水を直接的に制御することができる。すなわち、排水弁の制御によらずに、水面位置がほぼ一定の位置に維持されるように、直接的に排水を制御することができる。
【0027】
一方請求項5の発明の場合は、請求項4の発明の装置と基本的には同じであるが、より安全度を高めるため、請求項1の発明と同様な排水弁の制御も行なうことができる。すなわち、何らかの異常でフロートの遮蔽部による排水口の開閉、開口部調整が円滑に行なわれない場合、水面位置の変動をフロートに設けられた永久磁石および検出手段によって検出して、水面位置制御手段によって排水弁の制御を行なうことができる。
【0028】
さらに請求項6の発明の装置の場合、第1の気液分離装置の酸素ガス圧力、第2の気液分離装置の水素ガス圧力がそれぞれ検出され、その検出圧力の差(差圧)によって第1の気液分離装置のガス遮断弁、ガスリーク弁が制御されるから、第1の気液分離装置の酸素ガス圧力と第2の気液分離装置の水素ガス圧力が常にほぼ等しい圧力となるように制御することができる。したがって前記同様に、差圧によって水電解膜が破壊されることを防止できる。
【0029】
また請求項7の発明の装置の場合、各気液分離装置から酸素ガスタンク、水素ガスタンクに至る流路に保圧弁が設けられており、かつそれらの保圧弁の設定圧力が同じ圧力に設定されているため、水素ガスもしくは酸素ガスの消費量が水電解セルにおける各ガス発生量を上廻った場合でも、各気液分離装置内のガス圧力が設定圧力より低下することを防止でき、その結果大きな差圧が発生することを防止して水電解膜の破壊を防止することができる。
【0030】
【実施例】
図1にはこの発明の一実施例の高純度水素・酸素ガス発生装置の全体構成を示す。
【0031】
図1において、符号1は純水を水素ガスと酸素ガスとに電解分離するための水電解セルであって、その内部については図示しないが、両面に金属電極を設けた固体高分子電解質膜からなる水電解膜によって陽極室と陰極室とが区画形成されている。この水電解セルの各電極には、直流電源2からの電源線3A,3Bが接続されている。直流電源2は、商用電源入力4からの商用交流電流を直流電流に変換し、電源制御装置5による制御に応じて直流電流を水電解セル1に与える。また前記水電解セル1には、その水電解セル1内の陽極室に純水を供給するための純水供給手段として、純水製造装置6が純水供給配管7を介して接続されている。
【0032】
一方水電解セル1の上部には、純水の電気分解によりその水電解セル1の陽極室において発生した酸素ガスと純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置8が、酸素側配管9を介して接続され、また水電解セル1の陰極室において発生した水素ガスと純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置10が、水素側配管11を介して接続されている。
【0033】
前記第1の気液分離装置8は、その内部に後述する分離室が形成されたものであって、その分離室の上部には分離された酸素ガスが溜まり、底部側に分離された純水が溜まる。この第1の気液分離装置8の上部には、酸素ガス導出配管12が接続されており、この酸素ガス導出配管12は酸素ガスタンク13に導かれている。そして酸素ガス導出配管12の中途には、第1の気液分離装置8の側から順にガス乾燥器14、ガス遮断弁15、保圧弁16が設けられている。また同じく第1の気液分離装置8の上部には分離室内の酸素ガス圧力を検出するための圧力検出器17が設けられるとともに、酸素ガスを放出するためのガスリーク弁18が設けられている。前記圧力検出器17の圧力検出信号は、水素−酸素ガス差圧制御手段としての差圧制御装置20に導かれるようになっている。一方ガス遮断弁15およびガスリーク弁18は、前記差圧制御装置20によって制御されるようになっている。
【0034】
さらに前記第1の気液分離装置8の下部には、分離室内に溜った純水を排出するための排水弁(水リーク弁)21,22が接続されており、これらの排水弁21,22は、排水配管23を介して前述の純水製造装置6に接続されている。なおこれらの排水弁21,22は、後述する水位制御装置24によってその開閉が制御されるようになっている。
【0035】
一方第2の気液分離装置10も、その内部に後述する分離室が形成されたものであって、その分離室の上部に分離された水素ガスが溜まり、底部側に分離された純水が溜まる。この第2の気液分離装置10の上部には、水素ガス導出配管25が接続されており、この水素ガス導出配管25は水素ガスタンク26に導かれている。そして水素ガス導出配管25の中途には、ガス乾燥器27および保圧弁28が設けられている。また同じく第2の気液分離装置10の上部には、分離室内の水素ガス圧力を検出するための圧力検出器29が設けられている。この圧力検出器29の圧力検出信号は、水素−酸素ガス差圧制御手段としての前記差圧制御装置20に導かれる。
【0036】
さらに第2の気液分離装置10の下部には、分離室内に溜った純水を排出するための排水弁30,31が接続されており、これらの排水弁30,31は、排水配管32を介して前述の純水製造装置6に接続されている。これら排水弁30,31も、排水弁21,22と同様に水位制御装置24によってその開閉が制御される。
【0037】
前記酸素ガスタンク13および水素ガスタンク26には、それぞれ圧力検出器33,34が設けらてれおり、これらの圧力検出器33,34の圧力検出信号線42,43は中央制御装置35に接続されている。また酸素ガスタンク13の出口側は、減圧弁36を介して外部へ酸素ガスを供給するための酸素ガス供給口37に導かれており、水素ガスタンク26の出口側は、減圧弁38を介して外部へ水素ガスを供給するための水素ガス供給口39に導かれている。なお前記水位制御装置24から水位警報信号を発生する水位警報信号線40は、前述の中央制御装置35に接続されている。この中央制御装置35は、電源制御線44を介して前述の電源制御装置5に接続されている。
【0038】
図1に示されるような実施例の高純度水素−酸素ガス発生装置において、純水製造装置6から純水供給配管7を介して水電解セル1に純水を供給し、直流電源2から直流電流を水電解セル1内の電極間に供給すれば、水電解セル1内において純水が電気分解される。この電気分解により陽極室で発生した酸素ガスは、純水と混合された状態で酸素側配管9を介して第1の気液分離装置8に導かれて、純水と酸素ガスとに分離される。一方陰極室で発生した水素ガスは、純水と混合された状態で水素側配管11を介して第2の気液分離装置10に導かれて、純水と水素ガスとに分離される。
【0039】
第1の気液分離装置8において分離された純水は、水位制御装置24によって制御される排水弁21,22、排水配管23を通って純水製造装置6に回収され、また第2の気液分離装置10において分離された純水は、同じく水位制御装置24によって制御される排水弁30,31、排水配管32を通って純水製造装置6に回収される。このように第1の気液分離装置8、第2の気液分離装置10で分離された純水は、純水製造装置6に回収されて、再処理され、再び純水供給配管7を介して水電解セル1へ送られる。
【0040】
一方第1の気液分離装置8で分離された酸素ガスは、酸素ガス導出配管12のガス乾燥器14、ガス遮断弁15、保圧弁16を介して酸素ガスタンク13へ導かれ、また第2の気液分離装置10で分離された水素ガスは、水素ガス導出配管25のガス乾燥器27、保圧弁28を介して水素ガスタンク26へ導かれる。ここで保圧弁16,28はいずれもガス圧力が予め設定した設定圧力以上となったときに開放されるものであり、酸素ガス側の保圧弁16の設定圧力と水素ガス側の保圧弁28とはその設定圧力が等しくなるように設定される。したがって第1の気液分離装置8、第2の気液分離装置10の酸素ガス圧力、水素ガス圧力が各々保圧弁16,28の設定圧力以上となれば、保圧弁16,28が開放され、酸素ガス、水素ガスがそれぞれ酸素ガスタンク13、水素ガスタンク26に流入することになる。
【0041】
酸素ガスタンク13および水素ガスタンク26の各ガスの圧力は、圧力検出器33,34によって検出され、その圧力検出信号が圧力検出信号線42,43を介して中央制御装置35に送られて、各圧力が常時監視される。また水素ガスタンク26の圧力検出信号は、中央制御装置35から電源制御線44を経て電源制御装置5に送られ、この電源制御装置5は、水素ガスタンク26内の圧力が予め定められた水素圧力になるように直流電源2の出力電流を制御する。また中央制御装置35は、圧力検出器33,34で検出された酸素ガス圧力および水素ガス圧力が予め設定されている異常圧力値以上の圧力となった場合に、電源制御線44を通じて電源制御装置5に直流電源2の出力を零にする信号を送り、これによって水の電気分解を直ちに停止させ、水素または酸素ガス圧力が予め設定した異常圧力値よりも高くなってしまうことを防止する。
【0042】
ここで、水の電気分解においては、発生する水素ガスと酸素ガスの体積比は常に2:1であるから、水素側の第2の気液分離装置10の水素ガスが占める部分の容積と酸素側の第1の気液分離装置8の酸素ガスが占める部分の容積との比をほぼ2:1とするとともに、いずれも大気圧とした状態で、水電解セル1への直流電流の印加を開始し、水の電気分解を開始させたとすれば、水素側の第2の気液分離装置10の水素ガス圧力と酸素側の第1の気液分離装置8の酸素ガス圧力は、ほぼ同じ圧力を保った状態でそれらのガス圧が上昇する。したがって水電解セル1内の陰極室側の水素ガス圧力と陽極室側の酸素ガス圧力とが常に等しい圧力となり、陽極室と陰極室とを隔離している水電解膜に水素ガスと酸素ガスとの差圧が作用しないことになるから、差圧によって水電解膜が破壊されることを防止できる。
【0043】
そして前述のように酸素側の第1の気液分離装置8内の酸素ガス圧力および水素側の第2の気液分離装置10内の水素ガス圧力が保圧弁16または28の設定圧力を越えれば、酸素ガスタンク13および水素ガスタンク26にそれぞれ酸素ガス、水素ガスが流入し、酸素ガス供給口37、水素ガス供給口39からガス消費設備への酸素ガス、水素ガスの供給が可能となる。ここで、水電解セル1におけるガス発生能力を上廻って酸素ガス供給口37または水素ガス供給口39からガス消費設備へ酸素ガスまたは水素ガスが供給された場合でも、保圧弁16または28の機能により、酸素側の第1の気液分離装置8内の酸素ガス圧力および水素側の第2の気液分離装置10内の水素ガス圧力が保圧弁16または28の設定圧力より低下することが回避されるから、固体高分子電解質膜からなる水電解膜に酸素ガス圧力と水素ガス圧力との差圧が作用して破壊されこるとが防止される。
【0044】
さらに、酸素側の第1の気液分離装置8の酸素ガス圧力、水素側の第2の気液分離装置10の水素ガス圧力は圧力検出器17,29によって検出されるが、これらの圧力検出器17,29で検出された圧力信号は差圧制御装置20に伝送され、水素ガスの圧力が酸素ガスの圧力よりも高くなれば、ガス遮断弁15が閉となって第1の気液分離装置8内の酸素ガスの圧力を高めるように作用し、逆に水素ガスの圧力が酸素ガスの圧力よりも低くなると、ガスリーク弁18が開となって酸素ガスの放出により第1の気液分離装置8内の酸素ガス圧力を下げるように作用し、これによって水素ガスと酸素ガスの圧力が常にほぼ等圧になるように制御される。このようにして、第1、第2の気液分離装置8,10の酸素ガス、水素ガスの圧力は常にほぼ等しくなるように調整され、これによって水電解セル1内の固体高分子電解質膜よりなる水電解膜に作用する差圧を小さくして、その水電解膜の破壊を防ぐことが可能となる。
【0045】
なお水の電気分解では、水素と酸素の発生量の比が2:1の割合であるが、実際の使用状態では、水素と酸素が2:1の割合で消費されることは期待できないから、いずれかを捨てるか、いずれかの使用量を制限するかする必要がある。この実施例では、水素ガスの使用を主にして、酸素ガスの方を捨てるかまたは酸素ガスの使用量を制限するかするようにしているが、逆に酸素ガスを主にすることも可能である。なおまた、この実施例での保圧弁16,28の設定圧力は4Kg/cm程度とすることが望ましく、またこの場合、圧力検出器33または34の検出圧力が4.5Kg/cmに達すると電源制御装置5からの制御信号によって直流電源2の出力電流を零として、水の電気分解を停止させ、それ以上の圧力上昇が起らないように設定することが望ましい。
【0046】
図2には、この発明の高純度水素・酸素ガス発生装置に用いられる第1、第2の気液分離装置8,10の具体的な第1の構成例を示す。なお酸素側の第1の気液分離装置8と水素側の第2の気液分離装置10とは別のものであるが、それぞれの具体的な構成は同様であれば良いから、図2では一括して示している。
【0047】
図2において、気液分離装置8(10)は、それぞれ内部に分離室51を形成した中空円筒槽状の分離槽本体50によって構成されている。この分離槽本体50は、ポリエーテル・エーテル・ケトン(PEEK)等の合成樹脂あるいはステンレス鋼等の非磁性材料によって作られている。その分離槽本体50の底部には、前述の水電解セル1の陽極室または陰極室から酸素ガスもしくは水素ガス(以下これを単にガスと記す)と純水との混合物が酸素側配管9または水素側配管11を介して導入される気液入口52が形成されるとともに、その混合物から分離された純水を排出するための純水排出口53,54が形成されている。これらの純水排出口53,54には、前述の排水弁(遮断バルブ)21,22(30,31)が接続されている。なお排水弁22(31)と純水排出口54との間にはニードルバルブ55が設けられている。排水弁21,22(30,31)は、既に図1について述べたように、水位制御装置24によって制御されるようになっている。なおこの水位制御装置24は、水位警報信号線40を介して中央制御装置35(図1参照)に接続されている。一方分離槽本体50の上部には、前述のガス導出配管12(25)に連通するガス出口56が形成されている。
【0048】
さらに分離槽本体50の分離室51内における内壁面近くの位置には、垂直に支柱57が立設されており、この支柱57には合成樹脂等の比重が1に近い材料からなるフロート58が上下に移動可能に取付けられており、かつそのフロート58の側面側には第1の永久磁石59が配設されている。この第1の永久磁石59は分離室51の垂直な内壁面に沿うように位置している。一方分離槽本体50の外面側には、前記第1の永久磁石59に対応する位置に、第2の永久磁石60が配設されている。この第2の永久磁石60は、図示しないガイド部材によって分離槽本体50の外面に上下方向へ摺動可能に取付けられている。さらに分離槽本体50の外部でかつ第2の永久磁石60に対向する位置には、リードリレー固定用支柱61が垂直に設けられており、このリードリレー固定用支柱61には、第2の永久磁石60の磁気に感応して動作する4個のリードリレー62A,62B,62C,62Dが上下に間隔を置いて固定されている。これらのリードリレー62A〜62Dは、永久磁石59,60の上下方向の位置を検出する検出手段を構成するものであって、上方からHHレベル検出用リードリレー62A、Hレベル検出用リードリレー62B、Lレベル検出用リードリレー62C、LLレベル検出用リードリレー62Dとされている。これらのリードリレー62A〜62Dの各検出信号出力線63A〜63Dは、前述の水位制御装置24に接続されている。
【0049】
図2に示される気液分離装置8(10)において、分離室51内の上部には分離されたガスが溜まり、底部側には純水が溜まる。そして純水の水面64の変動に伴なってフロート58が上下に動き、そのフロート58に取付けられた第1の永久磁石59も水位変動に伴なって上下に動くことになる。ここで、分離槽本体50は前述のように非磁性材料によって作られているから、第1の永久磁石59の磁気は分離槽本体50の壁を透過して、第2の永久磁石60を吸引するから、水位の変動によって第1の永久磁石59がフロート58とともに上下に変動すれば、それに伴なって第2の永久磁石60も上下に動く。そして第2の永久磁石60は、水面の位置を外部に表示するとともに、リードリレー62A〜62Dを作動させ、これによって水面の位置がリードリレー62A〜62Dによって検出される。これらのリードリレー62A〜62Dの検出信号は、水位制御装置24に送られ、検出された水位に応じて水位制御装置24が排水弁21(30)、排水弁22(31)の開閉を制御して、水面64の水位がある一定の小さい範囲内に維持されるように制御することが可能となる。そしてこのように気液分離装置8(10)の水面が、ほぼ一定の位置に維持される結果、水面上のガスが占める部分の容積が排水に伴なって大きく変動することが防止され、既に述べたように気液分離装置8(10)での排水に起因してガス圧力が大きく変動して、水電解セルの陽極室のガス圧力と陰極室のガス圧力との差が大きくなること、すなわち水電解膜に作用する差圧が大きくなることを防止できる。
【0050】
ここで、第1の永久磁石59の重さや、第1および第2の永久磁石59,60の磁力の大きさを選択することにより、フロート58の上下方向の動きに対する抵抗成分の大きさを調整できるから、これらを適切に設定することによって、水面64に発生する波に起因するフロート58の上下方向の変動を少なくすることができ、そのため波による誤差要因が排除されて、フロート58が常に平均的な水面に安定に留まるようになるから、正確な水位制御が可能となってガス圧力の変動をより少なくすることができる。
【0051】
さらに、ニードルバルブ55の開度を調整して、排水弁22(31)へ導かれる純水の流量が気液入口52から流入する液量に比べてわずかに多い程度となるように調整しておけば、排水弁21(30),22(31)の開閉の頻度を少なくでき、その結果これらの排水弁の寿命を飛躍的に延長することができるとともに信頼性の高い運転が可能となり、ひいてはガス圧力の変動を少なくして差圧による水電解膜の破壊を防止できる。
【0052】
なお図2の例においてはリードリレー62A〜62Dは第2の永久磁石60の磁気に感応して動作する構成としているが、場合によっては第2の永久磁石60を省略するとともに、各リードリレー62A〜62Dを分離槽本体50の外面に直接取付け、各リードリレー62A〜62Dが永久磁石59の磁気を直接検知するように構成することも可能である。
【0053】
図3には、この発明の高純度水素・酸素ガス発生装置に用いられる第1、第2の気液分離装置8,10の具体的な第2の構成例を示す。なお図3において、図2に示される要素と同一の要素については図2と同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0054】
図3において、分離槽本体50の分離室51には上方から垂直に有底円筒状のガイド管65が挿入されている。このガイド管65は、PEEKやステンレス鋼などの非磁性材料によって作られている。一方フロート58は環状に作られていて、このフロート58は前記ガイド管65に上下移動可能となるように外挿されており、さらにこのフロート58には、ガイド管65を囲むように環状の永久磁石59が固定されている。この環状の永久磁石59は、上下方向に磁化されている。ガイド管65内には、軟鉄等の軟質磁性材料からなる軟磁性円板66が配設されており、この軟磁性円板66上には、軽量な合成樹脂等からなる長板状の表示部材67が取付けられており、これら軟磁性円板66、表示部材67は上下方向に移動可能となっている。なお表示部材67は、分離槽本体50の上端に設けたスリット板68を上下に移動可能に貫通している。さらに表示部材67には、上下方向に沿って上端レベルの異なる2種のスリット69A,69Bが形成されており、また前記スリット板68の上方には、表示部材67のスリット69A,69Bを検出する光センサ70A,70Bが配設されている。これらの光センサ70A,70Bは、光源と受光器からなるものであって、表示部材67の上下方向の位置を検出するための検出手段を構成している。そして光センサ70A,70Bの検出信号線71A,71Bは水位制御装置24に接続されている。
【0055】
以上のような図3に示される気液分離装置8(10)において、ガイド管65は非磁性材料によって構成されているため、永久磁石59の磁気はガイド管65内に磁束を生じさせて、軟磁性円板66を永久磁石59の近傍で浮上させる。ここで、永久磁石59の磁化方向が上下方向となっているため、軟磁性円板66は永久磁石59の中央の位置に保持された状態でガイド管65内で浮上しており、しかもガイド管65に対して非接触の状態となる。したがって分離室51内の水面64の上下方向への変動に伴なってフロート58が上下に変動し、永久磁石59が上下に変動すれば、ガイド管65内の軟磁性円板66もそれに対応して上下方向へ動く。そして軟磁性円板66に取付けられた表示部材67が上下に動く。このように水面64の上下変動に伴なって表示部材67が上下すかるら、この表示部材67によって水面64の位置を目視により確認することができる。
【0056】
さらに、表示部材67のスリット69A,69Bの位置が光センサ70A,70Bによって検出される。すなわち、水面位置に対応する表示部材67の位置が検出される。光センサ70A,70Bの検出信号は水位制御装置24に送られ、排水弁21,22(30,31)の開閉を制御する。したがって図2に示される例と同様に、水面64の水位がある一定の範囲内となるように排水を制御することができる。なおこの場合も、軟磁性円板66の重さを調整することにより、水面64の波に起因するフロート58の変動を少なくすることができ、より正確な水面制御が可能となって、圧力変動の少ない水面制御を実現することができる。
【0057】
図4には、この発明の高純度水素・酸素ガス発生装置に用いられる第1、第2の気液分離装置8,10の具体的な第3の構成例を示す。なおこの図4においても、図2に示される要素と同一の要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0058】
図4において、分離槽本体50の分離室51内には、下方から上方に向けて垂直に支柱72が設けられており、この支柱72の外側はガイド管73によって取囲まれている。さらにこのガイド管73の下部、すなわち分離室51の底部付近に相当する部分は、排水ガイド管74によって取囲まれている。この排水ガイド管74はその下端部が前述の排水弁22(31)に連通されており、また排水ガイド管74における分離室51内の垂直な壁面には排水口75が形成されている。一方フロート58は、全体として円筒状をなすように作られていて、前記ガイド管73の上部に外挿され、そのガイド管73に沿って上下動可能となっている。そしてこのフロート58にはガイド管73の外周面に対向する環状の永久磁石59が固定されている。そして支柱72には、永久磁石59の磁気に感応して作動するリードリレー62A,62B,62Cが上下に間隔を置いて取付けられている。これらのリードリレー62A,62B,62Cは、検出信号線63A,63B,63Cを介して水位制御装置24に接続されている。さらに前記フロート58の下端部内周面は、前述の排水ガイド管74の排水口75を覆い得るような遮蔽部77とされている。
【0059】
以上のような図4に示される気液分離装置8(10)において、水面64の変動によってフロート58が上下動すれば、排水口75がフロート58の遮蔽部77によって覆われる度合(開閉度)が変化し、それに伴なって排水口75から流出する水量が変化する。したがって分離室51内の水面64は、気液入口52から流入する水量と排水口75から流出する排水の量とがバランスする水位に自動的に調整され、そのためガス圧力変動の少ない水面制御が実現される。
【0060】
またここで平常時は、排水弁22(31)は開の状態、排水弁21(30)は閉の状態となっているが、何らかの異常によって水面64が上昇すれば、フロート58が上昇して、永久磁石59が最上端のリードリレー62Aの位置に至れば、これをリードリレー62Aが検出して水位制御装置24に検出信号が送られ、排水弁21(30)が開状態となるとともに、水位警報信号線40に警報信号が出力される。このようにして排水弁21(30)が開けば、排水量が多くなるため水面64が低下する。そしてフロート58の下降に伴なってリードリレー62Bが永久磁石59を検出すれば、その検出信号が水位制御装置24に送られ、排水弁21(30)が閉状態に戻る。このような機能によって、常に安定して分離室51内の水位を制御することができ、ガス圧力変動を小さくして、前述のような水電解膜に作用する差圧を小さくすることができるのである。
【0061】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、請求項1〜請求項5の発明によれば、水電解セルの陽極室で発生した酸素ガスと純水との混合物を酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置および陰極室で発生した水素ガスと純水との混合物を水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置のそれぞれにおいて、排水に伴なって水面の大幅な変動が生じないように、常にほぼ一定の水面を維持する制御を行なうことができ、その結果、排水に伴なう各気液分離装置のガス占有部分の容積の大幅な変動の発生を防止できるから、排水に伴なうガス圧力変動によって水電解膜に大きな差圧が作用することを防止でき、したがって薄くて脆弱な固体高分子膜からなる水電解膜を用いながらも、差圧による水電解セルの破壊を防止し、装置の信頼性、安全性を高めることができると同時に、装置の大型化を図ることが可能となった。
【0062】
また請求項6、請求項7の発明によれば、水素ガス、酸素ガスの使用量のばらつきや消費量の変動などがあっても、各気液分離装置内のガス圧力をほぼ一定に維持でき、そのため大きな差圧が水電解膜に作用することを防止し、水電解膜の差圧による破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例の高純度水素・酸素ガス発生装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の高純度水素・酸素ガス発生装置に用いられる気液分離装置の第1の具体例を示す略解図である。
【図3】この発明の高純度水素・酸素ガス発生装置に用いられる気液分離装置の第2の具体例を示す略解図である。
【図4】この発明の高純度水素・酸素ガス発生装置に用いられる気液分離装置の第3の具体例を示す略解図である。
【符号の説明】
1 水電解セル
2 直流電源
5 電源制御装置
7 純水供給配管
8 第1の気液分離装置
10 第2の気液分離装置
12 酸素ガス導出配管
13 酸素ガスタンク
15 ガス遮断弁
16 保圧弁
17 圧力検出器
18 ガスリーク弁
21 排水弁
22 排水弁
24 水位制御装置
26 水素ガスタンク
28 保圧弁
29 圧力検出器
30 排水弁
31 排水弁
51 分離室
58 フロート
59 永久磁石
60 第2の永久磁石
62A〜62D リードリレー
65 ガイド管
66 軟磁性円板
67 表示部材
70A,70B 光センサ
75 排水口
77 遮蔽部

Claims (7)

  1. 固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成してなる水電解膜によって隔てられた陽極室と陰極室とを有する水電解セルと、
    前記水電解セルに純水を供給する純水供給手段と、
    前記水電解セル内の水電解膜の金属電極に直流電流を供給するための水電解用直流電源手段と、
    前記水電解セルの陽極室において純水の電気分解により発生した酸素と純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置と、
    前記水電解セルの陰極室において純水の電気分解により発生した水素と純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置、
    とを有してなる高純度水素・酸素ガス発生装置において;
    前記第1の気液分離装置および第2の気液分離装置は、それぞれ水素ガスもしくは酸素ガスと純水との混合物が流入して上部に分離したガスを溜める分離室と、その分離室の底部から純水を排出するための排水弁と、分離室の上部からガスを外部へ導くためのガス導出配管とを備えており、
    しかも各分離室の内部には、純水の水位の変動に伴なって上下動するフロートが配設され、かつ各フロートには永久磁石が設けられ、前記各分離室の外部には、前記各永久磁石との間の磁気力によって前記各永久磁石とともに上下動する第2の永久磁石が設けられるとともに、その第2の永久磁石の磁気を検知してフロートの上下方向の位置を検出する検出手段が設けられており、さらにその検出手段からの検出信号に応じて前記各排水弁を制御する水位制御手段を備えていることを特徴とする、高純度水素・酸素ガス発生装置。
  2. 固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成してなる水電解膜によって隔てられた陽極室と陰極室とを有する水電解セルと、
    前記水電解セルに純水を供給する純水供給手段と、
    前記水電解セル内の水電解膜の金属電極に直流電流を供給するための水電解用直流電源手段と、
    前記水電解セルの陽極室において純水の電気分解により発生した酸素と純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置と、
    前記水電解セルの陰極室において純水の電気分解により発生した水素と純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置、
    とを有してなる高純度水素・酸素ガス発生装置において;
    前記第1の気液分離装置および第2の気液分離装置は、それぞれ水素ガスもしくは酸素ガスと純水との混合物が流入して上部に分離したガスを溜める分離室と、その分離室の底部から純水を排出するための排水弁と、分離室の上部からガスを外部へ導くためのガス導出配管とを備えており、
    しかも各分離室の内部には、純水の水位の変動に伴なって上下動するフロートが配設され、かつ各フロートには永久磁石が設けられ、さらに前記各分離室の外部には、前記各永久磁石の磁気力によって永久磁石とともに上下動する表示部材と、表示部材の上下方向の位置を検出する検出手段とが設けられており、さらにその検出手段からの検出信号に応じて前記排水弁を制御する水位制御手段を備えていることを特徴とする、高純度水素・酸素ガス発生装置。
  3. 請求項2に記載の高純度水素・酸素ガス発生装置において、
    前記分離室内に上下方向に沿ってガイド管が挿入されており、そのガイド管の外側を前記フロートの永久磁石が取囲む構成とされており、さらに前記表示部材が、ガイド管内に上下方向に移動可能に収容されている、高純度水素・酸素ガス発生装置。
  4. 固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成してなる水電解膜によって隔てられた陽極室と陰極室とを有する水電解セルと、
    前記水電解セルに純水を供給する純水供給手段と、
    前記水電解セル内の水電解膜の金属電極に直流電流を供給するための水電解用直流電源手段と、
    前記水電解セルの陽極室において純水の電気分解により発生した酸素と純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置と、
    前記水電解セルの陰極室において純水の電気分解により発生した水素と純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置、
    とを有してなる高純度水素・酸素ガス発生装置において;
    前記第1の気液分離装置および第2の気液分離装置は、それぞれ水素ガスもしくは酸素ガスと純水との混合物が流入して上部に分離したガスを溜める分離室と、その分離室から純水を排出するための少なくとも一つの排水口と、その分離室の上部からガスを外部へ導くためのガス導出配管とを備えており、
    しかも各分離室の内部には、純水の水位の変動に伴なって上下動するフロートが配設され、かつ前記排水口はその少なくとも一つは分離室の内面のうち垂直な壁面に形成されており、前記フロートにはその垂直壁面の排水口を遮蔽し得る遮蔽部が形成されていることを特徴とする、高純度水素・酸素ガス発生装置。
  5. 請求項4に記載の高純度水素・酸素ガス発生装置において、
    前記フロートにさらに永久磁石が設けられ、また排水口として、前記垂直壁面の排水口のほかに分離室底部に別に排水口が設けられていて、その排水口に開閉弁が接続されており、また分離室の外部には前記永久磁石に感応してその永久磁石の位置を検出する検出手段が設けられており、さらにその検出手段からの検出信号に応じて前記排水弁を制御する水位制御手段を備えていることを特徴とする、高純度水素・酸素ガス発生装置。
  6. 固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成してなる水電解膜によって隔てられた陽極室と陰極室とを有する水電解セルと、
    前記水電解セルに純水を供給する純水供給手段と、
    前記水電解セル内の水電解膜の金属電極に直流電流を供給するための水電解用直流電源手段と、
    前記水電解セルの陽極室において純水の電気分解により発生した酸素と純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置と、
    前記水電解セルの陰極室において純水の電気分解により発生した水素と純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置、
    とを有してなる高純度水素・酸素ガス発生装置において;
    前記第1の気液分離装置に、酸素ガスリーク弁および酸素ガス遮断弁と酸素ガス圧力検知器が設けられ、また前記第2の気液分離装置に水素ガスリーク弁および水素ガス圧力検知器が設けられ、さらに前記酸素ガス圧力検知器と水素ガス圧力検知器との差分圧力信号に応じて前記酸素ガスリーク弁および酸素ガス遮断弁を制御するための水素−酸素ガス差圧制御手段を備えていることを特徴とする、高純度水素・酸素ガス発生装置。
  7. 固体高分子電解質膜の両面に金属電極を形成してなる水電解膜によって隔てられた陽極室と陰極室とを有する水電解セルと、
    前記水電解セルに純水を供給する純水供給手段と、
    前記水電解セル内の水電解膜の金属電極に直流電流を供給するための水電解用直流電源手段と、
    前記水電解セルの陽極室において純水の電気分解により発生した酸素と純水との混合物を、酸素ガスと純水とに分離するための第1の気液分離装置と、
    前記水電解セルの陰極室において純水の電気分解により発生した水素と純水との混合物を、水素ガスと純水とに分離するための第2の気液分離装置、
    とを有してなる高純度水素・酸素ガス発生装置において;
    前記第1の気液分離装置にガス導出配管を介して酸素ガスタンクが接続され、また前記第2の気液分離装置の水素ガス導出口に、ガス導出配管を介して水素ガスタンクが接続され、前記酸素側のガス導出配管には、第1の気液分離装置内のガス圧力が設定圧力を越えれば開放されかつ設定圧力以下で閉じる第1の保圧弁が設けられ、前記水素側のガス導出配管には、前記第1の保圧弁と同じ設定圧に予め設定された第2の保圧弁が設けられていることを特徴とする、高純度水素・酸素ガス発生装置。
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