JP3592065B2 - 検出装置及びそれに用いる表面プラズモンセンサー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は光−表面プラズモン波相互作用により、特定物質の濃度を検出する光学的センサーに関し、特に光ファイバの一部に設けられた表面プラズモンセンサー及びそれを用いた検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
表面プラズモン波は金属と絶縁体間の界面によって支持される電磁波である。表面プラズモン波は共振結合によって光学的に励起せしめることができる。共振の条件は金属と絶縁体の界面に近い媒体の回折インデックス及び厚さに強く依存する。光波の強度は、光波を表面プラズモン波に結合することにより変調することができる。一般的には、表面プラズモン波と光波間の結合が強ければ光波伝達の減衰が大きくなり、結合が弱ければ光波伝達は減衰しないか減衰しても僅かである。全反射減衰は(Attenuated Total Reflection:ATR)法は高インデックスプリズムを介して表面プラズモン波を光学的に励起するために利用されている。プリズム内を移動する光は臨界角を超える角度でプリズムを介して金属−絶縁体間に送られ、表面プラズモン波領域に重なる次第に消えていく光波の領域をつくる。従って共振角度の変化を検出することによって、金属と絶縁体の界面に近い媒体の回折インデックス及び厚さの物理化学的変化を検出することができる。
【0003】
例えば、蛋白質の抗原検出センサーが実用化されている(例えば、ファルマシア社製 BIAcore)。このセンサーにおいては金薄膜表面プラズモンセンサープローブの表面に有機薄膜が担持されており、その有機薄膜中に抗体が固定されている。固定された抗体と被検物中の抗原とが選択的に結合することにより有機薄膜の屈折率変化が生じ、これをプラズモン共鳴角度の変化から測定する。またSensors and Actuators B34(1996)pp328−333には光ファイバ型表面プラズモン共鳴センサーが提案されている。光ファイバ中を伝達する光の群速度は波長によって決まる。するとコア−クラッド界面で光が全反射する際の入射角および反射角がきまる、様々な波長の、様々なモードの光のうち、コア−金属薄膜部分で全反射される際生じるエバネッセント波と金属薄膜の表面プラズモン波の間に共鳴が起れば、そのモードの光は減衰する。従って、白色光をファイバに導入し、反射光の波長分散を調べれば、SPR現象の生じている部分の波長で減衰を観測することができる。
【0004】
ヨーロッパ特許出願公開第0282009号明細書では、炭化水素相互作用に起因する反射率係数変化を利用した光ファイバ検知器が開示されている。この明細書に記載されている検知器は、光学損失を変化させる炭化水素の存在によってクラッド材の屈折率が変化することに基づくものである。
【0005】
米国特許出願第259556号明細書には、光ファイバの末端に金属薄膜が形成された光ファイバ化学物質センサが開示されている。このセンサは、金属薄膜を化学物質と接触せしめることにより、その厚みが変化し、結果的にその反射特性が変化することを利用している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記いずれの光ファイバ表面プラズモンセンサーにおいても、センシング部とリファレンス部とは一体化されていない。このことは共鳴条件の時間変化を長時間に渡ってモニターする場合、センシング部位における局所的な温度や圧力などの変化に由来すると考えられる共鳴条件のドリフトの原因となっていた。
【0007】
本発明が解決しようとする課題の一つは温度や圧力などの変化に基づく共鳴条件のドリフトを防止し、光ファイバ表面プラズモンセンサーの検出感度の増大を可能とすることである。
【0008】
共鳴条件のドリフトを防止する目的で、リファレンス部位を配置したファイバに、ビームスプリッターを介して励起光を導入した例があるが(塩川祥子ら、日本分光学会シンポジウム、平成9年5月20〜21日、東京大学山上会館)、これはセンサー本体の小型化を阻む原因である。したがって本発明が解決しようとする課題の二つ目はセンシング部位とリファレンス部位とを一体化することによって、センサーの小型化を可能とすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明によれば、被検出対象を検出するための検出装置であって、コアファイバ部が軸方向にクラッド層で被覆された部分及び金属層で被覆された部分を備えた光ファイバと、前記金属層の表面に位置し、且つ、前記被検出対象に対して感受性を有する部分と前記被検出対象に対して感受性を有しない部分とを備え、光を反射する性質を有する誘電体層と、前記誘電体層の表面に検体を接触させた後に、前記光ファイバに光を導入するための導入手段と、前記導入手段から前記光ファイバ内に光を導入したときに、前記感受性を有する部分と前記感受性を有しない部分において反射されたそれぞれの光の共振波長の差を得るための手段とを有し、前記得られた差に基づき、前記被検出対象の検出を行うことを特徴とする検出装置が提供される。
【0011】
上記検出装置において、感受性を有しない誘電体層の部分と、感受性を有する誘電体層の部分とが、該光ファイバ軸方向に交互に配置されている構成とすることができる。さらに、該光ファイバの一端に前記金属層で被覆されたコアファイバ部を有し、該一端の先端部に反射材を備えた構成とすることができる。
【0012】
また、本発明によれば、上述の検出装置において、該光ファイバの一端に前記金属層で被覆されたコアファイバ部を有し、該一端の先端部に反射材を備えた検出装置が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、上記検出装置において、該光ファイバが、ステップインデックス型マルチモード光ファイバである検出装置が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、上記検出装置において、該感受性を有する誘電体層が、抗原、抗体、ホルモン、リセプター、ポリペプチド、核酸、細胞、糖タンパク、脂質及び色素から選ばれる少なくとも1つを担持した高分子化合物層である検出装置が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、前記検出装置において、感受性を有する誘電体層が、有機薄膜である検出装置が提供される。
【0016】
本発明の上記検出装置においては、タンパク質の抗原、有機化合物、生体分子などを被検出対象とすることができる。
更に、本発明によれば、上記各構成の検出装置に用いられる表面プラズモンセンサーであって、コアファイバ部が軸方向にクラッド層で被覆された部分及び金属層で被覆された部分を備えた光ファイバと、前記金属層の表面に位置し、且つ、前記被検出対象に対して感受性を有する部分と前記被検出対象に対して感受性を有しない部分とを備え、光を反射する性質を有する誘電体層とを備えることを特徴とする表面プラズモンセンサーが提供される。
【0017】
本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサーは、金属薄膜外周に配置した誘電体の種類によって表面プラズモン波の共鳴条件が異なることを利用したものである。すなわちセンシング対象物(被検出対象)に対して感受性を有する誘電体層(以下、「感受性誘電体層」という)を、光ファイバ軸方向に平行に配置した構造を有している。また、光ファイバ軸方向に平行に、被検出対象に対して感受性を有しない誘電体層(以下、「非感受性誘電体層」という)が適宜設けられる。ここで「光ファイバ軸方向に平行に配置した」とは、金属薄膜外周を取り囲むように円筒状の形状をもって配置されることをいい、例えば図8に示すように配置されることをいう。図のように、感受性誘電体層と、非感受性誘電体層もしくは金属薄膜の露出した部分とは、光ファイバの軸方向に交互に配置されることが好ましく、これらは図8(c)に示すようにそれぞれ複数設けられてもよい。
【0018】
以上のような構造を有する光ファイバ表面プラズモンセンサーを用いた場合、反射光の波長分散を観測すると二つの極小点を見出すことができる。この二つの極小点での波長の差分(△λ)は光ファイバ近傍の温度や圧力変化に由来すると考えられる共鳴条件の変化には影響されない。したがって上記差分(△λ)を観測することで、従来技術が抱えていた共鳴条件のドリフトの問題を解消し、検出感度の向上を図るとともに長時間にわたるモニターが可能となる。また、上記差分(△λ)は感受性膜の共鳴条件変化により値が変動する場合がある。この差分の変化量(△λ+δλ)を求めることによって、感受性膜の回折インデックス及び厚さの物理化学的変化をより高感度に検出することができる。さらに、本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサーはセンシング部位とリファレンス部位とが一体化されているため、センサーの小型化が図られる。このため従来より広範囲な分野への応用が可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の表面プラズモンセンサーは、コアファイバ部とこれを覆うクラッド層とを有する光ファイバの一部にセンシング部位が設けられた構造を有する。例えば、クラッド層を一定長さ除去することによりコアファイバ部の表面を露出させ、この表面を覆うように金属薄膜を形成し、その表面に、感受性誘電体層等を形成することにより作製される。ここでいうクラッド層とは、コアの外周にバッファ層が設けられている場合はこれも含むものとする。クラッド層は既知の方法で除去することができる。すなわち、トーチの使用、化学的エッチングにより除去することができ、あるいは市販の機械的除去装置(例えばClausse, No−Nik Optical fiber Stripper, EdmondScientific Catalog, Barrington, N.J.)を用いても良い。
【0020】
本発明において、クラッド層を除去する長さはセンサーを使用しようとする対象のスケールによって、また光ファイバの直径とコアー/クラッド層界面での反射角度から決まるセンシングエリアでの反射回数が1回以上にすべきことによって決められる。共鳴条件を満たす反射角度で伝達される光はセンシングエリアでの反射回数によって指数関数的に減衰する。例えばコア径400μmの光ファイバを用いる場合、センシングエリアの長さは好ましくは1〜1000mm、より好ましくは5〜100mmとする。
【0021】
本発明で使用される金属薄膜を構成する金属は、「表面」Vol.20 No.6(1982)p.289〜304に記載されているように、複素誘電率の実部が負で大きなAg、Au、Cu、Zn、Al、Kが望ましく、虚部の大きさの関係から特にAg、Auが好適で、Pd、Ni、Feは望ましくない。また、金属薄膜は合金組成で構成することもできるが、AuにPdを混合した場合には表面プラズモンが消滅するため、この合金の使用は好ましくない。さらに、金属薄膜は、コアファイバへの密着性を向上させるために、例えばその表面にCr膜を極めて薄く形成し、その上にAu膜等を形成した多層構造をもって構成することもできる。
【0022】
本発明で使用される「感受性を有する誘電体層」(感受性誘電体層)とは、被検出対象と相互作用し、その屈折率及び厚さ等の物理化学的変化が惹起されるものを指し、具体的には抗原や抗体等を担持した高分子層、特定の有機化合物に親和性を示すラングミュア−ブロージェット膜、ホルモン、リセプター、ポリペプチド、核酸、細胞、細胞膜、糖タンパク、脂質、色素から選ばれる1種以上を担持した高分子化合物層などをいう。
【0023】
本発明で使用される「被検出対象に対して感受性を有しない誘電体層」(非感受性誘電体層)とは、被検出対象と相互作用せず、その屈折率及び厚さ等の物理化学的変化が惹起されないものを指し、感受性誘電体層との組合せに応じて決められる。具体的には感受性誘電体層が抗体を担持した高分子層である場合には、非感受性誘電体層には抗体を担持していない高分子層などを用いることができる。
【0024】
また非感受性誘電体は必ずしも設ける必要はない。すなわち図8(a)に示すように、コアファイバ部表面を覆う金属薄膜14の一部分が露出し、他の部分が感受性誘電体層11により覆われた構造とすることもできる。この場合、周囲の媒質、例えば空気や水と等しい屈折率を有する非感受性誘電体層が形成されているものと考えることができる。非感受性誘電体層と感受性誘電体層との屈折率差が大きくなり共鳴条件も大きく異なるため、二つの共鳴波長をより明確に検出することが可能になる。したがって、非感受性誘電体層を設けた場合より好ましい場合がある。
【0025】
感受性誘電体層と非感受性誘電体層は、コアファイバ上に設けられた金属薄膜に接して、ファイバ軸方向にお互いに平行に配置される必要がある。それぞれの層の軸方向の長さ、またそれぞれの層の厚さは任意の割合にすることができる。共鳴波長での光強度の減衰率は誘電体層エリアでの反射回数、すなわち誘電体層の長さに基づくのでそれぞれの層の軸方向の長さは極端に短くすることはできない。コア径をd、コア・クラッド界面での反射角度をθとすれば、センシングエリアの軸方向の長さはdtanθ以上とすることが好ましい。
【0026】
感受性誘電体層と非感受性誘電体層は、ファイバ軸方向にお互いに交互に複数層配置することもできる。この場合各誘電体層間の物理的距離が接近するので、より局所的変化の影響を受けにくくすることができる。
【0027】
感受性誘電体層は二種類以上の測定対象に応じて、異なる感受性誘電体層を複数用いることができる。例えば相異なる抗原に対して特異性を有する相異なる抗体を別々の高分子層に担持すれば、二つの抗原を同時に検出できる。ただし複数種類の感受性誘電体層を設ける場合には、それぞれの誘電体層は、検出対象の有無に応じていずれかの場合にはそれぞれ異なる共鳴条件を示すものでなければならない。
【0028】
センシング部位をファイバの端に構成することはセンサー自体の小型化のため望ましい。この際にはファイバの端面に反射材を配置することによってファイバ内を逆行してきた反射光を受光することが可能となる。反射材としては銀やアルミニウム等を蒸着して形成することができる。
【0029】
【実施例】
(実施例1)
ステップインデックス型マルチモード光ファイバ(クラッド径430μm、コア径400μm)の一端のクラッド層を、Biosensors Bioelectron.,7(1992)193−197に記載のWeberとSchultzらの方法によって20mmの長さだけ除去した。
【0030】
露出したコアファイバ全面に金を500オングストローム蒸着した。端面には反射材として銀を350nm蒸着した。
【0031】
以下の手順(1)〜(4)で端面から10mmの長さの金薄膜上に、抗HIV−1 emv gp120/160モノクローナル抗体を担持した感受性誘電体層を形成した。
(1)シスタミン二塩酸塩(東京化成工業株式会社製)をクロロホルムに溶解し0.005Mとし、この溶液中にファイバ端を10mmだけ浸し、3時間循環させ、金薄膜上にアミノ基を導入した。
(2)次にBS3[Bis(sulfosuccinimidyl)suberate](PIERCE社製)を、0.15MNaClを含む20mMりん酸ナトリウム緩衝液、pH7.5に溶解し2mMとし、この溶液中にファイバ端を10mmだけ浸し、10分間循環させ、薄膜上にスクシンイミジル基を導入した。
(3)次に抗HIV−1 emv gp120/160モノクローナル抗体(バイオライン社製)を、0.15MNaClを含む20mMりん酸ナトリウム緩衝液、pH7.5に溶解し1mg/mlとし、この溶液にファイバ端を10mmだけ浸し、1時間循環させ、薄膜上に抗HIV−1 emv gp120/160モノクローナル抗体を担持した。
(4)最後に1M Tris−HClバッファー、pH7.5にファイバ端を10mmだけ浸し、10分間循環させ、薄膜上の未反応のスクシンイミジル基を反応させた。
【0032】
作製した光ファイバ表面プラズモンセンサーの評価系として図1に示す測定システムを構成した。白色光源1(タングステン−ハロゲンランプ)から出力された白色光は、レンズ2で集光され光ファイバ3に導入される。ビームスプリッター4を経て、センシング部位5に導かれた光は、コア−金属薄膜界面で複数回反射されながら反射材6に至る。反射材6よって反射された光は、センシング部位5内で再び複数回反射されながらファイバ内を逆行する。逆行してきた光はビームスプリッター4で分光器7に導かれ、パーソナルコンピュータ8で解析される。分光器7は400〜900nmの波長範囲の光を0.5nmの分解能で分光する。センシング部位5はフローセル9内に配置されており、検出対象物質の濃度を任意に制御することができる。
【0033】
上述した手順で作製した光ファイバ表面プラズモンセンサーの、解析された共振スペクトルを図2に示す。612nm付近と650nm付近に二つの谷が見出された。それぞれの谷付近の相対強度変化を二次関数で近似し、極小値を与える共振波長を計算した。短波長側の共振波長λR、長波長側の共振波長λs、及び△λ=λS−λRを計算し、その時間変化をモニターした。
【0034】
図3に計算されたλR、λS、及び△λの時間変化の一例を示す。λR及びλSは時間とともにドリフトし安定しないが、△λは安定していることがわかる。
【0035】
フローセルを通じて検出対象物質であるリコンビナントHIV−1 gp 120(レプリジエン社製)を導入した。抗原物質導入前後の解析されたファイバ表面プラズモンセンサーの共振スペクトルを図4に示す。抗原物質の導入に伴い、短波長側の共振波長λRはほとんど変化しなかったが、長波長側の共振波長λSは長波長側にシフトした。このことから、短波長側の共振は非感受性誘電体層での表面プラズモン共鳴を反映したものであり、長波長側の共振は感受性誘電体層での表面プラズモン共鳴を反映したものであることがわかる。
【0036】
フローセルを通じて導入されるリコンビナントHIV−1 gp 120の濃度と、この時の△λの変化量δλとの相関を図5に示す。広い濃度範囲に渡って相関が認められ、本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサーが、抗原−抗体反応の検出に応用可能であることが証明された。
【0037】
(実施例2)
実施例1と同様の方法を用いてステップインデックス型マルチモード光ファイバ(クラッド径430μm、コア径400μm)の一端のクラッド層を20mmの長さだけ除去し、露出したコアファイバ全面に金を500オングストローム、端面には反射材として銀を350nm蒸着した。金属薄膜表面を水洗・乾燥後に1、1、1、1−ヘキサメチルジシラザン(東京化成社製)雰囲気下で室温にて一昼夜静置し、表面を疎水処理した。
【0038】
有機溶剤に感受性を有するポリマーとして、メタクリル酸2−エチルヘキシルおよびスチレンからなる共重合体を以下の手順で調製した。
【0039】
19.83グラム(0.1モル)のメタクリル酸2−エチルヘキシルと10.4グラム(0.1モル)のスチレンと164ミリグラムのアゾビスイソブチロニイトリル(AIBN)とを120ミリリットルのテトラヒドロフランに20℃において溶解せしめた。この溶液を窒素で1時間パージした。次いで、溶液を加熱して65℃で7時間還流した。還流中は、溶液を窒素でパージして酸素が混入しないようにした。溶液を20℃まで冷却し、引き続き溶液を800ミリリットルのへキサン中に注ぐとメタクリル酸2−エチルヘキシルおよびスチレンからなる共重合体が沈殿した。純度を更に高めるために、この共重合体を50ミリリットルのテトラヒドロフランに溶解せしめ、引き続き800ミリリットルのヘキサンで沈殿せしめた。最後に、得られた共重合体を捕集し、真空中60℃にて乾燥した。乾燥後、共重合体中に残留するモノマーを検出するために薄層クロマトグラフィーによる試験をしたが、この共重合体中には残留モノマーは含まれていなかった。
【0040】
最終的に無色透明のメタクリル酸2−エチルヘキシルおよびスチレンからなる共重合体が19.8グラム得られた。この共重合体の屈折率をアッベ屈折計を用いて測定したところ、23℃において1.522であった。
【0041】
また、示差走査熱量計(パーキン・エルマー社製DSC7)により、この共重合体のガラス転移温度を測定したところ、13℃であった(昇温速度10℃/分)。
【0042】
このメタクリル酸2−エチルヘキシルおよびスチレンからなる共重合体の元素分析を行ったところ、炭素が79.58%であり、水素が9.96%であった。この結果より、メタクリル酸2−エチルヘキシルおよびスチレンからなる共重合体中の二種のコモノマーの割合は、モル比にしてメタクリル酸2−エチルヘキシルが0.49であり、スチレンが0.51であることが分かった。
【0043】
また、この共重合体の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。溶媒としてテトラヒドロフランを用い、ポリスチレンをスタンダードに用いてキャリブレーションした。その結果、この共重合体の重量平均分子量Mwは50300であり、数平均分子量Mnは29300であった。また、分子量分布Mw/Mnは1.73であった。
【0044】
ファイバ端から10mmの金薄膜の表面に、上記共重合体のシクロヘキサノン溶液(濃度2.5重量%)をキャスト法により塗布した。その結果得られたポリマーフィルムの厚みは約50nmであった。なお、ポリマーフィルムの厚みはポリマー濃度に依存していた。ポリマーフィルムを真空下においてポリマーのガラス転移温度近傍にて乾燥せしめた。
【0045】
作製した光ファイバ表面プラズモンセンサーを図1に示す測定システムを用いて評価した。フローセル内にヘキサンを蒸気として含む空気を導入し、共鳴スペクトルを解析した。
【0046】
共振スペクトルには二つの谷が見出された。それぞれの谷付近の相対強度変化を二次関数で近似し、極小値を与える共振波長を計算した。短波長側の共振波長、λR長波長側の共振波長λS、及び△λ=λS−λRを計算し、その時間変化をモニターしたところ、λR及びλSは時間とともにドリフトし安定しなかったが、△λは安定していることがわかった。
【0047】
ヘキサン蒸気の導入前後で、短波長側の共振波長はほとんど変化しなかったが、長波長側の共振波長は長波長側にシフトした。このことから、短波長側の共振は非感受性誘電体層の共振を反映したものであり、長波長側の共振は感受性誘電体層の共振を反映したものであることがわかった。
【0048】
フローセルを通じて導入されるヘキサンの濃度と、この時の△λの変化量δλとの相関を図6に示す。広い濃度範囲に渡って線型性が成立し、本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサーが、気体中に含まれる有機化合物の検出・モニターリングに応用可能であることがわかった。
【0049】
(実施例3)
実施例1と同様にしてステップインデックス型マルチモード光ファイバ(クラッド径430μm、コア径400μm)の一端のクラッド層を20mmの長さだけ除去し、露出したコアファイバ全面に金を500オングストローム、端面には反射材として銀を350nm蒸着した。
【0050】
金属薄膜表面を水洗・乾燥後に2%γ−アミノプロピルエトキシシランのアセトン溶液でシラン処理とともに金薄膜表面にアミノ基を導入した。さらに5%グルタルアルデヒド水溶液で表面処理することにより、金薄膜上に有機膜を形成した。
【0051】
次にBS3[Bis(sulfosuccinimidyl)suberate(PIERCE社製)を、0.15MNaClを含む20mMりん酸ナトリウム緩衝液、pH7.5に溶解し2mMとし、この溶液中にファイバ端を10mmだけ浸し、10分間循環させ、薄膜上にスクシンイミジル基を導入した。
【0052】
次に抗HIV−1 emv gp120/160モノクローナル抗体(バイオライン社製)を、0.15MNaClを含む20mMりん酸ナトリウム緩衝液、pH7.5に溶解し1mg/mlとし、この溶液にファイバ端を10mmだけ浸し、1時間循環させ、薄膜上に抗HIV−1emv gp120/160モノクローナル抗体を担持した。
【0053】
最後に1Mn Tris−HClバッファーpH7.5にファイバ端を10mmだけ浸し、10分間循環させ、薄膜上の未反応のスクシンイミジル基を反応させた。
【0054】
このようにして端面から10mmの長さの金薄膜上に、抗HIV−1emv gp120/160モノクローナル抗体を担持した感受性誘電体層を形成した。
【0055】
作製した光ファイバ表面プラズモンセンサーを図1に示す測定システムを用いて評価した。フローセル内に抗原であるリコンビナントHIV−1 gp120を100nMの濃度で含む水溶液を導入し、導入と除去に伴い誘起される共振スペクトル変化をモニターした。
【0056】
共振スペクトルには二つの谷が見出された。それぞれの谷付近の相対強度変化を二次関数で近似し、極小値を与える共振波長を計算した。短波長側の共振波長、λR長波長側の共振波長λS、及び△λ=λS−λRを計算し、その時間変化をモニターした。結果を図7に示す。この結合と解離過程の解析から、会合速度定数kaおよび解離速度定数kdはそれぞれka=3.2×104[M−1s−1]、kd=9.3×10−4[s−1]であることがわかった。
【0057】
このことから本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサーが、生体分子間の相互作用のリアルタイム解析に応用可能であることがわかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサーによれば、温度や圧力などの変化に起因すると考えられる共鳴条件のドリフトが防止され、長時間に渡るリモートセンシングが可能となる。本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサーにおいてはセンシング部位とリファレンス部位とが一体化されており、センサープローブの小型化に成功している。このことは人体内部や地中など容易にアプローチできない場所にセンサーを導入する場合に効果的である。本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサーは、感受性誘電体層に抗原や抗体、その他生体分子を固定化することによって、バイオセンサーとして利用できる。また感受性誘電体層に特定の化学物質に親和性を有するものを使用することによって、環境センサーとして利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサープローブの構造と測定システムを示す図である。
【図2】本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサーで解析された共振スペクトルを示す図である。
【図3】二つの共鳴波長及びそれらの差分の時間変化を示す図である。
【図4】抗原導入にともなう共振スペクトルの変化を示す図である。
【図5】抗原濃度と二つの共鳴波長差の変化量との相関を示す図である。
【図6】ヘキサン濃度と二つの共鳴波長差の変化量との相関を示す図である。
【図7】本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサーで測定された抗原抗体相互作用のセンサーグラムを示す図である。
【図8】本発明の光ファイバ表面プラズモンセンサープローブの他の構成例を示す図である。(a)は非感受性誘電体層として何も設けず、金属薄膜が露出された構成例である。(b)は感受性誘電体層と非感受性誘電体層とを端面から逆の順番で配置した構成例である。(c)は感受性誘電体層と非感受性誘電体層を複数層配置した構成例である。(d)は反射材を配置せず、ファイバ途中にセンサーを配置した構成例である。
【符号の説明】
1 白色光源
2 レンズ
3 光ファイバ
4 ビームスプリッター
5 表面プラズモンセンサー
6 反射材
7 分光器
8 パーソナルコンピュータ
9 フローセル
10 非感受性誘電体層
11 感受性誘電体層
12 クラッド層
13 コアファイバ部
14 金属薄膜
Claims (6)
- 被検出対象を検出するための検出装置であって、
コアファイバ部が軸方向にクラッド層で被覆された部分及び金属層で被覆された部分を備えた光ファイバと、
前記金属層の表面に位置し、且つ、前記被検出対象に対して感受性を有する部分と前記被検出対象に対して感受性を有しない部分とを備え、光を反射する性質を有する誘電体層と、
前記誘電体層の表面に検体を接触させた後に、前記光ファイバに光を導入するための導入手段と、
前記導入手段から前記光ファイバ内に光を導入したときに、前記感受性を有する部分と前記感受性を有しない部分において反射されたそれぞれの光の共振波長の差を得るための手段とを有し、
前記得られた差に基づき、前記被検出対象の検出を行うことを特徴とする検出装置。 - 前記感受性を有する部分と前記感受性を有しない部分とが、前記光ファイバの軸方向に交互に配置されていることを特徴とする請求項1記載の検出装置。
- 前記光ファイバの先端部に反射材を備えることを特徴とする請求項1または2記載の検出装置。
- 前記感受性を有する誘電体層が、抗原、抗体、ホルモン、リセプター、ポリペプチド、核酸、細胞、糖タンパク、脂質及び色素から選ばれる少なくとも1つを担持した高分子化合物層であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の検出装置。
- 前記被検出対象が、タンパク質抗原、有機化合物及び生体分子のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の検出装置。
- 請求項1乃至5のいずれかに記載の検出装置に用いられる表面プラズモンセンサーであって、
コアファイバ部が軸方向にクラッド層で被覆された部分及び金属層で被覆された部分を備えた光ファイバと、
前記金属層の表面に位置し、且つ、前記被検出対象に対して感受性を有する部分と前記被検出対象に対して感受性を有しない部分とを備え、光を反射する性質を有する誘電体層とを備えることを特徴とする表面プラズモンセンサー。
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JP2593298A JP3592065B2 (ja) | 1998-02-06 | 1998-02-06 | 検出装置及びそれに用いる表面プラズモンセンサー |
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