JP3586377B2 - ガスセンサの製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素センサ、HCセンサ、NOXセンサなど、測定対象となるガス中の被検出成分を検出するためのガスセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
上述のようなガスセンサ、特に酸素センサが例えば自動車に搭載される場合、エンジンルーム以外にも、例えば車両の足周り部分に近い排気管等に取り付けられることも多い。このような状況においてガスセンサは、雨中走行時や洗車時等に水滴の噴射を受けたり、油分等の汚れの付着、さらには跳ね上がった小石等から受ける衝撃など、かなり厳しい環境にさらされることとなる。この場合、検出素子を水滴や汚れの付着から保護するために、これを収容するケーシングの構造としては、なるべく高強度で密閉性の高いものを使用しなければならない。しかしながら、ケーシング内へは検出素子の基準ガスとして大気を導入する必要があることから、外部との連通部も必ず設けなければならない。すなわち、上記ガスセンサを厳しい環境下で長期に亙って安定的に作動させるには、水等に対する液密性を一定レベル以上に高めつつ、しかも気通性は確保するという相反した課題を同時に解決する必要がある。
【0003】
そこで、このような要求に応じるため、例えば特開平8−201338号公報には、ケーシングに通気孔を設け、さらにこれを撥水性フィルタで覆うことにより、水滴等の侵入は阻止しつつ大気の流通は確保できるようにした構造のガスセンサが開示されている。また、該公報においてはさらに、それぞれ通気孔を有する内外の筒状体でフィルタを挟み付け、各筒状体に通気を確保するための通気孔を周方向に複数形成するとともに、内外の筒状体とフィルタとの間にそれぞれ環状の空間部を形成する構造が開示されている。該構造においては、フィルタの表面を空気の流通路として有効利用することができ、燃料リッチな雰囲気においても検出特性が低下しない十分な量の空気を確実にケーシング内に導くことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示されたガスセンサにおいては、フィルタを固定する外側の筒状体とフィルタとの間にも隙間が形成されているので、通気孔から油や水滴あるいはゴミ等が侵入して筒状体とフィルタとの間に溜まりやすい問題がある。この場合、溜まった油や水等によりフィルタの通気性が阻害されたり、あるいは高温作動時において溜まった油が揮発し、フィルタを介してこれがセンサ内部に侵入して、センサの出力低下を起こしやすい欠点がある。
【0005】
本発明の課題は、フィルタとその外側に配置されたフィルタ保持部との間に隙間が形成されにくく、ひいては水や油、ゴミ等が溜まりにくい構造のガスセンサを、能率よく製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
本発明は、先端部に形成された検出部にて被測定ガス中の被検出成分を検出する検出素子と、検出部への被測定ガスの流通を許容した状態で、検出素子の外側を覆う筒状のケーシングとを備えたガスセンサの製造方法に関し、
そのガスセンサは、
ケーシングの後方側においてこれと一体的に設けられ、ケーシング内に外気を導くための第一気体導入孔が形成された第一フィルタ保持部と、
その第一フィルタ保持部の内側又は外側に設けられ、ケーシング内に外気を導くための第二気体導入孔が形成された第二フィルタ保持部と、
それら第一及び第二フィルタ保持部の間において第一及び第二気体導入孔を塞ぐ形態で配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタとを備え、
第一及び第二フィルタ保持部のうち外側に位置するものを内側に位置するものに向けて加締めることにより加締め部を形成し、その加締め部においてフィルタを、第一及び第二フィルタ保持部の間にて挟み付ける形で保持させた構造を有するものであり、かつ、
上記課題を解決するために、フィルタ外側の圧力をPo、同じく内側の圧力をPiとして、Pi>Poとなるように気圧差を付与することにより、第一及び第二フィルタ保持部のうち外側に位置するものの内面とフィルタとの間に形成される隙間量を減じ、その状態で加締め部を形成することを特徴とする。
【0007】
上記の本発明のガスセンサの製造方法によれば、フィルタ外側の圧力をPo、同じく内側の圧力をPiとして、Pi>Poとなるように気圧差を付与することにより、第一及び第二フィルタ保持部のうち外側に位置するものの内面とフィルタとの間に形成される隙間量を減じ、その状態で加締め部を形成するようにしたから、フィルタとその外側のフィルタ保持部との間に隙間が形成されることが効果的に防止ないし抑制される。その結果、フィルタとフィルタ保持部との間に水や油、ゴミ等が溜まりにくい構造のガスセンサを、能率よく製造することができる。この場合、上記圧力差の付与により、フィルタを外側のフィルタ保持部内面に密着させることが、隙間形成を防止する上でより望ましいといえる。
【0008】
上記ガスセンサは、第一フィルタ保持部をケーシングと内部が連通する筒状に形成し、フィルタを該第一フィルタ保持部を外側から覆う筒状に形成し、第二フィルタ保持部をフィルタを外側から覆う形で配置される筒状に形成した構成を採用することができる。この場合、上記製造方法は、第一フィルタ保持部の内側空間を加圧する、及び/又は第二フィルタ保持部の外側空間を減圧することにより、フィルタを外向きに膨らませて第二フィルタ保持部の内面との間の隙間を減少させ、その状態で第二フィルタ保持部を第一フィルタ保持部に向けて加締めることにより加締め部を形成するように実施することができる。2つの筒状のフィルタ保持部の間に挟まれた筒状のフィルタに対し、上記気圧差の付与によりこれを膨らませるように変形させることで、フィルタを第二フィルタ保持部の内面に容易に密着させることができ、ひいては両者の間に隙間を生じにくくする効果が一層高められる。
【0009】
上記ガスセンサにおいては、より具体的には、第一及び第二気体導入孔は、それぞれ第一及び第二フィルタ保持部に対し周方向に所定の間隔で複数形成され、加締め部は、第一及び第二フィルタ保持部の軸線方向においてそれら気体導入孔の列を挟んでその両側に形成された円環状の加締め部とすることができる。このような構造を採用することにより、フィルタの保持と、そのフィルタを介したケーシング内への外気の導入とをより確実に図ることができる。この場合、第二フィルタ保持部は、それら円環状の加締め部の形成に伴い両加締め部の間に挟まれる部分が外向きに橈み変形して膨出部を形成することが多く、フィルタとの間に隙間がより形成されやすくなる。しかしながら、上記気圧差の付与に基づきその膨出部内面に倣う形状にフィルタを膨らませつつ、加締め部の形成により両フィルタ保持部の間にて固定するようにすれば、このような本来隙間を生じやすい構造のセンサにおいても、該隙間の形成を確実に防止することができるので、波及効果が特に大きいといえる。
【0010】
この場合、加締め部を形成する際に、フィルタと第一フィルタ保持部及び第二フィルタ保持部とを密着させる仮加締め状態を形成し、その状態で気圧差を付与してフィルタを膨らませて第二フィルタ保持部の内面に密着させ、次いで本加締めを行うようにすることができる。いったん仮加締め状態として、フィルタとフィルタ保持部との間に気密性を確保することで、フィルタに上記気圧差を確実に付与することができ、隙間形成の防止効果を一層高めることができる。
【0011】
また、上記ガスセンサにおいては、第一フィルタ保持部は、ケーシングとは別体の筒状体として該ケーシングに対し後方側から連結されるものとして構成することができる。この場合、上記本発明の製造方法は、ケーシングに組み付ける前の状態で、第一フィルタ保持部の外側にフィルタ及び第二フィルタ保持部をこの順序で配置し、次いで第一フィルタ保持部の内側に加圧媒体を導入してこれを加圧することによりフィルタを外向きに膨らませ、その状態で加締め部を形成することにより、第二フィルタ保持部及びフィルタを第一フィルタ保持部に組み付けてフィルタアセンブリとなし、そのフィルタアセンブリをケーシングに対して組み付ける形で実施することができる。
【0012】
このように、フィルタを含む気通構造部をフィルタアセンブリとしてケーシングとは独立に構成し、これをケーシングに連結・一体化したセンサ構成を採用することにより、次のような効果が達成される。
▲1▼フィルタアセンブリの組立てをケーシングへ組付け前の状態で行うことができる。すなわち、ケーシングから取り外した状態であれば、第一フィルタ保持部内側に空気等の加圧媒体を簡単に導入することができるから、フィルタを膨らませる気圧差付与を内側からの加圧により簡単かつ確実に行うことができる。いわば、本発明の製造方法にもっとも適したセンサ構造であるということができる。
▲2▼フィルタアセンブリの組立ては、酸素検出素子などのケーシング内への組付けとは独立に行うことができるので、例えば検出素子のリード線が邪魔になったりせず、組立作業を極めて能率的に行うことができる。
▲3▼ケーシング内への部品の組付けと、フィルタアセンブリの組立てとを並行して行えるので、生産性が飛躍的に向上する。また、フィルタの組付け不良などが生じても、フィルタアセンブリの段階で不良が発見できれば、センサ完成品に該不良の影響は及ばず、部品等の無駄等が生じにくい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づき説明する。
(実施例1)
図1は本発明の製造方法が適用されるガスセンサの一例としての酸素センサを示している。該酸素センサ1は、先端が閉じた中空軸状の固体電解質部材である酸素検出素子2と、軸状のセラミックヒータである発熱体3とを備えて構成される。酸素検出素子2は酸素イオン伝導性を有する固体電解質により構成されている。そのような固体電解質としては、Y2O3ないしCaOを固溶させたZrO2が代表的なものであるが、それ以外のアルカリ土類金属ないし希土類金属の酸化物とZrO2との固溶体を使用してもよい。また、ベースとなるZrO2にはHfO2が含有されていてもよい。なお、以下においては、酸素検出素子2の軸方向においてその閉じた先端部に向かう側を「前方側(あるいは先端側)」、これと反対方向に向かう側を「後方側(あるいは後端側)」として説明を行う。
【0014】
この酸素検出素子2の中間部外側には、絶縁性セラミックから形成されたインシュレータ6,7、並びにタルクから形成されたセラミック粉末8を介して金属製のケーシング10が設けられ、酸素検出素子2はケーシング10と電気的に絶縁された状態で貫通している。ケーシング10は、酸素センサ1を排気管等の取付部に取り付けるためのねじ部9bを有する主体金具9、その主体金具9の一方の開口部に内側が連通するように結合された主筒14、該主筒14とは反対側から主体金具9に取り付けられたプロテクタ11等を備える。また、図2に示すように、酸素検出素子2の内面及び外面には、そのほぼ全面を覆うように一対の電極層2b,2cが設けられている。これら電極層2b,2cはいずれも、酸素検出素子2を構成する固体電解質へ酸素を注入するための酸素分子の解離反応、及び該固体電解質から酸素を放出させるための酸素の再結合反応に対する可逆的な触媒機能(酸素解離触媒機能)を有する多孔質電極、例えばPt多孔質電極として構成されている。
【0015】
主体金具9の前方側開口部には筒状のプロテクタ装着部9aが形成され、ここに、酸素検出素子2の先端側(検出部)を所定の空間を隔てて覆うようにキャップ状のプロテクタ11が装着されている。プロテクタ11には、排気ガスを透過させる複数のガス透過口12(本実施例では4つ)が貫通形態で形成されている。これにより排気ガス中の酸素が酸素検出素子2の先端側表面に接触可能となっている。
【0016】
主体金具9の後方側の開口部には、前述の主筒14がインシュレータ6との間にリング15を介して加締められ、この主筒14に筒状のフィルタアセンブリ16が外側から嵌合・固定されている。このフィルタアセンブリ16の図中上端側の開口はゴム等で構成されたグロメット(弾性シール部材)17で封止され、またこれに続いてさらに内方にセラミックセパレータ18が設けられている。そして、それらセラミックセパレータ18及びグロメット17を貫通するように、酸素検出素子2用のリード線20,21及び発熱体3用のリード線(リード線20,21の影になって見えない)が配置されている。
【0017】
次に、図3に示すように、セラミックセパレータ18には、各リード線20,21を挿通するための複数のセパレータ側リード線挿通孔72が軸方向に貫通して形成されており、その軸方向中間位置には、外周面から突出する形態でフランジ状のセパレータ側支持部73が形成されている。そして、該セラミックセパレータ18は、セパレータ側支持部73よりも前方側に位置する部分を主筒14の後端部内側に入り込ませた状態で、該セパレータ側支持部73において主筒14の後端面に当接するとともに、セパレータ側支持部73よりも後方側に位置する部分を主筒14の外側に突出させた状態で配置される。
【0018】
図1に戻り、酸素検出素子2用の一方のリード線20は、固定金具23のコネクタ部24及びこれに続く引出し線部25、並びに固定金具23の内部電極接続部26を経て、前述の酸素検出素子2の内側の電極層2c(図2)と電気的に接続されている。一方、他方のリード線21は、別の固定金具33のコネクタ部34及びこれに続く引出し線部35並びに外部電極接続部35bを経て、酸素検出素子2の外側の電極層2b(図2)と電気的に接続されている。
【0019】
ここで、酸素検出素子2は、排気ガス温が十分高温となっている場合には当該排気ガスで加熱されて活性化されるが、エンジン始動時など排気ガス温が低温である場合には前述の発熱体3で強制的に加熱することで活性化される。発熱体3は例えばセラミックヒータであり、先端部内部に発熱部42が設けられ、ヒータ端子部40から延びるリード線を経て通電されるようになっている。該発熱体3は、固定金具23の発熱体把持部27により把持されて、酸素検出素子2の中空部内に保持される。他方、固定金具23の内部電極接続部26は、酸素検出素子2の中空部内壁面2aとの間の摩擦力によって発熱体3を該中空部に対し軸線方向に位置決めする役割を果たすとともに、電極層2c(図2)と接触・導通するようになっている。
【0020】
次に、図3に示すように、フィルタアセンブリ16は、主筒14(ケーシング10)に対し後方外側からほぼ同軸的に連結される筒状形態をなすとともに、内部が主筒14の外部と連通し、かつ壁部に複数の第一気体導入孔52が形成された第一フィルタ保持部51を備える。そして、その第一フィルタ保持部51の外側には、上記第一気体導入孔52を塞ぐ筒状のフィルタ53が配置され、さらに、そのフィルタ53の外側には、壁部に1ないし複数の第二気体導入孔55が形成されるとともに、フィルタ53を第一フィルタ保持部51との間で挟み付けて保持する第二フィルタ保持部54が配置される。具体的には、第一気体導入孔52及び第二気体導入孔55は、第一フィルタ保持部51及び第二フィルタ保持部54に対し、各軸方向中間部において互いに対応する位置関係で周方向に沿って所定の間隔で形成されており、フィルタ53は、第一フィルタ保持部51を周方向に取り囲むように配置されている。
【0021】
フィルタ53は、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)の未焼成成形体を、PTFEの融点よりも低い加熱温度で1軸以上の方向に延伸することにより得られる多孔質繊維構造体(商品名:例えばゴアテックス(ジャパンゴアテックス(株)))により、水滴等の水を主体とする液体の透過は阻止し、かつ空気及び/又は水蒸気などの気体の透過は許容する撥水性フィルタとして構成されている。これにより、第二気体導入孔55からフィルタ53を経て第一気体導入孔52より、基準ガスとしての大気(外気)が主筒14(ケーシング10)内に導入されるとともに、水滴等の液体状態の水は主筒14内に侵入することが阻止されるようになっている。
【0022】
図4に示すように、第二フィルタ保持部54には、第二気体導入孔55の列を挟んでその軸方向両側に、フィルタ53を介して該第二フィルタ保持部54を第一フィルタ保持部51に対して結合する環状のフィルタ加締め部56,57(以下、単に加締め部56,57ともいう)が形成されており、両者の間に挟まれた部分(第二気体導入孔55の形成部分)は、加締めによる変形の影響で外向きに撓んで太鼓状に膨出している。この膨出により、第一フィルタ保持部51の外面とフィルタ53との間には、例えば第二気体導入孔55の列に沿って環状形態をなすように所定量の隙間58が形成されている。他方、第二フィルタ保持部54の内面にはフィルタ53がほぼ密着する形態となっており、隙間はほとんど形成されていない。
【0023】
他方、第一フィルタ保持部51は、自身の軸方向中間部に形成された段付き部60により、該段付き部60に関して軸方向前方側を第一部分61、同じく軸方向後方側を第二部分62として、該第二部分62が第一部分61よりも径小となるように構成されており、第一気体導入孔52はその第二部分62の壁部に形成されている。さらに、第二フィルタ保持部54は第一フィルタ保持部51の第一部分61の外径よりも小さい内径を有する。
【0024】
図3に戻り、第一フィルタ保持部51は、セラミックセパレータ18の突出部分を第二部分62の内側まで進入させてこれを覆うとともに、段付き部60においてセパレータ側支持部73に対し、主筒14とは反対側から金属弾性部材74を介して当接するように配置される。他方、該第一フィルタ保持部51の先端側、すなわち第一部分61において主筒14(ケーシング10)に対し外側からこれに重なりを生じるように配置され、その重なり部において第一フィルタ保持部51を主筒14に向けて加締めることにより、それらの周方向に円環状のケーシング加締め部76が形成される。このケーシング加締め部76により、第一フィルタ保持部51は主筒14に対し、内周面が主筒14の外周面に対して気密状態となるように圧接されてこれに連結されている。
【0025】
第二フィルタ保持部54の外側には、筒状の防護カバー64がこれを覆うように設けられている。この防護カバー64は、フィルタ53への直接的な液滴の噴射あるいは油や汚れ等の付着物の付着を阻止ないし抑制する働きをなす。該防護カバー64は、図3に示すように、例えば第一気体導入孔52(あるいは第二気体導入孔55)に対応する位置においてフィルタ53との間に気体滞留空間65を生じるように配置され、軸方向において第一気体導入孔52を挟んだ両側部分が、第一フィルタ保持部51の外面に対しカバー接合部としての加締め部66,67により接合されている。そして、その軸方向前方側の加締め部66に対応する位置において、第一フィルタ保持部51との間には、気体滞留空間65を外部と連通させてこれに外気を導入する外部連通部68が形成されている。具体的には、図4に示すように、第一フィルタ保持部51の第一部分61の外周面に、該第一フィルタ保持部51の軸方向に延びる溝部69が周方向に沿って所定の間隔で複数形成され、これら溝部69が外部連通部を構成している。
【0026】
以下、フィルタアセンブリ16の組立工程について、加締め工程を中心に説明する。なお、この工程は、フィルタアセンブリ16を主筒14(ケーシング10)に組み付ける前に実施されるものである。まず、図5(a)に示すように、第一フィルタ保持部51’に対し筒状のフィルタ53を外挿し、さらにその外側に筒状の第二フィルタ保持部54’を配置する。ここで、第一フィルタ保持部51’に形成された段部60は、フィルタ53と第二フィルタ保持部54’の下縁部を支持してこれらが抜け落ちることを阻止する役割を果たす。そして、ゴム等で構成された栓体C,Cを第一フィルタ保持部51’の上下の開口部に嵌め込む。ここで、栓体C,Cの一方(又は両方)には加圧媒体としての空気を導入するためのガス導入孔80が形成されている。
【0027】
続いて、第二フィルタ保持部54’を、第二気体導入孔55の列の両側においてそれぞれフィルタ部に向けて周方向に加締めることにより、加締め部56,57を形成する。この加締め部56,57は、図6に示すように、第二フィルタ保持部54’の周方向に沿って配置された複数の加締めパンチ251を用いて、該第二フィルタ保持部54’を半径方向に圧縮することにより形成することができる。各加締めパンチ251の内周面は互いに連なって第二フィルタ保持部54’の外周面に対応する円筒面を形成するとともに、それぞれ第二フィルタ保持部54’の外周面に対して接近・離間可能とされ、図示しないパンチ駆動部により第二フィルタ保持部54’に対し一斉に接近してこれを圧縮するようになっている。そして、各加締めパンチ251の軸方向両端縁には凸条部252,253が形成され、それぞれ第二フィルタ保持部54’の外周面に押し付けられてそれぞれ弧状の凹部を形成し、これが周方向に連なることで加締め部56,57となる。
【0028】
この加締めに際しては、まず、フィルタ53と第一フィルタ保持部51’及び第二フィルタ保持部54’とが密着する程度に途中まで加締めを行うことにより仮加締め部56’,57’を形成して、図5(b)に示す状態とする。次に、その状態で第一フィルタ保持部51の内側にガス導入孔80から空気Gを、例えばゲージ圧にて0.2〜1.0気圧程度の圧力で導入する(なお、さらに高い圧力(例えば5気圧程度)で導入することも可能である)。この空気Gは、第一気体導入孔52を経てフィルタ53の内面側に印加されるが、フィルタ53は、両フィルタ保持部51’,54’との間が仮加締め部56’,57’により密封されているので外向きに膨らみ、第二フィルタ保持部54’の内面に密着した状態となる。そして、この加圧状態を維持した状態で、図5(c)に示すように仮加締め部56’,57’をさらに加締める形で本加締めを行い、加締め部56,57を形成し、図4に示した構成のフィルタアセンブリ16が得られる。なお、フィルタ53の後方側には、加圧によるフィルタ53の後方側への浮き上がり及び飛び出しを防止するための押さえ金具Mが設けられている。
【0029】
ここで、加締めパンチ251の凸条部252,253に挟まれた部分は平坦な底部254a(平坦化部材)を有する凹所254とされ、その凹所254の深さhはフィルタ53と第二フィルタ保持部54との合計厚さよりも小さく設定されている。このような加締めパンチ251で第二フィルタ保持部54を圧縮すると、凸条部252,253が食い込むことで加締め部56,57が形成される一方、両加締め部56,57に挟まれた部分は、図4に示すように外向きに太鼓状に橈んで凸部59となる。この圧縮がある程度進行すると、その凸部59は凹所254の底部254aに当たって止められ、さらに圧縮を継続すると凸部59は凹所254により成形されて、該凹所254の平坦な底部に対応して平坦部59aが形成される。
【0030】
このとき、第二フィルタ保持部54は加締めに伴い比較的大きく圧縮変形し、凸部59における橈み量も大きくなるが、内側の第一フィルタ保持部52はそれほど圧縮されないため橈み量も小さい。一方、フィルタ53は柔軟であり、空気Gによる加圧により膨んで、加締めの進行により膨出しようとする凸部59の内面に倣うようにしてこれに押しつけられ密着する。そして、図4に示すように、フィルタ53は、第一フィルタ保持部52との間には環状の隙間58が形成される一方、第二フィルタ保持部54の内面には密着した状態で両フィルタ保持部51,54の間で固定されることとなる。
【0031】
このような構造とすることで、フィルタ53を透過してくる外気は、内側に環状の隙間58が形成されていることで流通抵抗が和らげられ、第一気体導入孔52を通ってスムーズに主筒14内に導入できる。一方、フィルタ53の外面は第二フィルタ保持部54の内面と密着しているので、第二気体導入孔55からフィルタ53と第二フィルタ保持部54との間にゴミや油分あるいは水滴等が侵入しにくくなり、ひいてはフィルタ53の外面側の撥油性あるいは撥水性の低下が阻止ないし抑制されて、常時良好な通気性が確保される。これにより、例えば基準ガス温度が高くなった場合でも、センサ出力の低下が起こりにくくなる。
【0032】
なお、本実施例では、第二フィルタ保持部54とフィルタ53との密着状態向上のため、凸部59に平坦部59aを形成しているが、フィルタ内面を加圧しつつ加締め部56,57を形成することで、この平坦部59aを形成しなくとも良好な密着状態が得られる場合がある。
【0033】
以下、フィルタアセンブリ16の主筒14に対する組付け方法について説明する。すなわち、図7(a)に示すように、セラミックセパレータ18に金属弾性部材74を外挿し、さらにそのセラミックセパレータ18の前端側を主筒14に挿入する。一方、フィルタアセンブリ16は図4に示すように予め組み立てておき、これを図7(a)に示すように、そのフィルタ保持部51においてセラミックセパレータ18及び主筒14の外側から被せる。なお、酸素検出素子2及び発熱体3等(図1)は主筒14内に予め組みつけておき、それらからのリード線20,21等はセラミックセパレータ18のセパレータ側リード線挿通孔72(図3)に通し、さらにフィルタ保持部51の後端側開口部から外側に延出した状態にしておく。
【0034】
続いて、図7(b)に示すように、主筒14とフィルタアセンブリ16とに軸方向の圧縮力を付加する。これにより、金属弾性部材74はフィルタ保持部51とセラミックセパレータ18のセパレータ側支持部73との間で圧縮変形し、セラミックセパレータ18を主筒14とフィルタ保持部51と間で挟み付けるための付勢力を発生する。そして、この状態を維持しつつ、図7(c)に示すように、フィルタ保持部51と主筒14とにケーシング加締め部76を形成し、両者を結合する。次いで、図7(d)に示すように、フィルタ保持部51の後端側開口部に弾性シール部材17を嵌め入れ、さらに防護カバー64を被せるとともに、(e)に示すように加締め部66及び67を形成して組立てが終了する。
【0035】
上記方法によれば、フィルタアセンブリ16の組立てが、酸素検出素子2などのケーシング10内への組付けとは独立に行われるので、リード線が邪魔になったりせず、組立作業を極めて能率的に行うことができる。また、ケーシング10内への部品の組付けと、フィルタアセンブリ16の組立てとを並行して行えるので、生産性が飛躍的に向上する。さらに、フィルタ53の組付け不良などが生じても、フィルタアセンブリ16の段階で不良が発見できれば、センサ完成品に該不良の影響が及ばず、部品の無駄等が生じにくい。
【0036】
(実施例2)
図8は、酸素センサの変形例を示すものである。以下、該酸素センサ100の、図1の酸素センサ1との相違点について説明する(図1の酸素センサと共通する部材については、同一の符号を付与して詳細な説明は省略する)。まず、その主体金具9(ケーシング10)の後方側の開口部には、主筒114の一端が、インシュレータ6との間にリング15を介して加締められている。また、第二フィルタ保持部154は、主筒114に対し後方外側からほぼ同軸的に連結される筒状形態をなす。そして、第二フィルタ保持部154の後端側開口部は、ゴム等で構成されたグロメット(弾性シール部材)17により封止され、またこれに続いてさらに内方にセラミックセパレータ18が設けられている。
【0037】
また、主筒114の後端部には、段付き部151により、該段付き部151に関して軸方向前方側を第一部分161、同じく軸方向後方側を第二部分162として、該第二部分162が第一部分161よりも径小となるように構成され、その第二部分162を第一フィルタ保持部として(以下、第一フィルタ保持部162と称する)、その周方向に複数の第一気体導入孔152が形成されている。また、第一フィルタ保持部162の外側には、上記第一気体導入孔152を塞ぐ筒状のフィルタ53が配置され、さらに、そのフィルタ53の外側が第二フィルタ保持部154により覆われている。そして、フィルタ53に対応する位置において、第二フィルタ保持部154の壁部には、周方向に所定の間隔で複数の第二気体導入孔155が形成されるとともに、それら第二気体導入孔155の列を挟んで両側に、第二フィルタ保持部154と主筒114の第一フィルタ保持部162との間で圧着固定する環状のフィルタ加締め部156,157(以下、単に、加締め部156,157ともいう)が形成されている。ここで、フィルタ53の外面は、第二フィルタ保持部154の内面に密着している。
【0038】
他方、第二フィルタ保持部154は、第一部分161において主筒114に対し外側からこれに重なりを生じるように配置され、その重なり部には周方向の環状の加締め部75が形成されている。この加締め部75により、第二フィルタ保持部154が主筒114に対して結合される。すなわち、ガスセンサ内部はグロメット17の加締め部19と加締め部75により気密状態とされている。
【0039】
以下、酸素センサ100におけるフィルタの加締め工程について、図9及び図10を用いて説明する。まず、検出素子2等を組み付けた主体金具9に、主筒114を結合した組立体を用意する。図9(a)に示すように、その組立体の主筒114の外側にフィルタ53及び第二フィルタ保持部154をこの順序で装着する。次いで、(b)に示すように、第二フィルタ保持部154の後端部をグロメット17に向けて周方向に加締めることにより加締め部19を形成する。
【0040】
続いて、(c)に示すように、第二フィルタ保持部154と主筒114との重なり部において第二フィルタ保持部154を主筒114の第一部分161に向けて加締めることにより、加締め部75を形成して両者を接合し、さらに第二フィルタ保持部154の外側を減圧する(すなわち、主筒114の内側の気圧をPi、第二フィルタ保持部154の外側の気圧をPoとして、Pi>Poとする)。なお、このような減圧は、図10に示すように、主筒114の後端部を、加締め装置等を組み込んだ減圧チャンバーC内に配置し、その内側空間を減圧吸引することにより行うことができる。
【0041】
そして、この状態で(d)に示すように、第二フィルタ保持部154を第一フィルタ保持部162に向けて加締めることにより、第二気体導入孔155を挟んでその両側に環状の加締め部156,157を形成する。第二フィルタ保持部154の加締め部156,157の間に挟まれる部分は、外向きに橈み変形して膨出部160となるが、フィルタ53は上記減圧による気圧差に基づきその膨出部160の内面に倣う形状に膨らみ、さらに加締め部156,157の形成により両フィルタ保持部154,162の間にて固定される。これにより、フィルタ53が膨出した第二フィルタ保持部154の内面に密着した固定構造が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の酸素センサを示す縦断面図。
【図2】その酸素検出素子部分を拡大して示す断面図。
【図3】図1の要部を拡大して示す断面図。
【図4】フィルタアセンブリの正面部分断面図。
【図5】図1の酸素センサのフィルタアセンブリの加締め工程を示す説明図。
【図6】加締め方法の説明図。
【図7】フィルタアセンブリのケーシングへの組付け工程を示す説明図。
【図8】実施例2の酸素センサを示す縦断面図。
【図9】図8の酸素センサのフィルタ保持部の加締め工程を示す説明図。
【図10】減圧によりフィルタの内外に圧力差を付与する方法の一例を示す説明図。
【符号の説明】
1,100 酸素センサ(ガスセンサ)
2 酸素検出素子(検出素子)
10 ケーシング
14,114 主筒(ケーシング)
51,162 第一フィルタ保持部
52,152 第一気体導入孔
53 フィルタ
54,154 第二フィルタ保持部
55,155 第二気体導入孔
56,57,156,157 加締め部
160 膨出部
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素センサ、HCセンサ、NOXセンサなど、測定対象となるガス中の被検出成分を検出するためのガスセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
上述のようなガスセンサ、特に酸素センサが例えば自動車に搭載される場合、エンジンルーム以外にも、例えば車両の足周り部分に近い排気管等に取り付けられることも多い。このような状況においてガスセンサは、雨中走行時や洗車時等に水滴の噴射を受けたり、油分等の汚れの付着、さらには跳ね上がった小石等から受ける衝撃など、かなり厳しい環境にさらされることとなる。この場合、検出素子を水滴や汚れの付着から保護するために、これを収容するケーシングの構造としては、なるべく高強度で密閉性の高いものを使用しなければならない。しかしながら、ケーシング内へは検出素子の基準ガスとして大気を導入する必要があることから、外部との連通部も必ず設けなければならない。すなわち、上記ガスセンサを厳しい環境下で長期に亙って安定的に作動させるには、水等に対する液密性を一定レベル以上に高めつつ、しかも気通性は確保するという相反した課題を同時に解決する必要がある。
【0003】
そこで、このような要求に応じるため、例えば特開平8−201338号公報には、ケーシングに通気孔を設け、さらにこれを撥水性フィルタで覆うことにより、水滴等の侵入は阻止しつつ大気の流通は確保できるようにした構造のガスセンサが開示されている。また、該公報においてはさらに、それぞれ通気孔を有する内外の筒状体でフィルタを挟み付け、各筒状体に通気を確保するための通気孔を周方向に複数形成するとともに、内外の筒状体とフィルタとの間にそれぞれ環状の空間部を形成する構造が開示されている。該構造においては、フィルタの表面を空気の流通路として有効利用することができ、燃料リッチな雰囲気においても検出特性が低下しない十分な量の空気を確実にケーシング内に導くことができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示されたガスセンサにおいては、フィルタを固定する外側の筒状体とフィルタとの間にも隙間が形成されているので、通気孔から油や水滴あるいはゴミ等が侵入して筒状体とフィルタとの間に溜まりやすい問題がある。この場合、溜まった油や水等によりフィルタの通気性が阻害されたり、あるいは高温作動時において溜まった油が揮発し、フィルタを介してこれがセンサ内部に侵入して、センサの出力低下を起こしやすい欠点がある。
【0005】
本発明の課題は、フィルタとその外側に配置されたフィルタ保持部との間に隙間が形成されにくく、ひいては水や油、ゴミ等が溜まりにくい構造のガスセンサを、能率よく製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
本発明は、先端部に形成された検出部にて被測定ガス中の被検出成分を検出する検出素子と、検出部への被測定ガスの流通を許容した状態で、検出素子の外側を覆う筒状のケーシングとを備えたガスセンサの製造方法に関し、
そのガスセンサは、
ケーシングの後方側においてこれと一体的に設けられ、ケーシング内に外気を導くための第一気体導入孔が形成された第一フィルタ保持部と、
その第一フィルタ保持部の内側又は外側に設けられ、ケーシング内に外気を導くための第二気体導入孔が形成された第二フィルタ保持部と、
それら第一及び第二フィルタ保持部の間において第一及び第二気体導入孔を塞ぐ形態で配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタとを備え、
第一及び第二フィルタ保持部のうち外側に位置するものを内側に位置するものに向けて加締めることにより加締め部を形成し、その加締め部においてフィルタを、第一及び第二フィルタ保持部の間にて挟み付ける形で保持させた構造を有するものであり、かつ、
上記課題を解決するために、フィルタ外側の圧力をPo、同じく内側の圧力をPiとして、Pi>Poとなるように気圧差を付与することにより、第一及び第二フィルタ保持部のうち外側に位置するものの内面とフィルタとの間に形成される隙間量を減じ、その状態で加締め部を形成することを特徴とする。
【0007】
上記の本発明のガスセンサの製造方法によれば、フィルタ外側の圧力をPo、同じく内側の圧力をPiとして、Pi>Poとなるように気圧差を付与することにより、第一及び第二フィルタ保持部のうち外側に位置するものの内面とフィルタとの間に形成される隙間量を減じ、その状態で加締め部を形成するようにしたから、フィルタとその外側のフィルタ保持部との間に隙間が形成されることが効果的に防止ないし抑制される。その結果、フィルタとフィルタ保持部との間に水や油、ゴミ等が溜まりにくい構造のガスセンサを、能率よく製造することができる。この場合、上記圧力差の付与により、フィルタを外側のフィルタ保持部内面に密着させることが、隙間形成を防止する上でより望ましいといえる。
【0008】
上記ガスセンサは、第一フィルタ保持部をケーシングと内部が連通する筒状に形成し、フィルタを該第一フィルタ保持部を外側から覆う筒状に形成し、第二フィルタ保持部をフィルタを外側から覆う形で配置される筒状に形成した構成を採用することができる。この場合、上記製造方法は、第一フィルタ保持部の内側空間を加圧する、及び/又は第二フィルタ保持部の外側空間を減圧することにより、フィルタを外向きに膨らませて第二フィルタ保持部の内面との間の隙間を減少させ、その状態で第二フィルタ保持部を第一フィルタ保持部に向けて加締めることにより加締め部を形成するように実施することができる。2つの筒状のフィルタ保持部の間に挟まれた筒状のフィルタに対し、上記気圧差の付与によりこれを膨らませるように変形させることで、フィルタを第二フィルタ保持部の内面に容易に密着させることができ、ひいては両者の間に隙間を生じにくくする効果が一層高められる。
【0009】
上記ガスセンサにおいては、より具体的には、第一及び第二気体導入孔は、それぞれ第一及び第二フィルタ保持部に対し周方向に所定の間隔で複数形成され、加締め部は、第一及び第二フィルタ保持部の軸線方向においてそれら気体導入孔の列を挟んでその両側に形成された円環状の加締め部とすることができる。このような構造を採用することにより、フィルタの保持と、そのフィルタを介したケーシング内への外気の導入とをより確実に図ることができる。この場合、第二フィルタ保持部は、それら円環状の加締め部の形成に伴い両加締め部の間に挟まれる部分が外向きに橈み変形して膨出部を形成することが多く、フィルタとの間に隙間がより形成されやすくなる。しかしながら、上記気圧差の付与に基づきその膨出部内面に倣う形状にフィルタを膨らませつつ、加締め部の形成により両フィルタ保持部の間にて固定するようにすれば、このような本来隙間を生じやすい構造のセンサにおいても、該隙間の形成を確実に防止することができるので、波及効果が特に大きいといえる。
【0010】
この場合、加締め部を形成する際に、フィルタと第一フィルタ保持部及び第二フィルタ保持部とを密着させる仮加締め状態を形成し、その状態で気圧差を付与してフィルタを膨らませて第二フィルタ保持部の内面に密着させ、次いで本加締めを行うようにすることができる。いったん仮加締め状態として、フィルタとフィルタ保持部との間に気密性を確保することで、フィルタに上記気圧差を確実に付与することができ、隙間形成の防止効果を一層高めることができる。
【0011】
また、上記ガスセンサにおいては、第一フィルタ保持部は、ケーシングとは別体の筒状体として該ケーシングに対し後方側から連結されるものとして構成することができる。この場合、上記本発明の製造方法は、ケーシングに組み付ける前の状態で、第一フィルタ保持部の外側にフィルタ及び第二フィルタ保持部をこの順序で配置し、次いで第一フィルタ保持部の内側に加圧媒体を導入してこれを加圧することによりフィルタを外向きに膨らませ、その状態で加締め部を形成することにより、第二フィルタ保持部及びフィルタを第一フィルタ保持部に組み付けてフィルタアセンブリとなし、そのフィルタアセンブリをケーシングに対して組み付ける形で実施することができる。
【0012】
このように、フィルタを含む気通構造部をフィルタアセンブリとしてケーシングとは独立に構成し、これをケーシングに連結・一体化したセンサ構成を採用することにより、次のような効果が達成される。
▲1▼フィルタアセンブリの組立てをケーシングへ組付け前の状態で行うことができる。すなわち、ケーシングから取り外した状態であれば、第一フィルタ保持部内側に空気等の加圧媒体を簡単に導入することができるから、フィルタを膨らませる気圧差付与を内側からの加圧により簡単かつ確実に行うことができる。いわば、本発明の製造方法にもっとも適したセンサ構造であるということができる。
▲2▼フィルタアセンブリの組立ては、酸素検出素子などのケーシング内への組付けとは独立に行うことができるので、例えば検出素子のリード線が邪魔になったりせず、組立作業を極めて能率的に行うことができる。
▲3▼ケーシング内への部品の組付けと、フィルタアセンブリの組立てとを並行して行えるので、生産性が飛躍的に向上する。また、フィルタの組付け不良などが生じても、フィルタアセンブリの段階で不良が発見できれば、センサ完成品に該不良の影響は及ばず、部品等の無駄等が生じにくい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づき説明する。
(実施例1)
図1は本発明の製造方法が適用されるガスセンサの一例としての酸素センサを示している。該酸素センサ1は、先端が閉じた中空軸状の固体電解質部材である酸素検出素子2と、軸状のセラミックヒータである発熱体3とを備えて構成される。酸素検出素子2は酸素イオン伝導性を有する固体電解質により構成されている。そのような固体電解質としては、Y2O3ないしCaOを固溶させたZrO2が代表的なものであるが、それ以外のアルカリ土類金属ないし希土類金属の酸化物とZrO2との固溶体を使用してもよい。また、ベースとなるZrO2にはHfO2が含有されていてもよい。なお、以下においては、酸素検出素子2の軸方向においてその閉じた先端部に向かう側を「前方側(あるいは先端側)」、これと反対方向に向かう側を「後方側(あるいは後端側)」として説明を行う。
【0014】
この酸素検出素子2の中間部外側には、絶縁性セラミックから形成されたインシュレータ6,7、並びにタルクから形成されたセラミック粉末8を介して金属製のケーシング10が設けられ、酸素検出素子2はケーシング10と電気的に絶縁された状態で貫通している。ケーシング10は、酸素センサ1を排気管等の取付部に取り付けるためのねじ部9bを有する主体金具9、その主体金具9の一方の開口部に内側が連通するように結合された主筒14、該主筒14とは反対側から主体金具9に取り付けられたプロテクタ11等を備える。また、図2に示すように、酸素検出素子2の内面及び外面には、そのほぼ全面を覆うように一対の電極層2b,2cが設けられている。これら電極層2b,2cはいずれも、酸素検出素子2を構成する固体電解質へ酸素を注入するための酸素分子の解離反応、及び該固体電解質から酸素を放出させるための酸素の再結合反応に対する可逆的な触媒機能(酸素解離触媒機能)を有する多孔質電極、例えばPt多孔質電極として構成されている。
【0015】
主体金具9の前方側開口部には筒状のプロテクタ装着部9aが形成され、ここに、酸素検出素子2の先端側(検出部)を所定の空間を隔てて覆うようにキャップ状のプロテクタ11が装着されている。プロテクタ11には、排気ガスを透過させる複数のガス透過口12(本実施例では4つ)が貫通形態で形成されている。これにより排気ガス中の酸素が酸素検出素子2の先端側表面に接触可能となっている。
【0016】
主体金具9の後方側の開口部には、前述の主筒14がインシュレータ6との間にリング15を介して加締められ、この主筒14に筒状のフィルタアセンブリ16が外側から嵌合・固定されている。このフィルタアセンブリ16の図中上端側の開口はゴム等で構成されたグロメット(弾性シール部材)17で封止され、またこれに続いてさらに内方にセラミックセパレータ18が設けられている。そして、それらセラミックセパレータ18及びグロメット17を貫通するように、酸素検出素子2用のリード線20,21及び発熱体3用のリード線(リード線20,21の影になって見えない)が配置されている。
【0017】
次に、図3に示すように、セラミックセパレータ18には、各リード線20,21を挿通するための複数のセパレータ側リード線挿通孔72が軸方向に貫通して形成されており、その軸方向中間位置には、外周面から突出する形態でフランジ状のセパレータ側支持部73が形成されている。そして、該セラミックセパレータ18は、セパレータ側支持部73よりも前方側に位置する部分を主筒14の後端部内側に入り込ませた状態で、該セパレータ側支持部73において主筒14の後端面に当接するとともに、セパレータ側支持部73よりも後方側に位置する部分を主筒14の外側に突出させた状態で配置される。
【0018】
図1に戻り、酸素検出素子2用の一方のリード線20は、固定金具23のコネクタ部24及びこれに続く引出し線部25、並びに固定金具23の内部電極接続部26を経て、前述の酸素検出素子2の内側の電極層2c(図2)と電気的に接続されている。一方、他方のリード線21は、別の固定金具33のコネクタ部34及びこれに続く引出し線部35並びに外部電極接続部35bを経て、酸素検出素子2の外側の電極層2b(図2)と電気的に接続されている。
【0019】
ここで、酸素検出素子2は、排気ガス温が十分高温となっている場合には当該排気ガスで加熱されて活性化されるが、エンジン始動時など排気ガス温が低温である場合には前述の発熱体3で強制的に加熱することで活性化される。発熱体3は例えばセラミックヒータであり、先端部内部に発熱部42が設けられ、ヒータ端子部40から延びるリード線を経て通電されるようになっている。該発熱体3は、固定金具23の発熱体把持部27により把持されて、酸素検出素子2の中空部内に保持される。他方、固定金具23の内部電極接続部26は、酸素検出素子2の中空部内壁面2aとの間の摩擦力によって発熱体3を該中空部に対し軸線方向に位置決めする役割を果たすとともに、電極層2c(図2)と接触・導通するようになっている。
【0020】
次に、図3に示すように、フィルタアセンブリ16は、主筒14(ケーシング10)に対し後方外側からほぼ同軸的に連結される筒状形態をなすとともに、内部が主筒14の外部と連通し、かつ壁部に複数の第一気体導入孔52が形成された第一フィルタ保持部51を備える。そして、その第一フィルタ保持部51の外側には、上記第一気体導入孔52を塞ぐ筒状のフィルタ53が配置され、さらに、そのフィルタ53の外側には、壁部に1ないし複数の第二気体導入孔55が形成されるとともに、フィルタ53を第一フィルタ保持部51との間で挟み付けて保持する第二フィルタ保持部54が配置される。具体的には、第一気体導入孔52及び第二気体導入孔55は、第一フィルタ保持部51及び第二フィルタ保持部54に対し、各軸方向中間部において互いに対応する位置関係で周方向に沿って所定の間隔で形成されており、フィルタ53は、第一フィルタ保持部51を周方向に取り囲むように配置されている。
【0021】
フィルタ53は、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという)の未焼成成形体を、PTFEの融点よりも低い加熱温度で1軸以上の方向に延伸することにより得られる多孔質繊維構造体(商品名:例えばゴアテックス(ジャパンゴアテックス(株)))により、水滴等の水を主体とする液体の透過は阻止し、かつ空気及び/又は水蒸気などの気体の透過は許容する撥水性フィルタとして構成されている。これにより、第二気体導入孔55からフィルタ53を経て第一気体導入孔52より、基準ガスとしての大気(外気)が主筒14(ケーシング10)内に導入されるとともに、水滴等の液体状態の水は主筒14内に侵入することが阻止されるようになっている。
【0022】
図4に示すように、第二フィルタ保持部54には、第二気体導入孔55の列を挟んでその軸方向両側に、フィルタ53を介して該第二フィルタ保持部54を第一フィルタ保持部51に対して結合する環状のフィルタ加締め部56,57(以下、単に加締め部56,57ともいう)が形成されており、両者の間に挟まれた部分(第二気体導入孔55の形成部分)は、加締めによる変形の影響で外向きに撓んで太鼓状に膨出している。この膨出により、第一フィルタ保持部51の外面とフィルタ53との間には、例えば第二気体導入孔55の列に沿って環状形態をなすように所定量の隙間58が形成されている。他方、第二フィルタ保持部54の内面にはフィルタ53がほぼ密着する形態となっており、隙間はほとんど形成されていない。
【0023】
他方、第一フィルタ保持部51は、自身の軸方向中間部に形成された段付き部60により、該段付き部60に関して軸方向前方側を第一部分61、同じく軸方向後方側を第二部分62として、該第二部分62が第一部分61よりも径小となるように構成されており、第一気体導入孔52はその第二部分62の壁部に形成されている。さらに、第二フィルタ保持部54は第一フィルタ保持部51の第一部分61の外径よりも小さい内径を有する。
【0024】
図3に戻り、第一フィルタ保持部51は、セラミックセパレータ18の突出部分を第二部分62の内側まで進入させてこれを覆うとともに、段付き部60においてセパレータ側支持部73に対し、主筒14とは反対側から金属弾性部材74を介して当接するように配置される。他方、該第一フィルタ保持部51の先端側、すなわち第一部分61において主筒14(ケーシング10)に対し外側からこれに重なりを生じるように配置され、その重なり部において第一フィルタ保持部51を主筒14に向けて加締めることにより、それらの周方向に円環状のケーシング加締め部76が形成される。このケーシング加締め部76により、第一フィルタ保持部51は主筒14に対し、内周面が主筒14の外周面に対して気密状態となるように圧接されてこれに連結されている。
【0025】
第二フィルタ保持部54の外側には、筒状の防護カバー64がこれを覆うように設けられている。この防護カバー64は、フィルタ53への直接的な液滴の噴射あるいは油や汚れ等の付着物の付着を阻止ないし抑制する働きをなす。該防護カバー64は、図3に示すように、例えば第一気体導入孔52(あるいは第二気体導入孔55)に対応する位置においてフィルタ53との間に気体滞留空間65を生じるように配置され、軸方向において第一気体導入孔52を挟んだ両側部分が、第一フィルタ保持部51の外面に対しカバー接合部としての加締め部66,67により接合されている。そして、その軸方向前方側の加締め部66に対応する位置において、第一フィルタ保持部51との間には、気体滞留空間65を外部と連通させてこれに外気を導入する外部連通部68が形成されている。具体的には、図4に示すように、第一フィルタ保持部51の第一部分61の外周面に、該第一フィルタ保持部51の軸方向に延びる溝部69が周方向に沿って所定の間隔で複数形成され、これら溝部69が外部連通部を構成している。
【0026】
以下、フィルタアセンブリ16の組立工程について、加締め工程を中心に説明する。なお、この工程は、フィルタアセンブリ16を主筒14(ケーシング10)に組み付ける前に実施されるものである。まず、図5(a)に示すように、第一フィルタ保持部51’に対し筒状のフィルタ53を外挿し、さらにその外側に筒状の第二フィルタ保持部54’を配置する。ここで、第一フィルタ保持部51’に形成された段部60は、フィルタ53と第二フィルタ保持部54’の下縁部を支持してこれらが抜け落ちることを阻止する役割を果たす。そして、ゴム等で構成された栓体C,Cを第一フィルタ保持部51’の上下の開口部に嵌め込む。ここで、栓体C,Cの一方(又は両方)には加圧媒体としての空気を導入するためのガス導入孔80が形成されている。
【0027】
続いて、第二フィルタ保持部54’を、第二気体導入孔55の列の両側においてそれぞれフィルタ部に向けて周方向に加締めることにより、加締め部56,57を形成する。この加締め部56,57は、図6に示すように、第二フィルタ保持部54’の周方向に沿って配置された複数の加締めパンチ251を用いて、該第二フィルタ保持部54’を半径方向に圧縮することにより形成することができる。各加締めパンチ251の内周面は互いに連なって第二フィルタ保持部54’の外周面に対応する円筒面を形成するとともに、それぞれ第二フィルタ保持部54’の外周面に対して接近・離間可能とされ、図示しないパンチ駆動部により第二フィルタ保持部54’に対し一斉に接近してこれを圧縮するようになっている。そして、各加締めパンチ251の軸方向両端縁には凸条部252,253が形成され、それぞれ第二フィルタ保持部54’の外周面に押し付けられてそれぞれ弧状の凹部を形成し、これが周方向に連なることで加締め部56,57となる。
【0028】
この加締めに際しては、まず、フィルタ53と第一フィルタ保持部51’及び第二フィルタ保持部54’とが密着する程度に途中まで加締めを行うことにより仮加締め部56’,57’を形成して、図5(b)に示す状態とする。次に、その状態で第一フィルタ保持部51の内側にガス導入孔80から空気Gを、例えばゲージ圧にて0.2〜1.0気圧程度の圧力で導入する(なお、さらに高い圧力(例えば5気圧程度)で導入することも可能である)。この空気Gは、第一気体導入孔52を経てフィルタ53の内面側に印加されるが、フィルタ53は、両フィルタ保持部51’,54’との間が仮加締め部56’,57’により密封されているので外向きに膨らみ、第二フィルタ保持部54’の内面に密着した状態となる。そして、この加圧状態を維持した状態で、図5(c)に示すように仮加締め部56’,57’をさらに加締める形で本加締めを行い、加締め部56,57を形成し、図4に示した構成のフィルタアセンブリ16が得られる。なお、フィルタ53の後方側には、加圧によるフィルタ53の後方側への浮き上がり及び飛び出しを防止するための押さえ金具Mが設けられている。
【0029】
ここで、加締めパンチ251の凸条部252,253に挟まれた部分は平坦な底部254a(平坦化部材)を有する凹所254とされ、その凹所254の深さhはフィルタ53と第二フィルタ保持部54との合計厚さよりも小さく設定されている。このような加締めパンチ251で第二フィルタ保持部54を圧縮すると、凸条部252,253が食い込むことで加締め部56,57が形成される一方、両加締め部56,57に挟まれた部分は、図4に示すように外向きに太鼓状に橈んで凸部59となる。この圧縮がある程度進行すると、その凸部59は凹所254の底部254aに当たって止められ、さらに圧縮を継続すると凸部59は凹所254により成形されて、該凹所254の平坦な底部に対応して平坦部59aが形成される。
【0030】
このとき、第二フィルタ保持部54は加締めに伴い比較的大きく圧縮変形し、凸部59における橈み量も大きくなるが、内側の第一フィルタ保持部52はそれほど圧縮されないため橈み量も小さい。一方、フィルタ53は柔軟であり、空気Gによる加圧により膨んで、加締めの進行により膨出しようとする凸部59の内面に倣うようにしてこれに押しつけられ密着する。そして、図4に示すように、フィルタ53は、第一フィルタ保持部52との間には環状の隙間58が形成される一方、第二フィルタ保持部54の内面には密着した状態で両フィルタ保持部51,54の間で固定されることとなる。
【0031】
このような構造とすることで、フィルタ53を透過してくる外気は、内側に環状の隙間58が形成されていることで流通抵抗が和らげられ、第一気体導入孔52を通ってスムーズに主筒14内に導入できる。一方、フィルタ53の外面は第二フィルタ保持部54の内面と密着しているので、第二気体導入孔55からフィルタ53と第二フィルタ保持部54との間にゴミや油分あるいは水滴等が侵入しにくくなり、ひいてはフィルタ53の外面側の撥油性あるいは撥水性の低下が阻止ないし抑制されて、常時良好な通気性が確保される。これにより、例えば基準ガス温度が高くなった場合でも、センサ出力の低下が起こりにくくなる。
【0032】
なお、本実施例では、第二フィルタ保持部54とフィルタ53との密着状態向上のため、凸部59に平坦部59aを形成しているが、フィルタ内面を加圧しつつ加締め部56,57を形成することで、この平坦部59aを形成しなくとも良好な密着状態が得られる場合がある。
【0033】
以下、フィルタアセンブリ16の主筒14に対する組付け方法について説明する。すなわち、図7(a)に示すように、セラミックセパレータ18に金属弾性部材74を外挿し、さらにそのセラミックセパレータ18の前端側を主筒14に挿入する。一方、フィルタアセンブリ16は図4に示すように予め組み立てておき、これを図7(a)に示すように、そのフィルタ保持部51においてセラミックセパレータ18及び主筒14の外側から被せる。なお、酸素検出素子2及び発熱体3等(図1)は主筒14内に予め組みつけておき、それらからのリード線20,21等はセラミックセパレータ18のセパレータ側リード線挿通孔72(図3)に通し、さらにフィルタ保持部51の後端側開口部から外側に延出した状態にしておく。
【0034】
続いて、図7(b)に示すように、主筒14とフィルタアセンブリ16とに軸方向の圧縮力を付加する。これにより、金属弾性部材74はフィルタ保持部51とセラミックセパレータ18のセパレータ側支持部73との間で圧縮変形し、セラミックセパレータ18を主筒14とフィルタ保持部51と間で挟み付けるための付勢力を発生する。そして、この状態を維持しつつ、図7(c)に示すように、フィルタ保持部51と主筒14とにケーシング加締め部76を形成し、両者を結合する。次いで、図7(d)に示すように、フィルタ保持部51の後端側開口部に弾性シール部材17を嵌め入れ、さらに防護カバー64を被せるとともに、(e)に示すように加締め部66及び67を形成して組立てが終了する。
【0035】
上記方法によれば、フィルタアセンブリ16の組立てが、酸素検出素子2などのケーシング10内への組付けとは独立に行われるので、リード線が邪魔になったりせず、組立作業を極めて能率的に行うことができる。また、ケーシング10内への部品の組付けと、フィルタアセンブリ16の組立てとを並行して行えるので、生産性が飛躍的に向上する。さらに、フィルタ53の組付け不良などが生じても、フィルタアセンブリ16の段階で不良が発見できれば、センサ完成品に該不良の影響が及ばず、部品の無駄等が生じにくい。
【0036】
(実施例2)
図8は、酸素センサの変形例を示すものである。以下、該酸素センサ100の、図1の酸素センサ1との相違点について説明する(図1の酸素センサと共通する部材については、同一の符号を付与して詳細な説明は省略する)。まず、その主体金具9(ケーシング10)の後方側の開口部には、主筒114の一端が、インシュレータ6との間にリング15を介して加締められている。また、第二フィルタ保持部154は、主筒114に対し後方外側からほぼ同軸的に連結される筒状形態をなす。そして、第二フィルタ保持部154の後端側開口部は、ゴム等で構成されたグロメット(弾性シール部材)17により封止され、またこれに続いてさらに内方にセラミックセパレータ18が設けられている。
【0037】
また、主筒114の後端部には、段付き部151により、該段付き部151に関して軸方向前方側を第一部分161、同じく軸方向後方側を第二部分162として、該第二部分162が第一部分161よりも径小となるように構成され、その第二部分162を第一フィルタ保持部として(以下、第一フィルタ保持部162と称する)、その周方向に複数の第一気体導入孔152が形成されている。また、第一フィルタ保持部162の外側には、上記第一気体導入孔152を塞ぐ筒状のフィルタ53が配置され、さらに、そのフィルタ53の外側が第二フィルタ保持部154により覆われている。そして、フィルタ53に対応する位置において、第二フィルタ保持部154の壁部には、周方向に所定の間隔で複数の第二気体導入孔155が形成されるとともに、それら第二気体導入孔155の列を挟んで両側に、第二フィルタ保持部154と主筒114の第一フィルタ保持部162との間で圧着固定する環状のフィルタ加締め部156,157(以下、単に、加締め部156,157ともいう)が形成されている。ここで、フィルタ53の外面は、第二フィルタ保持部154の内面に密着している。
【0038】
他方、第二フィルタ保持部154は、第一部分161において主筒114に対し外側からこれに重なりを生じるように配置され、その重なり部には周方向の環状の加締め部75が形成されている。この加締め部75により、第二フィルタ保持部154が主筒114に対して結合される。すなわち、ガスセンサ内部はグロメット17の加締め部19と加締め部75により気密状態とされている。
【0039】
以下、酸素センサ100におけるフィルタの加締め工程について、図9及び図10を用いて説明する。まず、検出素子2等を組み付けた主体金具9に、主筒114を結合した組立体を用意する。図9(a)に示すように、その組立体の主筒114の外側にフィルタ53及び第二フィルタ保持部154をこの順序で装着する。次いで、(b)に示すように、第二フィルタ保持部154の後端部をグロメット17に向けて周方向に加締めることにより加締め部19を形成する。
【0040】
続いて、(c)に示すように、第二フィルタ保持部154と主筒114との重なり部において第二フィルタ保持部154を主筒114の第一部分161に向けて加締めることにより、加締め部75を形成して両者を接合し、さらに第二フィルタ保持部154の外側を減圧する(すなわち、主筒114の内側の気圧をPi、第二フィルタ保持部154の外側の気圧をPoとして、Pi>Poとする)。なお、このような減圧は、図10に示すように、主筒114の後端部を、加締め装置等を組み込んだ減圧チャンバーC内に配置し、その内側空間を減圧吸引することにより行うことができる。
【0041】
そして、この状態で(d)に示すように、第二フィルタ保持部154を第一フィルタ保持部162に向けて加締めることにより、第二気体導入孔155を挟んでその両側に環状の加締め部156,157を形成する。第二フィルタ保持部154の加締め部156,157の間に挟まれる部分は、外向きに橈み変形して膨出部160となるが、フィルタ53は上記減圧による気圧差に基づきその膨出部160の内面に倣う形状に膨らみ、さらに加締め部156,157の形成により両フィルタ保持部154,162の間にて固定される。これにより、フィルタ53が膨出した第二フィルタ保持部154の内面に密着した固定構造が得られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の酸素センサを示す縦断面図。
【図2】その酸素検出素子部分を拡大して示す断面図。
【図3】図1の要部を拡大して示す断面図。
【図4】フィルタアセンブリの正面部分断面図。
【図5】図1の酸素センサのフィルタアセンブリの加締め工程を示す説明図。
【図6】加締め方法の説明図。
【図7】フィルタアセンブリのケーシングへの組付け工程を示す説明図。
【図8】実施例2の酸素センサを示す縦断面図。
【図9】図8の酸素センサのフィルタ保持部の加締め工程を示す説明図。
【図10】減圧によりフィルタの内外に圧力差を付与する方法の一例を示す説明図。
【符号の説明】
1,100 酸素センサ(ガスセンサ)
2 酸素検出素子(検出素子)
10 ケーシング
14,114 主筒(ケーシング)
51,162 第一フィルタ保持部
52,152 第一気体導入孔
53 フィルタ
54,154 第二フィルタ保持部
55,155 第二気体導入孔
56,57,156,157 加締め部
160 膨出部
Claims (5)
- 先端部に形成された検出部にて被測定ガス中の被検出成分を検出する検出素子と、前記検出部への被測定ガスの流通を許容した状態で、前記検出素子の外側を覆う筒状のケーシングとを備えたガスセンサの製造方法であって、
前記ガスセンサは、
前記ケーシングの後方側においてこれと一体的に設けられ、前記ケーシング内に外気を導くための第一気体導入孔が形成された第一フィルタ保持部と、
その第一フィルタ保持部の内側又は外側に設けられ、前記ケーシング内に外気を導くための第二気体導入孔が形成された第二フィルタ保持部と、
それら第一及び第二フィルタ保持部の間において前記第一及び第二気体導入孔を塞ぐ形態で配置され、液体の透過は阻止し気体の透過は許容するフィルタとを備え、
前記第一及び第二フィルタ保持部のうち外側に位置するものを内側に位置するものに向けて加締めることにより加締め部を形成し、その加締め部において前記フィルタを、前記第一及び第二フィルタ保持部の間にて挟み付ける形で保持させた構造を有するものであり、かつ、
フィルタ外側の圧力をPo、同じく内側の圧力をPiとして、Pi>Poとなるように気圧差を付与することにより、前記第一及び第二フィルタ保持部のうち外側に位置するものの内面と前記フィルタとの間に形成される隙間量を減じ、その状態で前記加締め部を形成することを特徴とするガスセンサの製造方法。 - 前記第一フィルタ保持部は前記ケーシングと内部が連通する筒状に形成され、前記フィルタは該第一フィルタ保持部を外側から覆う筒状に形成され、前記第二フィルタ保持部は前記フィルタを外側から覆う形で配置される筒状に形成され、
前記第一フィルタ保持部の内側空間を加圧する、及び/又は前記第二フィルタ保持部の外側空間を減圧することにより、前記フィルタを外向きに膨らませて前記第二フィルタ保持部の内面との間の隙間を減少させ、その状態で前記第二フィルタ保持部を前記第一フィルタ保持部に向けて加締めることにより前記加締め部を形成するようにした請求項1記載のガスセンサの製造方法。 - 前記第一及び第二気体導入孔は、それぞれ前記第一及び第二フィルタ保持部に対し周方向に所定の間隔で複数形成され、前記加締め部は、前記第一及び第二フィルタ保持部の軸線方向においてそれら気体導入孔の列を挟んでその両側に形成された円環状の加締め部であり、
前記第二フィルタ保持部は、それら円環状の加締め部の形成に伴い両加締め部の間に挟まれる部分が外向きに橈み変形して膨出部を形成するとともに、前記フィルタは前記気圧差の付与に基づきその膨出部内面に倣う形状に膨らみつつ、前記加締め部の形成により両フィルタ保持部の間にて固定される請求項2記載のガスセンサの製造方法。 - 前記加締め部を形成する際に、前記フィルタと前記第一フィルタ保持部及び第二フィルタ保持部とを密着させる仮加締め状態を形成し、その状態で前記気圧差を付与して前記フィルタを膨らませて前記第二フィルタ保持部の内面に密着させ、次いで本加締めを行うようにした請求項3記載のガスセンサの製造方法。
- 前記第一フィルタ保持部は、前記ケーシングとは別体の筒状体として該ケーシングに対し後方側から連結されるようになっており、
前記ケーシングに組み付ける前の状態で、前記第一フィルタ保持部の外側に前記フィルタ及び前記第二フィルタ保持部をこの順序で配置し、
次いで前記第一フィルタ保持部の内側に加圧媒体を導入してこれを加圧することにより前記フィルタを外向きに膨らませ、
その状態で前記加締め部を形成することにより、前記第二フィルタ保持部及びフィルタを前記第一フィルタ保持部に組み付けてフィルタアセンブリとなし、
そのフィルタアセンブリを前記ケーシングに対して組み付けるようにした請求項1ないし4のいずれかに記載のガスセンサの製造方法。
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