JP3548652B2 - 物体形状復元装置及びその方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自律移動ロボットの視覚や、コンピュータグラフィクス映像作成に利用できる物体形状装置及びその方法であって、特に、カメラから得られる画像情報から物体の3次元形状と、カメラの相対的な運動(視点間の位置関係)を求めるものに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、TVカメラ等の視覚センサから得られる情報を用いて、環境や物体の3次元形状、位置を計測する研究が盛んに行われている。この技術により、例えばロボットが視覚機能を備え、周囲の環境変化に柔軟に対応して行動することができる。また、3次元情報を用いた、より高度な画像監視、画像検査等を行うことが可能となる。さらに、画像から物体や環境の形状を復元することにより、例えば、コンピュータグラフィクス映像作成の際に必要な、映像化する対象の3次元形状データ等の入力(モデリング)を省力化することもできる。
【0003】
画像から形状復元は、観測視点の相対的な位置関係を未知とするか既知とするかで大きく2つに分けることができる。
【0004】
既知とする場合には、ターンテーブルを用いたり、マニピュレータの先端にカメラを取り付ける等、視覚センサ以外の装置を用いて観測視点の相対的な位置関係を計測する。しかし、ターンテーブルの大きさ、マニピュレータの可動範囲の制約により、対象物の大きさが制限されたり、視覚センサ以外の装置の分、コストが大きくなるという問題がある。
【0005】
未知とする場合には、多視点で得られた画像情報から物体形状と観測視点間の相対的な位置関係(カメラの運動)を同時に復元する。この場合、さらに2台のカメラ、すなわち、ステレオカメラから得られる画像系列を用いるか、1台のカメラから得られる画像系列を用いるかで大きく2つの方法に分けることができる。
【0006】
2台のカメラを用いる方法は、各観測視点で3次元形状を復元し、それらを統合していく。ある観測視点でステレオカメラから得られた2枚の画像から3次元形状を復元する方法は、一般にステレオ法と呼ばれる(参考文献:谷内田正彦著「コンピュータビジョン」,丸善,1990)。2台以上のカメラを用いても良いが、基本的には2台のカメラを用いる場合と同じであるので、以下では2台のカメラを用いる場合について説明する。ステレオ法は、基本的には相対的な位置と方向が既知である左右2台のカメラから得られる2枚のステレオ画像から、3次元空間中で同一点に対応する点同士を対応づけ、三角測量の原理を用いて、その点の3次元座標を算出する方法である。以下、ステレオ法により得られる3次元形状をステレオデータと呼ぶ。
【0007】
【数1】
Figure 0003548652
物体上のn個の特徴点を第1、第2視点から計測し、その2視点間の相対的な位置関係を求め、各視点のステレオデータを統合する方法の概略を以下に示す。図1のように、第1視点から見た対象物上の特徴点の位置をベクトルP(i=1〜n)、第2視点から見た対象物上の特徴点の位置をベクトルP′(i=1〜n)とする。ここで、各ベクトルP、ベクトルP′は、3次元空間中で同一点に対応する。第1視点を中心とする回転を表す回転行列をR、平行移動量を表す並進ベクトルをベクトルTとすれば、これらのパラメータ間に以下の関係式が成り立つ。
【0008】
【数2】
Figure 0003548652
行列の特異値分解を用いれば、運動パラメータR、ベクトルTは解析的に求めることができ(参考文献:「画像理解」,森北出版,1990)、その運動パラメータを用いれば各視点のステレオデータを基準座標系に変換し、統合することができる。
【0009】
1台のカメラによって得られる画像系列から特徴点を追跡し、その特徴点の画像中の動きから特徴点同士の相対的な位置関係を求める方法はStructure from Motion(SFM)法と呼ばれる。SFM法はステレオ法のように複数のカメラを用いる必要がないため、簡便である反面、一般に非線形連立方程式を解くことになり、解を安定に求めることは極めて困難である。しかし、カメラモデルとして弱中心投影モデルを仮定すると、線型計算でカメラの相対運動と物体形状を求めることができる。通常、カメラの投影モデルとしては中心投影モデルが用いられる。中心投影モデルでは、3次元空間中に設定されたある点を原点とするワールド座標系に対する3次元座標が(x,y,z)である点P(i=1〜n)が、画像上で(u,v)に投影されるとき、(x,y,z)と(u.v)の間には、
【数3】
Figure 0003548652
という非線型の関係式が成り立つ。h11〜h34はカメラのワールド座標系に対する位置や方向、カメラレンズの焦点距離等によって決まるパラメータである。両式の分母は、カメラの視点と点Pの光軸方向の距離である。これは一般に奥行きと呼ばれる。中心投影では、奥行きdを(x,y,z)の関数として表す。
【0010】
【数4】
Figure 0003548652
弱中心投影モデルでは、まず(P(i=1〜n)の奥行きをP(i=1〜n)の重心Cの奥行きdと、重心からの変位Δd(x,y,z)に分離して考える。
【0011】
【数5】
Figure 0003548652
は物体とカメラとの平均距離、Δdは物体形状を表している。ここで、Δdが、dに比べて小さい場合(Δd<<d)、
【数6】
Figure 0003548652
となる。dは点P(i=1〜n)によらず一定であるから、点P(i=1〜n)の奥行きdは一定と近似することができる。この場合、式(3)で両式の分母をh(一定)とおいて、(x,y,z)と(u,v)の関係が、
【数7】
Figure 0003548652
となる。つまり、ある点の3次元位置と画像上の投影位置の関係が線型となり、従来よりも安定に物体形状とカメラ運動を復元することができる。しかし、この方法は、投影モデルとして中心投影の近似である弱中心投影モデルを仮定しているので、
【数8】
Figure 0003548652
という関係が成り立たない場合には、著しく精度が悪くなるという問題がある。具体的に言えば、物体がカメラから遠く、かつ、形状の光軸方向の広がりが小さい場合にしか適用できないという問題がある。
【0012】
また、1台のカメラを用いる方法、ステレオカメラを用いる方法に共通する以下の問題がある。いずれの方法においても、異なる視点で得られた画像間で、3次元空間中で同一点に対応する点同士を対応づける必要があり、さらに、ステレオカメラを用いる方法では、1視点で得られる左右の画像間で3次元空間中で同一点に対応する点同士を対応づける必要がある。しかし、実画像でこれらの対応づけを正確に行うことは極めて困難であり、誤りを訂正する手段が必要であるが、従来の方法では誤りを訂正する手段がないため、形状の誤差が著しく大きくなるという問題がある。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、物体−カメラ間の距離、物体の大きさ、カメラの運動の制約がなく、さらに、誤対応による精度の低下を防ぎ、物体形状とカメラ運動を高速かつ高精度に復元する物体形状装置及びその方法を提供する。
【0014】
請求項1の発明は、基準座標系における物体の3次元形状を、ステレオカメラを用いて多視点で撮影した画像データで復元する物体形状復元装置であって、
前記物体を視点から撮影した前記画像データをそれぞれ記憶した画像記憶手段と、前記画像記憶手段によって記憶された各視点毎の画像データに基づいて、各視点座標系に対する前記物体形状と、前記物体における各特徴点の視点間の対応関係を示すステレオ計測行列を作成し、また、そのステレオ計測行列の各要素の信頼度から構成される信頼度行列を作成する計測テーブル作成手段と、前記計測テーブル作成手段によって作成された信頼度行列の信頼度を、前記ステレオ計測行列、前記信頼度行列、前記各視点における基準座標系に対する回転行列と並進ベクトルとからなる視点の運動の情報を用いて訂正する誤り訂正手段と、前記ステレオ計測行列、前記信頼度行列、前記視点の運動を用いて、前記物体の3次元形状を復元する形状復元手段からなる物体形状復元装置である。
【0021】
請求項2の発明は、前記誤り訂正手段が、前記計測テーブル作成手段によって作成された信頼度行列の中で、前記物体の3次元形状データのうち誤差が大きいデータの信頼度を下げることを特徴とする請求項1に記載の物体形状復元装置である。
【0022】
請求項3の発明は、前記形状復元手段が、前記誤り訂正手段によって訂正された信頼度行列、前記ステレオ計測行列によって視点の運動を求め、前記求めた視点の運動から、前記物体の3次元形状データと前記各3次元形状データの誤差をそれぞれ求め、前記求めた誤差が小さい場合は信頼度を高くして、この信頼度の高い3次元形状データを、復元する3次元形状とすることを特徴とする請求項1に記載の物体形状復元装置である。
【0023】
請求項4の発明は、基準座標系における物体の3次元形状を、ステレオカメラを用いて多視点で撮影した画像データで復元する物体形状復元装置であって、
前記物体を視点から撮影した前記画像データをそれぞれ記憶した画像記憶ステップと、前記画像記憶手段によって記憶された各視点毎の画像データに基づいて、各視点座標系に対する前記物体形状と、前記物体における各特徴点の視点間の対応関係を示すステレオ計測行列を作成し、また、そのステレオ計測行列の各要素の信頼度から構成される信頼度行列を作成する計測テーブル作成ステップと、 前記計測テーブル作成手段によって作成された信頼度行列の信頼度を、前記ステレオ計測行列、前記信頼度行列、前記各視点における基準座標系に対する回転行列と並進ベクトルとからなる視点の運動の情報を用いて訂正する誤り訂正ステップと、前記ステレオ計測行列、前記信頼度行列、前記視点の運動を用いて、前記物体の3次元形状を復元する形状復元ステップからなることを特徴とする物体形状復元方法である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、図面を参照して、本発明の一実施例について説明する。
【0028】
まず、本実施例で使用する座標系を図2に示す。また、
【数9】
Figure 0003548652
と定義する。本実施例では、ワールド座標系を第1視点におけるカメラ座標系にとる。
【0029】
図3に本実施例に概略構成を示す。
【0030】
ここでは、計測テーブル作成部1、誤り訂正部2、形状・運動復元部3から構成している。
【0031】
以下に各構成部を詳細に説明する。
【0032】
(計測テーブル作成部1)
計測テーブル作成部1は、図4のように画像入力部1−1、画像蓄積部1−2、画像処理部1−3から構成される。
【0033】
画像入力部1−1では、ステレオカメラを用いて、多視点におけるステレオ画像を入力する。
【0034】
画像情報蓄積部1−2では、画像メモリを用いて、画像情報入力部1により入力された画像情報を蓄積する。
【0035】
画像処理部1−3は、さらに図5のように特徴点抽出部1−3−1、ステレオ対応付け部1−3−2、特徴点追跡部1−3−3から構成され、各特徴点のカメラ座標系に対する3次元軌跡を求める。
【0036】
特徴点抽出部1−3−1は、画像蓄積部1−2から送られた各視点のステレオ画像のうちのどちらか一方の画像に対し、物体の角のような複数方向に濃度変化が存在する特徴点を抽出する。本実施例では左画像に対し、特徴点抽出を行うとする。
【0037】
ステレオ対応付け部1−3−2は抽出された左画像中の各特徴点の右画像中での位置を求める。この算出方式を以下に述べる。左画像中の位置が(x,y)の特徴点pの右画像中の位置を求める場合を考える。まず、以下の相関係数Cを求める。
【0038】
【数10】
Figure 0003548652
ここで、I(x,y)、I(x,y)は各々左画像と右画像の点(x,y)での画像濃度を表している。また、a、aとv、vはウインドウ領域内の平均と分散を表す。Cは、左右画像の2d×2dのウインドウ領域内のパターンの類似度を表している。
【0039】
従って、右画像上の探索範囲内で、Cが最大となる位置が、特徴点pの右画像上での位置である。
【0040】
探索範囲は、左右カメラの幾何学的な関係によって決定される。例えば、両カメラを光軸を平行にして配置した場合、各特徴点の左右画像上における垂直方向の位置は一致する。この場合、探索範囲は同一走査線上となる。
【0041】
特徴点追跡部1−3−3は、各特徴点を時系列画像上で追跡する。この対応付けは、例えば、ステレオ対応付けと同様に相関係数Cを用いる。ここで、ステレオ対応付けの場合は、左右カメラの位置関係が既知であるので、探索範囲はある直線上に限定されたが、視点間の対応付けでは、2次元探索となり、予め設定した探索ウインドウ領域内で対応付けを行うことになる。
【0042】
以上の特徴点抽出、ステレオ対応付け、視点間対応付け(特徴点追跡)を行い、第f視点のカメラ座標系に対する特徴点pの3次元座標ベクトルPfp(f=1,2,……m、p=1,2,……n)により、各視点座標系に対する物体形状と各特徴点の視点間の対応関係を表すテーブルである以下のような3m×nの行列Pを算出する。
【0043】
【数11】
Figure 0003548652
以下の説明においては、3m×nの行列Pを、便宜上、3次元ベクトルPfp=(xfp,yfp,zfpを要素とするm×nの行列と考える。行列Pの各列は、1個の特徴点の各視点におけるカメラ座標系に対する3次元座標、つまり、カメラ座標系に対する1個の特徴点の3次元的な軌跡、各行は、ある視点のカメラ座標系に対する特徴点の3次元座標を表している。以下の説明では行列Pをステレオ計測行列と呼ぶ。
【0044】
ところで、ステレオカメラの視野や物体相互の隠れにより、ステレオカメラが運動するにつれて、追跡不能となる特徴点や、今まで見えていなかった新しい特徴点が出現することがある。また、画像上の特徴が大きく変わることにより、特徴点の追跡ができなくなったり、あるいは、ステレオ対応付けができなくなることもある。従って、行列Pは全要素が定義される訳ではない。定義できない行列Pの要素に対しては、任意のベクトル、例えば零ベクトルを定義しておく。行列Pの各要素が定義されているかどうかを表現するm×nの行列Wを以下のように定義する。
【0045】
【数12】
Figure 0003548652
fpをベクトルPfpの信頼度と呼び、m×nの行列Wをステレオ計測行列Pの信頼度行列と呼ぶことにする。特徴点pの第f視点のカメラ座標系に対する3次元座標ベクトルPfpを求めることができれば、その信頼度wfpを1とし、定義されなければ0とする。つまり、
【数13】
Figure 0003548652
計測テーブル作成部1では以上のようにしてステレオ計測行列Pと信頼度行列Wを求め、誤り訂正部2に送信する。
【0046】
(誤り訂正部2)
誤り訂正部2では、計測テーブル作成部1によって作成されたステレオ計測行列に含まれる、ステレオの誤対応、あるいは、特徴点の誤追跡による誤りを訂正する。
【0047】
誤り訂正部2は、図6のようにカメラ運動復元部2−1と、形状誤差算出部2−2から構成される。
【0048】
図7にフローチャートを示し、以下に各ステップの詳細について説明する。
【0049】
(1) f=1に設定する。
【0050】
(2) 行列P、Wのf〜f+Δf行から、f〜f+Δf視点までの第f視点座標系に対するカメラ運動
【数14】
Figure 0003548652
を後述のカメラ運動復元部2−1を用いて算出する。
【0051】
(3) M(f+ Δ f)と行列P、Wのf〜f+Δf行から、第f視点座標系に対する物体形状
【数15】
Figure 0003548652
(4) 誤差eが予め設定した閾値thr より大きい特徴点の信頼度wfpを0とする。
【0052】
(5) fをインクリメント(+1)する。
【0053】
(6) f≦m−Δfならば(2) に戻り、f>m−Δfならば終了する。
【0054】
閾値thr は、例えば以下のようにして設定する。ある特徴点の視差をd、左右のカメラ間の間隔をa、焦点距離をflengthとすれば、その特徴点の奥行き方向の距離yは、
【数16】
Figure 0003548652
により求めることができる。yの計測誤差Δyは、主として視差の計測誤差Δdにより発生する。ΔyとΔdには以下の関係式が成り立つ。
【0055】
【数17】
Figure 0003548652
右辺をテーラー展開し、
【数18】
Figure 0003548652
上式と式(15)により、
【数19】
Figure 0003548652
式(20)を用いれば、
【数20】
Figure 0003548652
としてthr を求めることができる(K:定数)。
【0056】
(形状・運動復元部3)
形状・運動復元部3は、図5のように加算部3−1、カメラ運動復元部3−2、物体形状復元部3−3、終了判定部3−4から構成され、ステレオ計測行列Pと信頼度行列Wから、物体形状とカメラ運動を復元する。全体の処理の流れを図9に示し、その概略を以下に示す。
【0057】
(1) k=2とおく。
【0058】
(2) 行列P、Wの1〜k行から、1〜k視点までのカメラ運動M(k) を求める。
【0059】
(3) 1〜k視点までのカメラ運動M(k) と行列P、Wの1〜k行から、物体形状S(k) を求め、S=S(k) とする。
【0060】
(4) 終了条件(後述)を持たさなければ、k=k+1とし、(2) に戻る。
【0061】
但し、
【数21】
Figure 0003548652
であり、各々、物体形状とカメラ運動を表している。
【0062】
加算部3−1は、k=2を初期値とし、終了判定部3−4から命令が送られると、kを1増やして、カメラ運動復元部3−2にその値を送る。
【0063】
カメラ運動復元部3−2では、行列P、Wの1〜k行から、1〜k視点までのカメラ運動M(k) を復元する。
【0064】
【数22】
Figure 0003548652
式(22)からRベクトルTを求める方法の概略を以下に示す。
【0065】
(1) 行列P、Wの第1行と、第2行から行列Cを求める。
【0066】
(2) C=UWVと特異値分解する。
【0067】
(3) R=UVにより回転行列を求める。
【0068】
(4) 並進ベクトルTを求める。
【0069】
詳細を以下に示す。まず、第1視点と第2視点の両方で3次元計測された特徴点のワールド座標系に対する重心位置は、
【数23】
Figure 0003548652
これより、
【数24】
Figure 0003548652
式(26)を式(22)に代入して整理すると、
【数25】
Figure 0003548652
この評価関数を最小にするRを求める。これは次のようにして求めることができる(参考文献)。上式を以下のように展開する。
【0070】
【数26】
Figure 0003548652
式(31)の第1項は明らかにRによらず一定となる。
【0071】
【数27】
Figure 0003548652
とおくと、
【数28】
Figure 0003548652
を最大に回転行列Rを求めればよいことになる。
【0072】
回転行列Rは行列の特異値分解を用いれば求めることができる。CをC=UWV(U,V:直交行列、W:対角要素が非負の対角行列)と特異値分解し、T[AB]=T[BA]の関係を用いると、
【数29】
Figure 0003548652
等号は、V U=I(I:単位行列)、つまり、R=UVのとき成り立つ。これが求める回転行列Rである。このRを式(26)に代入すれば、並進ベクトルTを求めることができる。
【0073】
同様にして、式(23)、……、(24)より、R、ベクトルT、……R、ベクトルT、つまり、k視点までのステレオカメラの運動M(k) を復元することができる。
【0074】
物体形状復元部3−3では、k視点までのステレオカメラの運動M(k) を用いて、k視点までのステレオデータを統合した物体形状S(k) と、各形状データsの誤差eを求める。これは、以下のように算出する。
【0075】
【数30】
Figure 0003548652
ベクトルsが求められ、かつ、eが予め設定した閾値thr よりも小さい場合は、その形状データに対応する信頼度を1にする。
【0076】
【数31】
Figure 0003548652
求められた物体形状をS(行列Pの第1行)に代入する。
【0077】
【数32】
Figure 0003548652
終了判定部3−4では、計算を終了するかどうかを判定する。
【0078】
判定方法としては、以下のような方法がある。
【0079】
まず、1〜m視点までのカメラ運動M(m) と、1〜m視点のステレオデータから得られた物体形状S(m) が算出された時点で計算を終了する。また、M(m) 、S(m) が算出された後、視点選択部が全視点を選択し、カメラ運動復元部3−2と物体形状復元部3−3により、M(m) 、S(m) を修正することもできる。
【0080】
図9には、この場合のフローチャートを示している。
【0081】
この場合は、計算回数、M(m) 、あるいはS(m) の前段階の値との差から終了判定を行う。終了判定を行った結果、終了すれば、得られた物体形状とカメラ運動を出力部に送る。終了しなければ、加算部3−1に戻る。
【0082】
以上のようにして、ステレオカメラにより多視点で得られた画像情報から、物体形状と物体に対するカメラの相対運動を同時に復元することができる。
【0083】
すなわち、計測テーブル作成部1が視点座標系に対する物体形状を入力し、カメラ−物体間、物体の大きさ等の制約がない。
【0084】
誤り訂正部2が誤対応を訂正し、その後、形状・運動復元部が視点数を増やしながら計算を行うため、特徴点の見え隠れに対応することができ、誤対応による精度の低下を防いでカメラ運動を高精度に復元することができ、高精度に復元されたカメラ運動を用いるため、高精度に物体形状を復元することができる。また、繰り返し計算の各段階で行われるのは、単なる行列計算や重心の計算であるため、全体として非常に高速な計算が可能である。また、誤り訂正部2が計測行列に含まれる誤りを訂正することができるから、特徴点のステレオ対応づけ、あるいは、視点間の対応づけに誤りが含まれる場合にも物体形状とカメラ運動を復元することが可能である。
【0085】
(変更例)
▲1▼ 本実施例では、各視点における物体形状の計測を2台のカメラによるステレオ法を用いているが、3台以上のカメラを用いたり、1つのカメラを動かして3次元位置情報を求めてもよい。あるいは、カメラ以外のレンジファインダ等の視覚センサにより多視点における物体形状を入力してもよい。
【0086】
▲2▼ カメラを動かして静止した物体の形状と、カメラの運動を復元する場合について説明したが、物体の方を動かしてもよい。静止した環境で対象物体のみ動かせば、任意の背景から対象物体を切出して、その形状を求めることができる。
【0087】
▲3▼ 特徴点抽出部1−3−1における処理で、各視点で得られた画像に対し、特徴抽出を行う場合について説明したが、ある視点間隔で特徴抽出を行ってもよい。
【0088】
▲4▼ ステレオデータの信頼度wの取り得る値が0または1であったが、以下のように設定してもよい。
【0089】
図10に視差に対する相関係数Cの変化を示す。
【0090】
(a)のように明確なピークが存在する場合、ほぼ一意に対応付けられたことを示すから、このような場合のステレオデータの信頼性は高い。
【0091】
しかし、(b)のようにピークはあるが、その高さが低い場合、局所パターンが最も似ている対応候補でもかなり違うこととなり、右画像上に対応する点がない可能性が高い。従って、このような場合のステレオデータの信頼性は低い。
【0092】
また、(c)のように複数のピークを持つ場合、他にも局所パターンが非常に良く似た対応候補が存在することを示すから、例えば2番目に高い候補が真の対応点がある可能性も高い。従って、このような場合のステレオデータの信頼性も低い。
【0093】
このような類似度を評価する評価関数の、視差に対する変化を考慮して、以下のような信頼度を定義する。
【0094】
【数33】
Figure 0003548652
このように定義すると、(a)のように明確な高いピークが存在する場合、Comaxが大きくなるから、信頼度wは大きくなる。また、(b)、(c)の場合は、各々、Comax→小、ΣC→大となるから、信頼度wは小さくなる。
【0095】
形状・運動復元部3における計算は、実施例で説明した方法で行うことができる。信頼度が大きいステレオデータは、形状・運動復元に大きく影響し、逆に、信頼度が小さいステレオデータの形状・運動復元に対する影響は小さく押えることができる。
【0096】
▲5▼ ステレオ対応付け、特徴点追跡に相関係数による方法を用いたが、特徴抽出を行ってから対応付けを行う方法、周囲の対応結果と矛盾しないように対応付けを行う方法、これらを組み合わせた方法等がある。
【0097】
▲6▼ 誤り訂正は対話的に行うことも可能である。
【0098】
図11に対話型誤り訂正部4の第1の実施例を示す。
【0099】
対話型誤り訂正部4は、ステレオ対応付けと特徴点追跡結果を表示する画像処理結果表示部4−1と、その内、誤っている点を抽出し、除去、あるいは、訂正するポインティング部4−2からなる。
【0100】
図12に対話型誤り訂正部4における処理の流れを示す。
【0101】
例えば、ステレオ対応付けデータを対話的に訂正する場合を考える。まず、i番目(1≦i≦n)の特徴点の対応結果(その特徴点の左右画像上の位置)を表示する。次に、その対応結果が正しいかどうかを目視により評価する。正しくない場合は、ポインティング部によりその特徴点を削除、あるいは、正しい位置を入力する。この一連の処理を全特徴点に対して行う。特徴点追跡データを訂正する場合には、ある特徴点軌跡を原画像とともに表示し同様の処理を行う。
【0102】
▲7▼ 図13に対話型誤り訂正の第2の実施例を示す。
【0103】
この例では、▲6▼で説明した対話型誤り訂正部4と自動誤り訂正部5とよりなる。自動誤り訂正部5は、誤り訂正部2と同様の構成である。
【0104】
そして、誤り訂正は全特徴点の内の幾つかの特徴点を対話的に訂正後、自動的に訂正したり、逆に自動的に訂正後、対話的に訂正する。
【0105】
▲8▼ 計測テーブル作成部1、誤り訂正部2、形状・運動復元部3の内容を処理動作させるためのプログラムをFDやCD,ROM等の記録媒体に記憶させておき、この記録媒体内部のデータを既存のコンピュータに記憶させて、本装置として動作させてもよい。
【0106】
例えば、ステレオデジタルカメラで複数の視点から人間が撮影した画像データをコンピュータに記憶させる。また、上記した計測テーブル作成部1、誤り訂正部2、形状・運動復元部3の内容を処理動作させるためのプログラムを記憶したFDをコンピュータにFD読取り装置に挿入して、このプログラムをコンピュータに記憶させる。そして、このコンピュータを本装置として動作させる。
【0107】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変形を実施できる。
【0108】
【発明の効果】
本発明の物体液状復元装置及びその方法によれば、TVカメラから得られた画像情報から、物体形状と、物体に対するカメラの相対的な運動を同時に求めることができ、その実用的効果は多大である。すなわち、各視点座標系に対する物体形状と、各視点間の対応を表す計測テーブルを作成し、そのテーブルの中に含まれる対応付けの誤りを訂正しつつ、安定に物体形状と視点間の相対的な位置関係を高速かつ高精度に復元できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来法を説明するための図。
【図2】座標系の定義を示す図。
【図3】本発明の全体構成を示すブロック図。
【図4】ステレオ計測行列作成部1の構成を示すブロック図。
【図5】画像処理部1−3の構成を示すブロック図。
【図6】誤り訂正部2の構成を示すブロック図。
【図7】誤り訂正部2における処理のフローチャート。
【図8】形状・運動復元部3の構成を示すブロック図。
【図9】形状・運動復元部3におけるフローチャート。
【図10】視差に対する相関係数Cの変化を示すグラフの図。
【図11】対話型誤り訂正部の構成を示すブロック図。
【図12】対話型誤り訂正部におけるフローチャート。
【図13】対話+自動誤り訂正部の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
1 計測テーブル作成部
1−1 画像情報入力部
1−2 画像情報蓄積部
1−3 画像処理部
1−3−1 特徴点抽出部
1−3−2 特徴点追跡部
1−3−3 ステレオ対応付け部
2 誤り訂正部
2−1 カメラ運動復元部
2−2 形状誤差算出部
3 形状・運動復元部
3−1 加算部
3−2 カメラ運動復元部
3−3 物体形状復元部
3−4 終了判定部

Claims (4)

  1. 基準座標系における物体の3次元形状を、ステレオカメラを用いて多視点で撮影した画像データで復元する物体形状復元装置であって、
    前記物体を視点から撮影した前記画像データをそれぞれ記憶した画像記憶手段と、
    前記画像記憶手段によって記憶された各視点毎の画像データに基づいて、各視点座標系に対する前記物体形状と、前記物体における各特徴点の視点間の対応関係を示すステレオ計測行列を作成し、また、そのステレオ計測行列の各要素の信頼度から構成される信頼度行列を作成する計測テーブル作成手段と、
    前記計測テーブル作成手段によって作成された信頼度行列の信頼度を、前記ステレオ計測行列、前記信頼度行列、前記各視点における基準座標系に対する回転行列と並進ベクトルとからなる視点の運動の情報を用いて訂正する誤り訂正手段と、
    前記ステレオ計測行列、前記信頼度行列、前記視点の運動を用いて、前記物体の3次元形状を復元する形状復元手段からなる
    ことを特徴とする物体形状復元装置。
  2. 前記誤り訂正手段は、
    前記計測テーブル作成手段によって作成された信頼度行列の中で、前記物体の3次元形状データのうち誤差が大きいデータの信頼度を下げる
    ことを特徴とする請求項1に記載の物体形状復元装置。
  3. 前記形状復元手段が、
    前記誤り訂正手段によって訂正された信頼度行列、前記ステレオ計測行列によって視点の運動を求め、
    前記求めた視点の運動から、前記物体の3次元形状データと前記各3次元形状データの誤差をそれぞれ求め、
    前記求めた誤差が小さい場合は信頼度を高くして、この信頼度の高い3次元形状データを、復元する3次元形状とする
    ことを特徴とする請求項1に記載の物体形状復元装置。
  4. 基準座標系における物体の3次元形状を、ステレオカメラを用いて多視点で撮影した画像データで復元する物体形状復元装置であって、
    前記物体を視点から撮影した前記画像データをそれぞれ記憶した画像記憶ステップと、
    前記画像記憶手段によって記憶された各視点毎の画像データに基づいて、各視点座標系に対する前記物体形状と、前記物体における各特徴点の視点間の対応関係を示すステレオ計測行列を作成し、また、そのステレオ計測行列の各要素の信頼度から構成される信頼度行列を作成する計測テーブル作成ステップと、
    前記計測テーブル作成手段によって作成された信頼度行列の信頼度を、前記ステレオ計測行列、前記信頼度行列、前記各視点における基準座標系に対する回転行列と並進ベクトルとからなる視点の運動の情報を用いて訂正する誤り訂正ステップと、
    前記ステレオ計測行列、前記信頼度行列、前記視点の運動を用いて、前記物体の3次元形状を復元する形状復元ステップからなる
    ことを特徴とする物体形状復元方法。
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