JP3548414B2 - 硬化肉盛溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

硬化肉盛溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硬化肉盛溶接用のフラックス入りワイヤに関し、特に岩石等の破砕に用いるコーンクラッシャのマントルライナあるいはコーンケーブライナ、更にはジョークラッシャのジョープレート等の如く、重衝撃を受け且つ耐摩耗性の要求される部材の作用部に適用することにより、それら部材に優れた靭性と耐摩耗性を与えることのできる硬化肉盛溶接用のフラックス入りワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
製鉄・製鋼設備や土木建設機械などの各種部品の耐摩耗性改善策あるいは摩耗部の補修手段として、硬化肉盛溶接法が広く活用されている。中でもコーンクラッシャやジョークラッシャに代表される破砕機やパワーショベル等の建設機械のシャベル先端部の如く、高レベルの耐摩耗性と耐衝撃性が求められる部位を改質する場合、本体に強靭な鋼材を使用し、耐摩耗性が求められる部位に高硬度の金属を肉盛溶接する方法がしばしば採用される。
【0003】
こうした硬化肉盛溶接に用いられる溶接材料としては、従来より被覆アーク溶接棒が汎用されてきたが、溶接施工の高機能化、省力化、高性能化等の観点から、最近ではシールドガスとして炭酸ガスを用いた自動もしくは半自動溶接法が採用される様になってきている。自動乃至半自動溶接に用いられる主な溶接材料はソリッドワイヤとフラックス入りワイヤであるが、ソリッドワイヤを用いる方法では、ワイヤ成分そのものを高硬度の金属素材としなければならないため、ワイヤ製造時の伸線加工などが極めて困難であり、細径のワイヤ状にするのが非常に難しい。
【0004】
これに対しフラックス入りワイヤであれば、例えば軟鋼など伸線加工性の良好な鋼材をフープ材として使用し、その内部に各種合金元素を粉末状にして内包することにより肉盛溶接金属の成分を容易に調整することができ、優れた伸線加工性の下で硬質の肉盛溶接金属を与えるワイヤを生産性よく製造することができる。しかも必要に応じて、内包するフラックス成分中にスラグ形成剤や脱酸剤、アーク安定剤などを含有させることによって溶接作業性も改善することができるので、好ましい硬化肉盛溶接法として推奨される。この様なフラックス入りワイヤの例としては、例えば特開平2−241693号(高Cr系フラックス入りワイヤ)等に開示があり、またJIS Z 3326には、各種フラックス入りワイヤを用いた溶着金属の化学成分が規定されている。
【0005】
上記の様な用途に用いられる硬化肉盛溶接材料のうち代表的なものは、マルテンサイト系と高Cr鉄系の肉盛溶接材料であるが、マルテンサイト系の肉盛溶接材料では、溶着金属の内部に高硬度の炭化物が含まれないため、一般に高Cr鉄系溶接材料を用いた場合に比べて硬化肉盛溶接金属の耐摩耗性が不十分であり、満足のいく摩耗寿命が得られ難い。一方高Cr鉄系溶接材料は、高硬度の炭化物等を相当量含んでいるためマルテンサイト系溶接材料に比べると、特に激しい土砂摩耗などに対する耐摩耗性には優れている反面、耐摩耗性と引き替えに溶着金属の伸びや靭性が乏しくなって割れを生じ易くなる傾向があり、硬化肉盛部が使用中に欠けや剥離を生じて使用し得なくなることがあり、破砕機械等本体の損傷を招く恐れも生じてくる。こうした欠けや剥離は、高Cr鉄系肉盛溶着金属の耐割れ性不足が最大の原因と考えられる。
【0006】
即ち硬化肉盛溶接部に発生する割れは、当該摩耗部品が稼働中に受ける応力によって進展し、ついには肉盛溶着金属の欠落や剥離を生じ、耐用寿命を却って短くするのである。従って、特に激しい衝撃に曝される摩耗部材については、耐摩耗性を確保するための前提として、耐割れ性の改善が強く望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、高硬度で優れた耐摩耗性を有し、しかも優れた耐割れ性を示す肉盛溶着金属を与える硬化肉盛溶接用のフラックス入りワイヤを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係る硬化肉盛溶接用フラックス入りワイヤとは、鉄基金属外皮内にフラックスが充填された硬化肉盛溶接用のフラックス入りワイヤであって、該ワイヤ全量中に占める比率が
C :0.5%超1.5%以下、
Si:0.6〜2.1%、
Mn:0.6〜1.8%、
Cr:2.5〜7.5%、
W :0.1%以上1.5%未満、
V :0.1%以上1.5%未満、
Mo:1.0〜8.0%、
B :0.2%超0.8%以下、
であるところに特徴を有している。
【0009】
上記フラックス入りワイヤ中に含まれる元素の中でも特に重要なのはMoであり、そのより好ましい含有量は、2.0%以上、更に好ましくは3.0%以上、最も好ましくは4.0%超である。
【0010】
また上記フラックス入りワイヤにおいて、金属外皮内に充填されるフラックス成分は、肉盛溶接により金属外皮と溶融一体化して溶着金属を構成する前記各元素のみからなるものであっても勿論構わないが、それらの元素に加えて、溶接作業性などの向上を期して、溶着金属成分中には取り込まれない成分、例えばアーク安定剤、スラグ形成剤、ガス発生剤等を、金属外皮内に充填させることも有効である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前述した様な従来技術に指摘される問題点の改良を期して、特に、硬化肉盛溶接された溶着金属の硬度と耐割れ性に影響を及ぼす因子を、溶着金属の化学成分の観点から検討を重ねてきた。その結果、炭化物の生成は溶着金属の硬度向上に有効である反面、耐割れ性を極端に悪化させることをつきとめた。
【0012】
ところが耐割れ性を高めるべく炭化物の生成を制御すると、溶着金属の硬度が低下して満足のいく耐摩耗性が得られなくなる。そこで溶着金属の硬度を高めると共に、耐割れ性も向上させることのできる溶着金属成分を見出すべく検討を重ねた。その結果、溶着金属中のCr,W,V,Mo,Bの各含有量、とりわけMoとBの含有量を適切に制御し、溶着金属組織を鋼のマルテンサイトと硼化物からなる複合組織としてやれば、溶着金属の硬度が高められると共に、溶着金属組織が微細化されて耐割れ性も向上し、従来材に比べて格段に優れた耐摩耗性を有する表面硬化部材が得られることをつきとめた。
【0013】
そこで本発明では、こうした適正且つ微細な金属組織を有する硬化肉盛溶着金属を確実に与え得る様なフラックス入りワイヤを提供するものである。
【0014】
以下、本発明において硬化肉盛溶接用フラックス入りワイヤの化学成分を定めた理由を詳細に説明する。
【0015】
C:0.5%超1.5%以下
Cは、Fe主体のマトリックス中に固溶して鋼をマルテンサイト化する主要元素であり、ワイヤ中のC含有量が0.5%以下では、硬化肉盛により形成される溶着金属内部のFeへのC固溶量が不足気味となってマトリックスが硬度不足となり、後述する如くマトリックスの周囲に高硬度の硼化物が生成したとしても溶着金属全体としての硬度が十分に上がらなくなる。一方C含有量が1.5%を超えると、溶着金属のFeマトリックスの一部がマルテンサイトとならずにオーステナイトとして残存する。オーステナイトは硬度が低いため、溶着金属全体の硬度を低下させるばかりでなく、熱膨張係数がマルテンサイトや硼化物と大きく異なっているため、その収縮量の違いに由来して溶着金属が割れを起こし易くなる。こうしたCの利害得失を考慮してより好ましいC量の下限値は0.55%以上、更に好ましくは0.7%以上、C量のより好ましい上限値は1.3%以下である。
【0016】
尚、肉盛溶着金属中の好ましいC含有率は0.2〜0.9%程度であるが、Cは溶接時に一部が燃焼して消費されるので、溶接時の歩留りを考慮してワイヤ中のC含有量はこれよりやや多めの上記範囲に定めている。
【0017】
Si:0.6〜2.1%
Siは脱酸作用を有しており、溶着金属の清浄化に寄与する。こうした作用を有効に発揮させるには0.6%以上、より好ましくは0.7%以上含有させるべきであるが、多過ぎるとFeマトリックス中のSi固溶量が増大して靭性が低下し、耐割れ性に悪影響が表われてくるので2.1%以下、より好ましくは2.0%以下に抑えなければならない。尚、肉盛溶着金属中の好ましいSi含有量は0.6〜1.9%程度であるが、Siは溶接時に脱酸剤あるいはスラグ形成剤として作用してSiO となり一部が消費されるので、その消費量を考慮してワイヤ中のSi量は若干多めの上記範囲に規定している。
【0018】
Mn:0.6〜1.8%
上記Siと同様に脱酸作用を有し溶着金属の清浄化に寄与する元素であり、その効果を有効に発揮させるには0.6%以上、より好ましくは0.8%以上含有させなければならないが、多過ぎると溶着金属中にオーステナイトが生成し易くなり、硬度や耐割れ性に悪影響を及ぼす様になるので、1.8%以下、より好ましくは1.6%以下に抑えなければならない。該Mnの肉盛溶着金属中の好ましい含有量は0.6〜1.6%程度であるが、Mnも溶接時に脱酸剤あるいはスラグ形成剤として作用してMnO となり一部が消費されるので、その消費量を考慮してワイヤ中のMn量は上記の様にやや多めの上記範囲に規定している。
【0019】
Cr:2.5〜7.5%
CrはBと結合して硼化物を生成し、溶着金属の高硬度化に寄与する重要な元素であり、その効果を有効に発揮させるには2.5%以上、より好ましくは3.0%以上含有させるべきである。反面Cr量が多くなり過ぎると、溶着金属が凝固する際に高温割れを生じ易くなるので7.5%以下、より好ましくは6.8%以下に抑えなければならない。尚、肉盛溶接時のCrの酸化消費は殆んどなく、その殆んどは肉盛溶着金属内へ取り込まれる。
【0020】
W:0.1%以上1.5%未満
WもBと結合して硼化物を形成し溶着金属の高硬度化に寄与する他、溶着金属に伸びを与えて収縮割れを抑え耐割れ性を高める作用も有している。こうした効果を有効に発揮させるには0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.4%以上含有させるべきであるが、含有量が多くなり過ぎると耐割れ性を却って悪化させる傾向が生じてくるので、1.5%以下、より好ましくは1.45%以下、更に好ましくは1.3%以下に抑えるべきである。尚、肉盛溶接時のWの酸化消費も殆んどなく、その殆んどは肉盛溶着金属内へ取り込まれる。
【0021】
V:0.1%以上1.5%未満
VもBと結合して硼化物を形成し溶着金属の高硬度化に寄与する他、溶着金属が凝固する際の高温割れ防止にも有効に作用する。こうした作用は、0.1%以上、より好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.3%以上含有させることによって有効に発揮されるが、多過ぎると耐割れ性を却って悪化させるので、1.5%以下、より好ましくは1.4%以下、更に好ましくは1.2%以下、最も好ましくは1.0%以下に抑えるべきである。尚、肉盛溶接時のVの酸化消費も殆んどなく、その殆んどは肉盛溶着金属内へ取り込まれる。
【0022】
Mo:1.0〜8.0%
MoはBと結合して硼化物を形成し、溶着金属の高硬度化に寄与する主要元素であり、且つ硼化物の形成に寄与した以外のMoは、Feマトリックス中に固溶して溶着金属の焼入れ性を高める作用も発揮する。こうした効果を有効に発揮させるには、1.0%以上含有させなければならない。より好ましいMoの含有量は2.0%以上、更に好ましくは3.0%以上、最も好ましくは4.0%超であるが、多くなり過ぎると溶着金属の靭性を低下させて耐割れ性を阻害する傾向が表われてくるので、8.0%以下、より好ましくは7.0%以下に抑えなければならない。尚、肉盛溶接時のMoの酸化消費も殆んどなく、その殆んどは肉盛溶着金属内へ取り込まれる。
【0023】
B:0.2%超0.8%以下
Bは硼化物の形成に欠くことのできない元素であり、0.2%を超えて含有させなければ溶着金属中に十分な量の硼化物が生成せず、満足のいく硬度が得られないばかりでなく、金属組織も粗大となって十分な耐割れ性も得られ難くなる。但し含有量が多くなり過ぎると粒界脆化を起こして溶着金属の靭性を低下させ、却って耐割れ性に悪影響が表われてくるので、0.8%以下、より好ましくは0.7%以下、更に好ましくは0.6%以下に抑えるべきである。尚、肉盛溶接時のBの酸化消費も殆んどなく、その殆んどは肉盛溶着金属内へ取り込まれる。
【0024】
本発明のフラックス入りワイヤを構成する成分元素は上記の通りであり、残部成分は実質的にFeであり、その他の元素としてP,S,N,O等あるいは更に他の元素が混入してくることがあるが、それらも不可避不純物量である限り許容される。またフラックス入りワイヤにおいては、金属外皮内へ充填されるフラックス成分として、肉盛される溶着金属の化学成分には影響を与えない(即ち溶着金属中に取り込まれない)成分であって、肉盛溶接作業性などを高める作用を有する成分、例えばスラグ形成剤、アーク安定剤、ガス発生剤などを適量含有させることも有効である。但しこれらの成分は、溶着金属中には実質的に混入してこない成分であるから、それらの含有量は、前記フラックス入りワイヤの化学成分を設定するに当たっては考慮に入れないものとする。
【0025】
次に、上記化学成分を特定することによって、高硬度で且つ耐割れ性が共に高められた溶着金属が得られる理由について説明する。
【0026】
まずBは、マトリックス粒界に偏析し易く、且つCr,Mo,W,V等と結合して硼化物を形成する特性を有している。そしてこれらの元素との反応によって生成する硼化物は、溶着金属内でマトリックス粒界に沿って網目状に生成し、マトリックスの粒成長を抑制して結晶粒を微細化する特性を発揮し、溶着金属の靭性を高めて耐割れ性を向上させる。しかも生成した硼化物は高硬度であり、溶着金属の硬度上昇にも寄与する。
【0027】
一方、Cr,Mo,W,VはCとも反応し易いことが確認されているが、系中にBが存在するとその多くは硼化物となるため、溶着金属中の炭化物の生成量は極めて少なくなる。その結果、溶着金属中に含まれている殆んどのCはFeマトリックス中に固溶することとなり、Feのマルテンサイト化に寄与する。一般にマルテンサイトは、Fe中のC固溶量が多くなるほど高硬度化することが知られており、溶着金属中のCが炭化物の生成に利用されずその殆んどがマトリックス中に固溶すると、マルテンサイトからなるマトリックスの硬度も高くなり、溶着金属全体が高硬度化してくる。
【0028】
この様に炭化物が生成し難くなることによる効果は、マルテンサイトの高硬度化に止まらない。即ち炭化物は極めて脆弱であるため、炭化物が生成すると溶着金属の靭性が低下して耐割れ性に悪影響を及ぼす様になるが、前述の如くB,Cr,Mo,W,V等の含有量を調整した成分系では、溶着金属内部の炭化物量が極めて少なくなり、耐割れ性の向上にも好影響をもたらすものと考えられる。
【0029】
この様にBの添加効果は、硼化物の生成とマトリックス硬度の上昇による溶着金属の高硬度化のみならず、結晶粒の微細化ならびに脆弱な炭化物の生成抑制による溶着金属の耐割れ性向上にも寄与し、それらの効果が相まって、溶着金属の高硬度化と耐割れ性の向上に顕著な効果を奏するのである。
【0030】
また、前述の如く溶着金属の高硬度化にはマトリックスをマルテンサイト化することが重要となる。そして、マトリックスを安定してマルテンサイト化するには、溶着金属の焼入れ性を向上させることが有効であり、焼入れ性の向上にはMoが顕著な影響を及ぼす。しかもMoは、前述の如く硼化物を生成して溶着金属の硬度向上にも寄与するので、含有元素の中でもMoは極めて重要な元素として位置付けられる。そしてこうしたMoの焼入れ性向上と硼化物生成による複合効果を有効に発揮させるには、前述の如くフラックス入りワイヤ中のMo含有量を1.0%以上、より好ましくは2.0%以上、更に好ましくは3.0%以上、最も好ましくは4.0%超とすべきであり、Mo量が1.0%未満では、Moの殆んどが硼化物となって消費され、マトリックス中に固溶するMoが実質的に存在し得なくなる為、溶着金属の焼入れ性を高める効果が有効に発揮されず、マトリックス硬度の低下、ひいては溶着金属の硬度低下を惹起する。尚こうしたMoの効果は約4〜5%程度で飽和し、8.0%を超えて過度に含まれるときは溶着金属の靭性が低下し、満足な耐割れ性を確保できなくなる。
【0031】
本発明で定める上記ワイヤの化学成分は、金属外皮とその内部に充填されるフラックス成分によって調整する。通常は、金属外皮として軟鋼やCr鋼などを使用し、それら外皮金属に不足する元素をフラックス成分として内部に充填することにより、フラックス入りワイヤ全体としての化学成分が前述した範囲となる様に調整すればよい。従って、外皮成分が制限されないことは言うまでもないが、フラックス入りワイヤ製造時の伸線加工性などを考えると、金属外皮材としては伸線加工性に優れた素材を使用することが好ましく、従って、金属外皮の硬度を高める様な元素、例えばSi,C,B,Mo,W等は極力フラックス成分として金属外皮内に充填して成分調整することが望ましい。
【0032】
尚、金属外皮内に充填して成分調整に用いられる前記各元素のうちC,Si,Mn,B,Cr,W,V,Mo,等は夫々の金属粉として供給してもよいが、Fe等との合金として供給してもよい。
【0033】
尚フラックス入りワイヤの断面形状や寸法、フラックス充填率等も特に制限がなく、採用する溶接法や肉盛溶接位置などを考慮して任意に決めればよい。
【0034】
本発明のフラックス入りワイヤを用いた硬化肉盛溶接法あるいは溶接条件等には一切制限がなく、最も一般的な炭酸ガスアーク溶接法の他、シールドガスとしてAr等の不活性ガスを混入させたガスアーク溶接法(MIG溶接、MAG溶接、TIG溶接など)、サブマージドアーク溶接法、セルフシールドアーク溶接法などが非限定的に例示される。
【0035】
また硬化肉盛溶着金属層が形成される母材の種類は、前記硬化肉盛層の支持層として使用時の応力に耐え得る強度と靭性を有する素材であればその種類は特に制限されないが、強度特性や前記溶着金属層に対する接着性、コスト等を総合的に考慮して最も実用性の高いのは軟鋼や低合金鋼などの鋼材である。
【0036】
上記の様に、本発明のフラックス入りワイヤを用いて肉盛溶接された溶着金属は、高硬度で且つ優れた耐割れ性を有しており、重衝撃を受ける部位に適用したときでも卓越した靭性と耐摩耗性を発揮するので、特に破砕機や粉砕機など、具体的にはコーンクラッシャやジョークラッシャ、ローラミル、インパクトクラッシャ等に幅広く適用することができる。また破砕・粉砕以外の分野でも、例えば製鉄所の原料搬送部品、鉄鉱石等の原料貯留施設に設けられる各種取扱い部品、圧延ロール等の各種耐摩耗性部品、更にはパワーショベル等の建設機械部品、鉱山、石炭等の採掘に用いられる鉱山機械部品などに広く活用することができる。
【0037】
【実施例】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
実施例1
金属外皮材として軟鋼を使用し、充填フラックスの成分と充填量を調整することにより、下記表1に示す化学成分のフラックス入りワイヤを製造した。尚フラックスの充填率は15〜35%、ワイヤ径は1.2〜1.6mm(直径)の範囲とした。
【0039】
得られた各フラックス入りワイヤを使用し、軟鋼製母材(厚さ50mm×幅150mm×長さ200mm)の表面に、図1(1は母材、2は溶着金属を表わす)に示す如く硬化肉盛溶接を行なって溶着金属層を形成した。尚肉盛溶接条件は下記の通りとした。
(溶接条件)
溶接電流:200A,溶接速度:35cm/分,溶接電圧:33V,
シールドガス:CO 100%,ワイヤ突き出し長さ:20mm,
予熱・パス間温度:200〜350℃
肉盛溶着金属厚さ:10mm(3層盛り)
【0040】
得られた各肉盛溶接材について、溶着金属成分を調べると共に、その硬度(荷重30kgfでのビッカース硬さ)と割れの状態(溶着金属表面のカラーチェック)を調べ、表1,2に示す結果を得た。
【0041】
また上記と同じフラックス入りワイヤと溶接条件を採用し、図2に略示する耐摩耗性評価試験装置[図中、3は上型基材(軟鋼)、4は下型基材(軟鋼)、5は硬化肉盛溶着金属層、6は被破砕石、7は上部原料シュート、8は下部原料シュート、9は荷重検出装置(ロードセル)、10はアクチュエータ、11は強化ガラスを夫々示している]における上型基材3および下型基材4の作用面に硬化肉盛溶着金属層5を夫々形成し、各試験材を試験装置に装着して、上部原料シュートからチャート岩石を連続的に装入して下記の条件で破砕を行ない、試験前後の試験材の重量を測定して重量減少(試験材4個の合計)により耐摩耗性を調べた。なお試験材の重量減少は、破砕に供された岩石の重量(投入量)に影響を受けると予測されるため、比摩耗量(試験材の重量減少/破砕した岩石の重量)で評価した。結果を表2に示す。
(破砕条件)
破砕原料:チャート岩石、投入サイズ 2〜5mm、出口サイズ:2.5±1mm
破砕時の周波数:2Hz
平均破砕荷重 :5kN
繰り返し回数 :約8000回
【0042】
【表1】
Figure 0003548414
【0043】
【表2】
Figure 0003548414
【0044】
表1,2より次の様に考えることができる。
No.11〜18は本発明の規定要件を全て満たす実施例であり、いずれの溶着金属もビッカース硬度が800を超えており、且つ溶着金属の表面および内部のいずれにも割れは認められない。但し溶着金属の硬度については、Mo添加量の影響が認められ、本発明の規定範囲内であっても、Mo量が多くなるほど硬度は高くなる傾向が伺われる。しかし、その傾向はMo量が4%を超えた辺りでほぼ飽和している。
【0045】
これらの実施例に対し、No.1〜10は、本発明で規定するいずれかの要件を欠く比較例であり、下記の如く硬度か耐割れ性のいずれかに問題がある。
【0046】
No.1:ワイヤ中のC量が不足するため溶着金属の硬度が低く、しかもVが含まれていないため溶着金属に高温割れが発生している。
【0047】
No.2:Mn量が多過ぎるため溶着金属に低温割れが発生しており、またMn量が多く且つCr量が不足しているため溶着金属の硬度も低く耐摩耗性に欠ける。
【0048】
No.3:溶着金属の硬度や耐割れ性に問題はないが、SiとMn量が不足するため溶着金属内にブローホールが発生している。
No.4:Mo量が不足するため溶着金属の硬度が不足する。
【0049】
No.5:WおよびB量が多過ぎるため耐割れ性が低下し、割れが発生している。
No.6:Cr量が多過ぎるため高温割れが発生しており、且つB量も不足するため硬度が低くまた低温割れを生じている。
【0050】
No.7:W量が不足するため硬度が低く、またSi量が多過ぎるため耐割れ性が悪く低温割れを生じている。
No.8:C量が多過ぎるため、硬度が低く且つ低温割れも見られる。
No.9:Mo量が多過ぎるため耐割れ性が低下し、低温割れを生じている。
No.10:V量が多過ぎるため耐割れ性が低下し、溶着金属に低温割れが生じている。
【0051】
またNo.11〜18(実施例)とNo.1〜10(比較例)を全体的に比較すると、溶着金属の比摩耗量は前者の方が格段に優れており優れた耐摩耗性を有していることが分かる。即ち、本発明で定める前記規定要件のうち1つでも欠如する比較例では、得られる溶着金属の表面硬度が低く、あるいは溶着金属層の表層または内部に割れやブローホール等の欠陥が生じ、該欠陥部からの欠けや剥離を起こすため比摩耗量が多くなっている。また溶着金属の硬度と耐摩耗性については、Mo含有量依存性が認められ、Mo含有量が多くなるほど硬度が高くなって耐摩耗性は良好となる傾向が認められる。しかしその傾向は、Mo含有量が約4%でほぼ飽和することを確認できる。
【0052】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、フラックス入りワイヤ中の含有元素のうち特に、C,B,Cr,Mo,W,V等の含有量を規定することによって、高硬度で且つ耐割れ性に優れ、重衝撃を受ける破砕・粉砕条件下に曝されたときでも卓越した耐摩耗性を示す肉盛溶着金属を与える肉盛溶接用フラックス入りワイヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験で採用した硬化肉盛溶接法を示す見取り図である。
【図2】フラックス入りワイヤを用いて形成した硬化肉盛溶着金属層の耐摩耗性を評価するための岩石破砕試験法を示す概略断面説明図である。
【符号の説明】
1 母材(基材)
2 溶着金属
3 上型基材(軟鋼)
4 下型基材(軟鋼)
5 硬化肉盛溶着金属層
6 被破砕石
7 上部原料シュート
8 下部原料シュート
9 荷重検出装置(ロードセル)
10 アクチュエータ
11 強化ガラス

Claims (3)

  1. 鉄基金属外皮内にフラックスが充填された硬化肉盛溶接用のフラックス入りワイヤであって、該ワイヤ全量中に占める比率が
    C :0.5%超1.5%(質量%を意味する、以下同じ)以下、
    Si:0.6〜2.1%、
    Mn:0.6〜1.8%、
    Cr:2.5〜7.5%、
    W :0.1%以上1.5%未満、
    V :0.1%以上1.5%未満、
    Mo:1.0〜8.0%、
    B :0.2%超0.8%以下、
    であり、
    残部はFe及び不可避不純物であることを特徴とする硬化肉盛溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. Mo含有量が4.0%超8.0%以下である請求項1記載の硬化肉盛溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. 請求項1または2の成分に加えて、フラックス成分としてアーク安定剤、スラグ形成剤およびガス発生剤の少なくとも1種が含まれていることを特徴とする硬化肉盛溶接用フラックス入りワイヤ。
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