JP3439685B2 - 高度けい酸質肥料 - Google Patents

高度けい酸質肥料

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    • C05FERTILISERS; MANUFACTURE THEREOF
    • C05GMIXTURES OF FERTILISERS COVERED INDIVIDUALLY BY DIFFERENT SUBCLASSES OF CLASS C05; MIXTURES OF ONE OR MORE FERTILISERS WITH MATERIALS NOT HAVING A SPECIFIC FERTILISING ACTIVITY, e.g. PESTICIDES, SOIL-CONDITIONERS, WETTING AGENTS; FERTILISERS CHARACTERISED BY THEIR FORM
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、イネ科の作物の栽
培において必要不可欠な高度けい酸質肥料に関する。
【0002】
【従来の技術】けい酸質肥料は、イネ科植物においては
イネの珪化細胞を増殖し、耐病、耐虫性を増大するた
め、また、茎葉を丈夫にして倒伏を防止するため、わが
国における水稲栽培にとって不可欠の肥料となってい
る。とりわけ、寒冷地の水稲栽培においては、早期活着
と活着率の向上が水稲の健全な生育のために極めて重要
であり、「けい酸の初期吸収量増大が、初期生育向上に
極めて有効に働く」との研究報告が最近多数見受けら
れ、この目的に使用する安価な資材の早期開発が、切望
されている。更に最近の研究によると、けい酸吸収量の
増加が、米の食味を向上させるために重要であること
も、明らかになっている。
【0003】ところで、現在一般的に使用されているけ
い酸質肥料の大部分は、銑鉄、鋼等の生産時に発生する
鉱さい類を粉末にした鉱さいけい酸質肥料(通称ケイカ
ル)であるが、水稲の健全な生育を図るためには、ケイ
カルの施肥量は10a当たり200kg以上が望ましい
といわれている。しかし、最近は農業従事者の高齢化に
より実際の施肥量は著しく減少しており、冷害年におけ
る障害の発生が懸念されている。そこで、有効成分の含
有率が高く、施肥量が少なくて済む肥料の開発が望まれ
ている。しかし、先に述べたとおりケイカルは金属精錬
の副産物である鉱さいを主原料としているので、けい酸
含有率を高めることは原理的に不可能である。
【0004】また、けい酸質肥料の有効成分はいずれも
遅効性であるため、寒冷地においては生育初期の作物に
よる吸収性が不十分である、という問題があった。そこ
で、有効成分の含有率が高く、かつ植物による利用率が
高くて、施肥量を減量しうるけい酸質肥料が切望されて
いる。しかし、現在流通しているけい酸質肥料では、い
ずれもこの様な要望に答えることが不可能であった。
【0005】ところで、従来、鉱さい等に酸を添加反応
させて肥料を製造するという試みとしては、例えば下記
のものが知られている。
【0006】(1)特開平5−201784号公報(従
来技術1)は、低炭素フェロクロムスラグ水砕品とりん
酸液とを混合反応させる燐酸肥料の製造法について開示
している。この発明の目的は、従来結晶質の鉱さいを原
料として使用する場合に、「燐酸との反応性向上のため
に必要であった、スラグを微粉砕しりん酸を加えながら
造粒する」という工程を省略しようとするものであり、
そのため原料を風化し易い低炭素フェロクロムスラグに
限定している。なお、従来技術1では、微粉砕した鉱さ
いに高濃度の燐酸液を混合反応させたものは、珪酸が可
溶性で存在することが知られていると記載している。
【0007】しかし、鉱さい中のけい酸の大部分が可溶
性であることは等業者に公知のことであるから、これは
単に公知事項を述べているにすぎず、りん酸添加による
可給態けい酸量の増加については、何ら言及していな
い。因みに、市販のケイカル中の可溶性けい酸量の全け
い酸量に対する割合は、通常90%を下回ることはない
が、本願の実施例を見ると可溶性けい酸の全けい酸に占
める割合は35〜60%で、極めて低い水準である。
【0008】(2)特公平1−22239号公報(従来
技術2)は、特定組成の鉱さいを使用することによっ
て、りん酸液を出発原料として使用しながら主成分を縮
合りん酸塩とし、もってりん酸肥料成分の利用率を高め
ることを目的とした縮合りん酸塩含有粒状肥料の製造法
について開示されている。しかし、従来技術2には、け
い酸分については何ら開示されていない。
【0009】(3)特公昭63−35598号公報(従
来技術3)は、鉱さいとりん酸又は酸性りん酸塩を出発
原料として使用し、原料の配合モル比を一定の範囲に調
節し反応させながら造粒することによって、強度が高く
取扱い性に優れた粒状塩基性りん酸肥料を製造すること
を目的とした粒状塩基性燐酸肥料の製法について開示し
ている。しかし、けい酸の肥効については、一切思慮の
対象となっておらず、従ってその点については何も記載
されていない。
【0010】以上詳細に述べたとおり、これまでに知ら
れている鉱さいと酸を反応させる方法による肥料の製造
方法は、いずれもりん酸または水溶性の酸性りん酸塩を
原料として使用しながら、難水溶性りんを主成分とする
肥料の製造法に関するものであり、本願の内容とはその
技術内容を完全に異にしている。
【0011】(4)なお、特公平2−2837号公報
(従来技術4)は、岩石をクエン酸溶液に投入すると気
泡が発生して岩石が溶け、溶出したケイ酸分は分子構造
が非常に小さく植物が吸収し易い状態になるとの知見
(証明はされていない)に基づく、ケイ酸カリウム液体
肥料及びその製造方法について開示している。しかし、
従来技術4では、ケイ酸分を含有する原料としてケイ酸
ナトリウム、カリウムの他各種ケイ酸含有スラグ等を挙
げているが、ケイ酸カリウム以外の物質を出発原料とす
る場合は、一旦ケイ酸カリウムに変換してからクエン酸
水溶液と反応させるとしており、これもまた本発明とは
技術思想を異にしていることは言うまでもない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、こうした事
情を考慮してなされたもので、可給態けい酸含有率が従
来の鉱さいけい酸質肥料に比較して著しく高く、且つ水
稲によるけい酸の吸収とりわけ生育初期の吸収量を著し
く高め得る、高度けい酸質肥料を提供することを目的と
する。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、製銑鉱さい,
製鋼鉱さい,フェロアロイ鉱さい,熔成りん肥の1種叉
は2種以上から選択される、75μm以下の粒度をもつ
可溶性けい酸含有物に、溶出促進剤を添加、反応させ
て、可給態けい酸を富化した、アルカリ性を示すことを
特徴とする高度けい酸質肥料(水田施肥用タイプ)であ
る。
【0014】本発明において使用される可溶性けい酸含
有物としては、製鉄、製鋼の際に生ずる高炉さい、転炉
さい、フェロマンガン、シリコマンガン等の合金鉄その
他の金属類を製造する際に発生する鉱さい類または熔成
りん肥(以下、ようりんと略称する)等が挙げられる。
けい酸含有率は高いことが望ましいが、可溶性けい酸含
有物であればその種類については、特に制限はない。
【0015】本発明において、前記溶出促進剤として
は、りん酸、硝酸、硫酸等の無機酸及びそれら無機酸の
酸性塩、クエン酸の1種又は2種、あるいはりん酸、硝
酸、硫酸、クエン酸のいずれか又はそれらの併用が挙げ
られる。このうち、りん酸は多くの原料物質について富
化効果が一番大きく、またそのまま肥効成分として働く
ので、最も好適である。
【0016】
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を更に詳細に説明
する。本発明は、既述した問題点を解決するため、高炉
スラグ等の鉱さい(鉱滓)類、熔成りん肥等の可溶性け
い酸含有物に、けい酸溶出促進剤としてりん酸、硫酸、
硝酸、クエン酸及び/又はそれらの酸性塩の一種又は二
種以上を添加・反応させる方法によって、可給態けい酸
含量を著しく高め、作物のけい酸吸収とりわけ生育初期
の吸収量を著しく高めうる、新規なけい酸質肥料を提供
するものである。
【0018】(1)本田施肥用高度けい酸質肥料の開発 鉱さいけい酸質肥料の有効けい酸分として、現在の肥料
公定規格では、可溶性けい酸(0.5Mの塩酸溶液可溶
分)が定められている。しかし、この可溶性けい酸の含
有量は、鉱さいの種類、その製造過程によってその値が
異なっている。また、可溶性けい酸分は、現実にはその
一部しか作物に有効に働かず、可溶性けい酸分の値が同
じであっても稲の吸収量に差が生ずることのあることも
知られている。
【0019】以上述べたとおり、0.5Mの塩酸による
抽出法で評価される鉱さいけい酸質肥料の可溶性けい酸
量は、必ずしも水稲によるけい酸吸収量と一致しない。
ところで、最近の研究結果によって、土壌中けい酸の内
で中性溶液、あるいは水に対する溶解性けい酸の量が、
水稲のけい酸吸収量との相関が大きいことが確認されて
いる。従って、現今研究者の問では、鉱さいけい酸質肥
料の有効けい酸含有量の指標として、湛水保温静置法
(土壌環境分析法編集委員会編土壌環境分析法274〜
276頁(1997年6月17日)博友社)により求めた
水溶解性けい酸含有量(以下単に可給態けい酸と記載)が
採用される傾向にある。
【0020】従来、鉱さいけい酸質肥料の鉱物組成は、
その組成と冷却過程によって一義的に定まるものであ
り、肥効は生成する鉱物組成に支配されるという考え方
が、主流になっていた。ところで、鉱さいけい酸質肥料
の組成と肥効の関係を論じた研究の多くは、一肥料は植
物が分泌する有機酸によって徐々に溶解吸収されて肥効
を発揮すると事実に基づき一結晶性合成鉱物の酸による
溶解性を調べ、その結果から肥効の差を推定しようとす
るものである。しかし、水田土壌中における溶解過程に
関する研究結果によると、「このような強い酸性下にお
ける溶解性の差をもって、肥効を論ずることには問題が
ある」、ということが明らかになっている。
【0021】これまで、「水稲のけい酸吸収は生育中期
以降一減数分裂期から穂揃期にかけてもっとも極めて盛
んになる。そして光合成を高めるための葉身の直立化
や、いもち病に対する抵抗力の向上などのためには、こ
の時期のけい酸吸収が最も重要である。しかし、生育の
初期のけい酸吸収は少なく、その時期に水溶性のけい酸
を施肥しても、浸透水と共に流出してしまうだけで施用
効果は期待できない、また生育初期のけい酸欠乏は収量
に大きな影響を及ぼさない」、というのが定説になって
いた。
【0022】しかし、前述のとおり最近の研究によっ
て、寒冷地のように水稲の初期生育の促進を図る必要性
の大きいところでは、水稲の生育初期のけい酸吸収が極
めて重要であることが、明らかになってきた。
【0023】本発明は、以上の様な事情を考慮してなさ
れたものである。即ち、可溶性けい酸を含有する物質を
特定の物質で処理することによって可給態けい酸の含有
量を著しく増加させ、作物によるけい酸の生育初期吸収
量を著しく高め、もって生育期全般の植物体中のけい酸
レベルを高めて、健全な生育を図るものである。
【0024】本発明者は、けい酸質資材の作用効果に関
する通説に疑問を抱き、可溶性けい酸含有物に各種の物
質を作用させた場合に生ずる可給態けい酸含量の増加
率、及び可給態けい酸施用量と水稲生育期毎のけい酸吸
収の関係について、精緻な実験を実施した。その結果、
可溶性けい酸含有物に溶出促進剤としてりん酸、硫酸等
を作用させれば、可給態けい酸を著しく高めうること、
及びそのようにして可給態けい酸を富化した資材を施用
し、土壌中の可給態けい酸含有量を十分に高めるなら
ば、水稲は初期の段階から積極的にけい酸を吸収するこ
とを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0025】本発明において使用される可溶性けい酸含
有物の粉末の粒度は細かいほど溶出促進剤との反応速度
が高まり、反応の均一性も向上するので、極力微細にす
ることが望ましい。但し、必要以上に粉砕すると動力コ
ストがアップするので、通常は肥料分析法(農水省農業
環境技術研究所,平成4年12月発行、1992年版)に
おいて、ケイ酸質肥料等の分析試料粒度として規定した
212μm以下とすれば十分であるが、工業的に容易に
到達可能な粒度である75μm以下まで粉砕すれば、な
お好適である。
【0026】けい酸の溶出促進剤としては、既述したよ
うに、りん酸、硫酸、硝酸、クエン酸等が挙げられる
が、りん酸は多くの原料物質について富化効果が一番大
きく、またそのまま肥効成分として働くので、最も好適
である。りん酸の富化効果が高い理由は、可給態けい酸
測定液中のカルシウム,マグネシウム等の濃度が他の溶
出促進剤の場合に比較して著しく低いという事実から、
大略以下のように推定される。
【0027】即ち、原料粉末と溶出促進剤が反応して、
原料物質の構造の一部が破壊され、けい酸、カルシウ
ム、マグネシウム等の一部が水に溶解しやすい形態に変
化するが、それらの多くはりん酸により捕捉、固定され
て再び不溶化する。しかし、硫酸等の場合は水に対する
溶解度が大きいため、水に溶解したままとなる。
【0028】ところで、溶液のカルシウム濃度が高まる
と、鉱さいからのけい酸溶出量が減少するという報告が
ある(例えば、加藤・尾和、日本土壌肥料学雑誌、6
7、626〜632(1996))。このことから想定し
て、水に溶解したカルシウム等がけい酸の溶解を抑制す
るものと思われる。
【0029】但し、ようりんについては、硫酸の可給態
けい酸富化効果がりん酸の効果に近くなっており、この
考え方は必ずしも当てはまらず、従ってそのメカニズム
については今のところ完全には解明されていない。
【0030】前記溶出促進剤は、通常原料粉末との混合
及び反応の均一化を図るため水で溶解又は希釈して使用
する。反応操作に使用する装置は、粉体と液体の混合が
適当にされる形式であれば特に機種は限定されず、例え
ば攪拌機付きの縦型、横型又は回転ドラム型等のいずれ
でもよい。
【0031】細かく粉砕した原料粉末と溶出促進剤溶液
を、例えばリボンミキサー、パドルミキサー等公知の混
合装置に装入し反応させる。なお、混合装置への鉱さ
い、溶出促進剤溶液等の添加順序、速度等には特に制限
事項はなく、用いる混合装置及び付帯設備の構造、機能
に応じた適当な操作方法を選択できる。
【0032】但し、溶出促進剤としてりん酸を採用する
場合は、その濃度が高いほど、とりわけ50%以上にお
いて、肥料分析法において定義される水溶性けい酸の値
が大きくなる。従って、水溶性けい酸の含有量をより高
めた資材を所望する場合は、濃度50%以上のりん酸を
使用すればよい。この場合、固液比がかなり小さくなる
から、少量の液体を粉体と均一に混合可能な装置を使用
し、粉体をよく撹幹しながら溶出促進剤溶液を噴霧また
は滴下するなどの配慮が必要になる。
【0033】湛水保温静置法により求めた可給態けい酸
の値は、水稲のけい酸吸収と高い相関のあることが判明
しているから、水稲のけい酸吸収を高める資材を開発す
るためには、先ず第一に可給態けい酸を増加させ得るけ
い酸溶出促進剤を見いだすことが必要である。そこで、
既存の知識を基に、湛水保温静置法による可給態けい酸
の値を高めるために好適な資材とその必要添加重、反応
方法等の大枠を把握する実験を行った。
【0034】そして、可給態けい酸の水準が異なる試作
品を用いて、可給態けい酸量と植物のけい酸吸収量との
関係を調査し、本発明を完成した。また、本発明により
調製した資材の可給態けい酸の富化効果を水稲幼植物栽
培によって確認し、更に実際のほ場に施肥して水稲を栽
培し、稲体のけい酸含有率、増収効果等を評価し、本発
明により得られる高度けい酸質肥料の肥効を確認した。
【0035】(2)苗箱施肥用高度けい酸質肥料の開発 次に、育苗培土添加用肥料の開発について説明する。近
年、育苗に使用する土壌(育苗培土)にシリカゲルを添加
して水稲苗を育成すると、育苗当初よりけい酸を十分に
吸収した受光姿勢の良い、根量の多い耐病虫害性、耐環
境性の強い健苗を育成出来ることが報告されている。
【0036】このことは、発明者が行った前述の肥効試
験の結果に於いても、土壌の可給態けい酸を富化すると
水稲は苗移植後の早期の段階からけい酸を積極的に吸収
することが確認され、水稲苗を育苗する培土に我々の発
明に係る高度けい酸質肥料を添加すると苗のけい酸含有
量を高め得るであろうことが示唆されている。
【0037】ところで、既存のけい酸質肥料はいずれも
強アルカリ性であるため、このような目的に使用する資
材としては不適当であるから、研究にはアルカリ分を含
まないシリカゲルを使用している。しかし、シリカゲル
は非常に高価であり、研究目的の使用についてはさてお
き、実用化については極めて困難である。
【0038】我々の発明にかかる前記技術を更に発展さ
せて、このような使用目的に合致した水稲苗箱施肥(育
苗培土添加)用の高度けい酸質肥料を、調製することが
出来る。育苗時の土壌適性pHは水田よりもその値が低
くて、4.5〜5.5に保持する必要があるといわれて
いる。従って、我々の発明に係る前述の高度けい酸質肥
料をそのまま育苗床土に施用することは出来ないから、
苗箱施肥に適した資材の調製条件について、詳細に検討
を行った。
【0039】育苗培土の適性pHは一般的には4.5〜
5.5であるといわれているが、寒冷地においては育苗
中の土壌pHが5.2以上になると不定性立ち枯れ病に
かかりやすくなるので、5.0以下に維持しなければな
らない。育苗用の土壌は、田植機械の普及と共に専門メ
ーカーによって調製された育苗培土を使用するのが一般
的になっているが、一部には水田土壌や山土も使用され
ている。このように、育苗に使用する土壌が異なると、
当然のこととしてpHや添加物質に対する緩衝能が異な
るから、同一の資材、量を添加しても育苗中のpHに差
が生ずることになる。
【0040】従って、育苗培土添加用資材の目標pH値
は一義的に定めることが出来ないが、一般的には2〜5
に調整したものを使用することで、目的を達成すること
が可能である。なお、使用に先立って、選定した培土に
所要量の資材を添加して湛水培養後のpHを測定するこ
とによって、培土と資材とのマッチングを確認すること
ができる。
【0041】育苗培土添加用高度けい酸質肥料は、後述
する実施例に示すとおり、苗のけい酸含有率をほぼ2倍
に高めうることが認められ、極めて有効な資材であるこ
とが明らかとなった。
【0042】
【実施例】次に、本発明の実施例に基づき、本発明の内
容を更に具体的に説明する。 (実施例1)下記表1に記載した原料を、下記表2に記
載した溶出促進剤と反応させて、可給態けい酸の富化効
果を確認した。溶出促進剤の種類、添加率(溶出促進剤
添加量の原料使用量に対する重量百分率、以下同様)と
可給態けい酸の富化効果の関係は、下記表3に示すとお
りである。
【0043】可給態けい酸の富化反応は、300mlの
トールビーカーに100mlの純水で溶解又は希釈した
溶出促進剤溶液を入れ、75μmの篩を全通するように
粉砕した原料粉末30gを添加して、30分攪拌を継続
し反応を完了させた。なお、反応温度については、トー
ルビーカーを沸騰水中に保持して反応した場合と室温に
おいて反応した場合とについて、可給態けい酸の値に差
が生じないことを、予備実験で確認した。また、反応時
間については、1O分と60分で差が認められなかった
が、本実験は完全を期す意味で30分とした。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】(実施例2)上記実施例1において調製し
た資材の水稲幼植栽培試験を、下記に示す条件で実施し
た(幼植栽培試験(1))。 ・試験規模:ワグネルポット(1a/5,000 乾土3.0kg)×2反復 ・供試土壌:細粒灰色低地土 ・供試品種:きらら397 ・栽培方法:20日苗5株植、栽培日数59日 ・施肥量 :試験資材 50g/ポット 化成肥料 窒素、りん酸、カリ 各1g/ポット 幼値栽培試験(1)の成績は、下記表4に示すとうりで
ある。
【0048】
【表4】
【0049】(実施例3)上記実施例1において調製し
た資材の水稲幼植栽培試験を、下記に示す条件で実施し
た(幼植栽培試験(2))。 ・試験規模:ワグネルポット(1a/10,000乾土1.0kg)×4反復 ・供試土壌:中粗粒褐色低地土 ・供試品種:キヌヒカリ ・栽培方法:36日苗1株3本植、栽培日数35日 ・施肥量 :試験資材 全けい酸として1.0g/ポット 化成肥料 マップ264(N12,P16,K14) 0.4g/ポット 幼植栽培試験(2)の成績は、下記表5に示すとうりであ
る。
【0050】
【表5】
【0051】(実施例4)上記実施例3と同様の条件で
水稲幼植栽培試験を実施した(幼植栽培試験(3))。
但し、供試品種はコシヒカリで25日苗を1株3本移植
して、48日間栽培した。下記表6は、幼植栽培試験成
績(3)を示す。
【0052】
【表6】
【0053】(実施例5) 75μm以下に粉砕した、上記表1記載のシリコマンガ
鉱さい粉末7.5kgを品川式万能混合機に装入し、
攪拌しながら溶出促進剤を純水1.25リットルで希釈
した溶液を滴下・添加し、添加終了後30分間混合を継
続して反応を完了させた。次に、100℃の熱風乾燥機
中で乾燥した後、0.5mm以下に解砕した(ほ場試験
に供する資材の調整)。
【0054】下記表7は、肥効試験供試資材の組成を示
す。
【0055】
【表7】
【0056】(実施例6)上記実施例5において得られ
た高度けい酸質肥料を本田に施肥して水稲を栽培し、既
存のケイカルと肥効を比較した(ほ場試験)。資材は粉
末のままほ場に施用し、作土と均一に混合した。肥効試
験の条件は、以下のとおりである。
【0057】 ・試験場所:北海道岩内郡共和町 ・供試土壌:低位泥炭土 ・供試品種:きらら397 ・栽培方法:40日苗4本植、33×14cm(21.7株/1m2 ) ・試験規模:1区8m2 ×2反復 ・施肥量 :試験資材 200kg/10a スーパーブレンド404 50 有機ペレット260 20 栽培試験の結果を下記表8〜10に示す。
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】以上の肥効試験結果から明らかなように、
本発明の高度けい酸質肥料を使用した試験区は、いずれ
もケイカル区に比較してけい酸の吸収、玄米収量が多
く、また褐変籾の発生量が減少した。なお、りん酸が溶
出促進剤として、とりわけ優れていることが、再確認さ
れた。
【0062】(実施例7) 75μm以下に粉砕した、上記表1記載のシリコマンガ
鉱さい粉末1.0kgを品川式小型万能混合機に装入
し、攪拌しながら純水で所定濃度に希釈したりん酸溶液
の所定量を滴下・添加し、添加終了後60分問混合を継
続して反応を完了させた。次に、100℃の熱風乾燥機
中で乾燥した後0.5mm以下に解砕し、水溶性けい酸
含有量を測定した(りん酸濃度と水溶性けい酸含有量の
関係)。
【0063】下記表11は、りん酸濃度による水溶性け
い酸の変化を示す。また、表11に基づいてりん酸濃度
(%)と水溶性けい酸(%)の関係をグラフ化すると
1となり、りん酸濃度50%以上で水溶性けい酸の値が
急増することが明確に示されている。
【0064】
【表11】
【0065】(実施例8)上記表1記載のシリコマンガン鉱さい粉末のpH を3に
調製するに必要な酸の量を、予め予備実験で求めた。酸
の必要量は、りん酸のみ使用の場合(資材名称A)200
%(原料粉末重量に対する酸原液の重量を百分率で表
示、以下同様)、りん酸と硫酸を等量づつ使用する場合
(B)は各々67%、硫酸単独使用の場合(C)は93
%であった。
【0066】栽培試験に供する資材は、次に示す方法で
調製した、所定量のりん酸及び/又は硫酸をイオン交換
水1,500gで希釈してビーカーに入れ、攪拌しなが
ら75μm以下に粉砕した上記表1に示したシリコマン
ガン鉱さい粉末300gを添加しスラリー化した。ひき
つづき、180分間混合を続けて反応を完結させた後、
水分を蒸発、乾固して、全量が0.5mmの篩を通過す
るように解砕した。この資材のpHはいずれも2.9で
あった。この後、得られた資材0.5gを市販の育苗用
培土(商品名:パールマット、片倉チッカリン(株)
製)15gと混合して100mlの広口ポリエチレン瓶
に入れ、イオン交換水75mlを加えて12日間40℃
に湛水保持した。次に、インキュベーターから取り出し
て30秒振とうし、20分静置した後pHを測定して、
4.6〜4.7になっていることを確認した後、以下の
栽培試験に供した(苗箱施肥用肥料の調製)。
【0067】(実施例9)上記により調製した資材の所
定量をパールマット350gに添加混合し、直径130
φのプラスチック容器(底に直径5mmの穴8個設置)に
充填し、定法により催芽した籾(品種コシヒカリ)7.4
gを播種して2週間育苗し、乾燥、灰化してけい酸を分
析して、下記表12に示す結果を得た。なお、育苗後の
培土のpHは4.3〜5.0で所定の範囲に納まってい
た(肥効の確認試験)。
【0068】下記表12は、資材添加量と苗のけい酸吸
収成績を示す。
【0069】
【表12】
【0070】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、可
給態けい酸含有率が従来の鉱さいけい酸質肥料に比較し
て著しく高く、且つ水稲によるけい酸の吸収とりわけ生
育所期の吸収量を著しく高め得る、高度けい酸質肥料を
提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、りん酸添加率が10%、20%の場合
のりん酸濃度と水溶性けい酸との関係を示す特性図を示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲津 脩 北海道岩内郡共和町宮丘261番地 北海 道原子力環境センター内 (56)参考文献 特開 昭54−111464(JP,A) 特開 昭59−141479(JP,A) 特公 平2−2837(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C05B 1/00 - C05G 5/00

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 製銑鉱さい,製鋼鉱さい,フェロアロイ
    鉱さい,熔成りん肥の1種叉は2種以上から選択され
    る、75μm以下の粒度をもつ可溶性けい酸含有物に、
    溶出促進剤を添加、反応させて、可給態けい酸を富化し
    、アルカリ性を示すことを特徴とする高度けい酸質肥
    料。
  2. 【請求項2】 前記溶出促進剤が、りん酸、硝酸、硫酸
    の無機酸及びそれら無機強酸の酸性塩の1種叉は2種以
    上から選択されることを特徴とする請求項1記載の高度
    けい酸質肥料。
  3. 【請求項3】 前記溶出促進剤として濃度50%以上の
    りん酸溶液を使用することを特徴とする請求項1,2い
    ずれか記載の高度けい酸質肥料。
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