JP3390203B2 - 紫外線殺菌液の菌の光回復阻止法 - Google Patents

紫外線殺菌液の菌の光回復阻止法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、紫外線殺菌処理を行っ
た殺菌液の菌の光回復阻止法に関するもので、この紫外
線殺菌液の液温を10〜30℃にするとともに、この殺
菌液に対して、太陽光線を1〜8時間に渡って遮蔽する
暗処理を行うことに特徴がある。
【0002】
【従来の技術】近年、たとえば工場等で発生する各種の
下排水は、紫外線殺菌処理を行った後、そのまま河川等
に放流されているが、しかし、河川等に放流された下排
水が太陽光線(可視光線、長波長紫外線)の照射をうけ
ると、下排水中の紫外線照射によって死滅した菌(約9
0%)は再活性化することはないが、紫外線照射によっ
て不活化された菌(約10%)の一部が、光によって回
復して、再活性化するために、下排水の紫外線殺菌状態
の悪化をもたらしていた。
【0003】また、医薬品製造工程、半導体、液晶製造
工程においては、紫外線照射、イオン交換、超濾過、逆
浸透膜等を適宜組み合わせた超純水製造システムによっ
て製造される超純水等の高純度の殺菌液が使用されてい
る。
【0004】そして、紫外線照射をした一次純水や超純
水の殺菌液が、太陽光線の照射をうけると、前述した場
合と同様に、殺菌液中の紫外線照射によって不活化され
た細菌の一部が再活性化するために、殺菌液中の紫外線
殺菌効率の低下をもたらし、この殺菌液である超純水を
用水として製造する医薬品またはLSI等の半導体の品
質低下、製品の歩留り低下等の不都合を招くことにな
る。
【0005】したがって、医薬品またはLSI等の半導
体の品質低下、製品の歩留り低下を防止するために、太
陽光線の照射をうけた紫外線殺菌液である一次純水や超
純水の殺菌液を、最終処理として、別途に殺菌処理を行
う必要があり、処理コストがかかる欠点があった。
【0006】また、紫外線殺菌を行った一次純水や超純
水中の菌の再活性化が進と、超純水製造システムの後段
のイオン交換樹脂、超濾過膜、逆浸透膜等が菌で汚染さ
れる問題もあり、紫外線殺菌液の菌の再活性化を阻止す
る、有効で、処理コストの安価な方法が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、紫外線殺菌
処理を行った殺菌液中の不活化された細菌の光回復によ
る再活性化を阻止し、殺菌液に含まれる菌の光回復率の
低減を、簡単、有効、処理コストを安価に行い、紫外線
殺菌状態を維持することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、紫外線殺菌処
理をおこなった殺菌液に含まれている菌の光回復阻止法
に関するもので、この紫外線殺菌液の液温を10〜30
℃にするとともに、この殺菌液に対して太陽光線を1〜
8時間に渡って遮蔽する暗処理を行うことを特徴とする
ものである。
【0009】また、本発明は、紫外線殺菌処理を行った
下排水について、前述した暗処理を行うことを特徴とす
るものである。
【0010】 さらに、本発明は、太陽光線を遮蔽する
手段として、光を遮蔽した密閉状の貯留槽または暗渠あ
るいは開放部を光遮蔽シートで遮蔽した貯留槽を用いる
ことに特徴がある。
【0011】
【作用】以上のように、紫外線殺菌処理を行った殺菌液
に対して、一定時間に渡って太陽光線を遮蔽する暗処理
を行うことによって、この暗処理を行った殺菌液は、そ
の後、太陽光線の照射を受けても、不活化された菌は光
回復による再活性化はされず、紫外線殺菌状態が維持さ
れる。
【0012】
【実施例】以下に本発明の実施態様の一例を大腸菌を含
む下水を例にして説明をする。大腸菌を含む下水を、最
初沈殿池、活性汚泥装置、最終沈殿池で、通常の方法で
前処理をし、次いで前処理をした下水を公知の紫外線殺
菌装置で殺菌処理をした。
【0013】 次いで、この紫外線殺菌処理をした下水
を5ラインに分流し、そのうち4ラインの下水は地下に
設置したそれぞれの光を遮蔽した密閉状の貯留槽内に流
入させ、本発明法である1、2、4、8時間の4段階の
太陽光線を遮蔽した暗処理(20℃)を行い、また、残
りの1ラインについては、従来法として、前述した暗処
理をしないかった(暗処理時間0)。そして各下水につ
いて、太陽光線を時間照射、各下水中の不活性化し
た大腸菌の光回復率を測定したところ、以下のようにな
った。
【0014】 紫外線殺菌処理下水の 太陽光線を時間照射したときの 暗処理時間 下水の大腸菌の光回復率(%) 1時間(本発明法) 7 2時間(本発明法) 5 4時間(本発明法) 3 8時間(本発明法) 3 0時間(従来法) 10
【0015】以上で明らかなように、暗処理をしない下
水(従来法)に比較して、1、2、4、8時間の4段階
の太陽光線を遮蔽した暗処理を行った下水(本発明法)
は、暗処理時間の長さに応じて、下水中の不活性化した
大腸菌の光回復率は少なく、下水の紫外線殺菌効率が維
持されていることが判る。
【0016】なお、本発明における紫外線殺菌処理を行
った殺菌液の暗処理は1〜8時間に渡って行うが、この
暗処理時間を1時間としたのは、1時間未満では、紫外
線照射によって不活性化させた菌を太陽光線に当てた場
合の菌の再活性化を阻止できないためであり、また暗処
理時間を8時間としたのは、8時間を超えても、菌の光
回復率の低減について、時間をかけた効果が期待できな
いためである。
【0017】また、本発明の暗処理を行う際の殺菌液の
液温は10〜30℃にするが、この温度の範囲である
と、菌は紫外線照射によって不活性で傷付い状態で分裂
し、菌の光回復率は低減するためである。そして、暗処
理を行う殺菌液の液温は高い方が菌の光回復率は低減す
る傾向があり、たとえば、前述したの実施例において
は、液温20℃で暗処理を2時間行った場合に、大腸菌
の光回復率が5%に低減したが、液温25℃で暗処理を
2時間行った場合には、大腸菌の光回復率は3%に低減
し、液温20℃で暗処理を3時間行った場合と同様の効
果を得ることができた。
【0018】したがって、本発明の紫外線殺菌液の液温
と暗処理時間は、殺菌液や菌の種類、紫外線殺菌処理条
件、殺菌液の使用目的、殺菌液である下水の放流規制、
処理コスト等に応じて適宜決定すればよい。
【0019】本発明の菌の光回復阻止法の対象として
は、紫外線殺菌処理を行った下排水が適しているが、下
排水以外にも、たとえば、蒸留水、純水、超純水、その
他に菌を含む液体であって、紫外線殺菌処理を行ったを
液体であれば、どのようなものでも処理対象になり、さ
らに菌についても、前述した大腸菌を始めとしてあらゆ
る菌が処理対象になる。
【0020】 本発明の太陽光線を遮蔽する手段とし
て、光を遮蔽した密閉状の貯留槽、それも地下に設置し
た貯留槽や暗渠が最適であるが、地上に設置された開放
状の通常の貯留槽の場合には、装置コストを安価にする
ためには、光遮蔽シートを被せることが望ましいが、板
状の蓋を取り付けてもかまわない。
【0021】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によると、簡
単でコストの安価な暗処理を行うだけで、紫外線殺菌処
理を行った殺菌液中の不活化された細菌の再活性化を阻
止し、この紫外線殺菌処理を行った殺菌液が太陽光線の
照射を受けた場合の菌の光回復率を低減でき、紫外線殺
菌状態を維持させることができるという優れた効果があ
る。
【0022】特に、医薬品製造工程、半導体、液晶製造
工程において使用する超純水や純水等の用水処理に本発
明方を適用すると、格別高価で高度の装置や機器を使用
することなく、紫外線殺菌状態を維持した高純度の用水
を得ることができる効果があり、したがって、従来、最
終処理として行っていた殺菌処理(紫外線殺菌)が不要
になるし、さらに本発明法を超純水や純水等の製造シス
テミに組み込めば、同システムを形成しているイオン交
換樹脂、超濾過膜、逆浸透膜等が細菌で汚染されるのを
防止できる等の効果もある。
【0023】また、下排水処理に本発明方を適用する
と、暗処理をした下排水をそのまま河川に放流しても、
太陽光線の照射によって下排水中の不活化された細菌が
再活性化されることがないために、別途の殺菌処理を行
うことなく、最近厳しくなりつつある下排水規制に対応
することができるので、下排水処理のランニングコスト
を安価にできる効果がある。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 菌を含む液体に対して紫外線殺菌処理を
    行い、殺菌液の液温を10〜30℃にするとともに、殺
    菌液に対して太陽光線を1〜8時間に渡って遮蔽する暗
    処理を行う紫外線殺菌液の菌の光回復阻止法。
  2. 【請求項2】 菌を含む液体が紫外線殺菌処理を行った
    下排水である請求項1記載の紫外線殺菌液の菌の光回復
    阻止法。
  3. 【請求項3】 太陽光線を遮蔽する手段として、光を遮
    蔽した密閉状の貯留槽または暗渠あるいは開放部を光遮
    蔽シートで遮蔽した貯留槽を用いる請求項1または請求
    項2記載の紫外線細菌液の菌の光回復阻止法。
JP08697593A 1993-03-23 1993-03-23 紫外線殺菌液の菌の光回復阻止法 Expired - Fee Related JP3390203B2 (ja)

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