JP3388130B2 - トロイダル型分光器を有する分光装置 - Google Patents
トロイダル型分光器を有する分光装置Info
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Description
を用い、取り込み立体角を大きくするとともに、分解能
を可変にした分光装置に関するものである。
分光器として数多くの種類のものが考えられてきたが、
現在でもよく利用されているのは同心球型静電分光器と
円筒鏡型静電分光器の二種類であり、この二つが最もよ
く利用されている理由は、それぞれが次のような優れた
特徴を有しているからである。
形成した電場を通して荷電粒子を飛翔させ、エネルギー
分析するものであり、前段に減速レンズを設置すること
によって分解能を変えることができ、減速の度合いを大
きくすればより高分解能なエネルギー分析が行えるよう
になる。また、エネルギーの異なる電子の集束位置がエ
ネルギー分散方向(同心球状電極間半径方向)上にエネ
ルギーの違いに比例した分だけずれる特性がある(これ
を「エネルギー分散性を持つ」と言う)ので、この位置
に検出器を配置することにより多重検出が可能である。
成した電場を通して荷電粒子を飛翔させ、エネルギー分
析するものであり、荷電粒子の取り込み立体角が大き
く、高い感度が得られる。
点もあり、これが現在のオージェ電子分光装置、光電子
分光装置などの電子分光装置の空間分解能、検出限界濃
度などの性能を制限する要素の一つとなっている。
分析すべき荷電粒子を取り込むことができる取り込み立
体角は、前段レンズをうまく設計することにより 0.1〜
0.2str (ステラジアン)程度まで取ることができる
が、円筒鏡型静電分光器に比べればかなり小さい。この
欠点は多重検出法によってある程度補うことができるも
のの、感度向上は数倍程度にとどまる。
比較的大きく、0.5 〜 0.7 str程度であるが、前段にレ
ンズを置くことが難しいので、取り込み立体角が更に大
きくなるように改良することはできないし、分解能を可
変することもできない。また、エネルギー分散性が十分
でないため、多重検出も難しい。以上のように、現在の
ところ取り込み立体角が大きく、同時に分解能可変の分
光器は存在していない。
し、かつ分解能を可変にして高分解能化を図ることがで
きる電子分光装置を提供することである。
ル型分光器を有する分光装置は、回転中心軸に対して回
転対称なトロイダル型分光器と、環状入射スリットを介
してトロイダル型分光器の前段に設けられ、前記回転中
心軸に対して回転対称な円錐型レンズ系と、円錐型レン
ズ系に取り込まれる荷電粒子を発生させる荷電粒子発生
源と、トロイダル型分光器の出射側に設けられ、前記回
転中心軸方向に荷電粒子を出射させる環状出射スリット
と、環状出射スリットから出射する荷電粒子を検出する
検出器とからなる。この請求項1記載の発明によれば、
トロイダル型分光器の取り込み立体角を同心球型静電分
光器に比して格段に大きくでき、かつ円錐型レンズ系で
分光器へ入射する荷電粒子の速度を変えることにより、
エネルギー分解能を可変にし、かつ高分解能化すること
が可能となる。
を有する分光装置は、回転中心軸に対して回転対称なト
ロイダル型分光器と、環状入射スリットを介してトロイ
ダル型分光器の前段に設けられ、前記回転中心軸に対し
て回転対称な円錐型レンズ系と、円錐型レンズ系に取り
込まれる荷電粒子を発生させる荷電粒子発生源と、トロ
イダル型分光器の出口に設けられ、2枚の平板電極が対
向して配置された静電レンズが荷電粒子線の進行方向に
複数段配置されてなるトランザキシャルレンズと、トラ
ンザキシャルレンズによって集束された荷電粒子を検出
する複数の検出器とからなる。これによれば、多重検出
を行うことができる。
の実施の形態について説明する。本発明はトロイダル型
分光器を用いて取り込み立体角を大きくし、同時に分解
能可変にし、高分解能化を図ろうとするものであり、ま
ずこのトロイダル型分光器について説明する。
る電位を与え、それらの電極の間に電場を形成し、その
電場中を荷電粒子、例えば電子が通過する時に、特定の
エネルギーを持つものだけが特定の軌道を通り、それ以
外のエネルギーのものはその軌道から外れて進行する現
象を利用する。電場を形成する2つの電極の形は同心球
型静電分光器の場合には球面状、円筒鏡型静電分光器の
場合には円筒面状である。
円の中心からRの距離の直線を中心軸として回転させた
時にできる面を利用する。この面を利用する分光器は
「トロイダル型分光器」と呼ばれる。
同心円を円の中心Oから距離Rだけ離れた直線を中心軸
(回転中心軸)として回転させると、二つのトロイダル
面で囲まれた空間ができる。ただし、円の一部が回転中
心軸の反対側に入り込んでいる場合には、その円弧の部
分は無いものとする。
2 )の円を考える。この円もまた点Oが中心であるとす
ると、この円によるトロイダル面は他の2つのトロイダ
ル面の間にできる。図のように角度ω、x軸(円方
向)、y軸(半径方向)、およびz軸(紙面に垂直方
向)を定義する。また、半径rの円でできるトロイダル
面のことを以下では簡単に「rのトロイダル面」という
ように呼ぶことにする。
rであるが、それに垂直なz方向の曲率半径R′は次式
のようになる。 R′=r+R・cosecω …(1) これらの比をcとする。即ち、 c=r/R′=r/(r+R・cosecω) …(2) ここで、cはトロイダル電場の電場係数と呼ばれること
もある。
し、球面の場合、c= 1(R= 0)であり、円筒の場
合、c= 0(R=∞)である。周知のように、2つの異
なった電位の球面または円筒面で挟まれた空間内での電
場は、それぞれの電位が決まれば一意的に決まる。 E(r)=k(r/r0)-n …(3) ただし、r0 =(r1 +r2 )/2 とする。球面の場合
n=2 、円筒の場合n= 1である。kはr1 、r2 およ
び面の電位によって決まる定数であるが、球面の場合と
円筒の場合で異なる値となる。
0 の円周上を出発する電子の近軸軌道方程式の解とし
て、次式が知られている。 (r/r0)−1=(1/(3−n)1/2)・sin{(3−n)1/2・ω}・α …(4) ここで、αは半径r0 の円の円周への接線と電子の初速
度方向とのなす角度である。
した電子が再びx軸上に到達するための条件、すなわち
軌道が集束するための条件(r=r0 )は次式となる。 sin{(3−n)1/2・ω}= 0 …(5) 従って、集束するところでの偏向角度ωをφとすると、
球面の場合にはφ=π、円筒の場合にはφ=π/21/2≒
127.28°となる。なお、127.28°の偏向角度を利用した
分光器は円筒型分光器と呼ばれ、散乱実験等の特殊な目
的のために利用されることがある。円筒鏡型分光器は、
同心の二つの円筒面の間にできる空間を利用するという
点では同じであるが、(5) 式の集束特性を利用したもの
ではない。
り、0 <c(ω)< 1である。従って、電場は次のよう
に書くことができる。
→ 0の時にn(c)→ 1、c→ 1の時にn(c)→ 2で
ある。
は、球面および円筒面の中間的な性質を有する。この電
場の中を電子が運動する時の電子の軌道は解析的に調べ
ることができないものの、同心球型分光器や円筒型分光
器の場合と同様の集束作用があると期待できる。
と、図2(a)、図2(b)に示すように、2つのトロ
イダル面で作られた電場のなかで、点Q(半径r0 の円
の円周上の一点)からx軸に対して±αの角度内に特定
のエネルギーで出発した電子は、αが 5度程度と比較的
小さければ、点Fでほぼ一点に集束する。ただし、集束
角φはQの位置によって多少変化する。
図の中心軸のどちらか一方、即ち上か下かのどちらかに
あり、すなわち電子の軌道が点Qと点Fの間を通過して
いる時に回転中心軸を横切ることがなく、かつ点Qと点
Fがいずれも回転中心軸にあまり近くない位置にある限
りは、点Qの位置に依存せずにいつでも成り立つ。点Q
あるいは点Fが回転中心軸に近いと、その付近の電場は
トロイダル面によってできる本来の形から乱れてくるの
で上記のような集束特性は成立しなくなる。
幾何学的特性を示すパラメータとしてRのr0 に対する
比νを導入する。即ち、 ν=R/r0 …(7) νに対して、点Qから点Fまでに電子が偏向する角度φ
は、シミュレーションの結果によると図3のようにな
る。図3において、左端側は球面型、右端側が円筒型に
近い場合であり、本発明において、φは球面型の場合と
円筒型の場合の中間、すなわちπとπ/21/2の中間の値
を取る。ここで、両電極の電位差は電子のエネルギーに
比例した適当な値に選んである。なお、図3に示した曲
線は、点Qが図2の左側のように置かれた場合について
のものであり、図2右側のようになると、曲線の形状は
変化してくる。ただしν= 0で 180°、ν=∞で 127.3
°となるのは同じである。
装置の構成例〕以上のような特性を持つトロイダル型分
光器を利用した例を図4に示す。図4(a)において、
トロイダル型分光器は、回転中心軸1に対して回転対称
の外側電極2と内側電極3からなっており、前段に4段
のレンズ系から構成される円錐型静電レンズ6(回転中
心軸1に対して回転対称)が配されていて、入射スリッ
ト4を通して入射した電子が、回転中心軸1付近の出射
スリット5から出射し、デフレクタ10、11で偏向さ
れて電子検出器12で検出されるようになっている。
線源、紫外線照射装置等からなる一次励起源7で励起す
る構成であり、図4(b)の詳細図に示すように、電子
発生源9から回転中心軸1に対して角度θ±γで出発し
た電子を、円錐型静電レンズ6によってトロイダル型分
光器の入射スリット4付近に集束させる。トロイダル型
分光器の入射スリット付近の詳細は図4(c)に示す通
りである。その電子をトロイダル型分光器の外側電極2
と内側電極3間に形成した電場によってエネルギー分析
し、出射スリット5付近で再び集束させる。このスリッ
ト5を通り抜けてきた電子だけを電子検出器12によっ
て検出して、電子発生源9から出発した電子のうちの特
定のエネルギー範囲内にある電子だけを選別する。な
お、回転対称系であるから入射スリット4、出射スリッ
ト5はいずれも円環状となる。
の詳細図に示すように、出射スリットよりも正の電位を
印加されたデフレクタ11、および出射スリットよりも
負の電位を印加されたデフレクタ10の間で作られる偏
向電場によって偏向され、電子検出器12の入口に到達
する。なお、デフレクタ11には電子が通過できるよう
に孔が開けられている。また、出射スリット5と電子検
出器12の最先端部分には 100V程度の電位差を設けて
あり、低エネルギー電子はここで加速されて電子検出器
12に入れられる。
磁場が存在しないようにするために、レンズや分光器全
体を覆う磁気シールド板、各系に電圧を印加するための
電源およびコントローラが設けられるとともに、その
他、サンプル面をクリーニングするためのイオンエッチ
ング装置、サンプルステージ、真空ポンプ、試料交換装
置等が配置される。
する電子のエネルギーをEk =eΦ(eV)とした時、
図4の構成例の場合は次のようになる。 円錐型静電レンズ第一電極 0(アース電位) 第二電極 a1 Φ+b1 第三電極 a2 Φ+b2 第四電極 kR Φ トロイダル型分光器外側電極 kO Φ トロイダル型分光器内側電極 kI Φ 入射、出射スリット 静電レンズ第四電極に同じ デフレクタ10 (1+δ)kR Φ デフレクタ11 (1−δ)kR Φ 電子検出器先端部 kR Φ+(100V程度) a、b、k、δ等のパラメータを分光する電子のエネル
ギーに合わせて調整することによって、電子強度のEk
依存性を表すグラフ、すなわち電子スペクトルを得るよ
うにする。
べば、角度γを大きくなるようにすることができるの
で、電子を広い範囲から捕集することができる。また、
レンズ系で電子を減速しながら入射スリット付近に集束
させることが可能となり、エネルギー分析の高分解能化
を図ることができるようになる。
すようなエネルギー分散性を持っている。即ち、このト
ロイダル型分光器では、図5に示すように、エネルギー
の異なる電子の集束位置はエネルギー分散方向にエネル
ギーの違いに比例した分だけずれるのである(この特性
を「エネルギー分散がリニアである」という)。従っ
て、この分光器では多重検出が可能である。即ち、エネ
ルギーの異なる電子を同時に検出することが可能であ
る。図5の例は、トロイダル型分光器の内側電極(電位
0)の半径r1 =35mm、外側電極(電位 −100V)の
半径r2 =60mm、ν=0.8 の場合であり、図示するよ
うに90eV〜110 eVまで、5 eVのエネルギー差で集
束しており、各集束点に検出器を配置することにより多
重検出が可能である。
の決定〕次に、本発明のトロイダル型分光器の具体的な
ディメンジョンの決定方法を以下に説明する。まず、分
光装置の各ディメンジョンを図6のように定義する。L
は電子発生源Qからトロイダル型分光器の入口までの距
離で、円錐型レンズの長さとレンズ先端から電子発生源
までの距離との和である。点Fはトロイダル型分光器の
集束点である。
し、これを前述のr0 に対する比で決めるものとする。 d=ur0 …(8) ここで、uは、検出器を設置する時の様々な条件を考慮
して決定される。例えば、多重検出を行うには、デフレ
クタや電子検出器の設置に十分なスペースが必要である
からuを比較的大きめにする。図4で示した例のよう
に、単一の検出器を設置するだけの時はそれほど大きな
スペースは必要としないのでuは小さな値であってもよ
い。
のパラメータを決めることになる。具体的な方法は次の
ようにすればよい。図6から導かれる式は、次の二つで
ある。 ro・cos(π−φ+θ)=R−d …(9) L・tanθ=r0+R/cosθ …(10) トロイダル型分光器の偏向角度を示す式(図3の曲線を
表す式)を次のようにおく。 φ=f(ν) …(11) (7) 、(8) および(9) 式から φ=cos-1(u−ν)+θ …(12) θとuを適当な値に決めれば、(11)と(12)式のグラフの
交点からνとφが求められる。図7と図8にこれらのグ
ラフの一例を示してある。
°まで 5°刻みで変えたときの(12)式で与えられるφの
値を示すグラフと、図3の曲線((11)式で表される曲
線)とを同時に示したものである。
で表される曲線は厳密に言うとθに依存してその形状が
変化するが、ここではθ=90°の場合についてのものだ
けを示してある。図8は、θを35°に選び、uを 0.0か
ら 1.0まで 0.1刻みで変えたときの(12)式で与えられる
φの値を示すグラフと、図3の曲線((11)式で表される
曲線)とを同時に示したものである。
められる。また、(10)式から r0=Lsinθ/(ν+cosθ) …(13) であるから、Lを適当な値に決めれば、(13)式と(7) 式
とからr0 とRが求まり、すべてのディメンジョンが決
定されることになる。
成された本発明の分光装置の取り込み立体角は簡単な計
算から求めることができる。得られた結果を同心半球型
静電分光装置および円筒鏡型静電分光装置と比較して表
1に示す。本発明による分光装置の場合、θの値を9個
選んである。
〜0.21程度である。また、円筒鏡型の場合、γ(=α)
を 6度よりも大きくすると集束性が悪くなり、実用的な
分解能が得られなくなる。また、円筒鏡型の場合には、
内円筒の入射部分と出射部分には必ず電場補正のための
メッシュを設置しなければならない。メッシュの透過率
は大きくても90%程度であるから、これが2枚あるので
全体の透過率は80%程度になる。この効果も表1におけ
る数値には含ませてある。これに対して、表1から分か
るように、本発明による分光装置は大きな取り込み立体
角を有していることが分かる。さらに、前段の円錐型レ
ンズの収差をできるだけ小さくすれば、γを18度程度ま
で上げることができるから、他のどの型の分光装置より
も高感度化が実現できる。更に、分解能を可変すること
ができることになる。
の例を示す図で、電子線照射装置と分光装置とを同軸に
配置した例を示している。図9において、電子線照射装
置20は一次励起源としての電子銃、レンズ、軸調整装
置等を含み、分光装置の回転中心軸に沿って分光装置内
に配置された電子光学系21は電子レンズ、絞り、電子
電流測定装置等を含んでいる。これら電子線照射装置2
0、電子光学系21のサイズが十分に小さくできるなら
ば、分光装置全体の中に電子銃からレンズシステムまで
すべてを入れることもできる。この装置では、回転中心
軸線に沿って飛翔する電子線をサンプルに対して垂直に
照射することができるので、サンプル表面に凹凸があっ
た場合でも影が生ずることがない。電子線照射装置に限
らず、X線照射装置等も同様に同軸配置することができ
る。
置に限定されるものでなく、いろいろな変形が可能であ
る。例えば、円錐型静電レンズ系は3つのギャップを持
っているものを示したが、更に電極数を増やしたり、逆
に減らしたりして必要な光学系を形成することができ
る。また、途中にメッシュ等を挿入し、電場を都合の良
い形に補正して、より最適化を図ることも可能である。
軸に対して 360°のすべてを使っているが、そのうちの
一部分(例えば 180°分、90°分など)だけを切り出し
た形のものを利用することもできる。特にサンプルまわ
りの空間が制限されている場合に有効である。
ている空間に、二次電子検出器や反射電子検出器などの
ような、他の信号を検出するための手段を設置すること
ができる。また更に、入射スリットや出射スリットの付
近に、必要に応じて散乱防止などのための別のスリット
を配置することができる。
器の中での電子軌道の集束点はただ一つであるが、二回
以上の集束をさせることも可能である。その場合、前段
レンズの焦点をトロイダル分光器の入口よりも手前に持
ってきて、最終集束点でのエネルギー分散面が分光装置
の回転中心軸とほぼ垂直になるように調整すれば、市販
のマルチチャンネルプレートが利用できるようになり、
実現が極めて容易になる。また、前段レンズの焦点をト
ロイダル型分光器の入口付近に持ってきても、トロイダ
ル型分光器の出口から離れたところに集束点が生ずるよ
うにできるので、それを利用してもよい。更にまた、デ
フレクタ10、11のどちらか一方を出射スリットと同
電位にすることができるとともに、出射スリットや入射
スリットを円錐型静電レンズの第四電極と同電位にする
のではなく、端電場の補正の目的のために変形すること
ができる。
て説明したように、上述したトロイダル型分光器は、エ
ネルギー分散がリニアであるという特性を有しているの
で、多重検出が可能であるが、図4に示す構成ではトロ
イダル型分光器の出口に出射スリット5が配置されてい
るので、電子検出器12で検出されるのは出射スリット
5を通過できる、ある特定のエネルギー幅内の電子だけ
となり、エネルギー分散がリニアであるという特性が十
分に活かされていないということができる。
して、チャンネルトロンや、マルチチャンネルプレート
等の一般的に市販されている電子検出器を用いて多重検
出を可能としたトロイダル型分光器を有する分光装置に
ついて説明する。
9に示したような回転中心軸に対して 360°回転したト
ロイダル型分光器を用いることはできないので、以下に
おいては、トロイダル型分光器は、360 °回転した全周
ではなく、図10に示すようにその一部、例えば90°分
だけ利用したものを用いるものとする。即ち、図10
(b)において実線で示す部分のみを用いるものとす
る。なお、図10(b)は、図10(a)のものを上側
から見た図である。また、上記の〔電子分光装置の具体
的なディメンジョンの決定〕の項目において定義したデ
ィメンジョンはこの実施形態においても成立しているも
のである。
は、トロイダル型分光器の出口における電子の進行方向
が回転中心軸と直角あるいは直角に近い角度になるよう
に設定される。即ち、 φ−θ=π/2 …(14) または φ−θ≒π/2 …(15) が成立するようにディメンジョンが設定される。
イダル型分光器の出口と電子検出器との間にトランザキ
シャルレンズ(transaxial lens )が配置される。
明する。上記の(14)式または(15)式を満足させるには、
まず角度θを決定する。これは、電子銃、X線源、紫外
線照射装置等からなる一次励起源、及びレンズや軸調整
装置等を含む照射系や、試料の移動範囲等に基づいて適
宜決定すればよい。これによって、(14)式または(15)式
からφが決定される。次に、νと偏向角φとの関係を示
す図3に示すグラフから、決定されたφに対応する比ν
を求める。
器の入口までの距離Lと、トロイダル型分光器の中心軌
道の電子軌道に沿った方向の半径r0 とを、(13)式を満
足するように決定する。Lは円錐型レンズの焦点での像
のぼけとトロイダル型分光器へ入射するときの開き角を
決定するパラメータであり、その値が大きい程開き角は
小さくなり、望ましいものである。また、r0 はトロイ
ダル型分光器のエネルギー分解能に関係するパラメータ
であり、その値が大きい程高分解能な分光器になる。こ
のように、L、r0 は共に大きい程性能が向上するの
で、あまりに巨大にならない程度の大きさで両者を適当
に決定すればよい。
られたνの値を用いて、(7) 式によりRが決定される。
いま、例えばθ=45°として、(14)式を満足するφを求
めると、φ= 135°となり、このとき図3からν=1.75
となる。そして、L=400 mm、r0 =115 mmとする
と、(7) 式からR=201 mmとなる。以上のようにし
て、(14)式または(15)式を満足させるパラメータを決定
することができる。
いて説明する。トランザキシャルレンズは、2枚の平板
電極が対向して配置された静電レンズが荷電粒子線の進
行方向に複数段配置された構成を有しており、2枚の平
板電極が対向している方向について、電子に対して通常
の円筒型静電レンズ等と同様のレンズ作用を有すること
が知られている(この点に関しては、例えば、P.W.Hawk
es,E.Kasper ;Principles of Electron Optics Vol.1 A
cademic Press 1989を参照)。
を示す。図11(a)は平面図、図11(b)は図11
(a)のA−Aにおける断面を示している。図11に示
すトランザキシャルレンズは、G1、G2、G3の3段
の静電レンズで構成されている。図11(a)から分か
るように、ここでは各段の静電レンズの電極は扇形にな
されている。そして、G1、G3のレンズの電極は接地
電位になされ、G2のレンズの電極は所定の電位になさ
れている。この構成によって、図11(b)に示すよう
に、当該トランザキシャルレンズに下側から入射した電
子線は、このトランザキシャルレンズのレンズ作用によ
って集束する。しかし、図11(a)のω方向に対して
は集束作用はない。
イダル型分光器の出口側に配置するのである。その構成
例を図12に示す。図12においては、トロイダル型分
光器の出口には複数の開口部を有する出射スリット30
が配置され、出射スリット30の各開口部に対して、そ
れぞれ、G1、G2、G3の3段の静電レンズからなる
トランザキシャルレンズ31が配置されている。図12
に示す構成では、出射スリット30の隣接する開口部に
対応するトランザキシャルレンズでは電極を共用してい
るので、出射スリット30の開口部の数をnとすると、
トランザキシャルレンズを構成するためにに必要な扇形
の板状電極は全部で3(n+1)個となる。
1とG3の静電レンズの電極は、共に、トロイダル型分
光器の中心軌道の電位と同電位になるように電圧が印加
され、G2の静電レンズの電極にはそれとは異なる電圧
が印加される。このようにすると、このレンズ系はアイ
ンツェルレンズ等の通常の円筒型静電レンズの場合と同
様のレンズ作用をするので、図13に示すように、出射
スリット30の近傍で集束した電子線はトランザキシャ
ルレンズ31の出口近傍で再度集束されることになる。
なお、図13において、lは出射スリット30と、トラ
ンザキシャルレンズ31の出口近傍の集束位置との間の
距離を示している。なお、トランザキシャルレンズ31
を設ける目的は、出射スリット30の各開口部から出射
した電子が発散して、お互いの軌道がオーバーラップし
てしまうのを防止することであるので、収差によって完
全な結像が得られず、像がぼけてもあまり問題にはなら
ないものである。
キシャルレンズ31の出口側には電子検出器32、例え
ばチャンネルトロンが配置されている。なお、図14
(a)は平面図、図14(b)は断面図である。本来な
らばトロイダル型分光器の出口側に直接電子検出器を配
置すればよいのであるが、それでは電子検出器自体の寸
法が極めて大きくなってしまう。実際、上述した寸法と
した場合には、半径 200mm程度の大きさの電子検出器
が必要になる。トランザキシャルレンズ31をトロイダ
ル型分光器の出口側に配置するのはこのような理由によ
るものであり、このことによって一般に市販されている
程度の大きさの電子検出器を利用できるようになり、安
価に構成することができるのである。
ズ31の集束位置との距離lは、G2の静電レンズの電
極に印加する電圧を制御することによってある程度の範
囲で調整することができ、電子検出器32の大きさ、電
子検出器32の背面側にどの程度のスペースがあるか等
の観点から決定すればよい。
が、この場合には、トランザキシャルレンズ31やトロ
イダル型分光器の収差を無視すれば、l=Rのときに出
射スリット30の各開口部から出射した電子線は回転中
心軸上の一点に集束してくるので、極めて小型の電子検
出器を設置することができるものである。
が、本発明は上述したものに限られるものではなく、種
々の変形が可能である。
光器の回転中心軸付近を占有し、電子検出器の背面側の
スペースが制限されることがあるが、この場合には電子
検出器としてマイクロチャンネルプレートを利用するこ
とができる。図15はその場合の構成例を示しており、
トランザキシャルレンズ31の出口側には複数のマイク
ロチャンネルプレート33が配置されている。この場
合、図15からも明らかなように、マイクロチャンネル
プレート33の電子検出面とトランザキシャルレンズ3
1の出口との距離は一定ではなく、マイクロチャンネル
プレート33のある一箇所にフォーカスするようにトラ
ンザキシャルレンズ31の中間電極(G2の静電レンズ
の電極)の電位を調整すると、他の箇所では若干フォー
カスがずれることになるが、上述したようにトランザキ
シャルレンズ31の目的は出射スリット30から出射し
た電子が発散して、お互いの軌道がオーバーラップして
しまうことを防止することであり、ぼけの少ない結像が
必要なわけではない。従って、多少フォーカスがずれる
ことがあっても、そのことが障害となることはないもの
である。なお、この場合はマルチチャンネルプレート3
3の間の間隙を完全になくすることができないので、そ
の分の感度のロスが生じるのは避けられない。
たが、l>Rの場合も考えられる。この場合にも図15
に示すと同様にマイクロチャンネルプレートを用いて電
子を検出することができる。ただし、この場合にはマイ
クロチャンネルプレートの並べ方は電子の入射面の側が
凹んだ形となる。
電子の進行方向と回転中心軸とが厳密に直角になってい
ない場合、即ち、上記の(15)式を用いる場合には、図1
6(a)あるいは図16(b)に示すように、トランザ
キシャルレンズ31を傾けるようにすればよい。この場
合、電子検出器としてマルチチャンネルプレートを用い
る場合には、マルチチャンネルプレートのプレート形状
は長方形ではなく、台形状とすればよい。
て説明したが、本発明はイオン等の荷電粒子一般の分光
に利用することができることはいうまでもない。
によれば、荷電粒子発生源から出る荷電粒子を、前段の
円錐型レンズ系によって円環状に、大きな立体角で効率
良く捕集することができるとともに、円錐レンズ系によ
って電子を減速してからトロイダル型分光器に入射させ
れば、より分解能の高いエネルギー分析を実現すること
が可能である。
の進行方向を、回転中心軸と直角またはそれに近い角度
になるようにすると共に、トロイダル型分光器の出口と
電子検出器との間にトランザキシャルレンズを設置すれ
ば、チャンネルトロンあるいはマイクロチャンネルプレ
ート等の一般的に市販されている電子検出器を用いて多
重検出が可能になり、トロイダル型分光器の「エネルギ
ー分散がリニアである」という特徴を十分に発揮させる
ことができるようになる。
用を説明する図である。
角φとの関係を示す図である。
光装置の例を示す図である。
説明するための図である。
明する図である。
の関係を示す図である。
の関係を示す図である。
した例を示す図である。
器について説明するための図である。
る。
レンズの配置の例を示す図である。
を説明するための図である。
てチャンネルトロンを用いる場合の配置の例を示す図で
ある。
てマイクロチャンネルプレートを用いる場合の配置の例
を示す図である。
光器の出口において電子の進行方向と回転中心軸とが厳
密に直角になっていない場合にトランザキシャルレンズ
31を傾けるようにすればよいことを示す図である。
…トロイダル型分光器内側電極、4…入射スリット、5
…出射スリット、6…円錐型静電レンズ、7…一次励起
源、8…サンプル、9…電子発生源、10,11…デフ
レクタ、12…電子検出器、20…電子線照射装置、2
1…電子光学系、30…出射スリット、31…トランザ
キシャルレンズ、32…電子検出器(チャンネルトロ
ン)、33…電子検出器(マイクロチャンネルプレー
ト)。
Claims (2)
- 【請求項1】回転中心軸に対して回転対称なトロイダル
型分光器と、 環状入射スリットを介してトロイダル型分光器の前段に
設けられ、前記回転中心軸に対して回転対称な円錐型レ
ンズ系と、 円錐型レンズ系に取り込まれる荷電粒子を発生させる荷
電粒子発生源と、 トロイダル型分光器の出射側に設けられ、前記回転中心
軸方向に荷電粒子を出射させる環状出射スリットと、 環状出射スリットから出射する荷電粒子を検出する検出
器とからなるトロイダル型分光器を有する分光装置。 - 【請求項2】回転中心軸に対して回転対称なトロイダル
型分光器と、 環状入射スリットを介してトロイダル型分光器の前段に
設けられ、前記回転中心軸に対して回転対称な円錐型レ
ンズ系と、 円錐型レンズ系に取り込まれる荷電粒子を発生させる荷
電粒子発生源と、 トロイダル型分光器の出口に設けられ、2枚の平板電極
が対向して配置された静電レンズが荷電粒子線の進行方
向に複数段配置されてなるトランザキシャルレンズと、 トランザキシャルレンズによって集束された荷電粒子を
検出する複数の検出器とからなるトロイダル型分光器を
有する分光装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP08927297A JP3388130B2 (ja) | 1996-04-10 | 1997-04-08 | トロイダル型分光器を有する分光装置 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP8-88168 | 1996-04-10 | ||
JP8816896 | 1996-04-10 | ||
JP08927297A JP3388130B2 (ja) | 1996-04-10 | 1997-04-08 | トロイダル型分光器を有する分光装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1027571A JPH1027571A (ja) | 1998-01-27 |
JP3388130B2 true JP3388130B2 (ja) | 2003-03-17 |
Family
ID=26429595
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP08927297A Expired - Fee Related JP3388130B2 (ja) | 1996-04-10 | 1997-04-08 | トロイダル型分光器を有する分光装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3388130B2 (ja) |
-
1997
- 1997-04-08 JP JP08927297A patent/JP3388130B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH1027571A (ja) | 1998-01-27 |
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