JP3382637B2 - グループi型ホスホリパーゼa2を含有する脳血管弛緩剤 - Google Patents

グループi型ホスホリパーゼa2を含有する脳血管弛緩剤

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JP3382637B2 JP17456492A JP17456492A JP3382637B2 JP 3382637 B2 JP3382637 B2 JP 3382637B2 JP 17456492 A JP17456492 A JP 17456492A JP 17456492 A JP17456492 A JP 17456492A JP 3382637 B2 JP3382637 B2 JP 3382637B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、グループI型ホスホリ
パーゼA2を含有する脳血管弛緩剤に関する。さらに詳
しくは、脳血管攣縮、脳梗塞、および脳卒中などの脳血
管疾患の治療あるいは予防に有用な、グループI型ホス
ホリパーゼA2を含有する脳血管弛緩剤に関する。
【0002】
【従来の技術】脳血管弛緩剤としては、現在塩酸パパベ
リン、フルナリジン、シンナリジン、ビンポセチン、塩
酸ニカルジピンなどが知られており、脳卒中、くも膜下
出血後の遅延性脳血管攣縮、あるいは慢性的循環不全に
よる脳血管性痴呆等の治療などに用いられている。
【0003】脳血流量は、一定の範囲内では、血圧の変
動とは無関係に自動調節されている。しかし、脳血流量
の自動調節機能が著しく低下している前述のような脳血
流障害疾患を持つ患者または老人等に、上記の脳血管弛
緩剤を投与した場合、その強力な作用により、急激な血
圧降下が生じ、そのことにより脳血流量が低下すること
がある。この結果、脳循環不全が起こり、痴呆の促進な
どの逆効果が生じる可能性がある。
【0004】従って、例えばくも膜下出血後に起こる遅
延性脳血管攣縮の治療にも、前記の各種脳血管弛緩剤が
用いられてはいるが、安全性の面で問題が多い。さら
に、上記脳血管弛緩剤は、作用時間が短いため、持続性
にも問題がある。このようなことから、脳血管に関する
疾患に対して充分な治療効果を得るまでには至っていな
い。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の様に、現在脳血
管弛緩剤として用いられている薬剤は、脳血管障害の治
療に充分な効果を得られるものではない。従って、脳血
管弛緩剤として、比較的作用が緩やかでかつ長時間持続
するものが求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】ホスホリパーゼA2(P
LA2;EC 3.1.1.4)は、3−sn−ホスホ
グリセリドの2−アシルエステル結合を加水分解するリ
ン脂質分解酵素である。哺乳類の細胞外PLA2は、そ
の一次構造に基づいて、グループI型とII型とに分け
られる。グループI型PLA2(PLA2−I)は哺乳類
の膵臓に存在しており、膵液中に分泌される消化酵素の
一つである。グループII型は、血小板に多く存在し、
おもに炎症反応に関与していると考えられる。
【0007】発明者らは、最近、ヒト由来のものを含む
様々な細胞あるいは組織の膜上に、分子量約190,0
00のPLA2−Iに特異的な結合タンパク質が存在す
ることを見い出した(Biol. Chem. 266, 19139-19141
(1991))。このような結合タンパク質を介して、PLA
2−Iは、Swiss3T3細胞、ラットの滑膜および
血管の平滑筋細胞において、直接DNA合成を刺激し、
さらに、ラット大動脈の平滑筋細胞(A7r5)では、
遊走能の亢進を誘発することが判った。
【0008】このことから、発明者らは、PLA2−I
が何らかの病態生理学的な状態に関連した機能を有する
ことを予測し、種々検討を行った。その結果、PLA2
−Iが、従来全く知られていなかった哺乳類の脳血管に
対する弛緩作用を有していることを見いだし、本発明を
完成するに至った。
【0009】本発明の脳血管弛緩剤は、グループI型ホ
スホリパーゼA2を含有する。
【0010】好ましい実施態様では、上記脳血管は、脳
底動脈、中大脳動脈、および前大脳動脈とそれらの分枝
からなる群から選択される。
【0011】好ましい実施態様では、上記グループI型
ホスホリパーゼA2は、哺乳類由来である。
【0012】好ましい実施態様では、上記脳血管弛緩剤
は、脳血管疾患の処置に用いられる。
【0013】好ましい実施態様では、上記脳血管疾患
は、脳血管攣縮、脳梗塞、および脳卒中からなる群から
選択される。
【0014】本発明の脳血管弛緩剤に含有されるPLA
2−Iの由来は特に限定されず、天然に存在するPLA2
−I、および遺伝子操作技術によって得られるPLA2
−Iのいずれであってもよい。PLA2−Iは、好まし
くは哺乳類由来である。PLA2−Iは、例えばブタ由
来のものが使用され得る。ブタPLA2−Iは、例えば
J. Biol. Chem. 266 (1991), 19139-19141に記載の方法
で調製される。
【0015】PLA2−Iの脳血管弛緩作用は、例えば
次の実験により確認され得る。
【0016】(I)単離された脳血管のPLA2−Iへ
の応答 PLA2−Iの脳血管への影響を調べるために、PLA2
−Iを与えた際の脳血管の応答を調べる。
【0017】(A)脳血管の単離および調製 脳血管は、例えばブタ、ウシ、あるいはネコから得るこ
とができる。そのためにはまず、ブタおよびウシの脳を
入手し、そしてネコは麻酔をかけて、頸動脈から出血さ
せて死亡させた後、すぐにその脳を取り出す。次にこれ
らの脳から例えば、脳底動脈、中大脳動脈および前大脳
動脈を単離し、単離した動脈より、適当な長さのらせん
状の動脈細片の試料を調製する。
【0018】得られた試料は、実験の目的に応じて、
(i)未処理のまま、(ii)シクロオキシゲナーゼの
阻害剤である、インドメタシン処理を施して、あるいは
(iii)内皮細胞を除去して、下記(B)項の実験に
供する。
【0019】(B)脳血管の収縮あるいは弛緩の測定 上記(A)項で得られた試料に、例えばJ. Biol. Chem.
266 (1991), 19139-19141に記載の方法で調製された、
PLA2−I、PLA2−IIおよびプロPLA2−Iを
加えて、この試料の収縮あるいは弛緩の状態を測定す
る。そのためには、例えば以下の方法が用いられ得る。
【0020】フックを設けた槽中に、適当な緩衝液を満
たし、適当な温度、好ましくは約37℃に維持する。こ
の槽中のフックの間に試料を垂直に固定する。この試料
の上端は、力変位トランスデューサーのレバーにつなが
れており、試料の収縮および弛緩をオシログラフで記録
できるようにしておく。実験の始めに、それぞれの試料
の静止張力を調節しておく。
【0021】全ての試料は、実験を始める前に槽中の溶
液に適当な時間放置し、溶液中で平衡化させる。この
間、好ましくは緩衝液を適当な時間間隔で数回交換す
る。
【0022】試験する薬剤に応答して起こる血管の収縮
および弛緩は、既知の収縮剤および弛緩剤に対する血管
の応答を基準として、相対的な値で表示することができ
る。例えば、収縮に関しては、あらかじめ公知の収縮剤
であるK+に対する収縮応答を観察しておき、静止張力
とその値との差を100%とする。そして加えた薬剤に
応答する収縮の程度を%で示すことができる。一方、弛
緩に関しては、例えば実験終了直前に、公知の弛緩剤で
あるパパベリンに対する弛緩応答を観察し、静止張力と
その値との差を100%とする。そして加えた薬剤に応
答する弛緩の程度を%で示すことができる。
【0023】これらの物質の弛緩効果を試験するため
に、動脈細片は、適当な収縮剤で前収縮させておくのが
よい。このための収縮剤としては、例えばプロスタグラ
ンジンF2α(PGF2α)あるいはセロトニンが用いら
れ得る。
【0024】上記PLA2−Iによる脳血管の弛緩作用
は、PLA2−Iが脳血管に存在するある種のレセプタ
ーに結合するためではないかと推測される。発明者ら
は、脳血管の細胞に対するPLA2−Iの結合特性を調
べて、本発明の脳血管弛緩作用をさらに明確にするため
に、以下の実験を行った。
【0025】(II)PLA2−Iの結合特性 (A)細胞培養 脳血管の培養細胞は、例えば、ブタの脳底動脈から得る
ことができる。それには、まず、ブタの脳から、脳底動
脈を単離し、この動脈内壁を軽く擦ることによって、血
管内皮細胞を除去する。この動脈から、平滑筋細胞を、
例えばRossの方法(J. Cell. Biol. 50, 172-186
(1971))によって単離し、得られた細胞を適当な条件下
で培養する。この培養細胞を回収し、再現性よく実験を
行うために、継代培養により、安定化した培養細胞を結
合実験に用いる。
【0026】(B)PLA2−Iの125I標識化 適当な方法により得られるPLA2−I、たとえはJ. Bi
ol. Chem. 266 (1991), 19139-19141の方法により調製
されたPLA2−Iを、Na125IおよびクロラミンTと
適当な時間反応させた後、適当なカラムに通して125
−PLA2−Iと未反応の125Iとを分離し、125I−P
LA2−Iを得る。
【0027】(C)バインディングアッセイ 上記(A)で得た培養細胞をPBSで洗浄後、BSA
(ウシ血清アルブミン)を含むハンクス培地(pH7.
6)に懸濁する。その懸濁液に125I−PLA2を加えイ
ンキュベートした後、懸濁液を吸引除去する。さらに細
胞を生理食塩水で洗浄後、細胞をNaOHで溶解し、そ
の放射活性をカウントする。
【0028】なお、PLA2−I非標識体存在下での放
射活性を非特異的結合量とし、それを非存在下での結合
量(全結合量)から差し引いた値を特異的結合量として
表す。
【0029】このバインディングアッセイの結果から、
培養細胞には、PLA2−Iに対する単一の特異的なレ
セプターが存在することが判った。従って、PLA2
Iの血管弛緩作用には、このレセプターが関与している
ことが推定される。
【0030】上記(I)および(II)から、PLA2
−Iが血管弛緩作用を有することが見いだされ、脳血管
攣縮、脳梗塞、および脳卒中、などの疾病の治療に有効
な脳血管弛緩剤として有利に用いられ得ることが示され
る。
【0031】PLA2−Iを脳血管弛緩剤として使用す
るときには、PLA2−Iを好ましくは、10-9M以上
10-6M以下、より好ましくは、5×10-8M以上10
-7M以下の濃度で血管と接触させ得るように、適当な緩
衝液に溶解させて投与するのが望ましい。
【0032】投与量は、性別、年齢、症状、および投与
後の経過などによって変化し得る。投与形態は、好まし
くは非経口投与であり、特に、クモ膜下出血の手術後に
見られる脳血管攣縮に対しては、動脈注射が好ましい。
【0033】
【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに説明す
る。
【0034】〔実施例1〕脳血管細胞に対するPLA2
−Iの結合に関するレセプターの存在を確認し、その特
異性を調べるために、以下の実験を行った。
【0035】(1)ブタの脳底動脈から単離した細胞の
培養 屠殺場で入手したブタの脳から、脳底動脈を単離し、軽
く擦ることによって、血管内皮細胞を除去した。この動
脈の平滑筋細胞をRossの方法(J. Cell. Biol. 50,
172-186 (1971))によって単離した。得られた細胞
を、37℃で5%炭酸ガス存在下の湿度を保たれた環境
下で、20%ウシ胎児血清、100ユニット/mlペニ
シリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを加
えたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)で培養し
た。0.125%トリプシン/0.01%EDTAを含
む液で培養細胞を回収した。この操作を繰り返して継代
培養した。一連の継代培養の後、5代目と8代目の間で
回収した培養細胞を12穴プレート上で培養し、次に行
うバインディングアッセイ用に準備した。
【0036】(2)PLA2−Iの125I標識化 PLA2−Iは、J. Biol. Chem. 266 (1991), 19139-19
141に記載の方法で調製されたブタ由来のものを使用し
た。
【0037】20μgのPLA2−Iを含む100μl
の0.02Mリン酸緩衝液(pH7.5)に、1mCi
のNa125Iを含む50μlの0.5Mリン酸緩衝液
(pH7.5)を加え、さらにクロラミンT(9.6m
g/ml)を含む50μlの0.02Mリン酸緩衝液を
200μl加え、反応を停止させた。
【0038】この反応溶液を、あらかじめPBS(Phos
hate Buffered Saline)で平衡化したセファデックスG
−50カラムに通して、125I−PLA2−Iと未反応の
125Iとを分離し、125I−PLA2−Iを得た。標識し
125I−PLA2−Iの比活性は、約200Ci/mm
ol(14.4μCi/μg)であった。
【0039】(3)バインディングアッセイ 上記(1)で得られた培養細胞をPBSで2回洗浄後、
0.1%BSAを含むハンクス培地(pH7.6)に懸
濁した。その懸濁液に0.3nMから6nMまでの種々
の濃度の125I−PLA2を各プレート上の細胞に加えて
インキュベーションした後、懸濁液を吸引除去した。さ
らに細胞を0.9%NaCl液で3回洗浄後、細胞を1
N NaOHで溶解し、その放射活性をカウントした。
【0040】なお、各濃度の125I−PLA2−Iのみ存
在する時の結合量を全結合量とし、500nMのPLA2−I
非標識体存在下での放射活性を非特異的結合量とした。
全結合量から非特異的結合量を差し引いた値を特異的結
合量として表した。
【0041】(4)Scatchardプロットによる結合サイ
トの検討 上記(3)の方法でバインディングアッセイを行い、Sc
atchard分析を適用した。その結果、図1に示されるよ
うな直線で近似されるグラフが得られ、125I−PLA2
−Iの解離定数(Kd)が3.89nM、最大結合量(Bm
ax)が40fmol/106細胞である、単一のPLA2
−I結合サイトの存在が示唆された。この結合サイト
は、PLA2−Iに対して特異的であり、可飽和性であ
る。
【0042】125I−PLA2−Iの細胞への特異的結合
は、100nMのPLA2−Iによって完全に阻害されたが、
PLA2−IIおよびプロPLA2−IIによって阻害さ
れなかった。
【0043】〔実施例2〕PLA2−Iの脳血管への影
響を調べるために、ブタの前大脳動脈を用いて、PLA
2−Iを与えた際の応答を調べた。
【0044】ブタの脳を屠殺場から入手し、前大脳動脈
を単離した。単離した動脈を切り出して、約20mmの
らせん状の動脈細片の試料を調製した。
【0045】得られた試料の収縮あるいは弛緩の状態を
モニターするために、以下の実験を行った。
【0046】底にフックを設けた槽中に、標準溶液(変
法リンガーロック液;120mMNaCl、5.4mM
KCl、2.2mM CaCl2、1.0mM Mg
Cl2、25.0mM NaHCO3、および5.6mM
デキストロース)を満たし、37±0.3℃に温度を
維持し、そして95%酸素および5%炭酸ガスの混合ガ
スでバブリングした。試料の一端を槽の底に設けたフッ
クにつなぎ、試料のもう一方の端を力変位トランスデュ
ーサーのレバーにつないで、試料の収縮および弛緩をイ
ンク書きオシログラフで記録できるようにしておいた。
静止張力は、1.5gに調節した。
【0047】試料は、実験を始める前に槽中の標準溶液
中に90〜120分間放置することで、平衡化した。こ
の期間中は、標準溶液を10〜15分ごとに置換した。
【0048】まず、30mMのK+に対する収縮応答を
最初に観察し、その後試料を新鮮な標準溶液で繰り返し
洗浄し、30〜40分間、同溶液中で平衡化させた。
【0049】この溶液にPGF2αを10-7〜3×10
-7Mになるように加え、前収縮させた。その後、PLA
2−Iを10-8M加え、試料の収縮および弛緩の様子を
モニターした。
【0050】弛緩の状態が安定した後、10-4Mのパパ
ベリンを加えて弛緩の状態をさらにモニターした。その
結果、図2のAに示すようなオシログラフを得た(試料
数n=4のうち、代表的なサンプルを示している)。
【0051】このグラフから判るように、試料は始めに
収縮を起こし、その後ゆっくりと弛緩し、徐々にその程
度は増大していった。パパベリンを加えるとさらに急激
な弛緩が誘起された。
【0052】次に、(i)血管の試料をさらにシクロオ
キシゲナーゼ阻害剤である、インドメタシン10-5Mで
処理したもの、あるいは(ii)血管試料の内皮細胞を
擦って除去したもの、を調製し、上記と同様の実験を行
った。内皮細胞の除去は、サブスタンスPを10-7M加
え、その内皮細胞依存的弛緩作用が消失したことによっ
て確認した。
【0053】その結果、図2のB(上記(i)の場合)
およびC(上記(ii)の場合)に示すオシログラフを
得た。未処理の試料でみられた一過性の収縮は、インド
メタシン処理あるいは内皮細胞除去処理試料では消失
し、ゆっくりとした弛緩の増加だけが起きた。その後の
弛緩は、これらの3つの試料の間で違いはみられなかっ
た。
【0054】図3には未処理の試料とインドメタシン処
理(10-5M)試料における収縮および弛緩の平均値
(試料数n=4)をグラフに示してある。インドメタシ
ン処理試料に対する収縮作用は観察されなかったが、イ
ンドメタシン処理試料および未処理試料に対する弛緩作
用は、ほぼ同程度で観察された。
【0055】さらに、内皮細胞除去処理および未処理の
試料の弛緩の平均値は、それぞれ、48.84±2.2
7%(試料数n=5)および41.66±4.06%
(試料数n=5)であった。
【0056】従って、PLA2−Iによる一過性の収縮
反応は、内皮細胞から産生されるシクロオキシゲナーゼ
代謝物(トロンボキサンA2およびプロスタグランジン
2αなど)によるものと考えられ、その後の弛緩反応
は、内皮細胞非依存性の作用と考えられる。
【0057】〔実施例3〕PLA2−Iの連続刺激に対
するブタの前大脳動脈への応答を調べるために、以下の
実験を行った。
【0058】PLA2−Iの添加方法以外は、実施例2
と同一の方法を用いた。インドメタシン処理を行い、P
GF2αで前収縮させた動脈細片を用いて、実験開始後
直ちに、槽中に10-8MのPLA2−Iを添加し、25
分後、3×10-8MのPLA2−Iを添加した。その結
果得られたオシログラフを図4の(A)に示す。一過性
の収縮はみられず、弛緩がゆっくりと増大していき、3
×10-8MのPLA2−Iを追加した時には、弛緩の程
度は、ほとんど変化しなかった。
【0059】その後、動脈細片を標準溶液で洗浄し、4
0分間標準溶液中で平衡化した。この間標準溶液は、1
0分ごとに交換した。その後、動脈細片は再びPGF2
αで前収縮させ、10-8MのPLA2−Iを加えた。そ
の結果得られたオシログラフを図4の(B)に示す。こ
の2回目の実験では、PLA2−Iの添加による弛緩は
みられず、10-8MのラットANP(心房性ナトリウム
利尿ペプチド)を添加すると、急激な弛緩が起こった。
この結果をさらに棒グラフにすると、図5に示す図が得
られる。このような脱感作現象の結果から、PLA2
Iの脳血管弛緩作用は、そのレセプターを介しているこ
とが推定された。
【0060】〔実施例4〕インドメタシン処理を行った
ブタの前大脳動脈の収縮あるいは弛緩に、種々のPLA
2が関与するか否かを調べるために、以下の実験を行っ
た。
【0061】PLA2−Iを添加するまでの準備は、実
施例2と同様の方法で行った。8個の動脈細片からなる
試料群には、10-9M、3×10-9M、10-8M、およ
び3×10-8Mの濃度のPLA2−Iを槽中へ加えた。
さらに、比較のために、別の3個の動脈細片からなる試
料群には、ブタ由来のプロPLA2−Iを3×10-9
および10-8M加え、さらに別の2個からなる試料群に
は、ラット由来のPLA2−IIを、10-8M、3×1
-8M、および 3×10-7M投与した。その結果を図
6に示す。ブタのPLA2−Iを加えた場合の50%有
効濃度(EC50)の平均値は、2.32±0.16nM
であった。ブタのプロPLA2−IあるいはラットのP
LA2−IIを投与しても、動脈細片に検出し得る程の
弛緩は生じなかった。
【0062】〔実施例5〕インドメタシンで処理した種
々の大脳動脈を試料として、PLA2−Iを加えた時の
弛緩の状態を調べるために、以下の実験を行った。
【0063】ブタおよびウシの脳は屠殺場から入手し、
そしてネコは麻酔をかけて、頸動脈から出血させて死亡
させた後、すぐにその脳を取り出した。次に、これらの
脳から、脳底動脈、中大脳動脈および前大脳動脈を単離
し、単離した動脈を切り出して、それぞれ約20mmの
らせん状の動脈細片の試料を調製した。
【0064】得られた試料は、シクロオキシゲナーゼの
阻害剤である、インドメタシン処理を施して、実施例2
に記載の方法と同様の方法で、10-8MのPLA2−I
を投与して収縮あるいは弛緩の測定を行った。この結果
を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】PLA2−Iに誘導される弛緩に、ブタ、
ウシ、あるいはネコから取りだしたそれぞれの脳底動
脈、中大脳動脈、および前大脳動脈の間で有為な差はな
かった。さらに、セロトニンで前収縮させた試料でも、
PGF2αで前収縮させた試料を用いた場合と比べて、
その後の弛緩の状態に差はなかった。
【0067】
【発明の効果】本発明によれば、このように、グループ
I型ホスホリパーゼA2(PLA2−I)を含有する脳血
管弛緩剤が提供される。
【0068】本発明のPLA2−Iを含有する脳血管弛
緩剤の弛緩作用は、非常に緩徐であり、投与量が増加し
ても過度の弛緩が生じにくい。さらに、比較的低濃度で
持続的な効果を示すことから、脳血管攣縮、脳梗塞、あ
るいは脳卒中等の各種の脳血管疾患の治療あるいは予防
に有用である。特に、くも膜下出血後の遅延性脳血管攣
縮の治療あるいは予防に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブタの大脳動脈平滑筋細胞に対する125I−P
LA2−Iのバインディングアッセイの結果をスキャッ
チャ−ドプロットに変換したグラフである。
【図2】PGF2αによって前収縮させた、ブタの前大
脳動脈条片を試料に、PLA2−Iを作用させた結果を
示すチャートである。試料は、(A)未処理、(B)イ
ンドメタシン処理、あるいは(C)内皮細胞除去処理を
行って用いた。
【図3】インドメタシン処理し、PGF2αによって前
収縮されたブタの前大脳動脈条片試料を用いて、PLA
2−Iの弛緩作用を調べた結果を示すグラフである。
【図4】PGF2αによって前収縮された、ブタ前大脳
動脈のPLA2−Iの反復投与に対する弛緩の状態を示
すチャートである。
【図5】PGF2αによって前収縮されたブタの大脳動
脈のPLA2−Iに対する第一と第二の弛緩およびラッ
トANPに対する弛緩を示すグラフである。
【図6】ブタの前大脳動脈におけるブタのPLA2
I、ブタのプロPLA2−I、およびラットのPLA2
IIに対する濃度−弛緩作用曲線である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−286088(JP,A) 欧州特許出願公開471549(EP,A 1) FEBS Lett.,1992年 9月 14日,309(3),261−264 J.Biol.Chem.,1992年 3月25日,267(9),6414−6420 Biochim.Biophys.A cta.1992年 4月23日,1125 (2),210−214 J.Biol.Chem.,1991年 5月25日,266(15),9956−9960 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 38/46 A61P 9/08 BIOSIS(DIALOG) CAPLUS(STN) MEDLINE(STN) WPI(DIALOG)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】グループI型ホスホリパーゼA2を含有す
    る脳血管弛緩剤。
  2. 【請求項2】前記脳血管は、脳底動脈、中大脳動脈、お
    よび前大脳動脈とそれらの分枝からなる群から選択され
    る、請求項1に記載の脳血管弛緩剤。
  3. 【請求項3】前記グループI型ホスホリパーゼA2が、
    哺乳類由来である、請求項1に記載の脳血管弛緩剤。
  4. 【請求項4】脳血管に関する疾患の治療あるいは予防に
    用いられる、請求項1に記載の脳血管弛緩剤。
  5. 【請求項5】前記脳血管の疾患が、脳血管攣縮、脳梗
    塞、および脳卒中からなる群から選択される、請求項4
    に記載の脳血管弛緩剤。
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FEBS Lett.,1992年 9月14日,309(3),261−264
J.Biol.Chem.,1991年 5月25日,266(15),9956−9960
J.Biol.Chem.,1992年 3月25日,267(9),6414−6420

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