JP3351686B2 - 金属製部材の表面改質方法および表面に改質層を有する金属製部材 - Google Patents

金属製部材の表面改質方法および表面に改質層を有する金属製部材

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属製部材の表面
改質方法および表面に改質層を有する金属製部材に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】金属材料の疲労強度,耐蝕性,耐摩耗性
を改善するための方法として、種々の表面改質技術が提
案されいる。その中の一つとして、合金化プロセスによ
る表面改質技術がある。この表面改質技術としては、基
材の表面にアークやビーム等の高エネルギーを印加して
再溶融させ、基材と組成が異なる添加成分との間に新し
い組成・特性を持つ改質層を形成させる方法や、固体基
材に付与したい粒子をイオン加速してイオンビームとし
て照射し、基材内に粒子を添加するイオン注入法等が知
られている。
【0003】上記方法のうち、基材の再溶融をともなっ
た合金化プロセスは、厚膜の改質層が得られ、接合強度
が強く、部分的な施工が可能である等の利点がある。そ
の反面、基材への熱影響が大きく、溶融接合のため収縮
応力による歪みが発生するという問題を有している。
【0004】一方、イオン注入法は、溶融をともなうこ
となく低温で粒子添加ができる利点があり、他に、注入
イオンと基板との組み合わせが自由である、処理による
寸法変化が小さい、非コーティング処理であるため非剥
離性を有している等の優れた特徴を有している。しかし
ながら、添加粒子をイオンビーム化して照射するための
装置は高価であり、処理コストが高く、量産性に劣ると
いう問題を有している。
【0005】また、簡便な表面改質方法の一つとして、
塑性加工によってその表面部に残留(圧縮)応力を生成
させることが行われ、例えば特開62−278224号
公報に開示されているように、ショットピーニング処理
によって残留(圧縮)応力を発生させることが、疲労強
度を改善する極めて有効な方法として注目されており、
実用化に至っている。しかしながら、この方法を用いて
も基材に充分な耐摩耗性や耐蝕性を付与することはでき
なかった。
【0006】そこで、これら問題を解決するため、アル
ミニウム合金製部材の表面部にショットピーニング処理
を施すアルミニウム合金製部材の表面改質方法であっ
て、ショット材がアルミニウム合金製部材の表面部をシ
ョットする時にショット材中に微粒子が伴われる状態で
ショットピーニング処理を行うことにより、上記微粒子
をアルミニウム合金製部材の表面部に分散状態で埋め込
ませることを特徴とする「アルミニウム合金製部材の表
面改質方法」(特開平5−86443号公報)が提案さ
れている。
【0007】これより、アルミニウム合金製部材の表面
部に対するショットピーニング処理中に耐摩耗性、耐食
性等の強度信頼性を向上させる微粒子をアルミニウム合
金製部材の表面部に埋め込ませるせることにより、ショ
ットピーニング処理による残留応力の発生に加えて、上
記ショットにより埋め込まれる微粒子により耐摩耗性、
耐食性等の強度信頼性を向上させることができるとして
いる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしがら、特開平5
−86443号公報に記載の「アルミニウム合金製部材
の表面改質方法」は、以下のような問題点を有してい
る。 (1)機械的に埋め込まれた粒子は基材との間の結合が
弱く、割れの発生や脱落の原因となることから、耐摩耗
性、耐食性等の強度信頼性が充分に確保できない。埋め
込まれた粒子と基材との界面結合を高めるためには、二
次的に結合力を高める処理を施す必要がある。 (2)埋め込まれる微粒子の固有の特性により、耐蝕性
や耐摩耗の改善度合いが決まってしまう。 (3)基材表面において基材中に機械的に埋め込まれた
粒子が分散した層構造であり、基材組成の露出部分から
腐食が進行し、充分な耐環境性を得ることが難しい。
【0009】そこで、本発明者らは、上述の如き従来技
術の問題点を解決すべく鋭意研究し、各種の系統的実験
を重ねた結果、本発明を成すに至ったものである。
【0010】(発明の目的)本発明の目的は、基材との
間に非剥離性を有し、かつ基材とは異なった組成または
構造を有する合金化層を形成することができる金属製部
材の表面改質方法を提供する。本発明の他の目的は、基
材との間に非剥離性を有し、かつ基材とは異なった組成
または構造を有する合金化層を表面に有する金属製部材
を提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
【0012】(第1発明)本第1発明の金属製部材の表
面改質方法は、金属製部材の表面に、該金属製部材とは
組成が異なる供給物質が存在する状態において、前記金
属製部材表面に機械的エネルギを付与し、該金属製部材
と前記供給物質との原子レベルの混合状態における反応
により機械的合金化層を形成させることを特徴とする。
【0013】(第2発明)本第2発明の表面に改質層を
有する金属製部材は、金属製部材と前記金属製部材の表
面に形成した改質層とからなり、該改質層が、前記金属
製部材とは組成が異なる供給物質が存在する状態におい
て前記金属製部材の表面に機械的エネルギを付与し、前
記金属製部材と前記供給物質との原子レベルの混合状態
における反応によって得た機械的合金化層からなること
を特徴とする。
【0014】
【発明の効果】
(第1発明)本発明の金属製部材の表面改質方法によ
り、金属製部材の表面に、非剥離性を有し、かつ基材と
は異なった組成または構造を有する改質層を形成するこ
とができる。また、前記改質層を、簡便にかつ安価に形
成することができる。
【0015】(第2発明)本発明の金属製部材は、表面
に、非剥離性を有し、かつ基材とは異なった組成または
構造を有する改質層を有する。この金属製部材は、金属
製部材表面への付着あるいは機械的な埋め込みにより形
成されたものではなく、金属製部材と供給物質との間で
機械的合金化による原子レベルの反応により合成された
ものであるから、基材との結合力が大きい。そのため基
地からの脱落や剥離がなく、強度信頼性も高い。
【0016】
【発明の実施の形態】以下に、前記発明をさらに具体的
にした発明やこれら発明の実施の形態について説明す
る。
【0017】(着眼点)本発明者らは、上述の従来技術
の問題に対して、以下のことに着眼した。すなわち、改
質方法は、簡便でかつ安価な方法であって、金属製部材
への熱影響を小さくするために該部材表面の再溶融を伴
うことなく、金属製部材とは異なった組成または構造を
有する非剥離性を有した改質層を形成させるものである
ことが必要である。この要求を満たすための方法とし
て、固相反応により合金化が可能な機械的合金化(M
A)を金属製部材表面で発現できる処理を検討した。
【0018】〔第1発明の実施の形態〕
【0019】本第1発明の金属製部材の表面改質方法
は、金属製部材の表面に、該金属製部材とは組成が異な
供給物質が存在する状態において、前記金属製部材表
面に機械的エネルギを付与し、該金属製部材と前記供給
物質との原子レベルの混合状態における反応により機械
的合金化層を形成させることを特徴とする。本発明の金
属製部材の表面改質方法が優れた効果を発揮するメカニ
ズムについては、未だ必ずしも明らかではないが、次の
ように考えられる。本第1発明の金属製部材の表面改質
方法は、まず、金属製部材の表面に、該金属製部材とは
組成が異なる物質で、かつ改質層の構成に必要な物質が
存在する状態において、機械的エネルギを付与する。こ
れにより、金属製部材の表面は、衝撃圧縮により鍛造変
形を受け、凝着しやすい清浄表面が形成される。それと
同様に供給物質においても粉砕や薄片化の過程で凝着し
やすい清浄表面が形成さる。さらに、機械的なエネルギ
ーの繰り返し付与により、剪断や摩擦を繰り返すことで
部材ならびに供給物質表面での原子のポテンシャルエネ
ルギーが変化し、原子レベルの混合が促進される。原子
レベルの混合状態においては低い温度でも固相内拡散に
よって反応が可能となるため、混合状態よりも相形成が
エネルギー的に安定な場合には合金化が促進する。ま
た、エネルギー序列の高い相であっも、機械的なエネル
ギーの付与により材料内部でのエネルギーの蓄積によっ
て、改質層の形成が可能となる。これにより、金属製部
材の表面に、非剥離性を有し、かつ基材とは異なった組
成または構造を有する改質層を形成することができるも
のと考えられる。また、この改質層を、簡便にかつ安価
に形成することができるものと考えられる。なお、従来
技術として、機械的エネルギーを利用し た金属製部材
表面への残留歪の付与や粒子の埋め込み処理を行う技術
があるが、この場合に印加されるエネルギーレベルでは
機械的な合金化は達成されない。それは、例えば、藤
田,野々山,団野:「金属」,65,(1995),P1143で報告さ
れているように、粉末同士を混ぜて機械的エネルギー付
与した初期段階における粉末の変形過程や機械的に粗混
合した状態においては、合金相が形成されないことから
もわかる。
【0020】(金属製部材)本発明において適用できる
金属製部材は、金属材料製の部材であれば特に限定する
ものではなく、本発明の効果を奏することができる金属
材料部材の全てを適用できる。なお、本発明方法におい
ては、機械的合金化が金属製部材と供給物質との間での
塑性変形を伴った合金化プロセスであり、該部材の弾性
限界が高い場合には、塑性変形を起こすために付与する
エネルギも高いことが要求される。この場合には、機械
的エネルギの付与手段や条件に制約をうける。従って、
該部材の弾性限界が低い、例えばAl系合金部材やMg
系合金部材の場合には、機械的エネルギの付与手段の選
択幅が広い点で有利である。
【0021】(供給物質)本発明の供給物質は、金属製
部材とは組成が異なる物質であって、改質層の構成に必
要な物質を含んでなる。なお、金属製部材中の構成成分
と反応が起こり易いものが良い。例えば、金属製部材が
Al合金ベースであれば、供給物質としては、Ti,N
i,Fe等の遷移金属からなる物質の一種以上、または
これら物質を含む物質があげられる。なかでもアモルフ
アス相や化合物相の形成には、供給物質と金属製部材中
の構成成分のあいだの混合エンタルピー(ΔH)が負で
その値が大きいもの物質であることが望ましい。
【0022】(供給物質の供給形態)供給物質の形態
は、粉末状またはフィルム状の固体であっても、また、
ガスや液体であってもよい。これらの一種または二種以
上の形態で供給することができる。
【0023】供給物質が粉末の場合には、粒径が300
μm以下が望ましい。供給粉末の粒径が300μmより
大きくなると、機械的エネルギを付与しても供給粉末に
よって吸収され、金属製部材と供給粉末との間に塑性流
動が起こりにくくなる。供給粉末は小さくて数が多いほ
ど、機械的エネルギを付与した時の部材との接触面積が
大きくなることから、合金化を促進することができる。
そのため、供給粉末の粒径は100μm以下の粉末で供
給するのが好ましい。
【0024】供給物質がフィルム状の場合には、厚さが
10μm以下が好ましい。フィルムの厚さが10μmよ
り厚くなると、機械的エネルギが供給物質層において吸
収され、金属製部材を塑性変形させることが困難とな
る。なお、フィルム状の供給物質を形成させる手段とし
ては、溶射,メッキ,CVDなどの表面処理方法を用い
てもよい。
【0025】供給物質の形態がガスや液体の場合には、
変形抵抗が小さいため、形状を特に限定するものではな
い。
【0026】(機械的エネルギの付与方法)機械的エネ
ルギを付与する方法においては、金属製部材表面と供給
物質との間で機械的合金化が発現できるための塑性流動
を発現させる必要がある。塑性流動を効率良く発現させ
るためには、剪断応力の印加面積を小さくして、繰り返
し数を多くするのが良い。応力の印加面積は0.5mm2
以下で、1mm2 当りの応力の印加回数が50回以上、好
ましくは100回以上行うことが望ましい。具体的には
高速で粒子を繰り返し衝突させる方法、容器内に金属製
部材と合金化のための物質とさらに硬質ボールを入れた
状態で回転させる方法、あるいは剛性の高いブラシ状の
もので繰り返し叩く方法などがあげられる。
【0027】繰り返し粒子を衝突させて機械的にエネル
ギーを付与する場合においては、合金化のための供給粉
末をエネルギー付与のための粒子として用いてもよい。
この場合の粉末の硬さは、金属製部材と同等もしくはそ
れよりも高いことが望ましい。供給粉末の硬さが金属製
部材よりも低い場合には、製品表面に粉末が変形して付
着するにとどまり、金属製部材との間で機械的合金化を
発現させるための塑性流動を起こすまでに至らないため
である。供給粉末の硬さが金属製部材よりも低い場合に
は、製品表面に予め凹凸を与え、粉末を高速で衝突させ
て付着させたのちに、機械的エネルギを付与する方法を
用いてもよい。
【0028】供給物質の形態がガスや液体である場合に
は、エネルギー付与粒子を搬送するための媒体として用
いてもよい。例えば、供給物質の形態がガスである場合
には、ショットピーニングにおいて、圧縮空気の代わり
に供給物質から成るガスを用いてもよく、供給物質の形
態が液体である場合には、エネルギー付与粒子とともに
吹き付ける方法を用いてもよい。
【0029】(機械的エネルギの付与:付与エネルギの
大きさ等の条件)機械的エネルギの大きさは、対象とす
る金属製部材の材質によって異なるが、金属製部材の
0.2%耐力よりも少なくとも50%以上高い剪断応力
を与えることが、塑性変形を起こすためには望ましい。
剪断応力は、金属製部材と合金化のための物質との間の
固相反応を促進させるために繰り返して付与することが
必須である。ところで、従来技術として、ショットピー
ニングを用いた部材表面への残留歪を与える処理あるい
は粒子の機械的な埋め込み処理がある。しかし、この従
来技術におけるショット球の投射時間はたかだか1cm
2 当り数秒程度である。この従来技術が必要とする付与
エネルギの大きさの程度では、機械的合金化は全く起こ
らない。これら従来技術の技術思想には、本発明の機械
的合金化相を生じさせるような示唆は何らみられない。
逆に、本発明の金属表面の改質処理では、これら従来技
術の目的とは全くことなった表面状態となり、従来技術
の目的を達成することができない。
【0030】(好適な機械的合金化層の形成方法)機械
的合金化層の形成を促進させるための方法として、機械
的エネルギ付与時に、金属製部材を室温から再結晶温度
以下の範囲で加熱してもよい。加熱は、金属製部材表面
の変形抵抗を小さくすることによって塑性流動を発生し
やすくするためだけでなく、機械的合金化を発現させる
ための機械的なエネルギを小さくすることができる。加
熱の方法としては、金属製部材全体を加熱するか、ある
いは製品表面を合金化処理と同時に加熱する方法であっ
てもよい。
【0031】機械的合金化層として、反応によって該機
械的合金化層とは異なる組成または構造を有する粒子が
分散した複合層を形成させることができる。具体的に
は、例えば、金属製部材とは組成が異なる物質(供給物
質)として、金属製部材の構成成分との間に金属間化合
物を形成する元素を組み合わせる。この場合の一例とし
ては、Al合金ベースの部材であれば、Ti,Ni,F
e等の組み合わせがあげられる。
【0032】(実施形態の効果)本発明の金属製部材の
表面改質方法によると、供給する物質は、改質目的に応
じて任意に選ぶことができ、その形態も、粉末状であっ
てもフィルム状であってもよく、また、ガスや液体であ
ってもよいことから、金属製部材と供給物質との組み合
わせが自由である。また、合金層を形成させるための機
械的エネルギ付与のプロセスにも自由度があり、比較的
簡単な構成で実現できることから、安価に表面改質層を
形成することができる。また、金属製部材を溶融するこ
となく、該金属製部材と供給物質との間に機械的に合金
層を形成させる方法であることから、金属製部材への熱
影響が小さい。などの効果を有している。
【0033】(発明の好適な適用範囲)本発明は、有効
な表面改質の手段が少ない軽金属材料の表面改質方法と
して利用できる。例えば、軟質なMg合金やAl合金の
表面硬さを向上させることにより、耐磨耗性を必要とさ
れる摺動部材への適用や、高温で使用されるTi合金部
品の耐酸化性の向上、あるいは耐蝕性に劣るといわれる
Mg合金の耐蝕性の改善などがあげられる。
【0034】〔第2発明の実施の形態〕
【0035】本第2発明の表面に改質層を有する金属製
部材は、金属製部材と前記金属製部材の表面に形成した
改質層とからなり、該改質層が、前記金属製部材とは組
成が異なる供給物質が存在する状態において前記金属製
部材の表面に機械的エネルギを付与し、前記金属製部材
と前記供給物質との原子レベルの混合状態における反応
によって得た機械的合金化層からなることを特徴とす
る。本発明の金属製部材が優れた効果を発揮するメカニ
ズムについては、未だ必ずしも明らかではないが、次の
ように考えられる。本第2発明の金属製部材の表面に有
する改質層は、金属製部材の表面に、該金属製部材とは
組成が異なる物質で、かつ改質層の構成に必要な物質が
存在する状態で、機械的エネルギを繰り返して付与して
得た改質層である。この改質層は、凝着しやすい清浄表
面を有する金属製部材と凝着しやすい清浄表面を有する
供給物質との間に、機械的なエネルギーの繰り返し付与
により剪断や摩擦を繰り返すことで部材ならびに供給物
質表面での原子のポテンシャルエネルギーが変化し、原
子レベルの混合が促進され、形成された機械的な合金化
層である。以上により、本発明の金属製部材の表面に形
成した改質層は、非剥離性を有し、かつ基材とは異なっ
た組成または構造を有する改質相となっているものと考
えられる。また、この金属製部材は、金属製部材表面へ
の付着あるいは機械的な埋め込みにより形成されたもの
ではなく、金属製部材と供給物質との間で機械的合金化
による原子レベルの反応により合成されたものであるか
ら、基材との結合力が大きいものと考えられる。そのた
め基地からの脱落や剥離がなく、強度信頼性も高いもの
と考えられる。
【0036】(金属製部材)本発明において適用できる
金属製部材は、金属材料製の部材であれば特に限定する
ものではなく、本発明の効果を奏することができる金属
材料部材の全てを適用できる。
【0037】ただし、本発明の機械的合金化層は、金属
製部材の表面に繰り返し塑性変形を与えて得ることを特
徴とするため、該部材の弾性限界が低いものほど低エネ
ルギで効果が得られる。従って、該金属製部材として
は、Al合金、あるいはMg合金、Zn合金、Ti合金
等の比較的弾性限界が低い材料ほど好ましい。
【0038】(改質層)本発明の改質層は、前記金属製
部材の表面に形成され、前記金属製部材とは組成が異な
る物質が存在する状態において前記金属製部材の表面に
機械的エネルギを付与して得た機械的合金化層からな
る。この改質層は、機械的合金化によって、非平衡相と
して、アモルファス相や過飽和固溶体で構成された組織
とすることができる。また、改質層が機械的合金化によ
って形成された粒子の分散した複合層からなる場合に
は、ナノサイズの微細な粒子分散構造を得ることができ
る。これらの改質層は、金属製部材の表面の改質層を形
成したい部分のみに形成しても、前記金属製部材の表面
の全部に形成してもよい。
【0039】(好適な実施形態)本発明の好適な表面に
改質層を有する金属製部材は、機械的合金化層が、アモ
ルファス相であることを特徴とする。金属製部材表面を
アモルファス化することによって、表面の組成的な均質
化が図られる。これにより、結晶粒界を伴った組成的不
均一による腐食の発生が抑制されて、高い耐蝕性を付与
することができる。
【0040】(好適な実施形態)本発明の好適な表面に
改質層を有する金属製部材は、機械的合金化層が、過飽
和固溶体であることを特徴とする。過飽和固溶体の改質
層の形成後、加熱焼鈍することにより、固溶体からの析
出をともなって、硬質層を形成させることができる。
【0041】(好適な実施形態)本発明の好適な表面に
改質層を有する金属製部材は、機械的合金化層が、表面
に該機械的合金化層とは異なる組成又は構造を有する粒
子が分散した複合層であることを特徴とする。複合層と
して、例えば、硬質な金属間化合物を分散させた場合に
は、耐磨耗性を付与することができる。また、合金化に
よって酸化物を分散させた場合には、耐磨耗性の付与の
他に、分散した酸化物によるピン止め効果によって、耐
酸化性を付与することができる。
【0042】
【実施例】以下に、本発明の実施例を説明する。
【0043】(第1実施例)純アルミニウムで作製した
基材を用いて、本発明の表面改質方法により、Al表面
にAlFe化合物の分散層の形成を試みた。機械的なエ
ネルギーを付与する手段としては、供給物質を含む粒子
を高速で金属部材表面に繰り返し衝突させる方法を採用
した。具体的には、ショットピーニング用の装置を用い
て、図1に示すように粒子1を圧縮空気2をとともにノ
ズル3から噴出させて、アルミニウム製部材4の表面に
繰り返し衝突させた。なお、ノズル先端から基材までの
距離は、100mmとした。処理面積は5cm2 である。化
合物形成に必要なFeの供給は粒径が約30〜150μ
mで純度が99.99%の純鉄紛を用いた。この鉄紛を
6kg/cm2 の圧縮空気とともにノズルから噴出させ
て、機械的エネルギの付与も兼ねて5分間部材表面に繰
り返し衝突させた。その後さらに機械的に混錬させるた
めに、粒径が400μmの鉄紛を3kg/cm2 の圧縮
空気とともにノズルから噴出させて1分間投射し、本発
明の表面改質方法を完了した。
【0044】(比較例1)比較のために、同じ形状の部
材を用いて、従来技術である部材表面に残留応力発生
させる条件として、粒径が400μmの鋼球を用いて6
kg/cm2 の圧縮空気とともにノズルから噴出させて
15秒間投射した(試料番号:C1)。
【0045】(比較例2)また、機械的に粒子を埋め込
む処理条件として、約10μm程度の微細なFe紛を粒
径が400μmの鋼球に約10%の割合で混ぜたもの
を、同じく6kg/cm2 の圧縮空気とともにノズルか
ら噴出させて15秒間投射した(試料番号:C2)。
【0046】(性能評価)本発明の表面改質方法による
と、基材表面には、表面から約20μmの厚みでFeの
濃度が高い層が形成されていることがEPMA分析によ
って確認されており、得られた合金層には、図2のX線
回折結果に示すように、部材成分であるAlの他にFe
3 Al等の化合物の形成が確認された。一方、比較例と
して、試料番号C1の残留応力を発生さた条件のもので
は、図3に示すように、部材成分であるAlのピークの
み認められた。また、試料番号C2の粒子を機械的に埋
め込む処理をした条件のものでは、図4に示すように、
部材成分であるAlと供給粒子のFeのピークがみら
れ、部材内にFe粒子の存在が確認された。しかしなが
ら、いずれの比較例においても新たな相の形成は見られ
ていない。この結果から本発明の表面改質処理において
は、部材表面で供給物質のFe紛の衝突により、基材の
Alが局部的に剪断応力を受け変形すると同時に、供給
物質のFeも変形を受け、その一部は部材と混り合った
状態を形成する。さらに繰り返して機械的エネルギを与
えることで、変形が進すみ部材成分のAlと供給したF
eとが摩擦・圧接を繰り返し原子間の反応が促進される
とともに、固相反応が可能なレベルにまで原子間の攪拌
混合が進み、新たな相の形成が成しえたと考えられる。
従って、従来技術である部材表面への残留歪みの付与あ
るいは機械的な粒子の埋め込み処理が満足されるのエネ
ルギのレベルでは機械的合金化は達成できないことが分
かる。
【0047】(第2実施例)本実施例はAl−Si−C
u系合金部材の表面硬さの向上を目的に、部材表面にA
l−Feの化合物分散層を本発明により形成させたもの
である。機械的なエネルギーを付与する手段としては,
第1実施例と同様にショットピーニング装置による方法
を用いた。ただし、この場合のショット球には球径が約
400μmの鋼球を用い、化合物形成に必要なFeの供
給は約20〜80μmサイズの純鉄粉を用いた。合金部
材と供給物質との反応のためのショット球の投射は、6
kg/cm2 の噴出圧力で5分間とした。得られた金属
製部材の改質層部断面の金属組織の顕微鏡写真図(倍
率:1000倍)を、図5に示す。図5より、表面から
約15μmの厚みで層の形成が認められる。次に、本発
明により、Al−Si−Cu系合金部材の表面にAl−
Feの化合物分散層を形成させた改質層について硬さの
評価を行った。その結果を、図6に示す。なお、部材表
面のままで何も処理してないAl−Si−Cu系合金部
材の表面硬さはHV85である。
【0048】(比較例3)比較例として、球径が約40
0μmの鋼球のみをアークハイト量0.4mmAの条件
でショットを施し、前記第2実施例と同様に、表面硬さ
を測定した。
【0049】(性能評価)本発明にかかる本実施例によ
り得られた金属製部材の表面改質層部の硬さは、母材の
約2倍の硬さHV170が得られた。これに対し、比較
例3により得られた比較用部材の表面部は、硬さはHV
120であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例において適用した表面改質
方法を説明する説明図である。
【図2】本発明の第1実施例において得られた金属製部
材のX線分析結果を示すチャートである。
【図3】比較例1において得られた比較用金属製部材の
X線分析結果を示すチャートである。
【図4】比較例2において得られた比較用金属製部材の
X線分析結果を示すチャートである。
【図5】本発明の第2実施例において得られた金属製部
材表面の改質層断面の金属組織を示す光学顕微鏡写真図
(倍率:1000倍)である。
【図6】本発明の第2実施例において得られた金属製部
材および比較例3において得られた比較用金属製部材の
性能評価試験結果を示す図で、改質層の硬さを示す図で
ある。
【符号の説明】
1 ・・・層構成のための供給粉末 2 ・・・圧縮空気 3 ・・・ノズル 4 ・・・基材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−83883(JP,A) 特開 平3−87377(JP,A) 特開 平1−298177(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 26/00 B24C 1/00

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属製部材の表面に、該金属製部材とは
    組成が異なる供給物質が存在する状態において、前記金
    属製部材表面に機械的エネルギを付与し、該金属製部材
    と前記供給物質との原子レベルの混合状態における反応
    により機械的合金化層を形成させることを特徴とする金
    属製部材の表面改質方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の金属製部材の表面改質
    方法であって、金属製部材が、Al合金,Mg合金,T
    i合金の一種以上の軽金属材料で作製されてなることを
    特徴とする金属製部材の表面改質方法。
  3. 【請求項3】 請求項1に記載の金属製部材の表面改質
    方法であって、機械的エネルギ付与時に、前記金属製部
    材を室温から再結晶温度以下の範囲で加熱してなること
    を特徴とする金属製部材の表面改質方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の金属製部材の表面改質
    方法であって、前記金属製部材とは組成が異なる供給
    質の存在形態が、300μm以下の粉末または10μm
    以下のフィルム状であることを特徴とする金属製部材の
    表面改質方法。
  5. 【請求項5】 請求項1に記載の金属製部材の表面改質
    方法であって、前記機械的エネルギの付与は、改質面全
    体に前記金属製部材の0.2%耐力の少なくとも50%
    以上高い剪断応力を加圧面が0.5mm2以下の極小面
    積でむらなく印加し、1mm2当りの応力の印加回数が
    50回以上であることを特徴とする金属製部材の表面改
    質方法。
  6. 【請求項6】 請求項1に記載の金属製部材の表面改質
    方法であって、前記機械的エネルギの付与が、機械的合
    金化層を形成させるための供給物質粉末を前記金属製部
    材表面に高速で繰り返し衝突させることにより行うこと
    を特徴とする金属製部材の表面処理方法。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載の金属製部材の表面改質
    方法であって、前記機械的合金化層が、アモルファス相
    であることを特徴とする金属製部材の表面処理方法。
  8. 【請求項8】 請求項1に記載の金属製部材の表面改質
    方法であって、前記機械的合金化層が、過飽和固溶体で
    あることを特徴とする金属製部材の表面処理方法。
  9. 【請求項9】 金属製部材と前記金属製部材の表面に形
    成した改質層とからなり、該改質層が、前記金属製部材
    とは組成が異なる供給物質が存在する状態において前記
    金属製部材の表面に機械的エネルギを付与し、前記金属
    製部材と前記供給物質との原子レベルの混合状態におけ
    る反応によって得た機械的合金化層からなることを特徴
    とする表面に改質層を有する金属製部材。
  10. 【請求項10】 請求項に記載の金属製部材であっ
    て、機械的合金化層が、アモルファス相であることを特
    徴とする表面に改質層を有する金属製部材。
  11. 【請求項11】 請求項に記載の金属製部材であっ
    て、機械的合金化層が、過飽和固溶体であることを特徴
    とする表面に改質層を有する金属製部材。
  12. 【請求項12】 請求項に記載の金属製部材であっ
    て、機械的合金化層が、表面に該機械的合金化層とは異
    なる組成又は構造を有する粒子が分散した複合層である
    ことを特徴とする表面に改質層を有する金属製部材。
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