JP3297733B2 - 電磁誘導を利用した鋼板の厚さ測定方法 - Google Patents

電磁誘導を利用した鋼板の厚さ測定方法

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道男 島田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】腐食した構造物の鋼板の厚さ
を測定するための測定原理および測定手段。
【0002】
【従来の技術】腐食した構造物において、鋼板の厚さ測
定は超音波厚さ計により行われている。しかし、超音波
厚さ計は、測定物との間に十分な接触が要求され、腐食
した構造物に適用するためには腐食生成物の除去と測定
面平滑化のための前処理(グラインダー作業)が不可避
である。そのため、作業能率が低く、経済的負担も大き
い。
【0003】一方、前処理を必要としない厚さ測定方法
として、非接触での厚さ測定が可能な電磁誘導を利用す
る方法(電磁誘導法)が考えられる。しかし、電磁誘導
法による厚さ測定の対象は、主として非磁性金属および
非導電性被膜であり、磁性材料である鋼には適用されて
いない。この理由は、磁性材料である鋼において、高周
波交流電流を励磁電流に用いる従来の電磁誘導法による
厚さ測定方法では表皮効果による厚さ方向の磁束密度の
減衰が非常に大きく、鋼板への適用は困難であったと考
えられる。
【0004】また、従来の電磁誘導法による厚さ測定方
法は、コイルのインピーダンスまたは誘導起電圧の大き
さの変化を利用して厚さを測定している。しかし、これ
らの方法では、鋼板とコイルの間隔(リフトオフ)の変
化が測定に大きく影響するため、表面の付着物または凹
凸によりリフトオフを一定に保つことができない腐食鋼
板への適用は難しいと考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、腐食した構
造物の鋼板に適した厚さ測定方法の確立を目的としてお
り、以下の課題を解決しようとするものである。 (1)非接触で厚さ20mm程度までの鋼板の厚さを測
定できるようにする。 (2)腐食鋼板への適用を可能にするため、リフトオフ
の変化および鋼板表面の凹凸に影響されない測定方法に
する。
【0006】
【課題を解決するための手段、実施の形態】本発明の測
定原理は、計測部(1)で発生させたステップ状の電流
を励磁コイル(3)に流し、測定物である鋼板(5)を
はさんで励磁コイル(3)と反対側に位置する検出コイ
ル(4)により、ステップ状の励磁電流に対する鋼板の
電磁気応答(検出コイルの電圧)を計測部(1)で測定
して、その波形から得られた情報を鋼板の厚さに変換す
るものである(図1参照)。
【0007】ステップ状の励磁電流(6)を励磁コイル
(3)に流した場合に検出コイル(4)から得られる電
圧の波形(7)の例を図2に示す。検出コイルの電圧波
形(7)には二つのピークが存在し、そのうち、はじめ
に現れる急峻なピークが鋼板の外側を回り込んだ磁束に
よるピーク(8)であり、その後に現れる緩やかなピー
クが鋼板を透過した磁束によるピーク(9)であること
が実験から確認されている。ステップ励磁電流の立ち上
がりから鋼板を透過した磁束によるピーク(9)が現れ
るまでの時間を「遅れ時間(10)」と定義して、遅れ
時間と鋼板の厚さの関係をあらわす関係式から鋼板の厚
さを求める。
【0008】遅れ時間と鋼板の厚さの関係式は以下のよ
うに求めた。鋼の半無限体(x≧0)において、x方向
に一様に磁界が作用する場合を考える。導体(この場合
は鋼)では、Maxwellの方程式は磁界Hについて のように表現できる。ここでσおよびμはそれぞれ鋼の
導電率および透磁率である。一次元の場合、式(1)は のように表される。ここで境界条件をx→∽のときH
(x,t)は有界であるとし、初期条件をH(x,0)
=0としてx=0に単位ステップ磁界が与えられた場合
の位置x=xにおける磁界の強さHx(t)を式
(2)から求めると、 のように表される。HX1(t)が、本測定方法におい
て、x=0に単位ステップ磁界が与えられた際に厚さx
の鋼板を透過して検出コイル側に発生する磁界の強さ
と仮定する。
【0009】一方、x=xにおける検出コイル電圧は と表される。ここで、φは磁束、NおよびAはそれぞれ
検出コイルの巻数および断面積、μは空気の透磁率で
ある。そこで、式(3)を式(4)に代入すると を得る。Vx1(t)の絶対値は、以下に示す時刻t
(式(6))において最大値をとることから、tが第
二ピークの遅れ時間に対応すると考えられる。 式(6)を変形すれば、鋼板の厚さxは、以下のよう
にCを定数と考えて、遅れ時間tと鋼板の透磁率μに
より以下のように表すことができる。 したがって、厚さが既知の部分において遅れ時間の測定
値と厚さからC/(μ)1/2を求めておけば、式
(7)を用いて、他の部分の厚さを遅れ時間の測定値か
ら求めることができる。
【0010】
【実施例】実施例として、立ち上がり時間1ms、振幅
1.5Aのステップ励磁電流を励磁コイル(内径48m
m、巻数200)に流して、厚さの異なる鋼板(ss4
00、厚さt=5.6〜21.8mm)の電磁気応答
を、鋼板をはさんで励磁コイルと反対側に設置した検出
コイル(内径40mm、巻数200)により検出して測
定した実験結果を示す。図3は、実験から得られた、厚
さの異なる鋼板の検出コイル電圧波形であり、鋼板の厚
さが増加するにしたがって遅れ時間が増加することが確
認される。この結果を、遅れ時間と鋼板の厚さの関係式
(式(7))により整理したものが図4であり、厚さ2
1.8mの鋼板まで本実験条件で測定が可能であること
が示されている。
【0011】また、このとき、励磁・検出両コイルのリ
フトオフを5mmから20mmまで変化させて同様の測
定を行った結果、遅れ時間にリフトオフの影響は見られ
なかった。さらに、平均厚さ9mmの鋼板に高さ4m
m、角度120゜の凹凸を互いに90゜方向となるよう
に機械加工を施した鋼板を用いて遅れ時間への影響を調
査したところ、その影響は11%程度の変化と小さかっ
た。
【0012】以上の結果から、本発明により、厚さ20
mmまでの鋼板の厚さ測定が可能で、リフトオフの変化
および鋼板表面の凹凸に影響されにくい電磁誘導を利用
した厚さ測定が可能となった。
【0013】
【発明の効果】本発明は、鋼板をはさむように励磁・検
出両コイルを設置する必要があることから超音波厚さ計
に比べて適用箇所が限定されるものの、超音波厚さ計で
必要であった前処理が不要であるため、測定作業の効率
化、費用の削減を図る上で大きな利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】測定方法の概要および配置を示す図である。
【符号の説明】
1 計測部(励磁電流発生及び検出コイル電圧計測用装
置) 2 ケーブル 3 励磁コイル 4 検出コイル 5 鋼板
【図2】ステップ状の励磁電流を励磁コイルに流した場
合に検出コイルから得られる電圧の波形の例を示した図
である。
【符号の説明】
6 ステップ励磁電流波形 7 検出コイル電圧波形 8 鋼板を回り込んだ磁束によるピーク 9 鋼板を透過した磁束によるピーク 10 遅れ時間
【図3】実験から得られた厚さの異なる鋼板の検出コイ
ル電圧波形を示す図である。
【図4】(遅れ時間/鋼板の透磁率)1/2と鋼板の厚
さの関係を示す図である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼板表面に設置した励磁コイルにステップ
    状の電流を流して、測定物である鋼板をはさんで励磁コ
    イルと反対側に設置した検出コイルで励磁電流に対する
    鋼板の電磁気応答を計測することにより鋼板を透過した
    磁束を山型の検出電圧波形として表現して、そのピーク
    が出現する時間の遅れにより鋼板の厚さを測定すること
    を特徴とする厚さ測定方法。
JP26758699A 1999-08-18 1999-08-18 電磁誘導を利用した鋼板の厚さ測定方法 Expired - Lifetime JP3297733B2 (ja)

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