JP3240646U - 視覚効果を高めた流体封入物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本考案は透明容器内部に共存する複数流体界面における光散乱や反射を抑えて、静置時および撹拌時の視覚効果を高めた流体封入物を提供する。【解決手段】 透明容器1の中に封入された比重の異なる上層流体2と下層流体3の屈折率を実質的に一致させ、流体界面4における光散乱や反射を抑えて視覚的に認識しにくい多層構造とすることで、層間に中間的な比重を有する物体5を共存させた場合に自立浮遊しているかのような視覚効果を与え、また着色された複数の流体を撹拌懸濁した場合には白濁による彩度低下を起こすことなく中間色を一時的に付与することができる。【選択図】図2

Description

本考案は、屈折率が同等で比重が異なる複数の流体を封入した透明容器からなる流体封入物に関するものである。
オイルウォータードームやリキッドボトルなどと呼称される、透明容器内に二種類の流体として水ないし水溶液とオイルを共存させた物品(以下、既存品と省略)が、非特許文献1および2に示したようにボトルアートの一種として、インテリアや土産物向けに市販されている。
これらは複数層状に分かれた容器全体の様子を眺めるだけでなく、容器全体を揺らすことで層間の波紋や一時的混色が発生する模様、また一部には層中間に追加された比重を調整した物体や内容物が揺動・飛散する様子を鑑賞するために製作されているものである。
既存品には多くの場合、容器の上層には比重の低いオイル類が、下層には比重の高い水系の溶液が封入されており、下層が有色透明や白色不透明に着色されている例が主流である。
また、オイル層と水層の一方ないし両方を着色して容器に密封した場合、容器の揺動による界面のゆらぎが発生するのみならず、激しい撹拌により両層の色が見かけの上で混和することで一時的に希釈ないし混色され、さらに経時変化で層状構造が回復するという機能を示す。
株式会社美はる社 ウェブサイト、「社員の日記」、インターネット<URL:https://www.miharusha.co.jp/blog/2830> 株式会社キョーワ ウェブサイト、「まりもっこり with KYOWA」、インターネット<URL:https://marimokkori-kyowa.shop/items/6057766fa11abc28a4497838>
しかし、既存品では上層と下層の流体の屈折率が大きく離れているため、静置時にも光散乱や反射のため流体間の界面が視覚的に目立ち、また容器を激しく撹拌して懸濁させると流体界面面積増大によって全体が不透明化し、期待される視覚効果が大きく失われるという欠点が存在する。
また、物体を層中間に浮遊させる場合、下層を着色して海や水の情景を表すことで中間に水生生物や船型模型を保持する手法などに限定されているように、前述した光学的に無視できない流体界面の存在を前提とするなかでは、中間の物体を保持する表現方法に限界があった。
これらの課題はいずれも、屈折率の異なる流体界面間における光の反射や散乱に起因するものであり、考案者は種々の実験検討を行うなか、容器中に共存する複数の流体、すなわち既存品の例では水層とオイル層における比重差の存在を維持しつつ、それらの屈折率を実質的に一致させることで抑制しうるものであるとの着想に至った。
上記課題を解決するため、本考案の請求項1に示したように、屈折率が同等で比重差を有する複数の流体、およびそれら流体の比重の範囲内に含まれる比重を有する物体を透明容器内に共存させた流体封入物を提供する。
また本考案の請求項2に示したように、その一部ないし全てが着色された、屈折率が同等で比重差を有する複数の流体を透明容器内に共存させた流体封入物を提供する。
以上のような本考案により、比重の異なる流体の屈折率を実質的に一致させることで、観察者が流体界面を視覚的に認識し難くなるため、各流体が同一色である場合は、透明容器内において比重調整された物体があたかも自立浮遊しているかのような新奇な視覚効果が提供される。
さらに流体の一部ないし全てを着色して色調差を付与した場合、本考案による層間の屈折率一致により、容器の撹拌揺動時に流体滴界面で起こる光散乱や反射による白濁化が抑制され、鮮やかに混色されることで静置状態との外観差が明確化した視覚効果が提供される。
本考案の第1の実施例を示した斜視図である。 本考案の第1の実施例を示した断面図である。 本考案の第1の実施例を示した断面図のうち、層間で浮遊させる物体の重心および復原性の制御方法を説明する拡大図である。 本考案の第2の実施例を示した断面図である。 本考案の第2の実施例のうち、撹拌直後の流体滴分散状態を説明する断面図である。
図1および図2はそれぞれ本考案の第1の実施例を説明する斜視図と断面図であり、透明容器1の中に屈折率が実質的に等しく調整された上層流体2と下層流体3、および中間的な比重を有し流体界面4に接しながら浮遊する物体5が封入され、物体よりも開口部が大きな蓋6によって密閉された流体封入物の構造を示している。
透明容器1には主にガラス製または樹脂製の密閉容器が選択され、直方体状や立方体状ないし球状の容器の場合は一方向のみへのレンズ効果が発生しないため内部に封入された物体5のアスペクト比が維持され自然に見えるのに対して、直立した円筒状容器の例では観察者から見て物体が横方向に拡大されるという違いがあるが、形状はこれらの例に限定されない。
物体5と容器開口部のサイズ関係について、図1および図2においては物体を開口部に通過させる上で断面寸法の最小部分よりも開口部の径が大きい例を示したが、ボトルシップのように容器内で部品から物体を組み立てたのちに各流体を注入し密閉することも可能であるため、物体と容器開口部のサイズ関係は特に限定されない。
容器内に内包される流体2および3には互いに非相溶で比重差が存在し、かつ屈折率が実質的に一致する流体が選択されるが、それらは単一の物質からなる流体でも、基材となる流体に溶質を溶解させた混合流体でもよく、より好ましくは引火点が高く蒸気圧が低い非危険物に該当する非毒性の物質からなる流体がそれぞれ選択される。
各流体の具体例として、比重の低い流体2には引火点が摂氏250度を超えるシリコーンオイル(信越化学工業株式会社 KF-96-50CS)、比重の高い流体3には塩化カルシウムの27重量パーセント水溶液のほか、塩化マグネシウム、ショ糖、グルコースおよびグリセリンといった常温における水に対する溶解度の高い溶質を溶解させた濃厚水溶液が考えられるが、これらに限定されるものではない。
また流体同士の屈折率を実質的に一致させるうえで、流体3に溶解させる水溶性溶質の濃度を精密調整する方法が実用上有効で、特に目標となる溶質濃度の上下に濃度設定した二種類のストック溶液をあらかじめ調整しておき、それらの混合比を調整することで最終的な流体3の屈折率を微調節する手法が簡便である。
これらの工夫の結果、上層と下層の流体の屈折率が実質的に同一となるため流体界面4における光の反射や散乱が抑制されており、各方向からの観察者は流体界面を実質的に認識できず、物体5が容器内であたかも自立的に浮遊しているかの錯覚を与えられることになる。
図3に示した物体5の断面図は、物体内部に比重を上昇させる構造物9や比重を低下させる構造物10を適宜事前に内包させておくことで、物体の重心8や全体の復原性を精密調整し、流体中での浮遊姿勢を任意に制御する機構を示している。
構造物9および10を含めた物体5を構成する材質は、各流体によって容易に溶解腐食されるものでなければ任意に使用可能であり、例えば透明の樹脂内部に不透明な内容物を埋封した物体の場合は不透明な物体と比べて追加の奥行き感を与えられるため、容器内で物体が自律的に浮遊しているかのような錯覚を増幅することができる。
物体5自体に機能性を別途付与することも可能であり、例えば温度計、時計、LEDライト、分光器や方位磁針といった機能が考えられるが、これらに限定されない。
本実施例では浮力と重心の調整によって物体5が流体界面で姿勢制御されるという一例を示したがこの方法に限られるものではなく、また物体5が界面内で自由回転や自由移動するように構造や組成を調整することも可能である。
図4は本考案の第2の実施例を説明する断面図であり、透明容器1の中に屈折率が実質的に等しく調整され、さらにそれぞれ異なる色に着色された上層流体11と下層流体12が封入密封された流体封入物の構造を示している。
本実施例における透明容器1は、二種類の流体注入後にあらかじめ容器に設けられた細径部や嵌合部を接着処理や硬化処理などで封止することにより、空気を完全に追い出した密閉構造を示しているが、蓋や空気の有無を含めてこの容器構造に限定されない。
図5は本考案の第2の実施例のうち、撹拌直後の流体滴分散状態を説明する断面図であり、本流体封入物を激しく撹拌することにより、下層流体12を分散媒として無数の上層流体滴13が一時的に生成し、分散状態となった様子を示している。
各流体の屈折率が実質的に一致しているため、一時的な分散状態における滴界面14は静置時の流体界面4と同様に視覚的に認識し難く、一般的なエマルションに見られる白濁化が抑制される。
したがって、微細な分散状態における本混合流体の見かけの色は、上層流体9の色と下層流体10の色が単純に混色された結果、彩度低下が抑制された中間色となるため、既存品のように撹拌にともなう白濁および彩度低下が見られないという特徴を有する。
例えば上層流体9が青色、下層流体10が黄色に着色されている場合、撹拌により一時的に混色され緑色の分散流体が発生するのに対して、上層流体9が緑色、下層流体10が赤紫色のように補色関係にある二色で着色されている場合は、既存品では特に実現困難であった黒色の分散流体が発生する。
分散状態の本容器を静置することで、図4に示した層構造が時間経過とともに自発的に復元されるが、適量の界面活性剤や増粘剤などの添加物を流体にあらかじめ添加しておくことにより、層構造復元までの所要時間を調節することもできる。
これらの実施例によると本考案は、前述のインテリアや土産物としての置物やアクセサリーへの応用のみならず、科学学習キットやディスプレイ装飾具、さらには内部に浮遊させる物体の追加機能ないし流体の着色に応じて計器の構成部品、透過型表示素子などへの利用が期待される。
1 透明容器
2 上層流体
3 下層流体
4 流体界面
5 流体界面で浮遊する物体
6 透明容器の蓋
7 透明容器内の空気
8 物体の重心
9 物体の比重を上昇させる構造物
10 物体の比重を低下させる構造物
11 着色された上層流体
12 着色された下層流体
13 着色された上層流体の滴
14 一時的に生成した流体滴界面

Claims (2)

  1. 屈折率が同等で比重差を有する複数の流体、およびそれら流体の比重の範囲内に含まれる比重を有する物体を透明容器内に共存させた流体封入物。
  2. その一部ないし全てが着色された、屈折率が同等で比重差を有する複数の流体を透明容器内に共存させた流体封入物。
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