JP3234273B2 - 発酵乳中の酸度の分光学的連続測定方法及びそれに用いる近赤外線吸収スペクトル検出端子付き発酵タンク - Google Patents

発酵乳中の酸度の分光学的連続測定方法及びそれに用いる近赤外線吸収スペクトル検出端子付き発酵タンク

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発酵工程中にある発酵
乳の酸度の経時変化を、近赤外線を用いて非破壊的にか
つ迅速に測定する発酵乳中の酸度の分光学的連続測定方
法、及び、それに用いる近赤外線吸収スペクトル検出端
子付き発酵タンクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、発酵乳のような乳酸菌により乳酸
発酵を行わせて製造を行う食品の工程管理においては、
発酵工程中の酸度を工程指標として用いることが多い。
酸度の測定は、1%フェノールフタレインを指示薬とし
て、0.1規定水酸化ナトリゥム溶液で滴定し、その滴
定量から100g当たりの乳酸のパーセント量を求めて
表す、いわゆる滴定酸度測定法によっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、酸度が
経時的に変化する発酵工程中では、発酵タンク内より度
々サンプリングを行わなければならず、また、滴定の終
末点の判断が作業者各人の感覚によって判断されるた
め、滴定値のばらつきを生じやすい。また、発酵工程を
pHにて管理するため、発酵タンク内にpH電極を取付
け連続的にpHを測定することが行われているが、これ
でもpH電極の取付け、洗浄、殺菌などが必要となり、
これらが不十分であると破損や微生物による二次汚染の
原因となるなどの問題があった。上記のような問題点を
解決するために、特公平2ー9780号に示されている
ように、発酵中の導電率を測定し発酵を終了させる時点
を知る方法が提案されているが、この方法では、発酵乳
中に検出端を挿入して発酵乳に接触させなければなら
ず、その検出端の洗浄が十分にできないなどの問題があ
る。このため完全な非破壊、非接触によるリモート計測
技術が求められるが、これらを光学的方法により行う方
法は確立されていない。近年、近赤外線を用いて成分分
析を迅速に、かっ非破壊的に測定を行う方法が実用化さ
れつつあるが、発酵乳の発酵工程において連続的に酸度
を測定することに関しては全く報告されていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は、発酵工程中
の酸度を近赤外線を用いて非破壊的に、かつ、連続的に
迅速に測定する方法について検討した結果、多変量解析
手法により検量線を作成して利用することで目的を達成
することがわかり、本発明を完成した。すなわち、複数
の検体となる発酵工程中にある発酵乳に、波長700〜
1200nmの近赤外線を照射して分光スペクトルを得
る。得られた分光スペクトルから、多変量解析手法によ
り、対象物中の酸度と相関のある成分含量を推定するに
適した波長を求めて、検量線を作成する。そして、求め
た最適波長の近赤外線を、測定対象の発酵乳に連続的に
照射して分光スペクトルを測定し、その測定値を検量線
と照らし合わせることによって、測定対象の発酵乳の酸
度を連続的に算出する。この測定方法に用いる近赤外線
吸収スペクトル検出端子付き発酵タンクは、発酵タンク
の対象物に近赤外線を照射する装置に光ファイバーで接
続される。また、前記のように、該近赤外線が照射され
た対象物内部の透光量を測定し、分光スペクトルを得、
得られた分光スペクトルから多変量解析手法により対象
物中の酸度と相関のある成分含量を推定するに適した波
長を求めて、検量線を作成し、そして、求めた最適波長
の近赤外線を、測定対象の発酵乳に連続的に照射して分
光スペクトルを測定し、その測定値を検量線と照らし合
わせることによって酸度を算出することのできる検出装
置にも光ファイバーで接続される。そして、発酵タンク
中に露出し、かつ外部光線遮断体で覆われた透光体から
なる。
【0005】
【作用】光ファイバーケーブルと発酵タンク中に露出す
る外部光線遮断体で覆われた透光体を介して、近赤外線
を対象物に照射し、対象物内部の透過光量を検出器で測
定して分光スペクトルを得、得られた分光スペクトルか
ら多変量解析手法により酸度を測定するのに適した2つ
以上の特定波長を演算で求め、該波長から酸度を測定す
るものである。
【0006】
【実施例】本発明では、発酵乳に波長700〜1200
nmの特定の近赤外線を照射する。図1、2、3に示し
たように外側3が光源1につながり、内側4が検出器に
つながつた同軸状の光ファイバー3、4をセンサー部分
に取り付ける。そして、光ファイバー3、4に外部の光
が入らないように、センサー部分を外部光線遮断体であ
る暗箱5で覆いをして、少なくとも発酵タンク7内の発
酵乳上面より下に端子の上端がくるような場所に設置す
る。タンク底部に取り付けることもできるが、通常は側
面にとりつけるとよい。このようにして設置したセンサ
ーの透光体であるガラス6越しに、発酵過程中の対象物
に近赤外線を照射し、近赤外線スペクトルを経時的に測
定する。図1は、透光体6がタンク7側壁に直接取り付
けられたものを示し、図2は、暗箱5がタンク内まで突
出したものを示している。図3は、透光体6がタンク7
側壁から離れたものを示している。透光体6はガラスに
限定する必要はないが、実施例のものはガラスを用いて
いる。ガラスの材質としては、不純物によるスペクトル
への影響を排除するため、石英ガラスが望ましく、ま
た、ガラスの厚みとしては5〜10mmが望ましい。そ
して、測定するときには、検量線を作成したときと同じ
材質及び同じ厚さのガラスを使用する。
【0007】さて本発明では、先ず上記方法にて複数検
体、好ましくは30検体以上について近赤外線吸収スペ
クトルを測定する。そして、得られた測定値から、コン
ピューターを用いた多変量解析手法により、酸度測定を
行うのに適した波長及び成分換算係数値を重回帰分析に
て求め、検量線を作成する。例えば、牛乳中の酸度(C
%)の検量線は、次の式で近似することが出来る。 C(%)=K0 +K1 λ1 +K2 λ2 +・・・+Kn λn ・・・・・(1) ここで、λ1 、λ2 は、酸度に相関のある特異的な波長
における吸収の強さであり、サンプル及び成分ごとに定
まる値である。Kは、成分換算係数値であり、サンプル
及び成分ごとに定まる比例定数である。ここでは、前記
した滴定酸度測定法により、酸度と(1)式で推定した
値の相関係数が最も高くなるように多変量解析手法を用
いてKの値を決定する。検量線を作成した後は、検量線
作成時と同様な方法により発酵乳中の酸度を求める最適
の波長で近赤外線吸収スペクトルを測定し、得られた測
定値を検量線と照らし合わせて発酵乳中の酸度を求めれ
ばよい。次に具体的な実施例により本発明を説明する。
【0008】12%還元脱脂乳を、98℃にて30分間
殺菌後42℃に冷却する。冷却後、スターターとしてs
t.thermophilus 及びL.bulgaricusをそれぞれ1.5%
添加して42℃にて培養した。スターター添加直後を0
分後とし、15分おきに近赤外線吸収スペクトルを測定
しながら、6時間培養を行った。近赤外線吸収スペクト
ルを測定すると同時に、1%フェノールフタレインを指
示薬として、0.1規定水酸化ナトリウム溶液で滴定し
て滴定酸度を求めた。測定した近赤外線吸収スペクトル
から、重回帰分析により酸度を推定するのに適した波長
を決定し、検量線を作成した。対象とする発酵乳の全固
形分や脂肪分になどの成分がほぼ一定している品種ごと
に検量線を作成すると、一層精度よく測定できる。した
がって、発酵乳の成分がかなり異なる品種をすべて測定
するときは、変動をあたえる全固形分や脂肪分になどの
成分などをすべてふくめてしまえるほどの大きなサンプ
ル数のキャリブレーション(校正)を行うことで解決で
きる。この場合、たとえば100検体以上のサンプルに
て校正を行うとよい。第1表に、選択された波長とその
波長を用いて酸度を推定した場合の測定精度を示す。ま
た、図4に発酵中の滴定酸度と近赤外線にて求めた酸度
の経時変化を示す。算出した近似式はY=3.190−
93.992・[902]+192.292[870]
である(Y=乳酸酸度(%),[λ]:λnmにおける吸
光度)。 次いで、第1表に示した波長を用いて作成した検量線を
使って、新たに調製した発酵乳の発酵乳中の近赤外線吸
収スペクトルを経時的に測定し、測定値から酸度を求め
た。この時の実際の酸度(滴定酸度)と近赤外線にて求
めた酸度の結果の測定の精度を第2表に、その時の経時
的測定値を第5図に示す。 第3表に、本方法により求める乳酸酸度と従来法による
乳酸酸度を求めるための1検体当たりの算出時間の比較
を示す。 以上のような結果から本発明が効果のあることが実証さ
れた。
【0009】
【発明の効果】本発明によれば、発酵乳の発酵中の経時
的な酸度変化を、迅速にかつ薬品処理のような前処理を
全く必要とせず、破壊することなく連続的に測定をする
ことができる。また、対象物に対してセンサーが接触し
ないため、センサーの洗浄、殺菌を必要とせず、高度の
無菌状態を必要とする発酵乳などの製造ラインに対し
て、微生物学的汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発酵乳の近赤外線吸収スペクトル検出端子を構
成する透光体がタンク側壁にあるものの説明図である。
【図2】同上の透光体がタンク内にあるものの説明図で
ある。
【図3】同上の透光体がタンク外にあるものの説明図で
ある。
【図4】発酵乳中の酸度の経時変化を示す図である。
【図5】作成した検量線を使って求めた発酵乳中の酸度
の経時変化図である。
【符号の説明】
1 光源 2 検出器 3 光ファイバー 4 光ファイバー 5 外部光線遮断体 6 透光体 7 タンク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−254946(JP,A) 特開 昭63−274840(JP,A) 特開 平2−168140(JP,A) J.Dairy Sci.Vol. 71,No.7(1988)p1955−1959 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 21/00 - 21/01 G01N 21/17 - 21/61 G01N 33/04 実用ファイル(PATOLIS) 特許ファイル(PATOLIS) JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数の検体となる発酵工程中にある発酵
    乳に波長700〜1200nm近赤外線を照射して
    分光スペクトルを得、得られた分光スペクトルから多変
    量解析手法により対象物中の酸度と相関のある成分含量
    を推定するに適した波長を求めて、検量線を作成し、そ
    して、求めた最適波長の近赤外線を、測定対象の発酵乳
    に連続的に照射して分光スペクトルを測定し、その測定
    値を検量線と照らし合わせることによって酸度を算出す
    ることを特徴とする近赤外線を使った発酵乳の酸度の分
    光学的連続測定方法。
  2. 【請求項2】 発酵タンクの対象物に近赤外線を照射す
    る装置光ファイバーで接続されると共に、該近赤外線
    が照射された対象物内部の透光量を測定し、分光スペク
    トルを得、得られた分光スペクトルから多変量解析手法
    により対象物中の酸度と相関のある成分含量を推定する
    に適した波長を求めて、検量線を作成し、そして、求め
    た最適波長の近赤外線を、測定対象の発酵乳に連続的に
    照射して分光スペクトルを測定し、その測定値を検量線
    と照らし合わせることによって酸度を算出することので
    きる検出装置にも光ファイバーで接続され発酵タンク
    中に露出し、かつ外部光線遮断体で覆われた透光体から
    なる近赤外線吸収スペクトル検出端子付き発酵タンク。
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