JP3210847B2 - 光パルス試験器 - Google Patents

光パルス試験器

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JP3210847B2
JP3210847B2 JP28494795A JP28494795A JP3210847B2 JP 3210847 B2 JP3210847 B2 JP 3210847B2 JP 28494795 A JP28494795 A JP 28494795A JP 28494795 A JP28494795 A JP 28494795A JP 3210847 B2 JP3210847 B2 JP 3210847B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光信号の伝送媒体
である光ファイバの光損失等の特性を試験する光パルス
試験器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高信頼性を持ち且つ経済的な光通信シス
テムを提供するためには、光信号の伝送媒体である光フ
ァイバの特性を高信頼性を有する試験器で測定し試験す
る必要がある。従来の光パルス試験器(Optical Time D
omain Reflectometer 、以下「OTDR」と称する)
は、被試験光ファイバの片端から試験できるため、非常
に有用な試験器として用いられている。そのため、OT
DRの測定可能距離(これをダイナミックレンジとい
う)を拡大すると共に距離分解能を高くする研究開発が
なされて来た。
【0003】図1を用いてOTDRの構成を説明する。
19はファブリペロー半導体レーザ(Fabry-Perot Laser
Diode 、以下「FP−LD」と称する)であり、タイミ
ング発生器2からのタイミング信号に同期して信号光パ
ルスを発生する。この信号光源からの信号光パルスを光
合分波器3を介して被試験光ファイバ4に送出し、被試
験光ファイバ4からの後方散乱光及び反射光(以下、後
方散乱光及び反射光を一括して「後方散乱光」と称す
る)を、再び光合分波器3を介して受光器5で受信して
電気信号に変換する。
【0004】信号処理部6で、この電気信号をタイミン
グ発生器2からのタイミング信号に同期させて加算した
後、OTDR波形に変換して表示部7に表示する。この
OTDR波形を解析することにより、被試験光ファイバ
の光損失等の特性を評価することができる。
【0005】図2に基づいてOTDRのダイナミックレ
ンジ(Single-Way Dynamic Range、以下「SWDR」と
称する)と距離分解能との関係について説明する。SW
DRは、被試験光ファイバからの後方散乱光パワーと受
光器の感度のdB表示値との差の1/2で表される。
【0006】後方散乱光パワーは、信号光パルスの入射
端でのピークパワーPo(dBm)と被試験光ファイバからの
後方散乱係数R(dB)との差で表され、受光器の感度は、
最小受光感度Pmin(dBm)から加算による信号雑音比の改
善量SNIR(dB)(Signal to Noise Ratio Improvemen
t Ratio 、以下「SNIR」と称する)を減算した量で
表される。従って、OTDRのダイナミックレンジSW
DRは、 SWDR=(Po −R−Pmin +SNIR)/2 (dB) と表される。信号光パルスのパルス幅が大きくなると後
方散乱光パワーが大きくなり、且つ、受光器の最小受光
感度が良くなり、ダイナミックレンジが大きくなる。
【0007】OTDRの距離分解能は信号光パルスのパ
ルス幅と受信帯域で決まり、受信帯域はパルス幅の逆数
となっている。パルス幅1μs の場合、受信帯域は1MH
z であり、距離分解能は100m である。この時の受光
器の最小受光感度は約−72dBm である。パルス幅を1
00nsとした場合、受信帯域は10MHz となり、距離分
解能が10m になるが、最小受光感度は受信帯域内の雑
音が増加するため、約5dB劣化し、約−67dBm とな
る。同時に、後方散乱光レベルはパルス幅が1/10に
なったため10dB低下する。即ち、OTDRの距離分解
能を10倍にすると、ダイナミックレンジは約7.5dB
低下することになる。
【0008】従来からOTDRのダイナミックレンジを
拡大する方法として、信号光パルスのパワーを光増幅器
等を用いて大きくする方法、コヒーレント検波方式を用
いて受光器の最小受光感度を改善する方法、或いは加算
回数を多くしてSNIRを大きく取る方法を用いてい
る。
【0009】しかし、被試験光ファイバに入射する信号
光パルスのパワーは、被試験光ファイバ中で起こる非線
形光学現象によって上限が与えられる。更にインサービ
ス状態でOTDRを用いて光ファイバの試験を行う場合
は、通信光とOTDRの信号光との間の非線形光学現象
により、通信光パワーが変動する問題が生じるため、O
TDRの信号光パルスパワーは数dBm 以下に制限され
る。
【0010】受光器の最小受光感度は、コヒーレント検
波方式を用いてもショット雑音限界で制限される。この
ショット雑音限界も距離分解能(パルス幅と受信帯域)
によって与えられている。また、加算回数を多くする方
法は、SNIRが大きくなりダイナミックレンジは改善
されるが、測定時間が長くなり効率的な試験監視技術と
しては適さない。
【0011】即ち、距離分解能(パルス幅と受信帯域)
によって最小受光感度が与えられるため、OTDRを高
距離分解能化すると同時に最小受光感度を改善すること
はできない。従って、高い距離分解能を必要とする場合
はダイナミックレンジが不足するという問題点がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の問題点に鑑み、高距離分解能で且つダイナミックレン
ジが大きいOTDRを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成するために、信号光源、光合分波器、受光器、加算
処理器及び表示器を具えた光パルス試験器において、信
号光源は、信号光パルスのパルス幅時間内で所定時間間
隔毎に所定波長間隔たけ波長が変化する信号光パルスを
発生する光源であり、受光器の前には、各波長毎に所定
の光遅延を与える光遅延回路を具備する。
【0014】前記の信号光源は、相異なる複数個の波長
λi(i=1,2,...,N)のパルス幅τの光パルスを発生する光
源、及び、該波長の異なるN個の光パルスに与える所定
の遅延Di が Di =τ(i−1)+αi (i=1,2,...,N) であり、且つ 0≦α1 ≦α2 ≦α3 ≦…≦αN と表される関係を持つ光遅延回路を具備する信号光源で
あり、前記の受光器の前に具備される光遅延回路は、各
波長λi(i=1,2,...,N)毎に与える所定の遅延D' i が D' i =DN-i+1 +α' (i=1,2,...,N) であり、且つ α' ≧0 と表される関係を持つ光遅延回路であることが好まし
い。
【0015】このような本発明によれば、OTDRの高
距離分解能化と高ダイナミックレンジ化とを同時に達成
でき、効率的で信頼性の高い光ファイバの試験手段を実
現することができる。また、光源を1つにすることがで
き、OTDRの構成を簡素化することができる。
【0016】また、他の本発明は、信号光源、光合分波
器、受光器、加算処理器及び表示器を具えた光パルス試
験器において、信号光源は、信号光パルスのパルス幅時
間内で所定時間間隔毎に所定波長間隔たけ波長が変化す
る信号光パルスを発生する光源であり、受光器は、各波
長毎に光を分波する光合分波器、各波長毎の後方散乱光
を独立に電気信号に変換する受光素子、各受光素子から
の電気信号に所定の遅延を与える遅延回路、及び、該遅
延回路からの各波長毎の後方散乱光の電気信号を重ね合
わせる加算回路を具備する。
【0017】前記の信号光源は、相異なる複数個の波長
λi(i=1,2,...,N)のパルス幅τの光パルスを発生する光
源、及び、該波長の異なるN個の光パルスに与える所定
の遅延Di が Di =τ(i−1)+αi (i=1,2,...,N) であり、且つ 0≦α1 ≦α2 ≦α3 ≦…≦αN と表される関係を持つ光遅延回路を具備する信号光源で
あり、前記の遅延回路は、各波長λi(i=1,2,...,N)の後
方散乱光を電気信号に変換する受光素子からの電気信号
に与える所定の遅延D' i が D' i =DN-i+1 +α' (i=1,2,...,N) であり、且つ α' ≧0 と表される関係を持つ遅延回路であることが好ましい。
【0018】このような本発明によれば、光源を1つに
することができ、信号光パルスに与える波長毎の遅延
を、受光器の電気回路で調整できるため、OTDRの構
成を簡素化することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】次に図面を用いて本発明の実施の
形態を説明する。図3は本発明の第1の実施例の構成を
示す図である。図で、信号光源1は、信号光パルスのパ
ルス幅内に所定間隔で異なる所定の波長の光を発生する
光源であり、この信号光パルスはタイミング発生器2か
らのタイミング信号に同期して発生される。
【0020】この信号光パルスは、光合分波器3を介し
て被試験光ファイバ4に入力される。この被試験光ファ
イバ4からの後方散乱光は、光合分波器3を介して光遅
延回路8に導かれ、所定の波長毎に所定の遅延が与えら
れ、受光器5で電気信号に変換される。この電気信号
は、信号処理部6で、タイミング発生器2からのタイミ
ング信号に同期して加算された後、OTDR波形に変換
され、表示部7で表示される。
【0021】次に信号光源1を図4を用いて詳細に説明
する。図では、分布帰還型半導体レーザ(Distributed
Feedback Laser-Diode、以下「DFB−LD」と称す
る)11〜18を用い、それらの発振波長をそれぞれλ1 、
λ2 、λ3 、λ4 、λ5 、λ6、λ7 、λ8 と表してい
る。この実施例では、λ1 =1546nm、λ2 =154
7nm、λ3 =1548nm、λ4 =1549nm、λ5 =1
550nm、λ6 =1551nm、λ7 =1552nm、λ8
=1553nmとした。また、図で10は光導波路型の多波
長光合分波器である。
【0022】所定の波長の光をポートa〜hから入力す
るとポートxに出力し、所定以外の波長の光は遮断す
る。ポートa〜hの透過波長はそれぞれ上記DFB−L
Dの中心波長λ1 〜λ8 に設定されている。各ポートの
透過損失は約2dBであり、透過波長帯域の半値幅は約
0.3nmであり、ポート間のクロストークは約30dBで
ある。
【0023】ポートxから光を入力した場合は、ポート
a〜hには先に設定した波長の光のみが出力される。D
FB−LD11〜18の駆動回路111 〜118 は、タイミング
発生器2からのタイミング信号に同期して、所定の遅延
を与えて各DFB−LD11〜18をパルス駆動する。
【0024】ここでは、DFB−LD11〜18を100ns
のパルス幅で駆動し、それぞれに0ns、100ns、20
0ns、300ns、400ns、500ns、600ns、70
0nsの遅延を与えている。従って、この信号光源から出
力される信号光パルスは、パルス幅800nsとなり、パ
ルス幅内に100ns毎に8つの異なる所定の波長を有し
ている。
【0025】次に光遅延回路8を図5を用いて詳細に説
明する。図では、2個の多波長光合分波器10を対向さ
せ、同一波長ポート間(a−a、b−b、…、h−h)
を、所定の長さの光ファイバ81〜88で接続する。これら
の光ファイバの長さを調整することにより、通過する光
信号に任意の遅延を与えることができる。
【0026】光ファイバ81〜88の長さはそれぞれ141
m 、121m 、101m 、81m 、61m 、41m 、2
1m 、1m である。従って、波長λ1 〜λ8 の光が同時
に入力された場合、波長λ1 〜λ8 の光は波長λ8 に対
して相対的に、700ns、600ns、500ns、400
ns、300ns、200ns、100ns、0nsの遅延時間が
与えられる。
【0027】次に図6及び図7を用いてこの実施例の動
作を説明する。信号光源1からの信号光パルスの模式図
を図6に示す。信号光パルスのパルス幅を8τとする
と、このパルスはパルス幅内にλ1 〜λ8 の波長を含
み、それぞれの波長λ1 〜λ8 が時間幅τで変化してい
る。この信号光パルスは、タイミング発生器2からのタ
イミング信号に同期して所定の周期Tで繰り返し発生さ
れ、被試験光ファイバに送出される。
【0028】この信号光パルスを被試験光ファイバに入
射した場合の後方散乱光波形の模式図を図7に示す。図
7(a) は遅延回路8を入れずに受光器で受信した場合の
各波長毎の後方散乱光波形を示している。この時のパル
ス幅は8τ=800nsであるため、距離分解能は80m
となる。
【0029】ここで1つの波長のみを分離して考える
と、信号光パルスのパルス幅はτになり、100nsとな
る。このときの距離分解能は10m である。そこで、上
記の光遅延回路8を受光器の前に挿入すると、図7(b)
に示すように、各波長毎の後方散乱光がλ8 の波形に全
て重なる。従って、距離分解能は1つの波長のみを分離
して考えた場合の100nsとなり、同時に後方散乱光パ
ワーは8倍(9dBに相当)となる。実際には、光遅延回
路の挿入損失が約5dBであるため、後方散乱光パワーは
4dB大きくなる。即ち、距離分解能を80m から10m
に高分解能化させると同時にダイナミックレンジを拡大
することができる。
【0030】以下に、この第1の実施例について本発明
の効果を実験的に確認した結果を説明する。図8に本発
明によるOTDRと従来のOTDRで10kmの光ファイ
バを測定した結果を示す。図8(a) は従来のOTDRを
用いて、パルス幅100ns(距離分解能10m )、受信
帯域10MHz で測定したOTDR波形である。信号光パ
ルスのピークパワーは10dBであり、加算回数は216
ある。このOTDR波形から、SWDRは14dBである
ことが分かる。
【0031】図8(b) は、図3に示した本発明のOTD
Rを構成して被試験光ファイバを測定したOTDR波形
である。信号光パルスのパルス幅は800nsであり、波
長はパルス幅内で100nsずつずれて、λ1 =1546
nm、λ2 =1547nm、λ3=1548nm、λ4 =15
49nm、λ5 =1550nm、λ6 =1551nm、λ7=
1552nm、λ8 =1553nmの波長を有する。
【0032】光遅延回路では、波長λ8 に対して相対的
に、700ns、600ns、500ns、400ns、300
ns、200ns、100ns、0nsの遅延時間が与えられて
いる。この光遅延回路の挿入損失は5dBである。図8
(a) の場合の測定条件と合わせるために、信号光パルス
のピークパワーは10dB、加算回数は216とした。ま
た、受光器の帯域は10MHz にしている。
【0033】この図8(b) から、SWDRは16dBであ
ることが分かる。SWDRが2dB拡大したのは、100
nsずつ波長毎にずれて戻って来る後方散乱光を、光遅延
回路で調整して8つの波長の後方散乱光が同時に受光器
に到達するようにしたため、受信する後方散乱光パワー
が4dB大きくなったためである。
【0034】また、距離分解能は10m であった。これ
は、各波長毎の後方散乱光波形はパルス幅100nsの信
号光パルスを送出した場合の波形と同じであり、受光器
の受信帯域を10MHz とすれば距離分解能は10m とな
るからである。これにより、高距離分解能化すると同時
にSWDRを拡大することが可能なOTDRを実現で
き、本発明の有効性が確認できた。
【0035】次に、本発明の第2の実施例を説明する。
図9はこの第2の実施例の構成を示す図であり、信号光
源1は、信号光パルスのパルス幅内で、所定間隔で、所
定波長間隔だけ波長が変化する光源であり、FP−LD
19と光遅延回路9を具えている。このFP−LD19から
の光パルスは多モード発振しており、中心波長は155
0nmである。発振波長スペクトルの包絡線の半値幅は1
3nmであり、各モードの発振波長の間隔は0.85nmで
ある。
【0036】ここでは、各モードの中で、λ1 =154
7nm、λ2 =1547.85nm、λ3 =1548.7n
m、λ4 =1549.55nm、λ5 =1550.4nm、
λ6 =1551.25nm、λ7 =1552.1nm、λ8
=1552.95nmの8つのモードを用いる。このFP
−LD19はタイミング発生器2からのタイミング信号に
同期してパルス幅100nsでパルス駆動される。この光
パルスは、光遅延回路9で各波長ごとに遅延を与えられ
る。
【0037】この光遅延回路9の多波長光合分波器10の
構成は前述の第1の実施例における光遅延回路8のそれ
と同様の構成を有し、各ポートa〜hに対応する波長
は、FP−LD19の特定のモードの波長λ1 =1547
nm、λ2 =1547.85nm、λ3 =1548.7nm、
λ4 =1549.55nm、λ5 =1550.4nm、λ6
=1551.25nm、λ7 =1552.1nm、λ8 =1
552.95nmに設定されており、これ以外のモードは
遮断される。
【0038】光ファイバ91〜98の長さはそれぞれ2m 、
22m 、42m 、62m 、82m 、102m 、122m
、142m であり、波長λ1 に対して相対的に、0n
s、100ns、200ns、300ns、400ns、500n
s、600ns、700nsの遅延を与える。従って、この
光遅延回路から出力される信号光パルスのパルス幅は8
00nsとなり、そのパルス幅内で100ns毎に波長がλ
1 〜λ8 に変化する。
【0039】光遅延回路8では、光遅延回路9と同じよ
うに、各ポートa〜hに対応する波長は、FP−LD19
の特定のモードの波長λ1 =1547nm、λ2 =154
7.85nm、λ3 =1548.7nm、λ4 =1549.
55nm、λ5 =1550.4nm、λ6 =1551.25
nm、λ7 =1552.1nm、λ8 =1552.95nmに
設定されている。
【0040】光ファイバ81〜88の長さはそれぞれ142
m 、122m 、102m 、82m 、62m 、42m 、2
2m 、2m である。従って、λ1 〜λ8 の波長の光が同
時に入力された場合、λ1 〜λ8 の波長の光は波長λ8
に対して相対的に、700ns、600ns、500ns、4
00ns、300ns、200ns、100ns、0nsの遅延を
与える。
【0041】次に、光遅延回路8及び9の光ファイバの
長さの関係式を一般的に示す。この実施例では8ポート
であるが、一般化するためにポート数をNとする。各ポ
ートi(i=1,2,...,N) は予め設定した波長λi(i=1,
2,...,N)に対応する。
【0042】FP−LD19からの光パルスのパルス幅を
τとすると、光遅延回路9の各波長毎の遅延Di は、 Di =τ(i−1)+αi (i=1,2,...,N) (1) であり、且つ 0≦α1 ≦α2 ≦α3 ≦…≦αN (2) の関係式を満たす。このとき、光遅延回路8の各ポート
の遅延D' i は、 D' i =DN-i+1 +α' (i=1,2,...,N) (3) であり、且つ α' ≧0 (4) の関係式を満たす。
【0043】このαi (i=1,2,...,N) は光遅延回路9が
各波長毎に与える遅延時間の冗長時間であり、α' は光
遅延回路8が与える遅延時間の冗長時間である。光遅延
回路8及び9の遅延時間の関係式(1)〜(4)が満た
されていれば、αi (i=1,2,...,N) 及びα' は任意に設
定できる。但し、 (N−1)τ+α1 +α2 +α3 +…+αN は信号光パルスの送出周期Tよりも充分小さいものとす
る。
【0044】光ファイバの長さをL、光の群速度をvと
すると、光ファイバを透過する光の遅延はL/vと表さ
れる。従って、光ファイバ91〜9Nの長さをLi (i=1,
2,...,N) 、光ファイバ81〜8Nの長さをL' i (i=1,
2,...,N) 、各波長に対応する光の群速度をvi (i=1,
2,...,N) とすると、光遅延回路8及び9の光ファイバ
の長さは、 L' i /vi =LN-i+1 /vN-i+1 +α' (i=1,2,...,N) (5) の関係式を満たせばよい。従って、上記の冗長時間αi
(i=1,2,...,N) は各光ファイバの長さの冗長度αi /v
i に変換できることが分かる。
【0045】この第2の実施例では、遅延を与える光フ
ァイバに分散シフト光ファイバを用いており、λ1 〜λ
8 の波長の光の群速度のばらつきは殆どなかったので、
L' i =LN-i+1 とした。また、光遅延回路8が与える
遅延時間の冗長時間はα' =0とした。上記の冗長時間
αi はαi =10ns、光ファイバの長さの冗長度はα i
/vi =2m に設定している。
【0046】この冗長時間αi を所定時間に設定するこ
とにより、本発明のOTDRの距離分解能を決めるτを
冗長時間αi の範囲で変化させることができることが分
かる。例えば、冗長時間αi を1μs (光ファイバ長の
冗長度を200m )に設定した場合、光遅延回路8及び
9の光ファイバ長を調整することなしに、τは1μs以
下の任意の時間幅に設定可能になる。
【0047】以下に、この第2の実施例について本発明
の効果を実験的に確認した結果を説明する。図9に示し
た本発明のOTDRを用い、第1の実施例と同一条件で
10kmの光ファイバを測定した結果、従来のOTDRと
比較してSWDRが2dB拡大して16dBとなった。これ
により、高距離分解能化すると同時にSWDRを拡大す
ることが可能なOTDRを実現でき、本発明の有効性が
確認できた。また、この例における信号光源にはFP−
LDを1個だけ用いるため、構成を極めて簡素化するこ
とができた。
【0048】次に、本発明の第3の実施例を説明する。
図10はこの第3の実施例の構成を示す図であり、第2
の実施例で示した光遅延回路8及び9の中の2個の多波
長光合分波器10の内の1つを共通にし、各ポート毎に光
合分波器3を設置している。このような構成により、第
2の実施例と同様な効果を得られると共に、多波長光合
分波器の数を少なくすることができた。
【0049】次に、本発明の第4の実施例を説明する。
図11はこの第4の実施例の構成を示す図であり、光遅
延回路100 は所定の波長の光に所定の遅延を与える光遅
延回路であり、光の入力方向によって、同一波長に与え
る遅延を変えることができる。第1の多波長光合分波器
10と第2の多波長光合分波器10' のそれぞれのポートa
〜hを、2ポート1組とし、各組に光サーキュレータを
2個ずつ挿入し、この光サーキュレータ101 、101'の間
には遅延を与える光ファイバ121 〜128 を挿入する。
【0050】光サーキュレータ101 、101'は、ファラデ
ー回転子型の4ポートの光サーキュレータであり、p1
から入力した光はp2 (スルーポート)に出力され、逆
に、p2 から光が入力された場合はp3 (クロスポー
ト)に出力される。また、p3から入力した光はp4
(スルーポート)に出力され、逆に、p4 から光が入力
された場合はp1 (クロスポート)に出力される(図1
1の矢印を参照)。
【0051】以下に光サーキュレータ101 と101'との間
に挿入される光ファイバ121 〜128の長さの設定方法を
説明する。FP−LD19からの光パルスのパルス幅を
τ、光の群速度をvg とすると、光ファイバ121 〜128
の長さLi (i=1,2,...,N) は、 Li =vg τ(i−1)+αi (i=1,2,...,N) (6) であり、且つ 0≦α1 ≦α2 ≦α3 ≦…≦αN (7) の関係式を満たすように設定する。
【0052】ここで、αi (i=1,2,...,N) は各波長毎に
与える遅延時間の冗長時間である。但し、 (N−1)τ+α1 +α2 +α3 +…+αN は信号光パルスの送出周期Tよりも充分小さいものと
し、光の群速度vg の波長依存性は充分小さいものとす
る。
【0053】この実施例ではポート数Nは8であり、各
ポートはaとb、cとd、eとf、gとhの組に分け
る。各ポートに挿入された光ファイバの長さの組合せ
は、それぞれL1 とL8 、L2 とL7 、L3 とL6 、L
4 とL5 であり、光ファイバ121〜128 の長さはそれぞ
れ、L1 =2m 、L2 =22m 、L3 =42m 、L4
62m 、L5 =82m 、L6 =102m 、L7 =122
m 、L8 =142m とした。
【0054】各組の光ファイバの長さの組合せを一般的
に表すと、 i+j=N+1 (i,j=1,2,...,N) を満たすLi とLj との組になる。但し、この光遅延回
路は光サーキュレータで2ポートずつ組にしているた
め、ポート数Nは偶数に限られる。
【0055】以下にこの実施例の動作を説明する。第2
の実施例と同様に、多モード発振しているFP−LD19
の光パルスの波長は、λ1 =1547nm、λ2 =154
7.85nm、λ3 =1548.7nm、λ4 =1549.
55nm、λ5 =1550.4nm、λ6 =1551.25
nm、λ7 =1552.1nm、λ8 =1552.95nmの
8つのモードを用いる。光合分波器3を介して光遅延回
路100 に入力される。第1の多波長光合分波器10と第2
の多波長光合分波器10' のそれぞれのポートa〜hに対
応する波長は、上記のFP−LD19の特定のモードの波
長に設定されている。
【0056】次に、光遅延回路100 の動作を説明する。
ここでは多波長光合分波器10、10'のポートaとbを通
過する光について説明する。対向する2個の多波長光合
分波器10、10' の間に、2個の光サーキュレータ101 、
101'を設置し、この光サーキュレータ101 と101'との間
には光ファイバ121 及び128 を入れる。光ファイバ121
の長さは2m 、光ファイバ128 の長さは142m であ
る。
【0057】第1の多波長光合分波器10のポートaから
出力された波長λ1 の光パルスは、光サーキュレータ10
1 のスルーポートに出力され、光ファイバ121 を通過し
た後、第2の光サーキュレータ101'に出力され、スルー
ポートに出力される。更に、多波長光合分波器10' を通
り、被試験光ファイバ4に入射される。
【0058】この被試験光ファイバ4からの後方散乱光
は、逆に、第2の多波長光合分波器10' を通った後ポー
トaから第2の光サーキュレータ101'に入力され、クロ
スポートに出力される。光ファイバ128 を通過した後第
1の光サーキュレータ101 に入力され、クロスポートに
出力される。更に、第1の多波長光合分波器10のポート
aから光合分波器3に出力される。
【0059】第1の多波長光合分波器10のポートbから
出力された波長λ2 の光パルスは、ポートaの場合と同
様に光源側から被試験光ファイバ4に向けて通過する場
合、光ファイバ128 を通過する。この波長λ2 の光パル
スが被試験光ファイバ4に入射され、この被試験光ファ
イバ4から戻って来る後方散乱光は、光ファイバ121を
通過した後、第1の多波長光合分波器10のポートbに入
力され、光合分波器3に出力される。
【0060】即ち、光遅延回路100 によって波長λ1 の
光パルス(ポートa)に対して波長λ2 の光パルス(ポ
ートb)は700nsだけ遅延が与えられる。逆に、被試
験光ファイバ4からの波長λ1 の後方散乱光は、波長λ
2 の後方散乱光に対して相対的に700nsだけ遅延が与
えられる。その他のポートも同様に動作する。
【0061】従って、FP−LD19からの100nsの光
パルスは、光遅延回路100 でa、c、e、g、h、f、
d、bの順序で遅延が与えられ、ポートaの光に対して
相対的に、0ns、100ns、200ns、300ns、40
0ns、500ns、600ns、700nsの遅延を与えられ
る。従って、パルス幅内で、100nsの時間間隔で波長
が変化する800nsの信号光パルスが出力される。
【0062】この信号光パルスが被試験光ファイバに入
射されると、戻って来る後方散乱光も各波長毎に分離し
て考えると、a、c、e、g、h、f、d、bの順序
で、ポートaの光に対して相対的に、0ns、100ns、
200ns、300ns、400ns、500ns、600ns、
700nsの遅延を持っている。
【0063】この後方散乱光が再び光遅延回路100 の逆
方向から入力されると、今度はa、c、e、g、h、
f、d、bの順序で、ポートbの光に対して相対的に、
700ns、600ns、500ns、400ns、300ns、
200ns、100ns、0nsの遅延が与えられる。これに
より、各波長の後方散乱光が同時に光合分波器3に出力
され、受光器5で受信される。
【0064】光遅延回路100 中の光ファイバ121 〜128
の長さを変えることによって、所定の波長の光に対し
て、順方向と逆方向とで異なった遅延を与えることがで
き、第2の実施例に示した光遅延回路8と9とを兼ねる
ことができる。また、第2の実施例と同様に、冗長時間
を所定の時間に設定することにより、本発明のOTDR
の距離分解能を決めるτを冗長時間の範囲で変化させる
ことができる。
【0065】以下に、この第4の実施例について本発明
の効果を実験的に確認した結果を説明する。図11に示
した本発明によるOTDRを用いて、第1の実施例と同
一の条件で10kmの光ファイバを測定した結果、従来の
OTDRと比較してSWDRが2dB拡大して16dBとな
った。
【0066】これにより、高距離分解能化すると同時に
SWDRを拡大することが可能なOTDRが実現でき、
本発明の有効性が確認できた。また、光遅延回路100 は
第2の実施例の光遅延回路8及び9を兼ねるため、構成
を極めて簡素化することができた。また、従来のOTD
Rの入出力端に光遅延回路100 を接続するだけで本発明
を容易に構成できる。
【0067】次に、本発明の第5の実施例を説明する。
図12はこの第5の実施例の構成を示す図であり、信号
光源1は第1の実施例のものと同一の構成を持ち、パル
ス幅内で、λ1 =1546nm、λ2 =1547nm、λ3
=1548nm、λ4 =1549nm、λ5 =1550nm、
λ6 =1551nm、λ7 =1552nm、λ8 =1553
nmの波長に100ns毎に変化し、800nsの信号光パル
スを発生する。
【0068】図13は、所定の波長毎に分離して後方散
乱光を受信する受光器50及び遅延回路900 の構成の細部
を示す図である。多波長光合分波器10のポートa〜hの
透過波長をλ1 〜λ8 に設定している。受光素子アレイ
51〜58は、それぞれの波長の光を光電変換し、各ポート
の電気信号を遅延回路900 に出力する。遅延回路900
は、タイミング発生器2からのタイミング信号に同期し
て遅延回路911 〜918 で各信号に所定の遅延を与え、加
算回路910 で各ポートからの電気信号を加算し、信号処
理部6に出力する。
【0069】従って、信号光パルスが被試験光ファイバ
4に入射され、戻って来る後方散乱光は受光器50によっ
て波長毎に分離して受信され、遅延回路900 によって波
長毎にずれているOTDR波形を電気的に遅延を与えて
補正し、各波長毎のOTDR信号が足し合わされる。
【0070】第1の実施例と同一の条件で10kmの光フ
ァイバを測定した結果、従来のOTDRに比較してSW
DRが3dB拡大して17dBとなり、光学的な損失の増加
が多波長光合分波器10の4dBだけであったため、第1の
実施例よりSWDRの拡大量が1dB増加した。これによ
り、高距離分解能化すると同時にSWDRを拡大するこ
とが可能であるOTDRが実現でき、本発明の有効性を
確認できた。
【0071】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
構成を極めて簡素化することができると共に、高距離分
解能化すると同時にダイナミックレンジを拡大すること
が可能な光パルス試験器を実現することができるという
優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の光パルス試験器の構成の例を示す図であ
る。
【図2】光パルス試験器のダイナミックレンジと距離分
解能との関係を説明する図である。
【図3】本発明による光パルス試験器の第1の実施例の
構成を示す図である。
【図4】図3の実施例の信号光源の詳細な構成を示す図
である。
【図5】図3の実施例の光遅延回路の詳細な構成を示す
図である。
【図6】信号光パルスの出力波形を説明する図である。
【図7】後方散乱光波形を説明する図である。
【図8】従来の光パルス試験器の出力波形と本発明によ
る光パルス試験器の出力波形とを比較する図である。
【図9】本発明による光パルス試験器の第2の実施例の
構成を示す図である。
【図10】本発明による光パルス試験器の第3の実施例
の構成を示す図である。
【図11】本発明による光パルス試験器の第4の実施例
の構成を示す図である。
【図12】本発明による光パルス試験器の第5の実施例
の構成を示す図である。
【図13】図12の実施例の受光器及び光遅延回路の詳
細な構成を示す図である。
【符号の説明】
1 信号光源 2 タイミング発生器 3 光合分波器 4 被試験光ファイバ 5 受光器 6 信号処理部 7 表示部 8 光遅延回路 9 信号光源の中の光遅延回路 10、10’ 多波長光合分波器 11〜18 分布帰還型半導体レーザ(DFB−LD) 19 ファブリペロー半導体レーザ(FP−LD) 50 受光器 51〜58 受光素子 81〜88、91〜98 遅延用光ファイバ 100 光遅延回路 101、101’ 光サーキュレータ 111〜118 DFB−LDの駆動回路 121〜128 遅延用光ファイバ 900 遅延回路 910 加算回路 911〜918 遅延回路 a〜h、x ポート λ1 〜λ8 波長
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H04B 17/00 H04B 10/08

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定周期で信号光パルスを発生する信号
    光源、該光源からの信号光パルスを被試験光ファイバに
    送出すると共に被試験光ファイバからの後方散乱光及び
    反射光を受光器に導く光合分波器、該後方散乱光及び反
    射光を受光して電気信号に変換する受光器、該受光器か
    らの電気信号を前記所定周期毎に加算する加算処理器、
    及び、該加算処理器からの後方散乱光及び反射光の波形
    を表示する表示器を具えた光パルス試験器において、 前記信号光源は、信号光パルスのパルス幅時間内で所定
    時間間隔毎に所定波長間隔だけ波長が変化する信号光パ
    ルスを発生する光源であり、前記受光器の前には、各波
    長毎に所定の光遅延を与える光遅延回路を具備すること
    を特徴とする光パルス試験器。
  2. 【請求項2】 前記信号光源は、相異なる複数個の波長
    λi(i=1,2,...,N)のパルス幅τの光パルスを発生する光
    源、及び、該波長の異なるN個の光パルスに与える所定
    の遅延Di が Di =τ(i−1)+αi (i=1,2,...,N) であり、且つ 0≦α1 ≦α2 ≦α3 ≦…≦αN と表される関係を持つ光遅延回路を具備する信号光源で
    あり、 前記受光器の前に具備される光遅延回路は、各波長λi
    (i=1,2,...,N)毎に与える所定の遅延D' i が D' i =DN-i+1 +α' (i=1,2,...,N) であり、且つ α' ≧0 と表される関係を持つ光遅延回路であることを特徴とす
    る請求項1に記載の光パルス試験器。
  3. 【請求項3】 所定周期で信号光パルスを発生する信号
    光源、該光源からの信号光パルスを被試験光ファイバに
    送出すると共に被試験光ファイバからの後方散乱光及び
    反射光を受光器に導く光合分波器、該後方散乱光及び反
    射光を受光して電気信号に変換する受光器、該受光器か
    らの電気信号を前記所定周期毎に加算する加算処理器、
    及び、該加算処理器からの後方散乱光及び反射光の波形
    を表示する表示器を具えた光パルス試験器において、 前記信号光源は、信号光パルスのパルス幅時間内で所定
    時間間隔毎に所定波長間隔だけ波長が変化する信号光パ
    ルスを発生する光源であり、 前記受光器は、各波長毎に光を分波する光合分波器、各
    波長毎の後方散乱光及び反射光を独立に電気信号に変換
    する受光素子、各受光素子からの電気信号に所定の遅延
    を与える遅延回路、及び、該遅延回路からの各波長毎の
    後方散乱光及び反射光の電気信号を重ね合わせる加算回
    路を具備することを特徴とする光パルス試験器。
  4. 【請求項4】 前記信号光源は、相異なる複数個の波長
    λi(i=1,2,...,N)のパルス幅τの光パルスを発生する光
    源、及び、該波長の異なるN個の光パルスに与える所定
    の遅延Di が Di =τ(i−1)+αi (i=1,2,...,N) であり、且つ 0≦α1 ≦α2 ≦α3 ≦…≦αN と表される関係を持つ光遅延回路を具備する信号光源で
    あり、 前記遅延回路は、各波長λi(i=1,2,...,N)の後方散乱光
    及び反射光を電気信号に変換する受光素子からの電気信
    号に与える所定の遅延D' i が D' i =DN-i+1 +α' (i=1,2,...,N) であり、且つ α' ≧0 と表される関係を持つ遅延回路であることを特徴とする
    請求項3に記載の光パルス試験器。
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