以下、図面を参照しながら本考案の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本考案の実施形態に係るチャイルドシート1全体を概略的に示す斜視図であり、図2は、チャイルドシート1の前向き状態の斜視図であり、図3は、チャイルドシート1の後向き状態の斜視図である。
チャイルドシート1は、チャイルドシート本体10と、チャイルドシート本体10に対して着脱可能に取り付けられるサポートレッグ100とを有している。チャイルドシート本体10は、車両(例えば自動車)のシートに取り付けられる受台20と、受台20上に摺動可能に支持されたシート本体30とを有している。なお、チャイルドシート1の着座面等を含むシート本体30は、図1に示されるように、クッション性のあるカバー11によって覆われているが、その他の図においては、構造を明確に示すために省略されている。
本明細書中では、各構成部材の説明において、チャイルドシート1を車両シートに設置した状態で、車両の進行方向前方を「前」とし、その反対側を「後」と規定する。また、図1及び図2に示されたシート本体30の状態を、シート本体30の「前向き状態」と称し、図3に示されたシート本体30の状態を、シート本体30の「後向き状態」と称する。特に、シート本体30の説明をする際には、着座した乳幼児から見た前方を「前」とし、その反対側を「後」と説明する場合もある。さらに、「右」方向及び「左」方向は、「前」方向に対して決定される。
シート本体30は、後述する回転機構によって、前向き状態(図1及び図2)と後向き状態(図3)との間で、受台20に対して選択的に回転させることができる。また、シート本体30は、後述するリクライニング機構によって、受台20に対する傾斜角度を変更して、すなわち複数のリクライニング位置を選択してリクライニングさせることができる。
図4及び図5を参照しながら、受台20について説明する。図4は、チャイルドシート1の受台20の斜視図であり、図5は、受台20の上面図である。受台20は、全体として中空に形成され、車両シートの座部上に載置される基部21と、基部21の後部から上方に延びると共に車両シートの背部に対面する起立部22とを有している。受台20は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを上下の半体毎又は左右の半体毎に成型し、これらを嵌合させることにより形成されるが、これに限定されない。
基部21の上面には、シート本体30の下部を収容するために、前後方向に延びる略楕円形の開口である本体受容開口23が形成されている。本体受容開口23の周縁には、下方に所定長さだけ延びる支持壁23aが、本体受容開口23の形状に沿って環状に形成されている。本体受容開口23周囲の基部21の上面には、基部21の上面であって中央に向かって緩やかに傾斜する受台支持面24が形成されている。受台支持面24の表面には、整列して配置された複数の凸曲面状の突起24aが形成されている。本体受容開口23の中、すなわち基部21の底面の内側には底面から隆起した円筒曲面25が形成され、基部21の上面の本体受容開口23を介して露出している。
円筒曲面25は、中心軸線が左右方向、すなわち横方向に延びる円筒面の一部からなる凹曲面であり、前端よりも後端の方がより上方に配置される(図9)。円筒曲面25において、チャイルドシート1の横方向の中央を通る中央線H上には、3つのロック穴25aが前後方向に整列して等間隔に形成されている。さらに、円筒曲面25において、中央線Hから横方向にオフセットした左右の平行線上には、前後方向に延びる一対のロック溝25bが形成されている。
受台20の起立部22の中間部に形成された前方に向かって傾斜した斜面22aには、内部空間に向かって貫通し、前後方向に延びる一対の細長のガイド溝22bが形成されている。ガイド溝22bは、後述するように、上部接続ロッド43の前後方向の摺動を案内すると共に横方向の移動を規制する。また、受台20の起立部22の上部前面22cには、矩形の開口26が形成されている(図3)。受台20の基部21の左右の後部、すなわち受台20の起立部22の左右の下部には、後述するように、横方向に突出したベルト係合突起27が形成されている。
図6及び図7を参照しながら、シート本体30について説明する。図6は、チャイルドシート1の一部の分解斜視図であり、図7は、チャイルドシート1のシート本体30の底面の斜視図である。
シート本体30は、シート下部31とシート下部31の後部から上方に延びる背当て部32とを有している。シート本体30は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成されるが、これに限定されない。シート下部31の外観は、下方に向かって先細の円錐台部31aと、円錐台部31aの下面から下方に延びるより小径の円筒部31bとから形成されている。円筒部31bの下端部は、円形のシート底面33によって閉鎖されている。シート底面33の中央には円形開口33aが形成されており、シート底面33の円形開口33aの中心から左方向にオフセットした線上に、2つの円形開口33bが形成されている。
背当て部32の前面には、左右が前方に向かって湾曲してヘッドレストの機能を果たすヘッドプレート60が取り付けられる(図2)。ヘッドプレート60は、後述するように、背当て部32に対して上下方向に摺動させることによって、位置を調節することができる。なお、ヘッドプレート60は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成されるが、これに限定されない。
図6、図8、図9及び図10を参照しながら、チャイルドシート1の係合部及び被係合部について説明する。図8は、チャイルドシート1の係合部及び被係合部の斜視図であり、図9は、チャイルドシート1の横方向(左右方向)の中央を通る縦断面図であり、図10は、チャイルドシート1の横方向の中央よりも左寄りの拡大縦断面図である。
シート本体30の下面、すなわちシート底面33の外側面には、被係合部として円盤状の下部被係合ガイド部材40が一体的に取り付けられている。下部被係合ガイド部材40の径は、円筒部31bの径よりも大きい。特に図10を参照すると、下部被係合ガイド部材40下面の周縁近傍には、環状の係合溝40aが形成されている。下部被係合ガイド部材40の係合溝40aには、係合部として下部接続ロッド41の一端が下方から係合している。すなわち、下部接続ロッド41は、その一方の端部において、フック状に上方に向かって折り曲げられた係合フック41aを有している。なお、下部被係合ガイド部材40は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成されるが、これに限定されない。
下部接続ロッド41の他方の端部41b(図10)は、ロッド接続部材42の下部に接続されている。ロッド接続部材42は、基部21の内部空間の後方上部の角部に適合した形状に、例えばポリアセタール等を一体成型することにより形成されるが、これに限定されない。図9に示されるように、後述するリクライニング機構によって下部被係合ガイド部材40が最も後方に配置された状態では、ロッド接続部材42は、基部21の内壁に当接し、内部空間の後方上部の角部に嵌合する。その結果、リクライニング機構によって下部被係合ガイド部材40を最も後方に移動させる場合、すなわちシート本体30をより直立した状態にリクライニング動作させる場合に、ロッド接続部材42が基部21の内壁と当接し、シート本体30の移動時の衝撃を吸収する緩衝材の役割を果たす。また、下部接続ロッド41は、この状態で基部21の内壁に干渉しないように、内壁形状に沿って屈曲して形成されている。
ロッド接続部材42の上部の左右には、係合部として一対の上部接続ロッド43が接続されている。上部接続ロッド43の各々は、受台20の起立部22に形成されたガイド溝22bを介して外部へ突出している(図10)。外部へ突出した上部接続ロッド43の部分は、上方に延びる直線部分と、直線部分の先端から前方に向かって湾曲した半円部分と、半円部分の先端から僅かに下方に延びる直線部分とから形成されている。すなわち、外部へ突出した上部接続ロッド43の部分は、アルファベットの「J」を上下逆さにしたようなフック状を呈している。
シート本体30の円錐台部31aの外側の円錐面には、被係合部として環状の上部被係合ガイド部材44が取り付けられている。上部被係合ガイド部材44は、その環状の形状に沿って上方に延びる円筒状のガイド壁44aを有している。図8に示されるように、上部被係合ガイド部材44のガイド壁44aには、上部接続ロッド43の各先端が、上方から係合している。また、上部被係合ガイド部材44の外周面の下部には、環状に形成された凸曲面である衝突支持面44bが形成されている。上部被係合ガイド部材44は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成されるが、これに限定されない。
なお、上部被係合ガイド部材44は、上部接続ロッド43とガイド壁44aとの係合において、ガイド壁44aを補強するため、炭素鋼等の金属から形成される補強部材44cを有していてもよい。補強部材44cは、ガイド壁44aの全周に亘って配置されてもよく、図6に示されるように、特にシート本体30の前向き状態及び後向き状態において係合するように配置してもよい。
上部被係合ガイド部材44は、ガイド壁44aが外部に露出しないように、環状のカバー部材45によって上方から覆われている(図6)。上部被係合ガイド部材44は、カバー部材45によって覆われながら回転可能である。カバー部材45には、カバー部材45を介して上部接続ロッド43の各先端が上部被係合ガイド部材44のガイド壁44aに係合できるように、対応する位置に貫通孔45aが形成されている。また、上部接続ロッド43が外部に露出しないように、上部接続ロッド43に対して保護カバー46が上方から被せられる。保護カバー46は、カバー部材45に取り付けられている。なお、図10において、カバー部材45及び保護カバー46は、省略して描かれている。
カバー部材45は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン等を一体成型することにより形成されるが、これに限定されない。また、保護カバー46は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成されるが、これに限定されない。下部接続ロッド41及び上部接続ロッド43は、炭素鋼等の金属から形成されるが、これに限定されない。
図6、図9、図10及び図11を参照しながら、リクライニング機構及び回転機構に関する内部機構ついて詳細に説明する。図11は、チャイルドシート1のシート本体30の内部の拡大斜視図である。シート本体30のシート下部31の上部は、乳幼児が着座する座部を形成するシートプレート34で覆われており、シートプレート34は、その下方の内部空間35を画成している。
シート本体30のシート底面33の中央の円形開口33aに対応する下部被係合ガイド部材40の中央には、同一径の円形開口40bが形成されている(図6)。シート底面33の円形開口33a及び下部被係合ガイド部材40の円形開口40bには、シート本体30の内部空間35側から円柱状のリクライニングロックピン50が挿入される。下部被係合ガイド部材40の下面から下方に突出したリクライニングロックピン50の先端は、受台20の円筒曲面25に形成されたロック穴25aのいずれか1つに挿入され、係合する。
さらに、シート本体30のシート底面33の2つの円形開口33bに対応する下部被係合ガイド部材40の円形開口40bの中心から左方向にオフセットした線上に、2つの円形開口40cが形成されている(図6)。シート底面33の2つの円形開口33b及び下部被係合ガイド部材40の2つの円形開口40cには、シート本体30の内部空間35側からU字型の回転ロックピン51の各先端が挿入される。下部被係合ガイド部材40の下面から下方に突出した回転ロックピン51の各先端は、受台20の円筒曲面25に形成されたロック溝25bの一方に挿入され、係合する。
このため、シート底面33の円形開口33aの中心から2つの円形開口33bの整列する線のオフセット量及び下部被係合ガイド部材40の円形開口40bの中心から2つの円形開口40cの整列する線のオフセット量と、受台20の円筒曲面25に形成されたロック溝25bの中央線Hからのオフセット量とは等しく設定される。
特に図11を参照すると、シート本体30のシート底面33の内側面、すなわち内部空間35の底面には、上方に向かって突出し且つ矩形の横断面を有する第1ガイド突起33c及び第2ガイド突起33dが形成されている。第1ガイド突起33cは右側に配置され、第2ガイド突起33dは左側に配置される。第1ガイド突起33c及び第2ガイド突起33dは、上方へ向かってやや先細となっている。
第1ガイド突起33cには、第1ピン保持部材52が上下方向に摺動可能に取り付けられ、第2ガイド突起33dには、第2ピン保持部材53が上下方向に摺動可能に取り付けられている。すなわち、第1ピン保持部材52には、第1ガイド突起33cを受容する相補的な矩形開口が形成され、第2ピン保持部材53には、第2ガイド突起33dを受容する相補的な矩形開口が形成されている。第1ピン保持部材52は、上述したリクライニングロックピン50を保持し、第2ピン保持部材53は、上述した回転ロックピン51を保持している。第1ピン保持部材52はコイルスプリング54aによって下方へ付勢され、第2ピン保持部材53はコイルスプリング54bによって下方へ付勢されている。
シート本体30のシート下部31の上面の前方部分には、操作機構が取り付けられている。操作機構は、操作台55を有している。操作台55上の右側には、第1操作部としてリクライニング機構を操作するリクライニング操作レバー55aが、前後方向に摺動可能に取り付けられている。また、操作台55上の左側には、第2操作部として回転機構を操作する回転操作レバー55bが、前後方向に摺動可能に取り付けられている。第1ピン保持部材52は、斜め上方へ延びる操作ロッド56aを介してリクライニング操作レバー55aに接続されている。また、第2ピン保持部材53は、斜め上方へ延びる操作ロッド56bを介して回転操作レバー55bに接続されている。
リクライニング操作レバー55aを前方へ引くと、操作ロッド56aを介して、第1ピン保持部材52が、第1ガイド突起33cに沿って上方へ摺動する。それによって、第1ピン保持部材52によって保持されたリクライニングロックピン50も上方へ移動し、リクライニングロックピン50の先端とロック穴25aとの係合が、解除される。その結果、シート本体30のリクライニング動作が可能な状態となる。
リクライニング操作レバー55aは、第1ピン保持部材52を下方へ付勢するコイルスプリング54aの付勢力によって、操作ロッド56aを介して後方位置へ付勢されている。従って、リクライニング動作後、リクライニング操作レバー55aを解放すると、コイルスプリング54aの付勢力によって、リクライニング操作レバー55aが後方位置へ復帰し、リクライニングロックピン50の先端もロック穴25aに再び挿入される。
他方、回転操作レバー55bを前方へ引くと、操作ロッド56bを介して、第2ピン保持部材53が、第2ガイド突起33dに沿って上方へ摺動する。それによって、第2ピン保持部材53によって保持された回転ロックピン51も上方へ移動し、回転ロックピン51の各先端とロック溝25bとの係合が、解除される。その結果、シート本体30の回転動作が可能な状態となる。
回転操作レバー55bは、第2ピン保持部材53を下方へ付勢するコイルスプリング54bの付勢力によって、操作ロッド56bを介して後方位置へ付勢されている。従って、回転動作後、回転操作レバー55bを解放すると、コイルスプリング54bの付勢力によって、回転操作レバー55bが後方位置へ復帰し、回転ロックピン51の各先端もロック溝25b内に再び挿入される。
図12及び図13を参照しながら、チャイルドシート1のリクライニング機構及び回転機構について説明する。図12は、チャイルドシート1のリクライニング機構及び回転機構を説明する図であり、図13は、チャイルドシート1のリクライニング機構及び回転機構を説明する別の図である。図12及び図13では、各構成が模式的に示されている。
上述したように、シート本体30は、下部被係合ガイド部材40と上部被係合ガイド部材44とカバー部材45とを有している。そして、ロッド接続部材42を介して接続された下部接続ロッド41及び上部接続ロッド43が、下部被係合ガイド部材40及び上部被係合ガイド部材44間を係合しながら連結している。一対の上部接続ロッド43の各々が受台20の対応するガイド溝22bをそれぞれ貫通することによって、さらにはロッド接続部材42が受台20の斜面22aの内側面に当接することによって、下部接続ロッド41及び上部接続ロッド43の前後方向の摺動が案内されると共に横方向の移動が規制される。
図12では、シート本体30が、3つのロック穴25aのうち後方のロック穴25aに対応するリクライニング位置にある。すなわち、シート本体30は、シート本体30から下部被係合ガイド部材40を介して下方に突出するリクライニングロックピン50をロック穴25aと係合させることで、リクライニング位置が固定される。
さらに、乳幼児の着座時の荷重に耐えられるように、シート本体30のシート下部31の外面が受台20の受台支持面24に支持される。下部被係合ガイド部材40と受台20の円筒曲面25とは、僅かばかり離間して配置される。シート下部31の上記外面は、シート本体30のリクライニング動作中及び回転動作中において、受台20の受台支持面24上で摺動し且つ支持される。また、下部被係合ガイド部材40は、シート本体30のリクライニング動作中及び回転動作中において、受台20の円筒曲面25とは僅かばかり離間している。言い換えると、シート本体30の上記外面は、受台支持面24と常に当接し且つ支持されるように、大きさや形状等が決定され、下部被係合ガイド部材40は、円筒曲面25とは僅かばかり離間するように大きさや形状等が決定される。
シート本体30は、受台20の受台支持面24に形成された凸曲面状の突起24aと点状に当接することによって、摩擦抵抗が軽減され、スムーズに摺動することができる。
この状態で、図示しない回転ロックピン51とロック溝25bとの係合を解除することによって、リクライニングロックピン50の中心軸線と略一致する回転軸線R周りのシート本体30の回転運動が可能となる。なお、リクライニングロックピン50及び回転ロックピン51は、炭素鋼等の金属から形成されるが、これに限定されない。
シート本体30を受台20に対して回転させると、シート本体30に取り付けられた下部被係合ガイド部材40は、下部接続ロッド41の係合フック41aを環状の係合溝40aに係合させた状態でシート本体30と共に回転する。このとき、下部接続ロッド41は、上述したように横方向の移動が規制されていることから、受台20に対して相対的に静止している。従って、下部接続ロッド41の係合フック41aは、下部被係合ガイド部材40の環状の係合溝40a内を係合しながら相対的に摺動する。
また、シート本体30を受台20に対して回転させると、シート本体30に取り付けられた上部被係合ガイド部材44は、上部接続ロッド43の各先端を円筒状のガイド壁44aに常に係合させた状態でシート本体30と共に回転する。このとき、上部接続ロッド43は、受台20に対して相対的に静止している。従って、上部接続ロッド43の各先端は、上部被係合ガイド部材44の円筒状のガイド壁44aに沿って常に係合しながら相対的に摺動する。
上部被係合ガイド部材44を覆っているカバー部材45及び上部接続ロッド43の保護カバー46は、上部接続ロッド43と共に受台20に対して相対的に静止している。すなわち、カバー部材45は、シート本体30の回転に伴う上部被係合ガイド部材44の回転の際に、上部被係合ガイド部材44を覆った状態を維持し、カバー部材45自体は回転しない。
図13は、図12に示された後方のリクライニング位置から前方のリクライニング位置まで、シート本体30を受台20に対してリクライニングさせた状態を示している。すなわち、図12に示された状態から、リクライニングロックピン50と後方のロック穴25aとの係合を解除し、シート本体30を受台支持面24に沿って前方へ摺動させる。次いで、リクライニングロックピン50を前方のロック穴25aと係合させることで、リクライニング位置が固定される。
シート本体30の下部被係合ガイド部材40及び上部被係合ガイド部材44間を連結している下部接続ロッド41及び上部接続ロッド43は、シート本体30のリクライニング動作に追従して、受台20のガイド溝22bに沿って前後方向に摺動する。従って、シート本体30は、受台20に対してリクライニング動作及び回転動作をするが、ロッド接続部材42を介して接続された下部接続ロッド41及び上部接続ロッド43は、シート本体30の下部被係合ガイド部材40及び上部被係合ガイド部材44と常に係合状態を維持しながら、すなわちシート本体30との相対的な位置関係を維持しながら連結している。
なお、当然のことながら、シート本体30が、中央のロック穴25aに対応するリクライニング位置となるようにしてもよい。シート本体30が、中央のロック穴25aに対応するリクライニング位置及び前方のロック穴25aに対応するリクライニング位置にある場合においても、リクライニングロックピン50の中心軸線である回転軸線R周りのシート本体30の回転運動が可能となる。
図14及び図15を参照しながら、チャイルドシート1のリクライニング動作及び回転動作について説明する。図14は、チャイルドシート1のリクライニング動作を説明する図であり、図14の(a)〜(d)は、リクライニング動作を時系列的に示している。また、また、図15は、チャイルドシート1の回転動作を説明する図であり、図15の(a)〜(d)は、回転動作を時系列的に示している。
図14及び図15の各図において、3つのロック穴25aと、2つのロック溝25bと、リクライニングロックピン50と、回転ロックピン51と、リクライニング操作レバー55aと、回転操作レバー55bとが模式的に示されている。また、凹曲面である円筒曲面25は、水平面として模式的に示されている。図14及び図15の各図において、左側をチャイルドシート1の前側とし、右側をチャイルドシート1の後側とする。また、図14及び図15の各図において、上の図は、上方からの視点を下の図の線X−Xにおける断面図を含めて模式的に示しており、下の図は、側方からの視点を上の図の線Y−Y、すなわち左側のロック溝25bに沿った線における断面図を含めて模式的に示している。
リクライニング動作について説明すると、図14(a)は、シート本体30の前向き状態であり、リクライニング操作レバー55a及び回転操作レバー55bを操作していない状態である。リクライニングロックピン50は、3つのうちの中央のロック穴25aと係合しており、回転ロックピン51は、左側のロック溝25bと係合している。図14(b)は、リクライニング操作レバー55aを前方へ引いた状態であり、リクライニングロックピン50が上方へ移動し、ロック穴25aとの係合が解除された状態を示している。
図14(c)は、リクライニング操作レバー55aを前方へ引いた状態のまま、シート本体30を前方へ摺動させた状態を示している。すなわち、この動作は、シート本体30を受台20に対してリクライニングさせるリクライニング動作である。リクライニング動作の間、回転ロックピン51は、ロック溝25bと係合している。図14(d)は、シート本体30を前方へ摺動させた後に、すなわちリクライニングさせた後に、シート本体30を受台20に対して固定させる動作である。すなわち、リクライニング操作レバー55aを解放することで、リクライニング操作レバー55aが後方位置へ復帰し、リクライニングロックピン50が、前方のロック穴25aに挿入され、係合する。
回転動作について説明すると、図15(a)は、シート本体30の前向き状態であり、リクライニング操作レバー55a及び回転操作レバー55bを操作していない状態である。リクライニングロックピン50は、前後方向に整列した3つのうちの中央のロック穴25aと係合しており、回転ロックピン51は、左側のロック溝25bと係合している。図15(b)は、回転操作レバー55bを前方へ引いた状態であり、回転ロックピン51が上方へ移動し、ロック溝25bとの係合が解除された状態を示している。
図15(c)は、リクライニング操作レバー55aを前方へ引いた状態のまま、シート本体30をリクライニングロックピン50の回転軸線R周りに180度回転させた状態を示している。すなわち、この動作は、シート本体30を受台20に対して回転させ、シート本体30を前向き状態から後向き状態へと変更する回転動作である。回転動作の間、リクライニングロックピン50は、ロック穴25aと係合している。図15(d)は、シート本体30を回転させた後に、シート本体30を受台20に対して固定させる動作である。すなわち、回転操作レバー55bを解放することで、回転操作レバー55bが後方位置へ復帰し、回転ロックピン51が、他方のロック溝25bに挿入され、係合する。
チャイルドシート1のリクライニング機構及び回転機構についてまとめると、チャイルドシート1は、係合部として下部接続ロッド41及び上部接続ロッド43を有する受台20と、係合部と係合する被係合部として下部被係合ガイド部材40及び上部被係合ガイド部材44を有するシート本体30とを有し、シート本体30のリクライニング位置の変更及びシート本体30の回転のときに、係合部及び被係合部間の係合が維持されている。すなわち、これら部材の相対的な位置関係は、常に一定である。従って、チャイルドシート1は、リクライニング機構及び回転機構を有する従来のチャイルドシートに較べ、部品数が少なく且つ部品が小型化された単純な機構で、受台20に対するシート本体30の回転位置にかかわらずシート本体をリクライニングさせることができる。
また、チャイルドシート1において下部、すなわちシート下部31及び受台20の起立部22の下部にリクライニング機構及び回転機構が配置されていることから、シート本体30のリクライニング動作時及び回転動作時において、シート本体30が受台20に対して安定して支持され、結果として安定して操作することが可能となる。また、受台20の起立部22の下部にリクライニング機構及び回転機構が配置されていることから、受台20の起立部22の上部を自由に利用することが可能となる。
さらに、シート本体30のリクライニング動作時及び回転動作時において、リクライニング機構及び回転機構が外部に露出していないことから、指等を挟むことのないことから安全性に優れており、また、意匠性にも優れている。
また、チャイルドシート1は、リクライニングロックピン50及び回転ロックピン51がそれぞれ別体に形成されると共に独立して操作されることから、例えば特許文献1に記載のチャイルドシートのように、単一のロックピンの突出量に応じてリクライニング動作及び回転動作を選択する場合に較べて、単純な機構で、確実で安定した操作をすることが可能となる。さらに、所望の操作に応じて突出量の変更を行う必要が無いことから、特許文献1に記載のチャイルドシートと較べて、リクライニング機構及び回転機構の各部品の加工精度や組み立て精度が厳しくはなく、結果として部品コストや製造コストを低減できる。
なお、リクライニング動作及び回転動作の間に、受台20及びシート本体30間の係合が維持される限り、係合部及び被係合部は任意に構成できる。例えば、受台20が下部被係合ガイド部材40及び上部被係合ガイド部材44のいずれか一方のみを有し、シート本体30が対応する下部接続ロッド41及び上部接続ロッド43の一方を有するようにしてもよい。下部被係合ガイド部材40は、円盤状ではなく、環状又は多角形状であってもよい。下部被係合ガイド部材40及び上部被係合ガイド部材44は、シート本体30と一体的に形成してもよい。
下部被係合ガイド部材40及び上部被係合ガイド部材44間の連結部材として、下部接続ロッド41及びロッド接続部材42及び上部接続ロッド43は、一体的に形成してもよい。さらに、下部接続ロッド41及びロッド接続部材42及び上部接続ロッド43は、シート本体30のチャイルドシート1における後方、すなわち受台20の起立部22側で下部被係合ガイド部材40及び上部被係合ガイド部材44と係合していたが、シート本体30のリクライニング動作に応じた前後動が可能な限りにおいて、その他の配置であってもよい。
受台20の円筒曲面25には、3つのロック穴25aが形成されていたが、2つ又は4つ以上であってもよい。すなわち、ロック穴25aの数に対応するリクライニング位置は、任意の数に設定でき、これらは等間隔でなくてもよい。また、受台20の円筒曲面25には、中央線Hに対して平行に一対のロック溝25bが形成されていたが、中央線Hに対して、任意の角度、例えば直交するロック溝が形成されるようにしてもよい。すなわち、シート本体30の前向き状態及び後ろ向き状態に加えて、乳幼児が横方を向く横向き状態とすることができるようにしてもよい。この横向き状態においても、横方向にロック穴を複数設けることによって、リクライニング動作が可能となるようにしてもよい。
ところで、上述したように、チャイルドシート1は、リクライニング操作レバー55aを引くことでシート本体30をリクライニングさせることができるようになり、回転操作レバー55bを引くことでシート本体30を回転させることができるようになる。仮にこれらのリクライニング動作及び回転動作を同時に行うことができるとなると、シート本体30が複雑で予測不能な軌跡を描き、操作者に衝突する可能性がある。そこで、チャイルドシート1は、リクライニング動作及び回転動作が同時に行えないように構成している。
図16乃至図18を参照しながら、リクライニング操作レバー55a及び回転操作レバー55bの操作機構について説明する。図16は、チャイルドシート1の操作機構を説明する図であり、図17は、チャイルドシート1の操作機構を説明する別の図であり、図18は、チャイルドシート1の操作機構を説明する別の図である。図16乃至図18において、上がシート本体30の後方で、下がシート本体30の前方である。
操作スイッチ57は、厚板状の部材であり、湾曲した側面を有する形状、例えば三日月形又はブーメラン形に形成されている。操作スイッチ57は、その中央部分において固定ピン57aによって、固定ピン57a周りに回転可能に操作台55に取り付けられている。操作スイッチ57の両端部分の湾曲の外側、すなわち後側の側面には、シート本体30の前方に向かって外方へ拡がる当接面57bが形成されている。なお、操作スイッチ57は、リクライニング操作レバー55a及び回転操作レバー55bによって上方から覆われているため、外部より視認できない。
操作ロッド56aは、ロッド保持部材58aによって、リクライニング操作レバー55aに連結され、操作ロッド56bは、ロッド保持部材58bによって、回転操作レバー55bに連結されている。すなわち、操作ロッド56aの端部が、上方に屈折、すなわち図において紙面に対して垂直に手前方向に屈折し、対応してL字型に形成されたロッド保持部材58aが、上方から嵌合、すなわち図において紙面に対して垂直に手前方向から嵌合することによって連結されている。ロッド保持部材58bについても同様である。なお、ロッド保持部材58a及びロッド保持部材58bは、リクライニング操作レバー55a及び回転操作レバー55bと一体にそれぞれ形成されてもよい。
次に、操作スイッチ57の動作について説明する。図16に示された操作機構の状態から、リクライニング操作レバー55aが前方、すなわち図において下方へ引かれると、操作ロッド56aと共にロッド保持部材58aが前方へ移動する。このとき、ロッド保持部材58aの先端、すなわち前端部分は、まず操作スイッチ57の当接面57bに当接し、操作スイッチ57を固定ピン57a周りに回転させる。リクライニング操作レバー55aがさらに引かれると、図17に示されるように、リクライニング操作レバー55aが操作台55のストッパ部55cに当接し、停止する。
この状態で、回転した操作スイッチ57の当接面57bは、ロッド保持部材58aの側面に当接すると共に、他方のロッド保持部材58bの先端、すなわち前端部分は、操作スイッチ57の他方の当接面57bに当接する。従って、回転操作レバー55bの移動は、ロッド保持部材58bの先端が、操作スイッチ57の当接面57bに当接することによって阻止される。言い換えると、回転した操作スイッチ57の当接面57bがロッド保持部材58aの側面に当接した状態で、他方のロッド保持部材58bの前端部分が操作スイッチ57の他方の当接面57bに当接するように、操作スイッチ57の三日月形又はブーメラン形の形状が決定される。
リクライニング操作レバー55aを引いた状態(図17)では、回転操作レバー55bを引くことができず、逆に、回転操作レバー55bを引いた状態(図18)では、リクライニング操作レバー55aを引くことができない。前方に引いたリクライニング操作レバー55a又は回転操作レバー55bの一方を、元の位置に復帰させると、リクライニング操作レバー55a又は回転操作レバー55bは前方へ引くことが可能となる。従って、こうした操作機構によれば、単純な機構で、リクライニング機構及び回転機構が同時に動作することが防止される、すなわち二者択一の操作を安全に実現することができる。
また、チャイルドシート1は、シート本体30のリクライニング及び回転のための操作を、リクライニング操作レバー55a又は回転操作レバー55bを単に引くことによって行うことができるため、片手での操作も可能であり、他方の手を自由に使うことが可能となる。また、操作機構を片手で操作したとしても、安定して操作をすることが可能となる。
なお、上述したように、リクライニング操作レバー55a又は回転操作レバー55bの一方を引いて、操作スイッチ57がロッド保持部材58aの側面に当接するまでロッド保持部材58aを摺動させなくても、ロッド保持部材58aの先端が操作スイッチ57を回転させた時点で、リクライニング操作レバー55a又は回転操作レバー55bの他方の摺動が規制されるようにしてもよい。すなわち、操作スイッチ57は、単なる矩形の部材等であってもよい。なお、上述した操作スイッチ57を有する操作機構は、チャイルドシートの分野のみならず、二者択一の操作を安全に実現するというニーズの存在するその他の分野においても適用可能である。
ところで、特に図3を参照すると、上述したように、受台20の起立部22の上部には、矩形の開口26が形成されている。すなわち、チャイルドシート1では、リクライニング機構及び回転機構を、シート下部31及び受台20の起立部22の下部に配置したことによって、受台20の起立部22の上部に開口26を形成することができる。開口26を、チャイルドシート1を運搬する際の持ち手として利用することができる。
また、開口26には、図4に示されるように、様々な機能を有する機構又は装置90を搭載することができる。それによって、受台20が、シート本体30の支持機能以外の機能を有することができる。特にシート本体30の後向き状態において、例えば、カメラを搭載して静止画又は動画を撮影し、着座している乳幼児の様子を携帯電話やカーナビゲーションシステム等を介して保護者等が観察できるようにしてもよい。また、スクリーンを搭載して、乳幼児が映像を楽しむことができるようにしてもよい。さらに、スピーカーを搭載して、乳幼児が音声を楽しむようにしてもよい。さらに、扇風機や空調装置、照明装置等を搭載してもよい。さらに、プラズマ放電等によって空気中にイオンを放出するイオン発生装置を搭載してもよい。こうしたイオン発生装置によれば、空気の消毒、除塵、殺菌、有機物分解及び脱臭といった空気清浄効果や、乳幼児や保護者の髪や肌のケアを対象としたヘアケア及びフェイスケアの効果等が期待できる。また、これら装置等を簡単に交換可能にするために、これら装置等が取付具を介して搭載してもよい。
開口26に搭載される電気機器を使用するために、受台20の内部に電池を交換可能に配置してもよく、又は車両のシガーソケットを電源として利用してもよい。電池やシガーソケット等の電源から電気機器までの電源ケーブルは、シート本体30のリクライニング動作及び回転動作に干渉しないように、チャイルドシート1の下面及び背面を通るように配線するか、又は、受台20の内部を通るようにして配線することが望ましい。
なお、当然のことながら、開口26は、矩形以外の形状、例えば円形であってもよい。また、開口26は、後方に向かって貫通していても単なる凹部であってもよい。さらに、上述したような開口26は、受台に対するシート本体のリクライニング動作及び回転動作が可能なタイプのチャイルドシートのみならず、シート本体が受台に固定されているタイプやシート本体が受台に対して着脱可能に取り付けられているタイプにも適用可能である。
ところで、チャイルドシートは、衝突時に車両に作用する衝撃から乳幼児を保護するというその目的から、高い耐衝撃性能が求められる。耐衝撃性能は、衝突直後の車両のシートに対するチャイルドシートの変位量や、衝突直後の変位による反動に起因した不規則なチャイルドシートの運動の変位量等によって、検証される。高い衝撃性能を実現するために、チャイルドシートは、車両のシートにしっかりと固定されていることが望ましい。チャイルドシートの固定には、通常、車両のシートに備わるシートベルト装置のシートベルトが用いられる。車両のシートに備わるシートベルト装置は、シートベルトと、シートベルトが差し込まれているタングプレートを備えたタングと、タングプレートを脱着可能なバックルとを有している。
これに関して図4を参照すると、チャイルドシート1は、上述したように、受台20の基部21の左右の後部にベルト係合突起27が形成されている。ベルト係合突起27は、受台20を車両のシートに取り付けた状態で、シートベルト装置のタング又はバックル91と後方側から係合するような位置に配置される。言い換えると、車種によって異なるタング又はバックル91の位置にも対応できるように、ベルト係合突起27は、或る程度の長さに亘って形成されている。なお、ベルト係合突起27は、シートベルト装置のタング又はバックル91と係合することができる限りにおいて、溝状のベルト係合溝としてもよい。
シートベルト装置のタング又はバックル91は、通常、車両のシートの座面近傍に配置され、シートベルト装置のシートベルトと較べて剛性が高い。従って、こうしたシートベルト装置のタング又はバックル91を、チャイルドシート1の受台20、特に受台20の下部に形成されたベルト係合突起27又はベルト係合溝に係合させることによって、よりしっかりと受台20を固定することが可能となる。その結果、高い耐衝撃性能が実現される。
なお、ベルト係合突起27又はベルト係合溝は、タング又はバックル91がずれたり外れたりすることなくより確実に係合するように、タング又はバックル91が係合する、受台20及びベルト係合突起27間の凹部又はベルト係合溝の長さ方向に垂直な断面形状が、鋭角を画成するように形成されていることが望ましい。また、ベルト係合突起27又はベルト係合溝は、タング又はバックル91ではなく、シートベルト装置のシートベルトが係合するようにしてもよい。この場合でも、チャイルドシート1の受台20の下部を固定することによって、従来のチャイルドシートよりもしっかりと固定することが可能となる。さらに、ベルト係合突起27は、受台20と別体に形成されてもよい。
上述したようなベルト係合突起27又はベルト係合溝は、受台に対するシート本体のリクライニング動作及び回転動作が可能なタイプのチャイルドシートのみならず、シート本体が受台に固定されているタイプやシート本体が受台に対して着脱可能に取り付けられているタイプにも適用可能である。
チャイルドシート1は、受台20に対するシート本体30の変位量を抑制し、より高い耐衝撃性能を実現するために、衝撃に対する複数の支持点を有している。すなわち、例えば車両が正面から物体に衝突した場合に、チャイルドシート1全体は前方向の慣性力を受ける。このとき、受台20は車両のシートベルトによって固定されているのに対し、シート本体30は車両のシートベルトによって固定されていない。従って、シート本体30は前方向へ変位しようとするが、支持点においてシート本体30が受台20とが当接し支持されることによって、シート本体30の変位量が抑制される。
これに関して図10を参照すると、チャイルドシート1は、上述したように、上部接続ロッド43の各先端が上部被係合ガイド部材44と係合していることから、支持点Aを形成する。すなわち、車両の衝突によってチャイルドシート1全体が前方向の慣性力を受けた場合に、車両のシートに直接固定されている受台20側に配置された上部接続ロッド43の各先端が、シート本体30側に配置された上部被係合ガイド部材44を後方に向かって支持している。その結果、車両が物体に衝突した場合に、受台20に対するシート本体30の前方への変位が抑制される。
同様に、シート本体30に取り付けられた上部被係合ガイド部材44の外周面に形成された衝突支持面44bと、受台20の前端部内側の支持壁面28aとが、支持点Bを形成している。また、シート本体30に取り付けられた下部被係合ガイド部材40の環状の上面40d(図8)と、受台20の本体受容開口23を画成する支持壁23aの下端部とが、支持点Cを形成している。支持点Cは、図10においては、受台20の支持壁23aの下端部のうちの特に後端部分及び下部被係合ガイド部材40の上面40dの後端部分である。
支持点Cは、シート本体30のリクライニング位置によっては、受台20の環状の支持壁23aの下端部のうちの左右部分及び下部被係合ガイド部材40の上面40dの左右部分であってもよい。すなわち、下部被係合ガイド部材40の上面40dが、いずれのリクライニング位置においても受台20の支持壁23aの下端部と支持点Cを構成するように、下部被係合ガイド部材40の径が、受台20の本体受容開口23の横方向の幅L(図5)よりも大きく形成されている。それによって、チャイルドシート1において、本体受容開口23に収容されたシート本体30が受台20から抜けることも、防止される。
チャイルドシート1が、支持点A、B、Cを有することによって、特に受台20に対するシート本体30の変位が抑制され、すなわち、受台20に対するシート本体30の前方への移動が規制される。その結果、より高い耐衝撃性能を実現することができる。また、支持点A、B、Cは、チャイルドシート1のシート下部31及び受台20の起立部22の下部に配置されていることから、受台20はシート本体30をより安定的に支持できる。また、受台20がシート本体30を複数の支持点A、B、Cで支持することによって、衝撃が分散されることから、受台20及びシート本体30を形成する材料を、金属等から、より軽量な樹脂等に変更することができ、コストも削減できる。
なお、受台20とシート本体30とは、支持点において常に当接している必要はなく僅かばかり離間し、衝突時にのみ当接するようにしてもよい。また、チャイルドシート1は、1つの支持点Aのみを有するように構成してもよく、支持点A、B及びCのうちの2つの支持点を有するように構成してもよく、3つの支持点A、B及びCを有するよう構成してもよい。また、高い耐衝撃性能を実現するための支持点は、上述した3つの部分に限定されない。すなわち、受台20と当接するシート本体30の部分は、上部被係合ガイド部材44を含む前方部分及び後方部分、さらにこれら前方部分及び後方部分よりも下方の下部被係合ガイド部材40を含む下方部分において、任意に構成できる。
図19乃至図22を参照しながら、幼児ベルト70(図1)の高さ調節機構について説明する。図19は、チャイルドシート1の背面の拡大斜視図であり、図20は、チャイルドシートの幼児ベルトの高さ調節機構の一部の分解組立図であり、図21は、チャイルドシート1の幼児ベルト70の高さ調節機構を説明する図であり、図22は、チャイルドシート1の幼児ベルトの高さ調節機構を説明する別の図である。なお、図19において、後述する背面パネル68は、省略して描かれている。
チャイルドシート1は、チャイルドシート1に対して乳幼児を安全に拘束するために、車両のシートに備わるシートベルトに相当する幅広の幼児ベルト70を有している。幼児ベルト70は、シート本体30の背当て部32前面の左右にそれぞれ配置され、乳幼児の胴体正面で左右の幼児ベルト70が締結される。このため、幼児ベルト70は、シート本体30の背当て部32の後方から、背当て部32を貫通して前方へ延在し、着座面、すなわちシート下部31を貫通して下方へ延在し、シート下部31の下方の部分で固定される。
シート本体30の着座面から幼児ベルト70が貫通する背当て部32の部分の位置、すなわち幼児ベルト70の高さは、乳幼児の座高に応じて調節する必要がある。従って、チャイルドシート1は、幼児ベルト70の高さを適切に調節するために、幼児ベルト70の高さ調節機構を有している。
そのため、シート本体30の背当て部32には、上下方向、すなわち高さ方向に延びる2つの開口36が形成されている。これら開口36は、背当て部32の中央の支柱部37を挟んで左右対称に形成されており、幼児ベルト70の高さとして必要とされる範囲に亘って高さ方向に形成されている。これら開口36を介して、背当て部32の前面に配置された上述したヘッドプレート60を含む移動部61が、背当て部32に対して高さ方向に摺動可能に取り付けられている。
移動部61は、背当て部32の前面に配置されたヘッドプレート60と、背当て部32の背面に配置され、ヘッドプレート60に対して背当て部32の2つの開口36を介して取り付けられた回転支持部材62と、回転支持部材62に対して取り付けられた第1係合部材63と、第1係合部材63に対して取り付けられた第2係合部材64とを有している。なお、図20において、回転支持部材62、第1係合部材63及び第2係合部材64は、背当て部32及びヘッドプレート60に対して、明確化のためやや拡大して描かれている。また、ヘッドプレート60は、スロット開口60aを介して幼児ベルト70を保持しているため、ベルト保持部材を構成するが、その他の部材によって保持するように構成してもよい。
ヘッドプレート60には、幼児ベルト70を挿通させるために、背当て部32の2つの開口36それぞれに対応する位置において、開口36と略同一の幅を有する2つのスロット開口60aが形成されている。スロット開口60aの各々の上方であってヘッドプレート60の中央寄りには、背当て部32の開口36を介して後方へ突出する取付部60bが形成されている。スロット開口60aの各々の下方であってヘッドプレート60の中央寄りには、背当て部32の開口36を介して後方へ突出する梁状の被係合梁60cが形成されている。被係合梁60cの各々の先端には、上下方向に貫通する係合孔60dが形成されている。
左のスロット開口60aの左側及び右のスロット開口60aの右側には、背当て部32の開口36を介して後方へ突出し、高さ方向に拡がる平板状の支持板60eが形成されている。支持板60eには、後述する円柱状の係合棒65を受容する凹部60fが形成されている。なお、スロット開口60aの各々のさらに下方には、ヘッドプレート60の高さ位置にかかわらず、常に開口36の各々に向かって開放する2つの通気開口60gが形成されている。
回転支持部材62は、ハウジング62aと、ハウジング62aから上方へ突出する矩形平板状の保護壁62bと、ハウジング62aから後方へ突出する平板状の第1ノブ62cとを有している。ハウジング62aが、背当て部32の各々の開口36を通って突出するヘッドプレート60の取付部60b(図19)に対して取り付けられることによって、ヘッドプレート60と回転支持部材62とが一体的に取り付けられる。このとき、ヘッドプレート60及び回転支持部材62間には、背当て部32の支柱部37が配置される。保護壁62bは、移動部61の操作時に操作者の手がシート本体30の支柱部37に当たってしまうことを防止する。
第1係合部材63は、箱状の本体部材63aを有する。本体部材63aの背面には、矩形の開口63bが形成されている。本体部材63aの上部は、第1係合部材63が横方向に延びる回転軸線周りに回転可能なように、回転支持部材62のハウジング62aに対して取り付けられている。また、本体部材63aの下部には、筒状の係合棒65が、左右外方に向かってそれぞれ延びている。係合棒65は、その内部において左右に亘って挿入された、補強のため補強棒65aを有している。補強棒65aは、炭素鋼等の金属から形成されるが、これに限定されない。
背当て部32の背面において、支柱部37と左の開口36の左側と右の開口36の右側とには、被係合曲面部38が形成されている。被係合曲面部38は、横方向に延びる円筒面の一部を含み且つ円柱状の係合棒65を受容しやすいように入口が広く形成された凹曲面が、横方向に整列し且つ高さ方向に等間隔に複数配置された構成を有している。
第1係合部材63の係合棒65を、被係合曲面部38の任意の横一列の凹曲面に係合させることによって、ヘッドプレート60を背当て部32に対して任意の高さ位置に調節することができる。このとき、被係合曲面部38に係合した第1係合部材63の係合棒65は、第1係合部材63と共に高さ方向に摺動するヘッドプレート60の支持板60eの凹部60f内にも受容される。また、第1係合部材63は、回転支持部材62の内部において、一体的に形成された左右のトーションスプリング63cによって、係合棒65が背当て部32の被係合曲面部38と係合する回転方向に付勢されている。
第2係合部材64は、第1係合部材63の本体部材63aの内部において上下方向に摺動可能な板状の部材であり、コイルスプリング64aによって下方に付勢されている。第2係合部材64の下端部には、第1係合部材63の本体部材63aから下方に突出する一対の係合ピン66が左右に形成されている。係合ピン66の各々は、ヘッドプレート60から開口36を介して突出する被係合梁60cの係合孔60dに挿入されることによって、ヘッドプレート60と係合する。また、第2係合部材64は、第1係合部材63の矩形の開口63bを介して後方に突出する平板状の第2ノブ64bを有している。
図21を参照しながら、幼児ベルト70の高さを調節する操作について説明する。図21は、上述したように、チャイルドシート1の幼児ベルト70の高さ調節機構を説明する図であり、シート本体30、すなわち移動部61の幅方向中央を通る略縦断面図である。まず、回転支持部材62の第1ノブ62cと、第2係合部材64の第2ノブ64bとを同時に把持し、第1ノブ62c方向に、第2ノブ64bを上方へ引き上げる(図21(a))。すなわち、第1係合部材63に対して、第2係合部材64を上方へ引き上げる。この動作は、例えば、第1ノブ62cの上面に親指を載せ、第2ノブ64bの下面に人差し指及び中指を当てて上方に引き上げることによって行う。第1係合部材63に対して第2係合部材64を上方へ引き上げることによって、第2係合部材64の係合ピン66と、ヘッドプレート60の被係合梁60cの係合孔60dとの係合が解除される。その結果、第1係合部材63が、回転支持部材62に対して回転可能な状態となる(図21(b))。
さらに、第2係合部材64の第2ノブ64bを上方へ引き上げる動作を継続すると、第1係合部材63が回転支持部材62に対して回転する。それによって、第1係合部材63の係合棒65と、背当て部32の背面の被係合曲面部38との係合が解除される。その結果、ヘッドプレート60が、背当て部32に対して高さ方向に摺動可能な状態となる(図21(c))。この状態で、幼児ベルト70がスロット開口60aに挿通されたヘッドプレート60を、背当て部32に対して高さ方向に摺動させることによって、幼児ベルト70を所望の高さにまで摺動させることが可能となる。
ここで、第1係合部材63に対して第2係合部材64を上方へ引き上げて係合ピン66の係合が解除された状態で、回転支持部材62に対して第1係合部材63を回転させると、第2係合部材64の第1係合部材63に対する摺動が規制される。これに関し、図22を参照しながら説明する。図22は、上述したように、チャイルドシート1の幼児ベルトの高さ調節機構を説明する別の図であり、第2係合部材64の側面を含む縦断面図である。図22において、第1係合部材63及び第2係合部材64以外の部材については、省略して描かれている。
図22を参照すると、第2係合部材64の側面には係止突起64c(図20も参照)が形成され、回転支持部材62のハウジング62aの内部には、係止凹部62dが形成されている。図22(a)の状態から、第1係合部材63に対して第2係合部材64を上方へ引き上げ(図22(b))、次いで、回転支持部材62に対して第1係合部材63を回転させる。それによって、第2係合部材64の係止突起64cが回転支持部材62の係止凹部62dに係合する(図22(c))。その結果、第2係合部材64の第1係合部材63に対する摺動が規制される。
従って、仮にこの状態で、第2係合部材64の第2ノブ64bの引き上げ力を弱めたとしても、コイルスプリング64aの付勢力によって係合ピン66が再び突出することはない。言い換えると、上方へ摺動させた第2係合部材64は、第1係合部材63の係合棒65が背当て部32の被係合曲面部38と係合した状態にない限り、第2係合部材64が元の位置に復帰しないように、安全に構成されている。
幼児ベルト70を所望の高さに摺動させた後に、その高さで幼児ベルト70を固定するためには、上述した一連の動作を逆に行えばよい。すなわち、回転支持部材62に対して第1係合部材63を回転させて、第1係合部材63の係合棒65を背当て部32の被係合曲面部38に係合させる。それによって、第2係合部材64の係止突起64c及び回転支持部材62の係止凹部62d間の係合が解除される。次いで、第1係合部材63に対して第2係合部材64を下方へ摺動させて、第2係合部材64の係合ピン66をヘッドプレート60の被係合梁60cの係合孔60dに係合させる。これらの動作は、トーションスプリング63c及びコイルスプリング64aに付勢力に助力されるので、楽に行うことが可能である。
上述した幼児ベルト70の高さ調節機構は、ヘッドプレート60に対する第2係合部材64の係合と、背当て部32に対する第1係合部材63の係合との2つの係合を有することから、仮にチャイルドシート1全体に衝撃が加わったとしても、両方の係合が外れてしまうことはない。すなわち、ヘッドプレート60に対する第2係合部材64の係合解除は上方向の移動によって行われ、背当て部32に対する第1係合部材63の係合解除は、回転方向、すなわち背当て部32から離間する方向の移動によって行われる。従って、これらの係合を解除するために必要な力の方向は、略直交している。
それにもかかわらず、ヘッドプレート60に対する第2係合部材64の係合解除、及び、背当て部32に対する第1係合部材63の係合解除は、第2係合部材64の第2ノブ64bを引き上げるという一連の連続的な動作によって行われる。すなわち、第2係合部材64の第2ノブ64bに対して常に同一の上方向に力を加えることによって、2段階の係合を解除できる。従って、上述した幼児ベルト70の高さ調節機構は、意図しない係合の解除はされ難く、意図した係合の解除は行い易いように構成されている。
また、背当て部32の中央に支柱部37を残しつつ、被係合曲面部38が形成されているので、背当て部32の強度が維持される。また、背当て部32の被係合曲面部38の凹曲面は、高さ方向に3列に整列して形成されているので、第1係合部材63の係合棒65が、横一列ではなく、互いに異なる高さの被係合曲面部38の凹曲面に係合されてしまうことが防止される。
なお、幼児ベルト70の高さ調節機構、すなわち移動機構は、図21を参照しながら説明したような動作によって操作可能である限り、任意に構成できる。すなわち、移動機構は、摺動方向と第2係合部材に加える力の方向が平行であり、まず第2係合部材の摺動によって係合が解除され、次いで、第1係合部材の回転によって係合が解除され、摺動可能状態になる限り、任意に構成してもよい。また、上述した高さ調節機構は、チャイルドシートの分野のみならず、移動機構の操作を安全に実現するというニーズの存在するその他の分野においても適用可能である。
ところで、幼児ベルト70は、上述した高さ調節機構によって、乳幼児の座高に応じて高さを適切に調節した後、乳幼児の体型に応じて幼児ベルト70の締め付け具合、すなわち背当て部32の前方へ延在する長さを適切に調節する必要がある。
図23及び図24を参照しながら、調節ベルト75を用いた幼児ベルト70の長さの調節について説明する。図23は、チャイルドシート1の最上位置の調節ベルト75を示す斜視図であり、図24は、チャイルドシート1の最下位置の調節ベルト75を示す斜視図である。図23及び図24は、チャイルドシート1のシート本体30を下方から見た斜視図である。
左右の幼児ベルト70は、シート本体30の背当て部32の後側で繋がっており、従って、1本のベルトで構成されている。また、幼児ベルト70は、シート本体30の背当て部32の後側で、1本の幅広の調節ベルト75の一端に連結している。すなわち、調節ベルト75の一端は、折り返されて、折り返された手前の部分と重ね合わせて縫合されている。その結果、調節ベルト75の一端には、ループ部75aが形成されている。ループ部75aの中に、幼児ベルト70が挿入される。従って、調節ベルト75のループ部75aは、幼児ベルト70との連結部を構成する。調節ベルト75は、車両のシートベルトにおいて通常用いられる素材、例えばポリエステル繊維を織ることによって形成されるが、これに限定されない。
調節ベルト75は、シート本体30の背当て部32に沿って下方へ延び、シート本体30の下端部近傍、すなわちシート下部31の円筒部31bの後側面の下部に形成された開口31c(図7も参照)から内部空間35内に入る。次いで、図9を参照しながら説明すると、シート本体30の内部空間35内に入った調節ベルト75は、内部空間35の底面に形成された上方に向かって突出するベルト支持突起33eによって、鋭角に屈曲して上方へ向かってシートプレート34の下面近傍まで延びる。
次いで、調節ベルト75は、内部空間35内を前方に向かってシート底面33に対して平行に延びた後、シート下部31の円筒部31bの前側面の上部に形成された開口31d(図7も参照)から内部空間35外へ出る。次いで、調節ベルト75は、シート下部31の円錐台部31aの前側面に形成された開口31eからシート下部31の上方へ向かって延びる。次いで、調節ベルト75は、シート下部31の上面の前方部分に取り付けられた操作機構の操作台55の後方に配置されたベルトアジャスター76を介してシート本体30の前方へ延びる(図1)。
ベルトアジャスター76は、公知の機構で調節ベルト75のロックと解除ができる。ベルトアジャスター76によって調節ベルト75がロックされると、ベルトアジャスター76に対して調節ベルト75を前後方向に動かすことができない。他方、ベルトアジャスター76のロックが解除されると、ベルトアジャスター76に対して調節ベルト75を前後方向に動かすことができるようになる。
次に、幼児ベルト70の長さ調節について説明する。幼児ベルト70の長さ調節は、ベルトアジャスター76のロックを解除した状態で行われる。背当て部32の前方へ延在する幼児ベルト70の長さを長くしたい場合には、背当て部32の前方へ延在する幼児ベルト70を前方又は上方へ引っ張ることによって長くすることができる。最終的に、シート本体30の背当て部32の後側に余分な部分が無くなるまで、幼児ベルト70を引っ張ることができる。このとき、背当て部32の前方へ延在する幼児ベルト70の長さは最大であり、幼児ベルト70に連結した調節ベルト75のループ部75aは最上位置にある(図23)。
調節ベルト75の最上位置とは、ループ部75aが、幼児ベルト70が挿通されるヘッドプレート60のスロット開口60aが形成されている部分に対応する位置である。従って、調節ベルト75の最上位置は、幼児ベルト70の高さ調節機構によって調節された高さに応じて変化する。
他方、背当て部32の前方へ延在する幼児ベルト70の長さを短くしたい場合には、シート本体30の前方へ延びる調節ベルト75の部分(図1)を前方へ引っ張ることによって短くすることができる。最終的に、幼児ベルト70に連結した調節ベルト75のループ部75aがシート下部31の開口31c近傍に配置されるまで、調節ベルト75を引っ張ることができる。このとき、背当て部32の前方へ延在する幼児ベルト70の長さは最短であり、幼児ベルト70に連結した調節ベルト75のループ部75aは最下位置にある(図24)。
調節ベルト75の最下位置とは、ループ部75aが、シート下部31の開口31c近傍の位置である。従って、調節ベルト75の最下位置は、シート下部31の開口31cの位置に固定されている。
以上より、幼児ベルト70の長さ調節は、背当て部32の前方へ延在する幼児ベルト70又はシート本体30の前方へ延びる調節ベルト75の部分を引っ張ることによって行われ、それによって、乳幼児の体型に応じた幼児ベルト70の締め付け具合を調節することができる。
チャイルドシート1では、調節ベルト75が、シート本体30の後側の下端部近傍、すなわちシート下部31の円筒部31bの後側面の下部に形成された開口31cまで延びてから内部空間35内に入る。次いで、調節ベルト75は、ベルト支持突起33eによって、鋭角に屈曲して上方へ向かって延びている。従って、調節ベルト75は、ベルトアジャスター76に向かって最短距離を経由しているとは言えず、迂回した経路を辿っている。このため、チャイルドシート1では、調節ベルト75の最下位置を従来のチャイルドシートよりも下方のシート本体30の下端部近傍に配置することによって、調節ベルト75の最上位置及び最下位置間の距離をより長く確保している。その結果、幼児ベルト70の長さ調節の範囲をより広くすることが可能となる。
なお、調節ベルト75の調節を滑らかにするため、シート本体30と接する部分、例えば開口31cの上部に滑車を配置してもよい。また、調節ベルト75は、シート本体30の内部を経由せずに、その外部、すなわちシート本体30の下面を経由するようにしてもよい。
ところで、シート本体30の背当て部32の背面には、背面パネル(ハーネスパネル)68が取り付けられている。図25は、チャイルドシート1の背面の拡大斜視図であり、図26は、チャイルドシート1の背面パネル68の斜視図である。背面パネル68は、シート本体30の背当て部32の後側に配置された余分な幼児ベルト70及び調節ベルト75が邪魔にならないようにカバーし、背当て部32の背面に収容する役割を果たす。また、背面パネル68は、移動部61の一部、及び、シート本体30の背当て部32の開口36の両側に形成された被係合曲面部38を露出させないようにカバーする役割を果たす。
背面パネル68は、図9の縦断面図に示されるように、シート本体30の幅方向中央部分において高さ方向に亘って延在するように配置され、シート本体30に嵌合して取り付けられている。背面パネル68は、パネル上部68aと、パネル下部68bとを有している。背面パネル68は、可撓性を有するように、例えばポリプロピレン等の樹脂材料から射出成形によって一体的に形成されている。特に、背面パネル68のパネル上部68aとパネル下部68bとの境目の部分は、他と比べて薄肉に形成され、破損させることなく繰り返し屈曲可能なヒンジ68cを形成している。しかしながら、背面パネル68は、ヒンジ68cを省略し、その可撓性によって屈曲させるようにしてもよい。なお、幼児ベルト70及び調節ベルト75は、シート本体30と背面パネル68間の収容空間68d(図9)内に収容される。
背面パネル68の上端部は、シート本体30の背当て部32に係合しているが、この係合を解除することによって、ヒンジ68cを中心にパネル上部68aを後方に向かって屈曲させ、シート本体30と背面パネル68間の収容空間68dを開放することが可能となる。すなわち、背面パネル68を部分的に背当て部32から離間させることができる。例えば、シート本体30の背面側に配置された幼児ベルト70の余分部分を調節するとき等に、背面パネル68のパネル上部68aを屈曲させ、作業を行いやすいように開放することができる。
また、背面パネル68のパネル上部68aには、幅方向中央部分において高さ方向に亘って開口68eが形成されている。開口68eの幅は、シート本体30の背当て部32の支柱部37の幅よりも大きい。従って、背当て部32の2つの開口36が、背面パネル68の開口68eを介して、部分的に露出している。その結果、着座している乳幼児が不快にならないように、シート本体30の背当て部32の前後方向において、背当て部32の2つの開口36及びヘッドプレート60の通気開口60g(図20)を介して、通気性が確保できる。さらに、背面パネル68に開口68eが形成されていることによって、背面パネル68を取り付けた状態で、移動部61を操作することができる。すなわち、背面パネル68の開口68eを介して、回転支持部材62の第1ノブ62c及び第2係合部材64の第2ノブ64bにアクセスすることが可能である。
図27乃至図29を参照しながら、幼児ベルト70について説明する。図27は、幼児ベルト70の一部の上面図であり、図28は、図1の幼児ベルト70の伸長状態の側面図であり、図29は、図1の幼児ベルト70の湾曲状態の側面図である。
チャイルドシート1に用いられる幼児ベルト70は、可撓性でベルト状の複数のストラップ71、例えば2枚のストラップ71a、71bを重ね合わせて形成されている。ストラップ71a、71bの各々は、車両のシートベルトにおいて通常用いられる素材、例えばポリエステル繊維を織ることによって形成されている。ストラップ71a、71bは、長さ方向に延びる複数本の線、例えば2本の線71cに沿って縫合される。
幼児ベルト70を湾曲させると、湾曲させる力を解放した後も、重力に反して湾曲状態を維持する。すなわち、重ね合わせられたストラップ71を湾曲させると、湾曲の内側のストラップ71aの曲率半径は、湾曲の外側のストラップ71bの曲率半径よりも小さい。この曲率半径の違いによって、対向する内側のストラップ71aの外側の面と外側のストラップ71bの内側の面との間で湾曲の周方向、例えばストラップ71の長さ方向に伸長し、ずれが生じる。次いで、湾曲させる力を解放すると、幼児ベルト70は、伸長した外側のストラップ71bが元に戻ろうとするが、内側のストラップ71aの外側の面と外側のストラップ71の内側の面とが摩擦抵抗によって係止する。その結果、変形させた幼児ベルト70は、変形させる力を解放した後も重力に反して形状を維持する。
従って、保護者が、幼児ベルト70を外して乳幼児をチャイルドシートから降ろした後であっても、幼児ベルト70が重力に反して形状を維持することから、その後に再び乳幼児を着座させる際の妨げになることはない。さらに、ストラップ71a、71bがポリエステル繊維等の柔軟な素材から形成されることから、乳幼児や保護者が幼児ベルト70に接触又は衝突したとしても安全である。
なお、幼児ベルト70を変形させたときに、2枚のストラップ71a、71b間でのずれがより大きく生じるように、ストラップ71a、71bを緩く縫合するようにしてもよい。また、幼児ベルト70は、摩擦抵抗によることなく、変形した形状で維持可能な針金や金属板等を内部に挿通することによって、形状を維持するようにしてもよい。また、幼児ベルト70全体を上述したように形状を維持する構成としてもよく、これを部分的に構成してもよい。さらに、乳幼児と当接する幼児ベルト70の部分に、クッション性のある幼児ベルトカバー77(図1)を巻き付けるようにしてもよい。この場合、幼児ベルトカバー77に対して、上述したように形状を維持する構成としてもよい。さらに、上述した幼児ベルト70は、チャイルドシートの分野のみならず、重力に反して形状を維持するベルトのニーズの存在するその他の分野においても適用可能である。
図7及び図30を参照しながら、幼児ベルト70のシート本体30への取り付け方法について説明する。図30は、チャイルドシート1の幼児ベルト70の正面図である。特に、図30に示される幼児ベルト70は、その一端において、左右の幼児ベルト70が締結機構によって締結される締結部78(図1)が取り付けられ且つ乳幼児の股間に配置される、股ベルトの幼児ベルト70である。シート本体30への取り付け方法においては、左右の幼児ベルト70も股ベルトの幼児ベルト70も同一である。シート本体30の背当て部32から延びた幼児ベルト70及び股ベルトの幼児ベルト70は、上述したように、シート下部31を下方に向かって貫通してシート本体30の下方の部分で固定される。従って、シート下部31には、図7に示されるように、幼児ベルト70を貫通させて取り付けるための取付部分として、矩形の貫通孔として取付開口31fが左右及び前部に形成されている。
また、シート本体30のシート下部31を貫通する幼児ベルト70を構成するストラップ71の先端は、折り返されて、折り返された手前の部分と重ね合わせて縫合されている。その結果、幼児ベルト70の先端には、ループ状に形成されたループ部72が形成されている。
シート本体30のシート下部31を貫通した幼児ベルト70のループ部72には、次いで、円柱状の固定棒73が挿入される。固定棒73は、炭素鋼等の金属から、例えば丸棒の素材を切断することによって形成されるが、これに限定されない。固定棒73は、幼児ベルト70が貫通するシート下部31の取付開口31fよりも大きく形成されている。すなわち、円柱状の固定棒73の長さは、矩形の取付開口31fの横の寸法よりも大きく、固定棒73の径は、取付開口31fの縦の寸法よりも大きい。従って、幼児ベルト70のループ部72に固定棒73が挿入された状態で、幼児ベルト70がシート本体30から抜けることはない。幼児ベルト70のループ部72に挿入された固定棒73は、シート本体30の取付開口31f近傍に形成された係合爪31gによってスナップ式に嵌合し、固定される。
幼児ベルト70が、固定棒73のスナップ式の嵌合によって確実に固定されるため、シート本体30の下方に垂れ下がり邪魔となることはない。なお、固定棒73は、棒状であれば円柱状、すなわち円形の横断面でなくてもよい。固定棒73は、例えば、四角形及び六角形等の多角形の横断面を有するように構成してもよい。
幼児ベルト70を固定する固定棒73を棒状の素材から切断することによって、原材料費及び加工費を非常に安価にすることができる。また、固定棒73は、構造が単純なため、強度にも優れている。さらに、固定棒73を用いたシート本体30に対する幼児ベルト70の固定は、単にスナップ式に嵌合させるだけであることから、取り付け作業も簡易である。
図31及び図32を参照しながら、幌機構80について説明する。図31は、チャイルドシート1の上部の斜視図であり、図32は、チャイルドシート1の幌機構80の回転係止機構81の分解組立図である。
幌機構80はヘッドプレート60に取り付けられており、幌機構80の全体がヘッドプレート60の上下方向の摺動に伴って摺動する。幌機構80は、回転係止機構81と、乳幼児の頭上を覆う幌(図示せず)と、幌を支持する骨組みとなる1つの固定幌ステー82と2つの第1可動幌ステー83及び第2可動幌ステー84とを有している。回転係止機構81は、ヘッドプレート60の湾曲した左右の部分に取り付けられる一対のステー支持部材85と、一対の第1回転係止部材86と、一対の第2回転係止部材87とを有している。
固定幌ステー82の両端部は、左右のステー支持部材85に対して固定して取り付けられている。第1可動幌ステー83の両端部は、左右のステー支持部材85に対して、第1回転係止部材86を介して段階的に回転可能に、すなわち段階的な回転位置に係止可能に取り付けられている。第2可動幌ステー84の両端部は、左右のステー支持部材85に対して、第2回転係止部材87を介して段階的に回転可能に取り付けられている。
従って、第1可動幌ステー83及び第2可動幌ステー84は、全体として、横方向に延びる回転軸線周りに前方又は後方に段階的に回転させることができる。従って、幌を前方に展開したり、後方に折り畳んだりすることができる。なお、第1可動幌ステー83の方が、第2可動幌ステー84よりも可能な回転角が大きく、従って第2可動幌ステー84よりも前方へ展開可能となっている。
第1回転係止部材86は、円形に形成された第1回転端部86aを有している。また、第2回転係止部材87は、第1回転端部86aと同一径の円形に形成された第2回転端部87aを有している。ステー支持部材85は、第1回転係止部材86の第1回転端部86a及び第2回転係止部材87の第2回転端部87aと同一径の円形に形成された回転支持部85aを有している。回転支持部85aの中央には、U字型の溝によって画成された弾性梁85bが形成されている。
ステー支持部材85の弾性梁85bの外側面には第1回転係止部材86の第1回転端部86aが配置され、ステー支持部材85の弾性梁85bの内側面には第2回転係止部材87の第2回転端部87aが配置される。弾性梁85bと第1回転端部86aと第2回転端部87aとは、各々の中心に回転ピン88が挿通されることによって、回転可能に締結される。
第1回転係止部材86の第1回転端部86aの回転中心と同心の円周上に、凹曲面状の2つの係止凹部86bが形成されている。同様に、第2回転係止部材87の第2回転端部87aの回転中心と同心の円周上に、凹曲面状の2つの係止凹部(図示せず)が形成されている。また、対向するステー支持部材85の回転支持部85aの外側面には、第1回転係止部材86の回転中心と同心の円周上で且つ第1回転係止部材86の回転範囲に亘る係止凹部86bと対応する位置に、係止凹部86bと係止する凸曲面状の複数の係止凸部85c(図示せず)が形成されている。同様に、対向するステー支持部材85の回転支持部85aの内側面には、第2回転係止部材87の回転中心と同心の円周上で且つ第2回転係止部材87の回転範囲に亘る係止凹部87bと対応する位置に、係止凹部87bと係止する凸曲面状の複数の係止凸部85cが形成されている。
幌を展開又は折り畳むために、第1可動幌ステー83をステー支持部材85に対して僅かばかり回転させると、それによって第1回転係止部材86の係止凹部86bとステー支持部材85の係止凸部85cとの係止が一旦解除される。すなわち、ステー支持部材85の係止凸部85cが、第1回転係止部材86の隣接する係止凹部86b間に配置され、ステー支持部材85の回転支持部85a及び第1回転係止部材86の第1回転端部86a間が僅かばかり離間する。この状態では、第1回転係止部材86の第1回転端部86aに連結されたステー支持部材85の弾性梁85bによる弾性力によって、ステー支持部材85の回転支持部85aと第1回転係止部材86の第1回転端部86aとが接近する方向に付勢されている。
次いで、第1可動幌ステー83をステー支持部材85に対してさらに回転させると、第1回転係止部材86の係止凹部86bは、回転方向に隣接するステー支持部材85の係止凸部85cに係止し、安定する。この安定した係止には、ステー支持部材85の弾性梁85bの付勢力も寄与している。他方、第1回転係止部材86の係止凹部86bとステー支持部材85の係止凸部85cとの係止が解除された状態は、不安定な状態である。従って、第1可動幌ステー83の回転動作時において、第1回転係止部材86は、係止凹部86bが回転方向に隣接するステー支持部材85の係止凸部85cに係止して安定するように、段階的な回転、すなわち段階的な回転位置での係止が可能となる。
なお、第2可動幌ステー84のステー支持部材85に対する回転は、上述した第1可動幌ステー83のステー支持部材85に対する回転と同様である。従って、第2可動幌ステー84の回転動作時において、第2回転係止部材87は、係止凹部が回転方向に隣接するステー支持部材85の係止凸部85cに係止して安定するように、段階的な回転が可能となる。
上述した幌機構80は、ヘッドプレート60と共に上下方向に摺動させることができることから、着座する乳幼児の座高に応じて、簡単な操作で、高さ調節を行うことができる。また、第1回転係止部材86の係止凹部86b及び第2回転係止部材87の係止凹部は凹曲面状に形成され、これらと係止するステー支持部材85の係止凸部85cは、凸曲面状に形成されていることから、非常にスムーズに係止及び解除をすることができる。従って、部品点数の少ない単純な機構で構成であるにもかかわらず、潤滑油を必要とすることなくスムーズに回転及び係止が可能な回転係止機構が実現できる。
なお、2つの第1可動幌ステー83及び第2可動幌ステー84のいずれか一方を省略した構成であってもよい。それによって、チャイルドシートを製品化した場合に、製品モデル毎の違いを簡単に示すことが可能となる。また、第1回転係止部材86の係止凹部86b及び第2回転係止部材87の方に係止凸部を形成し、ステー支持部材85の方に係止凹部を形成してもよい。また、係止凸部及び係止凹部の数は任意に選択可能である。さらに、係止凸部及び係止凹部は、その係止及び解除ができる範囲において、任意の形状であってもよい。
図33乃至図35を参照しながら、サポートレッグ100の位置決め機構110について説明する。図33は、チャイルドシート1のサポートレッグ100の位置決め機構110の斜視図であり、図34は、図33の位置決め機構110の中央よりも左寄りの縦断面図であり、図35は、図33の位置決め機構110の中央を通る縦断面図である。なお、図33は、位置決め機構110の内部構造を明確にするため、一部の部材はその輪郭だけ描かれている。
図2及び図3に示されるように、サポートレッグ100は、チャイルドシート本体10が取り付けられる車両のシートを支持する車両の床面まで延び、チャイルドシート本体10、すなわち受台20の前方部分を下方から支持している。サポートレッグ100は、長さ方向に伸縮自在の脚部101と、脚部101に取り付けられ、脚部101の長さを決定する位置決め機構110とを有している。
脚部101は、受台20に取り付けられる第1筒状部材102と、第1筒状部材102の下方に配置される第2筒状部材103とを有している。第2筒状部材103の上部は、第1筒状部材102の下部内に挿入され、挿入量を調節することによって、脚部101の長さが調節できる。第1筒状部材102には、後述する固定部材117が挿入される1つの貫通孔102aが形成されている。また、第2筒状部材103には、長さ方向に沿って配置され、固定部材117が選択的に挿入される複数の貫通孔103aが形成されている(図2)。
位置決め機構110は、第1筒状部材102の下部に取り付けられ、第1ハウジング半体111及び第2ハウジング半体112を備えたハウジング113と、スライダ114と、脚部操作レバー115とを有している。第1ハウジング半体111は第1筒状部材102の前方から取り付けられ、第2ハウジング半体112は第1筒状部材102の後方から取り付けられる。すなわち、第1ハウジング半体111及び第2ハウジング半体112は、第1筒状部材102を前後から挟むように嵌合して、第1筒状部材102に対して取り付けられる。
第1ハウジング半体111側のハウジング113内には、脚部101の長さ方向に垂直な方向、すなわちハウジング113内を貫通する脚部101に対して離間する方向と近接する方向との間で摺動可能に、スライダ114が配置される。すなわち、第1ハウジング半体111側のハウジング113内には、スライダ114の摺動を案内するための複数のガイド壁111aが形成されている。第1ハウジング半体111の前面の内壁111bには、後方に突出する中空のボス部111cが形成され、ボス部111c周囲にはコイルスプリング116が配置される。
スライダ114の上部には、第1ハウジング半体111のボス部111c及びコイルスプリング116を受容する凹部114aが形成されている。またスライダ114の凹部114a内には、前方に突出する柱状のガイド突起114bが形成されている(図35)。すなわち、スライダ114は、その上部の凹部114a内に、第1ハウジング半体111のボス部111c及びコイルスプリング116を受容すると共に、スライダ114のガイド突起114bは中空のボス部111c内に挿入される。また、スライダ114の上部の左右には突起114cが形成されている(図34)。さらに、スライダ114の下部には、後方へ突出する別体の固定部材117が取り付けられている(図35)。固定部材117は、スライダ114と一体に形成されていてもよい。
脚部操作レバー115の一端には、ハウジングの外部に配置される操作部として操作タブ115aが形成され、脚部操作レバー115の他端には、ハウジング113の内部に配置され且つスライダ114の左右の突起114cと連結する一対の連結部115bが形成されている。連結部115bの各々には、長孔115cが形成されており、対応するスライダ114の突起114cがその中に配置される。脚部操作レバー115の中間部の左右にはそれぞれ円筒状の回転支持突起115dが形成されている。脚部操作レバー115は、左右の回転支持突起115dによってハウジング113内に取り付けられることで、横方向に延びる回転軸線周りに回転可能となっている。
位置決め機構110を脚部101に取り付けた状態で、スライダ114は、コイルスプリング116によって脚部101の方向に付勢されている。従って、固定部材117は、第1筒状部材102の貫通孔102a及び第2筒状部材103のいずれか1つの貫通孔103aに挿入され、第1筒状部材102に対する第2筒状部材103の摺動が規制されている。なお、第1筒状部材102及び第2筒状部材103及び固定部材117は、炭素鋼等の金属から形成されるが、これに限定されない。
脚部101の長さを調節する場合には、まず、脚部操作レバー115の操作タブ115aを上方へ持ち上げるように、すなわち上方向に操作することによって、回転支持突起115dの回転軸線周りに回転させる。この動作は、例えば、上方から下方へ向けて伸ばした右手で位置決め機構110の上方の第1筒状部材102を把持し、その右手の親指で操作タブ115aを下から引っかけるようにして上方へ持ち上げることによって行う。さらに、脚部操作レバー115の操作タブ115aを回転させる動作を継続すると、回転運動によって、操作タブ115aは脚部101の方向へ移動する。
こうした操作タブ115aの回転運動に伴って、脚部操作レバー115の他端の連結部115bは、脚部101から離間する方向へ回転運動する。連結部115bの回転運動によって、スライダ114は脚部101から離間する方向へガイド壁111aに沿って摺動する。すなわち、脚部操作レバー115の連結部115bは回転運動をするのに対し、スライダ114の移動はガイド壁111aによって摺動方向に規制されている。しかし、スライダ114の左右の突起114cが、対応する連結部115bの回転位置に応じて長孔115c内を移動することによって、連結部115bの回転運動が妨げられることなく、連結部115bの回転運動をスライダ114の摺動運動に変換している。言い換えると、この運動の変換がスムーズに行われるように、連結部115bの長孔115cの形状が決定される。
スライダ114が脚部101から離間する方向に摺動することによって、スライダ114と一体に取り付けられた固定部材117が、第1筒状部材102の貫通孔102a及び第2筒状部材103の貫通孔103aから引き抜かれ、脚部101の長さ調節が可能となる。このとき、右手は第1筒状部材102を把持しているが、左手は自由に使うことが可能である。
次いで、例えば左手を用いて、第1筒状部材102に対して第2筒状部材103を摺動させることによって、脚部101を所望の長さに調節し、第1筒状部材102の貫通孔102a及び第2筒状部材103のいずれか1つの貫通孔103aを整列させる。この状態で、脚部操作レバー115の操作タブ115aに加えていた力を開放すると、コイルスプリング116の付勢力によって、スライダ114は脚部101の方向に摺動する。その結果、脚部操作レバー115の固定部材117が、第1筒状部材102の貫通孔102a及び第2筒状部材103の貫通孔103aに挿入されると共に脚部操作レバー115の操作タブ115aは元に位置に復帰する。すなわち、スライダ114は、脚部101の伸縮を固定する固定位置と、固定が解除される解除位置との間で摺動可能であると言える。
サポートレッグ100の位置決め機構110についてまとめると、操作タブ115aが脚部101に近接する方向に脚部操作レバー115を回転させると、連結部115bが脚部101から離間する方向に移動してスライダ114を解除位置に摺動させる。他方、操作タブ115aが脚部101から離間する方向に脚部操作レバー115を回転させると、連結部115bが脚部101に近接する方向に移動してスライダ114を固定位置に摺動させる。
上述した位置決め機構110は、一方の手によって脚部101の一方の把持とスライダ114の解除位置への摺動を行うことができることから、他方の手を自由に使うことができ、従って脚部101の他方を把持しながら脚部101の長さ調節を簡単な操作で行うことができる。また、脚部101の長さを調節するためには、まずは脚部操作レバー115の操作タブ115aを上方向に操作しなければならないことから、仮に、乳幼児が、脚部操作レバー115の操作タブ115aを上から踏んだりしたとしても、スライダ114が意図せず解除位置になることはない。
なお、主要な部品の材質は、適宜言及してきたが、言及されなかった部品の材質は、主にポリプロピレンやポリアセタール等の樹脂材料を一体成型することに形成される。しかしながら、その他の材料又は製造方法を採用してもよい。