JP3184266B2 - 航空機用移動受信装置の配置方法および航空機 - Google Patents

航空機用移動受信装置の配置方法および航空機

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、衛星放送の受信装置
に係り、特に航空機で良好に衛星放送を受信するよう配
慮された航空機用移動受信装置の配置方法および航空機
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】衛星放送移動受信装置としてはすでに車
載用、船舶用のものが、実用化されている。図5にその
移動受信装置構成例のブロック線図を示す。平面アンテ
ナ11およびそれと直結されるRF回路部12はアンテナ駆
動部13上に回転駆動軸17を介して設置されている。RF
回路部12の出力はチューナ部15に入力される。チューナ
部15の出力は移動受信装置出力端子16に接続されるとと
もに制御信号発生部14にも入力されている。制御信号発
生部14はチューナ部15の出力位相情報をもとに平面アン
テナ11を機械的に回転させるアンテナ駆動部13を制御
し、平面アンテナ11が常に放送衛星の方向を向くように
制御する。そしてこれらすべては一体になってレドーム
18の中に収納されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】電車、船あるいはバス
搭載用に実用化されている衛星放送の移動受信装置は、
前述のごとく図5に示したユニットがすべて一個のレド
ーム内に収納された構造になっており、これが電車やバ
スなどの屋根に設置されている。これに対して航空機に
衛星放送受信装置を搭載する場合、設置場所は電波の受
信可能場所やスペース的な問題から与圧室外になる場合
が多い。このような場所は高高度を飛行中、気圧、気温
など環境面できびしい状態におかれる。従って衛星放送
受信装置を安定に動作させるためには、理想的には各ユ
ニットを気密性の高い恒温恒湿槽に収納して温度、湿
度、気圧を一定に保つ処置が必要となる。特に受信装置
のなかで能動素子が使用される電子回路部ではこの処置
が不可欠になる。かくては受信装置は構成が複雑になる
とともに重量も増しコスト高になる。
【0004】そこで実際には航空機の予圧室外には最低
限必要な要素のみを載置し、他の制御信号発生などの能
動素子を使用した電子回路部などは予圧室内に設置する
ことが考えられる。図5図示構成でいえば、平面アンテ
ナ11、RF回路部12、アンテナ駆動部13および回転駆動
軸17は予圧室外に、他のチューナ部15、制御信号発生部
14などの電子回路部は予圧室内に設置するユニットに相
当する。
【0005】さらに予圧室外に設置するユニットを考え
た場合、これらを機体外に機体に密着して載置するより
も機体内に好条件で載置できれば好適であると考えられ
る。幸い航空機では両主翼の一部が機体の軽量化のため
FRP樹脂などで構成されているので、この主翼内部の
空間に前述の与圧室外に置くべきユニットを簡易なレド
ームで囲って載置するのが好適である。この場合FRP
部分を透過した電波を受信することになる。FRP樹脂
は電波を透過するといえども多少の透過損は存在する。
機体に使用されている材質や厚みなどは、衛星放送用電
波例えば12GHz帯電波に対して電気的に考慮されて設計
されていないので、唯単なるアレイアンテナの載置では
電波の透過減衰が大きくなる問題があった。
【0006】そこで本発明の目的は上述の問題点を解決
し、簡易な方法で、電波の翼部分の透過損失を削減し、
電波受信の性能改善のはかれる航空機用移動受信装置の
配置方法および航空機を提供せんとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するた
め、航空機用移動受信装置の配置方法に係る第1の発明
は、電波透過性のある材料で構成された航空機翼上面部
分のその下側翼内部に、レドームに格納された航空機用
移動受信装置を配置するにあたり、当該配置する前記レ
ドームに対応する前記翼上面部分の下方に、距離dの間
隔をあけて厚さtの誘電体板を配置し、さらにその誘電
体板より距離aの間隔をあけて前記レドームの表面を配
置するとともに、前記厚さt、前記距離dおよび前記距
離aを調整することにより、反射波を低減して到来電波
の透過損失を削減するようにしたことを特徴とするもの
である(請求項1記載の発明)。また前記配置方法に係
る第2の発明は、電波透過性のある材料で構成された航
空機翼上面部分のその下側翼内部に、レドームに格納さ
れた航空機用移動受信装置を配置するにあたり、当該配
置する前記レドームに対応する前記翼上面部分のその内
側表面に高い誘電率を有する塗料を厚さtだけ塗布する
とともに、前記厚さtと前記塗料の表面から前記レドー
ムの表面までの距離aとを調整することにより、反射波
を低減して到来電波の透過損失を削減するようにしたこ
とを特徴とするものである(請求項2記載の発明)。ま
た航空機に係る発明は、請求項1または2記載の配置方
法により、レドームに格納された航空機用移動受信装置
が電波透過性のある材料で構成された航空機翼上面部分
のその下側翼内部に配置されていることを特徴とするも
のである(請求項3記載の発明)。
【0008】
【作用】本発明方法ないし本発明航空機によれば、到来
電波が航空機に搭載された移動受信装置のアンテナ面に
到達するまでの電波の透過損失がかなり削減されるの
で、電波受信の性能改善のはかれる航空機用移動受信装
置の配置方法ないし航空機を提供することができる。
【0009】
【実施例】以下添付図面を参照し実施例により本発明方
法ないし本発明航空機を詳細に説明する。図2に本発明
方法に係る受信装置3を取付ける航空機(a) と、その主
翼A1−A2部分の断面図(b) を示す。衛星放送の電波は図
に示した主翼のFRP部分1を透過して翼内に到達す
る。翼内に到達した電波は、FRP部分1が機械的強度
の観点から設計されているため、12GHz の衛星放送波は
大きく減衰することが実験の結果明らかになっている。
従って、このままでは衛星放送の電波を良好に受信する
ことはできない。
【0010】図1(a) に本発明第1の方法に係る移動受
信装置3の配置例を示しており、翼(FRP部分)1の
下に距離dの間隔をあけて厚さtの誘電体板2を配置
し、更に距離aの間隔をあけて受信装置3を配置してい
る。このようにすることにより翼(FRP部分)1の外
から到来した電波は翼(FRP部分)1と誘電体板2及
び受信装置レドーム3との間で多重反射を起こし、最終
的に受信装置に到達する電波の強さを誘電体板が無い場
合に比べ格段に大きくなるようにd,t,aを決定する
ことができる。以下にその原理を説明する。
【0011】一般に、誘電体に電波が入射した場合の反
射波は、境界面での誘電率の不連続によるインピーダン
ス不整合が原因で発生する。
【0012】1枚の誘電体板に電波が入射する場合の反
射波は、入射側境界面で発生する第1の成分と、入射側
境界面での透過波が誘電体層を伝搬して、出射側境界面
で反射し、再び誘電体層を伝搬し、入射側境界面から空
間に出ていく第2の成分(さらに誘電体層内を多重反射
した複数の成分があるが、単純化して考える)が合成さ
れたものである。誘電体層を電波が伝搬する際の誘電損
が無視できる場合、反射波の大きさは、この2つの成分
間の位相差で変化し、逆相関係の時に打ち消し合い最小
となる(すなわち透過損失が最小になる)。この位相差
は、周波数、誘電体の誘電率、厚さ、入射角度で変化す
るが、航空機の翼(FRP部分)の場合、誘電体の材質
(誘電率)と厚みは決まっているため、使用する電波の
周波数と入射角度が定まると位相関係は自動的に定まっ
てしまう。通常衛星放送の12GHz帯の電波を受信する場
合の入射角度に対して、位相関係は逆相関係からずれて
おり、反射波が大きな状態にある。
【0013】本発明方法では翼(FRP)単独では反射
波が最小の状態にならないことに対して、新たな誘電体
層を設け、それからの新たな反射波の発生により翼から
空間に出ていく反射波の大きさを全体として最小化する
ものである。
【0014】図3に本発明方法の移動受信装置における
詳細な電波の反射形態を示す。反射波は翼(FRP部
分)1、誘電体板2および受信装置レドーム3からそれ
ぞれ発生する反射波6、反射波7および反射波8があ
り、反射波7,8の振幅と位相は、間隔d,a,誘電体
板の厚みtおよび誘電体板の誘電率を変えることにより
変化させることができる。図4(a) に示すように、反射
波7および8の合成ベクトルが反射波6と等振幅、逆位
相になるように反射波7および8の振幅と位相を調整す
ることによって、反射波をゼロにすることができる(誘
電体損がゼロの場合)、この際、反射波7および8の振
幅、位相関係は図4(a) の円にベクトル先端があり、直
交関係を保つ関係であれば良い、図4(b) は、本発明方
法の実施による改善を示す図で、使用する電波の入射角
度において透過損失が最小化されることを示している。
曲線21, 22はそれぞれ改善前、改善後の特性曲線で範囲
23は本発明で使用して好適な電波の入射角範囲である。
【0015】図1(b) には本発明第2の方法に係る移動
受信装置3の配置例を示すが、この例ではFRP材1で
形成される翼上面部分の内側表面に誘電率の高い塗料を
厚さtに塗布し、この厚さtと塗料の表面から移動受信
装置レドーム3の表面までの距離aとを調整して、本発
明第1の方法と同様にして到来電波の透過損失を削減し
ている。
【0016】
【発明の効果】本発明方法ないし本発明航空機によれ
ば、衛星放送などを受信する移動受信装置を航空機主翼
内部に配置するに際し、翼部分の到来電波の透過損失を
大幅に削減可能なように配置しているので、その移動受
信装置を感度を上げるため特に大型化する必要がなく、
比較的簡単な方法で受信装置を配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第1の方法に係る移動受信装置の配置例
(a) と第2の方法に係る配置例(b) とを示す。
【図2】本発明方法に係る受信装置を取付ける航空機
(a) とその主翼A1−A2部分の断面図(b) とを示す。
【図3】本発明方法に係る受信電波の反射形態の詳細を
示す。
【図4】本発明方法で反射波を零とするベクトル関係を
示し(a) 、さらに本発明実施による改善を定性的に示す
(b) 。
【図5】従来の車、船舶積載用の移動受信装置を示す。
【符号の説明】
1 翼のFRP部分 2 誘電体板 3 受信装置レドーム 4 塗料 5 入射波 6,7,8 それぞれ反射波 11 平面アンテナ 12 RF回路部 13 アンテナ駆動部 14 制御信号発生部 15 チューナ部 16 出力端子 17 回転駆動軸 18 レドーム 21 改善前特性曲線 22 改善後特性曲線 23 好適な電波入射角範囲
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−390096(JP,A) 実開 平3−46212(JP,U) 実開 昭64−30915(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01Q 1/28 WPI(DIALOG)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電波透過性のある材料で構成された航空
    機翼上面部分のその下側翼内部に、レドームに格納され
    た航空機用移動受信装置を配置するにあたり、当該配置
    する前記レドームに対応する前記翼上面部分の下方に、
    距離dの間隔をあけて厚さtの誘電体板を配置し、さら
    にその誘電体板より距離aの間隔をあけて前記レドーム
    の表面を配置するとともに、前記厚さt、前記距離dお
    よび前記距離aを調整することにより、反射波を低減し
    て到来電波の透過損失を削減するようにしたことを特徴
    とする航空機用移動受信装置の配置方法。
  2. 【請求項2】 電波透過性のある材料で構成された航空
    機翼上面部分のその下側翼内部に、レドームに格納され
    た航空機用移動受信装置を配置するにあたり、当該配置
    する前記レドームに対応する前記翼上面部分のその内側
    表面に高い誘電率を有する塗料を厚さtだけ塗布すると
    ともに、前記厚さtと前記塗料の表面から前記レドーム
    の表面までの距離aとを調整することにより、反射波を
    低減して到来電波の透過損失を削減するようにしたこと
    を特徴とする航空機用移動受信装置の配置方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の配置方法によ
    り、レドームに格納された航空機用移動受信装置が電波
    透過性のある材料で構成された航空機翼上面部分のその
    下側翼内部に配置されていることを特徴とする航空機。
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